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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)02:33
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2020/04/30 (Thu)19:25


 
 
 
 
 

 

ATOM RPG Replay

【 Twenty Years In One Gasp 】

Part.3

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
「さてさて、お待ちかねの射的タイムだ!射撃場が嫌いなやつなんかいない、だろ?」
「私、べつに銃器マニアではないんですけどね…」
 診療所を出た二人は、基地のじつに四分の一を占める広大な射撃レーンへと足を向けた。拳銃、突撃銃、狙撃銃とカテゴリ別に設置距離の異なる人型の標的プレートが並び、金属製のターゲットの表面には無数の弾痕が刻まれている。
 ナターシャはテーブルの上に置いてある拳銃を手に取り、装弾を確かめる。遊底の引きがいやに軽く、妙な弾薬が装填されていることに気づいたナターシャは、ボール紙製の弾薬箱に"訓練用ゴム弾"の表記を見た。
「ゴム弾?」
「装薬量の少ない訓練用弾丸だ」アルフが答えた。
「スライドが軽いのもそれに関係が?」ナターシャが訊き返す。
「スプリングを弱いものに交換してある。でないと作動不良を起こすからな、あくまでも訓練用で暴徒鎮圧用じゃない。ゴム弾でも、初速が高いと危険な威力になる」
「人道的ですね。命中精度のほうは?」
「練習用には充分だ…としか言えないな。どちらかといえば銃器の操作に慣れるためのもので、シリアスに腕を競うためのもんじゃない。マカロフを扱ったことは?」
「ありますけど…これ、マカロフですか?」
「そうだが?」
「なんか、私の知っているマカロフと形が違うような…」
 
 
(本作に登場するマカロフのアイコン、及び3Dモデルはなぜかドイツ製のHK4がベースになっている。HK4はH&K社が最初に製造した拳銃であり、設計は同社の協同設立者であるアレックス・ザイデルの手による。モーゼルHScと機構が似ているが、これは設計者が同一人物であるため。ドイツ警察にP11の名称で納入され、パーツ交換によって四種類の口径を使い分けることができるが、勿論9x18mmマカロフ弾を扱うパーツは存在しない)
 
 ゴム弾を装填し、ナターシャは三つの人型ターゲットに向けて撃つ。命中と同時に乾いた金属音が響き、マンターゲットがパタンと後ろに倒れた。おそらく、人体に当たっても無傷では済まないだろう。
 一発も外すことなく全弾をターゲットに命中させ、今度は隣のレーンに置いてある突撃銃を手に取った。
 ロシア製のAK-47だ。かつてナターシャが扱い慣れていたAK-74に比べるといささか重く、しかも形式の古い初期型だった。こういう骨董品はすべて外国に流れたものと思っていたが。
 こちらも一発たりと撃ち損じることなく全てのターゲットを倒し、次のレーンで手にしたのはSVD狙撃銃だった。搭載されているPSO-1スコープを覗き、西側のライフル・スコープとはまるでレイアウトの異なるレティクルを確認する。
 実のところ、これまで扱った三種類の銃器のうちでもっとも馴染みがあるのはこのSVDだった。そのことが慢心に繋がったのかはわからないが、中距離にセッティングされたターゲットを撃ったとき、はじめてナターシャは弾を外してしまった。
「あまり納得がいってないようだな」すべての標的を撃ち倒し、眉間に皺を寄せるナターシャにアルフが声をかける。
「ええ。だいぶ鈍っています、なにぶん、十年以上は銃器に触れてさえいなかったので…あるいは、加齢のせいですかね?任務中に少しは勘を取り戻せると良いのですが」ため息混じりにナターシャは言った。
 最後のレーンで行った投擲物の訓練結果はさらに悲惨なものだった。ゴム製の粒弾をばら撒くF1手榴弾のレプリカを使ったのだが、思い通りの場所に投げ込めなかったどころか、一度など足元のすぐ近くに落としてしまった。
 
(本プレイ記におけるナターシャは長い廃墟生活で能力が大幅に落ちており、レベルアップとともに本来の能力=戦闘勘を取り戻していく、という設定)
 
 がっくりと肩を落としたナターシャは、洒落か本気か手榴弾のかわりに投げるよう用意された煉瓦ブロックに頭をぶつけながら言った。
「すいません、煙草あります…?」
「ほら」
 
【 Ciggy: Recipe 】
 
(手巻き煙草はトイレットペーパーのほか、古紙を使っても製作可能。軽量ながら売値がそれなりに高いため換金用アイテムとして重宝するほか、回復アイテムと同じ要領でNPCに大量投与し暗殺するというドラムーチェばりのテクニックが存在する)
 
「一服つけたら戦闘訓練に行くぞ」
「え?ああ、はい」
 
 
 
 
 
 
 基地の中心、フェンスに囲まれ土嚢やらドラム缶が無造作に積んである謎のスペースで休憩のような何かをしていた人相の悪い二人組を相手にタッグマッチを挑むナターシャとアルフ。
 おもむろに訓練用ピストルを抜く二人組、それに対し手製ナックルを嵌めてナターシャはインファイトを挑む。ゴム弾を喰らいつつ相手をボコボコに殴るナターシャの背後で、アルフがいそいそと後方へ下がっていった。実質の二対一である。
 二人組のうちの片方を殴り倒したあたりでお開きとなり、ゴム弾を受けた痕をさすりながらナターシャは戦闘に参加する意志を見せなかったアルフを睨みつけた。
「私が迂闊でした。弾薬を分け合ったこともない男に背中を任せるなど」
「弾薬を…なんだって?」
「なんでもありません」
 たったいまの言葉が、かつて部隊内で流行った詩の一節からの引用であることをわざわざ説明したものだろうか、とナターシャは唸る。一方でアルフも戦闘開始から早々に背を向けて逃げ出したのは気紛れなAIのせいであり自分のイメージを損なった点について開発者に抗議を(以下略 実際プレイ中にこんな有り様になっちまったんだから仕方ないじゃないか
 
