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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/25 (Mon)18:50
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2015/03/15 (Sun)09:21

 どうも、グレアムです。
 とりあえずブログのデザインがある程度整ったので、暫くはこの形でやっていきたいと思います。いままでの記事&コメントとの整合性も考えなければならなかったので一部見にくいところもありますがご容赦願います。
 あと画像のサムネのサイズを大きくしました。いままでのはちょいと小さすぎたので。
 ただ回線が細いor混雑しているorなんか知らんが重いとかいう場合は読み込みが遅くなるかもしれません。すいません。サムネのサイズが正しく表示されない(枠からはみ出る)場合がありますが、そのときはブラウザを更新すれば正常に表示されるようになります。





 あーあと最近Project Zomboidをプレイしてます。戦闘終了後は死体を集めて積んでおくのが俺のジャスティス。最初は律儀に燃やしてたけど、盛大にバーニング&黒焦げ死体の山ができるならともかく一瞬で小さな炭ができて終わりというビジュアル面の貧弱さに萎え。見た目のインパクトって大事です。
 ヌルゲーマーな俺はもちろんサンドボックスの激ヌル即無双状態でプレイしてます。「これそういうゲームじゃねーから!」という意見は受け付けないイィィーーーッ!!
 銃火器は基本的にピストル一択ですかね。ショットガンは重い&装填が遅いという欠点が利点で相殺しきれないので無理に使う必要はなさげです。これは俺が毎回警察官でやってるせいかもしれませんが(=最初からピストルがある程度当たる)。
 銃を使うなら幸運の特性は必須っぽいです。弾薬の取得チャンスが体感で二倍どころの話じゃなくまさに大量入手できるので。
 近接武器は包丁&コンバットナイフがお気に入りです。慣れると殺し屋みたいな動きでガンガンゾンビを暗殺できるので楽しいですよ。
 あとSpiffoかわいいよSpiffo。






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2015/03/11 (Wed)12:03

 どうも、グレアムです。
 コンコレの怪文書、もとい二次創作小説のまとめをHPにアップしました。

<< 本編 【 血のように紅く - Alaya Krov - 】 >>
<< 後日談【 淡き残り香 - Blido Aromat - 】 >>

 えー当たり前を言うようですが後日談は本編のあとで読んでください。いろいろぶち壊しになる可能性があるので。
 リアルタイムで更新中、これひょっとして結構長いんじゃあ…と思ってたらどうもいままでで一番txtの容量デカイ!?と思ったら文字数はまだチベット編のほうが多かった。んー、容量と字数の勘定が合わないのはなんでだ?キリル文字使ってるから?

 ちなみに現在ブログがちょっと見辛くなってますが、これは現在進行形でテンプレートいじってる最中だからです。モニターだと黒背景白文字のが絶対読みやすいし目に優しいと思うんだよ俺。
 ぶっちゃけ勘だけで作業してるんで見る人が見れば卒倒しそうな構造になってると思いますが、最終的には普通に見る分には耐えられるような代物になるよう努力しますんでそこをなんとか…なんとか…








2015/03/09 (Mon)23:03

「ちょっとぉ!コレ!なに!?」
「なんなんだいきなりどうした」
 パウダーギャングの襲撃を目前に控える朝、グッドスプリングス北のガソリンスタンドにてキャラバン・トレーダーのリンゴは流れ者の叫び声で目を醒ました。
 固い床で寝たせいか、いまひとつ疲れが取れないような感覚に眉をしかめつつ声がしたほうを見ると、なにやらブレンダがサンセット・サルサパリラの空瓶を片手に呻いている。
「なんか喉がガラガラになるし!薬みたいな変な味するし!喉が渇いてたから飲んだのにナニコレ飲み物じゃないの!?」
「俺のを勝手に飲むなよ…キミ、まさかサンセット・サルサパリラを知らないのか?モハビにいる人間なら、レイダーだろうがリージョンだろうがみんな知ってるぜ」
「知らない!水、水ないの?ヌカコーラでもいいや!」
「ヌカコーラは知ってるんだ…生憎、ここには他の飲み物はもう残ってないよ」
「う~…」
 そんなやり取りをしていたとき、ガチャリという音とともに猟犬シャイアンを連れたサニー・スマイルズが建物の中へ入ってきた。その面構えはシリアスそのものである。
 前日はウィスキー片手にキャラバンに興じていたブレンダは、琥珀色の液体が入っていた空瓶を睨みつけながらサニー・スマイルズに尋ねる。
「あなたが来たってことは、もう連中、近くにいるのね」
「ええ…あなた、大丈夫?見るからに顔色が悪いけど」
「平気。銃を撃つのに問題はない…はず。だと思う。たぶん」
「だといいけど…パウダーギャングの連中はまだこちらの様子に気がついてないわ。昨日の打ち合わせ通りに頼むわよ」
「わかった。おっけー」
 ブレンダは右手の親指と人差し指でOの字を作ると、バーミント・ライフルを担いでガソリンスタンドを出た。リンゴも旧式のブローニング・ハイパワーを抜き、後へ続く。




「来たわね…」
 二日酔いの頭を抱えながら、ブレンダはパウダーギャングたちの背中を見下ろす形で民家の屋根へと上がった。
 先日、リンゴへ事の次第を伝える前にグッドスプリングスの住民をプロスペクター・サルーンに集めて開いた作戦会議では、恐らく連中はダイナマイトと雑多な火器で武装しているだろうと予測していた。
 戦いに先駆けての物資調達について、ドック・ミッチェルから医療品の供与はあったものの、トレーダーのチェットからの協力は得られず、またイージー・ピートから「こちらもダイナマイトを使用しては」という提案がなされたが、これはブレンダによって却下された。
 今回の戦いは、ただ勝てば良いというだけのものではない。
 町には未来がある。今後のことを、戦いが終わったあとのことを考えなければならない。爆発物による施設へのダメージは、建設資材に恵まれているとは言い難いグッドスプリングスにとって死活問題となる。
 それはつまり、パウダーギャングたちの攻撃を可能な限り封殺しなければならないことも意味していた。連中がダイナマイトの使用を躊躇することはあるまい、であらば町に近づく前に戦力を削る必要があった。
「最初の爆発を合図に発砲を開始して」
 一番槍、はじめの一弾を自分が放つことをブレンダは宣言し、話し合いは終わった。
「さて…」
 ブレンダはバーミント・ライフルの木製銃床を頬につけ、照星に唾をつけて標的を確認する。
 予想していた通り、パウダーギャングたちはダイナマイトを外から見えるような箇所へ身につけていた。おそらく示威的な意味合いもあるのだろうが、戦闘慣れしている人間から見れば、それは逆効果だった。それも、取り返しがつかないほどの。




