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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/19 (Fri)17:03
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2012/07/30 (Mon)06:58


「ふぃー、なかなかの壮観じゃのう。山歩きに難儀した甲斐はあったわい」
 コロール北部、雲天の頂。
 グレイ・メア亭でアル中のレオナルド・ジェメーンを探していたリアを呼び止めたのは、アルトマー(ハイエルフ)の魔術師イラーナだった。
 もともと魔術師ギルドの一員だったイラーナは、自らが所属していたコロール支部の局長ティーキーウスと主義が合わず反発し、問題を起こした挙句にギルドを追放された過去の持ち主だった。
 イラーナがリアに依頼したのは、雲天の頂にあるという伝説の魔導書<霊峰の指>。
「私は過去のことでギルドから目をつけられているし、万一にでも私が貴重な魔導書を手にしていると知ったら、ティーキーウスはどんな手を使ってでも奪い取ろうとしてくるでしょう。だからあなたに、内密に頼みたいのよ」
 それは、オディール農園でのゴブリン退治劇を評価しての依頼だった。
 特に断る理由もないので、リアは引き受けたのだが…イラーナ曰く、魔術師ギルドのコロール支部局長ティーキーウスは利己的で支配欲の強い危険な人物、らしい。ギルドの許可なく魔法遺物を持ち出そうとしていることが知れたら命の危険があるからくれぐれも内密に、とのことだった。
 もっともイラーナの言うように、ティーキーウスが凶悪な人物であるかどうかに関しては、リアは懐疑的だったが。というのも、リアの視覚ユニットに内蔵されているフェイシャル(表情)センサーが、イラーナの顔つきから若干の虚偽応答パターンを検出したからだ。
 そのため万一の事態に備えてリアは保険を用意したのだが、いまリアが気にしているのは、それとはまったく関係のない事項だった。
「しっかし、のう…」
 リアは、ウェイノン修道院でのパイネルとの会話を反芻し、ため息をついた。



 若き修道士パイネルから聞いた、いまこの国が抱えている問題。
「貴女がジョフリ様に届けたアミュレットは、代々王家に伝わるものです。それもただ権力者の象徴(シンボル)というわけではなく、異界からの侵略を防ぐために必要な、神より賜った宝具なのです」
 タムリエルを異界オブリビオンの魔手から守るための宝具<王家のアミュレット>。その由来は聖アレッシアのアイレイド討伐にまでさかのぼる。
 強大な魔力で世界を支配していたアイレイドたちは、異界オブリビオンより数多の魔物を召喚し、ときに無為な虐殺を続けていた。この惨劇を見かねた、のちのシロディール初代皇帝であるアレッシアは九大神に祈りを捧げ、時の竜神アカトシュの加護を得る。
 神界エセリウスより降臨したアカトシュは、人界ニルンと異界オブリビオンの間に結界<竜の火>を設け、さらに自らの心臓の一部から造り出したアミュレットをアレッシアに託した。
「アミュレットがアレッシアの血筋に受け継がれていく限り、竜の火は存在し続ける。アカトシュは、そう仰られたそうです。しかし…」
 しかしいま、アレッシアの血を継ぎしセプティム王家は滅亡の危機に瀕している。
 謎の暗殺集団によって皇帝ユリエル・セプティム7世は葬られ、さらに後継者も次々と暗殺されたという。王家のアミュレットを継ぐ者なきいま、竜の火は消え、いつオブリビオンからの侵略がはじまるかわからない状況である。
「ただボーラスの書状によれば、皇帝の隠し子が西のクヴァッチにて生き延びているそうです。現在、皇帝直属の特務部隊ブレイドが総力を挙げて捜索に当たっています」
 そう言うパイネルの表情は、「なにも心配することはない」と暗に語ってはいたが…

