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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/20 (Sat)08:34
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2015/03/05 (Thu)13:10


 かつて、ワシントンの荒野「キャピタル・ウェイストランド」の趨勢に変化をもたらした男がいた。
 名を、クレイブ・マクギヴァン。地下核シェルター「ヴォルト101」出身の彼は科学者であった父の行動に巻き込まれ、傭兵としてキャピタル・ウェイストランド中を放浪することになる。
 彼の数奇な運命について断片的に知る者は多いが、ブラザーフッド・オブ・スティールとエンクレイブの争いに介入する前の活動について知る者はほとんどいない。
 そう…彼が利己的かつ冷酷な殺人者ではなく、不毛の大地に希望を見出そうとしていた頃の彼の姿を知る者は。




 彼がまだ駆け出しの傭兵だった頃、ユニオン・テンプルという脱走奴隷のコミュニティと関わっていたことがある。そこで彼は、一人の女性と出会った。
 ブレンダ・フォスターは元奴隷の射手で、ユニオン・テンプルには用心棒として参加していた。常に不機嫌で愛想がなく、他者を信用しない彼女とクレイブは初めこそ反発し合っていたが、やがて幾つかの奴隷解放作戦を共同で成功させていったことで二人の仲は深まっていく。
 かつて奴隷だった彼女は脱走に失敗したことがあり、レイダーに捕まったとき過酷な拷問を受けた経験があった。口の中に刃物を突っ込まれ、ぐしゃぐしゃに掻き回された傷が癒えぬままということを、彼女が常に口元を覆っていたバンダナを外したときにクレイブは知ることになる。
 言葉を喋ることすらままならず、食事をするだけでも大変な苦痛が伴う。常に痛みに苛まれる、彼女の不機嫌の理由を知ったクレイブはどうにかして彼女の力になりたいと願うようになった。

 しかし、運命は二人に過酷な試練を与えた。




 ユニオン・テンプルは新たな拠点として、奴隷解放の象徴であるリンカーン記念館を奪取することを考えていた。そこは奴隷商人によって占拠されており、クレイブとブレンダは一見無謀とも取れる大規模な襲撃作戦に参加する。
 いちおう作戦は成功したが、大多数の奴隷商人はその場を逃れており、復讐の機会を窺っているのは明白だった。
 そしてユニオン・テンプルの全メンバーがリンカーン記念館に向かって移動を開始したとき、悲劇は起きた。
 目立たないよう幾つかのグループに分かれて移動する計画だったが、ブレンダだけは、多くの非武装メンバーを抱えたままわざと奴隷商人たちが待ち伏せしているルートを通過させられたのだ。
 リーダーのハンニバルは他のメンバーが安全にリンカーン記念館に到達できるよう、わざとブレンダを囮として使い、さらに彼女の移動ルートを奴隷商人たちにリークしていた。そしてブレンダが連れていた多くのメンバーは、かつてクレイブとブレンダが二人で救出した元奴隷たちだった。
 そのことにいち早く気づき、問い詰めるクレイブにハンニバルは語る。
「君たちはやり過ぎたのだ。我々はあまりに多くの人間を抱えすぎた。集まってきたのは碌に労働もせず戦うこともできない連中ばかり、水や食料はあっという間になくなっていく。ユニオン・テンプルの新生にあたって、間引きが必要だったのだ」
 ブレンダが犠牲者として選ばれたのは、優秀だったが常に反抗的な態度を取っていたこと、そしてハンニバルの意見を無視して次々と奴隷の救出を敢行したこと…クレイブとともに。奴隷商人やレイダーから度を越えて敵視されるようになったのも彼女のせいだと、ハンニバルは言い切った。

 慌ててブレンダのグループを追ったクレイブだったが、そこで繰り広げられていたのは一方的な虐殺…武器も戦闘技術も持たない元奴隷たちと、そしてブレンダの肢体が血の海に横たわっていた。
 クレイブは彼女たちを襲撃した奴隷商人たちを撃退し、すでに虫の息だったブレンダに駆け寄る。
「お、俺は、ただ…皆の役に立ちたくて…こんな…こんなことになるなんて……!!」




