主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2016/08/04 (Thu)20:07
どうも、グレアムです。ゲーム三昧やらかしてる間にチマチマとFallout: New Vegasの画面写真用の小細工をテスト中です。
今回はずっと試行錯誤してきたMatrix風の弾道エフェクトがいちおう実現できたので暫定的に掲載。ネタバレすると透明化したビリヤードキューを軌道上に浮かせただけで、アイデア自体はずっと前から思い浮かんではいたんですが、いままでオブジェクトに透明化(いわゆるOblivionのカメレオン効果)をかける方法がわからなかったのです。
Oblivionから存在するsarコマンドは人物にしか適用できなくて、Base Effect(Oblivion/SkyrimのMagic Effect)をかけるpmeコマンドからカメレオン効果を付与するStealth Fieldを適用しようとしてもエラーメッセージが表示され…じつはsarコマンドの亜種にstrというのがあって、そちらを使えばオブジェクトにカメレオン効果をかけれるというオチでした。
ビリヤードキューをそのまま使うと表面の質感(Normal Map)が不自然なので、そのあたりは次回話の更新までに改良しておきたいと思ってます。あとは発砲時の硝煙を再現したいな…さすがにスライド後退等のギミックは専用のMeshを用意しなければならないし、そこまでは面倒なのでやりたくない。
ENB適用環境下ではカメレオン部分に他のオブジェクトが重なると、カメレオン部分が優先的に表示される(隠れない)という不具合もちょっと気にはなるんだが…いつぞやの一部オブジェクトが透過した問題とは違って、これはENBの効果を全部切っても解決されなかったので、仕様と割り切るしかないか。
Impactでいいじゃんって?いや、あれは俺が求めてるのとはちょっと違うんだよ…Impactは導入してるけど、Tracer部分は削除してバニラのを使ってるのです。
ついでに言うとImpactは着弾時に発生する、空間が歪むエフェクトがかなりマシンパワーを喰うっぽいので(そのくせ相当に目立たない)、あれも削除したいなあ。ちなみにImpactはバニラの武器データを改変して専用のエフェクトを適用する構造になってるので、FOOK等のオバホ系にそのまま入れると競合します。
自分でImpact用にデータを書き替えればいいんだけど、FOOKはすべての武器に調整入ってるうえ種類も増えてるのでめっちゃ面倒臭いんですよ…なので現状では標準のエフェクト(一種)のみ適用されてる状態です。自分でマージMod作ればいいんだろーがなあ、それでなくとも現状でFOOK(1.13)は一部Mesh指定が間違ってたり、Textureがズレたりしてるんで、気になる部分だけは自力でちょこちょこ修正したりはするんですけども。
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2016/08/02 (Tue)19:47
どうも、グレアムです。Deus Exの新作Mankind Divided発売が近いから、というわけでもないんですが、いまさら初代Deus Exをプレイし直しています。日本語化データを入れて。公式パッチの中身を流用するこの方法は、日本語版専用のexeを使用するのでMODが使用できなくなるという欠点はあるものの、やはりテキストを隅から隅まで読もうなんてことを考えてると、英語じゃ厳しいものがあるのでござんす。
たとえばHDTPあたりはモデルとテクスチャだけ上書きできないか、なんて考えて試しにダウンロードしてみたんですが、どうもそういう単純な構造ではないようで断念。これがMOD独自の仕様なのか、Unrealエンジンの仕様かまではわかりませんけども。
一通り進めて世界観を再確認すると、なるほどリブートであるHuman Revolusionは上手いこと要素を拾ってきてるなあと改めて感心したり。たとえばHRにおけるMech AugmentationとNeuropozyneの関係は、初代のGray DeathとAmbrosiaの関係に酷似していますし、効率追求による人間の素材化・機械化と、テクノロジー発達による「人間の使い捨て」は初代のMech AgentのGunther Hermannが危惧していましたし。
じつは初代とHRにおけるAugmentationの扱いには決定的な違いがあって、もともとAugmentationっていうのは、いわゆる義手や義足等の「医療技術」の延長なんですが、HRではその点をかなり明確に描写してるんですよね。初代では第一世代型のMechでさえ政府のAgent(あるいは元Agent)等の一部の特殊な人しか装着してなかったんですが、HRの世界では一般人が(時にはファッション感覚で)当たり前のように身に着けている。いわゆる義肢や差し歯、コンタクトレンズなんかと同じ日用品として扱われてるわけです(これらの装着者も広義ではサイボーグ扱いになります。補聴器とかね)。
そのあたりを理解していないと、HR世界におけるAugmentationの安全性の喪失と、それに伴う社会不安、混乱などは正確に理解できないんじゃないかと。特に新作Mankind Dividedは「義肢を身につけていただけの普通の人間が作為的な狂気の伝染によって人を傷つけてしまい、そのせいで異端として隔離・排撃される」という衝撃的な内容となっています。舞台となるプラハでは特に隔離政策が進んでいるという注釈はつくものの、現実における社会基盤の不安定さ、テクノロジーの功罪に対する問題提起については真摯に考える必要があると思います。
そこからどう初代に繋げるのかはわかりませんが、個人的には無理に統合性を取る必要はないと思いますね。たとえばアメコミみたいに、設定の一部だけを合わせてリブートって形にしてもいいと思います。面倒なファンは文句を言うでしょうけど。
そういえばDeus Ex Wiki(Wikia)のJC Dentonのページにちょっと気になる記載があったので紹介。
Triviaの項に「Lara Croft's Poker PartyというゲームにCPUの操作キャラとして登場する」とあるんですが、どうやらこのゲームは10年ほど前に携帯電話用にリリースされたもので、たぶん日本では配信されなかったんだろうなあ…
登場キャラはタイトルにあるLara CroftやJC Dentonのほかに、おなじみハゲの暗殺者HitmanシリーズのAgent 47、日本では初代PS版となぜか一本だけ外伝作がリリースされたLegacy of KainシリーズのKain、ゲーム画面を見たとき「こいつEidosだったんだ…」と思ったトカゲのGex、二挺拳銃にギターケースマシンガンがあまりにデスペラードでデモ版配信時に日本のPCゲーム界隈でもほんの少し話題になったもののPC版・コンシューマ版ともに国内リリースがなかったため忘れられたTotal OverdoseのRamiro "Ram" Cruz、Biohazardと同社Tomb Raiderをかけ合せたようなADVゲームFear EffectシリーズのHana Tsu-Vachelなど、およそEidosオールスターズとも言うべきそうそうたる面子。むしろ大半の人にとっては「誰だコイツら」状態になること間違いなし。
しかし、Fear Effectかあ…懐かしいな。
日本では二作目のFear Effect 2: Retro Helixが「ヘリックス フィアエフェクト」というタイトルでリリースされており、セルシェーディング(トゥーンシェーディング、トゥーンレンダリングとも)で描画されたグラフィクスはPSらしからぬ美しさだった気がする。日本語版には調整が入ってるのか、最初から全武器所持・弾数MAXというヤケクソ仕様でした。惜しむらくは字幕のみで吹き替えじゃなかったことかなー。
ゲーム自体はそう面白いもんでもなく、バイオハザード由来(ここで面倒なことは言うなよな)のラジコン操作にトゥームレイダーの死にざま鑑賞要素を組み合わせたようなもの、と言えばだいたい合ってるか。数多くの即死トラップにそれぞれ個別の死亡ムービーが用意されているというヘンな力の入れ方で、ドラゴンズレアやブレインデッド13などに代表される「主人公の惨い死にざまを楽しむゲームが好き」という奇特な趣味の持ち主でなければまったく凡庸な出来のADVだったと記憶しています。
たしか三作目のFear Effect Infernoが開発途中でキャンセルされてシリーズ終了のお知らせ…だったかと。登場キャラがけっこう魅力的で、本国ではマニアな人気があっただけに、Eidosが存在を忘れてるんでなければそろそろ何らかの形で日の目を見てもいいんじゃないかと思うんだが。
…などと考えて、懐かしさのあまりFear Effectのワードで検索したら何か来てるじゃねーかよ!
