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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/20 (Sat)11:06
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2016/05/10 (Tue)18:43








「ひっでー空気だね、いやしかし。俺喘息持ちだからさぁ、こういうのキツイわけよ」
『喘息だと?』
「ウソでーす」
『…… …… ……』
「あ、その『いますぐ首輪の爆弾を起動させてやろうか』って目で見るのやめてもらえます?超おっかないんですけども」
 ホログラムを通して睨みつけてくる老人を前に、俺はやや大げさにおどけてみせた。

 俺の名はクレイブ、傭兵だ。
 ワシントンからはるばるネバダまでやって来た俺は、ピップボーイのラジオがキャッチした妙な放送の呼びかけに応じてモハビ東部に位置する地下掩蔽豪へと向かった。
 そこで待ち受けていたのは野望に取り憑かれた老人と、世紀のカジノ強奪計画だった…










 少し時間をさかのぼって、俺があの陰気な毒霧の充満する街へ向かう前の話をしよう。
 シエラ・マドレ・カジノがオープンした…そう告げる女の声を聞いたとき、俺は思わず耳を疑った。ラジオ放送の内容は来客を歓迎するといった趣旨で、その放送は通常使われていない周波数を使っていたから、ピップボーイの自動チューニング機能がなかったらまずキャッチすることはないだろう。
 ともあれ放送の発信源へ向かった俺は、そこに軍用…BoS、鋼鉄の同志。俺にとってはなんとも馴染みのあるシンボルが描かれた地下掩蔽豪を発見し、梯子を下りて先へと向かった。
 バンカーの中には様々な設備が揃っており、そして一人の老人が佇んでいた。
「なかなか良い穴ぐらじゃないの」
「ほう、ラジオの放送を聞きつけて来たか…ピップボーイ所持者ではないところを見ると、周波数のチューニング中に偶然電波を拾った、というところかな?」
 どうやらラジオ放送の発信者らしい老人はそう言い、感嘆とも落胆とも取れぬため息をついた。
 実際のところ、俺はピップボーイ所持者なのだが…以前ワシントンに居た頃、リベットシティで連邦の技術者にワイヤード・リフレクス(強化反射神経)の手術を行ってもらう際、ついでにピップボーイも細分割化して体内に埋め込んでもらったのだ。
 もっともモニターやスピーカといった、かさばる外部出力パーツはオミットしてしまったので、そのせいで不便を被ることも、なくはなかったが。
 とりあえずそのことを話す必要なないだろう、などと考えていたとき、老人がピストル型の装置を取り出し、俺に向けてトリガーを引いた。
「少しの間、眠っててもらうぞ」
「!?」
 バシュッ!!
 まばゆい閃光とともに俺は視力を奪われ、やがて気を失って昏倒…するはずだった。
 普通の人間なら。
「Wow、wow!いきなりだなジーサン!?」
「…なに、通用しないだと!?」
 おそらくは視神経から脳に作用するタイプの麻酔銃だろう、たしかパラダイス・フォールズの奴隷商人が扱っていた…メスメトロン、とかいったか…それと同種の装置を構えたまま、老人は見るからに狼狽した。
 すぐさま他の銃…今度は殺傷能力のあるやつだろう…を抜こうとした老人を、俺はなんとかして止めようとする。
「ままままま待て待て待て、Hey、hey、hey!ちくと待ったらんかいな!あんた、元BoSの人間だろ!?俺はあんたに手を貸しに来たんだぜ!」
「なんだと?貴様、なにを知っている」
