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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/26 (Tue)21:22
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2012/11/15 (Thu)06:59
「そろそろ、この街から離れる頃合かもなぁ…」
 そんなことをつぶやきながら、ドレイクはいまやすっかり馴染みとなったノーザングッズ商店へと足を運んだ。日用品を買い足すついでに、酒場で出会った女店主の娘ダー=マをからかうのが日課のようになって久しい。
 もともと、この街へはオブリビオン関連の書籍を集めるために来たのである。シロディールでも有数の書店と言われるレノワー書店へ足を運ぶのが目的だったのだが、実際はいささかアテが外れたと言わざるを得ない。
「オブリビオンの歴史や性質、その上澄みの資料なんぞはどうでもいい。もっと具体的な資料はないのか?…やはり魔術師ギルドや、帝国の秘匿文書庫あたりを探すしかないのか」
 そんなことを言いつつ、ノーザングッズ商店の戸を開けたドレイクを出迎えたのは、いつになく落ち着かない様子の女店主シード=ニーウスだった。



「どうかなさったんですか?そういえば、娘さんの姿が見えませんが」
「そう、そのことについて、じつは貴方にお願いしたいことがあるのですが…」
 普段はおっとりした気立ての良い女店主のただならぬ様子に、ドレイクは面喰らいながらも表情を引き締める。
「実は私、ハックダート…コロールの南に位置する、小さな村です…そこに定期的に商品を卸しに行っているのですが、今月に入ってから少しばかり体調を崩してしまい、今回だけ娘のダー=マに商品の配送をお願いしたのです」
「それで?」
「ところが、もうとっくに帰ってきていいはずなのに、音沙汰がないのです。私が心配性なだけかもしれませんが…もしかしたらトラブルでも起こしたんじゃないか、道中で何者かに襲われたんじゃないか、そう思うといてもたってもいられなくなって」
「娘さんは一人でハックダートに?」
「ええ。愛馬のブラッサムに乗って…まだら模様の馬です。あまり外見的な特徴はありませんが、鞍に名前が彫ってあるので、それを見たら判別がつくかと。その…書体が特徴的なので」
 体調を崩しているからか、精神的に不安定だからなのか、あるいはこの喋り方が素なのか、シード=ニーウスはところどころ独特な間をあけて話を続ける。
 それと、「書体が特徴的」という部分でちょっとだけ言葉に詰まったのはなぜだろう?
「なにぶんお転婆な娘なので、心配は無用ではないか、とも思うのですが。本来なら、彼女のお友達にまず知らせようかとも思ったのですが。すでにこの街を発っているようで…エルフの女の子です」
「エルフ?ああ…」
 錬金術師シンデリオンの弟子とかいう、あのそそっかしい娘か…と、ドレイクはひとりごちる。
 なぜかグレイ・メア亭で偶然居合わせたが、あのときはロクな目に遭わなかった。換金目的でアイレイドの遺跡から拝借したウェルキンド石を、ゴスロリ服の少女に相場の半額で売る破目になったのだ。
 まあ、その後ダー=マと親密になれたので(もちろん、節度ある範囲で)、あまり気にはしていないが。
「いいでしょう、娘さんのことはわたしも気がかりです。ちょっとばかりハックダートまで行って、様子を見て来ますよ」
「本当ですか?ありがとうございます!…なんとお礼を言っていいやら……」
「まあまあ。ここは同郷の士、ということで」
 そのドレイクの言葉に、シード=ニーウスは微妙な表情を浮かべた。
 ああ、選択肢を間違えたっぽいな…ドレイクは内心で舌打ちをする。おそらく、シロディールの文化的な生活に慣れたアルゴニアンにしてみれば、ブラックマーシュのことなど思い出したくもないのだろう。





「ここがハックダートか…」
 小さな村とは聞いていたがな、とドレイクは漏らす。予想以上に孤立した、というか、寂れた村だ。
 ノースカントリー厩舎でまだら馬を借り、山道を越えた先にあったのは、半ばほど廃墟と化した寒村だった。
 道中で一度だけ魔物に襲われたものの、それ以外のトラブルは一切なし。ダー=マがトラブルに見舞われた形跡も発見できなかった。とはいえ道中で山賊に襲われ、どこぞのアジトにでも連れ去られていたら、その時点でお手上げなのだが…
「まあ、どうせ村人の歓待でも受けて長居しているだけなんだろうさ」
 そんなことを言いながら、ドレイクは馬を停めることができる場所を探しはじめた。
 それに、なんだかんだ言って年頃の娘だ。もし村に若くて良い男でもいれば、間違いが起きることだってあるだろう。もっとも、そんな理由で村に居着くようになっていたら、シード=ニーウスにどう説明したものやら検討もつかないが。
 あれこれ考えつつ、ドレイクは焼け落ちたまま放置されて久しい邸宅跡に馬を停める。
 ふと脇に目をやると、そこには自分が乗ってきたのと似たようなまだら馬が暇そうに蹄を鳴らしていた。



