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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)00:01
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2020/04/24 (Fri)02:46


 
 
 
 
 

 

ATOM RPG Replay

【 Twenty Years In One Gasp 】

Part.1

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 夢を見ていた。遠い昔の記憶、核の炎に包まれ荒廃したアフガニスタンの地で、ナターシャは相棒のユーリとともに見渡す限りの荒野を彷徨っていた。
 突然の核攻撃は二人が駐留していた基地もろとも焼き尽くし、車輌やヘリコプターといった移動に使えそうな装備はすべて使い物にならなくなっていた。撃ち込まれたミサイルがアメリカ製だったのか、それともロシア製だったのかを知る術もなかった。
 僅かに生き残った生存者たちは、おそらく本国からの救援は望めないだろうと判断し、部隊を纏めてロシアへの帰国を目指した。それは途方もない距離の行軍であり、無謀としか言い様がないものであったが、それでも、思いつく限りでもっともマシな選択肢には違いなかった。
 ナターシャの肩を借りて二人三脚のように歩きながら、蒼白な顔つきのユーリが唐突に口を開く。
「俺はこんなところで死にたくはねぇ、だってそうだろ?死ぬにしたって、なにも、こんなところで…あんな連中に追い回されながら。あいつら、世界がこんな有り様になっても、まだ俺たちを目の敵にしてやがる」
 生き残った部隊がその場に留まらず撤退を決意したのは、外敵の脅威…それも昨今恐れられているようなミュータントやバンディットの類ではなく、明確な恨みや殺意でもって攻撃をしてくるアフガン人の存在があったからだ。
「連中、世界が滅びたのは俺たちのせいだと思ってやがる。まあ、責任の半分が"俺たち(ロシア人)"にあるのは間違っちゃいないがな。それに、ムジャヒディンやイスラム原理主義者といった連中は"アメリカ人とは大の仲良し"だから、責任のすべてが俺たちにあると思い込んだとしても、無理はねぇ」そう言って、ユーリは虚ろな笑みを浮かべた。
 もし核戦争が起きなかった場合、アメリカから訓練や武器供与を受けていたイスラム戦士たちがジュネーブ協定によるロシア軍撤退後に一転して西側諸国に牙を剥くことになるなどとは、ナターシャやユーリには知る由もないことである。
 ときおりゲリラの奇襲に遭いながら、水も食料も不足している状況で、放射能や毒物に汚染された土地を歩く。無事でおれるはずもなく、一人、また一人と倒れていき、けっきょくナターシャとユーリのみが生き残った。
 二人はともに狙撃兵と観測手という間柄であり、数々の困難な任務を遂行してきた過去を持つ。一度など、二人だけでパキスタン国境沿いに潜伏している部族の長を暗殺したことさえある。そのときは回収に来るはずだったヘリが手配されず、敵の猛追を受けるなかであらゆる手を尽くして前線基地まで撤退したものだ。いま置かれている環境はその当時を思い出させた。
 ユーリは決して多弁なほうではなく、困難な任務を前にしても不平を言ったり、仲間に愚痴をこぼしたことはなかった。そんな彼がいま悪態ばかりついているのは、それ自体がナターシャに気を許している証拠でもあったのだが…
 不意にユーリの足が止まり、彼の体重がどっさりとナターシャにのしかかった。ナターシャも足を止める。二人とも、とっくに限界を超えていた。
「俺は…国に帰りてえ!家族に会いたい…!モスクワは無事なのか?家族は無事なのか?せめて、一目だけでも……!」その場に倒れこんだユーリが、すすり泣きをはじめた。
 これほどまでに彼が情けない姿を晒すのを、ナターシャは一度も見たことがなかった。たとえ命を危険に晒されても、軽口一つで乗り切るような、あのユーリが。
「大丈夫、大丈夫だよ」ナターシャはユーリに言い聞かせた。「絶対に帰れる、ロシアへ、モスクワへ。みんなで、全員で一緒に」
「みんな…?みんなって、誰だ?そのみんなは、どこに居るんだよ?」そのユーリの恨み言は、すでに声にすらなっていなかった。かすれた吐息のように絞り出されただけだ。
 ナターシャはただ首を振り、ユーリの手を両手で包みこむように握ると、その場にひざまづいた。
 ユーリの質問は、まさにナターシャ自身も答えを必要としているものだった。
 みんな、どこへ行ってしまったの?
 彼女にわかっているのは…間もなく、ユーリもその"みんな"のうちの一人に加わるだろうということだけだった。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
「夢を見ていたようだな。まあ、あまり良い夢を見ていたようには見えないが」
 ナターシャが目を覚ましたとき、軍服姿の男が壁に背をもたれながらこちらを見つめていた。いつからそうしていたのか、少しばかり待ちくたびれたといった態度で男が言う。
「ともかく、ぐっすり眠れたようで何よりだ。昨晩は酷い嵐で、俺なんかは寝不足気味だってのにな。いや、これは冗談だが。俺を覚えているか?」
「エージェント・アルフ」ナターシャは目をこすりながら身体を起こした。「まともなベッドで眠れたのは、随分と久しぶりのことだったので。ところで、なぜ私が悪夢を見ていたと?」
「ひどくうなされていた。泣いてたぞ。少なくとも、夢の国のアトラクションで楽しんでいたようには見えない」そう言って、アルフは赤く腫れたナターシャの目元を指さした。
 彼はATOMのハニー・イーター旅団に所属する兵士で、ウェイストランドに調査隊として派遣された際、廃墟に身を隠していたナターシャを発見した男でもある。
 2005年…米ソ全面核戦争から19年が経過した現在、たった一人でアフガンから生還したナターシャは、ウェイストランドと呼ばれるようになった不毛の荒野で生存していた。
 それもつい最近、ATOMの調査隊に発見されるまでは、生きた人間と会うこともなかったのだ。今にして思えば、それはそれで奇跡的な確率ではあったのだが…
 調査隊にしてみても、20年以上も前にアフガンに派遣された兵士が自力で帰還しウェイストランドで生活しているなどという冗談のような奇跡に遭遇するのは初めてのことであり、人間と接する機会がなかったために些か会話が不自由になっていたナターシャを保護し、組織が保管していた軍の資料から彼女の身許を調査した結果、ナターシャが本物のスペツナズであると証明されたのがつい先日のことだった。
 