 
 
 
 
 
「悪かったよ。俺も本意じゃなかった、いや本当に。メシでも食って機嫌を直してくれ、誰かがビーフシチューの缶を置きっぱなしにしていったようだ。そこのキャンプファイアで温めよう、コーヒーと紅茶もある」
 いささかに疲れた様子でアルフがフィールドキッチン(野外炊事車)の近くで炊かれている焚き火へとナターシャを誘導した。誰が用意したのかはわからないが、薪の無駄だな、とナターシャは思った。
 おそらくは椅子がわりに置かれているのであろう、切り株の上に見慣れた缶が放置されている。ツションカと呼ばれる、軍用の携行食だ。つぶらな瞳の牛のシンボルがナターシャを見返していた。やたらと古びたラベルを見るに、戦前のテクノロジーと材料と思い出が詰まっているものと思われた。さらによく観察すると、すこし缶が膨らんでいるようにも見える。
「食べれるんですか、これ」ナターシャがアルフに尋ねた。
「少しばかりの放射能入りだが、なに、空港でX線検査を受けたとでも思えばいい。おかげで雑菌の繁殖も抑えられているし、クリーンなもんだ」
「えぇ……」
 近くのテーブルに乗っていた紅茶とコーヒーも共に戦前のものと思われたが、なぜだかこちらは缶詰ほど嫌悪感は抱かなかった。本物の茶葉、本物のコーヒー豆だ。代用品やインスタントではない。
 
(紅茶とコーヒーはキャンプでのみ調理が可能で、紅茶は四時間のEndurance+1、コーヒーは三時間のStrength+1バフを受けることができる。またキャンプでの調理は少量ではあるが経験値も獲得できるため、後生大事に取っておかず積極的に使用していくべきだろう)
 
 
 
 
 
 
 最終仕上げはリング上でのアルフとのタイマン勝負だった。逞しい肉体を持つアルフは、おそらく年齢的にも兵士としてもっとも脂の乗っている時期であろう。経験と知識、そして鍛えられた身体のバランスがもっとも整っている状態だ。
 過去に何度も組織の特殊作戦に従事しているに違いない、いままでナターシャがATOMで出会ったなかでも最も戦闘能力の高い人物であることに疑いの余地はなかった。
 たんなる練習がわりの組み手だったはずだが、気づくと二人とも加減や容赦など考えないようになっていた。それはそうだ、訓練学校での格闘技教練でも相手の怪我や負傷をいちいち心配して打撃を躊躇することなどなかった。かつてナターシャが習い、実践し、そしてアルフも同等の訓練を受けているであろう技術は、スポーツ格闘などではなく、人殺しの手段なのだ。
 はじめはアルフも手加減していたが…戦っているうちに、ナターシャが自己申告する通りの"本物の兵隊"であることを肌で理解したアルフは、女だから、新人だからという思い込みを捨てて挑んでいた。
 けっきょく、どっちが勝ったのか、あるいは負けたのかはわからなかったが…荒い息を吐きながら膝をつくナターシャに、アルフが手を差し伸べた。
「鈍っているにしては、やるじゃないか」
「"テスト"は合格ですか?」
「これから君の前に立ち塞がるやつの不運に同情するよ」
 さっきまでは互いに本気で打ち合っていたが、戦いが終わったいま、不思議と遺恨やわだかまりは残っていなかった。リングに上がる前に抱いていた不信さえも。
「ああ、痛ぇ…そろそろブリーフィングの時間だな。メインバンカーへ行くといい、どんな任務を与えられるかはわからんが…まあ、君なら上手くやれるだろう」ナターシャに殴られた顎をさすりながらアルフが言う。
「その期待に応えないといけませんね」若干足元をふらつかせながらもナターシャが笑顔で返す。
 
 
 
 
 
 
 さて、そろそろ自分の運命について尋ねる時間だ。
 ナターシャはアルフに別れを告げると、メインバンカーの入り口へと向かった。魔物が大口を開けて待ち構えているように見えたのは、たんなる弱気の表出だろうか、と思いながら。
 
(レベル7のAlfは高い戦闘能力を持ち、勝つためには装備選択が重要となる。おそらくはQuality Knuckledusterの使用がもっとも勝率が高くなるだろう。事前にAlfに弾切れの銃器を渡しておくという小技もあるが、どのみち経験値の入手はできないので、勝っても負けてもあまり意味はない…あくまで戦闘メカニックのテスト機会であると割り切ろう)
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 

 
 
 
 どうも、グレアムです。なんか途中で文章が投げやり気味になってますが、シリアスで通すにはチュートリアル的ご都合主義が多過ぎてツッコミどころ満載だったからしょーがねぇじゃんかよう!なるべく作中でメタ発言はしたくないんだけどなあ。いや本当に。
 本作のチュートリアルの舞台となるATOM Base、またの名をTraining Campは色々と手の込んだ作りとなっていて、一連の記事で触れたように様々な訓練を受けられるほか、目立たない場所にアイテムが隠されていたり、レシピ製作等で経験値を入手できるので、早く冒険に出たいという気持ちを抑えて色々試してみるのがいいんじゃないかと思います。
 次回からようやく本編がはじまります。
 
 
 
 
 


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2020/04/27 (Mon)00:46


 
 
 
 
 

 