「Fear Effect Sedna」、当タイトルはスクエニのインディーゲーム支援プラットフォーム「Square Enix Collective」による支援を受け、現在Kickstarterにて開発進行中とのこと。
このSquare Enix Collectiveってなんなの?と、ちょいと調べてみたところ、どうやらインディーゲーム開発者向けに同社のIPを貸し出し、部分的な開発・配信のサポート等も行うらしい。その代わり資金調達は自分たちでやってくれ、ということなのかな?支援を受けるには事前に企画がユーザーコミュニティで高評価を得る必要があるそうで、なんにせよ、「やるじゃない、スクエニ!」と言うべきか。IPを死蔵しているどこぞのメーカーにも見習ってほしいもんだ。
現在Deus Ex攻略中だけど、ひさしぶりにFear Effectもプレイしてみようかな。
2016/07/31 (Sun)03:52
プリムの町を解放したブレンダは、モハビ・エクスプレスの支店長ジョンソン・ナッシュと元保安官補のビーグルの情報から、自分が追っている男キャリア・シックスがクレイブ本人であることを確認する。
クレイブを襲い、ブレンダを撃った謎の一団がニプトン経由でノバックへ向かったことを知ったブレンダは、プリムで小休憩したのち出発の準備をはじめる。
「なにをやっているんだ?」
「いや、やっぱりストックは長いほうがいいかと思って」
パウダーギャングたちが立て篭もっていたバイソン・スティーブホテルで睡眠を取ったあと、ブレンダはギャングの一人が持っていたショットガンの銃床を切り落とし、ドック・ミッチェルから譲ってもらったときすでに銃床が削られていた自分のショットガンに継ぎ足しで移植するという器用なことをやっていた。
作業がやりやすいよう銃身を外し、スウィッチ・ブレードで外形を整える。
サラとエックス・テックは普段からこのホテルを利用していたらしく、多少荒らされはしたものの、ギャングたちの手から取り戻せたことを素直に喜んでいた。もっとも血の池風呂と化したホールを掃除しなければならないとわかったときは、露骨に嫌そうな顔をしたが。
ホールは未だに硝煙の残り香が漂っており、血の匂いも完全に消えたわけではない。そんな場所で眠るのは、平和な世界であれば正気の沙汰ではなかったろう。
もっともブレンダにとって、雨風を凌ぐことができ、ついでに銃弾が飛んでくる心配がなければ、それはもう上等な寝床であった。すくなくともワシントンではそうだったし、ここモハビでもそう違いはないだろう、と彼女は思っていた。
「あんた、ブレンダ、だっけ、モハビに来てからの記憶がないって言ってたわね」不意にサラが尋ねる。「じゃあ、その前の記憶はあるんだ?」
「ワシントンにいたときのことは。多少は」
なにせ一度死んでいるし、しかも頭を撃たれたあとだから、とまでブレンダは言わなかった。
昔の記憶もあまり鮮明ではなく、要所は覚えているが、はっきりとしたイメージを出力することができない。それはブレンダの物覚えが特に悪いというわけではなく、もともと人間の記憶というのが曖昧にできているに過ぎないのだが。
なにか聞きたいことでもあるのか、と言うブレンダに、サラは質問した。
「どこで戦い方を覚えたの?軍隊?」
「みたいなものかな。昔付き合ってた男が、アウトキャストっていう組織の出身でね。彼に戦い方を教わったんだ。随分世話を焼いてもらった」
それはクレイブに出会う以前、ユニオン・テンプルの用心棒になる前の話だ。
まだティーンエイジャーだった頃、ブレンダの故郷はレイダーの襲撃を受け、大勢の同胞が殺された。殺された人間のなかにはブレンダの両親も含まれていた。そしてブレンダは生き残った同胞の多くとともに奴隷として使役され、屈辱の日々を送ることになる。
数年後、ブレンダの故郷を根城に略奪行為を続けていたレイダーたちは、ウェイストランドをパトロール中だったアウトキャストの部隊と偶然接触してしまい、銃撃戦に発展。
レイダーは皆殺しにされ、多くの奴隷が銃撃戦に巻き込まれ死んだなかで、ただ一人ブレンダだけが生き残る。手足が拘束され不自由な身であったにも関わらず、混乱した状況を利用して果敢にレイダーへ反撃を敢行したブレンダにアウトキャスト隊員の一人が興味を抱き、彼女を保護、インディペンデンス砦に連れ帰った。
アウトキャストとともに生活し、彼らから生存術や戦闘技術を学んだブレンダは、ウェイストランドの人々(アウトキャスト曰く「野生の原住民」)に溶け込みつつロストテクノロジーの捜索をする非正規の連絡要員として活動。
その素性を隠しながら放浪を続け、行き着いた先がユニオン・テンプルだった。
彼女自身が元奴隷だったこともあり、奴隷解放を目的として行動するユニオン・テンプルの信条に素直に感銘を受けたブレンダはそれ以降、ほぼ私情のみで奴隷商人との戦いに身を投じていく。
そしてあの傭兵、クレイブと出会い……
ガリッ、そこまで考えたとき、ブレンダの手に余計な力が入った。銃床が妙な形に削れる。いかん、失敗だ、動揺した。癪に障る、こっちも話を振ってやれ。
「サラはどうなの?そのリボルバーと早撃ちはヴォールト・テックの趣味じゃないでしょう」
「この銃はね、兄さんの形見なんだ。ヴォールトがフィーンドに襲われたあと、兄さんは私を連れてヴォールトから脱出した。それから兄さんはずっと、私を守ってくれた…運悪くレイダーと撃ち合いになって、命を落とすまで。銃の撃ち方も、兄さんから教わったんだ」
そう語るサラの表情は穏やかで、兄さん、と口にするときの発音が柔らかい。
心底兄のことを敬愛していたのだろう、そこまで考えて、ブレンダはサラの話に奇妙な違和感を覚えた。
サラとエックス・テックの姉妹は、フィーンドというレイダー集団の襲撃を受けたヴォールト3の生き残り…ジョンソン・ナッシュはそう言っていた。
「エックス・テックは一緒じゃなかったの?」
「うん。だからモハビ・エクスプレスでキティに会ったとき、ものすごく驚いた。たった一人でヴォールトを抜け出して、ここまで来たんだって」
「キティ?」
ブレンダが首を傾げる、とほぼ同時に、エックス・テックが金切り声を上げた。
「おねーちゃん、その名前で呼ばないでって言ってるじゃん!」
「あんた、キティっていうの?」
「ちーがーうー!はぁ…私の本名は、ケイティ。昔っから、おねーちゃんがキティ(子猫ちゃん)なんて呼んでからかうから…ウェイストランドの連中にまでキティなんて呼ばれたらたまったもんじゃないから、ここではハンドル・ネームを名乗ってるわけ」
「ごめんごめん、ケイティ」サラが微笑む。
まったく仲の良い姉妹だこと…ブレンダはそう思ったが、しかしエックス・テックの態度にはすこし引っかかるところがあった。
いまも名前のことで不機嫌そうにしているが、彼女はサラが兄の話をはじめたときから、どこか不愉快そうな顔を見せていた。サラがキティの名を口にしたのは、むしろそんなエックス・テックをたしなめるためだったようにも見える。
なんだろう?
