主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。
http://reverend.sessya.net/
2012/08/15 (Wed)13:52
TES4SSのドレイクを描いてみました。映画版ブレイド(オンドゥルじゃないほう)を観ながら描いたので、まぁポーズがそんな感じで。最近ようやく映画版1作目を観たんですけど結構面白かったです。2作目、3作目とシリーズを追う毎にパワーダウンしていくらしいですが…3作目は手元にあるんだよなあ。いつ観ようか。
映画に出てきたイングラムのカスタム、カッコ良かったなぁ。どっか外装パーツ出してくれないですかね。ネットで調べてみたところMAC-11のようですね(真偽のほどはわからない)。日本国外だと45口径のMAC-10のほうがメジャーなので意外です。
中古のビデオ屋に必ずと言っていいほどTVシリーズ版のDVD1巻目が置いてあるんですが、アレ面白いんですかねぇ。アクション以外に期待する部分がないので(ドラマ部分に見せ場が作れるような設定のストーリーじゃないし)、映画より予算が少ない分、監督の手腕が問われるところですが。
マッドハウス製作のアニメ版は例によってクソつまんなかったので1話目で切りましたけど。あそこ、マトモな脚本と監督がいないの?最近のマッドハウスのアニメ見てても、「肝心の内容がこれじゃあ、頑張ってる作画スタッフが可哀想」っていう以外の感想が出てこないんですけど。作画だけじゃアニメは成り立たないよ。ていうか何度目だこの話題。
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2012/08/12 (Sun)07:46
さーて来週のスタルカーは?
ネームレスです。最近クリアスカイのShockerMODをプレイしてるんですが、Swanp関連のクエストにバグが多くて心が折れそうです。
Oasis入手クエストがどう進めても確実にフリーズしたり、あと最序盤で手に入るはずのケブラーボディアーマーの情報入りフラッシュドライブが後半になっても入手できません。
ちなみに服装はマーセナリー装備がお気に入りです、でもリボルバーを装備すると強制終了します。メイン武装はショットガンで、チェンバーにシェルが送り込まれるモーションの出来が凄すぎて失禁しそうです。
さて次回は、
「死のトラックからの生還者」
「ネームレス、ナターシャと朝からいちゃラブ」
「ナターシャ、ドラグノフを撃つ」
の3本です。
** ** **
えーはい、サザエさんの予告編ふうに書いてみましたが。
ようやくスタルカー小説の2話目が書けたんでその報告です。
http://reverend.sessya.net/stkpc2.html
例年の活動の成果か、夏になると創作のスイッチが入るようです。この調子で次々と他の作品も書けたらいいんですが…
今回の話で判明したのは、
1.ネームレスは死のトラックの生還者で、フリーダムに保護された。
2.ネームレスとナターシャの出会い。
あたりでしょうか。
ネームレスが死のトラックに乗せられる以前の話、フリーダムに保護されてから現在に至るまでのいきさつ、なぜナターシャがゾーンに来なければならなかったのか、などは今後に持ち越しということで。あとナターシャがネームレスに懐くまでの過程とか。
ぶっちゃけ本作は一貫したストーリーがあるわけではなく、過程を楽しむために書いてるので(珍しく)、その気になれば延々と続けられるという。逆に言えばいつでも終わらせられるので、オチだけ考えておいてあとは気分次第ってところで。
しかし趣味全開で書くとどーしてもネームが多くなりがちですね。もうちょっと読みやすくしたほうがいいのかしら…海外文庫を教科書代わりにしてたのがこんなカタチで裏目に出るとは。
今回ちょっとだけキャッキャウフフなシーンがありますが、こういうの昔なら恥ずかしくて書けなかったですが、今はなんかもう普通に楽しいです。金髪美少女いいよね…
じつはナターシャはワケありで日本から逃亡してきてるんですが、女子高生っつっても逃亡中にセーラー服はねーだろって向きもあるとは思いますが。俺もそう思う。よほど削除しようかとも思ったけど、でもセーラー服って日本の女子高生の記号みたいなもんなんで、あえて残しました。あとナターシャ自身が気に入ってるってのもあるんですが、でも国外逃亡中に着るような服じゃねーよな…そのへんのエピソードは今後拾う予定です。
ドラグノフの訓練シーンについてですが、ドラグノフに使うPSO-1スコープって生産国やロット(!)で仕様が違うというワケわかんねー仕様なので、ぶっちゃけシリアスなツッコミは無用な感じになっちゃいましたけど。共産圏ってなんでこんなにめんどくさいの…
ちなみにナターシャの台詞「そんな恥ずかしい台詞をよく平気で」はグレさんが過去に実際に言われた言葉です。マジなハナシ、ロマンチストなのは女よりも男の方だよなー。
ネームレスです。最近クリアスカイのShockerMODをプレイしてるんですが、Swanp関連のクエストにバグが多くて心が折れそうです。
Oasis入手クエストがどう進めても確実にフリーズしたり、あと最序盤で手に入るはずのケブラーボディアーマーの情報入りフラッシュドライブが後半になっても入手できません。
ちなみに服装はマーセナリー装備がお気に入りです、でもリボルバーを装備すると強制終了します。メイン武装はショットガンで、チェンバーにシェルが送り込まれるモーションの出来が凄すぎて失禁しそうです。
さて次回は、
「死のトラックからの生還者」
「ネームレス、ナターシャと朝からいちゃラブ」
「ナターシャ、ドラグノフを撃つ」
の3本です。
** ** **
えーはい、サザエさんの予告編ふうに書いてみましたが。
ようやくスタルカー小説の2話目が書けたんでその報告です。
http://reverend.sessya.net/stkpc2.html
例年の活動の成果か、夏になると創作のスイッチが入るようです。この調子で次々と他の作品も書けたらいいんですが…
今回の話で判明したのは、
1.ネームレスは死のトラックの生還者で、フリーダムに保護された。
2.ネームレスとナターシャの出会い。
あたりでしょうか。
ネームレスが死のトラックに乗せられる以前の話、フリーダムに保護されてから現在に至るまでのいきさつ、なぜナターシャがゾーンに来なければならなかったのか、などは今後に持ち越しということで。あとナターシャがネームレスに懐くまでの過程とか。
