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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/27 (Sat)05:42
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2019/06/09 (Sun)04:22







Marauder

(aka E8: Man of Prey)


Replay: "Bloody Fairy" _06










*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。





 虐殺のあった翌日、玄関戸を激しく叩く音でニコラは目を醒ました。

同居人:
「いったい、こんどはなんなの…?」

ニコラ:
「ここで待ってて。ボクが見てくる」

 先日のことで同居人はすっかり精神的に参ってしまっている。落ち込んでいるといえばニコラもそうなのだが、それでも危機対処能力に関してはニコラのほうがまだ上だ。
 金庫から拳銃を取り出し、装弾を確認して隠し持つ。よからぬ輩がトラブルを持ち込んできたとしても、上手く切り抜けるつもりだった。
 もっとも、そんな気持ちは扉を開けた時点で吹っ飛んでしまったが。





軍人:
「先日この地区で発生した殺人について話を聞きたい。武器を下ろしてもらおうか、お嬢さん?でないと、君も表で転がっている死体の仲間入りをすることになる。我々の基地まで同行願おうか」

ニコラ:
「(あ、終わった──)」

 先日の暴徒など話にもならないほど厄介な連中がそこに立っていた。斧やナイフのかわりに軍用ライフルをかまえ、襤褸布のかわりに軍服を着た男たちが鬼のような形相でニコラを待ち構えていた。
 指揮官らしい男、一見水兵のように見えるストライプ模様のシャツは、たしかスペツナズの装備だとニコラは記憶していた。だとすれば、こいつらは特殊部隊か。
 抵抗するには相手が悪すぎる…玉砕覚悟で拳銃を使ったところで、無抵抗で捕まるより良い結果になるとは到底思えなかった。なにより、そんなことをすれば確実に同居人の立場までもが危うくなる。

同居人:
「この人たちは…!?」

ニコラ:
「昨日のことについて、話を聞きたいんだってさ。ちょっと出かけてくるよ、大丈夫、なにも危険なことなんてないよ。もしボクらに危害を加えるつもりなら、最初からドアを蹴破って突入してきているはずさ」

 厳つい軍人たちを目の当たりにして言葉を失う同居人をニコラが優しくなだめる。
 だが、その言葉はむしろ自分に言い聞かせるためのものだった。軍人たちが催涙ガスを投げ込んで銃をぶっ放しまくったりしないのは、ニコラを尋問、あるいは拷問するためかもしれない…ただ、そうならそうで、同居人がそれを知ることも、あるいは、同居人にまで被害が及ぶようなこともないだろう。

ニコラ:
「軍人さん、あなたの言う通りにするよ。だけど、一つだけ約束してくれ…彼女には一切危害を加えたりしないと。彼女は無関係なんだ」

軍人:
「すべてはお前次第さ」

 そうだろうとも。
 ニコラは拳銃を軍人に渡すと、彼らとともにアパートを出た。一度だけ振り返り…もう、ここへ帰ってくることはないだろうという、漠然とした予感を抱いた。















コーネフ大佐:
「自衛のためとはいえ、随分とたくさん殺したものだ。正当防衛で済まされる範疇を軽く越えている、そうだろう?これを無罪放免というわけにはいかない、君には疑わしい点が多過ぎる。たとえば、そう、文化ホール爆破事件への…関与とかな。我々の倉庫へ盗みに入ったという目撃情報もある。あの、ヴァレクとかいうこそ泥と一緒に。彼はどうしたね?」

 通称「ペンタゴン」と呼ばれる基地にて、ニコラはこの地域の軍人を纏める指揮官、N・C・コーネフ大佐と直に向き合っていた。
 すでにこのあたりで正規軍と呼ばれるものは機能しておらず、かつて軍服を着ていた連中は大半が軍務を放棄して暴徒やギャングに身を落としていた。しかし、なかにはコーネフ大佐のように部下を統率し、以前と変わらぬ組織体系を維持することで地域の自治に努める者もいる。
 指導者として、コーネフ大佐はかなり「マシ」なやつだ、という話を以前、ニコラは市場で聞いたことがあった。軍人らしく、ごく真っ当に治安維持を考えていると。おそらく、治安を乱すような不穏分子には容赦しないだろう。
 大佐はニコラが考えていた以上に彼女の情報を正確に掴んでいた。ヴァレクの裏切りに端を発する一連の行動に彼の言及が及んだとき、ニコラは心中穏やかではいられなくなった。大佐は控えめな物言いをしているが、たんなるカマかけでは有り得ないはずだ。
 その一方で、ニコラは奇妙な違和感を覚えてもいた。
 てっきり、軍人たちはニコラが関わった事件の詳細について知りたがっているのだろうと思っていた。そのためなら尋問、あるいは拷問も辞さないだろうと。チェーカーのバッヂがよく似合いそうなフォメンコとかいう下士官が大佐の傍らに控えているのも、そのためだろうとニコラは考えていた。
 しかし、どうも違うらしい。大佐の物言いはニコラ自身の所業に関心があるふうではなく、それどころか、どこか無関心なようにさえ見える。
 軍人がこういう接し方をする場合、目的は一つしかない…取り引きだ。

コーネフ大佐:
「驚いたかね?我々は君が倉庫へ盗みに入ってから、ずっと追跡を続けていたのだよ、クロアチア人のニコラ・ミロスラフ?まあ、文化ホールを占拠していた連中は我々にとっても頭痛の種ではあったのだがね。旧ソ連の素晴らしい建造物が失われたのは胸が痛むが…どうやら君は爆弾を作るのが得意なようだ。だが、解体のほうはどうだね?」