 ブレンダの拳銃を拾い上げたクレイブに、彼女はそっと手を添える。その銃口を、自らの喉元に向けて。
「お、ねが…あた、し…楽に……して…」
「くそ、畜生こんなのって…誰かいないのか、助けてくれ、なんとかしてくれよ!」
 誰が?どうやって?
 叫ぶクレイブの周囲には、瓦礫のように積み重なった死体があるだけだった。
 やがて意を決したクレイブは、涙が溢れるに任せるまま、ぼやけた視界越しに彼女を見つめ、引き金にかける指に力を込める。
「愛してる」
「…あり、がと」
 ブレンダがふっと微笑んだとき、クレイブは引き金をひいた。
 サプレッサー越しの銃声とともに彼女の頭が吹き飛び、そしてクレイブの心も死んだ。

 その後リンカーン記念館に拠点を移したユニオン・テンプルが何者かの手によって壊滅させられたという事実の真相を知るものはいない。




 やがて父の因縁にまつわるエンクレイブとの対決に挑んだクレイブは、ジェファーソン記念館に設置させた浄化装置を作動させ、さらにBoSへの反撃の機会を窺っていたエンクレイブを完膚なきまでに叩き潰す。
 そしてBoSと袂を別った彼はキャピタル・ウェイストランドを去り、二度と戻ることはなかった…



 これが、四年前…2277年の出来事である。



**      **      **      **



 そして、2281年…




 シーリングファンの静かな回転音に気づき目を醒ました女は、ゆっくり頭を振ると、自分がまるで見覚えのない部屋のベッドに寝かしつけられていることに気がついた。
「……ここは…」
 ここはどこだ?自分はなぜここにいる?いままで、自分はなにをしていた?
 …自分は、誰だ?
 なにも思い出せない。が、彼女はしばらくそのことを深刻には考えていなかった。
 たんに寝ぼけているだけだろう、意識がはっきりすれば自然に思い出すはずだ。そう思ったのは、しばしば深酒し二日酔いに悩まされる生前の性癖によるものだったのだろう。
 いちおう身なりはきちんとしていたし(といっても、いま自分が着ている服は見覚えのないものだったが)、乱暴された形跡もない。部屋の調度も整っていたし、少なくともレイダーや奴隷商人の住処でないことは確かだ。
「…ん~……?」
 眠い目をこすり、次第に頭がはっきりしていくにつれて、彼女は自分がほとんど何も思い出せないことに気がつく。

 そこへ…
「おっと、もう目が醒めたのかね。急に激しく動かないほうがいい、君は非常に危険な状態だったのだから」
 部屋に入ってきた初老の男は、自らをドック(医師)・ミッチェルと名乗った。彼は町医者で、ここはささやかな彼の診療所であると紹介を受ける。
「つまり…あたしは、怪我や病気でここへ運びこまれたってこと?」
「その様子だと、記憶がかなり曖昧なようだな。一度にあまり多くを語っても混乱するだろう、とりあえず応接間へ来たまえ。コーヒーを淹れてあげよう」




「ここへ来るまえに君が着ていた服はボロボロだったので処分しておいた、悪しからず。それは以前、妻が旅のときに着ていた服だ。サイズは合っているだろう」
 温かいコーヒーが入ったマグに口をつけつつ、女はこの平和な空気に妙な違和感を覚えながらも黙ってドック・ミッチェルの言葉に耳を傾ける。
「ここはグッドスプリングス、ニューベガスの南にある小さな農村だよ。君はここから少し北に進んだ先の丘にある墓地で、頭を撃ち抜かれた状態で発見された」
「ふ~ん……へ?」
 グッドスプリングス、ニューベガスだのといった、まるで耳に馴染みのない地名を聞き流していた女は、危うくドック・ミッチェルの最後の一言を聞き損なうところだった。
 顔を上げ、目を丸くして見つめてくる女に、ドック・ミッチェルは肩をすくめてみせる。
「驚くのも無理はない、私も逆の立場ならさぞかし驚いただろうな。君の頭部には先端がすこし潰れた9mmのFMJ弾が埋まっていた。それは頭蓋骨を砕き前頭葉をすこしばかり削っていたが、幸運にも命に別状はなかったというわけだ。もちろん、私の医師としての腕がそれほど悪くなかったせいもあるが」
 わかりやすい謙遜をしながら、ドック・ミッチェルはジャケットの分離していない、少々変形した小口径の拳銃弾頭が入った瓶を「カラカラ」と音を立てて振って見せた。
 頭部の銃創が必ずしも致命傷にならないことは女も知っていたが、そうそう自分の身に起きてほしいサンプルでないことは確かだ。