ATOM RPG Replay

【 Twenty Years In One Gasp 】

Part.2

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 ゴミ捨て場の近くを通りがかったさい、容器からゴミが溢れ蝿がたかっている光景にナターシャが軽い嫌悪の表情を見せるのを、アルフが目ざとく観察していた。
「なんだ、ゴミに興味があるのか?」
「あ、いえ。UAZを見たかっただけなのですが…」近くに停車してあるジープを指さし、ナターシャが弁解めいて言う。
「まあ聞け」かまわずアルフが話を続けた。「おそらくウェイストランドでの任務は困難なものになるだろう。ときには任務遂行に必要な道具を自分で作る必要に迫られることもある。そんなとき、ゴミ溜めの中から役立つ材料を探すのは悪いことじゃない」
「言いたいことはわかりますが…」あまり気乗りしない様子でナターシャが言う。
「それに、いざってときの金策にもなるしな。ウェイストランドじゃあ、ゴミ漁りを専門にするスカベンジャーと呼ばれる連中もいる。役に立つゴミと、そうでないゴミを見分ける能力を培っておくことだ」
 
 
 
 
 
 
 続いてゴミ捨て場の反対側、北西の倉庫へと足を運ぶ。
 鍵がかかっていた扉をピッキングでこじ開けて中に入ると、埃っぽい屋内には物資が置かれた棚やロッカー、弾薬箱といったものが大量に積まれていた。
「この部屋のものには大抵鍵がかかってる。勝手に物資を持ち出す悪い連中がいるもんでね、まあ、君のピッキングの練習台には丁度良いだろう。それと、作業台を使ってさっきゴミ捨て場で拾ったガラクタから道具を作ってみてもいいんじゃないか?ここにある材料を使ってもいいが、あまり見境なく持っていくなよ。貴重品であることに変わりはないからな」ケチだと思われるのも心外だが、といった表情でアルフが言う。
 それよりも、ナターシャの関心は作業台の上にある、分解されたライフルに向けられていた。
「AK-47?なんでこんなところに」
「誰かが整備中にほったらかしたのかな」アルフも首をかしげた。「バラしたはいいけど組み立てられなくなったとか。ナターシャ、これを組めるか?」
「通常分解なら目隠しをしていても十秒以内で。完全分解ならもう少しかかりますが」振り向きもせずにナターシャはそらんじた。
「結構。意地を張っても損するのはそっちだ、信用するよ。それじゃあ、世紀末流ストリート・ファイトのお供の作り方を紹介するぞ」そう言うと、アルフは近くの棚にあった金属屑を作業台の上に乗せて煉瓦ブロックで叩きはじめた。
 
【 Svinchatka: Recipe 】
 
「煉瓦ではなく砥石でもいいんだが」握りのついた金属塊をかざし、アルフは言った。「いわゆるナックルの一種だな。こいつ自体で叩くわけじゃなく、握ることでパンチに重みを与える。要は重くて握りやすけりゃ何でもいい、コインを束ねて紙で巻いたりとかな」
「あー…スビンチャッカ(豚)?」
「なんだ、知ってるのか。軍で教わったのか?」
「いえ。お気になさらず」
 ストリートでの殴り合いで見かけたことがあり、なんであれば自分もそれに類するものを使ったことがある、などとナターシャは言う気になれなかった。まして、それが軍に入隊する前のことだなどとは。
 特に興味を惹かれなかったのか、気を遣っているのかはわからなかったが、アルフは別の金属屑を作業台に置くと、それをたったいま作ったばかりの粗製のナックルに巻きつけるようにして組み上げ、ふたたび煉瓦で叩きはじめた。
 
【 Quality Knuckleduster: Recipe 】
 
 完成した屑鉄製のナックルをナターシャに見せびらかしながら、アルフが得意げに言った。
「さっきよりは多少まともな見た目になったな。殴り合いにはこいつが一番だ」
「こういうのって、普通は鋳造で作るものではないですか?」ナターシャが疑問を呈する。
「そりゃあな。鋳型を作り、金属を鋳溶かす作業ができる環境を用意できるなら。それがなかなか難しいこともある、だろ?」アルフは肩をすくめてみせた。

(Quality Knuckledusterは消費APが2と低く、場合によってはHand to Handコンバットにおける最強武器にもなり得る。これを一段階強化したClaw KnuckledusterはAPコストが1増加し、さらに一段階強化したKnife Knuckledusterに至ってはAP4を消費する。それに見合う攻撃力があるかは正直疑わしい。手数が増えるということは、クリティカルやスタンのチャンスも増えるということだ…)
(はじめてQuality Knuckledusterを製造する場合、事前にレシピを習得していない場合はプリセットをExperimentにセットしておく必要がある。もしSvinchatkaが選択されていた場合、同じ材料を使ってもQuality KnuckledusterではなくSvinchatkaが作成されてしまう)
 
 
 
 
 
 
 鍵のかかったゲートを開け、弾薬保管庫に入ると、ひときわ目立つ金属製の金庫が目に入った。堅牢な造りで、四桁のナンバー錠が付属している。
 適当にダイヤルを回したり、こじ開けようとしてもビクともしない。ふと向かいのドラム缶に目をやると、一枚の紙片が無造作に置かれていることに気がついた。"0451"、あつらえたように四桁の番号が書かれている。
 まさか…とその番号に金庫のダイヤルを合わせると、いとも容易く鋼鉄製の扉が開いた。
 金庫の中には、度の強そうな丸眼鏡が一つ。
「…なんで眼鏡?」それを手にしつつ、ナターシャが訝しむ。
「そいつはドクター・ジノビエフの眼鏡だな」だしぬけにアルフが言った。
「ドクター・ジノビエフ?」
「この基地の診療所に勤めている医師だよ。極度の近眼でね、たぶん、こいつは誰かの悪戯だろう。ナンバーの書かれた紙をすぐ近くに置いたのも、近眼のジノビエフならすぐに見つけられないと…さんざん試行錯誤したあとにようやく見つかるよう計らったんだろうさ。おい、そんな目で見るなよ。俺じゃあないぜ」
「てっきり、これも"テスト"の一環かと」
「俺は自分を聖人だとPRするつもりはないが、だからといって、基地で悪さをするのが俺一人だと限ったわけでもないだろう」
 