 ズドッッッ……----ン!!!
 ブレンダの発砲とほぼ同時に、地面を揺らすほどの巨大な爆発音が響く!
 隣を歩いていた仲間がいきなり爆散したのを見たパウダーギャングたちは、いま何が起きたのかをまったく把握していなかった。攻撃されたとすら理解していなかったかもしれない。
 ガチャリ、彼らから離れた位置で遊底桿を引いたブレンダは、狙い通りに銃を撃てたことに対して安堵のため息をつく。
 彼女はパウダーギャングの一人が身につけていたダイナマイトを狙って発砲したのだ。
 そして計画通り、爆発音を合図に町のあちこちへ散らばっていた住民たちが一斉に発砲をはじめる。
「くそ、まさか…待ち伏せか!?」
 ようやく事態を理解したパウダーギャングたち、そして彼らを纏めるジョー・コッブは慌てて散開し、建物の影に隠れながら応戦をはじめた。
 思っていたよりも出来る連中だ…と、ブレンダは舌打ちする。
 ただのゴロツキの寄せ集めであれば、最初の爆発でパニックに陥り、成す術もなく全滅していたはずだ。しかし連中は反撃し、しかも爆発物で纏めて殺られないよう互いの距離をとり、ふたたびダイナマイトを狙い撃ちされないよう民家を盾にしている。
 そして建物の影に入ったということで、これはおそらく偶然の産物だろうが、パウダーギャングたちはブレンダの射線から外れることに成功していた。
「…ここからじゃ狙えない!」
 そう判断したブレンダはすかさず屋根から飛び降り、すぐ下を通っていたパウダーギャングの首筋に銃床を叩き込む!
 グシャリ、頚椎の砕ける嫌な音がし、倒れる男の手からショットガンを奪いブレンダは駆ける。近接戦闘でボルトアクション式のライフルはいくらなんでも分が悪い。
 やがてブレンダは、見覚えのある顔と対峙した。
「おまえは…!」
 慌てて拳銃の銃口を向けるジョー・コッブの顎に銃床を叩き込み、続けざまに喉を殴打する。
 苦しそうに呻くコッブの膝裏を銃床ですくい引き倒したブレンダは、すかさず銃口を額に押し込み、接射した。




 ボンッ!
 派手な破裂音とともにコッブの頭部が吹き飛び、ブレンダの全身に血と脳漿が降り注ぐ。
 それが最後の銃声だった。
 所詮は多勢に無勢というやつで、町の住民の一致団結の前にパウダーギャングたちは善戦する間もなく全滅していた。
 そしてコッブを仕留めるブレンダの手際を見ていた町の住民たちは、改めて彼女を「異彩を放つ存在である」と認識する。
 たとえばサニー・スマイルズの射撃は、ゲッコーなどを狩るための技術(ハンティング・テクニック)を人間相手に応用しただけであり、他の住民にしても、「銃を撃てば人を殺せる」という、それだけの意識で引き金をひいていたに過ぎない。
 しかしブレンダは違った。
 彼女の戦闘法(ロジック)、身のこなし、立ち回りは、明らかに「人間を殺すための技術」だった。記憶を失っていてもなお体に身についた動き、それは彼女が「コロシに慣れ、長けた人間」であることを示唆しているに他ならない。




 そのことに、ブレンダ自身も遅ばせながら気づいていた。
「あ…あたし……」
 つい先刻まで、疑問にすら思わなかったこと。
 あたり一面に広がる血のスプレー、男たちの死体を見下ろしながら、ブレンダはこういう光景を、この匂いを、ひどく懐かしい…「慣れ親しんだもの」と感じている自分に恐怖する。
「大丈夫?」
 躊躇いがちにブレンダの肩に手を置くサニー・スマイルズ、それがきっかけになったのかはわからないが、ポンと肩を叩いたその小さな衝撃が、ブレンダの記憶の扉を開いた。




 タタタタタタタン!
 連続して響く.32口径弾の銃声、手首に響く振動。
 あたり一面に散らばるレイダーの死体、血のスプレー、硝煙の匂い。
 それはごくありきたりな光景、施設内に奴隷が捕まっているという情報をもとに敢行される襲撃作戦。ブレンダと、そしてもう一人の男は、常に手際よくクズどもを葬っていく。




「こっちも片づいたぜ。みんなを連れて脱出する前に、ちょいと家捜しでもしていきますか」
 クレイブ・マクギヴァン、ヴォルト出身の傭兵。
 陽気というよりはデタラメな性格に見えるこの男は、その内面に複雑な繊細さを秘めている。思慮に欠ける言動や戦いにおける加虐性は、優しさを枷としないための彼なりの自己防衛であり、この狂った世界で正気を保つために必要な二面性であることをブレンダは理解していた。
 もっとも、それと互いに理解し合うまでは喧嘩が絶えなかったのだが…




「愛してる」
 きっとマスクの下ではとても辛そうな表情をしているのだろう、彼に微笑みかけ、ブレンダは最期の瞬間を受け容れる。
「…あり、がと」
 銃声。

「どうしたの?本当に大丈夫…」
 急にうなだれ、膝をつくブレンダに、サニー・スマイルズが声をかける。
 しかしブレンダにとっては、それどころではなかった。
「…あたし、なんで生きてるんだろう」
「いきなり何を…」
「あたし、死んだはずなのに。あのとき。彼に撃たれて」
「まさか、記憶が戻ったの?確かにあなたは頭を撃たれたけど、ドック・ミッチェルの手術で助かったのよ。それで…」
「違う、そうじゃない!そうじゃないんだって…!」
 心配するサニー・スマイルズの手をはねのけ、ブレンダは怯えた表情で叫ぶ。
 記憶が戻った。しかしそれは、彼女に安心を与えるようなものではなかった。不安や矛盾に満ちた感情に揺さぶられ、ブレンダはとめどなく溢れる涙を拭おうともせず、ただ…叫んだ。狂ってしまったかのように。
「あたしは…死んだはずなんだ!四年前に!ワシントンで!」



