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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/07/23 (Sat)08:14





 プリムの治安を脅かしていたパウダーギャングたちを殲滅し、ホテルを出たときにはすでに世が開け、空が白みはじめていた。






「死者の収容と負傷者の確保を急げ、ホテル内の再捜索が済んだら他の建物もチェックしろ。ギャングどもが紛れ込んでいるかもしれん、抵抗の意思ありと判断したら射殺して構わん!ムーヴ、ムーヴ!」
 ヘイズ少尉の指示のもと、NCR軍兵士たちが慌しく動き回っているのが見える。
 ブレンダと、彼女に遅れて正面玄関からホテルに突入したガンスリンガー…サラ・スチュアートと名乗った…の二人はモハビ・エクスプレス支社の建物の前に横たわる死体を発見し、足を止めた。
「キャリア・フォーだ」サラが言う。
「え?」
「ダニエル・ワイアンド、四人目の運び屋。私と同じように、仕事を終えて戻ってきたところだったんでしょうね」
 サラは六人の運び屋が雇われた配送計画の参加者の一人で、それぞれキャリア・ワン~シックスと名付けられた運び屋たちは皆が異なるルートを通ってニューベガス・ストリップ地区のゲートまで向かったのだという。
 仕事を完了したサラはプリムへ戻ってきたとき、武装した市民とNCR兵士たちがホテルを包囲している異様な光景に驚いたらしい。
 両者から事情を聞き、得体の知れない余所者(ブレンダのことだ)に事態をほぼ丸投げしたという彼らの態度にサラは憤慨し、制止を無視して正面扉から突入した…ということだった。
 おそらくダニエルはサラよりも前、ブレンダより早くプリムに到着し、今回の事態に巻き込まれたのだと思われた。
「パウダーギャングの襲撃とかち合わせたのか。運が悪かったな」
「腕と運の悪いやつは死ぬ。それがモハビの掟よ」
 サラの口調は厳しいものだったが、それでも彼女は死んだ同僚の前で跪くと、目を閉じて十字を切り、冥福を祈った。チャリッ、胸の前にぶら下がった銀のクロスが音を立てる。
 おそらくさっきの一言はキャリア・フォーを叱責したのではなく、自分に言い聞かせたのだろう、とブレンダは推察した。いつ自分がこうなってもおかしくはない、という自戒を込めて。
 事態の解決を見て市民たちがめいめい散っていくなか、サラはブレンダをカジノへ誘った。
「戦勝会をやりましょう。勇敢な命知らずには一杯奢ってやらないとね」
「一杯(グラス)?一本(ボトル)じゃなくて?」と、とぼけるブレンダ。
 そんな彼女をジト目で見つめ、サラが一言。
「…VSS」
「なにそれ。ロシアの消音ライフル?」
「バキューム・ストマック・ストレンジャー(底無し胃袋の放浪者)。あんたのことよ」
「あ、ひっでぇ。図体でかいうえに愛想ねーでやんの」
 二人はしばらく睨み合う。
 生意気な女だ…相手の顔を見れば、互いにそう思っていることがよくわかる。
 やがて緊張に耐えられなくなった二人は吹き出し、笑い声を上げた。肩を叩きながらカジノへ向かう二人の姿は、他人からは旧知の仲のように見えたことだろう。







「あっ、おねーちゃん!帰ってきてたんだ」
 どうやらカジノで待ちぼうけを喰らっていたらしいエックス・テックが、ブレンダとともに戻ってきたサラを一目見るなり大きな声を上げた。
 サラはバーのカウンターに入り、棚に飾ってあった酒瓶を片っ端からテーブルの上に並べていく。本来それらは売り物のはずだったが、まあ町の危機が救われたことだし、無礼講ということだろう。どのみち、請求書が自分に回ってくることはあるまい。
 そう考え、ブレンダはウィスキーのボトルを無造作に掴むと、誰かが使ったまま洗われていないショットグラスに琥珀色の液体を注いで一気に呷った。