ぶっちゃけ本作は一貫したストーリーがあるわけではなく、過程を楽しむために書いてるので(珍しく)、その気になれば延々と続けられるという。逆に言えばいつでも終わらせられるので、オチだけ考えておいてあとは気分次第ってところで。
しかし趣味全開で書くとどーしてもネームが多くなりがちですね。もうちょっと読みやすくしたほうがいいのかしら…海外文庫を教科書代わりにしてたのがこんなカタチで裏目に出るとは。
今回ちょっとだけキャッキャウフフなシーンがありますが、こういうの昔なら恥ずかしくて書けなかったですが、今はなんかもう普通に楽しいです。金髪美少女いいよね…
じつはナターシャはワケありで日本から逃亡してきてるんですが、女子高生っつっても逃亡中にセーラー服はねーだろって向きもあるとは思いますが。俺もそう思う。よほど削除しようかとも思ったけど、でもセーラー服って日本の女子高生の記号みたいなもんなんで、あえて残しました。あとナターシャ自身が気に入ってるってのもあるんですが、でも国外逃亡中に着るような服じゃねーよな…そのへんのエピソードは今後拾う予定です。
ドラグノフの訓練シーンについてですが、ドラグノフに使うPSO-1スコープって生産国やロット(!)で仕様が違うというワケわかんねー仕様なので、ぶっちゃけシリアスなツッコミは無用な感じになっちゃいましたけど。共産圏ってなんでこんなにめんどくさいの…
ちなみにナターシャの台詞「そんな恥ずかしい台詞をよく平気で」はグレさんが過去に実際に言われた言葉です。マジなハナシ、ロマンチストなのは女よりも男の方だよなー。
2012/08/05 (Sun)07:50
わたしの母は、わたしが生まれたときから両腕がなかった。
故郷は、わたしにとってあまり住みやすい環境ではなかった。質素な田舎町で、町中の誰も彼もが家族のような付き合いをしている土地柄にあって、他所からの移住者である両親はそれだけで浮いた存在だった。
かつて<聖騎士><救国の英雄>と呼ばれた父が、なぜあんな何もない土地に住みたがったのか、わたしにはわからない。別の仕事を見つけるでもなく、畑を耕すでもなく、軍から支給される退役恩給だけで細々とした生活を送る日々。
そしてなぜ母の両腕がないのか、わたしは1度もちゃんと説明を受けたことがなかった。父は「重い病気のせいで切り落とさざるを得なかった」と言うが、それが嘘だというのは、父と母の態度を見れば明らかだった。
わからないことが多すぎた。なぜ。
なぜ、あんなにも優しかった両親から、わたしみたいなのが生まれてしまったのだろう。
「ようこそ、聖域へ。たとえ信徒でなくとも、ナイト・マザーはきっと貴女にも祝福を与えてくださるはずだわ」
帝都の西部に位置する都市、シェイディンハル。
ルシエンに促されやって来たダーク・ブラザーフッドの<聖域>、それは廃屋の地下に隠され、合言葉を知らなければ侵入すら適わない秘密の拠点だった。
蝋燭の明かりに照らされた薄暗い地下施設の中、ブラック17は聖域の統括者オチーヴァと対面していた。
「ルシエンが、他でもないここシェイディンハルの聖域に貴女を導いたのは大変に興味深いことね。貴女の実力と前歴を鑑みれば、その…失礼と取られなければ良いのだけれど…もっと冷酷で、徹底した実力主義が支配する聖域へ案内されて然るべきだと思っていたものだから」
アルゴニアンの女の顔に、微妙な感情の機微が浮かんだ。この種族が人間にもわかる範囲で表情を変えるのは珍しい。たぶん彼女は感性が豊かなのだろう、とブラック17は漠然と考えた。
「今後の予定はともかく、しばらくはここが貴女の活動拠点になると思うわ。それと到着して早々申し訳ないのだけれど、早速貴女にやってもらいたい仕事が1件入ってます。ヴィセンテから詳細を尋ねてください」
ヴィセンテ・ヴェスティエリは頬のこけた物静かな男だった。中年にも老人にも見える外観から、実年齢を測るのは難しい。
「ほう、君が例の…御噂はかねがね。わたしはこの聖域に依頼された仕事の管理を担当している、お見知りおきを」
「挨拶はそこそこに。気遣いは無用よ、要件を話して」
「レディである以前に暗殺者であれ、という主義かね?関心するよ、もっともわたし個人としては、もう少しおおらかなほうが好みに合うのだがね。まあいいだろう、今回は帝都の港湾地区に飛んでもらうことになる」
「すこし距離があるわね」
ヴィセンテの余計な一言は聞き流すとして、ブラック17は帝都からここまでの道のりを思い返して言った。
おそらく依頼に関する情報が詰まっているのであろう、ヴィセンテは分厚いノートのページを繰りながら、心配ないというふうに付け加える。
「帝都までは馬車で向かってもらうことになる。そうだな、翌朝に出立すれば2日後の夜には着くだろう。帝都までの道のりでは普通の旅行者を装ってもらうことになる」
「けっこう。装備は?」
「人員とは別ルートで手配する予定だ」
「…仕事の内容は?」
「現在、帝都港湾地区に停泊しているマリー・エレーナ号という船の船長の暗殺だ。マリー・エレーナ号は表向きは商船だが、実際は海賊船だ。帝国軍はその正体を掴んでいるものの、多額の賄賂を受け取っているため実質黙認状態にある」
「汚職ね。どこの世界でもある話だわ」
「まして帝国はいま皇帝暗殺の件でゴタゴタしているしな。諸外国の侵略を防ぐために国境の警備を強化したという噂も聞く。それには多額の資金が必要だ…そういうスケールでの危機回避を念頭に置けば、海賊を見逃すくらいはリスクでもなんでもないのだろう」
「だけど、海賊が大手を振って活動するのを是としない人間がいるってことよね、ここに依頼が来たということは。まあ、依頼主がどんな大義名分のもとで殺人を正当化しようとしているかなんて、興味ないけれど」
「まったくその通りだな」
ブラック17の言葉に、ヴィセンテはもっともらしく頷いた。
帝都港湾地区。中央にそびえる塔の天辺から、出港を目前に控えるマリー・エレーナ号を見下ろす3つの影があった。
「あれがマリー・エレーナ号かい。いい船じゃねぇか」
「あたしはあまり好きになれないけどね。囚人移送船を思い出すわ」
ブラック17の傍らで、重装備なオークの男と、ダーク・ブラザーフッドの意匠が入った黒装束に身を包んだ女が口々に会話を交わす。
『今回の仕事にはサポートを2人つける。これには君の仕事ぶりを評価するための意味合いも含まれるため、必ず3人で仕事に当たってもらいたい。悪しからず』
聖域を出る直前に言われた、ヴィセンテの台詞が脳内で反芻される。
