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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/10/07 (Mon)09:25
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2013/05/05 (Sun)04:33


「体毛染色機能?」
『ええ。正確に言えば染色ではなく、根元にある発光体の色を変えるだけなのですが。あなたの髪はガラス繊維製で、素材そのものは無色透明なんですよ』
 雲天の頂から帰還したリアは、コロールの街を歩きながら、自らの脳内に埋め込まれた思考支援チップ<TES-4>…通称フォースと会話していた。
 会話と言っても直接言葉を口に出すわけではなく、リアの思考プールと支援チップの間で電気信号のやり取りをするだけなので、会話に費やされる実時間はほぼ一瞬だ。
 いままで次空転移した際の後遺症でほとんどの機能に障害が残っていたリアは、自らの機体(ボディ)にこのような機能が付与されていたことに驚きながらも、早速その機能を試しているのであった。
 青くなびく髪を揺らしながら、リアはふたたびフォースに信号を送る。
「ところで、なにゆえにこのような機能が?ファッションか?」
『擬装用…とも思えませんね。おおかた開発部の思いつきでしょう、デモンストレーションのつもりだったんじゃないですか』
「対外向けのPRか。ますますこの機体を製造したのが誰なのか気になるな、おぬしは知らんのか」
『禁則コードに抵触します』
「フン」
 なにかっていうとすぐこれだ、フォースはリア以上にリアのことを知っているが、そのことについて質問すると『現在進行中の任務に支障が出る可能性があるため答えられない』と言うのだ。
 だいたい、その『任務』そのものに関する説明すら拒否するのだ、いったいどうしろというのか。
「まあ、よいわ。とりあえず、グレイ・メア亭にでも向かうかのー。あの酔っ払いの若造でもからかって遊んでやるとするか」
『あの。ところで、あなたを危険に晒した魔術師の処遇についてはどうなさるおつもりで?』
「ああ、そのことか。それなら前もって手は打ってある。抜かりはないぞい」
『はぁ…』
 いたずらっぽく笑みを浮かべるリアに、フォースはため息に似た声を上げる。

  **  **  **

「おーい、酔っ払い小坊主ー。元気しとるかー?」
「俺は酔ってなんかねぇよ。これが酔っ払いの顔に見えるってのか、えぇ~?」
「茹でダコみたいな赤ら顔で言われても説得力ないわい」



 酔っ払いの聖地として近隣住民から嫌われている安宿グレイ・メア亭にて。
 リアはこの店の常連である若者レイナルド・ジェメインに会いに来ていた。ちなみに、以前ゴブリンに農場を荒らされて困っているところを助けたオディール兄弟の父ヴァルスもいたが、そっちは無視。
「…髪が青く見える」
「酔ってるのか、酔ってないのかわからんやつよの」
 安物のビールで満たされたマグカップから顔を上げたレイナルドが、リアの髪を見て驚きの声を上げた。
 もとよりシロディールでは染髪という習慣がないのだろう、リアが元いた世界でも、ファッションで髪を染める文化が認知されるようになったのはごく最近のことだ。
「でーおぬし、なにか困り事があると言うておったろう?この大聖母の如き慈悲深さを持つワシがドバンと解決してやるから、なんでも言ってみんしゃいというのだ。ホレホレ」
「うわーやめろ頬を引っ張るなー。オバンに解決するとか言われてもうれしくねー」
「ドバンと解決だと言うのだ、この痴れモノがーッ!」
「うぎぎぎーっ!」
 思わずレイナルドの両頬をつねるリア。
 そのとき、リアの肩に何者かが手をかけた。店主のエムフリッドである。
「あのー」
「うん?」
「何も注文しないんだったら、他のお客様の迷惑になるから出て行ってほしいんだけど?」
 ニコリ。
 リアは彼女の営業スマイルの奥に、たしかな怒りが秘められていることをエモーション・センサー越しに知覚する。
 これ以上長居をすると、間違いなく出入り禁止にされそうな雰囲気だった。

  **  **  **

『結局あそこへは何をしに行ったんですか、あなたは』
「なに、ちぃとした暇潰しじゃ。本当は、あの小僧っ子を煩わせている問題がなんなのか、いま1度確認したかったんじゃがのー。でもまあ、だいたい憶えてはいるから、よしとするわい」
『はぁ…』
 なにも成果がないままコロールを出立したリアに、フォースはいささかの不安を覚える。
 もっとも、当のリアはフォースの懸念などお構いなしのようだ。
「あの小僧、レイナルド・ジェメインというたか。どうやらシェイディンハルに偽者…というか、よく似た人物がおるらしくての。道行く人すべてに『シェイディンハルで会った』と言われて参っておるそうだ」
『彼自身はシェイディンハルに行ったことは?』
「ない。らしい。ウソは言うておらんかった、自覚がないだけかもしれんが。とりあえずレイナルドの小僧は『偽者のフリをするのをやめさせてほしい』なんぞと言うておったが、そもそもその、そっくりさんがレイナルドを騙っている、ちう確証もないのじゃな、これ」
『シェイディンハルでレイナルドを見かけた、という人は、その良く似た男が自身をレイナルドと名乗ったと証言したのでは?』
「や、そういう話ではなかったの。皆が皆、たんに遠目で見ただけでレイナルドと判断して、声はかけなかった、そういう事情らしいのじゃな。だもんじゃから、ワシは偽者ではなく、よく似た人物、そっくりさんと言うておる」
『なんだか面倒な話ですね。なぜ、この案件を気にかけるのです?あなたに得はないでしょう?』
「なに、若者の面倒を見るのは年寄りの仕事じゃて。年金暮らしにあぐらをかいてパチンコ打つだけの余生というのもつまらんじゃろう」
『またわけのわからないことを…』
「それはともかく、ここからシェイディンハルまではちと遠いんじゃよな。ワシは機械じゃし疲れはせんが、時間がかかるのは如何ともし難いのー。おぬし、なんぞ妙案などはないか?車を呼び出すとか、航空支援を要請するとか」
『わたしをなんだと思ってるんですか。馬に乗れば良いのでは?』
「この重い機体だと、背に跨ったとたん馬が暴れだしてのー。まともに利用できん、そんなのはとっくに試したわい」
『そうですか…ああそうだ、そういえば』
「なんじゃ」
 出し抜けに提案が思い浮かんだような態度を取るフォースに、リアはいささかの不安を覚える。
 …なにか、ろくでもないアイデアではないだろうな。
 そんなリアの懸念を、フォースはまったく裏切らなかった。
『あなた、2輪車に変形できますよ』
「……は」
『あなたに内蔵されている強力な発電機構を利用してですね、2輪駆動体としての活動が可能になっています。そもそも設計段階からこうした運用を想定していて、2足歩行形態と2輪駆動形態とでパーツに無駄が出ないよう、極限まで互換性を持たせたデザインになっているんですよ。これは画期的な技術で…なぜ黙っているのです』
「バッカじゃなかろうか」
『は?』
「いや、なんでもない。…マジなのか…まぁ、いいわい。それじゃあ、早速その2輪駆動形態とやらにシフトしてみるかの」
『お待ちください。いまの状態のまま変形すると深刻な副作用が』
「深刻な副作用?」
『服が破れます』
「おおう」