どうにも釈然としない部分が残るが、そこをあえて深く突っ込むほどブレンダは無粋ではなかった。
人にはそれぞれ人なりの事情がある。もちろん自分にも、そして相手にも。
あの姉妹のことはすこし気になったが、いますぐ探求欲を満たさなければならないような問題ではない。
荷物を整えてバイソンスティーブ・ホテルを出たブレンダはサラとエックス・テックに見送られ、プリムを出発しようとしていた。
陽はすでに傾きかけ、雲が夕日に照らされている。これからクレイブを追い、ノバックへ向かわなければ。そうだ、自分の記憶すら覚束ない状況で、他人の人生に首を突っ込む余裕などない。
プリムに背を向けようとしたとき、ブレンダを呼び止める声があった。
「ハイ」
エックス・テックだった。サラの姿はない、一人で追ってきたのだろう。
「あなたのこと、記事にしてもいい?」
「記事?」
「そういえば言ってなかったっけ、私、月イチで発行してる会報の編集をしてるんだ。運び屋があちこちで聞いた話や体験したことを記事に纏めるの、けっこう評判良いんだよ」
「そういえば君は広報担当だってジョンソンが言ってたな、そういうことか。会報の名前は?」
「モハビ・エクスプレス」
「そのまんまじゃん」
「そのまんまだけど!これが一番良い名前だと思ったんだよう、覚えやすいし。で、どう?」
「うーん…」
頭を撃たれた女が奇跡の生還、という見出しを思い浮かべ、ブレンダは低い声で唸る。
会社のために自分を切り売りする気はなかった(そもそもブレンダ自身はモハビ・エクスプレスの職員ではない)し、自分の存在や行動目的が不特定多数に知られては、今後の活動に支障が出るかもしれない。
まして自分の過去が大衆を慰めるための三文記事に仕立て上げられる可能性を考えると、とてもじゃないが首を縦には振れなかった。
「他人のことを書くまえに自分のことでも書けば?ヴォールトでの体験とか。それとももう書いた?」
「…書いてない、けど」
「じゃあ、君の提案はフェアじゃないね」
そこまで言って、ブレンダはもう一つ藪を突いてみようと思った。
「ところで君は、兄のことをどう思ってたの。お姉さんは随分懐いてたみたいだけど」
おそらく彼女たちの兄はサラだけを助け、エックス・テックのことは置き去りにしたのだろう。ヴォールトを脱出した時期が異なるというのは、つまり、そういうことだとブレンダは考えた。
もちろん妹一人を置き去りにした事情はあったのだろうが、そうだとしても、エックス・テックが兄を恨み、サラが兄を慕っていることに不満を覚えることに納得はできる。
しかしエックス・テックの口から語られたのは、もっと飛躍した事実だった。
「…私たちに、兄なんていない」
「え?」
「いままでこの話は誰にもしたことがなかったし、絶対におねーちゃんの耳には入れたくない。けど、あなたは信頼できそうだし…ううん、そうじゃない、でも一人くらい知ってたって、一度くらい他人に話したって、いいと思わない?」
「なにが言いたいの?」
「お姫様にはロバの耳が生えてるってこと。もし興味があるなら教えるけど、ねえ…誰にも言わないでね。特におねーちゃんには」
いったい、彼女たちの過去になにがあったというのか。
すこしためらったあと、ブレンダは返事をした。
「…わかった」
その後エックス・テックの口から語られた事実は、驚くべきものだった。
「ヴォールト3の隔壁が解放されて、いままでずっとシェルターで暮らしていた私たちが最初に接触した外界の人間がフィーンドたちだった。最初で最後のコンタクト、最悪の不運。あっという間に制圧されて、大勢が殺されて、残りは奴隷になった。で、おねーちゃんは…ものすごく酷い目に遭わされた。わかる?悪党がすべすべ肌のプリティ・ガールに対してやりたがるようなことを全部試されたってわけ」
「あなたは?」
「襲撃を受けたときすぐ通気口に逃げて、脱出する直前までずっとそこで息を潜めてた。だから酷い目には遭わなかった、そのことを自慢する気にはなれないけど。ときどき食料庫に忍び込んだり、脱出のための道具を揃えながら、おねーちゃんのことを観察してた。そのうちフィーンドの一人が特におねーちゃんを気に入っちゃって、そいつはおねーちゃんを連れて、仲間を裏切って…何人か撃って、ヴォールトを脱出した」
そこでエックス・テックは一旦話を区切った。
ブレンダはといえば、どう言葉を返していいのかわからなかった。
サラとエックス・テックの姉妹の過去、その境遇は、レイダーの暴力によって破壊されたという点でブレンダとよく似ている。しかし細部は…歪(いびつ)、という表現がしっくりくる、とブレンダは思った。
エックス・テックは、レイダーに嬲られる姉の姿を、どんな心境で見守っていたのだろうか。
やがて彼女の話が再開する。
「そのあと私もヴォールトを出て、何度か死にそうになりながら、どうにかここまで辿り着いて、そしてジョンソンに拾ってもらったの。何年か経って、おねーちゃんに再会したときは…頭が変になったんじゃないかと思った。おねーちゃんは昔のことを何も覚えてなかったの。あたしのことも。あたしがおねーちゃんを見つけたときも、まるで知らない子を見るような目で…それに、兄。誰、それ?でもおねーちゃんは、小さいときからずっと兄と一緒に暮らしてたんだって、本気でそう言ってた」
「でも君の名前は覚えてたんじゃないの?ホラ、君のことをキティって」
「それは、私がそう教えたからそう言ってるだけ。おねーちゃんが私に関して知ってることはみんな、私から聞いたこと、それを知識として覚えているだけ。記憶が戻ったわけじゃない。可哀想なおねーちゃん」
おねーちゃん、私のことをキティって呼んでからかってたでしょ?ねえ、なにも覚えてないの。思い出してよ…
おそらくはそんなやり取りがあったに違いない、その光景を思い浮かべるのはじつに容易く、ブレンダは胸が詰まるような思いをする。
「それじゃあ、兄っていうのは…」
「みなまで言わないでね。そいつが、おねーちゃんに親切にしてたっていうのは本当みたい。だからなんだって話だけど。あのクソ野郎…いままで自分がやってきたことを全部ヴォールトに捨てて、人生やり直しってわけね。私と会う前に死んでくれてせいせいしてるけど。でも、おねーちゃんにそんなこと、言えるわけないでしょう?だから、おねーちゃんは大好きな兄さんと一緒にずっと旅をしてた、それがおねーちゃんの記憶なら、それはそれでいいんだ」
そして、エックス・テックは笑った。ものすごく悲しそうな目で。
「ちくしょう、出発するまえに変な話を聞いちゃったな…」
思わぬ秘密の共有者となってしまったブレンダは、たいした思慮もなしに他人のプライベートに首を突っ込むもんじゃないと改めて思っていた。といっても、話を聞いた後でそんな考えを持つのは失礼なのかもしれないが、今回に限ってはこちらが無理に迫ったわけでもなし、胸の内で後悔するくらいは許されるだろう。
口外さえしなければいい、そのことを自分がどう思おうと、他人には関係ない。
それよりもまずは我が身だ。キャリア・シックス…クレイブを追い、ノバックへと向かう。距離はかなり遠い、おそらくは多難な途(みち)となろう。