**      **      **      **




 半日後、ようやく落ち着きを取り戻したブレンダはドック・ミッチェルとともにヴィクターの小屋を訪れていた。
「いきなりゲッコー退治のみならず、撃ち合いにまで参加させるとは。まったくサニーめ…ちょっとした荒療治になってしまったな」
 すこし苛ついた様子でソファに腰かけるドック・ミッチェルに、しかしブレンダは言葉を返さずあたりの棚や台の上を掻き回す。
 やがて一枚の紙片を見つけたブレンダは、それが探していたものであることを確認すると、さっそく文面に目を通した。
 それは、モハビ・エクスプレス社の配達指示書。
「あの日墓場で、与太者を連れた白スーツの気障なやつと争っていた男がいてな。やがて白いスーツがピストルを撃って、それがお嬢ちゃんに命中した。白スーツと与太者はそのあとすぐに逃げちまったんだが、そいつらを追いかけるまえ、男は物陰からずっと隠れて見てたおいらに気づいて、お嬢ちゃんをおいらに託した…とまあ、そういうわけさ。紙はそのとき、男のポケットから落ちたもんだ」
 あまり広いとは言えない小屋の中で、やや窮屈そうにしながらヴィクターが語る。
 配達指示書の内容は、一枚のプラチナ製カジノチップをフリーサイド経由でニューベガス・ストリップ地区北門まで配送せよ、というものだった。
 この内容を見る限り、どうやら白いスーツが率いるグループと敵対していた、おそらくブレンダの仲間であろう男はモハビ・エクスプレス所属の運び屋であったことが予想できる。
「記憶をなくした女性にはあまりにも刺激が強い話だ。だから私は、君の状態が落ち着くまでこの話はしたくなかったんだ」
 患者への配慮からヴィクターに口止めをしていたらしいドック・ミッチェルはそう言った。
 しかしブレンダが記憶を取り戻した以上、隠し事をしていても仕方がない。とはいえ未だブレンダがドック・ミッチェルの患者であることに違いはなく、彼がヴィクターへの事情聴取に付き添いとして同行しているのはそういうわけだった。
「男のことはよく知らないよ、なにせお嬢ちゃんをおいらに押しつけてすぐ行っちまったもんでね。ただ…男は自分を、『キャリア・シックス(六番目の運び屋)』と名乗っていたな」
「見た目は?どういう格好をしてた?顔は見たの?」
「顔は見えなかったな。暗かったからじゃあない、ゴーグルとマスクで顔を隠してたんだ」
 ヴィクターの言葉に、ブレンダがビクンと反応する。
 それはすこし離れた場所にいたドック・ミッチェルにもすぐにわかる反応で、すでに彼女から過去の記憶について聞いていた彼は、ブレンダに問いかけた。
「それは、四年前に一緒にいたという、クレイブという傭兵の見た目と一致するのかね?」
「わからない…それだけじゃあ。もっと他に手がかりは?」
 いまにも掴みかからんばかりの勢いで迫るブレンダに、ヴィクターは無言のままモニターを向けると、プツンと音を立てて映像を切り替えた。




 それは、一枚の写真。
 おそらく動画を記録するほどの記憶容量がないせいだろうが、ヴィクターがあの日の夜に撮影した一枚の写真は、たしかにブレンダの記憶の中のクレイブと一致する男の姿を忠実に再現していた。
「間違いない、あいつ…どうしてこんな場所に…」
 配達指示書には、仕事が完了したらプリムにあるジョンソン・ナッシュの支店で報酬を受け取れと書かれている。クレイブ…キャリア・シックスが仕事を完了させるにせよ、失敗するにせよ、いずれにしてもプリムのモハビ・エクスプレス支店まで行けば詳しい事情を聴けるに違いなかった。
「追うつもりかね」
 まったく賛同できない、といった表情でドック・ミッチェルが尋ねる。
 なにも死にかけた女性の命を助けたのは、モハビ・ウェイストランドの不毛の荒野に放り出すためではない、と彼は無言のままに言っていた。しかしそれ以上に、止めても無駄だと理解していることも、その深い年輪が皺の隙間に刻まれた顔には現れている。
「確かめなきゃ…彼が本当にクレイブなのか、ここで何をしているのか。あたしは誰なのか、本当にブレンダ・フォスターなのか」
 ブレンダにとって何よりも問題なのが、クレイブのことよりも、自分自身の素性についてだった。
 何年も前に死んだはずの自分がなぜ生きているのか。
 奇跡?魔術?あるいは、超科学?
 そうでなければ、あるいは…

 旅立つ直前に、ブレンダはドック・ミッチェルの診療所へ立ち寄ることを奨められた。
「これは元々、君が持っていたものだ。ギャングどもと撃ち合うなら、もっと早く返してやるべきだったかもしれないが」




「あたしの銃…」
 PSG-1、高精度セミオートライフル。
 さらにドック・ミッチェルはかつてモハビ中を旅していたときに使っていたショットガンと、容量の大きい多機能バックパックを彼女に託した。
「ありがとう、何から何まで…そして、ごめんなさい」
「いいんだ。今でも医師としては認めたくない結果ではあるが、いずれこうなることはわかっていた。もちろん予想よりずっと早かったが、しかし、私は自分のポリシーよりも君の意志を尊重したい」




 そして、ブレンダはグッドスプリングスを旅立った。
「戻りたくなったら、いつでも戻ればいい。君はもう、我々の家族なのだから」
 おそらくは本心なのだろう、ドック・ミッチェルの言葉に優しく頷きながら、ブレンダはすこしだけ名残惜しそうに背中を向ける。
 目指すは南方プリム、「もう一つのニューベガス」としてカジノで栄える町。
 彼女は取り戻した記憶の真実を確かめるため、新たなる冒険の一歩を踏み出した。