 『フ”ζ:」⧺ム』…鞍には、そう書かれているように見えた。
「ナニコレ」
 思わずドレイクは眉間に皺を寄せ、まじまじと鞍に刻まれた謎の記号の集合体を見つめる。
「ブラッサム…と読めなくもない…のか?」
 まるで宇宙人かなにかが書いたような文字をどうにか判読し、ドレイクは微妙な唸り声を上げた。
 あまりにも下手糞な字だが…どちらかというと、わざと限界まで字体を崩して書いてあるようにも見える。いわゆるギャル文字というやつか?お転婆だとは聞いていたが、なるほど、母親が言葉を詰まらせるのもわからないではない。
「特徴的な書体、か」
「おい貴様、こんなところで何をしている」
 ドレイクの背後に、何者かが立ち尽くす。腰にメイスをぶら下げているが、こういう孤立した環境にあって自衛や狩りのために武器を携帯するのは別段珍しいことではない。
 一つ咳払いをし、ドレイクは努めて平静を装って言った。
「スマン、厩舎が見当たらなかったのでな。勝手に馬を停めさせてもらった…最近このあたりに、アルゴニアンの娘が来なかったか?この村の雑貨店に、商品を卸しに来たはずだが」
「知らんね」
 村人はそっけない態度で答える。
「それより、この村では余所者は歓迎されない。特に用がないなら、とっとと出て行くんだな」
「そうするさ」
 ドレイクはそう言って、威嚇するようにわざとアカヴィリ刀の鞘をカチリと鳴らすと、ダー=マが商品を卸す先であるというモスリン衣料雑貨店へと向かった。





「そんな娘のことなんかぁ、あたしゃ知らないよォ!」
 店主のエティーラ・モスリンは、開口一番、そう言い放った。
「むしろこっちが居場所を知りたいくらいだよォ!この村の住民たちはぁ、月に一度届く品物を頼りにぃ生活してるんだからさぁ!品物が届かないとぉ、困るんだよォ!」
「…そのわりに、品揃えはやけに充実してるじゃないか」
 女店主の妙な口調には触れずに、ドレイクは冷静にぐるりと店内を見回し、指摘する。
「まるで今月分はもう届いてるみたいな分量だな?」
「こんな小さな村じゃさぁ、いつ今回みたいなトラブルがあるかわからないからさぁ!いざってときのために在庫を多目に取ってあるのさぁ!余計なことばっかり考えるんじゃないよさぁ!」
「…タグの日付が先日付けなんだが?」
「そいつは去年届いた品物なんだよさぁ!」
「今年付けだが」
「相手が書き間違えたんだよさぁ!」
「…そうかい」
 これ以上突っ込んでもマトモな反応が得られそうにないと判断し、ドレイクは質問を中断する。
 どうやらダー=マは、この村に到着する前にトラブルに巻き込まれたわけでも、この村を発ったあとに消息を絶ったわけでもないらしい、ということだけはわかった。
 どう考えても、この村でなんらかの事件に巻き込まれた可能性が高い。
「しかし、文明的な土地柄だったら、もっとましな誤魔化し方を考えそうなもんだがね…」
「余所者が余計な詮索ばっかりするんじゃないよさぁ!冷やかしなら出て行きなよさぁ!」
 女店主モスリンの罵声を背に浴びながら、ドレイクは店を後にした。





「しかしまあ、どいつもこいつも、似たような反応しか返しやがらんな」
 午後一杯を聞き込み調査に費やしたドレイクは、井戸がある村中央の広場で腕を組み、嘆息した。
 農婦、神父、宿屋の主人など、この村の住民ほぼすべてに話しかけてみたものの、成果はなし。誰も彼もが「そんな娘は知らん、余所者は出て行け」の一点張りである。
「村での統率は取れているみたいだが、如何せん、やり方がなってないな」
 孤立した村でずっと暮らしていれば、世間と感覚がズレるのも無理はないが、とドレイクはつぶやく。
 たとえばこれがもっと文化的な土地柄であったなら、もしダー=マの消息について知られたくないことがあったとしても、もっと警戒されずに済む、上手い誤魔化し方をするだろう。
 然るにダー=マの愛馬が放置され、ダー=マが運んできたであろう品物を店頭に並べたまま、「知らぬ、存ぜぬ」を押し通すというのは、やり方が稚拙というほかない。
「田舎者の大根役者め」
 ドレイクは、この村に着いたときからずっと後を尾けてきている村人…ナッチ・ピンダーといったか…に聞こえるよう、わざと声を高くして言った。



 その日の夜、村に唯一存在する民宿<モスリン亭>の客室で睡眠を取っていたドレイクは、何者かが階段を上がってくる「ギシ、ギシ」という音で目を醒ました。
「…古い建物ってのは、ホントに、泥棒泣かせだよなァ?」
 手元に置いてあったアカヴィリ刀に手を伸ばし、ドレイクは寝たフリをしつつ周囲を警戒する。
 やがて足音の間隔が短くなってくると、不意に何者かがドレイクに襲いかかってきた!



「随分ストレートな出迎えだな、えぇ!?」
 トゲつき棍棒の一撃を回避し、ドレイクは襲撃者の姿をまじまじと見つめる。
 腰を麻紐で縛ったぼろぼろのズボン一枚という、異様な出で立ちはまるで蛮族のようだ。角ばった顔面に飛び出し気味の眼球はヒキガエルか、魚介類のそれを思わせる。
「…なんだ、コイツは!?」
 てっきり村人の誰かが襲ってきたものとばかり思っていたドレイクは、相手の容姿に驚きを隠せない。
 醜くはあるが、奇形とか人間離れとかいうほどの醜悪さではない。が、その絶妙なバランスが余計に心理的不安を掻き立てた。
『いあ!いあ!くとぅるふ・ふたぐん!』
 謎の叫び声を上げながら襲いかかってくる蛮族の棍棒の一撃を、ドレイクはアカヴィリ刀の柄で受け止める。が、しかし。
「くおっ!?くっ、な、なんて馬鹿力なんだ、こいつ…っ!?」
『ああああああぁぁぁぁぁぁぁああっっっ!!!』
 ぎりぎりぎり、貧相な見た目からは想像もつかない怪力に押され、ドレイクは動揺する。
「クッ、この野郎…ッ!!」
 だが、力に力で対抗するほどドレイクは単細胞ではない。