高精度ライフルの銃杷を握りなおし、ブレンダは夕日を背に足を踏み出した。
ネバダハイウェイ・パトロールステーションの周辺をうろつく武装集団を見かけたのは、すっかり空が藍色に染まり、コンクリートの放射熱で温まったぬるい風が肌を撫ではじめたときだった。
幸いにしてネバダの秋は過ごしやすい気候で、昼夜の寒暖差もそれほど激しいものではない。
たとえ真夏だったとしても、よく言われる砂漠特有の「昼は50度、夜は-50度」などといった極端な気温差には普通ならない。ああいうデータはいわば最高記録と最低記録を掛け合わせたもので、いささかの誇張と恣意的な解釈が含まれている。乗り物のカタログデータのようなものだ。
もちろんネバダの気候をナメてかかると、痛い目を見るのは確かだが。
「さて…あいつらは何者だ?」
藪に隠れて息を潜め、ブレンダは謎の集団を観察する。
服装はバラバラで、いずれもラフなスタイルであることからNCRの兵士ではない。まだ遭遇したことはないが、噂に聞くシーザー・リージョンとも違うようだ。
旅人か、商人か、あるいは…レイダーか。
バックパックのサイドポケットにしまってあった地図を取り出し、ブレンダは現在地を確認した。
このままルート15沿いを南下するのがもっとも安全だが(迂闊に道を外れると現在地を見失いかねない)、そうするとあの武装集団と接触することになる。どこまで範囲を広げているのかはわからないが、パトロールが出ているので、よほど遠回りをしない限りは捕捉される可能性がある。
また遠回りをするなら東か西へ逸れることになるが、東のイヴァンパ・ドライレイク(名前からして干上がった湖と思われる)には巨大化したアリやサソリなどのクリッターが跋扈し、西のモスキート・マウンテン沿いは多数のフェラル・グールが出没している。いずれも安全ではない。
「しゃーない、ストレートにいくか」
地図を畳んでポケットにしまい、ブレンダはふたたび武装集団に目をやる。
PSG-1で片付けるのは簡単だ。だが相手の正体もわからないのに一方的に撃ち殺すのはキチガイ沙汰だし、なにより弾薬の手持ちが少ない。プリムでかなり使ってしまったうえ、補給が受けられなかった。プリムに駐屯していたNCR軍では.308口径弾の運用がなかったのだ。
幸いにしていまは夜、闇に紛れて接近するまたとない機会だ。
減音器つきピストルの装弾を確認し、マチェットを引き抜きながら、ブレンダは静かに建物へ接近した。
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。意外と手間取ったプリム編、じつはサラとエックス・テックの登場は当初の予定にはなかったものです。
この二人はもともと、以前から度々話題に出していたニューベガスの二次創作案「フォア・エイセズ」の登場人物としてデザインされたキャラでした。この話はニューベガス発売当初、コンシューマ版をプレイしていた当時に考えたもので、運び屋のサラはベニーの一団にプラチナチップと、そして兄の形見であるリボルバーを奪われ、それらを取り戻すために彼らを追跡する、というプロットでした。そう、サラはもともと主人公だったのです。
といっても、当時アイデアだけで終わったこの話をいまさら書く気にはなれず、ならばせめてと、没ネタ供養の意味合いを込めて本作に登場させました。
もともと鬱展開をやりたいがために考えた話で、それは今回出てきたサラとエックス・テックの過去エピソードからも片鱗が窺えると思いますが、とにかく登場人物を惨たらしく死なせよう!という露悪趣味ここに極まれりな展開を想定していて、当時はそういうのが大好きだったんですが、今となっては正直…
展開としてはNCRルートでの進行になるんですが、ラストでリガタス・ラニウスを倒しながらも重症を負ったサラが生きる目的を見失って自問自答するなか、すべてをNCRの手柄とするための陰謀によってレンジャーの狙撃を受け死亡、という結末を考えていました。エックス・テックはフィーンドに捕らえられ拷問の末惨死、またNCRレンジャーでサラの協力者として登場するアンバーという女性兵士(前話で運び屋の一人として名前だけ出しました)はキンバル大統領暗殺の際に裏切り者と誤認されて処刑される、という内容でした。
まあ、いま時間を割いて書くべきものでもないな、と。
似たような境遇で、Fallout3のほうも没になった企画があって、そっちは半ミュータント化した少女が迫害を受けながらもエンクレイブとの戦いに身を投じる…という、そっちはそっちでアレでナニな展開の話が。これも何らかの形で再利用したいなあ。
2016/07/25 (Mon)12:56
どうも、グレアムです。Cataclysm: DDAを継続プレイ中です。
現在は夏の60日目(四半期が91日の設定)。ここまで長くプレイしたのは初めてです。そろそろやれることも無くなってきたな…と思ってたんですが、カメラがかなり面白いアイテムだということに気づいたので、現在はカメラマンとして終末世界を徘徊しています。カメラ撮影(風の操作)を強要させられるデザインのゲームは嫌いなんですけどね、カタクリはそうではないので。
タイルはChestHole32Tilesetを使っているんですが、未設定のものや外見が気に入らなかったものをちょこちょこ自分で描き足し&直したりしてます。特に単分子ブレードがお気に入り、デフォルトでは装備するとCBMのケースがそのままキャラの上に表示されるというあんまりな状態だったので。アダマンチウムクローはちゃんと専用グラフィックあるのになあ。
しかし装備品がグラフィックに反映されるというのは、やはりいいですね。ゲーム的にも非常に便利です、NPCの防具や武器が一目でそれとわかるので、自然、そこから相手の脅威度を判断できます。どの装備を上のレイヤーで表示するかは、デフォルトでは+キー(だっけ?)で表示される装備の並び替え画面から変更できます。これってこういう機能だったのか(違
上のが現在のステータス画面、オプションでスキル成長率100倍、マップ設定から能力のスキル値依存MODを適用しています。CBMでもバリバリ強化してこの数値なので、アホみたいにスキルを伸ばしてもステータス自体の伸びはそれほどでもない…のか?デフォルト(スキル未成長)で能力ALL8からスタートなので、初心者にも優しいMODではあります。
もともと半ばデバッグというか検証用のつもりでプレイしてたので、ステータスのチートぶりに関しては言及しない方向で(笑)しかしα血清は本当に優秀ですね。作るのにめっちゃ手間がかかりますが。
α血清の影響で英傑の閾を取得したんですが、たとえば英傑前提の力強さ(MAX)は力強さ(レベル2)からの派生なので、じつは閾の必要ない力強さ(レベル3)よりも能力の上昇は劣るんですよね。当然、一部特化型(この場合はクマ、野獣)の閾を必要とする力強さ(レベル4)よりも大きく劣ります。MAXの説明に「人類の限界を超えた」とありますが、カタクリ世界観からすると「たかだか人間の限界を超えたに過ぎない」としか読めないという(笑)もっともα変異はデメリットが少なくトータルバランスに優れているので、これはゲームバランス的にも妥当な扱いだと思います。