ニコラ:
「種類による、としか」

 爆弾を作るのが得意だなどと言われるのは、ニコラにとって大変に心外なことだった。おそらく大佐はニコラが紛争でセルビア人を爆破しまくっていたとでも勘違いしているのだろう、爆薬を作ったのは後にも先にも文化ホールでの一件だけだというのに。
 とはいえ、そのことがニコラを生かしておく理由になっているのであれば、わざわざそれを否定する必要もなかった。

コーネフ大佐:
「…バラバシュに、放棄された軍の補給基地があってな。先日までNATO軍が占拠していたのだが、我々が追い出した。ところが連中、逃げる途中で置き土産を残していきおってな。おかげで物資を運び出すことができんのだ」

ニコラ:
「置き土産…地雷ですか?」

コーネフ大佐:
「M18、クレイモアといったかな。ロシア製のコピーではない、純正の西側産だ。すでに十名近い死傷者を出している。そこが補給基地だったことは周囲に知れ渡っている、つまり、残された物資を狙っている連中が他に大勢いるということだ。昼夜襲われるリスクを負ってまで現地に留まって陣地を構築する気はないし、長期間、兵力を分散させておきたくはない。さっさと物資を運び出して部隊を撤退させたいのだよ」

 クレイモア、大量のベアリングを射出する指向性地雷だ。
 数は少ないが、サラエボでソ連製のMON-50を見かけたことがあった。基本的な構造は同じはずだ、撤退中に仕掛けたというのなら、それほど凝った仕掛け方はしていないはずだ…大佐の話を聞きながら、ニコラは思考を巡らせる。

コーネフ大佐:
「運の悪いことに、我々には地雷処理に適した工兵が不足していてね。ものは相談だが、バラバシュへ行き補給基地周辺に仕掛けられた地雷を始末してくれんか?フォメンコと彼の部下が同行する、もちろん脱走を阻止するための安全措置だが、何者かの襲撃を受けた場合、地雷ではなく銃弾で死ぬようなことがないよう計らってくれるだろう。そうだな、フォメンコ?」

フォメンコ:
「私は賛同しかねます、同志コーネフ。このような得体の知れない、それも子供を使うなど…しかし、命令とあらば。いつでも出動できるよう、部下はすでに待機させています」

コーネフ大佐:
「ニコラ、先に言っておくが拒否権はない。だが、これは君にとっても悪い話ではない…無事に任務を終えたら、いままで君が犯した罪に関しては不問としよう。無論、君の同居人に嫌疑が及ぶこともない。それどころか、働きに見合った報酬も与えようではないか」

ニコラ:
「もしその約束が言葉通りに実行されたなら、市場の人々はあなたを称賛するでしょう」

コーネフ大佐:
「もちろん、そうなるとも」













マクシミッチ:
「どうやらコーネフ大佐はウォッカの飲み過ぎで二日酔いらしい。まあいい、私が現場指揮官のマクシミッチだ、バルバシュへようこそ。小さな工兵さん?」

 フォメンコの率いる部隊とともに、ニコラはバルバシュの補給基地へと到着した。
 コーネフ大佐が懸念するように、地元のギャングがこの基地に備蓄されている物資を狙っているのであれば、あまり悠長に時間をかけてはいられない。周辺警戒のためスペツナズが展開するなか、ニコラは気が進まない思いで建物に近づいていった。
 敷地内は瓦礫が積み重なっており、雑然と散らかっている。地雷を仕掛けるにはもってこいの環境だ。誤って作動させた場合、運が良ければ即死できるが、下手をすればパーツを失ったGIジョーのような有り様でこの先の人生を過ごすことになる。気が進むはずもなかった。


 *Intel*
 このあたりのカットシーンでのやりとりはほぼ創作。
 実際は元軍人であるAkhmetと軍人たちによる「本人たちにしかわからない会話」が展開され、それに対するフォローもないため、翻訳していても何を言ってるのかよくわからなかった。このあたりは英訳が酷いというより、本作のダイアログの設計自体に問題があるように思う。
 テキストは原作者自身が担当しているのだが、小説の会話文だけを抜き出したような格好になっており(所謂地の文による説明を欠いている)、説明台詞のようなものが一切ないので、原作既読者でない限り何が起きているのかわからないような作りになっている。
 ゲーム中に確認できるミッション内容も、主人公の一人称による漠然とした語りに終始するため、残念ながらストーリーを理解する手助けにはならない。














 配電室と思われる建物のロッカーからIMP-1地雷探知機を回収し、基地周辺を調べていく。
 地雷は建物をぐるりと囲むような配置で草場や物陰に設置されていた。最低限の偽装はしてあるが、たとえば爆弾魔が芸術作品と呼ぶような手合いの、凝った仕掛けはされていない。
 この場合、重要になるのは爆弾解体の技術ではなく、爆弾の発見に役立つ思考回路を持つことだ。狙撃兵を狩るカウンター・スナイパーのように、相手の気持ちになって考えることだ。相手の手口がわかってさえいれば、セオリーが読める。
 もし自分が地雷を仕掛ける側なら、侵入者を本気で殺そうとするなら、どこへ、どうやって仕掛けるか?