 リア自身に羞恥の概念はないのだが、いざシェイディンハルに到着したときに全裸だと体裁が悪いし、予備のドレスも持っていなかったので、念のため人気のない岩陰で服を脱ぎ、トランクにしまいこむ。
 さて、とリアは姿勢を正し、変形プロセスを起動した。
『変形プロセス起動、現在コマンダーの承認待ちです。…レディ?』
「レディ」
 ガキン、リアの胴体が展開し、各部が次々と構造を変化させていく。



『変形プロセス完了、2輪駆動形態にシフトしました』
「なんじゃあこりゃああぁぁぁぁぁっっっ!!」
『如何なされました?』
「原型が残っておらんではないかぁぁぁっ!どれだけデタラメな技術じゃあぁぁぁっ!!」
『なにか不都合でも?』
「いや、そーいう問題ではなくてな?」
 バチバチ、と微量の電力を放出しながら、2輪駆動形態…早い話がバイクに変身したリアは、このあまりに理不尽な現象に頭を抱える。というか、抱える頭がどこにあるのかすら把握できない有り様だ。
 フォース曰く、髪の毛は配線に、眼球はセンサーに、頭蓋は発電機のタンクに…など、この形態において身体のパーツだったものはまったく違う用途に使われているらしく、『とても合理的な構造』であるらしい。
「…まあ、いいわい。あまり深く考えても仕方がないもの」
『そうですよ。便利に立ち回れるならそれでいいじゃないですか』
 いささか(というか、かなり)釈然としない部分が残るものの、リアは「これはこういうものだ」と割り切ると(自分の身体のことだというのに!)、一路シェイディンハルへと向かった。

  **  **  **



 ガゴンッ!
「プギィィィィッッッ、イイイギィィィイイイッッッ!!」
『リア、あの…リア、ちょっと!待ちなさいゼロシー!』
「ん、なんじゃ?」
『スピードを出し過ぎです!今なんか轢きましたよ!?』
「鹿か?」
『鹿じゃありません!北海道じゃあるまいし!』
「じゃあ、なんじゃ」
『猪です!』
「北海道か」
『違います!』 
 白煙を上げ、大気との摩擦で発生した電気の尾を引きながら爆走するリアを、フォースが必死に咎めたてる。
 ちなみに白煙といっても、これはあくまで走行の際の舞い上がったチリやホコリ、あるいは砂であって、排気ガスではない。そもそものエネルギー源が電気なので、環境に優しい造りではあるのだが。
『そもそも、こんなハイスピードで走って現地民に警戒されたらどうするんですか!』
「トロトロ走ってても同じことだと思うがのー」



「ほい到着っ!」
『ゼロシィィィィッッッ!!もうちょっと警戒してくださいーーーッ!!』
 かくしてシェイディンハルに到着したリアだった…が、2輪駆動形態のまま門までやって来たために、衛兵があからさまに警戒体勢を取っている。
「な、な、な、なんだコレはーッ、新種のデイドラかッ!?」
「おー、いかん」
 寸でのところで矢に射られそうになったリアは踵を返すと、そのまま木陰に向かって爆走した。
 その後、きちんと2足歩行形態に戻ってからシェイディンハルを訪れたのは言うまでもない。ただし今度は裸のまま入ろうとして、危うく全裸形態を衛兵に見つかりそうになったところでフォースに咎められたりはしたのだが。

  **  **  **

「シェイディンハルにとうちゃーく」
『……ハァ』
 朗らかな表情を見せるリアとは対照的に、フォースがやけに気疲れしたような声を上げる。
 ただのAIのくせに。
「さて、さっそく聞き込みをしても良いんじゃが…実際、あんまり急ぎ解決せねばならんような案件でもないしのー」
『なら徒歩で来ても良かったじゃないですか…』
「なんじゃ、妙に低いトーンで話しよってからに。それにバイクで移動できると言ったのはそっちであろう」
『もうちょっと慎重に行動すると思ってたんですよ、あなたはっ!』
「バカが見るー、ブタのケツー。モヒカンが見るー、国王号のケツー」
『突っ込みませんよ』
「ちぇー」
 冷たくあしらうフォースに、リアは不服そうに唇を尖らせる。
 とりあえず宿を予約し、しばらく観光したのちローランドのそっくりさんを探そう、という方針で活動することにしたリアは、さっそくシェイディンハルの街に入ってすぐの場所にあるニューランズ旅館に向かった。
 だが……

  **  **  **

「なんじゃ、すぐに見つかってしまったではないか」
『まったくですね』



「どうかしたかい、お嬢さん?」
 ニューランズ旅館の待合室にて、暖炉の前で軽食を取っていた男はまさしくレイナルド・ジェメインにそっくりだった。
「外見だけでなく服装のセンスまでクリソツとはのー。そりゃあ、本人と間違われもするわい」
「いったい、さっきから何の話をしているのかな?」
 リアの言葉に、レイナルドそっくりの男が首をかしげる。
 どうやら、彼自身はレイナルドを取り巻く諸問題を一切関知していないらしい。もし自分に瓜二つの容姿の人間がいるとわかっていれば、それらしい言葉を聞いただけで何らかの反応を示すはずだ。
 あるいは、何か企みがあって素知らぬフリをしているだけなのか。
「突然で悪いが、ノックしてもしもーし、おぬし名はなんと申す」
「それ自分がまず名乗るべき台詞じゃ…まあいいや、僕はギルバート。ギルバート・ジェメイン。君の名前は?」
「ワシはHEL-00c、皆からはリアと呼ばれておる」
「なにそれ、新手の厨二病?」
「やはりそーいう反応になるかのー」
 まるっきり真面目に取り合おうとしない男に対し、リアは苦笑いした。
 しかし、ギルバート・ジェメインだと?
 同姓とは、もしや親族かなにかか?だとしたら、むしろその可能性を示唆しなかったレイナルドのほうに落ち度があるように思えるのだが…しかしまあ、酔っ払いに何を期待しても無駄か。
「ところでおぬし、レイナルド・ジェメインという名に聞き覚えはあるかの?」
「レイナルド?……いや、知らないな」
 リアの質問に対し、ギルバートはたっぷり10秒ほど思案してから返答した。
 そのときの表情の変化を解析したフォースが、リアに耳打ちする。
『彼、ウソをついてますね』
「まぁ、予想された反応ではあるがの。致し方あるまい」
 それまで椅子にかけていたリアは立ち上がると、ドレスをぱたぱたとはたきながら、ギルバートに向かって言った。
「じつはコロールにレイナルド・ジェメインという、おぬしのそっくりさんがおってな。自分はシェイディンハルになど行ったことがないのに、人に会うたびシェイディンハルで見かけたと言われるのでほとほと困っている、なんとかしてくれ、と頼まれたのだが。おぬしが何も関知しておらん以上、ここに長居をする意味はないかの」
 そして、ギルバートに背を向ける。
「や、手間をかけさせてスマンかったな。邪魔したの」
「待ってくれ」
 踵を返して立ち去ろうとするリアを、ギルバートが呼び止めた。
「さっきは、その…ウソをついた。すまなかった、レイナルドは僕の…生き別れた兄の名前なんだ」
「ほう、生き別れの、とな。レイナルドはそのような話はしなかったがの」
「なにせ昔の話だから。できれば、僕を彼のところまで連れて行ってくれないか?」
「それはいいが」
 ニヤリ、リアは意地の悪い笑みを浮かべた。
「さっきはなぜウソをついた?」
「まさか、いまさらレイナルドの名前を聞くことがあるとは思ってなかった。新手の詐欺か何かかと思って、その…気が動転したんだ」
「これだから人間は面白い」
 この非合理な存在よ。
 そう言うと、リアは繰り返し笑った。もちろん、ギルバートには「こじらせた厨二病」としか思われなかったが。