「わりと大ピンチではないかっ!」
 誰ともなく、リアは山岳の麓で叫んだ。
「だいいち、国家どころか世界滅亡の危機にあるなら、各国に援助を要請すればいいではないかっ!それを体面を気にし内情を探られたくないばかりに、たかだか一特務機関に事態を丸投げとはっ!情けないにもほどがあるっ!とは、いうものの、のう…」
 ちなみに、この件に関しては他言無用という厳重な忠告を受けている。
「現状、ワシになにができるとゆーもんでもないか。歯痒いが、致し方あるまいのう」
 無論、クヴァッチに赴き皇帝の隠し子を探す手伝いくらいはできるだろう。が、ブレイドとて無能ではない。リアがクヴァッチに駆けつける頃には、とっくに目的を果たしているに違いないのだ。
 ひとまずリアにとって重要なのは、自分の身に起きたことを把握することだ。
 しかし情報収集の目途が立たないのは事実であり(もっと文明が発達している世界ならばよかったのだが)、ならばこの世界のことを調べる傍ら、他人の厄介ごとに首でも突っ込んでヒマを潰すか…というのが、当面の活動方針だった。



「むぅ…」
 そして雲天の頂に到着したリアの目の前に、肉体が欠損したうえ丸焦げの状態で放置されている死体が転がってきた。
 リアはその場に屈むと、死体の肉の一部をつまみ取り、口の中に放り込む。口内の各種センサーが肉片をスキャンし、さまざまな情報をリアの脳内メモリに送信してきた。
「成人男性、年齢は20代後半。死亡推定時刻はおよそ2~3日前、死因は高圧電流によるショック死。身体が燃えたのは死んだあとか…連続して高圧電流が流れたせいで四肢が爆発・欠損したとみえる。熱の蓄積で発火するほどとは、余程の威力だったのだろうなぁ」
 そこまで言うと、リアは口内の肉片を「ぺっ」と吐き出した。
 もともと体内に半永久的な発電システムを内蔵しているリアは、食事を取る必要がない。まして根本的には生物ではなく機械であるリアにとって、衛生概念などというものは甚だ意味を成さないものだった。
 もちろん、他人にいまのような光景を見られたら、騒ぎになることは間違いないだろうが…
 とりあえず周囲を警戒するものの、高レベルで展開した環境探査フィールドに怪しいものは引っかからない。いまリアの周囲にいるものといえば、せいぜいが野生動物くらいのものだ。
「狼や熊はたしかに脅威ではあるが、斯様な面白可笑しい死体を造ることはできまい。なにか気になる…とはいえ判例がない以上、考えるだけ無駄かの」
 そう言うと、リアは雲天の頂にて放置されていた、崩れかけの遺跡の片隅から1冊の本を探し出した。本に刷られている文字はリアのデータバンクに存在しないものだったが、事前に依頼主のイラーナから得た情報から、本のタイトルだけはどうにか判読できた。
「…霊峰の指…これじゃな……」




「まさしく、これは私が探していた本だわ。ありがとう、あなたって小さいけど優秀なのね」
 コロールの小さなぼろ宿、グレイ・メア亭にて。
 霊峰の指を渡されたイラーナは、その場で素早くメモを取りながら、リアに向かって言った。
「最後にもう1つだけ頼まれてくれないかしら?といってもこれは、あなたに対する報酬代わりのようなものだけど…もう一度雲天の頂に行って、とある儀式を行なってほしいのよ。そのデータがあれば、私の研究はさらに飛躍を遂げることになるわ」
「儀式、のう」
 あまり気は進まんがのう…と、リアは内心で思った。機械だけに、魔法だとか魔力といったものには無縁だからだ。それに、この世界で「儀式」といえば、間違いなく魔術的なものであろうということは容易に想像ができた。
 ひとまずイラーナが書きつけたメモに目を通すリア。その内容は儀式の行程や、儀式のために必要なマジックアイテムに関する事項などが書かれている。
「なに、儀式にはウェルキンド石が必要…とな?はて、うぇるきんど石とはなんぞや?」
 イラーナ曰く、霊峰の指はアイレイド関連の魔導書らしいので、ウェルキンド石もアイレイド絡みのマジックアイテムと思われるのだが…
 悩むリアの背後で、なにやら騒がしい一団の声が聞こえてくる。アルゴニアンの男女に、アルトマー?と思われる小柄な少女の姿が見えた。
『美しいお嬢さん、一緒にエールでも?あと、よければ俺の槍を磨いてくれないか』
『え、えっ、ええっ!?』
『ちょっとー!なにヒトの友達を勝手にナンパして…ていうか下品なジョーク言うなーッ!』
「…うるせぇのう……」
 ヒト(機械だけど)が頭を捻っているときに、なにをグダグダと抜かしてやがるんじゃ…などと思いながら振り返ったリアは、3人の風体を見てちょっと考えを改めた。
 いかにも民間人らしい質素なドレス姿のアルゴニアンの女はともかく、他の2人…黒いコートにカタナをぶら下げたアルゴニアンの男と、迷彩柄のバックパックを背負ったエルフの少女は、冒険者かなにかに見える。



