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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/19 (Fri)23:46
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2011/08/11 (Thu)11:01
 完成する完成する詐欺状態だった「デッドシティ・レクイエム」がついに完成したんじゃ。したんじゃい。

http://reverend.sessya.net/dstop.html

 前作とおなじくらいの文章量になると思ってたけどトータル見たら4分の1くらい多くなってた。
 個人的にハンスとリンの犯罪者カップルは嫌いじゃないので(カズミと違って、人間的に弱い部分が出やすいキャラなのも私としては珍しくて、扱ってて楽しいのかも)、いつか駆け出しから腕利きになるまでのイチャイチャ物語を書きとうござる。

 ちなみに次回作「デッドシティ・レッドライン」も始動中。こっちはいつ完成するかまったく目処が立ってないけど。今度はカズミとコサメの愛の物語だよ!…本当だよ。
 あと懐かしいキャラが出てくるかも。過去作の使い回し的な意味で。

  **  **  **  **

 世のなかは変わった、とホン・イーは言った。
 サクラマ街の南東はずれに位置するスラム地区の、居住区域のさらに奥まった場所に「ホン・イー定制火槍店」はある。
 地元民向けに型落ちした軍用銃を売っている、小汚くてみすぼらしい店だが、常連向けに有名ガンスミスの手からなる希少なカスタム・ガンを仕入れることがあるため、一部では「穴場」として知られている。
 フリーの傭兵であるファブリカ・ニエウォルニク、通称ファブもカスタム・ガンを目当てにこの店の常連になった数少ない客の一人だった。
 野球帽に白のパーカー、泥だらけの軍用ブーツというさながらチーマーのような格好で、その黒い肌はモノクロ写真から飛び出してきたようなこの店に奇妙に溶け込んでいる。
「世のなかは変わったよ」
 ガンオイルにまみれた前掛けを垂らし、持ち主とおなじくらいくたびれたモップに寄りかかるようにして立っていた初老の店主ホンはため息をついた。
 壁にかかった最初期型のハイパワー・ライフルを検分していたファブは、保存状態さえ良ければ美術品としての価値が出たかもしれない錆だらけの銃を片手に言った。
「たしかにそうだ。世相は変わる、気がついたときにはな。いつだってそうだ、ところで…世の中の変化ってのは、この歴史の遺物みたいな店の景気にも影響するもんかね?」
「嫌味な口を聞きゃあがる」
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2011/08/04 (Thu)17:24
 リンの返事を合図に、ほぼ二人同時に発砲をはじめる。
 公用の9・5ミリ弾を使用するマリーエンPP9Hのエジェクション・ポートから薬莢がポップコーンのようにはじき出され、外観のわりに豪華なセダンの内装をみすぼらしいものに変えていく。
 弾倉を交換し、もう一度だけわたしの手の内で銃を踊らせると、そろそろ戦果を確認してもいいだろう、という気分になった。
 いまさっき撃ったぶんだけショットシェルを装填しながら、リンが言った。
「あーあ。ひでぇ様だ、カンパニーマン(企業人)」
 車内は血の海だった。
 生きている人間は一人もいなかった。それはそうだ、全員死ぬように撃ったのだから。
 それでも不幸中の幸いといおうか、酷く損壊した死体は一つもなかった。これなら、どの首がどの胴体にくっついていたかなどという、バラバラのアクションフィギュアを組み立てるような真似はせずに済みそうだ。



 そんなわけで、えーまあイラストが完成しました。
reverend.sessya.net/dc1.html

 ただいま準備中の小説「デッドシティ・レクイエム」は前作でカズミと対峙し、恋人の復讐を果たそうとするもあえなく破れたイニシエート(覚醒者)のハンスが主人公です。
 物語はまだ恋人リンが生きていた頃の、2人で日銭を稼ぐために犯罪を繰り返していた日々を描いたものになります。

 …本当は先日中にこの記事書きたかったんだけど(HPは先日更新している)、なぜかPCの調子が異常に悪くてムリに。
 おかげで三日間続いたひどい下痢も治りましたです。これが人体に備わった自動腸内洗浄システムか。もう水しか出ねぇよ状態。ゴムなしでも安心。ウソ無理。
2011/07/31 (Sun)11:47
 投稿用の小説をちょっと棚の上に仕舞って、現在デッドシティの新作を書いてます。だいたい4分の3くらい書き終えたところで、あともうちょっとですね。
 文量自体は前作ラプソディと変わらないと思います。