要するに監視つきということだ、人員が不足していると言っていたわりにはヒマなことをする…と、ブラック17は内心で毒づく。しかもこのサポートというのが妙に馴れ馴れしく、あくまでビジネス上でのドライな付き合いしか望まないブラック17にとってはいささか手に余る人材だった。
「船は今夜出港するそうだ。帝国軍にいる協力者が、衛兵の巡回に30分だけ穴を空けてくれるってよ…海賊が我が物顔で街を歩くのを気に入らん衛兵が多いのは確かだが、それでも殺人行為を目の前にして黙認するわけにもいかんらしい」
オークの戦士ゴグロンは、フンと鼻を鳴らした。
「30分以内にカタをつけられなきゃ、騒ぎを聞きつけた衛兵と一戦交えることになる。オレとしちゃあ、天下の帝国軍とやり合うのも悪くないとは思うが、組織の評判に関わるからな」
「円滑に進められれば、死んだ海賊たちは『仲間割れを起こして同士討ちした』っていうカバーストーリーによって葬られるわけだけど、派手にやり過ぎるのはご法度。だから、今回は爆破はナシよ?17」
暗殺者の装束に身を包んだアントワネッタ・マリーが、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
わかっている、とブラック17は頷きながら、まったく緊張も警戒もしていない2人の様子にいささか驚いていた。これから人を殺すというのに、まるで遊びに興じるかのような気軽さで臨んでいる。
まあ、わたしが他人のことをどうこう言えた義理じゃないが…ブラック17はそんなことを思いながら、しかしこの2人、余所の組織のエージェントにやたらフレンドリー(親友感覚)な接し方をしてくるのは何とかならないものか、などと考えてしまう。
いや、余計なことを考えるのはこの辺にしておこう…ブラック17は静かに口を開いた。
「行きましょうか」
「あたしは積荷にまぎれて潜入するわ。これがいちばん安全で確実なのよね」
そう言うと、アントワネッタはこれから船積みされる予定の木箱の中に身を隠した。
しばらくしてアントワネッタが隠れている木箱が船倉に搬入されるのを見届けたあと、ゴグロンがエンチャントつきの戦斧を抜き、堂々と船に近づいていく。
「それじゃあ、オレは正面から乗り込むとするかな。なぁに、たんなる陽動だから、騒ぎが大きくなり過ぎないよう努力はするさ」
「わたしはバルコニーから直接船長室に潜入する。中で会いましょう」
「おう」
ゴグロンと分かれてから、甲板上でちょっとした騒ぎが起きる様子を見届け、ブラック17は誰にも見つからないよう素早く船に乗り込んだ。バルコニーにすべりこむ。
しかし、船長室の扉はかなり厳重に施錠されており、手持ちの道具では開けられそうにない。
一瞬焦ったが、ブラック17は落ち着きを取り戻すと、冷静に窓を観察した。案の定、扉のすぐ横に配置されている窓の施錠はそれほど難度が高い代物ではなかった。
慎重に窓を明け、船長室に忍び込む。潜入したブラック17の目の前に、船長のガストン・タッソーがちょうど背を向ける形で椅子に腰掛けている。どうやら食事中のようだ。
「!?」
ブラック17はガストンが腰にぶら下げていた長身のカトラスを抜くと、おもむろに椅子の背もたれごと心臓を貫く。
「自分の得物で殺される気分はどう?船長さん」
「あ、が…がっ……!!」
苦しみのあまり、ガストンはブラック17の問いかけに答えることなく血のあぶくを吐き出し、前のめりに倒れる。テーブルに突っ伏したガストンの腕が、卓上に並べられていたディナーをはねのけて床にぶちまけた。
目標の暗殺に成功したと思ったのも束の間、バルコニーとは反対側の扉がガンガンと叩かれる。
『せ、船長、船長!何者かが侵入してきました、仲間が次々と殺されてます!指示を、しっ、指示……!』
どうやらガストンの手下の海賊のものと思われる悲鳴が聞こえてくる。
ブラック17が身構えるのとほぼ同時に扉が開き、アルゴニアンの海賊が吹っ飛んできた。
「雑魚め、逃げるんじゃねぇっ!」
「ひ、ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!??」
すっかり恐慌をきたし、顔が恐怖に歪んだ海賊に続いて、まったく無傷のゴグロンが血塗れた斧を片手に大股で近づいてくる。
「た、助けてくれ!金ならやる、なんなら積荷から好きなもんをなんでも持ってい…ぐえ」
命乞いをする海賊の頭を、ゴグロンは斧の柄で容赦なくかち割る。
糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる海賊の死体を無感動に見つめながら、ブラック17は口を開いた。
「雑魚はそれで全部?」
「甲板にいた連中はな。しかし、背中から心臓を一突きとはな。なかなかやるじゃねぇか」
ゴグロンは串刺しにされたガストンの死体を一瞥し、ブラック17に控え目な賛辞を送る。
そのとき船室に続く落とし戸が開き、先に潜入していたアントワネッタが船長室に上がってきた。
「船倉にいた連中はみんな片付けたわよ、17…あら、ゴグロンもいたの?相変わらず仕事が早いわね」
「標的は消したし、目撃者になりそうな連中もみんな始末した。問題はないよな?」
互いの無事を確認し、ゴグロンは船長室のベッドに腰かけるブラック17に向かって言った。
「しかしまあ、なんだ。前の仕事で建物ごとふっ飛ばしたっていうからどうなるかと思ってたが、静かに動くこともできるんじゃねえか。感心したぜ」
「あたしにとってはゴグロン、あなたが騒ぎを大きくせずに行動できたことのほうが驚きだけどね」
「やっぱりそうか?」
アントワネッタからの突っ込みを受け、ゴグロンはガハハと笑い声を上げる。
これだ、とブラック17は思った。この仲の良い友達、あるいは家族のような雰囲気の接し方がどうにも苦手なのだ。すくなくとも、自分がいた組織でこのようなやり取りを交わした覚えはない。
気に入らないな…笑顔で談笑するゴグロンとアントワネッタを見つめながら、ブラック17はふと、そんなことを考えた。
「脱出しましょう」
不満を口に出すかわりに、ブラック17は簡潔な言葉を口にする。
帝国軍の衛兵がふたたび港湾地区のパトロールに戻る頃、マリー・エレーナ号に残されているのは多数の海賊たちの死体だけだった。
[ to be continued... ]
故郷は、わたしにとってあまり住みやすい環境ではなかった。質素な田舎町で、町中の誰も彼もが家族のような付き合いをしている土地柄にあって、他所からの移住者である両親はそれだけで浮いた存在だった。
かつて<聖騎士><救国の英雄>と呼ばれた父が、なぜあんな何もない土地に住みたがったのか、わたしにはわからない。別の仕事を見つけるでもなく、畑を耕すでもなく、軍から支給される退役恩給だけで細々とした生活を送る日々。