「あんた、ビッグ・マウンテンに居たろ?俺もあそこに居たんだよ、同じ時期に…ザ・シンクのイカレた脳味噌ども、あいつらに改造されてな。見な、この手術跡を。麻酔銃が効かなかったのはこいつのおかげさ」
 早口でそうまくし立て、俺はマスクを外してみせる。
 以前の美貌(ここは笑うところだぜ)はどこへやら、痛々しい切開跡の残る外貌を見て、老人は警戒を解くことこそなかったが、興味深い様子で俺の顔を観察した。
「ほう、これは…たしかに、シンクのロボトミー手術と同じものだ。まさかこの手術を受けて、自我を持ったままあの場所を脱出できる者がいたとはな」
「あんたのことも知ってるよ。エルダー・エリヤ…元、エルダー、かな。BoSの最高権力者、だった、だろ?俺はある筋からの依頼を受けてビック・マウンテンの調査に行ってたんだ」
「誰からの依頼だ?」
「それは言えねえ、俺は傭兵だ、わかるだろ…とにかくだ、情報を調べてるうちに、あんたの素性と、ザ・シンクとシエラ・マドレの関連性を知ったんだ。あんたがシエラ・マドレへ向かったってこともな。あんた、ヘリオス1での意趣返しがしたいんだろ?」
「知りすぎることは寿命を縮めるぞ、小僧…どこでそれを知った」
「職業柄、色々知りたくないことも耳に入るもんでね…とにかく、ビッグ・マウンテンでの仕事を終えたあと、俺は偶然あのラジオ放送を聞いたんだ。すぐにアンタの計略だとピンときたね。だから、俺も計画に一枚噛ませてもらおうと思って来たのさ」
「狙いはなんだ?貴様の目的は」
「俺はBoSやNCRに興味なんかない。まして、アンタの個人的なシンパでもない。戦前の技術にも興味はない。俺が興味を持ってるのは金(キン)、それだけだ。シエラ・マドレには莫大な財産が眠ってるらしいじゃないか、俺はそいつをさ、そうだな、あんたが悲しくならない程度のお宝を貰えりゃあ、それでいいのさ」
「金が目当てか…フン、わかりやすいな。傭兵が自分から売り込みに来るだと?信用できんな。だが、フム…貴様自身がザ・シンクの成果物だというのは興味深い。それがここに立っているということ、それだけで多少は腕に見込みがあるというわけか」
 そう言うと、老人…BoSモハビ支部の元エルダー、ファザー・エリヤは不遜な態度で俺を見下ろした。
 かつてモハビBoSは、ヘリオス1という巨大な発電施設を拠点に活動していたことがある。やがて彼らはNCRと交戦状態になり、防戦に適さない場所での戦いでモハビBoSは半壊。当時の責任者であるエリヤは解任と同時に行方をくらまし、生き残ったBoSの残存部隊は地下施設での隠遁生活を余儀なくされた。
 なぜただの太陽光発電施設であったヘリオス1にエリヤが固執したのかはわからない。彼は再三の撤退要請を無視してヘリオス1に留まることを部下に強制したのだという。
 ともかく…俺は、とある任務でビック・マウンテンに向かったとき(詳細は話すと長くなるので割愛する)、エリヤがそこで戦前の技術を研究し、さらなる成果を求めてシエラ・マドレに向かったことを知ったのだ。
「シエラ・マドレには戦前のロスト・テクノロジーが大量に眠ってるそうじゃないか。あんたの目的はそいつだろ?まあ、金も欲しいだろうけどさ…ともかく、俺は個人が満足できる額の金が手に入ればそれでいいワケ」
「胡散臭いやつめ。だが、私の計画には腕の立つ人間が必要なのだ。金で傭兵を雇うか…なるほど、たしかに合理的ではある、が」
 その後もエリヤは散々俺のことを疑って協力を拒否しようとしたが、俺の粘り強い説得の甲斐あってか遂に折れ、シエラ・マドレ強奪計画の主要人物として俺を起用したのだった。