 ついでにイメージイラストを描いたので下書き状態のをうp。



 はい、見ての通りカズミとコサメじゃありません。
 といっても話に繋がりはあるんですけどね。時系列的には前作よりも前の話になります。
2011/06/30 (Thu)18:58
 セブンさんの描いたイラストから着想を得て書きはじめた短編がようやく完成しました。


↑これが元ネタのイラスト。勝手に転載してスマンです…
 
 プロトタイプの世界設定をベースに、割と好き勝手やりました。リハビリですし。
 完璧趣味で書いてるんでテクニカル・タームがばりばり登場し、「読みやすさ」だとか「万人受け」とかいうものを一切考慮せずに書いてます。なのでかなり読みにくいかもですが。
 そのうちネタバレ含むあとがきを書くかもしれません。
 あとイラストも描きたいな。グレさん的解釈で。
 
↓小説はこちらから
reverend.sessya.net/dstop.html
2010/10/01 (Fri)00:55
  プロローグ『勇者出現!悪党どもに明日はない』


 ようこそ、覚醒世界へ。
 ここは、みんなが住んでいる世界とは、ちょっとばかり勝手が違う。
 この世界では誰もが、生まれたときから魔法を使うことができるんだ。
 才能があって、技術を磨ける環境にいれば、自分の意志で隕石を…それも、狙った場所に落とすことだって、そう難しいことじゃない。
 しかし才能に恵まれず、また研鑚を積む機会も意志もないやつは、せいぜいコップを遠隔操作して、一センチ動かすくらいが関の山だ。
 そんな魔法に価値があるのかは、わからないが。
 ケチな魔法しか使えなくても、魔法が全然使えないやつ(マンデイン)よりはずっとマシだ…なぜって、誰だって差別されるより、差別する側にいたいだろう?
 ともかく、魔法は人間の生活に影響を与え、少なからず暮らしを豊かなものにしてきた。
 ただしその反面、科学はそれほど発達していない。
 魔法があるから必要ないとも言えるが、この世界に自動車は走っていないし、高層ビルなんか一軒も建っていないし、電気炊飯器すら存在しない。
 軍人は剣と鎧で武装し、戦闘魔術師(コンバット・メイジ)の放つ炎の玉や氷の矢といった、魔法が戦場で乱れ飛ぶさまは圧巻だ。
 それはまさに、夢のような世界。
 「だが」と、オレサマはここで問う。
 正統派のヒーローは、もう売り物にならないのか?
 たとえそれが、剣と魔法の支配するファンタジーな世界であったとしても?
 オレサマの答えは、ずばり「イエス」だ。
 権力を得るため、名声を得るため、金持ちになるため、あるいは一時の快楽のため。
 自分だけが利益を得るために、たいていの人間が他者を踏みにじってのし上がろうとするのは、この世界でもそう変わらない。
 それゆえに、善意ある行動を「偽善」と罵る人の、なんと数多きことか。
 だからといって、悪党に襲われて困っている人を颯爽と助けるヤツがいたって、いったいなんの不都合がある?
 この物語は、そんな…少年時代の憧憬を、大きくなってから実現させようとした、一人の青年の話である。