 *Intel*
 地雷の解体にはMechanicスキル、地雷の発見にはEyesightスキルが判定で使われる。本MAP以外にも地雷が仕掛けられているステージがあるため、いずれかの能力が低い場合、本作の攻略はとても困難なものとなる。
 本作(あるいはBrigade E5、7.62 High Calibre)の爆発物は実際に数百の破片を射程距離内に飛ばしてダメージ判定を行うため、爆発の瞬間は非常に処理が重くなる






 おおかた地雷を回収し終わったころ、瓦礫を踏み越えて敷地内への侵入を試みる足音が聞こえてきた。軍人たち…ではない。かれらがこそこそする理由はないし、もしそうなら、もっと上手く足音を隠すだろう。
 おそらくは地元の盗賊たちと思われた。待ち伏せしていたのか、あるいはたまたま今のタイミングで来たのかはわからないが、ニコラたちが来た南のゲートからではなく、塀を越えて北から侵入してきている。
 すでにマクシミッチ率いるスペツナズたちは盗賊の存在に気づき、戦闘態勢に入っている。両者の戦いは正面からの撃ち合いになるだろう、と判断したニコラは北西の操車場から回りこみ、側面から盗賊を叩くことにした。







 軍人たちの応戦に釘付けになっている盗賊たちへ手榴弾を投げ込み、フラッシュライトを装着したマカロフ拳銃で狙撃していく。思わぬ方向から攻撃を受けた盗賊たちはパニックに陥り、そのまま成す術なく壊滅。僅かに残った者たちは降参し、投降した。







マクシミッチ:
「作業を急がねばならない、という指令の意味がよく理解できたろう。それにしても、拳銃だけでよく戦えたものだ」

ニコラ:
「AKが必要な任務とは聞いていなかったので…」

マクシミッチ:
「地雷の撤去も終えたようだな。しかし残念ながら、まだ君の任務は終わっていない。これより施設の地下保管庫へ向かうことになるが、そこにも大量の地雷が敷設されているのだ。それも撤去してもらう必要がある」





 【続く】





 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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2019/06/06 (Thu)18:03







Marauder

(aka E8: Man of Prey)


Replay: "Bloody Fairy" _05










*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。








近隣住民:
「お嬢さんがた、こんな時代に食べ物の独り占めはよくないな!」

近隣住民:
「困ったときは助け合うのがご近所付き合いってものだ、そうだろう!うちの赤ん坊がお腹を空かせてるっていうのに、君達は優雅に砂糖入りの紅茶を楽しむというのか?不公平だ!」

近隣住民:
「持てる者は持たざる者に富を分け与える、それが常識だろう!共産主義的に考えて!」

 翌朝。なにやら表が騒がしいので窓の外を見ると、近所の住民が総出でアパートを取り囲んでいた。彼らの口からは頻繁に「独り占め」「不公平」といった単語が飛び出してくる。わけがわからない。
 おそらくは扇動している者がいるのだろう、自然にこうして集まったとは思えない。問題は、彼らが武器を持っていることだ。たいていはナイフ、斧といった道具で、なかには石を握り締めている者もいるが、猟銃を持つ者の存在も僅かに見受けられる。





同居人:
「なんなの?これはいったい何の騒ぎ?」

ニコラ:
「たぶん、ボクが市場で買い物してる姿を見た誰かが、良くない勘違いをしたんじゃないかな。やたらに金払いの良い小娘を見て、近所の人たちにあることないこと吹き込んだとか…ボクも迂闊だったよ。目立たないはずがないのに」

同居人:
「彼ら、武器を持っているわ!あなたも…そんなものを持って、どうするつもり?」

ニコラ:
「なんとか説得してみるよ。ひょっとしたら、彼らの誤解を解けるかもしれない。けど、もしものことがあったら…隠れるんだ。ベッドの下とか、クローゼットとか…とにかく、身を隠せる場所に。ひょっとしたら、彼らは部屋に入ってくるかもしれない。物を壊したり、盗んだりするかもしれない。けど、絶対に姿を見せちゃ駄目だ。なにがあっても、彼らが帰るまで出ていったりしちゃ駄目だ。そうすれば、怪我をせずに済むから。いいね?」

 それだけ言うと、ニコラは銃身を切り詰めた散弾銃を掴んで部屋を飛び出した。階段を駆け下りながら、窓の外で大声を張り上げる近隣住民の姿をときおり盗み見る。
 あれは暴徒だ。すでに話し合いの段階を通り過ぎている、彼らはただ自分の主張を押し通し、相手を打ち倒し、自分たちが当然享受できて然るべきと思い込んでいるものを手にすることしか考えていない。
 彼らは目的を達するまで、絶対に退いたりはしないだろう。どんなことをしてでも。あの狂気的な、血走った目…過去に何度も見たことのある目つき。

近隣住民:
「誰かバールを持ってないか!玄関をこじ開けるんだ!」

 略奪が日常化した昨今、厳重に戸締りをしておくのは極当たり前の習慣となっている。とはいえ、こういう状況では僅かな時間を稼ぐ程度の役にしか立たない。
 メリメリと音を立てて金具が飛び、開放された玄関に近隣住民たちが押し寄せてくる。ニコラは彼らのど真ん中に向けて散弾銃を発砲した。