(充分なスキル値があれば、たとえ金庫であろうとピッキングで開錠は可能だ。なお0451とはSystem ShockシリーズやDeus Exシリーズなどで最初に開くことになるナンバーロックのコードであり、馴染みのあるプレイヤーも多数いることだろう。しばしばネタとして扱われることも多く、ATOM Teamの心憎い演出である)
 
 
 
 
 
 
 ドクター・ジノビエフへ眼鏡を返しに行くため、二人は倉庫の隣にある診療所へと向かう。
 診療所の標識の近くで居眠りをしている兵士を見かけたアルフは、いたずらっぽい笑みをナターシャに見せた。
「歩哨任務中のくせに居眠りとは、悪いやつだな。せっかくだ、スリの練習でもしてみるか?気が咎めるかもしれないが、ウェイストランドを生き抜くのに、どうしても間抜け野郎のポケットの中身が必要になることもあるもんさ…そうだな、ホルスターに入ってる拳銃でも抜いてもらおうか」
 アルフに言われるまま、器用にも立ったまま船を漕いでいる兵士のホルスターに手を伸ばし小型拳銃を抜き取るナターシャ。
 銃口が完全にホルスターから離れた瞬間、唐突にアルフが大口を開けて叫んだ。
「ミュータントの襲撃だ!敵の大軍が押し寄せてきたぞお!?」
「「!!!??」」
 突然の大声にナターシャと居眠り兵士は飛び上がり、続いて、互いに目が合う。兵士の視線はナターシャの目に、続いて、彼女の手に握られている拳銃へと向けられた。
 へっへっへっ、と悪戯小僧のような笑い声をあげ、アルフが言った。
「昼寝をするには悪いタイミングを選んだな、坊主!もし俺たちが敵だったら、いまごろはナイフで喉を裂かれて永眠していたことだろうよ!さあナターシャ、その不忠義者に拳銃を返してやれ。なあ坊主、今回はこの新入りに免じて許してやるが、次はないと思えよ」
 アルフに言われるまま、ばつが悪そうに目を伏せる居眠り兵士のホルスターに銃を戻すナターシャ。
 診療所に入る直前、ナターシャは愉快そうに笑うアルフに向かって言った。
「平和なんですね、ここは」
 その口調に若干の棘を感じ取ったアルフが、口元から笑みを引っ込める。「気になるか?さっきのこと」
「戦場では、たった一人の居眠りが部隊の全滅を招きます」
「固いことを言うな…といいたいが、まあ、お前の気持ちもわかる。俺も任務中なら、あんなふうに冗談で済ませたりはしない。しかし、時と場合ってもんがあるだろう?」
「それは、まあ」いちおうの同意はしたものの、納得とは程遠い声音でナターシャが頷いた。
 
(スリの成功率にはPickpocketとStealthのスキルが関係し、また対象NPCのプレイヤーに対する警戒心、つまりPersonalityも関わってくる。特に軍人やトレーダーは警戒心が強くスリが困難であり、また仮に全ステータスをMAXまで上げていても、トレーダーどころか一般人相手のスリにしばしば失敗する可能性があることを報告しなければならない。基本的には非戦闘系キャラ用のオプションであるが、不要なリスクを負いたくない場合はセーブスカム前提の行為となり、Survival難易度における盗賊ビルドは特にリスクの高いプレイスタイルになる)
(スリは2~3回程度の失敗までなら警告のみで許されるが、それ以上の失敗は対象NPCとの戦闘を誘発する。たとえ他の誰からも見られていなくても、街で一人のNPCと敵対することは、街に存在するNPC全員と敵対することを意味する。とはいえ、一度の失敗で即座に先制攻撃を受ける破目になった旧バージョンと比べれば優しくなったと言えるだろう)
 
 
 
 
 