《ジャジャジャジャーン、デーン!》
「そこまでだ、悪党ども!」
 その青年は、ステレオ・スピーカーの騒音とともにやってきた。
 それだけならまだしも、まるで粗大ゴミ(スクラップ)置き場から拾ってきたような、デカくて小汚いスポットライトに照らされて、青年はまぶしく光っている。
 おまけに(本人は気づいていないのか)、チャックが全開だった。
「な、なんだテメェはっ!?」
 五人がかりで一人の少女を囲っていた野盗たちの視線が、いっせいに青年へと向く。
 木の上に立っていた青年が「トウッ」というかけ声とともに、勢いよく地面に飛び降りる。
《グシャアッ!》
 着地に失敗した青年は、顔面から地面にダイブしていた。
 この場合、「飛び降りた」というよりも、「飛び落ちた」という表現が正しいのだろうか。
 ともかく、いきなり現れた青年が、木から落ちたまま立ち上がらないというのは、かなり異様な光景であった。
 たとえこの世界に、魔法が普遍的に存在していたとしても、だ。
「なんなんだ、コイツは?」
「芸人か?」
 まったくもってわけがわからん、という表情を交わして、野盗たちは青年に懐疑的な視線を向ける。
 その一方で、ついさっきまで野盗たちに襲われていた赤頭巾の少女も、この状況をただ呆然と見つめていた。
 …助けが来たと思ったら、変な青年が木から落ちた。
 すぐそばにいる野党たちに「こういうとき、どういう顔をすればいいか、わからないの」と問いたい気分だった。
 そうすればたぶん、「笑うしかないと思うよ」と返されただろう。
 実際には、そういうやり取りは一切行われなかったが。
 呆然とするあまり、とにかく事の成り行きを見守るしか、なかったのである。
 やがて青年が、くぐもった声を上げながら、ゆっくりと立ち上がった。
 土くれのついた髪をかき上げると、青年はなにごともなかったかのようにポーズを取り、口を開く。
「オレサマの名前はクレイド・マクドゥーガル、正義の勇者だ。これから、貴様ら悪党を成敗する!」
《ドンドンドンドンドンドンドン、デデーン!》
 青年…クレイドの言葉にシンクロするかのように、ステレオ・スピーカーから、謎の怪音が鳴り響いた。
 野盗たちは、ポーズを取ったまま恍惚の表情を浮かべるクレイドを見て、後ずさりする。
 恐怖を感じた…といっても、相手が勇者を名乗ったからではない。
 クレイドが、あまりにも得体の知れない存在だったからだ。
 子供向けの絵本が広く流通しているせいか、この世界でも勇者という存在(というより概念)そのものは、わりと知られている。
 しかし実際に勇者の肩書きを持つ者や、ましてや勇者を自称する者の存在を、野盗たちはついぞ見かけたことはなかった。
 たとえばクレイドが、いかにも歴戦の勇士たる風貌をしていれば、野盗たちも「おいお前ら、こいつをやっちまえ!」といった、悪党にとって定番の台詞を吐くことができたはずだ。
 しかし黒いシャツにはだけたOD色のコート、裾を折ったジーンズという出で立ちは、どう考えても勇者には見えない。
 おまけに帯刀もしていない、となれば、なおさらだった。
 野盗たちがたいした反応を見せなかったからか、クレイドはポーズを取った状態で、無言のまま立ち尽くしている。
「へっくしゅん!」
 赤頭巾の少女が、くしゃみをした。
 シーーーン。
 静寂。
 どことなく気まずい空気が、その場に流れはじめていた。

 ことの発端は、街外れの森の中の小屋で一人暮らしをしているおばあちゃんに、若干十二歳の赤頭巾の少女が、薬を届けようとしたことからはじまった。
 魔法が普遍的に存在し、また発達しているこの世界では、医療のほとんどを魔法に依存している。
 名医の魔法にかかれば、それこそ不治の病から、致命傷になりかねない刀の斬り傷まで、たちどころに治してしまうという。
 一方で、運悪く藪医者にかかってしまうと、間違った魔法を使われたばかりに、鼻風邪が脳梗塞に悪化するというような有様だった。
 なにより、石を投げれば魔法使いに当たるような世界でも、医療関係の魔法のエキスパートとなると、そうどこにでもいるわけではない。
 すぐに代用がきくわけでもなく、また魔法は使用者に多大な肉体的・精神的負担をかけるため、一人の魔法医が一日のうちに診察できる患者の数は限られている。
 そうした事情からか、腕の良い魔法医にかかるには、相応の治療費を支払わなければならない。
 まして、それが往診となれば莫大な費用がかかり、そんな大金を用意できる患者は王侯貴族か成り金か、という具合であった。
 そこで登場するのが、錬金術師だ。
 錬金術師は別名「薬師」とも呼ばれ、さまざまな材料を使って、魔法的効果を持ったポーションの精製を生業とする、風変わりな魔術師の総称だ。
 たとえ近所に診療所がなくてもポーションを使えば大丈夫、旅先でも魔法医いらずというのが、錬金術師の得意な謳い文句だった。
 おたがいに客を奪い合う関係である、魔法医と錬金術師の仲は非常に悪い。
 赤頭巾の少女は、両親が大枚はたいて買った錬金術師の薬(ポーション)をおばあちゃんに渡すため、人気のない森の中を歩いている途中だった。
 そう、野盗に見つかるまでは。
 野盗たちの狙いは、ずばりポーションだった。
 ポーションは闇市場でも人気の高い、価値のある商品だ。
 たとえ出自や効能の怪しいシロモノでも、正規ルートで手に入れるより安価となれば、売り手は引く手数多(あまた)だ。
 おまけに、持ち主が可憐な美少女ともなれば一石二鳥。
 さあこれからどうしてくれようか、と野盗たちが怪しい相談をはじめるのも、当然の成り行きだった。
 その背後でステレオ・スピーカーを用意し、スポットライトを設置し、それらの機器を小型の発電機に接続して、登場の機会を窺っていた怪しい影が存在していたとも知らず。