「ちょいと、そこな御仁らよ。うぇるきんど石というものをご存知ないかの?」
「うん?なんだいお嬢ちゃん、珍しいアクセサリーでも欲しいってか?」
 リアの問いかけに、アルゴニアンの男が反応した。懐から緑色に発光する石を取り出し、おもむろにテーブルの上に乗せる。輝石をまじまじと見つめながら、リアはほぼ無意識のうちにつぶやいていた。
「これが、うぇるきんど石?」
「なんだ、知らないで聞いてたのか?こいつはアイレイドの遺跡でよく見つかる代物で、高濃度のマジカを内包するマジックアイテムだ。古代アイレイドで作られていたんだが、いまじゃ製造法は失われちまったらしい。おかげで、そこそこ貴重な代物なんだそうだ」
「もしよければ、これを買い取りたいのじゃが」
「おいおい、随分とませた口をきくじゃないか。ま、金貨100枚出せるってなら、売ってやらんでもないがね」
「よかろう。買った」
「…なに?」
 即決即断を下したリアを、アルゴニアンの男は驚きの表情で見つめる。
 金貨100枚といえば相当な大金だ。家が超絶金持ちでもなければ、とてもじゃないが子供が小遣いで持てるような額ではない。
 それは返り討ちにした強盗の荷物を漁るなどして手に入れたものだったが、まだこの世界の貨幣価値というものを理解していないリアは、まるで子供が駄菓子を買うような感覚でポンと大金をテーブルの上に置いた。
 びっくりしながらも、気を取り直して金貨を手に取ろうとするアルゴニアンの男。
「あーそうか、うん、まあ俺も男だ。売ると言った以上は売ろうじゃないか。有り難く…」
「ちょっと待ちなさーいっ!」
 アルゴニアンの男が金貨の入った麻袋に手を出そうとしたとき、エルフの少女が横からタックルをかまして妨害した。
「わっ、な、なにをしやがる!?」
「子供相手になに大人気ないことしてんですかっ!?」
 そう言って、エルフの少女はアルゴニアンの男から引ったくった麻袋から25枚ほど金貨を抜き取ると、残りをリアに押しつけてきた。
「ウェルキンド石の通常販売レートは金貨50枚、でもわたしたちは商人じゃないし、あなたもまだ子供だし、ってわけで、ここは特別に金貨25枚で売ってあげるっ!」
「おお、ありがたや」
「おいおいおいおい、勝手に決めんな!」





「渡りに船とはこのことじゃな。さて、儀式の手順でも確認するかの…」
 結局、抗議するアルゴニアンの男を無視するような形で、ウェルキンド石を市価の半額で入手したリアは、ふたたびやって来た雲天の頂にて儀式を行なおうとしていた。
「祭壇にウェルキンド石を置き、石碑に電気を流す…じゃったか。ワシは魔術師ではないので、ここはちょいと手間じゃの」
 そう言いながら、リアは手首に繋いだ電極を石碑へと接続する。
「さて……」
 一時的に体内で過剰発電し、電極を通して石碑に流し込む。その直後、リアの視覚ユニットに内蔵されているセンサーモジュールが石碑から異常な数値を検出した。
 たったいま流し込んだ電気が、石碑の中で爆発的に増幅している。
「…これは、いったい……?」
 そのとき、リアは祭壇付近で見かけた黒焦げの死体のことを思い出した。
「まさか、これ…!やばいっ!」
 慌ててその場から離れようとしたとき、石碑から凄まじいまでの電流が放出され、リアを直撃した。



 リアの頭の中で警告音がけたたましく鳴り続けているが、意思に反してまったく身動きが取れない。声を出すことすらできなかった。
 いったい、なにが起きた?この石碑はなんだ?儀式に失敗したのか?それともイラーナに嵌められたのか?
 さまざまな思考が脳内で渦巻くが、判断材料がない以上、結論の出しようがない。
 倒れて意識を失う直前、リアは視界に表示された文字を見て絶望した。
[ ‐Fatal Damage‐ ]