 
 診療所のデスクではドクター・ジノビエフが目を糸のように細めながら、老婆のような形相で書類に向かい合っていた。二つあるベッドのうち一つには、テルニャシュカを着た兵士が額に玉のような汗を浮かべて呻いている。
「ドクター。彼女は今度任務に送られることになった、新人士官候補生のナターシャだ」患者には目もくれず、アルフは開口一番に言った。「なにか手伝わせることはないか?彼女が癌を治療できるほどの凄腕の名医か、それとも擦り傷を放置して破傷風に罹るような間抜けかを確かめたい」
「ATOMはいつから速成訓練をやるほど時間を急ぐようになったんだね?」アルフの急な物言いに動じることもなく、ドクター・ジノビエフはゆっくり顔を上げると、目の前にいる二人のどちらがアルフかもわかっていないような様子で言葉を続けた。「いますぐに前線向けの弾除けが必要でもなければ、はじめに座学でみっちり仕込むべきだと思うがね。よろしく、ナターシャ?」
「よろしく、ドクター。あの、これ。あなたの眼鏡ではないですか」
 差し出された丸眼鏡を少し驚いたような表情で受け取り、それをかけると、ドクター・ジノビエフはようやくクシャミをした猫のような顔つきから本来の柔和な表情を取り戻した。
 目覚めたばかりの七面鳥のような仕草でアルフとナターシャを見分けたあと、ドクター・ジノビエフが口を開く。
「おや、まあ。若い女性の声だとは思ったが、見た目はそれよりも若いね。誰かの娘さんかな?ひょっとして、以前に会ったことがあるかね?」
「いえ…」
「違うよドクター、彼女はメンバーの身内じゃない。俺がウェイストランドの廃墟から拾ってきた、こう見えても40近いオバサンだぞ」アルフが口を挟む。
「ほう?興味深い、医学的見地からみて…なるほど、目元や指の関節にそれとなく加齢の跡が見えますね」
「ちょっと!」
「ああ失礼、お若いレディに対して配慮に欠いた言動を」
「お若くはないだろう」アルフが言う。
「お若くはないレディ」ドクター・ジノビエフが訂正する。
「ちょーっとおぉぉ!」
 柄にも無く金切り声をあげるナターシャに、アルフとドクター・ジノビエフは顔を見合わせた。
 コホン、咳払いをし、ドクター・ジノビエフが仕切りなおす。
「それ、で…医療、えー、応急治療のテストを?残念ながら大手術を行えるような面白い患者は用意できませんが、そこに士官候補生タラスが見えますね?そう、あなたと同じ士官候補生です。基地外周で警戒任務についていたのですが、運悪く巨大昆虫の針に刺されてしまって」
「任務中に居眠りでもしてたんですか」
「なんですって?」
「いえ」
 どことなく突き放したような物言いをするナターシャにドクター・ジノビエフは怪訝な表情を向けるが、何も聞かなかったように話を続けた。
「ここに携帯用の救急キットがあります。これを使って、適切な処置を施してください」
 プラスチック製の容器を受け取ったナターシャは、それが扱い慣れた軍用の救急キットであることに気がついた。ベッドの上で呻き声をあげる患者、タラスのもとへ歩み寄る。
 巨大昆虫の針に刺された、と言ったか?
 患部には包帯が巻かれており、大きな出血はなさそうに見える。いささか過呼吸ではあるが異常というほどはなく、脈も安定しているようだ。熱もない。すくなくとも、命に関わる怪我を負った様子はない。
 包帯が少し古くなっているので、交換する必要があるだろう。滅菌ガーゼを外し、患部を消毒しつつ傷口を観察する。針が体内に残っている様子はなかった。
「痛みますか?」ナターシャの質問に、タラスは無言のまま頷く。
 包帯を巻き直したあと、ナターシャは救急キットに含まれていた解毒剤や抗生物質とともに少量の鎮痛剤と抗精神病薬を投与し、タラスに励ましの言葉をかけた。
「ありがとう、痛みがひいてきたよ」そう言うと、タラスは先刻よりも落ち着いた様子で眠りについた。痛みを感じないのは症状が緩和されたからではなく薬でそう錯覚しているだけだが、そのことを本人に伝える必要はないだろう。
 おそらくは怪我そのものより、ショック症状のほうが深刻だ。精神的に参っていると、治るものも治らず、容態を悪化させかねない。
 励ましの言葉をかけるのも大事だが、それよりも鎮痛剤や鎮静剤を投与して痛みによる不安を取り除き、安静にさせておくのが手っ取り早い。やり過ぎると中毒になるが。
 一通りの処置を終えたナターシャに、ドクター・ジノビエフが声をかけた。
「悪くないのではないかな。患者の扱いを心得ているし、行動に迷いがなかった。どこかで訓練を受けたかね?その救急キットを使ったのは今回が初めてではないね」
「モスクワの訓練学校で衛生兵のトレーニングを」
 ナターシャとしてはその言葉に含むところはなかったが、ドクター・ジノビエフが彼女の言葉を理解するのに少しばかりの時間を要した。核戦争からすでに19年が経過している。
 彼女の年齢を思い出し、彼女が"本物のロシア軍兵士"であることを理解したとき…ドクター・ジノビエフはただ一言、シンプルな感想を漏らした。
「驚いたな」
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 

 
 
 
 どうも、グレアムです。どういうわけか最初のチュートリアル・レベルに話数を割いてますが、まあいつだって最初は丁寧にやるものなんだ、という悪しき慣習に倣っているということで。
 近年はカジュアルさや読みやすさを重視して会話文に顔アイコンを使ったり、わかりやすく話者の名前を添えたりしていましたが、今回はそういう軽いノリは似合わないだろう、ということで地の文が重めな体裁で執筆しています。
 本来は攻略情報やらシステムに関するヒントは省くつもりだったんですが、本文から切り離すという形で併記することにしました。とはいえ俺自身も完全にゲームシステムを理解しているわけではないので、不確かな部分や間違っている点があるかもしれません。
 
 
 
 
 


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2020/04/24 (Fri)02:46


 
 
 
 
 

 