< Wait For Next Deal... >








2015/03/07 (Sat)17:40


 ゲッコー…放射能によって変異・巨大化したヤモリの亜種。元来臆病な生物であるため、こちらから刺激しない限り襲ってくることはそうない。しかし彼らの威嚇を無視して近づいた場合、その鋭い歯で噛みつかれることだろう。死ぬまで攻撃されることは滅多にないが。
「ちょっと可愛いかも」
「本気で言ってる?」
 二本足で不細工に駆け回り、大口を開けて「ホゲー」と威嚇してくるゲッコーにブレンダは思わず頬を緩ませるが、どうやらそういう感覚はこの周辺では珍しがられるようだ。
 もちろん、日々をゲッコーとの悪戦苦闘に費やすサニー・スマイルズにとって、彼らの仕草にいちいち関心を持ち「可愛い」などと言っていられないのは当たり前のことであり、それはブレンダにも理解できるため、あえて議論を交わすつもりはないが。
「このあたりには町の存続に欠かせない水源がいくつかあってね。グッドスプリングスが商人や旅人の立ち寄り所として機能しているのも、この水源があるおかげよ。ただ時々、ゲッコーが水場を縄張りにしてしまうことがあってね…彼らは臆病なくせに縄張り意識が強いから、居着かれると町の人たちが水を汲めなくなってしまうのよ」
「だからこうして、彼らを狩る必要があるわけね」
「そういうこと。それにゲッコーの皮や肉はいいお金になるしね」
 そんなことを話しながら、ブレンダたちは三箇所の水場を回りゲッコーの群れを退治していく。




「まずいなぁ…撃たれた衝撃で跳ねたゲッコーの死体が給水所に突っ込んじゃった」
「大丈夫よ。少しくらいゲッコーの体液が混じった水を飲んだって、ウェイストランダーは死にやしないわ」
「…それもそうか」
 それを町の人間にわざわざ知らせる必要は、もちろんないだろうが…そんなことを考えながら、ブレンダは「よいしょ」と声を出してゲッコーの死体を水桶から放り出す。
「とりあえず、今日はこんなところかしらね」
 一方でしばらく銃を手に周囲を警戒していたサニー・スマイルズは、安全を確認するとブレンダに数枚のヌカコーラ・キャップ…ウェイストランドにおける通貨を手渡した。
「これ、今日のアシスタント代よ。次はキャンプの張り方を教えるから、明日の午後にまたここへ来てちょうだい」
「わー、やった」
 これで念願の酒が飲める。
 そう思ったブレンダは思わず微笑み、次いで、「ここでも通貨はキャップなんだ」と突拍子のないことを頭に思い浮かべる。
 はて、「ここでも」?
 自然とそう考えた自分の思考に、ブレンダは頭を捻った。もし自分の故郷がモハビのどこかであれば、今みたいなことを考えるだろうか?
 少し考えても答えが出ないので、ひとまずブレンダは疑問の解決を保留しておくことに決めた。




「おいクソババァ、てめえらがリンゴの野郎を匿ってるのはわかってんだ!こっちに引き渡さないなら、町の安全の保証はできねえぞ!」
「そんな男は知らないって何度も言ったでしょう?ここは酒場よ、注文がないなら出て行ってちょうだい!」
「後悔しても知らねえからな!」
 ブレンダが町の酒場プロスペクター・サルーンの扉を開けたとき、店主らしき女性と与太者風の男の間でなにやら修羅場めいた口論が交わされていた。
「おォーっとお手が滑っちまったぜえぇぇぇ!」
「ちょっとなにすんのよ、このクソ坊主!」
 ガッチャン!
 しまいに男はカウンターに乗っていたラジオをはたき落とし、そのまま逃げるように店を出て行ってしまった。
 はぁ~…と、ため息をつきながらラジオを拾う女性。ラジオは破損した背面パネルから派手に部品を撒き散らしており、さっきまでクリアなサウンドでダンディな男性の語りを流していたのが嘘のように沈黙してしまっている。
「なんか剣呑な雰囲気だったけど、大丈夫?」
「まったく、あの連中には手を焼かされるわ…あなた誰?見かけない顔だけど」
「えーと、お墓の近くで頭を撃たれてここに担ぎ込まれたらしい、です」
「ああ!あなたね、例の幸運な患者さんって。よろしく、私はトルーディよ。この酒場の店主」
「ブレンダっていいます。じつは、名前のほかは何も憶えてないんだけど」
 二人は握手を交わし、トルーディはカウンターの内側へ、ブレンダはスツールに腰かける。
 ウィスキーを注文したブレンダは琥珀色の液体をショットグラスに注ぎつつ、壊れたラジオを睨みつけるトルーディに質問した。
「ところで、さっきの男、何者?」
「あいつ?ジョー・コッブとかいう与太者よ。パウダーギャングっていう悪タレの一員らしいわ」
 パウダーギャングというのは、刑務所を脱走した囚人で構成された犯罪者集団らしい。
 かつてはNCRが管理する刑務所の収監者だったが、工事用のダイナマイトを使って脱獄し、さらに刑務所の職員を殺して施設を乗っ取ったとか。現在ではその刑務所を活動の拠点にしているようだ。パウダーギャングの名の由来は、そのものずばりパウダー(火薬)から来ている。
「NCRって、なに?」
「知らないの?ああ、そういえば記憶がないんだったわね。NCR…新カリフォルニア共和国。なにが『新』なのかは私も知らないんだけどね」
 皮肉っぽく笑い、トルーディはNCRと、そして彼らと敵対しているシーザー・リージョンについて簡単に説明した。
 NCRはカリフォルニア全域に影響力を持つ巨大な組織で、ざっくり言えば、ものすごくざっくり言えば、いまのところモハビにおける暫定政府のようなもの、らしい。大規模な軍隊を抱えており、彼らのパトロール区域は核戦争後のアメリカにあって比較的治安が保たれている。
 もっとも態度がでかい、プライドが高い、勢力下の住民への課税額が驚くほど高い、といった事情から、彼らを素直に評価する人間は滅多にいないのだとか。
 シーザー・リージョンはコロラド川を跨いだ東に拠点を持つ勢力で、かつて分裂していた八十六もの部族を一つに纏め平定したことからNCRに次ぐ巨大な組織として知られている。
 その内訳はレイダーも真っ青の厳しい階級制を敷いており、リージョンに所属していない地域への略奪・強盗・虐殺行為を日常的に行なっているらしい。さらには多くの奴隷を抱えており、特に女性は組織への忠誠を問わず道具としか扱われないため多くのウェイストランダーから嫌われている(特にこの点をトルーディは力説した)。
「ふ~ん…とりあえず、リージョンを見たら背を向けて来た道を戻ることにするわ」
「それが賢い選択ね」
 結局その日はそこで話が途切れてしまい、なぜリージョンがNCRと敵対しているのか、そもそも店に入った直後に口論していたジョー・コッブという男は何者なのか、なにを争っていたのか、という話は聞けず終いだった。