  **  **  **

「できれば、急ぎたいんだが…馬車じゃ駄目なのかい?」
「イヤ、どうもわし馬と相性が悪いらしくての」
「馬が怖いとか」
「アホ抜かせ」
 つい最近、似たようなやり取りをしたような…
 そんなことを考えながら、リアは馬車を借りようとするギルバートをどうにかして思い留まらせようとしていた。
 もちろん、それにギルバートは反対してくるわけで。
「できるだけ急ぎたいのに、シェイディンハルからコロールまでわざわざ徒歩で移動するとかわけがわからないよ!」
「えぇい、ナマっちろい練り物みたいな台詞を抜かすな!きさま健康優良男児であろうが、健脚という言葉を知らんか!それに、急がずともレイナルドは逃げゃーせんわい!」
「非合理だ!」
「…しゃあーないのー」
 しばらく歩いたところでリアは立ち止まると、ギルバートに「ビシィ」と指を突きつけ、言った。
「わしがこれから乗り物を用意してやるから、ちぃと待っておれ。あと、わしが『良い』と言うまで絶対にこっちを見てはならんぞ」
「なに、小用?」
「ちがわいっ!とにかくこっちを見るなというのだ!」
「恩返しなら間に合ってるよ?」
「わしゃ鶴かっ!」
 ギルバートとノリツッコミを繰り返しながらも、リアはどうにかして岩陰に隠れる。
 間もなく、リアが隠れた岩陰から「ギャキィィィン!!」という轟音とともにスパークが発生し、近くで様子を窺っていた野生動物たちが一斉に逃げ出した。
「な、なんだ?」
 あまりの異容に気を取られ、リアの言いつけをやぶって様子を見に行こうとするギルバート。
 しかし一歩足を踏み出したところで、目の前に黒い金属のカタマリ…2輪駆動形態に変形したリアが出現し、あやうく腰を抜かしそうになった。



「待たせたっ!」
「…キミ、さっきの女の子?」
『ゼロシー!あなたはもっと警戒すべきですっ!!』
 機体のマイク部分から音声を発するリアに、フォースが思わず抗議の声を上げる。
 どうやら、あまりに動揺するとリアのことを「ゼロシー」と呼んでしまうらしい、これがなにを意味するのかはわからないが……
 一方で、一応バイクをリアだと認識できたらしいギルバートが顔をしかめたまま質問した。
「えーと…どういうこと?」
「魔法じゃ!魔法で変身したのじゃ!」
「マジ?」
 この世界ではとりあえず説明のつかないものを「魔法だ」と言っておけば納得してもらえるだろう、というリアの認識はいささか短絡的に過ぎたが、それでも有効的なのは間違いない。
 下手に隠そうとしたり、あるいは無理に正確な説明をしようとすれば、そのほうが面倒事のきっかけになりかねないだろう。
「さぁ、遠慮せんと早ぅわしの背に乗るのじゃ!」
「大丈夫なのかい?ていうか、なんか小さくない?」
「贅沢申すな!」
 こうして、リアとギルバートの「バイクで行くシロディールの旅~シェイディンハルからコロール編~」がはじまったのであった。



「もうちょっとスピード、スピード落としてぁぁああああああっっっ!」
「如何した小童、おい小童ーーーっ!?」
 最初はリアがスピードの加減をできなかったため、ギルバートが振り落とされて危うく死にそうになったり、またしてもコロールの城下町へと続く門の目の前で停止したため衛兵に攻撃されそうになったりなどアクシデントはあったが……

  **  **  **

 なにはともあれ無事にコロールに到着した2人は、さっそくレイナルドが待つグレイ・メア亭へと向かうのであった。
「レイナルドは元気かい?その、健康を害したりはしていないかな」
「その点では心配ない。多少、アル中の気はあるがの」
「え~…」
 そんな話をしながら、ギルバートが入り口のドアノブに手をかけようとしたとき。
『テメーいい加減にしろコンダラーッ!』
『うるせークソババアーッ!俺のマグナムを喰らいやがれーッ!!』
 ガシャーン。
 なにかが割れるような音とともに、凄まじい怒鳴り声が聞こえてくる。
「なんじゃ、いったい…」
「まさか、レイナルドの身に何かが!?レイナルドーッ!!」
 なにか悪い予感がしたのか、ギルバートが勢いよく扉を開け放ち、グレイ・メア亭に突入する!



「兄貴ィーーーーーーッ」
 レイナルドが叫び声を上げる、その先にはッ!
 酔っ払ったまま全裸で暴れまわるレイナルドと、ブチ切れた店主のエムフリッドの姿があった!!
 傍らの席では、完全に酔っているヴァルス・オディールが「いいぞもっとやれー!」と歓声を上げている。
「これ以上調子こいてっとマジでブチ殺すぞこんクソガキャアーッ!」
「やかましー!裸だったら何が悪いーっ!」
 なんというか、幼少期に生き別れた親族を紹介できるような雰囲気ではない。
 およそ考えうる最悪の状況に思考回路がエラーを起こしそうになりながらも、リアはギルバートの心情が気になり、チラリと傍らの賓客の姿を盗み見る。
「やっぱりあんちゃんだー!本当に本物のあんちゃんだー!」
 ギルバートは、兄との再会に素直に感動しているようだ。
 どうしようもなくカオスな状況を前に、リアとフォースは誤差0.007秒の間を置いてほぼ同時に発声した。
「なにこれ」
『なにこれ』