そしてなぜ母の両腕がないのか、わたしは1度もちゃんと説明を受けたことがなかった。父は「重い病気のせいで切り落とさざるを得なかった」と言うが、それが嘘だというのは、父と母の態度を見れば明らかだった。
わからないことが多すぎた。なぜ。
なぜ、あんなにも優しかった両親から、わたしみたいなのが生まれてしまったのだろう。
「ようこそ、聖域へ。たとえ信徒でなくとも、ナイト・マザーはきっと貴女にも祝福を与えてくださるはずだわ」
帝都の西部に位置する都市、シェイディンハル。
ルシエンに促されやって来たダーク・ブラザーフッドの<聖域>、それは廃屋の地下に隠され、合言葉を知らなければ侵入すら適わない秘密の拠点だった。
蝋燭の明かりに照らされた薄暗い地下施設の中、ブラック17は聖域の統括者オチーヴァと対面していた。
「ルシエンが、他でもないここシェイディンハルの聖域に貴女を導いたのは大変に興味深いことね。貴女の実力と前歴を鑑みれば、その…失礼と取られなければ良いのだけれど…もっと冷酷で、徹底した実力主義が支配する聖域へ案内されて然るべきだと思っていたものだから」
アルゴニアンの女の顔に、微妙な感情の機微が浮かんだ。この種族が人間にもわかる範囲で表情を変えるのは珍しい。たぶん彼女は感性が豊かなのだろう、とブラック17は漠然と考えた。
「今後の予定はともかく、しばらくはここが貴女の活動拠点になると思うわ。それと到着して早々申し訳ないのだけれど、早速貴女にやってもらいたい仕事が1件入ってます。ヴィセンテから詳細を尋ねてください」
ヴィセンテ・ヴェスティエリは頬のこけた物静かな男だった。中年にも老人にも見える外観から、実年齢を測るのは難しい。
「ほう、君が例の…御噂はかねがね。わたしはこの聖域に依頼された仕事の管理を担当している、お見知りおきを」
「挨拶はそこそこに。気遣いは無用よ、要件を話して」
「レディである以前に暗殺者であれ、という主義かね?関心するよ、もっともわたし個人としては、もう少しおおらかなほうが好みに合うのだがね。まあいいだろう、今回は帝都の港湾地区に飛んでもらうことになる」
「すこし距離があるわね」
ヴィセンテの余計な一言は聞き流すとして、ブラック17は帝都からここまでの道のりを思い返して言った。
おそらく依頼に関する情報が詰まっているのであろう、ヴィセンテは分厚いノートのページを繰りながら、心配ないというふうに付け加える。
「帝都までは馬車で向かってもらうことになる。そうだな、翌朝に出立すれば2日後の夜には着くだろう。帝都までの道のりでは普通の旅行者を装ってもらうことになる」
「けっこう。装備は?」
「人員とは別ルートで手配する予定だ」
「…仕事の内容は?」
「現在、帝都港湾地区に停泊しているマリー・エレーナ号という船の船長の暗殺だ。マリー・エレーナ号は表向きは商船だが、実際は海賊船だ。帝国軍はその正体を掴んでいるものの、多額の賄賂を受け取っているため実質黙認状態にある」
「汚職ね。どこの世界でもある話だわ」
「まして帝国はいま皇帝暗殺の件でゴタゴタしているしな。諸外国の侵略を防ぐために国境の警備を強化したという噂も聞く。それには多額の資金が必要だ…そういうスケールでの危機回避を念頭に置けば、海賊を見逃すくらいはリスクでもなんでもないのだろう」
「だけど、海賊が大手を振って活動するのを是としない人間がいるってことよね、ここに依頼が来たということは。まあ、依頼主がどんな大義名分のもとで殺人を正当化しようとしているかなんて、興味ないけれど」
「まったくその通りだな」
ブラック17の言葉に、ヴィセンテはもっともらしく頷いた。
帝都港湾地区。中央にそびえる塔の天辺から、出港を目前に控えるマリー・エレーナ号を見下ろす3つの影があった。
「あれがマリー・エレーナ号かい。いい船じゃねぇか」
「あたしはあまり好きになれないけどね。囚人移送船を思い出すわ」
ブラック17の傍らで、重装備なオークの男と、ダーク・ブラザーフッドの意匠が入った黒装束に身を包んだ女が口々に会話を交わす。
『今回の仕事にはサポートを2人つける。これには君の仕事ぶりを評価するための意味合いも含まれるため、必ず3人で仕事に当たってもらいたい。悪しからず』
聖域を出る直前に言われた、ヴィセンテの台詞が脳内で反芻される。
要するに監視つきということだ、人員が不足していると言っていたわりにはヒマなことをする…と、ブラック17は内心で毒づく。しかもこのサポートというのが妙に馴れ馴れしく、あくまでビジネス上でのドライな付き合いしか望まないブラック17にとってはいささか手に余る人材だった。
「船は今夜出港するそうだ。帝国軍にいる協力者が、衛兵の巡回に30分だけ穴を空けてくれるってよ…海賊が我が物顔で街を歩くのを気に入らん衛兵が多いのは確かだが、それでも殺人行為を目の前にして黙認するわけにもいかんらしい」
オークの戦士ゴグロンは、フンと鼻を鳴らした。
「30分以内にカタをつけられなきゃ、騒ぎを聞きつけた衛兵と一戦交えることになる。オレとしちゃあ、天下の帝国軍とやり合うのも悪くないとは思うが、組織の評判に関わるからな」
「円滑に進められれば、死んだ海賊たちは『仲間割れを起こして同士討ちした』っていうカバーストーリーによって葬られるわけだけど、派手にやり過ぎるのはご法度。だから、今回は爆破はナシよ?17」
暗殺者の装束に身を包んだアントワネッタ・マリーが、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
わかっている、とブラック17は頷きながら、まったく緊張も警戒もしていない2人の様子にいささか驚いていた。これから人を殺すというのに、まるで遊びに興じるかのような気軽さで臨んでいる。
まあ、わたしが他人のことをどうこう言えた義理じゃないが…ブラック17はそんなことを思いながら、しかしこの2人、余所の組織のエージェントにやたらフレンドリー(親友感覚)な接し方をしてくるのは何とかならないものか、などと考えてしまう。
いや、余計なことを考えるのはこの辺にしておこう…ブラック17は静かに口を開いた。
「行きましょうか」
「あたしは積荷にまぎれて潜入するわ。これがいちばん安全で確実なのよね」
そう言うと、アントワネッタはこれから船積みされる予定の木箱の中に身を隠した。
しばらくしてアントワネッタが隠れている木箱が船倉に搬入されるのを見届けたあと、ゴグロンがエンチャントつきの戦斧を抜き、堂々と船に近づいていく。