ATOM RPG Replay

【 Twenty Years In One Gasp 】

Part.1

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 夢を見ていた。遠い昔の記憶、核の炎に包まれ荒廃したアフガニスタンの地で、ナターシャは相棒のユーリとともに見渡す限りの荒野を彷徨っていた。
 突然の核攻撃は二人が駐留していた基地もろとも焼き尽くし、車輌やヘリコプターといった移動に使えそうな装備はすべて使い物にならなくなっていた。撃ち込まれたミサイルがアメリカ製だったのか、それともロシア製だったのかを知る術もなかった。
 僅かに生き残った生存者たちは、おそらく本国からの救援は望めないだろうと判断し、部隊を纏めてロシアへの帰国を目指した。それは途方もない距離の行軍であり、無謀としか言い様がないものであったが、それでも、思いつく限りでもっともマシな選択肢には違いなかった。
 ナターシャの肩を借りて二人三脚のように歩きながら、蒼白な顔つきのユーリが唐突に口を開く。
「俺はこんなところで死にたくはねぇ、だってそうだろ?死ぬにしたって、なにも、こんなところで…あんな連中に追い回されながら。あいつら、世界がこんな有り様になっても、まだ俺たちを目の敵にしてやがる」
 生き残った部隊がその場に留まらず撤退を決意したのは、外敵の脅威…それも昨今恐れられているようなミュータントやバンディットの類ではなく、明確な恨みや殺意でもって攻撃をしてくるアフガン人の存在があったからだ。
「連中、世界が滅びたのは俺たちのせいだと思ってやがる。まあ、責任の半分が"俺たち(ロシア人)"にあるのは間違っちゃいないがな。それに、ムジャヒディンやイスラム原理主義者といった連中は"アメリカ人とは大の仲良し"だから、責任のすべてが俺たちにあると思い込んだとしても、無理はねぇ」そう言って、ユーリは虚ろな笑みを浮かべた。
 もし核戦争が起きなかった場合、アメリカから訓練や武器供与を受けていたイスラム戦士たちがジュネーブ協定によるロシア軍撤退後に一転して西側諸国に牙を剥くことになるなどとは、ナターシャやユーリには知る由もないことである。
 ときおりゲリラの奇襲に遭いながら、水も食料も不足している状況で、放射能や毒物に汚染された土地を歩く。無事でおれるはずもなく、一人、また一人と倒れていき、けっきょくナターシャとユーリのみが生き残った。
 二人はともに狙撃兵と観測手という間柄であり、数々の困難な任務を遂行してきた過去を持つ。一度など、二人だけでパキスタン国境沿いに潜伏している部族の長を暗殺したことさえある。そのときは回収に来るはずだったヘリが手配されず、敵の猛追を受けるなかであらゆる手を尽くして前線基地まで撤退したものだ。いま置かれている環境はその当時を思い出させた。
 ユーリは決して多弁なほうではなく、困難な任務を前にしても不平を言ったり、仲間に愚痴をこぼしたことはなかった。そんな彼がいま悪態ばかりついているのは、それ自体がナターシャに気を許している証拠でもあったのだが…
 不意にユーリの足が止まり、彼の体重がどっさりとナターシャにのしかかった。ナターシャも足を止める。二人とも、とっくに限界を超えていた。
「俺は…国に帰りてえ!家族に会いたい…!モスクワは無事なのか?家族は無事なのか?せめて、一目だけでも……!」その場に倒れこんだユーリが、すすり泣きをはじめた。
 これほどまでに彼が情けない姿を晒すのを、ナターシャは一度も見たことがなかった。たとえ命を危険に晒されても、軽口一つで乗り切るような、あのユーリが。
「大丈夫、大丈夫だよ」ナターシャはユーリに言い聞かせた。「絶対に帰れる、ロシアへ、モスクワへ。みんなで、全員で一緒に」
「みんな…?みんなって、誰だ?そのみんなは、どこに居るんだよ?」そのユーリの恨み言は、すでに声にすらなっていなかった。かすれた吐息のように絞り出されただけだ。
 ナターシャはただ首を振り、ユーリの手を両手で包みこむように握ると、その場にひざまづいた。
 ユーリの質問は、まさにナターシャ自身も答えを必要としているものだった。
 みんな、どこへ行ってしまったの?
 彼女にわかっているのは…間もなく、ユーリもその"みんな"のうちの一人に加わるだろうということだけだった。
 
 
 

 
 
 
 
 
 
「夢を見ていたようだな。まあ、あまり良い夢を見ていたようには見えないが」
 ナターシャが目を覚ましたとき、軍服姿の男が壁に背をもたれながらこちらを見つめていた。いつからそうしていたのか、少しばかり待ちくたびれたといった態度で男が言う。
「ともかく、ぐっすり眠れたようで何よりだ。昨晩は酷い嵐で、俺なんかは寝不足気味だってのにな。いや、これは冗談だが。俺を覚えているか?」
「エージェント・アルフ」ナターシャは目をこすりながら身体を起こした。「まともなベッドで眠れたのは、随分と久しぶりのことだったので。ところで、なぜ私が悪夢を見ていたと?」
「ひどくうなされていた。泣いてたぞ。少なくとも、夢の国のアトラクションで楽しんでいたようには見えない」そう言って、アルフは赤く腫れたナターシャの目元を指さした。
 彼はATOMのハニー・イーター旅団に所属する兵士で、ウェイストランドに調査隊として派遣された際、廃墟に身を隠していたナターシャを発見した男でもある。
 2005年…米ソ全面核戦争から19年が経過した現在、たった一人でアフガンから生還したナターシャは、ウェイストランドと呼ばれるようになった不毛の荒野で生存していた。
 それもつい最近、ATOMの調査隊に発見されるまでは、生きた人間と会うこともなかったのだ。今にして思えば、それはそれで奇跡的な確率ではあったのだが…
 調査隊にしてみても、20年以上も前にアフガンに派遣された兵士が自力で帰還しウェイストランドで生活しているなどという冗談のような奇跡に遭遇するのは初めてのことであり、人間と接する機会がなかったために些か会話が不自由になっていたナターシャを保護し、組織が保管していた軍の資料から彼女の身許を調査した結果、ナターシャが本物のスペツナズであると証明されたのがつい先日のことだった。
 
 ATOM…ソビエト帝国の復興を目指す秘密結社で、発足は核戦争以前、ロシア軍内部の帝国主義勢力の一団によって設立されたものと言われている。現在は戦前のテクノロジー収集を主な活動内容としており、そのためウェイストランドへ頻繁に調査隊を派遣している。
 帝国復興という目的の内には人々の生活水準を核戦争以前のレベルまで戻すという大義名分も含まれており、それ自体は立派なものだが、単純な正義の集団でないことは念頭に置くべきであろう…関わっている当人たちがどう思っているのかはさておくとして。
 組織がナターシャを保護したのも純粋な善意からではなく、彼女が本当にアフガンからの帰還兵であった場合、何らかの形で組織のために役立つと判断したからである。ナターシャもその点は理解していた。
 アルフは言った。
「組織が当時の名簿を持っていたのは君にとって幸運だったな。第334独立特殊空挺支隊、ナターシャ・クロートキィ兵長?外見が当時のIDカード…つまり、20年前の写真と変わってないのは、かえって不自然でもあるが」
「それは…私に言われても」ナターシャが口ごもる。
 一見すると少女のような見た目のナターシャが、間もなく40歳の誕生日を迎えようとしている事実について、アルフが疑問を呈するのは無理からぬことだ。
「KGBか…ストーム333には参加したのか?」アルフが尋ねる。
「いえ、アミンの暗殺には関わっていません。私が入隊したのは、それよりも後なので」
「そう言えと教わったのか?いや、冗談だ。腹は減ってないか?テーブルの上にビスケットがある。君、朝食の時間を寝過ごしたろう?まあ、あのまずいスープを食わずに済んだのは幸運かもしれないがな」
 アルフが言ったのは、食堂で振る舞われる食事のことだ。真っ当な食材を手に入れるのも難しい時代ではあるが、それでも味が酷いのはコックの腕が悪いせいではないかと、ATOMの兵士たちは噂していた。
 ビスケットの箱を手にし、ナターシャは中身を確かめるようにガサゴソと振る。ガレット(岩石)という、食品にあるまじきアダ名で呼ばれるそれは、かつてナターシャが食べ慣れた軍用糧食の一つだ。通常、保存期間は二年程度と言われていたはずだが、この硬く乾燥した軍用パンがいつ製造されたものなのかを考えるのはやめたほうがいい気がした。
「それで、今日の予定は?なにか特別な用事があるものと察しますが」ビスケットの外箱を睨みつつ、ナターシャが言う。
「組織は何か、特別な任務を君に与えようとしているようだ。ブリーフィングに呼ぶよう言われた」
「特別な任務?」
「かつてのスペツナズの腕前を見込んで、だろ。50m先の石を拾ってくるとか、そういうルーキー向けな話ではなさそうだった。俺は詳しく聞かされてないが、そのことが余計にな」
「身内にも内容を明かせないような任務ですか?」
「どうかな。ATOMの秘密主義は今にはじまったことじゃない、わかるだろ、組織ってのは秘密が好きなんだ…どうせ取るに足らない、くだらない話さ」
 そう投げやりに言ったが、おそらくはアルフ自身、その言葉の内容を信じてはいないだろう。
 宿舎の扉を開けようとしたとき、鋼鉄製の扉に鍵がかかっていることに気がついた。アルフがチェシャ猫じみた笑みを浮かべる。
 