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2013/05/03 (Fri)13:01



 どうも、グレアムです。
 なんとなく思いつきでHITMANの動画を作ってみました。相変わらずの1発ネタですが。なんというか、「こういうB級映画あるよね」みたいな感じで。念のため言っておきますが、実際はこんな話じゃないですからね!?
 ちなみにタグの「中の人ネタ」というのは、最初に出てきた47の名前が中の人と同じというネタです。別にDavid Bateson氏が司書官だったわけではありませんので念のため。というかDavid氏ってコメディアンでもあるのね…ホント、Billy Connolly(映画「処刑人」でイル・ドゥーチェを演じた人)といい、イギリスのコメディアンは多芸な人が多いな!
 ちなみに動画の素材はすべてHITMAN : Blood Moneyから用意しています。いや俺が持ってるPC版ってBMだけなんで…いちおうSilent Assassin、Contractはコンシューマでクリアしました。Codename47はデモ版のみ、最新作のAbsolusionはどうも食指が動かないんだよなー。だってIO製作でもKane&Lynchのチームだぜ!?期待できん。スクエニどうのはさすがに的外れな批判だとは思うけども。

 そういや、実写映画のほうはどうなったんでしょうね。当初は3部作って話だった気が…たしかに原作とは全然違うんだけど、あれはあれで好きだったんだけどなぁ。



2013/05/01 (Wed)10:11
↑BLOOD2オープニングムービー。カッコイイよなあ。
 このゲームはムービーシーンにもうちょっと力を入れても良かったと思う。

 先日BLOODを紹介した手前、せっかくなのでBLOOD2も久しぶりに遊んでみた。
 1年くらい前に再インストールしたとき、すでに最新のパッチを当ててAUTOEXEC.CFGも調整済みだったのでスムーズにプレイできたことは過去の俺に感謝したい。
 ちなみにグレさんが所持しているのはソースネクスト版の日本語マニュアル版、実をいうとグレさんがBLOODに触れたのはこの2が先である。現在はダウンロード販売で安く手軽に購入できるそうだが、形として手元に残しておきたい主義のグレさんとしては、やはり昔(もう何年前か忘れた)そんなに安くなかったにも関わらず中古を見つけたときに購入した自分を褒めてあげたい。


↑遠くに見える月が非常に美しい。

 舞台は前作から100年後の2028年(つまり前作は1928年の出来事)、あと15年くらい先の未来ですね。ちなみにBLOOD2の発売は今から15年前です、なんか奇妙な因縁を感じる。あと15年程度ならM16もまだ現役だよなぁきっと。
 とりあえず舞台がガラリと変わったことで前作ファンからの評価はあまり高くないんですが、前作とはまったく別モノ、というか、趣向の異なる作品として遊べばかなり楽しめると思います。というか今回ひさしぶりにプレイしてみて、結構フツーに楽しかったのが自分でも意外でした。
 前作がゴシックホラー、本作がSci-fiアクションということで。SFホラーと言うには、ちとホラー要素が薄い気がする(けど序盤のマンションのステージなんかはかなりホラー)。一応、最後らへんでDOOMのHELLっぽいステージは出てくるんですけどね。元々SFとブラッド&ゴアはよくある組み合わせなんで、血が出て内臓飛び出せばホラーかっていうと、そうでもないのがなんとも。


↑最初のステージが電車から始まるという映画的シーケンス。
 もちろん一般人も巻き込みまくりです。

 相変わらずケイレブの魅力がぱないですね、前作以上によく喋るし、台詞がいちいちカッコいい。いかしてる。Monolithはこんな魅力的なキャラを過去の遺産にしとくのは勿体無いよホント。
 まあその反面、他のキャラでプレイする意味がまったくないってのは…うん、まあ、仕方ないね。
 本作では、前作で死亡したザ・チョーズンの3人が復活してプレイヤーとして使用できるんですが、イシュマエルはともかく、恋人のオフィーリアのキャラ変わり過ぎ問題。ガブリエラ(=ガブリエル)に至っては性別変わってるし。ジョジョか。本人は「It's a long story.」とか言って誤魔化してますけど。たぶん前作ファンの評判良くなかったのは、このへんのキャラ改変が一番大きかったんじゃないかと思うんですけどね。イシュマエルはいいキャラしてるんだけど、他がなぁ…というか、オフィーリアがなぁ。


↑スタイリッシュに生まれ変わったファナティック。
 背のシリンダーの薬液を体内に注入すれば、自爆兵器に早変わり。

 グラフィックは、当時のものとしてはかなりキレイですね。
 よく言われる、エフェクト関連については正直あまりピンと来ないんですが、一人称視点での武器のモデリングとか、テクスチャなんかがすげぇなと。いや他と比較してどうこう、てんじゃないですけどね。当時FPSって他に何が出てましたっけ?
 あとは薬莢ですよ!Monolithといえば薬莢、これは外せない。とにかくすげーリアルなんですよ、まずパッと見で角ばって見えないってのが凄い。テクスチャも美しい、透明感のある質感といい、先端の焼けた感じの表現とかも素晴らしい。こんだけ美しい薬莢がドバドバ出るゲーム、他に知りませんよ俺は、未だに。でもって薬莢が落下したときの効果音もすげーいいんだコレが。
 そうそう効果音、効果音も外せないね。このゲーム、効果音にもすげーこだわってます。なんせ(ボイスデータ含む)効果音が格納されてるSOUND.REZを解凍してみたところ、2400近いwavデータが入ってたからね。なんに使ったんだよそんなに!(笑)ボイスデータと合わせても多すぎる。
 こういう、一見無駄にも思えるコダワリがMonolithたる由縁だと思ってるんだけど、最近はどうも、そういう執念というか、ゲーム製作にかける妄執のようなものが感じられなくて辛い。もう初期のメンバーとかほとんど残ってないのかな。