 相手の馬鹿力を利用し、ドレイクは柔術の要領で蛮族を投げ飛ばした。
 つづけざまに蛮族の首筋を刀で突き刺し、絶命させる。刃先を抜いた瞬間に返り血を浴びないよう、ドレイクは角度に気をつけながらゆっくりと刀身を引き抜く。
「フーッ、…いったい、なんだってんだ、こいつは」
 あまり清潔とはいえないベッドのシーツで血を拭い、刀身を鞘に収めながら、ドレイクはつぶやいた。
「いままでは、品物をタダでぶん獲るために村人がグルでやらかしてたもんだと思ってたが…どうも違うな、そっちは主眼じゃない。村の風習か…カルトの臭いがするな」
 首筋から鮮血をしたたらせている蛮族の死体を見つめながら、ドレイクは状況を分析する。
「いずれにせよ、もう一眠り…てな気分じゃなくなったことは確かだ。夜のうちに、もう一度探りを入れておくとするかな」
 そう言って、ドレイクは死体を残したまま部屋を後にした。



「おーい親父、いないのか?」
 下階に下りたドレイクは、誰もいない受付に向かって声をかけた。
「参ったな、ルームサービスでも頼もうかと思ってたんだが。あと、部屋の清掃も」
 一晩経ったらとっとと出て行け、と喚き散らした店主の顔を思い出し、ドレイクは苦笑する。
 ふと視線を落としたドレイクは、薄い埃が積もった床に、やけに脂っぽい足跡が二階の客間まで続いているのを発見した。あの蛮族のものだろう。
「…どのみち、掃除は必要かもな」
 足跡を逆に辿ると、どうやら蛮族は外から来たのではなく、最初からこの建物に潜んでいたらしいということが窺える。
 やがて地下室への入り口を発見し、ドレイクは何とはなしにつぶやいた。
「横溝正史か、これ」
 とすると、さっきのは忌み子かなにかか。
 そんなことを考えながら梯子を下りていくと、目の前に広がっていたのは地下室などではなく、天然の洞窟郡だった。
「驚いたね、どうも」
 感嘆の声を漏らし、ドレイクは周囲を見渡す。
 やがて、鉄格子の向こうに捕らえられたアルゴニアンの少女の姿を発見し、ドレイクは急いで駆けつける。
「おい、大丈夫か!?」
「あ、あなたは…!」
 にわか造りの独房に捕らえられていたのは、見間違うはずもない、シード=ニーウスの愛娘ダー=マだった。
「どうやら無事のようだな。またキミの可愛いダミ声が聞けて嬉しいよ」
「助けに来てくれたの!?」
「麗しき、心配性の母上に感謝するんだな。とはいえ、まさかこんな事態になってるとは思いもよらなかったが。これはいったい、どういうわけだ?」
「わたしにもよくわからないわ。ただ、この村の人々は異教の神を崇拝していて、その神様の助けを借りるために、わたしを生贄に捧げるって言ってた」
「トンデモねーな。まあいい、いま鍵を開けて…」
 ドレイクがそう言いかけたところで、ダー=マの視線に気がつく。



「う、う、後ろ!」
 ドレイクの背後には、いまにも棍棒を振りかぶらんとしている蛮族の姿が見えた。
『イシャアアアァァァァァァアアッッッ!!』
 蛮族が奇声を上げながら、頭をかち割らんと棍棒を振り下ろす瞬間、ドレイクの手が素早く動いた!
 バシ、バシィッ!
 振り返ることすらせず、ドレイクは鞘で蛮族のみぞおち、次いで首筋を殴打する!
 ぐるり、眼球が裏側を剥き、だらしなく口泡を飛ばしながら吹っ飛ぶ蛮族を尻目に、ドレイクは呼吸一つ乱すことなく、言った。
「醒走奇梓薙陀一刀流鞘術…二首背打」
「し、死んだの…?」
「殺してはいない。本来この技は倒れた相手の心臓を突き刺すのとワンセットなんだが、まぁ女の子の前で無益な殺生もいかんだろうと思ってな」
 そう言いながらドレイクは刀を抜き、鉄格子にかけられた錠前にピタリと刀身をあてた。その姿は、ビリヤードのキューの構えにも似ている。深呼吸。
「コォ…鉄閃!」
 ガキャン!
 金属音とともに錠前が落とされ、鉄格子が耳障りなきしみ音を立てながら開く。
 油断なく周囲に視線を配りながら、ダー=マはドレイクに警告した。
「気をつけて。この洞窟にはまだ、さっきみたいなやつが何人もいるわ」
「オーケイ。帰るまでが遠足なら、それまで大人しく良い子にしていようじゃないか」



 地下洞窟を脱出し、外に出た頃にはすでに夜が明けようとしていた。
「わたし、馬を取ってくるわ!」
 そう言って、ダー=マが焼け落ちた邸宅跡まで駆け出す。
 フウ、一安心のため息をつきながら、ドレイクはなにやら教会が騒がしいことに気がついた。
 戸が開いたままの教会に近づき、そっと顔を近づける。