 
 
 
 
 
「末世の習慣というのは恐ろしいものだ。いつ、自分のいる建物に強盗や、あるいはミュータントが侵入してくるかわからない。扉に鍵をかけるクセってのは、そのまま自分の寿命の長さに繋がる。ところで、鍵をどこへやってしまったか、自分でも思い出せないんだ」
「これはテストか何かですか?」ナターシャは眉をひそめる。
「まあ、そう思ってくれても構わない。鍵を見つけるか、あるいは自信があるならピッキングで開けても構わない。おそらく任務中に、施錠された扉を開けなきゃならないようなシチュエーションに遭遇することもあるだろうからな」
「…一つ、訊いていいですか」
「なんだ」
「この扉、内側から鍵をかけるんですか?」
「そういうことは聞いちゃいかん…」
 チュートリアル用のご都合主義だ、などと、アルフの口からは言えようはずもなかった。あるいは、ソビエトロシアにはそういった特殊な扉があるのかもしれなかったが。
「業者が扉をつける向きを間違えたんだ」苦し紛れに言うアルフ。
「そういうことにしておきます」
 鍵は扉のすぐ近くにあるスチール製の事務机の引き出しの中にあった。これが何のテストになるのかはわからなかったが、まあ、アルフには彼なりの思惑があるのだろう。
「もっと難しい場所に隠してあるものかと」ナターシャが言う。
「俺のケツの穴とか?」アルフは冗談めかして言った。
「必要があるなら探しますが」真顔のまま訥々とナターシャが返す。右手を握ったり、開いたりする仕草を見せるナターシャに、アルフの顔から若干血の気が引いた。
 
(扉を開けるには、鍵を装備した状態で扉を調べる必要がある。本作ではインベントリに入っているだけで効果を発揮するものと、実際に装備しなければ効果を発揮しないものがあり、見た目や説明文では判断がつかないため、いささか面倒な仕様ではある)
 
 
 
 
 
 
 カチリと小気味良い音とともに鍵が開き、扉を開けると、風とともに揮発油や兵士たちの汗といった匂いが鼻をツンと突いた。清涼な空気感とは言えなかったが、同時に、人の気配を感じさせるその匂いはナターシャにある種の郷愁を思い起こさせた。
「訓練学校にいた頃を思い出します」唐突にナターシャが言った。
「訓練はどこで?」アルフが質問する。
「リャザン。まるで戦前に戻ったよう、こんな場所が残っていると知ったら、きっと、みんな喜んだはず。部隊のみんなを、ここに連れてきたかった……」
 それはアルフに言い聞かせているというよりも単なる独り言であり、身寄りのないナターシャにとってはまさしく家族同然であった部隊の仲間たちの姿を思い出し、目に涙を浮かべた。
 泣いている女に余計な口を挟まない分別をアルフは持っていたが、所在なさそうにしている彼の存在を思い出すと、ナターシャは慌てて言い繕った。
「あの、ごめんなさい、その…えぇと。ごめんなさい」
「気にするな。仲間に恵まれていたようだな、いや、今の言葉は忘れてくれ」そう言って、アルフは手を振った。
「彼らは素晴らしい人たちでした。少なくとも、私にとっては。あんなところで、あんなふうに死んでいい人たちじゃなかった…いえ、この話はやめましょう。ブリーフィングでしたっけ?メインバンカーで?」
「ブリーフィングにはまだ時間がある。それまで少し施設を見て回ろうじゃないか…というのは建前で、実際のところ、任務前に君の能力を査定するよう上から指示を受けている。少しばかり、そう、君が言うところの"テスト"に付き合ってもらうよ」
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 

 
 
 
 どうも、グレアムです。ロシア製の旧Falloutフォロワーな作品、ATOM RPGのプレイを開始しました。「どうせまた途中で投げるんだろ!?」と思われるかもしれませんが、いまのところ英語環境でのプレイとなるうえ会話が非常に重要なゲームであり、翻訳しつつ創作要素も挟みつつの更新となるので、その可能性が多大にあることは全くもって否定できないのだった…
 いちおう公式のほうで日本語化作業が進んでいるという告知もあり、公式日本語訳がリリースされるまで待つという手もあったのですが、逆に日本語化されてない今だからこそネタとしておいしい、というやましい気持ちもあり。
 現状でもWorkshopで機械訳版がMODとしてリリースされてはいるんですが、アレはあくまで翻訳者向けのキットとでも呼ぶべきもので、おそらく一般ユーザーが導入することを想定してないです。翻訳の質どうこういう以前にゲームプレイに支障が出る(おそらく命令用の記号など訳してはマズイ部分を書き替えてしまっている)ので。
 
