主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2015/03/07 (Sat)17:40
ゲッコー…放射能によって変異・巨大化したヤモリの亜種。元来臆病な生物であるため、こちらから刺激しない限り襲ってくることはそうない。しかし彼らの威嚇を無視して近づいた場合、その鋭い歯で噛みつかれることだろう。死ぬまで攻撃されることは滅多にないが。
「ちょっと可愛いかも」
「本気で言ってる?」
二本足で不細工に駆け回り、大口を開けて「ホゲー」と威嚇してくるゲッコーにブレンダは思わず頬を緩ませるが、どうやらそういう感覚はこの周辺では珍しがられるようだ。
もちろん、日々をゲッコーとの悪戦苦闘に費やすサニー・スマイルズにとって、彼らの仕草にいちいち関心を持ち「可愛い」などと言っていられないのは当たり前のことであり、それはブレンダにも理解できるため、あえて議論を交わすつもりはないが。
「このあたりには町の存続に欠かせない水源がいくつかあってね。グッドスプリングスが商人や旅人の立ち寄り所として機能しているのも、この水源があるおかげよ。ただ時々、ゲッコーが水場を縄張りにしてしまうことがあってね…彼らは臆病なくせに縄張り意識が強いから、居着かれると町の人たちが水を汲めなくなってしまうのよ」
「だからこうして、彼らを狩る必要があるわけね」
「そういうこと。それにゲッコーの皮や肉はいいお金になるしね」
そんなことを話しながら、ブレンダたちは三箇所の水場を回りゲッコーの群れを退治していく。
「まずいなぁ…撃たれた衝撃で跳ねたゲッコーの死体が給水所に突っ込んじゃった」
「大丈夫よ。少しくらいゲッコーの体液が混じった水を飲んだって、ウェイストランダーは死にやしないわ」
「…それもそうか」
それを町の人間にわざわざ知らせる必要は、もちろんないだろうが…そんなことを考えながら、ブレンダは「よいしょ」と声を出してゲッコーの死体を水桶から放り出す。
「とりあえず、今日はこんなところかしらね」
一方でしばらく銃を手に周囲を警戒していたサニー・スマイルズは、安全を確認するとブレンダに数枚のヌカコーラ・キャップ…ウェイストランドにおける通貨を手渡した。
「これ、今日のアシスタント代よ。次はキャンプの張り方を教えるから、明日の午後にまたここへ来てちょうだい」
「わー、やった」
これで念願の酒が飲める。
そう思ったブレンダは思わず微笑み、次いで、「ここでも通貨はキャップなんだ」と突拍子のないことを頭に思い浮かべる。
はて、「ここでも」?
自然とそう考えた自分の思考に、ブレンダは頭を捻った。もし自分の故郷がモハビのどこかであれば、今みたいなことを考えるだろうか?
少し考えても答えが出ないので、ひとまずブレンダは疑問の解決を保留しておくことに決めた。
「おいクソババァ、てめえらがリンゴの野郎を匿ってるのはわかってんだ!こっちに引き渡さないなら、町の安全の保証はできねえぞ!」
「そんな男は知らないって何度も言ったでしょう?ここは酒場よ、注文がないなら出て行ってちょうだい!」
「後悔しても知らねえからな!」
ブレンダが町の酒場プロスペクター・サルーンの扉を開けたとき、店主らしき女性と与太者風の男の間でなにやら修羅場めいた口論が交わされていた。
「おォーっとお手が滑っちまったぜえぇぇぇ!」
「ちょっとなにすんのよ、このクソ坊主!」
ガッチャン!