 それで、いまココ、である。
 自分の用意した盛大なパフォーマンスに対して、まるでリアクションがないのを確認すると、クレイドはおもむろに赤頭巾の少女の手を取って、その場から立ち去ろうとした。
「異論がないようなら、この娘はオレサマがもらっていきますよ」
「お、おい、ちょっと待て!」
 冷凍食品を瞬時に解凍したかのように、野盗たちがクレイドの行動を見咎める。
 おのおのがナイフやブロード・ソード、手斧や弓といった商売道具(エモノ)を取り出し、クレイドを取り囲んだ。
「おい兄ちゃんよぉ、こっちは相手がガキだからって容赦しねえぞ」
「さっさとその娘を放すんだな。さもないと、痛い目見ることになるぜ?」
 ずずずい、と迫る野盗たち。
 当のクレイドは特に危機感を抱いた様子もなく、不敵な笑みを浮かべている。
「いーねえ、そういう台詞。それでこそって感じだぜ?」
 その生意気な態度を見て、野盗たちの額に青スジが立った。
 トゲつき棍棒を持った野盗が、クレイドに向かって叫ぶ。
「ふざけんじゃねーぞ、くぉのクソガキャアーーーッ!」
 勢いよく振り下ろされたトゲつき棍棒が、クレイドの頭に直撃する。
《ガッ!》
「うそっ!?」
 きっと避けるだろうと思って見ていた赤頭巾の少女が、小さな悲鳴を上げた。
 頭頂部から血をどくどくと流しながら、クレイドが地面に倒れる。
 クレイドをぶん殴った野盗も、まさか避けようともしないとは思わなかったのか、トゲつき棍棒の先でクレイドの身体をつついた。
「お、おーい。大丈夫か…わっ」
 野盗がそう言った矢先に、クレイドがガバッと身体を起こす。
 頭から大量に血を流しながら立ち上がったクレイドは、なにごともなかったかのように言う。
「いや~悪い悪い、ボーッとしてた」
 その言葉を聞いた野盗たちは、眉をひそめる。
 …こいつ、アホなんじゃないのか?
 それが、血だらけのクレイドを見たときの、野盗たちの感想だった。
 そんなふうに思われているとは予想もしていないのか、クレイドは野盗たちに、自信満々な笑顔で話しかける。
「どうした、もうおしまいか?」
「なんだと!?」
 頭から血をダラダラと流しているヤツからこんなことを言われたら、誰だって当惑するに決まっている。
 もしかするとクレイドは、殴られたショックで頭がおかしくなったのかもしれなかった。
「ちくしょう、つきあいきれねぇや!さっさと殺しちまおうぜ、こんなヤツ!」
 野盗の一人が、至極もっともな意見を口にする。
「勇者だかなんだか知らねぇが、くたばりやがれ!」
「死んで英雄になれや!」
 口々にそう叫びながら、野党たちがクレイドに襲いかかった。
 ニヤリ。
 クレイドは、これまでにない凶悪な笑みを浮かべると、両手をコートの内側に差し入れる。
 クレイドの両脇にいた野盗二人が、凶器を振り下ろした。
「「くたばれえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」
《ドカッ、ドカンッ!》
 ほぼ同時に、二つの爆音が森全体に鳴り響く。
 いままさにクレイドを殺そうとしていた野盗二人が、あお向けに吹っ飛んだ。
「なにぃっ!?」
 ほかの野盗たちが、目の前の光景に狼狽する。
 腕を交差させたクレイドの手には、二挺のピストルが握られていた。
 残った三人の野盗たちが、いっせいに武器をかまえる。
「まさか、武器を隠し持っていたとはな」
「それもピストルとは」
 さっきは取り乱したものの、クレイドの手の内を見た野盗たちの表情に、恐怖の色はない。
 銃火器は、この世界では珍しい武器だが、存在そのものは知られている。