で、ここからが本題。
スキルの項目を見ると、極端にレベルが高いスキルと、レベルが低いスキルに分かれていると思います。これはスキルの成長率(上がりやすい/上がりにくい)だけではなく、成長条件(上がる/上がらない)も大きく関係しています。以下、151日の生存(&いままでのプレイ経験)を通して実感した「より高いレベルへ上げる方法」を列挙していきます。
ただしこれから書くことは経験則でしかない(ソースを解析したわけではない)ので、間違っているもの、また、バージョンアップで仕様が変化するものが含まれると思われます。鵜呑みにせず、参考程度に読んでください。
まずは近接戦闘系、これは攻撃を当てることで成長しますが、成長率は低いです。ゾンビ1000体倒して1レベルも上がらない、なんてことが当たり前になるので(経験値100倍でも!)、根気良く伸ばしていく必要があります。もっとも近接系スキルは成長によって与ダメージが上昇するというゲームバランス的に相当ヤバイ代物(現状で30mm榴弾以上の威力、バイオハザードってレベルじゃねーぞ)なので、それを理解しての調整だと思います。
次に射撃系、これは弾を撃つことで成長します。当てる必要はありません。距離も関係ないようです。もっとも使用武器によってはレベルが上がると「腕を磨くにはもっと精度の高い銃が必要だ」というメッセージが表示される場合があります。この精度ってのは何を指すのかというと、どうも拡散値のみを参照するようです。
射撃系スキルの成長には武器と弾薬の拡散値を合計した数字が参照されるため、弾自体の拡散値が高い拳銃弾を使用するピストル、サブマシンガンは非常に成長させにくいです(すぐに成長しなくなる)。逆にショットガンは標準的な12ゲージ弾に拡散値が設定されておらず、銃の拡散値も低いので、不要なバードショット弾を空気に向かって撃っているだけでもどんどん成長していきます。ライフルも同様に銃と弾薬の拡散値が低いため、難しいことを考えずただ撃っているだけでもあっという間に成長します。
成長におけるポイントは銃の拡散値を0に保つこと、それを前提にパーツを組み込むことです。特に銃器用の修理キットで++の状態にすると拡散値が大幅に下がるので、そのうえで拡散値が下がるパーツを組み込めば拳銃やサブマシンガンでも際限なく成長させることは可能です。
弓はリフレックスリカーブボウにパーツを組み込み、矢(金属)を使えば高レベルまで成長が可能です。すべて自作できるのが強みですが、元々の威力や精度を考えれば、弓一本で生活というのはあまり実際的ではない気がします。
射撃系スキルは弾薬を消費する関係か、非常に成長率が高いです。銃や弾薬を発見したら効果的に運用しましょう。
投擲は物を投げれば成長します。当てる必要はありません。成長率も高いんですが、いちいちガラクタを確保して投げるアクションを行うのが非常に面倒臭いです。気が向いたときに自主訓練しましょう、ちなみに遠くへ投げるほど多く経験値が入ります。オススメはゾンビ相手にガラス片の遠投、そのへんの窓ガラスを叩き割って現地調達だ!というか実際、これが序盤の常套戦術だったりも…
回避はすぐ頭打ちになります、成長の条件はよくわかりません。おそらく高レベルまで上げるにはタレット等の銃弾を受ける(避ける?)必要があると思うんですが、たぶん成長する前に死ぬでしょう。実質ドブネズミ先生とのスキンシップで上がる範囲が上限な気がします。
コンピュータは主にコンソールのハッキングで成長します。研究所のコンソール(タレットと併設されているもの)で研究履歴を閲覧する際、二回目以降はハッキングを要求される(表示される文章の内容も変化する)ので、コンソールがシャットダウンするまでひたすら1とyを連打しましょう。モラルを上げておくのを忘れずに、包帯と鎮痛剤も用意しておきましょう。
機械整備は車両の修理等で成長します。内蔵工具セットは必須。
電子工学はCBMの解除で多くの経験値を入手することが可能みたいなんですが、そのためだけにリスクを犯す価値があるかは、正直…なんとも。
料理、建設、アルカナはおそらくスキル本の読書とアイテム製作で成長できる範囲が上限だと思います。際限なく上げる方法ってあるんだろうか。アルカナは魔道具を使用してもスキルは成長しませんし。
サバイバルは死体の解体、藪漁りで上がります。いちおう藪を漁りまくって9まで上げましたが、いまのところこれ以上に上げる方法がわからないです。
罠は罠解体で成長、研究所にある粘液が最適です(地雷は危険なうえ成長上限がそれほど高くないのでやめましょう)。ただ粘液解体でも12以上には上がらず、それ以上に成長させる方法はまだ見つけてないです。
裁縫は衣服の修理で成長しますが、成長率が低いのと、多くの材料を消費する、なにより経験値稼ぎのための作業を狙ってやるとかったるくて仕方がない、というので、あまり熱心に上げてないです。基本的にはアイテム製作で伸びる範囲が上限と思ってよいのでは。
応急手当は怪我の治療で成長しますが、これも狙ってやるのは難しく、成長率もそれほど高くありません。念のため包帯を多く持ち歩き、ちょっとでも怪我したら治療する…くらいしか考えつきません。割れた窓を往復して自主訓練、という方法もなくはないですが、かったるすぎる…いちおうNPCへの治療でも経験値が入るみたいです。
話術、取引はそれぞれNPCとの会話や物品売買で成長する、と思われます。ぶっちゃけテストケースが少なすぎてマトモに検証してないです、成長率も高くないですし。取引レベルが上がれば売ったものを買い戻す、という行為の繰り返しでガンガン金が貯まるという詐欺みたいな行為も可能ですが…
水泳は水の中を移動すれば成長します。適当に20くらいまで上げて放置中なのでマトモに検証していません。水中では装備品が破損する可能性があり、特に銃火器などは注意が必要です。死なない程度に自主訓練しましょう。
運転は車両の運転で成長します。これは自主訓練というか、マイカーを作って一緒に旅をすれば自然に上がるという程度の認識で良いと思います。
…と、いちおうこれで全部でしょうか。後半部分がかなり投げやりですが。
本来書きたかったことは銃器関係のみで、これは拡散値が成長上限に関わることを知らないとレベル上げが難しいので、前から記事にはしたいと思ってたんですよね。あとはコンピュータの、研究所のコンソールが単一端末で際限なくハッキングできるって点でしょうか。これは最近になって自分も気づきました。
とりあえず一定以上の成長で目に見えて効果がわかるのは近接戦闘系くらいでしょうかねー。それ以外はまあ、10前後あれば成長完了宣言していいのかな、という気がします。上げにくいスキル群はNPCに頼るのも手だと思います。あやつらは取引で金が払えなくなっても強引に高額アイテムを押しつけるとすぐに信頼してくれるようになるので(内部的には借金してるという扱い?)。