しまいに男はカウンターに乗っていたラジオをはたき落とし、そのまま逃げるように店を出て行ってしまった。
はぁ~…と、ため息をつきながらラジオを拾う女性。ラジオは破損した背面パネルから派手に部品を撒き散らしており、さっきまでクリアなサウンドでダンディな男性の語りを流していたのが嘘のように沈黙してしまっている。
「なんか剣呑な雰囲気だったけど、大丈夫?」
「まったく、あの連中には手を焼かされるわ…あなた誰?見かけない顔だけど」
「えーと、お墓の近くで頭を撃たれてここに担ぎ込まれたらしい、です」
「ああ!あなたね、例の幸運な患者さんって。よろしく、私はトルーディよ。この酒場の店主」
「ブレンダっていいます。じつは、名前のほかは何も憶えてないんだけど」
二人は握手を交わし、トルーディはカウンターの内側へ、ブレンダはスツールに腰かける。
ウィスキーを注文したブレンダは琥珀色の液体をショットグラスに注ぎつつ、壊れたラジオを睨みつけるトルーディに質問した。
「ところで、さっきの男、何者?」
「あいつ?ジョー・コッブとかいう与太者よ。パウダーギャングっていう悪タレの一員らしいわ」
パウダーギャングというのは、刑務所を脱走した囚人で構成された犯罪者集団らしい。
かつてはNCRが管理する刑務所の収監者だったが、工事用のダイナマイトを使って脱獄し、さらに刑務所の職員を殺して施設を乗っ取ったとか。現在ではその刑務所を活動の拠点にしているようだ。パウダーギャングの名の由来は、そのものずばりパウダー(火薬)から来ている。
「NCRって、なに?」
「知らないの?ああ、そういえば記憶がないんだったわね。NCR…新カリフォルニア共和国。なにが『新』なのかは私も知らないんだけどね」
皮肉っぽく笑い、トルーディはNCRと、そして彼らと敵対しているシーザー・リージョンについて簡単に説明した。
NCRはカリフォルニア全域に影響力を持つ巨大な組織で、ざっくり言えば、ものすごくざっくり言えば、いまのところモハビにおける暫定政府のようなもの、らしい。大規模な軍隊を抱えており、彼らのパトロール区域は核戦争後のアメリカにあって比較的治安が保たれている。
もっとも態度がでかい、プライドが高い、勢力下の住民への課税額が驚くほど高い、といった事情から、彼らを素直に評価する人間は滅多にいないのだとか。
シーザー・リージョンはコロラド川を跨いだ東に拠点を持つ勢力で、かつて分裂していた八十六もの部族を一つに纏め平定したことからNCRに次ぐ巨大な組織として知られている。
その内訳はレイダーも真っ青の厳しい階級制を敷いており、リージョンに所属していない地域への略奪・強盗・虐殺行為を日常的に行なっているらしい。さらには多くの奴隷を抱えており、特に女性は組織への忠誠を問わず道具としか扱われないため多くのウェイストランダーから嫌われている(特にこの点をトルーディは力説した)。
「ふ~ん…とりあえず、リージョンを見たら背を向けて来た道を戻ることにするわ」
「それが賢い選択ね」
結局その日はそこで話が途切れてしまい、なぜリージョンがNCRと敵対しているのか、そもそも店に入った直後に口論していたジョー・コッブという男は何者なのか、なにを争っていたのか、という話は聞けず終いだった。
後日、サニー・スマイルズからキャンプ設営の方法を教わることになったブレンダは、モハビのウェイストランダーが「回復パウダー」と呼ぶ治療薬を作るための材料を集めることになった。
「ブロックフラワーとザンダールートね…たしか廃校の近くと、あたしが見つかったお墓によく生えてるって言ってたかな」
そんなことを言いながら町へ向かう道を歩いていたとき、ブレンダは突如茂みから飛び出してきた野生のコヨーテに襲われた!
「グルルルル…ガゥアッ!」
「えっ!?うわっ、ちょ、な…!?」
鋭い牙を首筋に突きたてようとするコヨーテをバーミント・ライフルの銃床で跳ねのけ、ブレンダは倒れた姿勢のまま照準を使わずに引き金をひく!
ズダンッ!
反転しふたたびブレンダに噛みつこうとしたコヨーテの首にライフル弾が命中し、ビクンと一瞬痙攣したのちコヨーテはその場に崩れ落ちた。
すぐに遊底桿を操作して次弾が発砲できるようにし、ブレンダは油断なくコヨーテの様子を窺う。
どうやら息の根は止まったようだ…呼吸を止めていたブレンダは大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。
そこへ…
「いやー見事なもんだ。つい先日、脳天に銃弾を撃ち込まれたとは思えない回復ぶりだなあ」
「…誰?」
額の汗を拭いながら顔を上げたブレンダの先にいたのは、一輪走行型の奇怪なロボット。ボディには巨大なモニターが備えつけられており、なにやらカウボーイ風の男のイラストが写っている。
これが顔のつもりなのだろうか?