↑これがMonolith謹製の薬莢だぁーっ!
 効果音と合わせて、未だにグレさん的ベストオブ薬莢の座は揺るがない。

 あとはやはりあれですな、パッチについても触れておかねばなりませんな。
 最新のパッチを当てると、なんとゲームプレイ中にBGMが再生されるんですよ!というか、以前プレイした古いバージョンだとBGMが再生されなかったんですよね。ひょっとしたら環境依存の問題だったのかもしれないけど。
 BGMの有無はプレイのモチベーションにかなり関わってくるので、もし古いバージョンでプレイしていてBGMが再生されない方は最新のパッチを当てましょう。「2.x~以降のパッチはキーバインドがめんどくさいからヤダヤダーっ!」という人も、めんどくさがらずにちゃんと設定しましょうね。とりあえずAUTOEXEC.CFGをまっさらにしたら、あとはゲーム中にオプションで設定すればいいだけなので楽勝です。別にノートパッドとにらめっこしながら手打ちでバインドする必要はありませんので。
 あと、新しいバージョンだとオートセーブ機能が実装されてます。たしか古いバージョンだとオートセーブなかったと思うんですよね。けっこうエラー落ちとかもありますし、わりと死にやすいゲームでもあるので、ステージ開始時にオートセーブされる仕様は有り難いハズ。ただしステージ開始直後にエラー落ちした場合は前のステージから始めることになります。さすがMonolith、詰めが甘いッ…!
 それと、これはパッチとは別に気になっていることなんだけど、デモ版では人間キャラをバラバラにすると初代BLOODみたく目玉が飛び散るんですが、なぜか製品版だとオミットされてるっぽいんですよね。最新パッチ当てると追加されるのかなーと思いきや、そんなことはなく。
 とにかく、他のプレイヤーはちゃんと目玉が飛び散っているのか、それともあれはデモ版のみの仕様だったのか、それが長年ずっと気になっているんですよ。誰か情報持ってないですか?製品版だと目玉の形したアイテムが存在するんで、それとの混同を避ける形でオミットされたのかなーとか思ってるんですが…でもあれ、ぶっちゃけ使わないしなあ。うーむ。




2013/04/29 (Mon)16:46
「ミスタ・ドレイク、帝都までの旅は快適でしたかな?」
「おかげさまでね」



 帝都神殿地区、セリドゥア邸地下。
 <高潔なる血の一団>という、ヴァンパイア・ハンターの組合から協力を要請されたドレイクは、コロールから帝都まで馬車に乗って移動してきたのだった。
 御者の言葉が、今でも耳にこびりついている。
『なんでも、戦士ギルドから大層な信頼を得ているとか。頼りにしていますよ』
「誰かが口を滑らせたな…」
 ドレイク自身は目立つような行動を控えているつもりだが、それでも数々の面倒事に首を突っ込んでいるうちに、それなりの評判が広まってしまったらしい。
 とはいえ、どうせ帝都には立ち寄るつもりだったし、この懐の重み…手付け金として受け取った金貨100枚…これは駄賃としては悪くない額だ。目的あっての旅とはいえ、旅費が尽きてしまえば身動きが取れなくなるのは確かなわけで。
 まあ、稼げるうちに稼いでおくか……
「つい最近、帝都に出没した吸血鬼の討伐を依頼したいのです。お恥ずかしながら、私が相対したときは不意を突かれましてね。それ以上に、奴は強い。そんじょそこいらの戦士では歯が立たぬのです」
「なるほど。帝都衛兵が総出で迎え撃っても捕縛できなかったと聞きますからな」
 ワインボトルに手を伸ばしながら、ドレイクは依頼人のセリドゥアの容姿をチラリと観察した。
 色素の薄い、黄色の肌。ソフトクリームみたいな髪。アルトマー(ハイエルフ)ってのはみんな、こんなナリなのか?貴族然とした態度も似たり寄ったりだしな。
 そういえば、ユンバカノもこんな感じだったな。そっくりだ。
 そんなことを思い…ぶるぶる、ドレイクは首を振った。
 …また裏のある仕事だ、なんてのは御免だ。
「如何されましたか?具合でも優れませんか」
「なんでもない。昼飯の食い合わせが悪くてね」
 セリドゥアの気遣いを、ドレイクは一笑に伏した。
「で、その吸血鬼…ローランド・ジェンセリックと言いましたか。行き先に心当たりなどは?」
「だいたいの見当はついています。あの男は、しばしば恋人…レルフィーナといいます。残念ながらあの男に惨殺されました。酷い話です…彼女とともに、帝都から少し離れた場所にある別荘に立ち寄っていました。おそらく、そこにいるものかと」
「…あなたがそれを知っている、ということにヤツが勘付いていると思いますか?」
「恐らくは」
「ならば、長居は無用ですな」
 そう言って、ドレイクは席を立った。



「気をつけたほうがいい。吸血鬼は強敵だ…過去に戦ったことは?」
「いや」
「連中に噛まれると、感染して自分も吸血鬼になってしまう。用心することだ」
 屋敷を出ようとしたところで、ドレイクは2人の男に呼び止められた。セリドゥアの部下らしい。
 アルゴニアンのグレイ=スロートと、ダンマー(ダークエルフ)のシルベン・ドロヴァスといったか。彼らも一団のメンバーらしい。おそらく過去に吸血鬼と対決したことがあるのだろう、先達の言うことは聞いておくものだ。
「吸血鬼には十字架とニンニクが効果的だと聞いたことがあるが、本当か?」
「迷信だね。十字架を前に恐れをなす吸血鬼など見たことがないし、ニンニクも…そうだな、中にはそういうのが苦手な個体もいるかもしれないが」
「銀製の武器でなければ効果がない、というのは?」
「いや。奴らは霊体ではないから、物理的な攻撃でも殺せる。といっても、自然治癒能力や反射神経が常人離れしているから、かなり骨の折れる仕事になるだろうね」
 フム、鉄の武器でも殺せるというのは朗報だな…その点でのみ、ドレイクは胸を撫で下ろした。弱点らしい弱点がないのは意外だったが、それは小細工をする必要がないことの裏返しでもあるわけで。
 シロディールでにおいてヴァンパイア・ハンターというのはそこそこメジャーな職業らしく、そういった稼業を生業にしている人間が、特に策を弄すことなく吸血鬼と対峙しているのであれば、自分にもやれるだろう。

  **  **  **

 日が暮れる前に山荘に着けたのは良い兆候だった。
 太陽光は吸血鬼にとって大敵だ。そのため昼間は寝て過ごし、夜になってから活動するパターンがほとんどだという。せっかくだから、寝ていてくれると手間が省けるのだが。
 ドガンッ!
 扉を蹴り開けると同時に、ドレイクはスラリと鞘からアカヴィリ刀を抜き放つ。
 目の前には、突然の闖入者の姿に驚きおののく男の姿があった。人相特徴は、セリドゥアの部下であるギレン・ノルヴァロから聞いたものと一致している。
「お前、ローランド・ジェンセリックか」
「な、なんだお前は!?」
 そんなことを聞いてどうする、といった態度でローランドが怒鳴り返してくる。
 否定しない。クロか。
 相手が抵抗する前にカタをつけるべく、ドレイクはアカヴィリ刀を一閃させる。ひとまず相手の能力を測るため、腰を入れずに放った一撃だったが…ローランドはその一太刀を一身に受けると、血を噴き出しながら倒れた。