スキル上限はレベル100が限界のようです。
2016/07/23 (Sat)08:14
プリムの治安を脅かしていたパウダーギャングたちを殲滅し、ホテルを出たときにはすでに世が開け、空が白みはじめていた。
「死者の収容と負傷者の確保を急げ、ホテル内の再捜索が済んだら他の建物もチェックしろ。ギャングどもが紛れ込んでいるかもしれん、抵抗の意思ありと判断したら射殺して構わん!ムーヴ、ムーヴ!」
ヘイズ少尉の指示のもと、NCR軍兵士たちが慌しく動き回っているのが見える。
ブレンダと、彼女に遅れて正面玄関からホテルに突入したガンスリンガー…サラ・スチュアートと名乗った…の二人はモハビ・エクスプレス支社の建物の前に横たわる死体を発見し、足を止めた。
「キャリア・フォーだ」サラが言う。
「え?」
「ダニエル・ワイアンド、四人目の運び屋。私と同じように、仕事を終えて戻ってきたところだったんでしょうね」
サラは六人の運び屋が雇われた配送計画の参加者の一人で、それぞれキャリア・ワン~シックスと名付けられた運び屋たちは皆が異なるルートを通ってニューベガス・ストリップ地区のゲートまで向かったのだという。
仕事を完了したサラはプリムへ戻ってきたとき、武装した市民とNCR兵士たちがホテルを包囲している異様な光景に驚いたらしい。
両者から事情を聞き、得体の知れない余所者(ブレンダのことだ)に事態をほぼ丸投げしたという彼らの態度にサラは憤慨し、制止を無視して正面扉から突入した…ということだった。
おそらくダニエルはサラよりも前、ブレンダより早くプリムに到着し、今回の事態に巻き込まれたのだと思われた。
「パウダーギャングの襲撃とかち合わせたのか。運が悪かったな」
「腕と運の悪いやつは死ぬ。それがモハビの掟よ」
サラの口調は厳しいものだったが、それでも彼女は死んだ同僚の前で跪くと、目を閉じて十字を切り、冥福を祈った。チャリッ、胸の前にぶら下がった銀のクロスが音を立てる。
おそらくさっきの一言はキャリア・フォーを叱責したのではなく、自分に言い聞かせたのだろう、とブレンダは推察した。いつ自分がこうなってもおかしくはない、という自戒を込めて。
事態の解決を見て市民たちがめいめい散っていくなか、サラはブレンダをカジノへ誘った。
「戦勝会をやりましょう。勇敢な命知らずには一杯奢ってやらないとね」
「一杯(グラス)?一本(ボトル)じゃなくて?」と、とぼけるブレンダ。
そんな彼女をジト目で見つめ、サラが一言。
「…VSS」
「なにそれ。ロシアの消音ライフル?」
「バキューム・ストマック・ストレンジャー(底無し胃袋の放浪者)。あんたのことよ」
「あ、ひっでぇ。図体でかいうえに愛想ねーでやんの」
二人はしばらく睨み合う。
生意気な女だ…相手の顔を見れば、互いにそう思っていることがよくわかる。
やがて緊張に耐えられなくなった二人は吹き出し、笑い声を上げた。肩を叩きながらカジノへ向かう二人の姿は、他人からは旧知の仲のように見えたことだろう。
「あっ、おねーちゃん!帰ってきてたんだ」
どうやらカジノで待ちぼうけを喰らっていたらしいエックス・テックが、ブレンダとともに戻ってきたサラを一目見るなり大きな声を上げた。
サラはバーのカウンターに入り、棚に飾ってあった酒瓶を片っ端からテーブルの上に並べていく。本来それらは売り物のはずだったが、まあ町の危機が救われたことだし、無礼講ということだろう。どのみち、請求書が自分に回ってくることはあるまい。
そう考え、ブレンダはウィスキーのボトルを無造作に掴むと、誰かが使ったまま洗われていないショットグラスに琥珀色の液体を注いで一気に呷った。
「朝っぱらから酒だと?まったく最近の若いモンは…」
すこし遅れて戻ってきたションソン・ナッシュが、すでに一杯やりはじめているブレンダとサラの姿を見て仰け反った。
かぶりを振りつつ、ションソン自身も適当なグラスを磨き、ビールを注いで一気に飲み干す。
「じーちゃんも他人(ヒト)のこと言えないじゃん」
「年寄りはいいの」
「なにその理屈」
ジョンソンの滅茶苦茶な理屈に、エックス・テックは呆れ顔を見せる。
ビールをもう一杯グラスに注ぎながら、ジョンソンは二人の銃使いに目配せをし、口調を改めて言う。
「サラ、おかえり。そっちの娘さんも、よくやってくれた。それで…話をしてくれる約束だったな?」
「そういえばこの娘、誰なの?」と、サラ。当然の疑問だ。
「キャリア・シックスが連れていた女だよ」ジョンソンが答える。
「えっ、あの娘?服装は違うけど、そういえば似てる…驚いたわね。人が違ったみたい」
「え?」
サラの言葉に、ブレンダは動揺する。
人が違ったみたい、とは、どういうことだ?
続きを言おうとしたサラを制したのはジョンソンだった。
「いま話をややこしくしても仕方がない。まずは娘さんの身の上話を聞こうじゃないか」
はぐらかされたような気がしないでもなかったが、順序立てて話を進めるにあたってはむしろ有り難かった。それにブレンダが正直に話をすれば、彼らも同様にすべてを話してくれるだろう。
ブレンダはちびり、ちびりとウィスキーをやりながら、頭を撃たれた状態でグッドスプリングスの墓地で発見されたこと、それまで同行していたキャリア・シックスが謎の一団と揉めており彼らを追跡に向かったこと、キャリア・シックスがかつての自分の相棒かもしれないこと、そして、自分がワシントンで死んでからグッドスプリングスで目覚めるまでの間の記憶が一切ないことを話した。
話を聞いていた三人は何といったものやらわからぬといった表情で静まりかえり、しばらくの間、試験的に通電させられていたスロットマシンの電子音だけが響く。
やがてジョンソンが「うーむ」と唸り、複雑な表情を見せて言った。
「なんというか…荒唐無稽な話だなあ。御伽噺でも聞いているようだ」
「その記憶は確かなの?」と、サラ。さすがに「嘘をついているのか」とは聞かない。
「わからない。デタラメかもしれない。そうならそうで、デタラメな記憶だっていう証拠が欲しい」ブレンダは冷静に返す。「だから、今度はあなたたちが話して」
「フム」
ビールで湿った唇を舐め、ジョンソンはじっとブレンダを見つめる。
なるほど嘘つきの目ではない、過去には自身も運び屋として波乱の人生を送ってきたジョンソンは、長い時間をかけて養ってきた観察眼からそう判断する。
しかし正直さと真実が近い位置にあるとは限らない。気が狂った人間は、真剣におかしなことをやらかす。当人にふざけているつもりはない、ただ当人の認識している真実が、他の多くの者が認識している真実と大きく食い違っているだけだ。
目前の娘は気違いか?そうかもしれない。そうではないかもしれない。まあいい、それはいま自分が判断できることではない。
「そうさな…まず、事の発端である今回の仕事、シックス・キャリアーズについて話す必要があるだろうな」
「シックス・キャリアーズ?」ブレンダが問いかける。