 後日、サニー・スマイルズからキャンプ設営の方法を教わることになったブレンダは、モハビのウェイストランダーが「回復パウダー」と呼ぶ治療薬を作るための材料を集めることになった。
「ブロックフラワーとザンダールートね…たしか廃校の近くと、あたしが見つかったお墓によく生えてるって言ってたかな」
 そんなことを言いながら町へ向かう道を歩いていたとき、ブレンダは突如茂みから飛び出してきた野生のコヨーテに襲われた!
「グルルルル…ガゥアッ!」
「えっ!?うわっ、ちょ、な…!?」
 鋭い牙を首筋に突きたてようとするコヨーテをバーミント・ライフルの銃床で跳ねのけ、ブレンダは倒れた姿勢のまま照準を使わずに引き金をひく!
 ズダンッ!
 反転しふたたびブレンダに噛みつこうとしたコヨーテの首にライフル弾が命中し、ビクンと一瞬痙攣したのちコヨーテはその場に崩れ落ちた。
 すぐに遊底桿を操作して次弾が発砲できるようにし、ブレンダは油断なくコヨーテの様子を窺う。
 どうやら息の根は止まったようだ…呼吸を止めていたブレンダは大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。
 そこへ…
「いやー見事なもんだ。つい先日、脳天に銃弾を撃ち込まれたとは思えない回復ぶりだなあ」
「…誰?」
 額の汗を拭いながら顔を上げたブレンダの先にいたのは、一輪走行型の奇怪なロボット。ボディには巨大なモニターが備えつけられており、なにやらカウボーイ風の男のイラストが写っている。
 これが顔のつもりなのだろうか?
「ろ…ろ、六年生のときに同級生だった……」
「別においらは渋谷のセンター街あたりをうろついてたわけじゃないぜ。ロボットと素直に言っても傷ついたりしないから安心してくれ」
「あ、そう」
「おいらヴィクターってんだ、ずっとこの町に住んでる。なにを隠そう、あんたを町まで運んだのはこのおいらなんだぜ」
「え、そうだったの!?」
 訊ねたいことは山ほどあったが、いまはとりあえずサニー・スマイルズから言いつけられたおつかいをこなすのが先だ。
 それに「ずっとこの町に住んでる」と言うのだから、話を聞くことはいつでもできるだろう。
 一礼してその場を立ち去るブレンダに、ヴィクターはあまり器用な作業に向いてなさそうな手を振りながら言った。
「無茶をするんじゃないぞー」




「ザンダールートの採取は終わったけど、ちょっとだけ廃校の中も覗いてみようっと」
 かつて小学校だった建物に入ったブレンダは、放射能で巨大化したカマキリを銃床で叩き潰しながら屋内を散策した。
「中の物はなんでも持っていっていいってサニー・スマイルズが言ってたし。まあ、そう言うってことは、もうガラクタしか残ってないってことだろうけど」
 あまり期待せずに周囲を見て回っていたところ、ブレンダは堅く施錠された金庫と、どうやら金庫と連動しているらしいロブコ社製の端末を発見する。
「ん~…鍵開けは得意だった気がするんだけどなー。鍵の構造が全然思い出せない。機械とか、プログラム関係は苦手なんだけどねー」
 ひとまず金庫の鍵を入念にチェックしてみるが、記憶喪失の弊害か、開錠の糸口がまるで掴めない。
 そこでブレンダは近くに置いてあった「プログラマー・ダイジェスト」という雑誌を片手に、端末のクラッキングを試みたのだが…
「うー、この小さな緑色の文字列を見てるだけで頭が痛くなってくる…あいつなら、こういうの得意なんだろうけどな」
 ぶつくさと弱音を吐きながらもどうにかクラックに成功し、金庫に入っていた僅かながらの道具やキャップをポケットに入れたとき、ブレンダは「はて」と首を傾げた。
 あたしがさっき言った、「あいつ」って、誰だ?
 なにかとても大事なことの気がする、しかし幾ら考えてもそれらしいことは思い出せない。




「あれがニューベガスかぁ…」
 ひとまず思い出せないことをいつまでも考えていたって仕方がないので、ブレンダは北の墓地へ向かいザンダールートを採取。丘の上から遠く北に見える巨大な都市を眺めた。
 煙草をくゆらせ、紫煙を肺の中で循環させながら、そういえば自分が見つかったのはこの墓地だったな…あのヴィクターとかいう、妙な機械が拾ったらしいが、などと考えていたとき、町の方角から爆発音が響いたのを耳にした。




 ブレンダが駆けつけたとき目にしたのは倒壊した柵と、吹き飛んだビッグホーナーの死体だった。
「いったい、なにが…」
「くそ、あいつら…パウダーギャングどもの仕業だよ!」
 どうやらブレンダと同様、爆発音を聞いたあと慌てて駆けつけてきたらしいサニー・スマイルズが怒りを露わに吐き捨てた。
「こっちに来るとき擦れ違ったから、まさか…とは思ったけどね」
「パウダーギャングって、あのジョー・コッブとかいうやつの一味?」
「そう、たぶんお得意のダイナマイトを使ったんだろうさ。いままでは文句言ってきても無視してたけど、町の大事な家畜に手を出されたんじゃあ、もう黙っていられないよ」
 ビッグホーナーは良質な肉と皮の供給源であり、清浄な水とともにグッドスプリングスの生命線と言える資源である。
「やつらはついに一線を越えた。こうなったらもう、戦争しかない」
「ねえ、あの…あいつら、なんでここを狙ってるの?資源や町の乗っ取りが目的ってわけじゃなさそうだけど…ジョー・コッブが言ってた、リンゴって誰さ?」
 ライフルを手に息巻くサニー・スマイルズは、ブレンダの質問を聞いて、そういえばこの娘は町の事情を何も知らないんだった…ということを思い出す。
 しばらく思案したのち、ポケットから一つの鍵を取り出したサニー・スマイルズは、それをブレンダの手の平に乗せると、口を開いた。
「それは、この町のガソリンスタンドの鍵よ。今はもう使われていないけど…そこに、リンゴって男がいる。事情は彼の口から直接聞いて。それから、町はパウダーギャングと一戦交えることになるだろうと伝えて」
「わかった」
「ごめんなさいね、変なことに巻き込んじゃって。それと、キャンプの張り方を教えられなくて、本当に悪かったわ」
「気にしないで。それにあたし、この町の人に命を助けてもらったんだし、親切にしてもらったし…これくらいのタイミングの悪さは、気にするべきじゃないと思うんだ」
 そう言って微笑み、ブレンダはガソリンスタンドへと向かった。
 さっきの言葉は本心からだ。それはおそらく、いままで生きてきたなかで、こんなふうに親切にされるのは、初めてのことだったから…という、確信のようなものを欠けた記憶の向こう側で感じたからかもしれない。