「……!?」
 避けようともしなかった、だと?
 すでに事切れてるであろうローランドの身体を眺めながら、ドレイクは思わず拍子抜けする。
「シロディールの吸血鬼、どんなものかと思ったが…買いかぶりすぎたか」
 少しは骨のある相手と戦えるものだと思っていたが。
 しかしまあ、とりあえず任務は果たしたわけだ。あとはセリドゥアに報告して、せいぜい報奨金をむしり取ってやるかな…そう思い、この場から立ち去ろうとした、そのとき。
 ガチャリ。
 不意に扉が開く音が聞こえ、ドレイクは反射的に返す刀を突きつける。
「お前は…」
「なに、してんですか」
 少女の足元に転がる、食料品が入った袋。
 ドレイクの前に現れたのは、過去に何度か対面したことのある人物だった。
 ミレニア・マクドゥーガル…たしか、そんな名前だった。錬金術師シンデリオンの弟子で、コロールに住むアルゴニアンの娘ダー=マの親友。
 あまり深く付き合ったことはないが、それにしても、なんでこいつがここに?
「お前、危ないところだったぞ。こいつは吸血鬼だ…しかし、なんだってこんなのと関わってたんだ、いったい」
「…違います」
「なに?」
「バカ。バカ。バァーーーカッ!」
「あぁ!?」
 親切心から忠告したはずが、なぜか罵倒されたため、ドレイクはつい荒っぽい声を返してしまった。
 しかし、それよりも気になることがある。こいつ、ひょっとして俺よりも前にこの件に関わっていたんじゃないのか?床に転がる食料は、明らかにローランドのために用意されたものだ。
 もしローランドが、セリドゥア達の言ったように凶悪な吸血鬼であったなら…そもそも、こんな状況にはならないはず。
 嫌な予感がする……
 口を開きかけたドレイクより先に、ミレニアが強い口調で問いかけてくる。
「セリドゥアに頼まれたんでしょう」
 それは、質問ではなかった。確信だった。
「…なんで、お前がその名前を知ってる?」
 そのドレイクの言葉には答えず、ミレニアはローランドの亡骸に近づくと、そっとひざまずいた。



「ごめん、ごめんね?あたし、なんにもできなかったよ…」
 ローランドの亡骸に囁きかけながら、ミレニアは大粒の涙を流していた。
 ついさっき自分が手にかけたばかりの男に泣きすがる少女の後姿を見つめながら、ドレイクはどうしようもない悔恨の念が胸の中で膨れ上がっていくのを感じる。
 もう彼女に聞くまでもない、真相がどうであったかなど…しかし、それでもドレイクは訊ねずにはいられなかった。
「なあ、頼む。事情を説明してくれ。お前、何を知ってる…?」
 ドレイクの言葉に、最初ミレニアは反応しなかった。ドレイクがもう1度口を開きかけたそのとき、ミレニアは物憂げな顔を少しだけ上げると、ぽつり、ぽつりと真相を語りはじめた。

  **  **  **

 話は、ローランドとの偶然の出会いからはじまった。
 そして彼に、吸血鬼特有の身体的特徴が何もなかったこと。彼の口から、恋人を殺したのがセリドゥアで、自分は罪を被せられたまま命懸けで帝都から脱出したと聞かされたこと。彼は、そのまま逃亡せずセリドゥアと決着をつけるつもりでいたこと。
 最後に、ローランドの自室で見つけた、恋人からの手紙。
 すべてを聞いたドレイクは、山荘から出るとすぐミレニアに言った。
「俺がセリドゥアと決着をつける。お前はついて来るな」



 もちろん、その台詞は手前勝手の最たるものだった。自ら手を汚しておいて、そのうえ殺した相手の仇を取るというのだから。
 当然、そんな台詞でミレニアを納得させることができるはずもない。
「イヤです。そもそもあたし、約束したんです。彼に協力して、レルフィーナさんの仇を取るって。だから、彼の仇を取るのも、あたしじゃなきゃダメなんです」
「危険すぎる。ヤツは公権力も味方につけてるんだぞ」
「公僕なんか怖くないよ」
「それじゃあ、言い替えよう」
 ドレイクは振り返り、いままでまともに見れなかったミレニアの顔を正面から見つめる。
「俺にやらせてくれ。もちろん、こんなことで罪滅ぼしができるなんて思っちゃいない。だが、俺は不器用な男でな…こんな形でしか、死者に報いてやれんのだ。頼む」
 そう言って、ドレイクはミレニアに背を向けた。
 ミレニアはついて来なかった。ついて来るかとも思ったが、そうはしなかった。
 それは、少なからずミレニアがドレイクの非道を許したことを意味していた。そのことに対しドレイクは感謝の意を述べたかったが、それはやらなかった。それは野暮というものだ。
 そんなことを考えていたドレイクの代わりに、ミレニアが口を開いた。
「わかった、あなたに全部任せる。絶対に仇を取ってね」
「応(おう)」
「必ず殺して。容赦なく」
 ミレニアの言葉に、ドレイクは目を丸くする。
 おいおい、女の子が口にしていい台詞じゃないぞ…しかしミレニアの瞳に宿る意思の光を見て、ドレイクは悟った。
 彼女は戯れや一時の感情の昂ぶりで、今の言葉を口にしたわけじゃない。固い意志を胸に、そうすることが本当に正しいと信じて、言ったのだ。
 ひょっとして、こいつも「ワケあり」なのか……?
 しかし、今はミレニアの素性を詮索するよりも先にやるべきことがある。
 ドレイクは足を踏み出すと、贖罪のための旅路を歩みはじめた。

  **  **  **

 セリドゥア邸には、誰もいなかった。
 予想できたことではあるが…手掛かりを探して回っていたドレイクは、地下室で1枚の手紙を発見した。



『ドレイク氏へ…我々高潔の血の一団は、現在<追悼の洞窟>と呼ばれる場所で集会を開いています。戦没者を祀るための、由緒正しき場所です。もしローランドの討伐に成功した暁には、貴方もこちらへおいでになってください。先祖の墓の前で、貴方の名誉を称えたいと思っています。セリドゥア』
「どういうつもりだ…?」
 てっきり真相を究明された場合に備えて行方をくらませたものだとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
 考えられるとすれば、罠か…ドレイクが真相を暴こうが暴くまいが、最初から始末するつもりでいたか。
「いいだろう。その挑戦に乗ってやる」
 もし相手が策を弄しているのであれば、こちらは正面から乗り込んで叩き潰すまでだ。

  **  **  **

『シイイィィィィィィィッッッ!!』
「やかましいぜ」



 ガキイィィィッ!
 追悼洞窟に足を踏み入れた途端、ドレイクはアンデッド・モンスターからの襲撃を受けた。
「なにが戦没者の追悼だ、バケモノで溢れ返ってるじゃねぇか…」
 そう言って、ドレイクはスケルトンの鎧に深々と突き刺したアカヴィリ刀を抜き、鞘に収める。
 どうやらこの洞窟は吸血鬼どもの隠れ家として利用されているらしい、あたりには吸血鬼やら、吸血鬼になりきれず腐り落ちた<生ける屍>が我が物顔で徘徊している。
 次々と襲いかかってくる化け物を一刀のもとに屠りながら、ドレイクは洞窟の最深部へと向かっていった。
「吸血鬼、さんざん脅しを受けたからどれほど驚異的な存在かと思ったが、たいしたことはねぇな」
「ほう、雑魚を倒しただけで玄人気取りかね?」
 やがてドレイクの目の前に、悪趣味な祭壇が姿を現した。
 朽ちた数々の棺桶、あちこちにぶら下げられた無数の死体。その前で、グロテスクなオブジェの主(あるじ)然と、セリドゥアが腕を組んで佇んでいた。彼の周囲には、屋敷にいた3人の部下の姿も見える。