近隣住民:
「銃を撃ってきた!人殺しだ、人殺しィーッ!」

 口々にニコラを批難しながらも、近隣住民は一方に怯む気配を見せない。
 大の大人の男だけではなく、若者、老人、女性、老婆までもが一心不乱に武器を振り回して襲い掛かってくる。そのさまは悪夢的狂気としか言い様がない。
 二つの銃身に装填されていた散弾を撃ち尽くし、ニコラは拳銃に持ち替えて応戦する。再装填している暇はない、狙いをつけている暇さえ…二本の予備弾倉が空になったとき、ニコラはナイフを抜くと決死の覚悟で表に飛び出した。




 直後、散弾銃の閃光が目に飛び込んでくる。
 やられた…!そう思ったが、痛みは感じなかった。アドレナリンのおかげか、いや違う、弾はすべて目の前にいた別の暴徒に命中したのだ。同士討ちだ!
 統制がとれず、闇雲に突撃することにか頭にない彼らは、手にした銃がどこに向いているのか、その先に誰がいるのかさえ気にしていない!
 全力でその場を脱し、物陰に隠れたニコラは二挺の銃に弾を装填すると、ふたたび射撃を開始した。






 拳銃、散弾銃を交互に撃ち、暴徒たちを血の海に沈めていく。
 やがて彼らのうち半数が減ったあたりで、恐れをなしたのか、あるいは扇動していたリーダー格の者が倒れたせいかはわからないが、暴徒たちは散り散りに退散していった。




 助かった…
 安堵のため息をついたニコラは、ふと周囲を見回して心が凍りつく。
 死体だらけだ。
 兵隊でもなんでもない、ただの一般人たちが血まみれで倒れている。あたり一面血だらけだ。戦闘状況下での興奮が醒め、アドレナリンが抜けたいま、ニコラは自分が何をしたのかを冷静に受け止める必要があった。
 正当防衛だったことに疑う余地はない。もし抵抗せずにいたら、いまごろはニコラが亡骸となって路上で無様に転がっていたことだろう。しかし身を守った結果どうなったかといえば、一人が生き延びるかわりに十数人の死体が出来上がったという、ただそれだけの現実が残されたのだった。
 …なぜこんなことになってしまったのだろう?自分は彼らに恨みなど何もないのに。
 暗澹たる気持ちを抱えたまま、ニコラはアパートに戻った。問題が解決したことを同居人に報告しなくては。


 *Intel*
 序盤の難関ミッション。一箇所に留まってモタモタと銃を撃っていると、あっという間に囲まれてボコボコにされるので上手く立ち回る必要がある。近接攻撃を受けると直前のアクションをキャンセルして防御動作に入ってしまううえ、ダメージを受けると出血とスタンを伴うので一方的にやられてしまう。いざとなったら走って敵との距離を離すのも手。
 投石もなかなか厄介で、命中するとスタンを引き起こす。視界外からの投石でスタンし、囲まれてAkhmet is killedされないよう注意しよう。基本的に本作はプレイヤーと敵の性能がフェアな関係にあるので、自分が攻撃を当てづらいと思った敵の動作を覚えておき、自分もそれを実践すること。移動する相手に近接攻撃は当てられないし、遮蔽物で視界を切れば射撃も命中しない。
 もし地雷を入手しているなら、それを利用するのも有効だ。











同居人:
「無事だったの!?」

ニコラ:
「隠れてって言ったのに…でも、もうその必要もないか。うん、ボクは大丈夫。たぶん彼らは、二度とボクらを襲おうなんて気は起こさないんじゃないかな」

同居人:
「銃声が聞こえたわ、それも、たくさん。彼らを殺したの?」

 どう答えれば良いというのだ?
 正当防衛だった、やらなければやられていた、自分が銃を撃たなければ、あなただって殺されていたはずだ。そのほうがよかったのか…そう言うこともできたはずだ。しかしニコラは、そうした言葉で自分の行動を正当化できるとは思えなかった。
 どんなに取り繕ったところで、自分が平然と人を殺せる人間であることに変わりはない。
 自分が戦うべき戦争は終わり、人を殺す必要なんかなくなったはずなのに、まるで自分の中でだけいつまでも戦争が続いているようだ。軍人が敵を殺すように、故郷から遠く離れた地でわけもわからず人を殺し続けている。







ニコラ:
「ボクは…汚れているんだ」





 【続く】





 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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2019/06/03 (Mon)03:09







Marauder

(aka E8: Man of Prey)


Replay: "Bloody Fairy" _04










*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。








同居人:
「なんなの、この酷い臭いは!?」

 市場から戻ったニコラはアパートのキッチンで爆弾作りに励んでいた。
 肥料爆弾を容積15Lのジェリカン二個分、おそらく建物一つ吹っ飛ばすくらいなら充分な量だろう。レシピはうろ覚えだったが、もともと作業自体はそれほど難しいものではないし、多少の熱や衝撃で爆発するほど敏感な代物でもない。
 問題は臭いだ。ニコラに爆弾の作り方を教えたムジャヒディンは、材料の揮発剤が発する刺激臭については何も言ってくれなかった。窓を全開にするのと、同居人がキッチンに乗り込んでくるのはほぼ同時のタイミングだった。

ニコラ:
「えっと、その…料理、失敗しちゃって…」

同居人:
「料理!?これが料理の臭いですって?それに、その…マニキュアの除光液と硝安!?そんなもので何を作っていたの!?知ってるわよ、爆弾でしょう、それ!」

ニコラ:
「ご、ごめん!あのさ、市場の人に頼まれたんだ。ほら、知ってるでしょ、文化ホールにギャングが集まってるって。そいつらをやっつけるのに使うんだって、これを届けたら幾らかファイブが貰えることになってるんだ」