『……て…さい…起き……このままでは……』
 いったい、機能停止してからどれほどの時間が経ったのだろう。
 自分の頭の中で、自分以外の声が聞こえてくる。まだあまり自由がきかない身体を無理矢理動かし、リアは目を開けた。ノイズだらけの視界に自分の手が映り、どうやら自分は倒れていたようだと自覚する。
『起きてください、ゼロシー』
「…なんじゃ、誰じゃ?この声は……」
『ああ、やっと意識を取り戻したんですね、ゼロシー。機能を復旧させても中々目を醒まさないものですから、心配しましたよ』
「む…」
 次第に視界が鮮明になり、やがて高圧電流を全身に浴びたのがウソのように、何事もなかったかのように身体が動きはじめる。
『それにしても、さっき高圧電流を受けたショックで私が機能復帰できたのは不幸中の幸いでした。この世界に来てからというもの、私がどれだけ呼びかけてもあなたは応じてくれませんでしたから』
「あー、うん、そのー、お主、何者じゃ?」
『おや、憶えておられませんか?どうやら記憶野に障害が残っているようですね、ゼロシー…私はあなたの脳内チップに搭載された独立思考型のAIです。総合支援システム・バージョン4、通称TES4。愛称は<フォース>です、思い出してくれましたか?』
「…いや。まったく覚えがない」
『困りましたね。この世界に来てからというもの、私は状況を改善すべくあなたの機能を最適化するよう努力してきたのですが、どういうわけか記憶野をはじめとする機能の幾つかにプロテクトがかかっていて、私ですらアクセスできないのですよ。ゼロシー、本当になにも覚えておられないのですか?』
「いや、まったく。というか、少し黙っててくれんか。なにやら混乱してきたわい」
 突然、頭の中から聞こえてきた声にリアは戸惑いを隠せない。
 そういえば、いままでも、省電力モードに移行する際などに何者かの声が聞こえてきたことがあったが、まさかその正体がこの、自分の脳内チップに内臓されていたAIによるものだったというのか?



「ところで、のう。お主、さっきからゼロシー、ゼロシーと言っておるが、そもそもその、ゼロシーとはなんじゃ?」
『…?何、ということはないでしょう。あなたの名前ですよ、開発コードSWM52R…まさか、そんなことも忘れてしまったわけではないでしょう?』
「待たんか。わしはリアじゃ、開発コードはHEL-00c」
『おかしなことを言いますね。ジョーク・プログラムが誤作動でも起こしているのですか?あなたはリアじゃありませんよ』
「…なんじゃと?」
 自分は、リアでは、ない?
 TES4…フォースから語られた言葉に、リアは動揺する。
「阿呆を抜かすな。まさかお主、ワシを別の誰かと誤認しておるのではないか?」
『まさか。そんなこと…いえ…ちょっと待ってください。考えられるとすれば…ふむ…ああ、なるほど。そういうことでしたか』
 急に独り言をはじめたかと思うと、次の瞬間、フォースは手の平を返したようにこう言った。
『すいませんでした。いまのあなたはリア、HEL-00cとして活動しているのでしたね。私としたことが、どうやら情報の更新が遅れていたようです。混乱させてしまい、申し訳ありませんでした』
「待たんか。どうにも引っかかる物言いをするヤツじゃの…なにがどうなっておるのか、きちんと説明せんか」
『残念ながら、私は設計者の意図に従って機能するようプログラムされています。それによると、現在あなたが正確な状況を把握すべきではないという結論が下されました』
「ふざけたことを申すな。あれだけ気になることを言っておきながら、いまさら何も言えんで通すつもりか」
『申し訳ありません。私自身にも機能に制限が設けられておりますので…いずれ、すべてを話すときが来るかもしれません。そのときまで、どうかあなたは今まで通りに行動なさってください』
「むう…」
 その説明はもちろん納得できるものではなかったが、かといってこれ以上フォースを問い詰めても、何らかの成果を得ることは難しいだろう。
「仕方がないのう。とりあえずは勘弁しておいてやるわい」
『ありがとうございます。私はこれから随時あなたをサポートいたしますので、どうぞ宜しくお願いいたします。リア』



[ to be continued... ]


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