 ガソリンスタンドの中で隠れていたリンゴという男は、クリムゾン・キャラバンという会社に所属する商人だった。
「旅の途中でパウダーギャングの連中に襲われてね。どうにか応戦したんだが多勢に無勢で、他の仲間がみんな殺されたなかでここまで逃げてきたんだ。ところが連中、俺が反撃したのがどうも気に喰わなかったらしい。あんまりしつこく追ってくるもんだから、この町で匿ってもらうことにしたんだ。それがこんな結果になるなんて」
 しばらく息を潜めていれば追撃を諦めるだろうと推測していたリンゴは、自分が町を争いに巻き込んでしまったことに罪の意識を感じているようだった。
 彼の話を黙って聞いていたブレンダは、ここへ来る前に町の住民から聞いた意見を改めてリンゴに伝えた。
「サニー・スマイルズは随分前からヤル気だったみたいだし、纏め役のトルーディもいつかはこうなるだろうって考えてたみたいだから、それほど気に病む必要もないんじゃないかな。チェットは協力する気、ないみたいだけど。あれはもう仕方ないね」
「あの守銭奴め」
 そう言って、あはは、と二人は笑いあう。
 見かけない顔だが新入りか、と尋ねるリンゴにブレンダが自己紹介したあと、二人はキャラバンと呼ばれるトランプゲームに興じた。
 しばしの退屈と不安を紛らわせるための遊戯で時間を潰したのち、翌日のパウダーギャングの襲撃に備えて眠ることに。
 たった一つのベッドに躊躇なく横になったブレンダに、リンゴが尋ねる。
「あの…俺はどこで寝ればいいんだ?」
「そっち」
 振り向きもせず、ブレンダはタイル張りの床をちょい、ちょいと指さす。
「マジかよ…」
 しばらくベッドと床を交互に見比べたあと、リンゴはため息交じりに固い床の上で横になった。



< Wait For Next Deal... >



 どうも、グレアムです。最初は丁寧にやるよ。最初だからね。様式美。
 本当はパウダーギャング屠殺劇場までやる予定だったんですが、予想外に文字数が多くなってしまったので次回持ち越しで。




 ゲームプレイ中、しばしシャイアンの目玉が取れてまいっちんぐ。
 いちおうDisable→Enableを繰り返せば元に戻るんですが、少し経つとまた目玉が外れてこれもうどうすりゃいいんだ。どうも戦闘モード時限定の不具合っぽい?んですが。

 


 今回のアウトテイク。
 結果としてコッブとは面識ないほうが話がスムーズに進むっていうのと、序盤は丁寧にやるといってもこいつのキャラまで掘り下げるとさすがにグダグダになるのでカットで。






 おまけの旧コス改。
 前章のときに何か足りねー気がするなと思ったらビキニパンツ!これがあるのとないのとではエロさが八割増で変わるじゃないですかよ。
 第一話で出た過去写真ではちゃんと着用してます。そのとき気づいた。

 次回はグッドスプリングスを出るとこまで。たぶん。







2015/03/05 (Thu)13:10


 かつて、ワシントンの荒野「キャピタル・ウェイストランド」の趨勢に変化をもたらした男がいた。
 名を、クレイブ・マクギヴァン。地下核シェルター「ヴォルト101」出身の彼は科学者であった父の行動に巻き込まれ、傭兵としてキャピタル・ウェイストランド中を放浪することになる。
 彼の数奇な運命について断片的に知る者は多いが、ブラザーフッド・オブ・スティールとエンクレイブの争いに介入する前の活動について知る者はほとんどいない。
 そう…彼が利己的かつ冷酷な殺人者ではなく、不毛の大地に希望を見出そうとしていた頃の彼の姿を知る者は。




 彼がまだ駆け出しの傭兵だった頃、ユニオン・テンプルという脱走奴隷のコミュニティと関わっていたことがある。そこで彼は、一人の女性と出会った。
 ブレンダ・フォスターは元奴隷の射手で、ユニオン・テンプルには用心棒として参加していた。常に不機嫌で愛想がなく、他者を信用しない彼女とクレイブは初めこそ反発し合っていたが、やがて幾つかの奴隷解放作戦を共同で成功させていったことで二人の仲は深まっていく。
 かつて奴隷だった彼女は脱走に失敗したことがあり、レイダーに捕まったとき過酷な拷問を受けた経験があった。口の中に刃物を突っ込まれ、ぐしゃぐしゃに掻き回された傷が癒えぬままということを、彼女が常に口元を覆っていたバンダナを外したときにクレイブは知ることになる。
 言葉を喋ることすらままならず、食事をするだけでも大変な苦痛が伴う。常に痛みに苛まれる、彼女の不機嫌の理由を知ったクレイブはどうにかして彼女の力になりたいと願うようになった。

 しかし、運命は二人に過酷な試練を与えた。




 ユニオン・テンプルは新たな拠点として、奴隷解放の象徴であるリンカーン記念館を奪取することを考えていた。そこは奴隷商人によって占拠されており、クレイブとブレンダは一見無謀とも取れる大規模な襲撃作戦に参加する。
 いちおう作戦は成功したが、大多数の奴隷商人はその場を逃れており、復讐の機会を窺っているのは明白だった。
 そしてユニオン・テンプルの全メンバーがリンカーン記念館に向かって移動を開始したとき、悲劇は起きた。
 目立たないよう幾つかのグループに分かれて移動する計画だったが、ブレンダだけは、多くの非武装メンバーを抱えたままわざと奴隷商人たちが待ち伏せしているルートを通過させられたのだ。
 リーダーのハンニバルは他のメンバーが安全にリンカーン記念館に到達できるよう、わざとブレンダを囮として使い、さらに彼女の移動ルートを奴隷商人たちにリークしていた。そしてブレンダが連れていた多くのメンバーは、かつてクレイブとブレンダが二人で救出した元奴隷たちだった。
 そのことにいち早く気づき、問い詰めるクレイブにハンニバルは語る。
「君たちはやり過ぎたのだ。我々はあまりに多くの人間を抱えすぎた。集まってきたのは碌に労働もせず戦うこともできない連中ばかり、水や食料はあっという間になくなっていく。ユニオン・テンプルの新生にあたって、間引きが必要だったのだ」
 ブレンダが犠牲者として選ばれたのは、優秀だったが常に反抗的な態度を取っていたこと、そしてハンニバルの意見を無視して次々と奴隷の救出を敢行したこと…クレイブとともに。奴隷商人やレイダーから度を越えて敵視されるようになったのも彼女のせいだと、ハンニバルは言い切った。