同居人:
「どうしてそんなこと引き受けたりしたの!?」

ニコラ:
「どうしてって…お金は必要だし。弾薬があれば、食べ物が…」

同居人:
「そんなことは聞いてない、どうしてあなたなの?どうして爆弾を作るのがあなたでなければならないの?あなた、他に何も隠してないでしょうね?ヴァレクのことだって…」

ニコラ:
「隠してないって!爆弾を作って届けるだけだよ、それだけだ。いまから出かけてくるけど…そうだ、帰ってきたらお茶、飲もうよ!あのインド人が象に乗ってる箱のやつ、好きでしょ?買ってくるよ」

 同居人はニコラの過去を知らない。メモの一つも見ずにキッチンで爆弾を作る姿に疑問を抱くなというのが無理な話だ。

同居人:
「責めてるわけじゃないのよ。ただ、あなたが心配なの…本当にそれをただ市場の人に届けるだけなのね?それ以外に何かをするわけじゃないのね?危険はなにもないのね?お願いだから、私に対して嘘をついたりしないでちょうだい」

ニコラ:
「大丈夫だって、危険なんかなにもないよ。うん、嘘なんかつかない」

 ニコラは自己嫌悪に苛まれながら、どうにか平静を保って言った。
 最悪だ…自分は最低の人間だ。もう嘘をついた。ニコラは逃げるように同居人に背を向けると、足早にアパートを出て文化ホールへ向かった。30kgの爆弾と、心に重荷を抱えたまま。















 文化ホールはちょっとした宮殿のようだった。周辺には土嚢が積み上げられ、武装した男たちが油断なく周囲に目を光らせている。おそらくは元軍人だろう、お守りを任されたチンピラと、歩哨の経験がある兵隊では目つきや動きがまるで違う。
 見つからずに侵入するのは無理なように見えた。ニコラはゆっくりとホールに近づく。







ギャング:
「止まれ、誰何?」

ニコラ:
「あの、修理屋です。なんでも直せますよ、テレビとか、水道とか。あ、水は通ってないか…バネの悪いベッドとかありません?お安くしておきますよ、旦那さまがた」

ギャング:
「修理屋?おまえがか、小僧?それでデカい荷物背負ってるのか。オーブンは直せるか?なんでも冷たいまま食うのは飽き飽きだ。入れてやるが、手早く済ませろよ。怪しい動きをしたら鉛弾をぶち込んで犬の餌だからな」


 *Intel*
 実際のゲームプレイで施設に侵入する場合、通りの向かい側に立っている乞食の服を着て変装する必要がある。乞食は煙草か食料、或いはファイブ6発を要求するので、適当なアイテムを渡して服を譲ってもらう。殺して奪う選択肢もあるが、乞食は敵対すると物凄い早さで逃げていくうえ、乞食のいる場所はギャングの視界が届くので、まず無理だと考えたほうがいい。
 ギャングはプレイヤーが武器を持つor背負っている姿を見ると問答無用で敵対状態になる。このミッションではクリアするだけなら一発も撃つ必要がないので、平和的に解決するつもりなら武器を自宅の金庫に預けておいたほうがいいかもしれない。
 …そもそも、なぜ技術者を装うために乞食に変装する必要があるのかはわからないが……










 ホールの内部は多数のギャングが銃を手に巡回していた。ものものしい雰囲気のなか、ニコラは手始めに二階のオーブンに一個目の爆弾を仕掛け、続いて一階のATMに二個目の爆弾を仕掛ける。この順番でなければ上手くいかない、オーブンの中に仕掛けるぶんには人目につかないが、ATMの鍵を開けて中に爆弾を置くのは無理なので、ATMの傍に爆弾を置く形になるが、それは当然、人目のつく場所に爆弾を放置することになる。


 *Intel*
 ATMに爆弾を設置するさい、正面玄関の扉を開けたままにしていると表のギャングに爆弾を仕掛けたことがばれ、その場で戦闘状態に突入してしまう。爆弾を仕掛けるまえに玄関の扉を閉めておくこと。うまくいけばATMに爆弾を設置した瞬間にカットシーンへ以降し、ホールが吹っ飛ぶ。
 武器を手に持つor背負っている状態で目撃される、玄関扉が開いた状態でATMに爆弾を仕掛ける、の二点が敵対フラグ成立の条件のようで、他の行動(爆弾を手に持つ、爆弾を仕掛ける瞬間を目撃される、敵に近づく、鍵を開けるor鍵を開けているところを見られる、等)ではギャングに素性が怪しまれることはなかった。
 今回はロールプレイ重視のため省いたが、施設内のアイテムをすべて回収してから爆弾を仕掛けても何も問題はないようだ。
 建物を爆破した場合、敵は死亡ではなく削除される処理が行われるため、死体からアイテムを回収することはできなくなる。アイテムや経験値が欲しい場合は小細工抜きで戦って敵を全滅させても構わない。