「ろ…ろ、六年生のときに同級生だった……」
「別においらは渋谷のセンター街あたりをうろついてたわけじゃないぜ。ロボットと素直に言っても傷ついたりしないから安心してくれ」
「あ、そう」
「おいらヴィクターってんだ、ずっとこの町に住んでる。なにを隠そう、あんたを町まで運んだのはこのおいらなんだぜ」
「え、そうだったの!?」
訊ねたいことは山ほどあったが、いまはとりあえずサニー・スマイルズから言いつけられたおつかいをこなすのが先だ。
それに「ずっとこの町に住んでる」と言うのだから、話を聞くことはいつでもできるだろう。
一礼してその場を立ち去るブレンダに、ヴィクターはあまり器用な作業に向いてなさそうな手を振りながら言った。
「無茶をするんじゃないぞー」
「ザンダールートの採取は終わったけど、ちょっとだけ廃校の中も覗いてみようっと」
かつて小学校だった建物に入ったブレンダは、放射能で巨大化したカマキリを銃床で叩き潰しながら屋内を散策した。
「中の物はなんでも持っていっていいってサニー・スマイルズが言ってたし。まあ、そう言うってことは、もうガラクタしか残ってないってことだろうけど」
あまり期待せずに周囲を見て回っていたところ、ブレンダは堅く施錠された金庫と、どうやら金庫と連動しているらしいロブコ社製の端末を発見する。
「ん~…鍵開けは得意だった気がするんだけどなー。鍵の構造が全然思い出せない。機械とか、プログラム関係は苦手なんだけどねー」
ひとまず金庫の鍵を入念にチェックしてみるが、記憶喪失の弊害か、開錠の糸口がまるで掴めない。
そこでブレンダは近くに置いてあった「プログラマー・ダイジェスト」という雑誌を片手に、端末のクラッキングを試みたのだが…
「うー、この小さな緑色の文字列を見てるだけで頭が痛くなってくる…あいつなら、こういうの得意なんだろうけどな」
ぶつくさと弱音を吐きながらもどうにかクラックに成功し、金庫に入っていた僅かながらの道具やキャップをポケットに入れたとき、ブレンダは「はて」と首を傾げた。
あたしがさっき言った、「あいつ」って、誰だ?
なにかとても大事なことの気がする、しかし幾ら考えてもそれらしいことは思い出せない。
「あれがニューベガスかぁ…」
ひとまず思い出せないことをいつまでも考えていたって仕方がないので、ブレンダは北の墓地へ向かいザンダールートを採取。丘の上から遠く北に見える巨大な都市を眺めた。
煙草をくゆらせ、紫煙を肺の中で循環させながら、そういえば自分が見つかったのはこの墓地だったな…あのヴィクターとかいう、妙な機械が拾ったらしいが、などと考えていたとき、町の方角から爆発音が響いたのを耳にした。
ブレンダが駆けつけたとき目にしたのは倒壊した柵と、吹き飛んだビッグホーナーの死体だった。
「いったい、なにが…」
「くそ、あいつら…パウダーギャングどもの仕業だよ!」
どうやらブレンダと同様、爆発音を聞いたあと慌てて駆けつけてきたらしいサニー・スマイルズが怒りを露わに吐き捨てた。
「こっちに来るとき擦れ違ったから、まさか…とは思ったけどね」
「パウダーギャングって、あのジョー・コッブとかいうやつの一味?」
「そう、たぶんお得意のダイナマイトを使ったんだろうさ。いままでは文句言ってきても無視してたけど、町の大事な家畜に手を出されたんじゃあ、もう黙っていられないよ」
ビッグホーナーは良質な肉と皮の供給源であり、清浄な水とともにグッドスプリングスの生命線と言える資源である。
「やつらはついに一線を越えた。こうなったらもう、戦争しかない」
「ねえ、あの…あいつら、なんでここを狙ってるの?資源や町の乗っ取りが目的ってわけじゃなさそうだけど…ジョー・コッブが言ってた、リンゴって誰さ?」
ライフルを手に息巻くサニー・スマイルズは、ブレンダの質問を聞いて、そういえばこの娘は町の事情を何も知らないんだった…ということを思い出す。