 慌ててブレンダのグループを追ったクレイブだったが、そこで繰り広げられていたのは一方的な虐殺…武器も戦闘技術も持たない元奴隷たちと、そしてブレンダの肢体が血の海に横たわっていた。
 クレイブは彼女たちを襲撃した奴隷商人たちを撃退し、すでに虫の息だったブレンダに駆け寄る。
「お、俺は、ただ…皆の役に立ちたくて…こんな…こんなことになるなんて……!!」




 ブレンダの拳銃を拾い上げたクレイブに、彼女はそっと手を添える。その銃口を、自らの喉元に向けて。
「お、ねが…あた、し…楽に……して…」
「くそ、畜生こんなのって…誰かいないのか、助けてくれ、なんとかしてくれよ!」
 誰が?どうやって?
 叫ぶクレイブの周囲には、瓦礫のように積み重なった死体があるだけだった。
 やがて意を決したクレイブは、涙が溢れるに任せるまま、ぼやけた視界越しに彼女を見つめ、引き金にかける指に力を込める。
「愛してる」
「…あり、がと」
 ブレンダがふっと微笑んだとき、クレイブは引き金をひいた。
 サプレッサー越しの銃声とともに彼女の頭が吹き飛び、そしてクレイブの心も死んだ。

 その後リンカーン記念館に拠点を移したユニオン・テンプルが何者かの手によって壊滅させられたという事実の真相を知るものはいない。




 やがて父の因縁にまつわるエンクレイブとの対決に挑んだクレイブは、ジェファーソン記念館に設置させた浄化装置を作動させ、さらにBoSへの反撃の機会を窺っていたエンクレイブを完膚なきまでに叩き潰す。
 そしてBoSと袂を別った彼はキャピタル・ウェイストランドを去り、二度と戻ることはなかった…



 これが、四年前…2277年の出来事である。



**      **      **      **



 そして、2281年…




 シーリングファンの静かな回転音に気づき目を醒ました女は、ゆっくり頭を振ると、自分がまるで見覚えのない部屋のベッドに寝かしつけられていることに気がついた。
「……ここは…」
 ここはどこだ?自分はなぜここにいる?いままで、自分はなにをしていた?
 …自分は、誰だ?
 なにも思い出せない。が、彼女はしばらくそのことを深刻には考えていなかった。
 たんに寝ぼけているだけだろう、意識がはっきりすれば自然に思い出すはずだ。そう思ったのは、しばしば深酒し二日酔いに悩まされる生前の性癖によるものだったのだろう。
 いちおう身なりはきちんとしていたし(といっても、いま自分が着ている服は見覚えのないものだったが)、乱暴された形跡もない。部屋の調度も整っていたし、少なくともレイダーや奴隷商人の住処でないことは確かだ。
「…ん~……?」
 眠い目をこすり、次第に頭がはっきりしていくにつれて、彼女は自分がほとんど何も思い出せないことに気がつく。

 そこへ…
「おっと、もう目が醒めたのかね。急に激しく動かないほうがいい、君は非常に危険な状態だったのだから」
 部屋に入ってきた初老の男は、自らをドック(医師)・ミッチェルと名乗った。彼は町医者で、ここはささやかな彼の診療所であると紹介を受ける。
「つまり…あたしは、怪我や病気でここへ運びこまれたってこと?」
「その様子だと、記憶がかなり曖昧なようだな。一度にあまり多くを語っても混乱するだろう、とりあえず応接間へ来たまえ。コーヒーを淹れてあげよう」




「ここへ来るまえに君が着ていた服はボロボロだったので処分しておいた、悪しからず。それは以前、妻が旅のときに着ていた服だ。サイズは合っているだろう」
 温かいコーヒーが入ったマグに口をつけつつ、女はこの平和な空気に妙な違和感を覚えながらも黙ってドック・ミッチェルの言葉に耳を傾ける。
「ここはグッドスプリングス、ニューベガスの南にある小さな農村だよ。君はここから少し北に進んだ先の丘にある墓地で、頭を撃ち抜かれた状態で発見された」
「ふ~ん……へ?」
 グッドスプリングス、ニューベガスだのといった、まるで耳に馴染みのない地名を聞き流していた女は、危うくドック・ミッチェルの最後の一言を聞き損なうところだった。
 顔を上げ、目を丸くして見つめてくる女に、ドック・ミッチェルは肩をすくめてみせる。
「驚くのも無理はない、私も逆の立場ならさぞかし驚いただろうな。君の頭部には先端がすこし潰れた9mmのFMJ弾が埋まっていた。それは頭蓋骨を砕き前頭葉をすこしばかり削っていたが、幸運にも命に別状はなかったというわけだ。もちろん、私の医師としての腕がそれほど悪くなかったせいもあるが」
 わかりやすい謙遜をしながら、ドック・ミッチェルはジャケットの分離していない、少々変形した小口径の拳銃弾頭が入った瓶を「カラカラ」と音を立てて振って見せた。
 頭部の銃創が必ずしも致命傷にならないことは女も知っていたが、そうそう自分の身に起きてほしいサンプルでないことは確かだ。

 彼女の名は「ブレンダ」、であるらしい…と、ドック・ミッチェルは言った。
 それは危篤状態のブレンダを町まで運んだ人間が、第三者が彼女のことを「ブレンダ」と呼んだのを聞いた、からだそうなのだが。
 どうやらブレンダが自分の出自、そして銃弾を受けた前後のことを何も憶えていないらしいことを確認すると、ドック・ミッチェルはすこし考えてから言った。
「君が今後どうするにせよ、あまり結論を急がないほうがいいな。自分の記憶がない、というのは、どうしても心理不安を掻き立てる。医師としては、それをあまり刺激したくはない」
「じゃあ…」
「とりあえず、酒場にいるサニー・スマイルズという女性に会うといい。彼女は地元の猟師で、君の面倒を見てくれるだろう。それに、しばらく歩いて、身体を動かせば記憶や感覚が戻るかもしれない。いまは言葉を尽くすより、そのほうが効果的だろうと私は思う」
「身体に訊く、っていうやつ?」
「まあ、そうだな」