「今回の仕事に充てられた特殊な任務コードだ。単独の依頼主から、六つの配送品を、六人の運び屋が、それぞれ別のルートを通って指定場所まで持ち込むという内容だった。思えば、最初から胡散臭い話だったよ」
配送品はそれぞれ特大のサイコロ、純金製のチェスの駒、プラチナ製のカジノチップといった、ゲームにまつわるものだったという。
報酬の額を考えれば、とてもじゃないが割に合わない内容だ…というのがジョンソンの弁だった。工芸品としても特別に凝った代物ではなく、物品そのものの価値より配送量のほうが高くつく、という按配だった。
「依頼内容の複雑さからして、いずれかの品が、見た目通りのモノではなかった可能性がある」
「中にマイクロチップが仕込まれてるとか?」
「おおかた、そんなところだろう。使い古された手だ。だが、仕事を終えたあとにギャングに殺されたキャリア・フォーを別にすれば、襲撃を受けたのはキャリア・シックスだけだ。すくなくとも他の運び屋からは、配送を終えた時点でトラブルはなかったという報告を受けている」
「運び屋は全員同時に出発したの?」
「マラソンじゃないぞ、よーいドンでかけっこをはじめるわけじゃない。それほど日数が離れたわけじゃないが、依頼を受けるのも、出発するのも個々人でバラバラだった」
「他の運び屋って、どんな連中?」
「さてなあ。なにせ危険な仕事だが、ニーズが多い。出入りが激しいんだよ、志願者が指名手配犯でもなければだいたい雇ってるが、すぐやめるやつも珍しくない。臨時雇いや、兼業なんかのアルバイト的感覚で不定期に依頼を受けるやつもいるね。そいつら全員の素性をいちいち覚えてなぞおらんよ。サラとエックス・テックは別だが…この二人はうちの専属スタッフだからな。事務所に戻れば名簿があるから、他の連中の名前も確認できるはずだ」
「依頼人ってどんなやつだった?」
「人じゃなかった。セキュリトロンってやつだ、わかるか、車輪つきの自律機械だ。ふつうは定点警備に使われるんだが、そいつはなんか、特別なプログラムがしてあったみたいでな。まるで人間みたいに振る舞っていた、なんというか…愛があるっていうのか?ああいうのは」
「愛?」ブレンダが眉間に皺を寄せる。
「AI(人工知能)だよじーちゃん。エーアイ。アイじゃなくて」と、エックス・テック。
「ああ、そのアイなんとかってやつだ(ここでエックス・テックがふたたび抗議しようと思ったが、やめた)。妙なヤツだったな、カウボーイみたいな顔をしていた。恐らくは何者かの遣いだったんだろうが、それを追求するのはこっちの仕事じゃなかったからな」
「カウボーイ…?」
カウボーイ顔のセキュリトロン。
ブレンダは他にセキュリトロンを見たことがないので断定はできないが、もしそれが珍しい特徴だったとすれば、その依頼主はグッドスプリングスで撃たれたブレンダを保護した、あのヴィクターである可能性がある。
自分は何も知らないようなこと言っといて、あいつ──!!
ブレンダはかっと頭に血がのぼりかけたが、おそらくヴィクターにとっても今回のようなトラブルが起きたのは本位ではなかったに違いなく、いまからグッドスプリングスに取って返してヤツを締め上げるより、このままキャリア・シックスを追うべきだろうと考え直した。
もっともあの胡散臭いロボット・カウボーイが嘘つき野郎だという事実は留意せねばならなかったが。
キャリア・シックス…服装はクレイブによく似ていた。本当に彼だろうか。ジョンソンは事務所に名簿があると言っていた。それを見ればはっきりする。
「エディ、無事だったんだ!よかったあ」
無事というか、元の通り壊れたままのアイボットを発見して喜ぶエックス・テック。
「あんなガラクタのどこがいいんだか。私にはわからんよ…まあなんにせよ、事務所が無事でよかった」と、ジョンソン。
運び屋が一人殺られはしたが、事務所内が荒らされた形跡はなかった。
さっそくED-Eをいじくり回すエックス・テック、煙草を吸いながらその様子を見守るサラを尻目に、ブレンダはスツールに腰掛けるジョンソンに尋ねる。
「それで、名簿は」
「ちょっと待っていろ。たしか、キャビネットにしまってあったはずだが…うーむ…おお、あった。これだ」
ジョンソンから分厚い名簿を受け取り、ブレンダはページを素早く捲る。
どうやらモハビ・エクスプレスのプリム支社が設立された当初から記録が残っているらしく、膨大な名前の羅列を読み飛ばし、ブレンダは最新の記録だけを探す。
やがて「シックス・キャリアーズ」の見出しを発見し、慎重に続きを指で綴った。
「キャリア・ワン、フォローズ・チョーク。キャリア・ツー、アンバー・フロスト。キャリア・スリー、ジョニー・ファイブエース。キャリア・フォー、ダニエル・ワイアンド。キャリア・ファイブ、サラ・スチュアート。キャリア・シックス」
リストの最後に記載されていた名前。
「…クレイブ・マクギヴァン……」
やはり、そうなのか…
名簿を閉じ、ブレンダは深いため息をつく。安堵と不安が同時に押し寄せ、感情の整理がつかなかった。
偽者、という可能性はあるまい。ワシントンならいざ知らず、このモハビでは。まして悪行を重ねるでもなく、わざわざ名を騙って運び屋をやる理由などあるはずもない。
ブレンダのただならぬ様子を見て、ジョンソンは慎重に尋ねた。
「…どうやら、探していた相手と同一人物だったようだな」
「彼について知ってることは」
「詳しいことは知らん。あまり自分の素性は話したがらなかったし、私も聞かなかった。志願者にはワケありも多いからな。どこでウチのことを聞いたのか、一ヶ月ほど前にフラリと事務所を訪ねてきたんだ。あんたと一緒に」
「あたしと一緒に…?」
そう、そうだ、ずっと気になっていたが、彼らは私のことを知っているのだ、とブレンダは思った。記憶をなくしている間の自分、自分が知らない自分を。
「そのときのあたしは、どんな様子だったの?」
「どんな、というか…なんと言ったものやら。いつも宙を向いたまま、なにも見えていないような様子で黙っていたよ。一言も口をきかなかったし、ひょっとしたら、喋れなかったのかもしれない。あんたの相棒は『彼女は人形みたいなものだ』と言っていたが…こういう言い方は好まないが、まるで白痴のようだった」
淡々と語るジョンソンに、ブレンダは言葉を返すことができない。
まるで白痴だった?もし、それが本当なら…ここにいる全員が、自ら率先してギャング壊滅に乗り出す私を見て驚いたのも無理はない、とブレンダは思った。人が違ったように見えた、というのも当然の反応だろう。
そして、おそらく、彼らはそれ以上に私のことを知りはしない、ということに思い至り、ブレンダは暗澹たる思いを抱える。これでは何の解決にもならない、何の情報もないに等しい。
追い討ちをかけるように、サラが軽い調子で言い放った。
「だってあんた、シモの世話まで相棒頼りだったのよ。痴呆老人のように前触れなく糞尿垂れられたときはどうしようかと思ったもの…食事も一人じゃできない様子だったし。まあ少なくとも、あんたは機械や人形じゃなく人間だってことは確かみたいね」
「……へ?」
サラの口から語られた衝撃的な内容に、ブレンダは呆然と口を開ける。