「それじゃあ、オレは正面から乗り込むとするかな。なぁに、たんなる陽動だから、騒ぎが大きくなり過ぎないよう努力はするさ」
「わたしはバルコニーから直接船長室に潜入する。中で会いましょう」
「おう」
ゴグロンと分かれてから、甲板上でちょっとした騒ぎが起きる様子を見届け、ブラック17は誰にも見つからないよう素早く船に乗り込んだ。バルコニーにすべりこむ。
しかし、船長室の扉はかなり厳重に施錠されており、手持ちの道具では開けられそうにない。
一瞬焦ったが、ブラック17は落ち着きを取り戻すと、冷静に窓を観察した。案の定、扉のすぐ横に配置されている窓の施錠はそれほど難度が高い代物ではなかった。
慎重に窓を明け、船長室に忍び込む。潜入したブラック17の目の前に、船長のガストン・タッソーがちょうど背を向ける形で椅子に腰掛けている。どうやら食事中のようだ。
「!?」
ブラック17はガストンが腰にぶら下げていた長身のカトラスを抜くと、おもむろに椅子の背もたれごと心臓を貫く。
「自分の得物で殺される気分はどう?船長さん」
「あ、が…がっ……!!」
苦しみのあまり、ガストンはブラック17の問いかけに答えることなく血のあぶくを吐き出し、前のめりに倒れる。テーブルに突っ伏したガストンの腕が、卓上に並べられていたディナーをはねのけて床にぶちまけた。
目標の暗殺に成功したと思ったのも束の間、バルコニーとは反対側の扉がガンガンと叩かれる。
『せ、船長、船長!何者かが侵入してきました、仲間が次々と殺されてます!指示を、しっ、指示……!』
どうやらガストンの手下の海賊のものと思われる悲鳴が聞こえてくる。
ブラック17が身構えるのとほぼ同時に扉が開き、アルゴニアンの海賊が吹っ飛んできた。
「雑魚め、逃げるんじゃねぇっ!」
「ひ、ひいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!!??」
すっかり恐慌をきたし、顔が恐怖に歪んだ海賊に続いて、まったく無傷のゴグロンが血塗れた斧を片手に大股で近づいてくる。
「た、助けてくれ!金ならやる、なんなら積荷から好きなもんをなんでも持ってい…ぐえ」
命乞いをする海賊の頭を、ゴグロンは斧の柄で容赦なくかち割る。
糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる海賊の死体を無感動に見つめながら、ブラック17は口を開いた。
「雑魚はそれで全部?」
「甲板にいた連中はな。しかし、背中から心臓を一突きとはな。なかなかやるじゃねぇか」
ゴグロンは串刺しにされたガストンの死体を一瞥し、ブラック17に控え目な賛辞を送る。
そのとき船室に続く落とし戸が開き、先に潜入していたアントワネッタが船長室に上がってきた。
「船倉にいた連中はみんな片付けたわよ、17…あら、ゴグロンもいたの?相変わらず仕事が早いわね」
「標的は消したし、目撃者になりそうな連中もみんな始末した。問題はないよな?」
互いの無事を確認し、ゴグロンは船長室のベッドに腰かけるブラック17に向かって言った。
「しかしまあ、なんだ。前の仕事で建物ごとふっ飛ばしたっていうからどうなるかと思ってたが、静かに動くこともできるんじゃねえか。感心したぜ」
「あたしにとってはゴグロン、あなたが騒ぎを大きくせずに行動できたことのほうが驚きだけどね」
「やっぱりそうか?」
アントワネッタからの突っ込みを受け、ゴグロンはガハハと笑い声を上げる。
これだ、とブラック17は思った。この仲の良い友達、あるいは家族のような雰囲気の接し方がどうにも苦手なのだ。すくなくとも、自分がいた組織でこのようなやり取りを交わした覚えはない。
気に入らないな…笑顔で談笑するゴグロンとアントワネッタを見つめながら、ブラック17はふと、そんなことを考えた。
「脱出しましょう」
不満を口に出すかわりに、ブラック17は簡潔な言葉を口にする。
帝国軍の衛兵がふたたび港湾地区のパトロールに戻る頃、マリー・エレーナ号に残されているのは多数の海賊たちの死体だけだった。
[ to be continued... ]
2012/08/01 (Wed)07:54
S.T.A.L.K.E.R.-Call of Pripyat-用のロシア産MOD「Way in Pripyat」に英文化パッチを当ててプレイしてみたので、雑感などを書いてみる。記述中に根拠が曖昧な部分もあるので、間違ってる情報があったらスイマセン。
本MODはロシア産で、メインストーリーを一新し旧作から多数のマップを移植した力作。製作期間はわずか半年で、しかも製作者がはじめて作ったMODであるという。これには驚きだ。
ストーリー一新プラス新マップ追加(&ロシア産)という要素が以前プレイしたSecret Path2を彷彿とさせるが、こちらのほうが遥かに遊びやすく作られている(すくなくとも前半は)。というかSP2は行動に制約が多すぎるうえ、タスク内容がユーザーに喧嘩を売っているとしか思えない代物ばかりだったので、むしろこちらが普通というべきか。
SP2の悪夢があるので(あれはもう2度とプレイしたくない)、プレイ前はかなり警戒していたのだが、蓋を開けてみればわりとスムーズに遊べたので安心してほしい。とはいえ難易度は序盤からわりと高めに設定されているので、かなり歯ごたえのあるプレイを楽しめた。
メインストーリーはわりと短めで、サブタスクを無視すればそこそこサックリと終わらせることができる。
全体の流れとしては、
Cordon
↓
Yanter
↓
(AgropromUnderground)
↓
ArmyWarehouse
↓
(Hospital)
↓
(PripyatUnderground)
↓
Pripyat
↓
CNPP
というカタチになるのかな。
ちなみに()内に書かれているのはPDAに表示されないダンジョンタイプの地下マップで、AgropromUndergroundはタスクによって立ち寄ることになる場所(メインストーリーにも関係するが、進行方法によっては回避可能)、HospitalとPripyatUndergroundは、ArmyWarehouseからPripyatへ向かう際に必ず通過することになる。
ちなみに旧作のマップはSoCではなくCSベース。PripyatのみCoP仕様です。
基本的には重要NPCからクエストを受けてマップ移動ポイントを出現させ、次のマップへ向かう…というSP2と同様の構成となる。マップ間の繋がりに脈絡がなかったり、行きと帰りで違うポイントを通らなければならない点も同じ。マップ移動が面倒なのが難点だ。