 彼女の名は「ブレンダ」、であるらしい…と、ドック・ミッチェルは言った。
 それは危篤状態のブレンダを町まで運んだ人間が、第三者が彼女のことを「ブレンダ」と呼んだのを聞いた、からだそうなのだが。
 どうやらブレンダが自分の出自、そして銃弾を受けた前後のことを何も憶えていないらしいことを確認すると、ドック・ミッチェルはすこし考えてから言った。
「君が今後どうするにせよ、あまり結論を急がないほうがいいな。自分の記憶がない、というのは、どうしても心理不安を掻き立てる。医師としては、それをあまり刺激したくはない」
「じゃあ…」
「とりあえず、酒場にいるサニー・スマイルズという女性に会うといい。彼女は地元の猟師で、君の面倒を見てくれるだろう。それに、しばらく歩いて、身体を動かせば記憶や感覚が戻るかもしれない。いまは言葉を尽くすより、そのほうが効果的だろうと私は思う」
「身体に訊く、っていうやつ?」
「まあ、そうだな」




 酒場がある、と聞いたとき、ブレンダはさっそく酒が飲めると胸を躍らせていたのだが、実際はそう上手くはいかなかった。
「あなたね、先日ドック・ミッチェルのところへ担ぎこまれた怪我人って。頭を撃たれたと聞いたけど、もう歩いて平気なの?」
 ブレンダが店に入ってすぐ声をかけてきたのは、ドック・ミッチェルが言っていたサニー・スマイルズという女性だった。背中にライフルをかけ、相棒の猟犬を連れている。
 この酒場は銃所持ペット同伴可能というより、彼女と犬のことは町の誰もが知っているのだろう、とブレンダは思った。
「ええ。脳味噌がちょっと減ったせいだと思うけど、記憶が全然あやふやなんだけどね」
「それじゃあ、脳を活性化させるためにちょっとした訓練をしてみましょうか」
「…いますぐ?」
「他に用事でもあるの?」
「え~と、いや~その…お酒飲みたいな~、とか考えちゃったりして」
「こんな昼間から?そんなのはロクデナシのすることよ!それにあなた、お金は持ってるの?」
「う…」
「ちなみにこの店はツケ飲みはやってないわよ。店主のトルーディがそういうの嫌いだから」
「うう…」
 仕方なくブレンダはサニー・スマイルズに従い、店を出て裏の空き地へと回った。