 爆弾を仕掛け終え、建物から離れたニコラは爆発と同時にギャングたちがばらばらに吹っ飛ぶか、あるいは瓦礫の下敷きになったことを確認する。
 彼らが他人に対し悪さをすることは二度とないだろうが、悪党を退治したことに対する達成感はなく、ニコラは鈍い疲労感を覚え、ため息をついた。
 ボスニアでは、敵は家族や友人を殺した憎むべき存在であり、誰に頼まれるでもなく銃を手に取って戦う明確な動機があった。ただ、今回はそうではない。個人的な恨みがあるわけでも、迫害を受けたわけでもない相手を、ただ漠然とした理由で殺している…
 戦争では、戦争中ですら戦う相手を選んでいたのに、戦場から離れたいま、自分は相手を選ばずに見境なく人を殺して回っているのか……?
 そこまで考えたところで、ニコラはかぶりを振った。
 終わりにしよう、こういうのは今回限りにしよう。どれだけ貧しく飢えようとも、それで誰かを傷つけたり、まして殺したりするのは、絶対にいけないことだ。同居人のためにも。
 そう胸に誓いつつ、ニコラは誰にも姿を見られないうちに現場から離れた。











 市場で買い物を済ませ、アパートに戻ったニコラは同居人の相も変わらずの渋面に正面から向き合わなければならなかった。







同居人:
「さっき、物凄い爆発があったわね」

ニコラ:
「えっ?ああー、うん。たぶん、誰かがうまくやったんじゃないかな。ボクの作った爆弾で。まあ、ボクには関係ないけど」

同居人:
「あなたがやったんじゃないのね?本当に?」

ニコラ:
「そんなわけないじゃないか、そんな危険なこと、ボクにはできないよ。帰るのが遅れたのは、市場で買い物をしてたからさ。何を買おうかなって迷っちゃって、ほら、爆弾を届けて幾らか貰ったからね。
約束通り、紅茶を買ってきたよ!それから牛肉の缶詰と、シリアルと…小麦粉もある!ねぇ、今度なにか作ってよ!爆弾じゃなくって、その、普通の女の子が作るようなものを。とにかく、これでしばらくは食べ物に困らないよ」

同居人:
「そうね、えぇ。その通りね…」

 わざとらしく明るい態度で振る舞うニコラに、同居人は沈鬱な面持ちで相槌を打つ。
 誤魔化せているはずはなかった。そのことはニコラにもわかっていた。しかし大切なのは、とにもかくにも現状、食べるものには困らない、ということだった。二人とも。
 水も電気も止まり、社会基盤が崩壊し、缶詰一つを巡って人々が殺しあうような状況では、それは本当に大切なことなのだ…






 【続く】











 *Intel*
 本作に登場する紅茶のパッケージ、練乳の缶詰のラベルに見覚えがある人がいるかもしれない。
 これらは以前、本ブログで記事を作成したことがある「Day R Survival」に登場したものと酷似しており、調査の結果、実在の製品がモデルになっていることが判明した。
 紅茶は「со слоном(with an elephant)」と呼ばれるシリーズで、1893年操業の「Московская чайная фабрика(Moscow Tea Factory)」社の製品。現在も製造が続いているベストセラーである。Day Rに登場したものは象が青く、本作のものは象が赤いが、これはグレードによって二種類のパッケージが存在しているため。赤い象のほうが値段が高い。
 練乳は「Рогачёвский молочноконсервный комбинат(Rogachevsky milk canning plant)」というベラルーシの工場で製造されたもので、こちらも1936年から操業・現在まで製造が続いているベストセラーである。ロシアにおける練乳は市民生活と密接に関わっており、戦時下の配給品や政府の備蓄食料の一品目に指定されているほど。またロシアでは練乳を加熱してキャラメル状にしたものを食する変わった風習があり、Day Rで練乳を沸騰させて作成するBoiled Milkはこれを再現したものと思われる。

 また本作に登場するロシア煙草二種のうち、バルト運河の地図がプリントされたものは「Беломор(Belomor)」あるいは「Беломоркана́л(Belomorkanal)」と呼ばれる銘柄で、1932年からレニングラードのラフェルム煙草工場で製造されていた実在の煙草である。ヨーロッパで入手できるもっとも安価で強い煙草とされた(ニコチン1.5mg・タール30mg)。
 また宇宙飛行士がデザインされたパッケージ(ゲーム中では「≪Astral≫ cigarettes」と表記される)は「Космос(Kosmos)」と呼ばれる銘柄で、通常は宇宙ロケットをモチーフにしたデザインで知られる(おそらくボストーク1号をモチーフにしている)。宇宙開発はソビエトが世界に誇る技術であり、宇宙ロケットやアストロノーツがプリントされたパッケージはロシア国民の愛国心に訴えるものであったのだろう。ゲーム中に登場するバージョンも実在は確認できたが、バリエーション違いかコレクターパッケージ的なものかは調べきれなかった。

 おそらくは今回紹介したもの以外にも実在の製品をモチーフにしたアイテムが存在するはずなので、興味がある人は調べてみては如何だろうか。



 *モスクワ茶工場・公式HP*
moschay.ru/

 *ロガチェフスキーMKK・公式HP*
rmkk.by/en/







 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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2019/05/31 (Fri)03:00







Marauder

(aka E8: Man of Prey)