「これでようやく、我が村にも繁栄を取り戻すことが…」
「かつて村を焼き払った帝国に復讐を…」
「それよりも、<彼の者>の飢えを満たすために血を流す生贄の確保が最優先では…」
 口々にそんなことを漏らす村人の会話を聞いて、ドレイクは薄気味の悪さをおぼえる。
 やがて村人たちは、いっせいに怪しげな呪文を唱えはじめた。
「…もう関わらないほうがいいな」
 そう言って、ドレイクはそっと教会の戸を閉じた。





「本当にありがとう。なんとお礼を言って良いやら」
「じゃあ感謝の気持ちはカラダで示してもらおうかな」
「見損ないました。じろじろ見ないでください不快です死にます」
「冗談だよ…」
 馬を駆り、2人は晴れてハックダートの脱出に成功したのだった。
「それにしてもあの村、なんだったのかしら」
「あまり深く考えないほうがいいぞ。あと、あんたの母親には金輪際あの村に近寄らないよう警告しておいたほうがいいな」
「そうね…」
 そんな会話を交わしながら、ゆっくりと馬を歩かせていたところへ。
「おい、生贄が逃げるぞーッ!!??」
 教会から出てきた村人たちが2人を発見し、武器を手に追ってきた!
「おおう、こいつはヤバイな。山道を全力で逃げるしかないが、お嬢ちゃん、馬の扱いは?」
「任せて、わたし乗馬は得意なの。それにブラッサムなら、どんな悪路でも走破してみせるわ!」
「そいつは頼もしい、お転婆娘の鏡だな!よぉし、行くぞッ!!」
 かくして、鬼のような形相で追いかけてくるハックダートの村人と、逃げる2人の壮絶なチェイス・レースがはじまったのであった……



[ to be continued... ]



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2012/11/12 (Mon)16:58
 TES4SS(というか現在のグレさんのTESプレイ環境下)において、使用しているMODのリストを作りました。

http://reverend.sessya.net/tes4_modlist.html

 現在私が書いているSS記事は有志が製作されたMODなくしては作れなかったものなので、せめて使用しているMODに関する最低限の情報を掲載することは義務というか、けじめかなあと。むしろもっと早くやるべきだったんですが…
 ちなみに製作者名に関しては、MODを入れたのがかなり前ということもあってDL先がわからなくなってたり(あるいは無くなっていたり)、DLしたファイルにReadMeが添付されていなかったり、ReadMeに製作者名が記載されていなかったりと、判別しない例が多々あったからです。
 もちろんわかっている範囲内で記載することもできるのですが、私は博愛的共産主義者なので、不公平があってはならない…ということで、今回は記載しない方針で統一しました。
 バージョン情報に関しても、ほぼ同様の理由で記載していません。

 MOD名の下、()内の説明文は便宜的につけたものなので統一性がありませんがご了承ください。
 それと、MODリストは第三者にMODの内容を紹介するために作ったものではありませんので、MODそのものに関する質問や、DL先に関する問い合わせには答えることができません。名前をググるなどして自分で調べてください。

 もし記載情報に不備等がありましたら、コメント頂けるとありがたいです。



2012/11/10 (Sat)14:55
 最近、CoP用のMOD「SGM2.2」に銃火器を大量に追加するアドオン「Enot Edition」を入れてプレイしています。
 というか今回はいきなりEnotを投入してプレイしているのですが、元がロシア産ということで文章が全部キリル文字です。翻訳に関して、SGM2.2自体は半分ほどまで日本語化が進んでいるようですが、Enotに関しては例の人が作った半英語化がいまのところ最新。
 キリル文字のファイルは編集することすら困難なので(日本語環境だと文字化けする)、なんとか全文英語化だけでも早いとこ出ないですかね…そこらへんは英語圏のMODユーザーの努力に期待ですが。
 ちなみに半英語化はそのまま入れても機能しないので(少なくとも私の環境では)、ファイルを上書きしたあと、「gamedata_configs_text_rus」フォルダの中身を「gamedata_configs_text_eng」フォルダ内にコピーしてください。



 とりあえず序盤は新規追加されたCordonとSwampを通過することになるのだが、これが本当に通過点でしかなく、しかもタスク内容が面白くないものばかり。Zatonに到着したら二度と戻ることはないだろう。
 武器はAK74のコンディション低下率が低く、すぐにコンディションが低下するCoPにおいてこの磨耗率の低さはかなり強力なアドバンテージとなる。人間相手はヘッドショットすれば一発で沈むし、強力なミュータント相手にはオプションのグレネードランチャーが効果的。ぶっちゃけ、ZatonまではAK74が一本あれば事足りるだろう。
 そしてEnotではピストルの命中率が高く設定されており、人間相手にヘッドショットを決めるならアサルトライフルよりも有利。序盤はセカンダリに好みのピストル、プライマリにAK74を差しておけば先ず問題はない。
 ショットガンは弾が重いためインベントリを圧迫しがちで、サブマシンガンは性能が中途半端なため使途が見出せない。弾をばら撒くとすぐに劣化してジャンクになるし、Enotではコンディションが著しく低下した武器は修理すらできないので、はっきり言っていらない子と化している。Enotでは武器の威力が弾薬依存なのも原因の一つ。
 ちなみに新規追加されたCSのマップではアーティファクト探知機が役に立たなかったり、CoPのマップとは幾らかの差異が見られる。