インターフェースはHealthのみ表示という非常に潔い仕様で、その他のいかなるアイコン類も表示されない。そのため現在どれだけスタミナがあるのか、被爆しているのか、出血しているのか、装備している武器の残弾数は、射撃モードは…というあらゆる点がすぐに確認できないため、緊張感のあるプレイを強いられることになる。
個人的にはミニマップの排除がゲーム性に大きな変化を与えていると感じた(とはいえ、他にミニマップが表示されないMODがないわけではない)。ただマップが一新されているので、別ゲーとして楽しめるぶん理不尽を感じないという面もなくはない。どちらかというと対人戦が少ないのも一因か。
というか、ここまでやるならいっそ何も表示しなくていいと思う。大差ない。
戦闘面はクリーチャーが強化されており、しかも数が多いので苦戦することになる。タスク進行上で必要になる場合以外は倒してもなんの益得もないため、マップを隅々まで探索しなければ気が済まないプレイヤーほど余計な戦闘が多くなるだろう。
武器はすべて実名というわけではないが、かなりこだわって作られている。すべてカスタマイズできるわけではないのが残念だが…それと一部武器のモーションで腕が見切れるのが多い。ひょっとしたらFOVの設定の問題かもしらん。
防具は独自の種類のものが多く、外観はメトロ2033あたりからかなりの量を引っ張ってきているようだ。ちなみにキャラクターモデリングはNPC専用のものばかりで実際にプレイヤーが装備できるものは少ない。
ゲーム進行は、中盤までは楽しめるがPripyatに入ったあたりからかなりダルくなる。明らかに製作者がこのへんで力尽きているのがよくわかる内容で、最終マップのCNPPに至ってはやっつけ以外のなにものでもない。やたら大量のクリーチャー、強力な火器を持った敵NPCの数の暴力にキミは耐えられるか。
そういえばイントロとエンディングが一新されているらしいが、私の環境の場合、なぜか原作CoPと同じだった。なにかDL手順を間違えたろうか…
最後に、ゲーム進行に役立ちそうなアドバイスを幾つか。
まず金策に関してだが、各派閥の拠点にいるMedicが西側の武器を高額で買い取ってくれるので、それを利用しよう。コンディションがほぼ最高でないと買い取ってくれないが、完全に破損した状態から修理しても余裕で元が取れる金額で買い取ってくれるので問題ない。はっきりいって現時点では相当なバランスブレイカーである。
戦闘面では、F1手榴弾が超強化されているので必ず携帯すること。投げる際は遮蔽物に隠れないと相当離れても自爆ダメージを被るほど強力になっている。特にライブラリアンはF1を使わないと倒せないくらいなので、常に最低4~5個は持っておいて損はない。反面、グレネードランチャーはいらない子と化している。
アーティファクトは、本MODではほとんど入手できないと思っていい。なのでアーマー改造はアーティファクト・コンテナ拡張よりも他の部分の強化を優先すべきだ。ちなみにCordonのStalker基地に捕らえられている捕虜から受けられるタスク(リボルバーを渡す)の報酬で放射能を低減するアーティファクトを入手できるので、それがあるとかなりラクになる。私はクリアまでのゲームプレイを通して、放射能低減のアーティファクトはここでしか入手できなかった。
今後攻略記事を作りたいという気もないではないが、はっきり言って進行方法がわからずにデータを改造して無理矢理進めた箇所もあるし、サブタスクまで含めるとどこまで攻略できるやら…
2012/07/30 (Mon)06:58
「ふぃー、なかなかの壮観じゃのう。山歩きに難儀した甲斐はあったわい」
コロール北部、雲天の頂。
グレイ・メア亭でアル中のレオナルド・ジェメーンを探していたリアを呼び止めたのは、アルトマー(ハイエルフ)の魔術師イラーナだった。
もともと魔術師ギルドの一員だったイラーナは、自らが所属していたコロール支部の局長ティーキーウスと主義が合わず反発し、問題を起こした挙句にギルドを追放された過去の持ち主だった。
イラーナがリアに依頼したのは、雲天の頂にあるという伝説の魔導書<霊峰の指>。
「私は過去のことでギルドから目をつけられているし、万一にでも私が貴重な魔導書を手にしていると知ったら、ティーキーウスはどんな手を使ってでも奪い取ろうとしてくるでしょう。だからあなたに、内密に頼みたいのよ」
それは、オディール農園でのゴブリン退治劇を評価しての依頼だった。
特に断る理由もないので、リアは引き受けたのだが…イラーナ曰く、魔術師ギルドのコロール支部局長ティーキーウスは利己的で支配欲の強い危険な人物、らしい。ギルドの許可なく魔法遺物を持ち出そうとしていることが知れたら命の危険があるからくれぐれも内密に、とのことだった。
もっともイラーナの言うように、ティーキーウスが凶悪な人物であるかどうかに関しては、リアは懐疑的だったが。というのも、リアの視覚ユニットに内蔵されているフェイシャル(表情)センサーが、イラーナの顔つきから若干の虚偽応答パターンを検出したからだ。
そのため万一の事態に備えてリアは保険を用意したのだが、いまリアが気にしているのは、それとはまったく関係のない事項だった。
「しっかし、のう…」
リアは、ウェイノン修道院でのパイネルとの会話を反芻し、ため息をついた。
若き修道士パイネルから聞いた、いまこの国が抱えている問題。
「貴女がジョフリ様に届けたアミュレットは、代々王家に伝わるものです。それもただ権力者の象徴(シンボル)というわけではなく、異界からの侵略を防ぐために必要な、神より賜った宝具なのです」
タムリエルを異界オブリビオンの魔手から守るための宝具<王家のアミュレット>。その由来は聖アレッシアのアイレイド討伐にまでさかのぼる。
強大な魔力で世界を支配していたアイレイドたちは、異界オブリビオンより数多の魔物を召喚し、ときに無為な虐殺を続けていた。この惨劇を見かねた、のちのシロディール初代皇帝であるアレッシアは九大神に祈りを捧げ、時の竜神アカトシュの加護を得る。
神界エセリウスより降臨したアカトシュは、人界ニルンと異界オブリビオンの間に結界<竜の火>を設け、さらに自らの心臓の一部から造り出したアミュレットをアレッシアに託した。
「アミュレットがアレッシアの血筋に受け継がれていく限り、竜の火は存在し続ける。アカトシュは、そう仰られたそうです。しかし…」
しかしいま、アレッシアの血を継ぎしセプティム王家は滅亡の危機に瀕している。