ジョンソンとエックス・テックはサラを咎めるような視線を送り…わざわざ気を遣って、そこまでは言わずにおいたのに、という態度を隠そうともせず…それが、サラの言葉が冗談ではないことの裏づけとなり、ブレンダの顔がみるみるうちに紅潮し、間もなく蒼白になった。
「ヴぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
奇妙な呻き声を上げながらブレンダはカウンターに突っ伏し、小刻みに震えたまま動かなくなった。
精神的ショックからブレンダが立ち直るのに少々の時間を要したが、調べるべきことはまだ残っていた。キャリア・シックス…クレイブの行方だ。
パウダーギャングたちがプリムを占拠する直前、余所者の一団と、それを追う男が町を通過したという。その様子をビーグル保安官補が観察していたというので、ブレンダとサラは話を聞くため彼に会いに行くことにした。
カジノの外でドラム缶の焚き火を見つめながらぼんやりしているビーグル保安官補を発見し、ブレンダが声をかける。
「落ち着いた?ちょっと話を聞きたいんだけど」
「これはこれは、殺戮の女神様か。か弱き民になんの御用でいらっしゃる?」
「わけのわからないことを言うな。ギャングが町に来る前、ここを通り過ぎた集団がいたでしょう、そいつらの話を聞きたいの」
「言ってもいいが、そのまえにこっちの条件を呑んでもらいたい」
「条件?」
なにやら企んでいそうなビーグル保安官補の表情に気づき、ブレンダは眉を吊り上げる。
有利な交渉材料が手持ちにあると知って、難題を押しつけようって魂胆か。こういう手合いはワシントンでもよく見かけたものだ。
警戒するブレンダに、ビーグル保安官補はまるで悪びれもしない態度で話をはじめた。
「いま、この町に欠けているものはなんだと思う?」
「うーん…猫?」
「いやそういう話じゃなくて…遠回しな言い方はやめよう。保安官だよ、この町には治安を守る人間がいないんだ。俺は言うに及ばず、ホテルで言ったように、もう危険な仕事をやる気はない。保安官補はやめる。俺はもうただのビーグルだ。面倒は御免だ」
「だから?」
「そう怖い顔をしないでくれよ…つまり君がこの町の保安官になるか、でなければ保安官に適した人間を探してきてくれ。給料は悪くないよ、けっこう。いっそNCRに任せるってのもいいな」
まるで他人事のようにつぶやくビーグル保安官補…いや、「元」保安官補を、ブレンダは厳しい目つきで睨みつけた。
保安官を探してくる、だって?そんな時間はない。自分が保安官になる?論外だ。
ブレンダはビーグルを指でつつき、酒臭い息を撒き散らしながら怒鳴った。
「あたしが嫌いなもの、二つ、なんだかわかる?禁欲主義者と、情けない男の泣き言!」
「そんなこと言われたって!イヤならいいさ、こっちも君に言うことは何もない。帰ってくれ」
それからしばらく二人の言い合いは平行線を辿った。
言い合いというか、まるで子供の口喧嘩のようだった。なにせビーグルはこう見えても頑固で、ブレンダは酔っている。
それでもブレンダが銃に手を伸ばさないのは意外だな、とサラは思った。ウェイストランダー(荒野の無法者)にしては。激しやすい性格に反して、敵と味方の区別には慎重なのだろう。そこには好感が持てた。
もういいだろう、サラはパン、パンと音を立てて両手を叩き、二人を制した。
「あんまり女の子に意地悪をするもんじゃないよ、ビーグル。はぁ…私は仕事が終わったばかりで、当分は町にいるから、その間は保安官をやってあげるよ。それでいいでしょう?」
「サラがかい?いや、君の銃の腕はよく知っているから、それは願ったりな提案だけど」
「そうなら、ブレンダに話をしてあげなさいな。彼女、急いでるみたいだし」
それではと、ビーグルが語るところによれば…
数日前、チェック柄のスーツを着た男が数人の手下を連れて町を通過したらしい。
スーツの男の素性はわからなかったが、その手下はグレートカーンズだった。モハビ北西部、レッドロックキャニオンに住む部族だ。強盗や麻薬売買を糧に生活していたが、ビタースプリングスでNCR軍と大規模な戦闘に発展したあとは凋落の一途を辿っているという。
まるで奇妙な集団で、金持ち、おそらくニューベガスの出身者と思われるキザなスーツの男がなぜ、レイダーとそう違いのない蛮族とツルんでいたのかは見当がつかないらしい。
また彼らは…ひどく急いでいたらしい。慌てていたようだ、とビーグルは言う。
彼らが立ち去ったすぐあとに、もう一人、別の男がプリムを通過した。そちらのほうの正体はよくわからなかった、影に紛れて素早く移動し、あっという間に姿を消してしまったとビーグルは言った。漆黒、あるいは濃い藍色の戦闘服を着ていたという。
聞く限りの特徴はクレイブと一致していた。
「おそらく彼らが向かったのはノバックの町だろう」
「ノバック…」
忘れないようにするためか、ブレンダは何度かその名を反芻する。
事情が事情だけに、サラには彼女のことがすこし心配だった。
「すぐに追うの?」
「まさか。あたし、ギャング退治のせいで寝てないもん。今日はここで休んで、夕方か夜になったら起きて行動をはじめる。そりゃあ、早く行動すれば、それだけ早く追いつけるかもしれないけど。寝ぼけた頭と疲れた身体でマラソンして、砂漠で干からびずにいられると思うほど自信過剰にはなれないな」
「けっこう現実主義なのね。安心した」
ビーグルが立ち去るのと入れ替わりに、ヘイズ少尉がやってきた。
「きみが新しい保安官だって?」
「ずっとじゃないけどね」と、サラ。
「そんなにNCRの傘下に入るのがイヤなのか、プリム市民は。これでは我々がギャング退治に協力した意味がなくなるではないか…」
「どういうこと」ブレンダが尋ねる。
「NCRが人員の犠牲を考慮してまでここでキャンプを張っているのは、プリムを指揮下に置くためだ。この町が我々の傘下に収まれば税収が期待できる。特にプリムは観光で栄える町だ、ホテルもカジノもある。100%機能すればかなりの収益になるだろう。我が軍が潤う。人員が補強できる。装備も良くなる。食事もおいしくなる。そして、それを実現させた私の評価も上がるはずだったのだ。昇級すら有り得たかもしれん。残念至極だ」
「うわー。なんて素直な意見」
軍人らしからぬ私欲丸出しの物言いにブレンダは口をぽかんと開けて呆れたが、そういうことを正直に言ったヘイズ少尉のことは嫌いにはなれなかった。
大義名分を並べ立てられるよりも、個人の欲望のほうが理解しやすい、というのはブレンダが常々思っていることだった。それに賛同できるか、協力するのかは、また別の話だったが。
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。予想外に長引くプリム編、もうちょっとだけ続きそうな勢いです。
エピソード的にも重要な部分なので、そこにリソースを割くのはまあ仕方のないところなんですけども。
運び屋の名簿でチラッとだけ名前が出たジョニー・ファイブエースは、存在そのものにキャラが立っているので、そのうち端役で登場させたいですね。