 武器はEnotのために新規モデリングされたものが多数登場しており新鮮。カスタマイズ要素も多岐に渡り、銃器マニアにはたまらない出来となっている。
 モーションにもかなり手が加えられているようだが、ものによって出来がまちまち。個人的に、右手に構えた銃をわざわざ視野の左側に寄せるのは微妙だと思う。ただし他のMODと変化をつけようとする姿勢には好感が持てる。
 登場銃器はAEK919カシュタンやPP-2000などマイナーな代物が多数登場し、AKも多数のヴァリアントが登場する。逆に、西側の銃火器はほとんど目新しいものはない(ただし大抵のものはモデリングが一新されているので視覚的な目新しさはあるし、外装カスタマイズの幅が広いので魅力は充分にある)。



 じつは今回、グレネードランチャーのアドオンにH&KのAG36が登場するということで、ハロウィンで披露した自前のM4カスタム電動ガンを再現しようと思っていたのだが、なぜかM4には装着できず興ざめ。装着できるのはHK416(417)とG36系統のみで限定的。
 銃器にはテクニシャンの手で改造できるものとできないものがあり、なぜそういった差別化が成されているのかは謎。改造できないものは基本性能が高いかわり、フルカスタマイズした銃火器にはどうしても性能が劣るように思える。
 そしてEnotでは改造項目によって相対的に性能が下がるものが存在し、従来のSGMの感覚でなにも考えずにフルカスタムすると磨耗率が異常に高い駄作が出来上がる。いまのところ改造メニューはキリル文字で判読のしようがないので、せめて英訳ファイルが欲しいところだ。
 Alpha Unitは相変わらずバランスブレイカーで、登場させるとまともにタスクをこなすのも難しくなるため設定OFFを推奨。今回は損傷率の高い武器は修理すらできなくなったためAlpha Unitとの戦闘に旨味もなくなり(たいていジャンクの状態で拾う破目になる)、たんにうざいだけ。



 Enotではスーツに防弾クラス設定が施されており、防弾性能の高いヘルメットを装着している敵に対しては、拳銃弾でいくらヘッドショットしても倒せない仕様になった。そのため中盤以降は装甲貫徹力の高い弾薬の携行は必須。早めにJupiterのHunter関連のタスクを完遂して実績を解除しておくとラクになるかもしれない(定期的に性能の良い弾薬がアイテムBOXに支給されるため)。
 ミュータントに対しては通常弾とAP弾のどちらが有効なのかは謎。たぶんデータを覗けばわかると思う。大抵の場合、AP弾は貫通力が高い反面、威力が低下する補正がかかっている。
 Traderは人物によって買い取る品物にバラつきがあり、銃器の種類やコンディションによっては買い取ってもらえないケースが多々存在する(弾薬も然り)。医薬品はMedicが高価で買い取ってくれるので、金を稼ぎたいのであれば医薬品を優先的にルートしていきたい。逆に、コンディションの低い銃火器は無理に拾う必要はない。
 そしてゲーム中に登場する銃火器の種類が多いわりに、Traderがほとんど銃火器を売りに出さないのは謎の一つ。入荷数が少ないものはTraderが装備してしまい、店頭に並ばないケースもあるようだ(SoCでは日常茶飯事だったが、CoPでは珍しい現象)。また根気良くロードしていれば、Hawaiianがガウスライフルを入荷することがある。

 ともあれ銃火器マニアのグレさんは大いに楽しんでいます。文章の半分が英語で、もう半分がキリル文字というのはたしかに敷居が高いけど…
 さらにSGM2.2やEnotでは独自要素がかなり盛り込まれているので、それらを理解するのにも苦労する。が、それを補って余りある楽しさがあるのも事実。
 しかしコレ、Zatonからはじまるパッチとか出ないですかね…リプレイするのにCordonとSwampを通過するのが本当に辛い。ぶっちゃけ現状では、Zatonからはじまっても何の問題もないし。
2012/11/08 (Thu)15:31
 観て来ましたよ劇場で。今回は基本的に前作との比較レビューとなります。単体として見れば間違いなく出来は良かったのですが、あえて評価厳し目に。
 相変わらずネタバレ度高めなので(いまさらだけど)、未見で情報シャットアウトしたい人はブラウザの戻るキーを推奨のこと。

 とりあえず総評から入ると、前作より手堅く纏まっているぶん、全体的にこじんまりとした出来になっていたかなあという印象。大物俳優の複数起用の時点で製作側が息切れしていたような印象を受けた。
 ストーリー的にも、前作が一国の軍隊を相手に大立ち回りを演じたのに対し、今回は(規模は大きいとはいえ)傭兵部隊が相手なので、どうしてもパワーダウンしたように見えてしまう。加えて今回はシュワルツネッガー、ウィリス、ノリス(特にノリス)が参戦したことで主人公サイドが威力過剰となってしまい、パワーバランスが極端に崩れてしまったのもスリルを大幅に削ぐ要因となってしまった。
 前作では「戦力的には圧倒的に不利だけど、それでもこいつらなら…きっとやってくれるはず…!」という、手に汗握りながら主人公サイドのギリギリの活躍を満喫できたのだが、本作では「こいつらが負けるわけねーな」と、主人公サイドが完全余裕の難易度イージーモードだったので、やってることは派手でもいまいちカタルシスを感じることができなかった。人数的には前作と大差ないのだが…