謎の暗殺集団によって皇帝ユリエル・セプティム7世は葬られ、さらに後継者も次々と暗殺されたという。王家のアミュレットを継ぐ者なきいま、竜の火は消え、いつオブリビオンからの侵略がはじまるかわからない状況である。
「ただボーラスの書状によれば、皇帝の隠し子が西のクヴァッチにて生き延びているそうです。現在、皇帝直属の特務部隊ブレイドが総力を挙げて捜索に当たっています」
そう言うパイネルの表情は、「なにも心配することはない」と暗に語ってはいたが…
「わりと大ピンチではないかっ!」
誰ともなく、リアは山岳の麓で叫んだ。
「だいいち、国家どころか世界滅亡の危機にあるなら、各国に援助を要請すればいいではないかっ!それを体面を気にし内情を探られたくないばかりに、たかだか一特務機関に事態を丸投げとはっ!情けないにもほどがあるっ!とは、いうものの、のう…」
ちなみに、この件に関しては他言無用という厳重な忠告を受けている。
「現状、ワシになにができるとゆーもんでもないか。歯痒いが、致し方あるまいのう」
無論、クヴァッチに赴き皇帝の隠し子を探す手伝いくらいはできるだろう。が、ブレイドとて無能ではない。リアがクヴァッチに駆けつける頃には、とっくに目的を果たしているに違いないのだ。
ひとまずリアにとって重要なのは、自分の身に起きたことを把握することだ。
しかし情報収集の目途が立たないのは事実であり(もっと文明が発達している世界ならばよかったのだが)、ならばこの世界のことを調べる傍ら、他人の厄介ごとに首でも突っ込んでヒマを潰すか…というのが、当面の活動方針だった。
「むぅ…」
そして雲天の頂に到着したリアの目の前に、肉体が欠損したうえ丸焦げの状態で放置されている死体が転がってきた。
リアはその場に屈むと、死体の肉の一部をつまみ取り、口の中に放り込む。口内の各種センサーが肉片をスキャンし、さまざまな情報をリアの脳内メモリに送信してきた。
「成人男性、年齢は20代後半。死亡推定時刻はおよそ2~3日前、死因は高圧電流によるショック死。身体が燃えたのは死んだあとか…連続して高圧電流が流れたせいで四肢が爆発・欠損したとみえる。熱の蓄積で発火するほどとは、余程の威力だったのだろうなぁ」
そこまで言うと、リアは口内の肉片を「ぺっ」と吐き出した。
もともと体内に半永久的な発電システムを内蔵しているリアは、食事を取る必要がない。まして根本的には生物ではなく機械であるリアにとって、衛生概念などというものは甚だ意味を成さないものだった。
もちろん、他人にいまのような光景を見られたら、騒ぎになることは間違いないだろうが…
とりあえず周囲を警戒するものの、高レベルで展開した環境探査フィールドに怪しいものは引っかからない。いまリアの周囲にいるものといえば、せいぜいが野生動物くらいのものだ。
「狼や熊はたしかに脅威ではあるが、斯様な面白可笑しい死体を造ることはできまい。なにか気になる…とはいえ判例がない以上、考えるだけ無駄かの」
そう言うと、リアは雲天の頂にて放置されていた、崩れかけの遺跡の片隅から1冊の本を探し出した。本に刷られている文字はリアのデータバンクに存在しないものだったが、事前に依頼主のイラーナから得た情報から、本のタイトルだけはどうにか判読できた。
「…霊峰の指…これじゃな……」
「まさしく、これは私が探していた本だわ。ありがとう、あなたって小さいけど優秀なのね」
コロールの小さなぼろ宿、グレイ・メア亭にて。
霊峰の指を渡されたイラーナは、その場で素早くメモを取りながら、リアに向かって言った。
「最後にもう1つだけ頼まれてくれないかしら?といってもこれは、あなたに対する報酬代わりのようなものだけど…もう一度雲天の頂に行って、とある儀式を行なってほしいのよ。そのデータがあれば、私の研究はさらに飛躍を遂げることになるわ」
「儀式、のう」
あまり気は進まんがのう…と、リアは内心で思った。機械だけに、魔法だとか魔力といったものには無縁だからだ。それに、この世界で「儀式」といえば、間違いなく魔術的なものであろうということは容易に想像ができた。
ひとまずイラーナが書きつけたメモに目を通すリア。その内容は儀式の行程や、儀式のために必要なマジックアイテムに関する事項などが書かれている。
「なに、儀式にはウェルキンド石が必要…とな?はて、うぇるきんど石とはなんぞや?」
イラーナ曰く、霊峰の指はアイレイド関連の魔導書らしいので、ウェルキンド石もアイレイド絡みのマジックアイテムと思われるのだが…
悩むリアの背後で、なにやら騒がしい一団の声が聞こえてくる。アルゴニアンの男女に、アルトマー?と思われる小柄な少女の姿が見えた。
『美しいお嬢さん、一緒にエールでも?あと、よければ俺の槍を磨いてくれないか』
『え、えっ、ええっ!?』
『ちょっとー!なにヒトの友達を勝手にナンパして…ていうか下品なジョーク言うなーッ!』
「…うるせぇのう……」
ヒト(機械だけど)が頭を捻っているときに、なにをグダグダと抜かしてやがるんじゃ…などと思いながら振り返ったリアは、3人の風体を見てちょっと考えを改めた。
いかにも民間人らしい質素なドレス姿のアルゴニアンの女はともかく、他の2人…黒いコートにカタナをぶら下げたアルゴニアンの男と、迷彩柄のバックパックを背負ったエルフの少女は、冒険者かなにかに見える。
「ちょいと、そこな御仁らよ。うぇるきんど石というものをご存知ないかの?」
「うん?なんだいお嬢ちゃん、珍しいアクセサリーでも欲しいってか?」
リアの問いかけに、アルゴニアンの男が反応した。懐から緑色に発光する石を取り出し、おもむろにテーブルの上に乗せる。輝石をまじまじと見つめながら、リアはほぼ無意識のうちにつぶやいていた。
「これが、うぇるきんど石?」
「なんだ、知らないで聞いてたのか?こいつはアイレイドの遺跡でよく見つかる代物で、高濃度のマジカを内包するマジックアイテムだ。古代アイレイドで作られていたんだが、いまじゃ製造法は失われちまったらしい。おかげで、そこそこ貴重な代物なんだそうだ」
「もしよければ、これを買い取りたいのじゃが」
「おいおい、随分とませた口をきくじゃないか。ま、金貨100枚出せるってなら、売ってやらんでもないがね」
「よかろう。買った」
「…なに?」
即決即断を下したリアを、アルゴニアンの男は驚きの表情で見つめる。
金貨100枚といえば相当な大金だ。家が超絶金持ちでもなければ、とてもじゃないが子供が小遣いで持てるような額ではない。
それは返り討ちにした強盗の荷物を漁るなどして手に入れたものだったが、まだこの世界の貨幣価値というものを理解していないリアは、まるで子供が駄菓子を買うような感覚でポンと大金をテーブルの上に置いた。