『多少は手の内の知れた仲とはいえ、作戦中はお前のことは他の協力者とおなじ駒として扱う。依存はないな?』
「ないけどさあ。協力者って…麻酔で眠らせて死地に放り込んで脅迫するのが『協力』とはね」
 銃の装弾を確認しながら、俺はマスクの下でエリヤのホログラムに呆れた眼差しを向けた。
 シエラ・マドレ強奪計画には人手が必要だ…たとえ俺がどんなに凄腕のエース・プレイヤーだったとしても(自惚れと言ってくれて構わないんだぜ)、一人でベースボールはできない。
 エリヤは俺を雇うより先に、数人の手駒を揃えていた。もっとも俺が来るより前に何度か計画を実行に移し、失敗していたようだが…それは数に含めないとして、そういう連中を俺はこれから仲間に引き入れる必要がある。
 なんたって俺に使ったような麻酔で気を失わせ、監禁し、あまつさえ戦前の技術…ビッグ・マウンテンで手に入れたものだろう…の粋を凝らした自爆首輪を嵌めているのだ。素直に協力するはずがない。
 とりあえず命令に逆らえば首輪を爆破する、という殺し文句に従ってくれることを祈るしかないが…こいつはエリヤの指先一つで頭を吹っ飛ばせる代物だ…俺、トークは苦手なんだけどねぇ。
「他の連中を信用させるため、とはいえ、俺にまで本物の爆殺首輪を嵌める必要はなかったんじゃないの」
『駒の中には戦前の技術に精通している者もいる。爆薬や信管を抜いた偽者(フェイク)をつけていればそれに気づき、君の正体を怪しむに違いない。君にはあくまで彼らと同じ被害者であるという役を演じてもらわなければならない、それでなければ彼らを説得はできないだろう』
「へぇ…知り合いでもいるのかい」
 その質問をエリヤは無視した。まあ、いいだろう。
 もちろん、俺にも首輪を嵌めたのは裏切りを予想したうえでの保険だということはわかりきっていた。だが、それを口に出してジーサマの機嫌を損ねることもないだろう。お互いにわかったうえでやってることだ。要するに、大人のビジネスってやつである。
 おそらくこの忌々しい首輪のほかにも、エリヤは二重三重のセフティ(安全措置)を設けているはずだ。でなければ、いきなりやって来て「あんたの正体を知っている」などと吹聴してくる得体の知れない男など雇ったりするはずがない。
 こっちもそれは織り込み済だ。まあ、なんとか…上手くやるしかないな。
『作戦中は特定の周波数を使って君に指示を出す。また、首輪の盗聴装置を通して協力者の会話を拾える専用の周波数もセットした。ラジオは持っているな?』
「もちろんよ」
 そう答え、俺は腰のベルトから携帯型のラジオを取り出してみせた。
 実際は内蔵ピップボーイからダイレクトに聴覚へ伝達させることができるのだが、いまのところ俺がピップボーイ所持者、もとい内蔵者だというのはエリヤに明かしていない隠し玉の一つだ。
 俺が指示を小型ラジオから聞いているか、それとも内蔵ピップボーイから聞いているかまでは、さすがのエリヤでも知る方法はない。周到な盗聴/盗撮環境を用意しても、抜け穴というのは必ずあるものだ。
「さて、まあ、それじゃあ…行きますか」
 色々と不便が多い任務ではあるが、過去にだっていきなりレイダーの巣窟に奴隷として放り込まれたり、宇宙人に誘拐されて全裸に剥かれたりしたのだ。この程度の障害は日常茶飯事である。
 俺は武器を構え、エリヤが言うところの「協力者」を探しに出発した。
 毒霧が漂い、亡霊が彷徨う死者の街「ヴィラ」で…





< Wait For The Next Deal... >








 どうも、グレアムです。Fallout: New VegasのSS日記外伝、Dead Money編開始です。
 今回は最初からエリヤの協力者としてヴィラに潜入しているため、装備は取り上げられていないという設定です(首輪はついていますが)。そのうえ他の三人には「自分も同じ被害者である」という演技をする必要があるので、これはもう虚々実々の騙し合いになるわけですな(あんまりそういう要素に比重を置く予定はありませんが)。 
 クレイブはエリヤとほぼ同時期にビッグ・エンプティへ訪れているのですが、そのへんのエピソードは今後書く予定なので今回は詳細は触れません。というか、その事実こそが今後の伏線になってたりするので。
 またHonest Heartsが若干シリアスに寄りすぎたので、今回は若干ギャグっぽいテイストにする予定。












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