 今回は敵のボスにヴァンダムを起用しており(名前がヴィランてーのはストレート過ぎやしないかい)、前作のスーツ男より強キャラの風格は出ているのだが、そのぶん片腕役のアドキンスがストーンコールドに比べ力(オーラ)不足に感じた。あのキャラ造詣だったら、いっそダニー・トレホでも起用すれば良かったのではないだろうか。
 ヴァンダムもアドキンスも、ストーリー中では冷酷な悪党ぶりを遺憾なく発揮していたものの、実際の戦闘シーンではそれほど活躍することなく退場してしまうので拍子抜け。それまでに無抵抗の相手を殺しまくっていたぶん、小悪党ぶりが悪目立ちする結果となっている。
 ドラマ的にも前作のほうが深みがあったように思える(ロートルの哀愁、軍指導者の葛藤など)。

 気になる大物俳優の見せ場だが、会話は気が利いているものが多く用意されている反面、アクションシーンでの活躍の仕方は「ただ銃火器を撃ちまくるだけ」と非常に大味。ターミネーターネタを会話に出すならシュワルツネッガーには長物2挺銃くらいやって欲しかったし、ノリスにはもっと格闘シーンが欲しかった。ウィリスは…まあ、あんなものか。
 ジェット・リーは序盤で退場するが、あの退場の仕方はどうもスケジュールの関係くさい。とりあえず「ここはコイツの見せ場!」って場面があるのは強い。充分活躍した方だと思います。相変わらずラングレンとイチャイチャしていたのには好感が持てた。あのコンビいいよね。
 ラングレンは前作での狂犬ぶりはなりを潜め、穏やかな(?)ムードメーカーに徹している。実はインテリ、てのは本人ネタだよね。もうちょっとキレてても良いとは思ったけど、これはこれでアリか。
 新キャラ1のヘムズワースは…まぁ、うん。スナイパー。悪くはないんだけどランボー最後の戦場のやつの焼き直しだよね。ステロタイプの若き秀才。個人的には好きなキャラ造詣だけど、特に語るような部分もないという。
 新キャラ2のユー・ナンは、まああの集団の中で堅実な仕事ができてたってだけで合格点でしょう。強いて言えば、アクションシーンでもうちょっと個性のある殺陣をやってくれても良かった気はする(唯一の女性なんだし)。
 あと、ステイサムは相変わらず優遇されすぎ。

 演出に関して、前作で不評だったカメラワークやカット割のせわしなさはかなり改善され、相当見やすくなっている。
 が、肝心のアクションシーンがどれも大味で見所に乏しい。「おっ」と思ったのはリーのフライパン無双とステイサムの坊主アクション(教会の。)くらいですか。バイクで武装ヘリ撃墜は爆笑したけど、あれは俳優の演技ではないしね。
 もちろん俳優に非は一切ないが、アクションシーンの構成が練り込み不足だと感じられた部分が多かったのは確か。前作からほとんど間を置かずに製作されたので、時間が足りなかったのだろうか?
 前作に比べると格闘シーンより銃撃戦に比重が置かれているが、肝心の銃撃戦の演出に工夫がまったく見られない。手堅い出来ではあるが無個性で芸がない。前作はもっと意欲的だっただけに残念だ。「キメ技」的な演出が少なかったのもマイナス。

 う~ん、こうやって改めて感想を文章にするとなんか文句ばっかり言ってるように見えるな(汗)いや、もちろん面白かったんですけどね。
 ただアクション映画マニアの性というか、優等生的なA級大作よりも個性的なB級アクションを好む身としては、もうちょっとトンガってても良かったんじゃないかなーと思わずにはいられないのであったり。

 ちなみに今回一番のお気に入りのシーンは、なんといってもチャック・ノリスの登場シーン。戦車含む敵部隊を一人で瞬殺した直後にチャック・ノリス・ジョークのセルフパロディをかますとか、流れが完璧過ぎる。
2012/11/06 (Tue)13:47
 星空の下で、いつもと変わらぬ夜闇と静寂があたりを包む。
 松明を片手に定時パトロールをこなす王宮騎士は、休憩室に置いてある読みかけの本のことを考えながら、あくびを噛み殺した。
「はやく交代の時間にならないかなぁ…」
 並の衛兵との格の違いを体言する白銀の鎧に身を包み、卓越した剣と弓の業を持ち併せながらも、やはり人の子である。
 皇帝陛下が暗殺されたとはいえ、早々に日常に変化が訪れるわけでもない。
 すわマッポーめいた波乱の時代の幕開けか、などと煽られたところで、王宮騎士という要職にあってさえ「いままで通りに仕事をしていれば、いままで通りの給料が貰えて、いままで通りの生活ができる」のである。
 当然、危機感など生まれるはずもなく…



 任務のことなど上の空だった王宮騎士は、目の前に現れた漆黒の影に、すぐに気づくことはできなかった。
「ドーモ。ナイトスレイヤーです」
「え?あ、あぁ、どうも…」
 声をかけられてようやく相手の存在に気がつき、あまつさえ丁寧な口調で(いささか奇妙な訛りがあるようだが)挨拶されたことに対し、王宮騎士はまったく警戒することなく言葉を返す。
「こんな夜中に外を出歩いては危険だ。早く家に帰…」
 そこまで言いかけて、王宮騎士はようやく、相手の風貌の異様さに気がついた。
 王宮騎士の装備とはおよそ対を成す、漆黒の全身鎧。素顔をすっぽりと覆い隠すメンポ。
「…そういえばお前、さっき何と名乗った?ナイトスレイヤー(騎士を殺す者)だと?」
 なにかの悪い冗談か、コスプレかなにかか?
 そう思いながらも、武器の柄に手をかけた王宮騎士の目の前で、相手のメンポが不気味な光を放った。赤黒い炎がゆらめき、メンポに機械的な書体で「騎士」「殺」の文字が浮かび上がる。