 
 
 
 


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2020/04/19 (Sun)14:26



 
 
 
 
 どうも、グレアムです。
 コンコレのプロフィール欄にて現在三日に一度のペースで更新している二次創作小説「SHOP SQUAD -Gamma Unit-」の第二シーズン第六話、「弔鐘の弾丸 - Chiba City Requiem -」が完結したので、HPに掲載しました。以下に第六話パート1のリンクとトップページへのリンクを。
 
 
 
 
 
 
 なんというか、そもそもHPを更新するのが超ひさしぶりですよ。本当はイラスト関連も色々と更新しなけりゃならんと思ってはいるんですが、HP自体を作り直したいという欲求もあり…いつもの悪い癖の発露と言ってしまえばそれまでなんですが、さすがにHPの作りやコンテンツ内容自体が古臭すぎるのと、あとHTMLのコードが汚すぎる…
 HTTPSへの移行が忍者ツールズはあまり上手くやれてない感じもあるので、サービス自体を移行したいという考えも一つにあるんですけどね。
 
 小説の内容自体は本来最終回になる予定だったものを前座に持ってきたというか、とりあえずγクラスタとの戦いは今回で完結になります。あとは番外編(最終回へと繋がる内容)を挟んで最終回、というカタチになりますか。ひとまずゲーム自体のサービスが終了する前に完結できそうで胸を撫で下ろしております。
 今回のゲストキャラである右近一行は別の方がかつて書かれていた二次創作を参考、というか半ば客演という形で出させて頂いたもので、ところどころ描写が忍殺めいているのもその影響だったりします。本当は全編通して忍殺の作風をエミュるぐらいはやるべきだったんでしょうけども、どうにも力量不足で中途半端なパロディになってしまったのは申し訳ない。
 連載中は右近の戦闘描写だけ忍殺めいていて、重装狐チームは普段通りの描写というふうに書き分けていたんですが、途中でゴッチャになってしまったので完結後に多少手直ししています。というか、右近の忍殺ムーブに重装狐側が引っ張られて世界観が侵食される、というような演出のつもりだったんですが、改めて読み返したときに、あぁコレ単にわかりづらいだけだな、と判断して、そのへんの微妙な部分はばっさりカットした次第。
 例によって文章量は12万字オーバーで、前回が14万オーバーだったことを考えると多少はコンパクトになったという感じでしょうか。他にいろいろ雑多に手を出しつつ書いて14ヶ月でこの分量はまあ妥当…なのかなぁ。おおよそ一年でラノベ一冊分程度な感じで。
 
 
 
 
 



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2020/04/01 (Wed)18:50



 
 
 
 
 

【字幕プレイ】Next Day: Survival 一人でバンカー制圧
 
 
 
 どうも、グレアムです。三月中に一度も記事を更新しなかったというまさかの事態ですが、コロナが世界を席捲する中これといって健康に問題があるわけでもなく通常通りの日常を送っております。むしろコロナにかこつけて仕事を休みたい側の人間です。
 ぼちぼち雑多なゲームに手を出してみたり、相変わらずMMDをいじくり回したりという三月だったのですが、これといってブログで記事にできるほどのネタがないというか、記事を書く気力がないというか…RTSのSyrian Warfareやスマホゲー移植のDeus Ex: The Fallをクリアしたりだとか、その気になればレビューの一つも書けんではない、という感じではあるんですけどね…
 あとはGrim Dawnがまさかの大型アップデート実施で日本語環境プレイ勢としては状況が落ち着くまで静観せざるを得なくなったりとか。あのゲームはアプデがあるとMOD製作環境がほぼ白紙撤回されるので、ゲームを好き勝手に改造したい身としてはバグフィックスや環境整備だけ整えて残るコンテンツ拡充はMODコミュニティに丸投げして欲しいというのが正直な感想だったり。いまさらプレイ記なんぞやりはじめたのも、もうメジャーアップデートなんかこねぇだろうという希望的観測があったからという側面もあったのですが。アプデのたびにバランス改悪されて正直もう公式にはいじってほしくないというかAoMで終わらせときゃ良かったのに感マシマシだとかはちょっと俺の口からは言えないですけどね
 
 そんな感じでグダグダと過ごしていた三月、ちょいと気分転換にとS.T.A.L.K.E.R.っぽいMMO「Next Day: Survival」の攻略動画なんぞを作成したので、今回はその紹介を。
 紹介というか、必要な説明は動画内でしてしまっているし、そもそもこのゲームをプレイしたことがないような人が観るような内容ではないし、そのうえプレイ人工が日本にどれだけいるんだってことを考えると…うん、まあ、なんでこんな動画作ったんだろうな!
 Steamレビューでは賛否両論の本作、その原因はそもそものプレイ人数が少なくて過疎化していたり、最終アップデートが昨年の六月でデベロッパーは現在別のゲームを開発&リリースしているので、まだ内容的には中途半端であるにも関わらず既に開発が打ち切られているのじゃないかという懸念があったり、まあMMOとしては割と致命的な要因があったりするわけなんですが、セールで購入しシングル用のバリューゲーと割り切って遊ぶ分にはまあ楽しめるゲームだったりするわけですよ。と、購入から一ヶ月で60時間ほど遊んでる俺が言っておきますよ。
 
 なんであれば初心者用のガイドなんかを書いてみようかという気もないではないんですが(バージョンによって仕様が異なるうえ、ネット上で発見できる情報はわりと古く現在では役に立たないor誤解を与えるものが多いということもあり)、需要はあるんだろうか…
 
 
 
 
 


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