 この世界の銃はすべて旧態依然の単発式で、弾の装填に時間がかかり、湿気の多い気候では火薬が湿気(しけ)って不発を起こす。
 威力、連射速度、射程距離、あらゆる面において弓に劣る。
 おまけに魔法とも相性が悪く、この世界で銃を使うのは武芸とも魔法とも縁のないマンデインくらいだった。
「どうせいまの一発で終わりだ、相手を間違えたな小僧!」
「仲間を殺したツケを払ってもらうぜぇ!」
 残った三人の野盗たちが、クレイドに向かって飛びかかる。
「この銃に装填されてる弾は一発だけ、そう思ってるんだな?」
 襲いかかってくる野盗たちに、クレイドはそのまま銃口を向けて言った。
「ハンッ、クズはなにをやってもクズだぜ!」
 クレイドが、両手に握ったピストルのトリガーを引く。
《ズガガガガガガンッ!》
「ぐおぅあっ!?」
「おぼあ!」
 先頭を切ってクレイドに突進してきた二人の野盗に、無数の銃弾が撃ちこまれる。
 血を吹きながらぶっ倒れた仲間の亡骸を見て、最後に残った野盗の一人が、驚愕の声を上げる。
「な、なんだとおぉぉぉぉぉ!?」
「残ったのはキサマ、一人きりだ!」
 クレイドは、野盗に向かって「ビシイッ!」と指をさす。
 戦闘の様子を窺っていた赤頭巾の少女が、ずっと成り行きを見守っている。
 後がなくなったと知った野盗は、引きつった笑みを浮かべた。
「キ、キヒヒッ。まさか、連発式とはな。新型か…?」
「だとしたら、どうする?」
「こっちも奥の手を見せるしかないようだな」
 そう言うと、野盗は妙なかまえでナイフを握った。
「ハァァァァ……ヒート・ブレード!」
 かけ声とともに、ナイフの刃から炎がほとばしる。
 魔法だった。
 銃口を野盗に向けたまま、クレイドはつぶやく。
「妙な小ネタを使いますな、オタク」
「ほざけぇ!ヒート・カッター!」
「ムッ!?」
 クレイドが警戒した矢先に、野党が振ったナイフから、炎をまとった衝撃波が発生した。
 炎の衝撃波は、火花を散らしながらクレイドの左肩を切り裂く。
《シュバッ!》
「ぐおっ!?」
 苦悶の表情とともに、クレイドは左手のピストルを落とした。
「キヒヒッ、狙いを外したか。だが、次で終わりだ!」
 歪んだ笑みを浮かべながら、野盗はナイフを振り回し、次々と炎の衝撃波をクレイドに飛ばしてくる。
《シュババババババンッッッ!》
「フッ!」
 クレイドは素早く横転して炎の衝撃波をかわすと、木っ端とともに火を噴き出す大木を背にしながら、手首にスナップをきかせてピストルを横振りした。
 グリップからマガジンが抜け落ち、野盗に向かって回転しながら飛んでいく。
 マガジンが抜けたピストルをかまえると、クレイドはチャンバーに残っていた最後の一発を、先刻飛ばしたマガジンに叩きこむ。
「いくぞ、必殺!ヒーロー・エクスペンダブル・ブラストファイアー!」
《ドカンッ!》
 かけ声とともに発射された銃弾はマガジンに命中し、マガジンに装填されていた弾薬が誘爆を引き起こした。
《バッガアアアァァァァァンンッッッッッ!!》
 撃ち抜かれたマガジンは、まるで手榴弾のような爆発を起こし、破砕された金属片が野盗の肉体をめちゃくちゃに引き裂く。
「おがっ、ばっ、べえぇぇぇぇぇぇ…」
 おびただしい量の血飛沫を上げながら、野盗は妙な悲鳴を上げて地面に倒れた。
 クレイドはコートのポケットから、新しいマガジンを取り出してピストルに装填すると、そのまま倒れた野盗のところまで歩いていく。
 爆発の直撃を受けたにもかかわらず、野盗にはまだ息があった。
「や、た、助けて、くれ…」
「う~ん」
 いまにも死にそうな悪党に命乞いをされる、というのは、妙な気分だ。