Replay: "Bloody Fairy" _03










*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。








 アパートに帰ると、同居人が険しい顔つきでニコラを迎えた。
 おそらくは年頃の娘がヴァレクのようなゴロツキとつるんで悪さをしているのが気に入らないのだろう。彼女とはロシアに来たときにたまたま知り合い、家賃を折半することで部屋をシェアしているだけの関係だが、どうにも波長がうまく合わない。そもそも、ニコラはロシア人の女性と仲良くなれた試しがない。
 悪い人間ではないのだ。むしろ、心根の優しい女性と言ってもいい。ただ、少しばかり口やかましく、心配性で、いらぬ世話を焼きすぎるきらいがある。
 ヴァレクを殺したなどと言った日には、どんな反応を見せるかわかったものではない。放蕩娘をたしなめるような態度で嫌味をこぼす同居人に、ニコラは疲れた表情で適当に相槌を打ちながら寝室へ向かった。


 *Intel*
 本来ならばこの女性は主人公Akhmetの妻なのだが、今回のリプレイでは主人公のバックグラウンド変更に伴い、設定を変更させて頂いた。
 口煩い妻と粗野な夫という構図はロシア文学あるあるであり、普段は喧嘩ばかりしているものの時折見せる互いの深い愛情に確かな絆を見出すといった流れは、まさしく「喧嘩するほど仲が良い」といったところであろうか。犬も喰わぬ夫婦喧嘩を見せられる第三者からすればたまったものではないが。















 朝を迎え、ニコラは先日の外出で手に入れたものを売るために市場へ向かうことにした。
 出かけようとするニコラに、同居人が心配そうに声をかけてくる。どうやら最近、近くの文化ホールをギャングたちが占拠したというのだ。メンバーの中には元警官や軍人も含まれており、その動きは組織化されているという。現在は武装を強化し、文化ホールにバリケードや機銃陣地を築いて防備を強化しているところらしい。もし彼らが付近一帯を支配するようになれば治安のさらなる悪化は避けられず、別の土地へ移動せざるを得なくなるかもしれない。















 市場はアパートの東、ウーリツァ・コスモナフトフの廃校内にあるバスケットコートで開かれている。
 ただし誰でも入れるわけではなく、入場料として5.45x39mm弾が一発必要になる。
 ロシア国内ではすでに通常の貨幣はその価値を失い、人々は弾薬を通貨のかわりに使用している。5.45x39mm弾、通称「ファイブ」を基準に価値1として扱い、9x18mmマカロフ弾、通称「ナイン」をファイブの半値である価値0.5、7.62x39mm弾を「セブン」と呼び価値2として扱っている。







 もし市場へ向かうまえにどうしてもファイブが確保できなかった場合、入り口の乞食が他の弾薬や食料と引き換えにファイブを都合してくれるだろう。ただし彼の要求するレートは法外も甚だしく、なるべくなら他の手段で手に入れることを推奨する。
 敷地内では武装した多くの警備員が目を光らせており、市場を利用するにせよ、しないにせよ、武器を手に持ったまま彼らの前を歩くのは懸命ではない。

 それでは、市場を切り盛りするトレーダーたちを紹介していこう。







 サネック、あるいは「オセット人」と呼ばれるこの男は食料品を扱っており、また特別な上客のために高級な酒や煙草を探している。もしウォッカやウィスキー、あるいはマルボロのような外国産の煙草を持っているなら、彼はそれを高値で買い取ってくれるだろう(言うまでもないが、粗悪な密造酒やロシア製の煙草に彼は関心がない)。







 オレグ・ペトロビッチは酒や煙草といった嗜好品を扱っている。
 彼自身は特別な取引を持っていないが、事情通である彼に街の状況を尋ねることは無駄ではないだろう。ときには耳寄りな情報や、思ってもみない話を聞けるかもしれない…


ニコラ:
「文化ホールをギャングが占拠したと聞いたけど、そのことについて市場の人たちはどう考えてるのかな」

オレグ:
「そうだな…ところで君は、爆弾を作れるか?」

ニコラ:
「…!?えーと。なんでそんな質問をしようと思ったのかがまずわからないけど、もしボクが爆弾を作れるとして、話はどんなふうに広がるのかな」

オレグ:
「噂によると、君はサラエボ出身らしいじゃないか。あの紛争で民兵として、多くの…それはもう、多くのセルビア人を殺したと。その行為そのものをどうこう言う気はない。その噂が本当なら、つまり君は戦う方法を知っているということだ。あるいはそう、爆弾の作り方の一つも知ってるのじゃないか、とね。
文化センターを占拠したギャングたちについては我々もひどく頭を悩ませている。もし彼らが今のペースで軍備の強化を進めた場合、おそらくはNATO軍でさえ迂闊に手出しができなくなるだろう。
ギャングたちが地域一帯を支配したら、彼らはあらゆるものを略奪するようになるだろう。あるいは見逃すかわりに高い税の支払いを強いるかもしれない。そうなったら、この市場も存続できなくなる。
現状でさえ、ギャングたちの存在は脅威だ。正面から撃ち合ったら多くの犠牲者が出るに違いない。だから、そう、建物にこっそり侵入して、爆弾で建物ごと吹っ飛ばす…文化ホールの要塞化が進めば、それも難しくなる。
もし君が文化ホールのギャングたちの面倒を見てくれるなら、相応の報酬を支払おう。市場の商人たちからカンパしたファイブがある、それを君に進呈しよう」