 禍々しいフォルムの長剣を抜き放った正体不明の存在…<ナイトスレイヤー>は、先程までのフレンドリーな態度を一変させ、重く低く、そして邪悪極まりない口調でつぶやいた。
「騎士、殺すべし」
「ア、アイエエエエエエ!?」
 ナイトスレイヤーの非情な一撃を受けた王宮騎士の悲鳴が、帝都にこだまする。



「…いい身体つきをしているな」
「ひ、ひぇっ!?」
「勘違いするな、筋肉を褒めたのだ。脂肪のことではない」



 咄嗟に豊満なバストとヒップを手で覆い隠したちびのノルドに、老獪な騎士の奥ゆかしいツッコミが入った。
 最初にナイトスレイヤーの犠牲者が出てから一週間の時が経った明くる日、帝都刑務所地区に建つ帝国軍騎士長のオフィスにちびのノルドは召喚されていた。
 執務室のデスクに鎮座しているのは、長年帝都の平和を維持してきた老練の騎士アダムス・フィリダその人である。
「ちびのノルド…いや、アリシアと言ったか。知っての通りいま、帝都にはナイトスレイヤーを名乗る正体不明の悪漢が暗躍している。やつは帝都軍の中にあって腕利きの集団と名高い王宮騎士ばかりを闇討ちにしているのだ」
「そのー、相手に心当たりとかはないんですか?過去に誰かの恨みを買ったとか…」



「心当たりなんぞ、幾らでもあるわい。こちとらは、誰に恨まれようとも帝都の平和を守るために存在しているのだからな。だが、夜襲をかけたとはいえ騎士を次々に手討ちにするほどの実力を持った相手ならすぐに正体くらい割れそうなものだが、いまのところ、手がかりはない」
「ハァ…それで、わたしは何をすればいいんです?」
「聞くところによると、君は我が帝都の商店組合から信頼されているそうじゃないか。なんでも、数々のトラブルを解決したとか。そこで君に頼みたいのは、ずばりナイトスレイヤーの討伐だ」
「と、討伐?」
「いかにも。本来ならば内密に処理したいところだったが、現在我々は皇帝暗殺を企てた謀反人の捜索に手一杯で、他のことに割ける人員を確保できておらん。戦士ギルドや魔術師ギルドに依頼することも考えたが、彼らは彼らで身内のトラブルを解決するので精一杯らしい。そこで傭兵の出番というわけだよ…そう、君のような」
 そう話すアダムスの表情は、真剣そのものだった。





 帝都植物園地区、泣く子も眠るウシミツアワー。
 ナイトスレイヤーを討伐すべく、ちびのノルドは囮の騎士を引き連れて帝都を散策していた。
「本当に、きみがアダマスの雇った傭兵なのかい?どうにも頼りない感じがするが」
「不満があるなら、自分達だけで事件を解決すればいいんじゃないですかネー…」
 わりと当然の疑問を口にする囮役のイティウスに、ちびのノルドはなげやりに答える。
 今夜のみ、帝都では騎士の巡回を禁止し彼らを控え室に待機させていた。治安の悪化が懸念されるが、もし今夜ナイトスレイヤーが現れるのならば、間違いなくイティウスが狙われるはずだ。
「これで今夜なにも起きなかったらどうするんでしょうね」
「まだ考えてない」
 即答するイティウスを見て、ちびのノルドはため息をついた。
 が、そのとき。



「ドーモ、イティウス=サン。ナイトスレイヤーです」
 ズドンッ、重々しい炸裂音とともに、突如2人の目前に漆黒の鎧が降誕した。メンポにどす赤黒く浮かび上がる「騎士」「殺」の文字、スリットから噴き出す炎の如きオーラが禍々しく揺らいでいる。
「あ、あれがナイトスレイヤーかっ!?」
「…わたしが関わる事件って、なんでこんなのばっかりなんだろう……」
 ナイトスレイヤーの異容を目前に、ちびのノルドは頭を抱える。



「騎士、殺すべし!」
 ザシャアッ、超重量級の全身鎧姿からは想像もできない驚異的な跳躍力でナイトスレイヤーは飛び跳ねると、2人に襲いかかってきた。
「フッ、面白い、ナイトスレイヤーとやら!貴様の実力、確かめさせてもらうぞ…」
 イティウスはシルバー・ロングソードを抜き、不適な笑みを浮かべると、これ以上ないほどにカッコつけて見栄を切る。
「帝都衛兵隊3番隊隊長、白金騎士イティウス・ハイン。推して参るッ!!」
 そう叫び、ナイトスレイヤーに立ち向かおうとした、そのとき。
「あなたは余計なことしないでください、相手を誘き寄せるための、ただの囮なんですからッ!」
「おぶぉはぁっ!?」
 背中に拳打を叩き込まれたイティウスが、彼方まで吹っ飛ぶ。
「あなたに万が一のことがあると、わたしが困るんですよ!頼むから引っ込んでてください!」
 まったくもう、と漏らすちびのノルド。
 いつの間にか姿を消したイティウスを探して首を巡らせ、ちびのノルドに焦点を合わせたナイトスレイヤーは、低く思い声音で一言、つぶやいた。
「…邪魔立てするか、小娘」
「あなたの相手はわたしです」
 まったく物怖じする様子もなく、ちびのノルドがスッと拳を構える。