びっくりしながらも、気を取り直して金貨を手に取ろうとするアルゴニアンの男。
「あーそうか、うん、まあ俺も男だ。売ると言った以上は売ろうじゃないか。有り難く…」
「ちょっと待ちなさーいっ!」
アルゴニアンの男が金貨の入った麻袋に手を出そうとしたとき、エルフの少女が横からタックルをかまして妨害した。
「わっ、な、なにをしやがる!?」
「子供相手になに大人気ないことしてんですかっ!?」
そう言って、エルフの少女はアルゴニアンの男から引ったくった麻袋から25枚ほど金貨を抜き取ると、残りをリアに押しつけてきた。
「ウェルキンド石の通常販売レートは金貨50枚、でもわたしたちは商人じゃないし、あなたもまだ子供だし、ってわけで、ここは特別に金貨25枚で売ってあげるっ!」
「おお、ありがたや」
「おいおいおいおい、勝手に決めんな!」
「渡りに船とはこのことじゃな。さて、儀式の手順でも確認するかの…」
結局、抗議するアルゴニアンの男を無視するような形で、ウェルキンド石を市価の半額で入手したリアは、ふたたびやって来た雲天の頂にて儀式を行なおうとしていた。
「祭壇にウェルキンド石を置き、石碑に電気を流す…じゃったか。ワシは魔術師ではないので、ここはちょいと手間じゃの」
そう言いながら、リアは手首に繋いだ電極を石碑へと接続する。
「さて……」
一時的に体内で過剰発電し、電極を通して石碑に流し込む。その直後、リアの視覚ユニットに内蔵されているセンサーモジュールが石碑から異常な数値を検出した。
たったいま流し込んだ電気が、石碑の中で爆発的に増幅している。
「…これは、いったい……?」
そのとき、リアは祭壇付近で見かけた黒焦げの死体のことを思い出した。
「まさか、これ…!やばいっ!」
慌ててその場から離れようとしたとき、石碑から凄まじいまでの電流が放出され、リアを直撃した。
リアの頭の中で警告音がけたたましく鳴り続けているが、意思に反してまったく身動きが取れない。声を出すことすらできなかった。
いったい、なにが起きた?この石碑はなんだ?儀式に失敗したのか?それともイラーナに嵌められたのか?
さまざまな思考が脳内で渦巻くが、判断材料がない以上、結論の出しようがない。
倒れて意識を失う直前、リアは視界に表示された文字を見て絶望した。
[ ‐Fatal Damage‐ ]
『……て…さい…起き……このままでは……』
いったい、機能停止してからどれほどの時間が経ったのだろう。
自分の頭の中で、自分以外の声が聞こえてくる。まだあまり自由がきかない身体を無理矢理動かし、リアは目を開けた。ノイズだらけの視界に自分の手が映り、どうやら自分は倒れていたようだと自覚する。
『起きてください、ゼロシー』
「…なんじゃ、誰じゃ?この声は……」
『ああ、やっと意識を取り戻したんですね、ゼロシー。機能を復旧させても中々目を醒まさないものですから、心配しましたよ』
「む…」
次第に視界が鮮明になり、やがて高圧電流を全身に浴びたのがウソのように、何事もなかったかのように身体が動きはじめる。
『それにしても、さっき高圧電流を受けたショックで私が機能復帰できたのは不幸中の幸いでした。この世界に来てからというもの、私がどれだけ呼びかけてもあなたは応じてくれませんでしたから』
「あー、うん、そのー、お主、何者じゃ?」
『おや、憶えておられませんか?どうやら記憶野に障害が残っているようですね、ゼロシー…私はあなたの脳内チップに搭載された独立思考型のAIです。総合支援システム・バージョン4、通称TES4。愛称は<フォース>です、思い出してくれましたか?』
「…いや。まったく覚えがない」
『困りましたね。この世界に来てからというもの、私は状況を改善すべくあなたの機能を最適化するよう努力してきたのですが、どういうわけか記憶野をはじめとする機能の幾つかにプロテクトがかかっていて、私ですらアクセスできないのですよ。ゼロシー、本当になにも覚えておられないのですか?』
「いや、まったく。というか、少し黙っててくれんか。なにやら混乱してきたわい」
突然、頭の中から聞こえてきた声にリアは戸惑いを隠せない。
そういえば、いままでも、省電力モードに移行する際などに何者かの声が聞こえてきたことがあったが、まさかその正体がこの、自分の脳内チップに内臓されていたAIによるものだったというのか?
「ところで、のう。お主、さっきからゼロシー、ゼロシーと言っておるが、そもそもその、ゼロシーとはなんじゃ?」
『…?何、ということはないでしょう。あなたの名前ですよ、開発コードSWM52R…まさか、そんなことも忘れてしまったわけではないでしょう?』
「待たんか。わしはリアじゃ、開発コードはHEL-00c」
『おかしなことを言いますね。ジョーク・プログラムが誤作動でも起こしているのですか?あなたはリアじゃありませんよ』
「…なんじゃと?」
自分は、リアでは、ない?
TES4…フォースから語られた言葉に、リアは動揺する。
「阿呆を抜かすな。まさかお主、ワシを別の誰かと誤認しておるのではないか?」
『まさか。そんなこと…いえ…ちょっと待ってください。考えられるとすれば…ふむ…ああ、なるほど。そういうことでしたか』
急に独り言をはじめたかと思うと、次の瞬間、フォースは手の平を返したようにこう言った。
『すいませんでした。いまのあなたはリア、HEL-00cとして活動しているのでしたね。私としたことが、どうやら情報の更新が遅れていたようです。混乱させてしまい、申し訳ありませんでした』
「待たんか。どうにも引っかかる物言いをするヤツじゃの…なにがどうなっておるのか、きちんと説明せんか」
『残念ながら、私は設計者の意図に従って機能するようプログラムされています。それによると、現在あなたが正確な状況を把握すべきではないという結論が下されました』
「ふざけたことを申すな。あれだけ気になることを言っておきながら、いまさら何も言えんで通すつもりか」
『申し訳ありません。私自身にも機能に制限が設けられておりますので…いずれ、すべてを話すときが来るかもしれません。そのときまで、どうかあなたは今まで通りに行動なさってください』
「むう…」
その説明はもちろん納得できるものではなかったが、かといってこれ以上フォースを問い詰めても、何らかの成果を得ることは難しいだろう。
「仕方がないのう。とりあえずは勘弁しておいてやるわい」
『ありがとうございます。私はこれから随時あなたをサポートいたしますので、どうぞ宜しくお願いいたします。リア』
[ to be continued... ]