「全員吸血鬼だったのか。ヴァンパイア・ハンターの組合が聞いて呆れるぜ」
「なに、木を隠すなら森の中…というわけですよ。それにしても、ここまで生きて辿り着くとは少々予想外でした。どうやら噂で聞いていたより腕が立つようですね」
「俺を殺したいなら軍隊でも連れてきな、カビくせぇキノコ野郎」
「その軽口がいつまでもつか、見ものですな」
「俺を嵌めたな。罪もない人間を殺させやがって」
「なに、貴方ローランドを殺したのですか?」
 そう言って、セリドゥアは哄笑を上げた。
「なんとまぁ!てっきり、ローランドに説得されて向かってきたものだとばかり思っていましたよ!あっはははは!馬鹿晒しに来たとはこのことだ」
「なぜレルフィーナを狙った」
「美しいものを手に入れたいと思うのは生物の本能でしょう?ローランドみたいな抜け作には勿体無かったですよ、彼女は。だからローランドが帝都を離れた隙にちょっとした催眠術で篭絡し、親交を深めたのです。なかなか楽しかったですよ?彼女の具合ときたら…あの世のローランドにも聞かせてやりたかったくらいだ、我々の過ごした淫蕩の日々をね!」
「そうかい」
「まあ、トカゲの貴方にこういった愛憎の話は無縁でしょう。そろそろこの馬鹿げた喜劇も終わりにしようじゃありませんか…ギレン、グレイ=トゥース、シルベン。狩りの時間です」
 セリドゥアの命令を受けて、3人の部下達が次々に剣を抜き放つ。
 その一方で、ドレイクはアカヴィリ刀の柄にすら手をかけていない状態で、セリドゥアに向かって言った。
「お前、俺の本気が見たいか」
「……は?」
「俺の本気が見たいか、と聞いたんだ」
「なにを言い出すかと思えば。えぇ、えぇ。是非とも見せて頂きたいですな、貴方の言う本気とやらを」
「そうかい」
 そう呟くと、ドレイクは笑みを浮かべた。牙を剥き出しにして見せる、獣のような笑みを。
「俺はいま、機嫌が悪い。人生で上から数えたほうが早いくらいにな。だから、手加減はできんぞ」
「機嫌が悪い?手加減?貴方という人は…いったい、どこまで大根役者なのだか。まあいいでしょう、喜劇の締めにはうってつけだ。せいぜい、格好をつけながら死ぬといい」
 そう言って、セリドゥアは腕を振り下ろす。その動きが合図となり、3人の部下達がいっせいに襲いかかってきた。
 ドレイクはアカヴィリ刀の柄に手をかけ、目を細める。



 バン!
 ドレイクが抜刀すると同時に凄まじい衝撃波が発生し、3人の部下達の上半身がいっせいに砕け散る。おびただしい量の鮮血が噴き出し、天井を紅く染め上げた。
 あまりに強い剣圧によって地面が抉られ、まるで突風に晒された砂漠にいるかの如く激しい砂嵐が巻き起こる。
「醒走奇梓薙陀一刀流奥技、砕牙・肆式(サイガ・シシキ)」
「な、な、な、なあぁぁぁぁ…!?」
 一瞬で部下が血煙と化した光景を目前に、セリドゥアが絶句する。
「ば、ばっ馬鹿な、たったの一撃で3人を……!!」
「…たったの一撃だと?」
 セリドゥアの言葉に、ドレイクが嘲笑を返す。
「お前、今の太刀筋が見えなかったのか?俺が、お前の可愛い部下を何度斬りつけたか…見えもしなかったってわけか」
「ほざくなッ!」
 蒼白な表情のまま、セリドゥアがドレイクに斬りかかる。
 しかしセリドゥアの両足が地面から離れた瞬間、ふたたびドレイクの手の中で白刃が一閃した。



「醒走奇梓薙陀一刀流奥技、來閃・零式(ライセン・ゼロシキ)」
「こ、こっ…ぁぁぁ……」
 剣を振りかぶったままの姿勢で、セリドゥアが真っ二つに絶ち斬られる。
 ズシャリ、地面に転がるセリドゥアの無残な死体には目もくれず、ドレイクはアカヴィリ刀を鞘に収めると、いままでの覇気が急に失われていくのを感じた。
「…クソッ、全然気が晴れねェよ……!!」
 それどころか、怒りに任せて剣を振るった自分に対しての憤りまでこみ上げてくる。
 たしかに仇は討った。しかし、だからといって何が変わるわけでもない。ローランドを殺した罪は消えないし、結局、自分は死体を増やしただけなのだ。
 やるせない想いを抱えたまま、ドレイクは追悼洞窟を去った。

  **  **  **

 ガキッ、ガキッ、ガキッ。
「…… …… ……」
 シャベルを握る手が冷たく、かじかんでくる。
 ブラックマーシュでは雨など日常茶飯事だったが、これほどまでに沈鬱な気分になるものだと思ったことはなかった。まるで自分を責めるかのように水滴が容赦なく顔面を打擲し、雨脚は激しくなるばかりだ。
 ドレイクは土を埋める手を止めると、目の前に立つ墓石をじっと見つめた。



『ローランドとレルフィーナの魂に安らぎを。マーラの加護のもと、2度と分かたれることなきよう』
 ドレイクはいま、ローランドが隠れ家として利用していた山荘にいた。
 もう2度と利用されることがないであろう山荘の裏、花が咲く綺麗な場所に、ドレイクはローランドとレルフィーナの遺体を埋めたのだった。
 レルフィーナの遺体は帝都が預かっていたが、ドレイクはよくよく袖の下を払い、無理を言って彼女の遺体を引き取ったのである。もちろん、本当の理由など言えるはずもない。
 そしてドレイクは2人の遺体を同じ場所に埋め、自ら字を彫ったにわか造りの墓標を立てたのである。
「…ただの自己満足だよな、こんなの」
 ここまでやっても、ドレイクの心はまったく満たされなかった。それどころか、自らの愚かしさ、欺瞞ぶりに精神が苛まれるばかりだ。
 シャベルを地面に突き立て、ドレイクは嗚咽を漏らす。
「くそっ…シレーヌ…俺は…結局、間違った殺ししかできないのか……?」
 ドレイクは思い出していた。故郷での出来事を。弟のことを。恋人のことを。
 もうなにもかも無くしてしまった。否、まだ取り返すことができる、そう信じてシロディールまで来た。そのはずだった。
 それなのに……