「朝っぱらから酒だと?まったく最近の若いモンは…」
 すこし遅れて戻ってきたションソン・ナッシュが、すでに一杯やりはじめているブレンダとサラの姿を見て仰け反った。
 かぶりを振りつつ、ションソン自身も適当なグラスを磨き、ビールを注いで一気に飲み干す。
「じーちゃんも他人(ヒト)のこと言えないじゃん」
「年寄りはいいの」
「なにその理屈」
 ジョンソンの滅茶苦茶な理屈に、エックス・テックは呆れ顔を見せる。
 ビールをもう一杯グラスに注ぎながら、ジョンソンは二人の銃使いに目配せをし、口調を改めて言う。
「サラ、おかえり。そっちの娘さんも、よくやってくれた。それで…話をしてくれる約束だったな?」
「そういえばこの娘、誰なの?」と、サラ。当然の疑問だ。
「キャリア・シックスが連れていた女だよ」ジョンソンが答える。
「えっ、あの娘?服装は違うけど、そういえば似てる…驚いたわね。人が違ったみたい」
「え?」
 サラの言葉に、ブレンダは動揺する。
 人が違ったみたい、とは、どういうことだ?
 続きを言おうとしたサラを制したのはジョンソンだった。
「いま話をややこしくしても仕方がない。まずは娘さんの身の上話を聞こうじゃないか」
 はぐらかされたような気がしないでもなかったが、順序立てて話を進めるにあたってはむしろ有り難かった。それにブレンダが正直に話をすれば、彼らも同様にすべてを話してくれるだろう。
 ブレンダはちびり、ちびりとウィスキーをやりながら、頭を撃たれた状態でグッドスプリングスの墓地で発見されたこと、それまで同行していたキャリア・シックスが謎の一団と揉めており彼らを追跡に向かったこと、キャリア・シックスがかつての自分の相棒かもしれないこと、そして、自分がワシントンで死んでからグッドスプリングスで目覚めるまでの間の記憶が一切ないことを話した。






 話を聞いていた三人は何といったものやらわからぬといった表情で静まりかえり、しばらくの間、試験的に通電させられていたスロットマシンの電子音だけが響く。
 やがてジョンソンが「うーむ」と唸り、複雑な表情を見せて言った。
「なんというか…荒唐無稽な話だなあ。御伽噺でも聞いているようだ」
「その記憶は確かなの?」と、サラ。さすがに「嘘をついているのか」とは聞かない。
「わからない。デタラメかもしれない。そうならそうで、デタラメな記憶だっていう証拠が欲しい」ブレンダは冷静に返す。「だから、今度はあなたたちが話して」
「フム」
 ビールで湿った唇を舐め、ジョンソンはじっとブレンダを見つめる。
 なるほど嘘つきの目ではない、過去には自身も運び屋として波乱の人生を送ってきたジョンソンは、長い時間をかけて養ってきた観察眼からそう判断する。
 しかし正直さと真実が近い位置にあるとは限らない。気が狂った人間は、真剣におかしなことをやらかす。当人にふざけているつもりはない、ただ当人の認識している真実が、他の多くの者が認識している真実と大きく食い違っているだけだ。
 目前の娘は気違いか?そうかもしれない。そうではないかもしれない。まあいい、それはいま自分が判断できることではない。
「そうさな…まず、事の発端である今回の仕事、シックス・キャリアーズについて話す必要があるだろうな」
「シックス・キャリアーズ?」ブレンダが問いかける。
「今回の仕事に充てられた特殊な任務コードだ。単独の依頼主から、六つの配送品を、六人の運び屋が、それぞれ別のルートを通って指定場所まで持ち込むという内容だった。思えば、最初から胡散臭い話だったよ」
 配送品はそれぞれ特大のサイコロ、純金製のチェスの駒、プラチナ製のカジノチップといった、ゲームにまつわるものだったという。
 報酬の額を考えれば、とてもじゃないが割に合わない内容だ…というのがジョンソンの弁だった。工芸品としても特別に凝った代物ではなく、物品そのものの価値より配送量のほうが高くつく、という按配だった。
「依頼内容の複雑さからして、いずれかの品が、見た目通りのモノではなかった可能性がある」
「中にマイクロチップが仕込まれてるとか?」
「おおかた、そんなところだろう。使い古された手だ。だが、仕事を終えたあとにギャングに殺されたキャリア・フォーを別にすれば、襲撃を受けたのはキャリア・シックスだけだ。すくなくとも他の運び屋からは、配送を終えた時点でトラブルはなかったという報告を受けている」
「運び屋は全員同時に出発したの?」
「マラソンじゃないぞ、よーいドンでかけっこをはじめるわけじゃない。それほど日数が離れたわけじゃないが、依頼を受けるのも、出発するのも個々人でバラバラだった」