「フンッ!」
「ハアァ、イヤァーーーッ!」
 振り下ろされた剣の一撃を受け止め、ちびのノルドはカウンターを繰り出す。
 喉下を殴打されたナイトスレイヤーは苦しそうに咳こみ、肩を上下させた。
「ムッ、…やるな小娘」
「小娘じゃありません、ちゃんと成人しています。背は低いですがおっぱいはそれなりに大きいです」
「態度が大きいのはよくわかった」
 喉元をさすり、ナイトスレイヤーはふたたび剣を構えなおすと、素早くも力強い剣戟を繰り出してきた。
 だがしかし、近接格闘術に特化した戦士のちびのノルドに対し、接近戦を仕掛けるのはあまりにもウカツ!わざわざ相手の得意フィールドで戦っていることに、ナイトスレイヤーは気がついていなかった。
 長剣のリーチを活かすこともなく振るわれる剣を、ちびのノルドは紙一重でかわしていく。
「(…剣を振るだけ?フェイントを仕掛けることもなく、これだけ接近しているのに手癖の悪さや足技を見せることもない?)」
 もろもろの疑問を脳裏で反芻させながら、ちびのノルドは反撃の機会を窺う。
 これだけの重装に身を包んでいるのであれば、全力で戦っていてはすぐに疲れてしまうはず。持久戦には弱いはずだ…戦場で研ぎ澄まされた観察眼で、ちびのノルドはナイトスレイヤーの実力を見極めようとした。
「(一撃は重いけど、当たらなければどうということはない。これは剣術道場で習うような、まるで型にはまった動きだ。戦場を知らないキレイな剣だ…)」
 もしかして、ナイトスレイヤーの正体は…
「フ、クゥッ!」
 絶え間なく攻撃を繰り返していたナイトスレイヤーが、一瞬、ただ一瞬だけ疲れを見せる。しかし、それが致命的なミスだった。
 ちびのノルドの眼光が鋭く光り、閃光のような足蹴りがナイトスレイヤーの顔面に炸裂する!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」



 強烈な一撃を受けたナイトスレイヤーのメンポが割れ、ヘルメットがはじけ飛ぶ!
「あ、あなたは!」
 殺人的な威力の蹴りが直撃したにも関わらず、一命を取り留めたナイトスレイヤーの、露わになった素顔を見てちびのノルドが驚きの声を上げる。
 それは以前、帝都で権力を利用して狼藉を働きまくった挙句、べろべろに酔っ払ったちびのノルドの暗躍によって刑務所送りになった騎士オーデンス・アビディウスであった。
 つるりと禿げ上がった頭頂部に視線を集中させながら、ちびのノルドが口を開く。
「なぜ、あなたが…というか、刑務所で服役中だったんじゃ」
「なに?小娘、俺のことを知っているのか?」
 ちなみにオーデンスは、自分を罠に嵌めた相手がちびのノルドであることを知らぬままだ。
「アー、イエ…ところで、なんでそんな格好をしてるんですか?」
「フン。獄中で、俺を逮捕した同僚どもへの恨みを募らせていたところへ突如、アビスと名乗るナイトソウルと邂逅したのだ。理由はわからんが、アビスはすべての騎士を恨んでいるようだった。利害が一致したため俺はアビスを己が身に憑依させ、ナイトを殺すナイト…ナイトスレイヤーとして生まれ変わったのだ!」
「…あの。あなた刑務所にいたんですよね?頭の病院じゃなく?」
「信じてないな」
「ア、ハイ」
「まあいい」
 ナイトスレイヤー、もといオーデンスはふたたび剣を構えると、叫んだ。
「ここで貴様を殺し、俺を捕縛したイティウスを殺し!俺は復讐を完遂させる!」
「そのプランは却下させて頂きます!」



 カッコつけてポーズを取っていたオーデンスの顔面に、ちびのノルドは全身全霊を込めた膝蹴りを叩き込む!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
 その一撃で、勝敗は決した。
 頭蓋が破砕され、脳髄に深刻なダメージを受けたオーデンスは、よたよたと二、三歩後退し、ふらつく。それでも最後まで倒れなかったのは、強力なナイトソウルのおかげであったろうか。



「ベリーグッバイ!」
 最後にそう叫ぶと、オーデンスはその場で四散爆散した。



「…とまぁ、そんなことがあったんですよ」



 後日、帝都商業地区のフィードバッグ亭にて。
 騎士隊長のアダムス・フィリダから事件解決の報酬を受け取ったちびのノルドは、本日の仕事を終えて祝杯を上げている商店会のみなさんに混じってジョッキを呷っていた。
 隣には、すっかり顔馴染みとなった故売屋の女店主ジェンシーンが座っている。
「あんたも作り話が上手くなったねぇ」
「ホントなんですってば。たしかにウソくさいですし、改めて話してみると、自分でも頭が痛くなるくらいバカバカしい話ですけど」
 そもそも自分がこんなバカみたいな事件に巻き込まれたのは、商店会が自分のことをアダムスに口添えしたせいだ…酔って朦朧としながら、ちびのノルドはそんな愚痴をこぼす。
 かくして、夜も更け…帝都はふたたび、平和な日常を取り戻したのである。



[ to be continued... ]




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