 ATOM…ソビエト帝国の復興を目指す秘密結社で、発足は核戦争以前、ロシア軍内部の帝国主義勢力の一団によって設立されたものと言われている。現在は戦前のテクノロジー収集を主な活動内容としており、そのためウェイストランドへ頻繁に調査隊を派遣している。
 帝国復興という目的の内には人々の生活水準を核戦争以前のレベルまで戻すという大義名分も含まれており、それ自体は立派なものだが、単純な正義の集団でないことは念頭に置くべきであろう…関わっている当人たちがどう思っているのかはさておくとして。
 組織がナターシャを保護したのも純粋な善意からではなく、彼女が本当にアフガンからの帰還兵であった場合、何らかの形で組織のために役立つと判断したからである。ナターシャもその点は理解していた。
 アルフは言った。
「組織が当時の名簿を持っていたのは君にとって幸運だったな。第334独立特殊空挺支隊、ナターシャ・クロートキィ兵長?外見が当時のIDカード…つまり、20年前の写真と変わってないのは、かえって不自然でもあるが」
「それは…私に言われても」ナターシャが口ごもる。
 一見すると少女のような見た目のナターシャが、間もなく40歳の誕生日を迎えようとしている事実について、アルフが疑問を呈するのは無理からぬことだ。
「KGBか…ストーム333には参加したのか?」アルフが尋ねる。
「いえ、アミンの暗殺には関わっていません。私が入隊したのは、それよりも後なので」
「そう言えと教わったのか?いや、冗談だ。腹は減ってないか?テーブルの上にビスケットがある。君、朝食の時間を寝過ごしたろう?まあ、あのまずいスープを食わずに済んだのは幸運かもしれないがな」
 アルフが言ったのは、食堂で振る舞われる食事のことだ。真っ当な食材を手に入れるのも難しい時代ではあるが、それでも味が酷いのはコックの腕が悪いせいではないかと、ATOMの兵士たちは噂していた。
 ビスケットの箱を手にし、ナターシャは中身を確かめるようにガサゴソと振る。ガレット(岩石)という、食品にあるまじきアダ名で呼ばれるそれは、かつてナターシャが食べ慣れた軍用糧食の一つだ。通常、保存期間は二年程度と言われていたはずだが、この硬く乾燥した軍用パンがいつ製造されたものなのかを考えるのはやめたほうがいい気がした。
「それで、今日の予定は?なにか特別な用事があるものと察しますが」ビスケットの外箱を睨みつつ、ナターシャが言う。
「組織は何か、特別な任務を君に与えようとしているようだ。ブリーフィングに呼ぶよう言われた」
「特別な任務?」
「かつてのスペツナズの腕前を見込んで、だろ。50m先の石を拾ってくるとか、そういうルーキー向けな話ではなさそうだった。俺は詳しく聞かされてないが、そのことが余計にな」
「身内にも内容を明かせないような任務ですか?」
「どうかな。ATOMの秘密主義は今にはじまったことじゃない、わかるだろ、組織ってのは秘密が好きなんだ…どうせ取るに足らない、くだらない話さ」
 そう投げやりに言ったが、おそらくはアルフ自身、その言葉の内容を信じてはいないだろう。
 宿舎の扉を開けようとしたとき、鋼鉄製の扉に鍵がかかっていることに気がついた。アルフがチェシャ猫じみた笑みを浮かべる。
 