「他の運び屋って、どんな連中?」
「さてなあ。なにせ危険な仕事だが、ニーズが多い。出入りが激しいんだよ、志願者が指名手配犯でもなければだいたい雇ってるが、すぐやめるやつも珍しくない。臨時雇いや、兼業なんかのアルバイト的感覚で不定期に依頼を受けるやつもいるね。そいつら全員の素性をいちいち覚えてなぞおらんよ。サラとエックス・テックは別だが…この二人はうちの専属スタッフだからな。事務所に戻れば名簿があるから、他の連中の名前も確認できるはずだ」
「依頼人ってどんなやつだった?」
「人じゃなかった。セキュリトロンってやつだ、わかるか、車輪つきの自律機械だ。ふつうは定点警備に使われるんだが、そいつはなんか、特別なプログラムがしてあったみたいでな。まるで人間みたいに振る舞っていた、なんというか…愛があるっていうのか?ああいうのは」
「愛?」ブレンダが眉間に皺を寄せる。
「AI(人工知能)だよじーちゃん。エーアイ。アイじゃなくて」と、エックス・テック。
「ああ、そのアイなんとかってやつだ(ここでエックス・テックがふたたび抗議しようと思ったが、やめた)。妙なヤツだったな、カウボーイみたいな顔をしていた。恐らくは何者かの遣いだったんだろうが、それを追求するのはこっちの仕事じゃなかったからな」
「カウボーイ…?」
 カウボーイ顔のセキュリトロン。
 ブレンダは他にセキュリトロンを見たことがないので断定はできないが、もしそれが珍しい特徴だったとすれば、その依頼主はグッドスプリングスで撃たれたブレンダを保護した、あのヴィクターである可能性がある。
 自分は何も知らないようなこと言っといて、あいつ──!!
 ブレンダはかっと頭に血がのぼりかけたが、おそらくヴィクターにとっても今回のようなトラブルが起きたのは本位ではなかったに違いなく、いまからグッドスプリングスに取って返してヤツを締め上げるより、このままキャリア・シックスを追うべきだろうと考え直した。
 もっともあの胡散臭いロボット・カウボーイが嘘つき野郎だという事実は留意せねばならなかったが。
 キャリア・シックス…服装はクレイブによく似ていた。本当に彼だろうか。ジョンソンは事務所に名簿があると言っていた。それを見ればはっきりする。







「エディ、無事だったんだ!よかったあ」
 無事というか、元の通り壊れたままのアイボットを発見して喜ぶエックス・テック。






「あんなガラクタのどこがいいんだか。私にはわからんよ…まあなんにせよ、事務所が無事でよかった」と、ジョンソン。
 運び屋が一人殺られはしたが、事務所内が荒らされた形跡はなかった。
 さっそくED-Eをいじくり回すエックス・テック、煙草を吸いながらその様子を見守るサラを尻目に、ブレンダはスツールに腰掛けるジョンソンに尋ねる。
「それで、名簿は」
「ちょっと待っていろ。たしか、キャビネットにしまってあったはずだが…うーむ…おお、あった。これだ」
 ジョンソンから分厚い名簿を受け取り、ブレンダはページを素早く捲る。
 どうやらモハビ・エクスプレスのプリム支社が設立された当初から記録が残っているらしく、膨大な名前の羅列を読み飛ばし、ブレンダは最新の記録だけを探す。
 やがて「シックス・キャリアーズ」の見出しを発見し、慎重に続きを指で綴った。
「キャリア・ワン、フォローズ・チョーク。キャリア・ツー、アンバー・フロスト。キャリア・スリー、ジョニー・ファイブエース。キャリア・フォー、ダニエル・ワイアンド。キャリア・ファイブ、サラ・スチュアート。キャリア・シックス」
 リストの最後に記載されていた名前。
「…クレイブ・マクギヴァン……」
 やはり、そうなのか…
 名簿を閉じ、ブレンダは深いため息をつく。安堵と不安が同時に押し寄せ、感情の整理がつかなかった。
 偽者、という可能性はあるまい。ワシントンならいざ知らず、このモハビでは。まして悪行を重ねるでもなく、わざわざ名を騙って運び屋をやる理由などあるはずもない。
 ブレンダのただならぬ様子を見て、ジョンソンは慎重に尋ねた。
「…どうやら、探していた相手と同一人物だったようだな」
「彼について知ってることは」
「詳しいことは知らん。あまり自分の素性は話したがらなかったし、私も聞かなかった。志願者にはワケありも多いからな。どこでウチのことを聞いたのか、一ヶ月ほど前にフラリと事務所を訪ねてきたんだ。あんたと一緒に」
「あたしと一緒に…?」
 そう、そうだ、ずっと気になっていたが、彼らは私のことを知っているのだ、とブレンダは思った。記憶をなくしている間の自分、自分が知らない自分を。
「そのときのあたしは、どんな様子だったの?」
「どんな、というか…なんと言ったものやら。いつも宙を向いたまま、なにも見えていないような様子で黙っていたよ。一言も口をきかなかったし、ひょっとしたら、喋れなかったのかもしれない。あんたの相棒は『彼女は人形みたいなものだ』と言っていたが…こういう言い方は好まないが、まるで白痴のようだった」
 淡々と語るジョンソンに、ブレンダは言葉を返すことができない。
 まるで白痴だった?もし、それが本当なら…ここにいる全員が、自ら率先してギャング壊滅に乗り出す私を見て驚いたのも無理はない、とブレンダは思った。人が違ったように見えた、というのも当然の反応だろう。
 そして、おそらく、彼らはそれ以上に私のことを知りはしない、ということに思い至り、ブレンダは暗澹たる思いを抱える。これでは何の解決にもならない、何の情報もないに等しい。
 追い討ちをかけるように、サラが軽い調子で言い放った。
「だってあんた、シモの世話まで相棒頼りだったのよ。痴呆老人のように前触れなく糞尿垂れられたときはどうしようかと思ったもの…食事も一人じゃできない様子だったし。まあ少なくとも、あんたは機械や人形じゃなく人間だってことは確かみたいね」
「……へ?」
 サラの口から語られた衝撃的な内容に、ブレンダは呆然と口を開ける。
 ジョンソンとエックス・テックはサラを咎めるような視線を送り…わざわざ気を遣って、そこまでは言わずにおいたのに、という態度を隠そうともせず…それが、サラの言葉が冗談ではないことの裏づけとなり、ブレンダの顔がみるみるうちに紅潮し、間もなく蒼白になった。






「ヴぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
 奇妙な呻き声を上げながらブレンダはカウンターに突っ伏し、小刻みに震えたまま動かなくなった。







 精神的ショックからブレンダが立ち直るのに少々の時間を要したが、調べるべきことはまだ残っていた。キャリア・シックス…クレイブの行方だ。
 パウダーギャングたちがプリムを占拠する直前、余所者の一団と、それを追う男が町を通過したという。その様子をビーグル保安官補が観察していたというので、ブレンダとサラは話を聞くため彼に会いに行くことにした。
 カジノの外でドラム缶の焚き火を見つめながらぼんやりしているビーグル保安官補を発見し、ブレンダが声をかける。
「落ち着いた?ちょっと話を聞きたいんだけど」
「これはこれは、殺戮の女神様か。か弱き民になんの御用でいらっしゃる?」
「わけのわからないことを言うな。ギャングが町に来る前、ここを通り過ぎた集団がいたでしょう、そいつらの話を聞きたいの」
「言ってもいいが、そのまえにこっちの条件を呑んでもらいたい」
「条件?」
 なにやら企んでいそうなビーグル保安官補の表情に気づき、ブレンダは眉を吊り上げる。
 有利な交渉材料が手持ちにあると知って、難題を押しつけようって魂胆か。こういう手合いはワシントンでもよく見かけたものだ。
 警戒するブレンダに、ビーグル保安官補はまるで悪びれもしない態度で話をはじめた。
「いま、この町に欠けているものはなんだと思う?」
「うーん…猫?」
「いやそういう話じゃなくて…遠回しな言い方はやめよう。保安官だよ、この町には治安を守る人間がいないんだ。俺は言うに及ばず、ホテルで言ったように、もう危険な仕事をやる気はない。保安官補はやめる。俺はもうただのビーグルだ。面倒は御免だ」
「だから?」
「そう怖い顔をしないでくれよ…つまり君がこの町の保安官になるか、でなければ保安官に適した人間を探してきてくれ。給料は悪くないよ、けっこう。いっそNCRに任せるってのもいいな」
 まるで他人事のようにつぶやくビーグル保安官補…いや、「元」保安官補を、ブレンダは厳しい目つきで睨みつけた。
 保安官を探してくる、だって?そんな時間はない。自分が保安官になる?論外だ。