「はい、これ。あなた、銃の撃ち方はわかる?」
「…レミントンの小口径バーミント・ライフル。着脱式箱型弾倉。これならわかる」
 サニー・スマイルズから銃を受け取ったブレンダは、慣れた手つきで遊底桿を操作し弾を薬室に送り込む。
 彼女の視線の先にあるのは、木の杭の上に乗せられたサルサパリラの空き瓶。おそらく酒場から出たものだろう、ひとまずそれを練習用の的に腕を計る意図のようだ。
 記憶がないといっても、息の吸い方や酒のキャップの外し方まで忘れたわけではない。本能レベルで覚えていることというのは結構あり、銃の操作もそういった「身体が覚えている動き」の一つだった。
 地面に膝をついたブレンダは人差し指で舐めるように引き金をなぞり、両目を開けた状態でサイトアライメントを確認する。
「意識は照星に。引き金は絞る(Front sight focus, and trigger squeeze)」
 やがて…ダンッ!
 閃光と同時に銃口が跳ね上がり、僅かな時間差でサルサパリラの瓶が砕け散る。
 ガチャリ、ブレンダは意識して遊底桿を強く引き、次弾を装填した。彼女はボルトアクション式のライフルにそれほど慣れていたわけではなかったが、中途半端な力での遊底の操作は排莢不良の原因になることは知っていた。
 バーミント・ライフルというのは鳥撃ち用に設計された銃で、高速で動く小さな飛翔体を撃つことを想定しているため命中精度が高く、そのため狙撃用ライフルのベースとして採用されることも多い。
 いま手にしている銃はあまり手入れが良くないにも関わらず、きちんと狙った場所に当たるのは元の性能がいいからだろうとブレンダは思った。個人的にはセミオート式のほうが好みだったが。
「これにしてもこの子、銃声に驚かないのね」
「慣れているからね。猟で連れ歩くのに、いちいち銃声で驚いてたら使いものにならないわ」
 サニー・スマイルズが連れている、シャイアンという名の猟犬を見て、ブレンダは感心の声を漏らす。
 一旦銃を置き、首筋を撫で、抱きしめる。
「よしよし、いい子だ」
「アウッ、バウバウ!ヘッヘッヘッ」
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよし」
「あの。可愛がるのは、とりあえず的を撃ってからにしてくれない?」
「あ。ごめんなさい」
「それにしても、シャイアンがこんなに早く懐くなんて珍しいわね。チェットなんか未だに吼えられるのに」
 サニー・スマイルズの苦言を受けたブレンダはひとまずシャイアンをモフりまくっていた手を止め、ふたたびライフルを手に取る。
 リラックスし、そっと銃口を持ち上げ、一瞬息を止め、発砲。
 ダン、ダン、ダン、ダンッ!
 立て続けの連射にサルサパリラの空瓶が次々と砕け散り、やがて五発入りの弾倉が空になったのを見たサニー・スマイルズがヒュウと口笛を吹いた。
「やるわね。これならサルサパリラの瓶が襲ってきても身を守れそうだわ」
「どうも」
 彼女の賛辞を、ブレンダは控え目に受け取る。
 サニー・スマイルズの言葉はあくまで「初めてにしては上出来」という以上のニュアンスではなく、そのことをブレンダは理解していた。もちろん、いまはそれに反発しても仕方がない、ということも。




「私はこれからゲッコー狩りに行くけど、あなたもアシスタントとしてついて来る?」
「…ゲッコー?」
「詳しくは現地に着いてから説明するわ。もちろん、駄賃は払うわよ?酒代くらいにはなるんじゃないかしら」
「行く」
「やっぱり」
 酒を引き合いに出した途端に即答するブレンダにサニー・スマイルズは呆れながら、シャイアンに先導するよう命令する。
 突然駆け出したシャイアンを見て驚きながら、ブレンダは慌てて追いつこうと自らも駆け足で走り出した。



< Wait For Next Deal... >



 どうも、グレアムです。
 ニューベガスでの似非プレイ日記は基本的な流れを本筋に忠実になぞりつつ、プロットの細かい部分を改変していくスタイルでいこうと予定しています。今回はまだ手探り状態ですが、グッドスプリングスを出るあたりで主人公が明確な行動目的を持つようになるのでお楽しみに。
 しかし書いてて改めて思ったのが、記憶喪失系主人公とかこれどんなギャルゲーだよ、と。いやループ系にするつもりはありませんけども。最後にメインヒロイン=ラスボスが待ってるとか完璧じゃないですか。ドレッドヘアで一見浮浪者みたいな小汚い格好してるポエミィな男だけどね!
 真(トゥルー)エンドではユリシーズと一緒にニューベガスを平定する。一番活躍するのはジョシュア・グラハムだけど。平定っていうかまっ平らになるじゃねーか!駄目だコレ。






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