 
 
 
 
 
「末世の習慣というのは恐ろしいものだ。いつ、自分のいる建物に強盗や、あるいはミュータントが侵入してくるかわからない。扉に鍵をかけるクセってのは、そのまま自分の寿命の長さに繋がる。ところで、鍵をどこへやってしまったか、自分でも思い出せないんだ」
「これはテストか何かですか?」ナターシャは眉をひそめる。
「まあ、そう思ってくれても構わない。鍵を見つけるか、あるいは自信があるならピッキングで開けても構わない。おそらく任務中に、施錠された扉を開けなきゃならないようなシチュエーションに遭遇することもあるだろうからな」
「…一つ、訊いていいですか」
「なんだ」
「この扉、内側から鍵をかけるんですか?」
「そういうことは聞いちゃいかん…」
 チュートリアル用のご都合主義だ、などと、アルフの口からは言えようはずもなかった。あるいは、ソビエトロシアにはそういった特殊な扉があるのかもしれなかったが。
「業者が扉をつける向きを間違えたんだ」苦し紛れに言うアルフ。
「そういうことにしておきます」
 鍵は扉のすぐ近くにあるスチール製の事務机の引き出しの中にあった。これが何のテストになるのかはわからなかったが、まあ、アルフには彼なりの思惑があるのだろう。
「もっと難しい場所に隠してあるものかと」ナターシャが言う。
「俺のケツの穴とか?」アルフは冗談めかして言った。
「必要があるなら探しますが」真顔のまま訥々とナターシャが返す。右手を握ったり、開いたりする仕草を見せるナターシャに、アルフの顔から若干血の気が引いた。
 
(扉を開けるには、鍵を装備した状態で扉を調べる必要がある。本作ではインベントリに入っているだけで効果を発揮するものと、実際に装備しなければ効果を発揮しないものがあり、見た目や説明文では判断がつかないため、いささか面倒な仕様ではある)
 
 
 
 
 
 
 カチリと小気味良い音とともに鍵が開き、扉を開けると、風とともに揮発油や兵士たちの汗といった匂いが鼻をツンと突いた。清涼な空気感とは言えなかったが、同時に、人の気配を感じさせるその匂いはナターシャにある種の郷愁を思い起こさせた。
「訓練学校にいた頃を思い出します」唐突にナターシャが言った。
「訓練はどこで?」アルフが質問する。
「リャザン。まるで戦前に戻ったよう、こんな場所が残っていると知ったら、きっと、みんな喜んだはず。部隊のみんなを、ここに連れてきたかった……」
 それはアルフに言い聞かせているというよりも単なる独り言であり、身寄りのないナターシャにとってはまさしく家族同然であった部隊の仲間たちの姿を思い出し、目に涙を浮かべた。
 泣いている女に余計な口を挟まない分別をアルフは持っていたが、所在なさそうにしている彼の存在を思い出すと、ナターシャは慌てて言い繕った。
「あの、ごめんなさい、その…えぇと。ごめんなさい」
「気にするな。仲間に恵まれていたようだな、いや、今の言葉は忘れてくれ」そう言って、アルフは手を振った。
「彼らは素晴らしい人たちでした。少なくとも、私にとっては。あんなところで、あんなふうに死んでいい人たちじゃなかった…いえ、この話はやめましょう。ブリーフィングでしたっけ?メインバンカーで?」
「ブリーフィングにはまだ時間がある。それまで少し施設を見て回ろうじゃないか…というのは建前で、実際のところ、任務前に君の能力を査定するよう上から指示を受けている。少しばかり、そう、君が言うところの"テスト"に付き合ってもらうよ」
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 

 
 
 
 どうも、グレアムです。ロシア製の旧Falloutフォロワーな作品、ATOM RPGのプレイを開始しました。「どうせまた途中で投げるんだろ!?」と思われるかもしれませんが、いまのところ英語環境でのプレイとなるうえ会話が非常に重要なゲームであり、翻訳しつつ創作要素も挟みつつの更新となるので、その可能性が多大にあることは全くもって否定できないのだった…
 いちおう公式のほうで日本語化作業が進んでいるという告知もあり、公式日本語訳がリリースされるまで待つという手もあったのですが、逆に日本語化されてない今だからこそネタとしておいしい、というやましい気持ちもあり。
 現状でもWorkshopで機械訳版がMODとしてリリースされてはいるんですが、アレはあくまで翻訳者向けのキットとでも呼ぶべきもので、おそらく一般ユーザーが導入することを想定してないです。翻訳の質どうこういう以前にゲームプレイに支障が出る(おそらく命令用の記号など訳してはマズイ部分を書き替えてしまっている)ので。
 
 
 
 
 


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