 ブレンダはビーグルを指でつつき、酒臭い息を撒き散らしながら怒鳴った。
「あたしが嫌いなもの、二つ、なんだかわかる?禁欲主義者と、情けない男の泣き言!」
「そんなこと言われたって!イヤならいいさ、こっちも君に言うことは何もない。帰ってくれ」
 それからしばらく二人の言い合いは平行線を辿った。
 言い合いというか、まるで子供の口喧嘩のようだった。なにせビーグルはこう見えても頑固で、ブレンダは酔っている。
 それでもブレンダが銃に手を伸ばさないのは意外だな、とサラは思った。ウェイストランダー(荒野の無法者)にしては。激しやすい性格に反して、敵と味方の区別には慎重なのだろう。そこには好感が持てた。
 もういいだろう、サラはパン、パンと音を立てて両手を叩き、二人を制した。
「あんまり女の子に意地悪をするもんじゃないよ、ビーグル。はぁ…私は仕事が終わったばかりで、当分は町にいるから、その間は保安官をやってあげるよ。それでいいでしょう?」
「サラがかい?いや、君の銃の腕はよく知っているから、それは願ったりな提案だけど」
「そうなら、ブレンダに話をしてあげなさいな。彼女、急いでるみたいだし」
 それではと、ビーグルが語るところによれば…
 数日前、チェック柄のスーツを着た男が数人の手下を連れて町を通過したらしい。
 スーツの男の素性はわからなかったが、その手下はグレートカーンズだった。モハビ北西部、レッドロックキャニオンに住む部族だ。強盗や麻薬売買を糧に生活していたが、ビタースプリングスでNCR軍と大規模な戦闘に発展したあとは凋落の一途を辿っているという。
 まるで奇妙な集団で、金持ち、おそらくニューベガスの出身者と思われるキザなスーツの男がなぜ、レイダーとそう違いのない蛮族とツルんでいたのかは見当がつかないらしい。
 また彼らは…ひどく急いでいたらしい。慌てていたようだ、とビーグルは言う。
 彼らが立ち去ったすぐあとに、もう一人、別の男がプリムを通過した。そちらのほうの正体はよくわからなかった、影に紛れて素早く移動し、あっという間に姿を消してしまったとビーグルは言った。漆黒、あるいは濃い藍色の戦闘服を着ていたという。
 聞く限りの特徴はクレイブと一致していた。
「おそらく彼らが向かったのはノバックの町だろう」
「ノバック…」
 忘れないようにするためか、ブレンダは何度かその名を反芻する。
 事情が事情だけに、サラには彼女のことがすこし心配だった。
「すぐに追うの?」
「まさか。あたし、ギャング退治のせいで寝てないもん。今日はここで休んで、夕方か夜になったら起きて行動をはじめる。そりゃあ、早く行動すれば、それだけ早く追いつけるかもしれないけど。寝ぼけた頭と疲れた身体でマラソンして、砂漠で干からびずにいられると思うほど自信過剰にはなれないな」
「けっこう現実主義なのね。安心した」






 ビーグルが立ち去るのと入れ替わりに、ヘイズ少尉がやってきた。
「きみが新しい保安官だって?」
「ずっとじゃないけどね」と、サラ。
「そんなにNCRの傘下に入るのがイヤなのか、プリム市民は。これでは我々がギャング退治に協力した意味がなくなるではないか…」
「どういうこと」ブレンダが尋ねる。
「NCRが人員の犠牲を考慮してまでここでキャンプを張っているのは、プリムを指揮下に置くためだ。この町が我々の傘下に収まれば税収が期待できる。特にプリムは観光で栄える町だ、ホテルもカジノもある。100%機能すればかなりの収益になるだろう。我が軍が潤う。人員が補強できる。装備も良くなる。食事もおいしくなる。そして、それを実現させた私の評価も上がるはずだったのだ。昇級すら有り得たかもしれん。残念至極だ」
「うわー。なんて素直な意見」
 軍人らしからぬ私欲丸出しの物言いにブレンダは口をぽかんと開けて呆れたが、そういうことを正直に言ったヘイズ少尉のことは嫌いにはなれなかった。
 大義名分を並べ立てられるよりも、個人の欲望のほうが理解しやすい、というのはブレンダが常々思っていることだった。それに賛同できるか、協力するのかは、また別の話だったが。





< Wait For The Next Deal... >








 どうも、グレアムです。予想外に長引くプリム編、もうちょっとだけ続きそうな勢いです。
 エピソード的にも重要な部分なので、そこにリソースを割くのはまあ仕方のないところなんですけども。
 運び屋の名簿でチラッとだけ名前が出たジョニー・ファイブエースは、存在そのものにキャラが立っているので、そのうち端役で登場させたいですね。














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