しばらく思案したのち、ポケットから一つの鍵を取り出したサニー・スマイルズは、それをブレンダの手の平に乗せると、口を開いた。
「それは、この町のガソリンスタンドの鍵よ。今はもう使われていないけど…そこに、リンゴって男がいる。事情は彼の口から直接聞いて。それから、町はパウダーギャングと一戦交えることになるだろうと伝えて」
「わかった」
「ごめんなさいね、変なことに巻き込んじゃって。それと、キャンプの張り方を教えられなくて、本当に悪かったわ」
「気にしないで。それにあたし、この町の人に命を助けてもらったんだし、親切にしてもらったし…これくらいのタイミングの悪さは、気にするべきじゃないと思うんだ」
そう言って微笑み、ブレンダはガソリンスタンドへと向かった。
さっきの言葉は本心からだ。それはおそらく、いままで生きてきたなかで、こんなふうに親切にされるのは、初めてのことだったから…という、確信のようなものを欠けた記憶の向こう側で感じたからかもしれない。
ガソリンスタンドの中で隠れていたリンゴという男は、クリムゾン・キャラバンという会社に所属する商人だった。
「旅の途中でパウダーギャングの連中に襲われてね。どうにか応戦したんだが多勢に無勢で、他の仲間がみんな殺されたなかでここまで逃げてきたんだ。ところが連中、俺が反撃したのがどうも気に喰わなかったらしい。あんまりしつこく追ってくるもんだから、この町で匿ってもらうことにしたんだ。それがこんな結果になるなんて」
しばらく息を潜めていれば追撃を諦めるだろうと推測していたリンゴは、自分が町を争いに巻き込んでしまったことに罪の意識を感じているようだった。
彼の話を黙って聞いていたブレンダは、ここへ来る前に町の住民から聞いた意見を改めてリンゴに伝えた。
「サニー・スマイルズは随分前からヤル気だったみたいだし、纏め役のトルーディもいつかはこうなるだろうって考えてたみたいだから、それほど気に病む必要もないんじゃないかな。チェットは協力する気、ないみたいだけど。あれはもう仕方ないね」
「あの守銭奴め」
そう言って、あはは、と二人は笑いあう。
見かけない顔だが新入りか、と尋ねるリンゴにブレンダが自己紹介したあと、二人はキャラバンと呼ばれるトランプゲームに興じた。
しばしの退屈と不安を紛らわせるための遊戯で時間を潰したのち、翌日のパウダーギャングの襲撃に備えて眠ることに。
たった一つのベッドに躊躇なく横になったブレンダに、リンゴが尋ねる。
「あの…俺はどこで寝ればいいんだ?」
「そっち」
振り向きもせず、ブレンダはタイル張りの床をちょい、ちょいと指さす。
「マジかよ…」
しばらくベッドと床を交互に見比べたあと、リンゴはため息交じりに固い床の上で横になった。
< Wait For Next Deal... >
どうも、グレアムです。最初は丁寧にやるよ。最初だからね。様式美。
本当はパウダーギャング屠殺劇場までやる予定だったんですが、予想外に文字数が多くなってしまったので次回持ち越しで。
ゲームプレイ中、しばしシャイアンの目玉が取れてまいっちんぐ。
いちおうDisable→Enableを繰り返せば元に戻るんですが、少し経つとまた目玉が外れてこれもうどうすりゃいいんだ。どうも戦闘モード時限定の不具合っぽい?んですが。
今回のアウトテイク。
結果としてコッブとは面識ないほうが話がスムーズに進むっていうのと、序盤は丁寧にやるといってもこいつのキャラまで掘り下げるとさすがにグダグダになるのでカットで。
おまけの旧コス改。
前章のときに何か足りねー気がするなと思ったらビキニパンツ!これがあるのとないのとではエロさが八割増で変わるじゃないですかよ。
第一話で出た過去写真ではちゃんと着用してます。そのとき気づいた。
次回はグッドスプリングスを出るとこまで。たぶん。
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