「もう悪いことはしない。真面目に働く。酒場の用心棒でもやって暮らすよ。だから、なあ…命だけは取らないでくれ。頼むよ」
「う~ん」
 どうしようかな。
 クレイドは、大雨の日にかぎって食料が底をついたときのことを、思い出していた。
 買い物に行くべきか、行かざるべきか。
 一日食事を我慢するか、ずぶ濡れになるのを覚悟で買い物に行くか。
 たしかそのときは、食料どころか金も底をついていたので、雨水で飢えをしのいだのだった。
 選択肢は、なかった。
「正義と善意は、似ているようで全然違う。オレサマのことは、神様が裁けばいい。ただし、オタクのことは、オレサマが裁く」
 ピストルのスライドを引いて、弾をチャンバーに装填すると、クレイドは銃口を死にかけの野盗に向けた。
「オタクを助ける気はない。だめだね」
「…かみさま、たすけてください」
《ズドン》
 銃声が森にこだますのと同時に、野盗が口を閉じる。
 銃口から漂う硝煙を一息で吹き飛ばし、クレイドはピストルをホルスターに戻した。
 赤頭巾の少女がよろよろと立ち上がる。
「あ、あの。助けていただいて、どうもありがとうございました」
 クレイドに向かって、うやうやしく頭を下げる。
「お礼とか、なにもできないですけど…」
「いや、いいんだよ。そういうのを期待して、助けたわけじゃないから」
 温厚な笑みを浮かべて、クレイドが言った。
「ちょっとした感謝の気持ちと、あついキッスさえあれば」
「思いきり下心まるだしじゃないですか!」
 さらりと無茶な要求をするクレイドに、赤頭巾の少女がツッコミを入れる。
 えー、うそ、心外だなあ、というクレイドの表情が、じつに腹立たしい。
 やがてショーケースの楽器を羨望の眼差しで見つめる子供のような顔で、クレイドが言った。
「危ないところを助けたじゃんかさー。キスくらい、してくれてもバチは当たらんと思うんだけどナー」
「いやです」
「いやですか」
「いやです」
「オレサマは、キミくらいの年齢でも、じゅうぶん守備範囲内なんだけどね?」
「なおさら、いやです」
「先っちょだけでいいからさー」
「それはキスの話ですよね!?」
 急に、赤頭巾の少女が声を荒げた。
 顔がリンゴのように真っ赤になっている。
 一方のクレイドはといえば、さして態度を変えることもなく。
「あたりまえじゃないか。他に思い当たることでも?」
「う~…な、なんでもありません」
 赤頭巾の少女は、パタパタと手を振って、火照った顔を冷やそうとした。
「と、とにかくっ!キスなんて、絶対にしません!」
「どうしてもかぁ…」
「あーっ、もう!」
 このままでは埒があかない。
 振り上げた両手を下ろすと、赤頭巾の少女はクレイドに重大な指摘をした。
「あなた、チャック開いてるっ!」
「え、ウソぉ!?」
 素直に、自分の股間を見下ろすクレイド。
 本当に開いていたのだから、世話はなかった。
 その隙に、赤頭巾の少女は野盗の一人が持っていたトゲつき棍棒を拾い上げると、チャックを閉めようとしていたクレイドの股間を、思いきり殴りつけた。
「死ねえええぇぇぇぇぇぇっっっ!」
《メシャアッ!》
「おぼばびゃーっ!」
 クレイドは、股間にトゲつき棍棒をめりこませたまま、バターンと音を立てて倒れる。
 ビクビクと痙攣を繰り返すクレイドを尻目に、赤頭巾の少女はポーションと食料が入ったバスケットを拾い上げると、さっさと森の奥に姿を消してしまった。
 これが、今回の事件の二ヶ月前の出来事である。
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