2013/04/27 (Sat)09:38
 どうも、グレアムです。
 以前「墓まで持っていきたいゲームを1本だけ選ぶとすれば」という題で「Operation Flashpoint : Cold War Crisis」を紹介しましたが、今回はもう1歩踏み込んで「2本目をチョイスするなら何を選ぶか」を書きたいと思います。
 前回のOFPはグレさんに「システム面での革命」をもたらしましたが、今回選んだゲームは「ビジュアル面での革命」をもたらしました。もし「ゲームとして」ではなく「総合芸術として」選択するのであれば、むしろOFPより順位は上がるかもしれません。
 それでは、紹介しよう。


↑「BLOOD」の主人公ケイレブ。
 せっかくなんでイラストを描いてみたぜ。

 「BLOOD」。
 俺がさんざニコニコ用に動画を作っている「F.E.A.R.」シリーズを製作している、Monolith Productions(日本のモノリスソフトとはまったくの無関係。念のため)の処女作にして最高傑作。
 これは俺がダークヒーローに傾倒するきっかけを作ったゲームであり、そして未だにこのゲームの主人公「ケイレブ」を超えるダークヒーローは存在しないとハッキリ断言できる。そして、このゲーム以上にダークな世界観を持つゲームも存在しないと断言できる。


↑ムービーシーンより。解像度と画質ともに荒いのが難点だ。
 もっと綺麗なマスターは存在してないのかな…?

 まず最初に、ざっとストーリーを紹介しておこう。
 舞台は禁酒法時代のアメリカ…をモチーフとしているが、正直、時代考証や舞台設定の考察などはあまり意味がない。大体そのくらいの年代を想定した話だと認識していればいいだろう。
 主人公ケイレブは伝説的な銃使いであり、かつて邪神チェルノボグを崇拝する新興宗教団体カバルのメンバー、それもザ・チョーズン(選ばれし者)と呼ばれる4人の幹部の1人だった。しかし彼は邪神チェルノボグ復活のための生贄として命を奪われ、他のザ・チョーズンのメンバーもチェルノボグ配下の化け物どもに捕らえられてしまった。そしてその中には、ケイレブの恋人オフィーリアの姿も…
 しかし命を落としたケイレブは、どうやってか墓の中からゾンビとして復活した。再び生を得たケイレブは自らとその仲間を裏切り犠牲にした邪神チェルノボグに復讐するため、そして化け物に捕らえられた仲間たちを救うために行動をはじめる。
「 I Live … Again ! 」


↑街灯みたいに頻繁に出てくる惨殺死体。
 少しプレイすればすぐに痛痒はなくなるはずだ。

 ゴシックホラーを基調とし、ブラッド&ゴア(血と残虐表現)を前面に押し出した、アメリカン・コミックばりのケレン味溢れるテイストが特徴の本作。
 とにかく、主人公ケイレブの魅力がハンパない。Stephan Weyte氏の低いトーンの演技が最高に極まってるし、台詞はいちいち粋だし(だいたい映画の台詞をモチーフにしたものが多い)、たまに上げる狂気的な笑い声などはクセになる。
 それに、容赦のないストーリー展開。15年以上も前のゲームにネタバレもクソもないだろうから言ってしまうが、ケイレブは仲間の誰1人として助けることができない。彼が辿り着いた頃には既に手遅れで、プレイヤーは失意のままステージボスと戦うことになる。
 そしてケイレブの、仲間の埋葬方法もユニークだ。恋人のオフィーリアにはガソリンをかけて火を放ち、イシュマエルは彼を喰らった双頭の獣ごと爆弾で吹き飛ばし、蜘蛛の繭に捕らえられたガブリエルに至っては「友よ、俺に力をくれ」と言いながらケイレブが彼の心臓を引きずり出しむさぼり喰うという壮絶さ。


↑オフィーリアの死。
 ケイレブの悲痛な叫びと、怒りに満ちた声が響く。

 そんな彼は、ステージ中に路傍の小石ばりに頻繁に登場する猟奇的な惨殺死体を見ても動揺することはない。せいぜい軽口を言って笑うくらいだ。一般人を殺してもゲーム的なペナルティが発生しないどころか、一般人を殺さなければ先に進むための鍵が手に入らない箇所があるため、これはもう製作側が「無関係な人間も構わず殺せ」と奨励しているのであり、まったく言い訳できない確信犯だ。
 なにより敵もケイレブを攻撃する際、一般人も平気で巻き込んで攻撃してくる。というか、まあステージ中に登場するオブジェ化した死体はすべてカバルがこしらえたものだから、当然といえば当然なのだが。


↑信号弾を喰らって炎上した敵の末路。
 使用武器によって敵の死に様が違う、この異様な作り込み。

 このゲームのもっともタチの悪いところは、プレイ中に山のように登場する残虐描写を、すべて「ブラックジョーク」として済ませている点だ。
 これで舞台がDOOMやDuke Nukem 3DのようなSFならまだいいが、近代を舞台に写実的に描かれた現実的な世界が舞台なのだから、もうどうしようもない。「現実に有り得るかもしれない光景」をすべてジョークで済ませるのはあまりに乱暴だと思わないか(もし現実にこんな光景は有り得ないと思うなら、世界中で起きた猟奇事件について調べてみるといい。人間の持つ可能性に驚くはずだ)。
 ともかく、こんなゲームを作れるのはまさしく狂気の所業としか言い様がない。そして、俺はBLOODのそんなところに惹かれてしまうのだ。善悪などという曖昧な概念が入り込む余地のない、理不尽な暴力のみが通用する世界に。そしてそれこそがこのゲームの体現する、現実世界に向けた最大のブラックジョークだろう。


↑地面には薬莢が残る。
 このへんの作り込みもMonolithならではだ。

 ともかく、このゲームが俺のイマジネーションに与えた影響は計り知れない。
 敵のビジュアルもいいしね。独自の言語を操る狂信者から、ゾンビにケルベロス、ガーゴイルや死神など、こういう敵がオーソドックスな外観で登場するFPSはむしろ珍しいと思う。それも科学的実験から生まれたモンスターではなく、魔術的、オカルト的な力が源泉というのがいい。こういう黒魔術的なものをモチーフにしたホラーはもっとあって良いと思うが、中々ないのだな、そういうのは。
 とりあえずざっと解説してみたが、うん、あんまり魅力的な紹介文にはなってないな。まあ公共良俗に反する悪趣味なゲームなのは間違いないから、これくらいで良いとも思うが。こういうゲームを変に庇い立てするのも、それはそれでなんか違うよなあ。




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