 酒場がある、と聞いたとき、ブレンダはさっそく酒が飲めると胸を躍らせていたのだが、実際はそう上手くはいかなかった。
「あなたね、先日ドック・ミッチェルのところへ担ぎこまれた怪我人って。頭を撃たれたと聞いたけど、もう歩いて平気なの?」
 ブレンダが店に入ってすぐ声をかけてきたのは、ドック・ミッチェルが言っていたサニー・スマイルズという女性だった。背中にライフルをかけ、相棒の猟犬を連れている。
 この酒場は銃所持ペット同伴可能というより、彼女と犬のことは町の誰もが知っているのだろう、とブレンダは思った。
「ええ。脳味噌がちょっと減ったせいだと思うけど、記憶が全然あやふやなんだけどね」
「それじゃあ、脳を活性化させるためにちょっとした訓練をしてみましょうか」
「…いますぐ?」
「他に用事でもあるの?」
「え~と、いや~その…お酒飲みたいな~、とか考えちゃったりして」
「こんな昼間から?そんなのはロクデナシのすることよ!それにあなた、お金は持ってるの?」
「う…」
「ちなみにこの店はツケ飲みはやってないわよ。店主のトルーディがそういうの嫌いだから」
「うう…」
 仕方なくブレンダはサニー・スマイルズに従い、店を出て裏の空き地へと回った。




「はい、これ。あなた、銃の撃ち方はわかる?」
「…レミントンの小口径バーミント・ライフル。着脱式箱型弾倉。これならわかる」
 サニー・スマイルズから銃を受け取ったブレンダは、慣れた手つきで遊底桿を操作し弾を薬室に送り込む。
 彼女の視線の先にあるのは、木の杭の上に乗せられたサルサパリラの空き瓶。おそらく酒場から出たものだろう、ひとまずそれを練習用の的に腕を計る意図のようだ。
 記憶がないといっても、息の吸い方や酒のキャップの外し方まで忘れたわけではない。本能レベルで覚えていることというのは結構あり、銃の操作もそういった「身体が覚えている動き」の一つだった。
 地面に膝をついたブレンダは人差し指で舐めるように引き金をなぞり、両目を開けた状態でサイトアライメントを確認する。
「意識は照星に。引き金は絞る(Front sight focus, and trigger squeeze)」
 やがて…ダンッ!
 閃光と同時に銃口が跳ね上がり、僅かな時間差でサルサパリラの瓶が砕け散る。
 ガチャリ、ブレンダは意識して遊底桿を強く引き、次弾を装填した。彼女はボルトアクション式のライフルにそれほど慣れていたわけではなかったが、中途半端な力での遊底の操作は排莢不良の原因になることは知っていた。
 バーミント・ライフルというのは鳥撃ち用に設計された銃で、高速で動く小さな飛翔体を撃つことを想定しているため命中精度が高く、そのため狙撃用ライフルのベースとして採用されることも多い。
 いま手にしている銃はあまり手入れが良くないにも関わらず、きちんと狙った場所に当たるのは元の性能がいいからだろうとブレンダは思った。個人的にはセミオート式のほうが好みだったが。
「これにしてもこの子、銃声に驚かないのね」
「慣れているからね。猟で連れ歩くのに、いちいち銃声で驚いてたら使いものにならないわ」
 サニー・スマイルズが連れている、シャイアンという名の猟犬を見て、ブレンダは感心の声を漏らす。
 一旦銃を置き、首筋を撫で、抱きしめる。
「よしよし、いい子だ」
「アウッ、バウバウ!ヘッヘッヘッ」
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよし」
「あの。可愛がるのは、とりあえず的を撃ってからにしてくれない?」
「あ。ごめんなさい」
「それにしても、シャイアンがこんなに早く懐くなんて珍しいわね。チェットなんか未だに吼えられるのに」
 サニー・スマイルズの苦言を受けたブレンダはひとまずシャイアンをモフりまくっていた手を止め、ふたたびライフルを手に取る。
 リラックスし、そっと銃口を持ち上げ、一瞬息を止め、発砲。
 ダン、ダン、ダン、ダンッ!
 立て続けの連射にサルサパリラの空瓶が次々と砕け散り、やがて五発入りの弾倉が空になったのを見たサニー・スマイルズがヒュウと口笛を吹いた。
「やるわね。これならサルサパリラの瓶が襲ってきても身を守れそうだわ」
「どうも」
 彼女の賛辞を、ブレンダは控え目に受け取る。
 サニー・スマイルズの言葉はあくまで「初めてにしては上出来」という以上のニュアンスではなく、そのことをブレンダは理解していた。もちろん、いまはそれに反発しても仕方がない、ということも。




「私はこれからゲッコー狩りに行くけど、あなたもアシスタントとしてついて来る?」
「…ゲッコー?」
「詳しくは現地に着いてから説明するわ。もちろん、駄賃は払うわよ?酒代くらいにはなるんじゃないかしら」
「行く」
「やっぱり」
 酒を引き合いに出した途端に即答するブレンダにサニー・スマイルズは呆れながら、シャイアンに先導するよう命令する。
 突然駆け出したシャイアンを見て驚きながら、ブレンダは慌てて追いつこうと自らも駆け足で走り出した。



< Wait For Next Deal... >



 どうも、グレアムです。
 ニューベガスでの似非プレイ日記は基本的な流れを本筋に忠実になぞりつつ、プロットの細かい部分を改変していくスタイルでいこうと予定しています。今回はまだ手探り状態ですが、グッドスプリングスを出るあたりで主人公が明確な行動目的を持つようになるのでお楽しみに。
 しかし書いてて改めて思ったのが、記憶喪失系主人公とかこれどんなギャルゲーだよ、と。いやループ系にするつもりはありませんけども。最後にメインヒロイン=ラスボスが待ってるとか完璧じゃないですか。ドレッドヘアで一見浮浪者みたいな小汚い格好してるポエミィな男だけどね!
 真(トゥルー)エンドではユリシーズと一緒にニューベガスを平定する。一番活躍するのはジョシュア・グラハムだけど。平定っていうかまっ平らになるじゃねーか!駄目だコレ。






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