ニコラ:
「…やってみる」


 思ってもみない展開になった。気の進む話ではなかったが、それでもギャングたちの問題についてはニコラも無関係ではいられない。この土地に居座り続ける理由はないが、避難したところで安全な住居や食料を確保できるあてもなく、ならば見知った顔のいる土地に留まっていたほうが懸命だとニコラは考えていた。
 かつてサラエボで戦っていたとき、たまたま知り合ったムジャヒディンから爆薬の作り方を教わったことがあった。とはいえニコラ自身は作ったことも、使ったこともなかったが、材料さえあれば家庭用の台所で作れるようなものだったと記憶していた。
 材料は市場の誰かが売っているはずだ。







 元医者のゲンナジーは医療品を取り扱っている。商品を売買する以外にも、もしここへ訪れたときに怪我を負っていた場合、彼に治療してもらうことができるだろう。もちろん、無料というわけにはいかないが。







 武器商人のアリックは各種銃火器を取り扱っている。
 注意すべき点として、彼が扱っている銃火器は必ずしも状態が良いわけではない。どちらかといえば銃本体よりも弾倉やサプレッサー、レーザーアタッチメントといったアクセサリ類の購入がメインになるはずだ。







 古着屋のマーシャはチェストリグやヘルメット、バックパックといった装備を扱っている。
 また、彼女は服の材料にするための犬の毛皮を欲している。犬の毛皮?そう、このあたりには飢えた野犬の存在が脅威となっている。もし毛皮を剥いで持っていけば、マーシャはハーフマガジン=弾倉半分、15発のファイブを報酬として支払ってくれる。







 「教授」は斧やナイフ、銃器清掃キットやロックピックといった雑貨を扱っている。
 また彼は銃火器のカスタマイズも行っており、もし改造可能な銃器を所持していた場合、彼に相応のファイブを支払えば改良を施してくれるはずだ。
 教授はジャンクパーツから道具を製作する技術者であり、もしリモコンや電気ポット、カーステレオといった電気製品を持っていた場合、それらを特別価格で買い取ってくれることだろう。







 爆弾の材料は教授が扱っている。肥料用の硝酸アンモニウム、有機化合物のアセトンを購入し、代金の50ファイブを支払おう。アイテムを個数指定する場合、右クリックを押してDivideを選択する。


 *Intel*
 オセット人、マーシャ、教授の買い取りクエストは専用の会話を発生させる必要がある。以後は対象となるアイテムを所持している場合に専用の選択肢が表示されるので、それを選ぶ。通常よりも高値で売れるだけでなく経験値も入手できるので、経験値の入手機会が有限である本作では可能な限り活用していきたい。
 文化ホールへ爆弾を仕掛けるクエストについて、本リプレイではオレグから依頼されたことになっているが、実際はAkhmetが自発的に行うことであり、当然ながら報酬等は発生しない。




 【続く】





 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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2019/05/28 (Tue)01:55







Marauder

(aka E8: Man of Prey)


Replay: "Bloody Fairy" _02










*注意*本リプレイでは主人公のキャラクターモデルを変更し、
設定や一部ストーリーを改変しています。










 ヴァレクに置き去りにされ、軍の倉庫に取り残されたニコラ。戻ってきた兵士たちは見たところ軽装で、防弾ベストやライフルといった戦闘装備を身につけている様子はない。人数はせいぜい五人前後だろう。とはいえ楽観視できる状況ではなく、また無分別に軍人を攻撃するのも躊躇われる。なにせ、悪いのは盗みに入ったこちら側なのだ。
 敷地の外周に沿って移動し、侵入したときと同じように壁の崩れた箇所から脱出すれば、誰にも撃たれず、また誰も撃たずにこの場から脱出できるはずだ。


 *Intel*
 初期装備は狩猟用の上下二連散弾銃に弾薬、そして狩猟用ナイフだけだ。しかし、もしあなたがチュートリアルをしっかりこなしているか、あるいは倉庫内の探索を済ませている場合、マカロフ拳銃や包帯、そして背嚢といった役立つアイテムを追加で入手していることだろう。また、鍵のかかったストレージをバールでこじ開ける方法も学んだはずである。…それが成功したかどうかはともかくとして。
 軍の敷地内には他にも幾つかのアイテムが隠されている。今回はそれらを無視して脱出を最優先したが、もしあなたが取得可能なアイテムや経験値を見過ごすことができない絶滅主義者であるなら、軍人を皆殺しにし、アイテムをすべて奪取しても構わない。









 逃げる途中で軍人と出くわしたものの、ニコラは足を止めることなく全力疾走を続ける。背後から銃声が響き、マカロフ弾が背中を掠めたが、命中はしなかった。ちゃちなコンパクトオートで移動目標を狙撃するのは難しいものである、たとえそれが10m以内だったとしても。
 敷地から出たあたりで、ニコラを追う軍人たちの足音がにわかに鈍くなった。どうやら深追いをする気はないようだ。
 背中から撃たれる心配はなくなったようなので、ヴァレクの足取りを追うことにしよう。本来ならば二人で東にある集積所へ向かい、そこで荷物の仕分けをする予定だったが、一人で逃げ出したあとでも彼はそこへ向かったろうか?







 坂道を上がったとき、人の気配を感じたニコラは咄嗟に物陰へ身を隠した。
 乗用車がスピードを上げてカーブを曲がった直後、数人の無法者が散弾銃、そして短機関銃を車に向けて見境なしにぶっ放す。フロントガラスが穴だらけになり、車は電柱に突っ込んで停止した。
 無法者たちは車に近づくと、そのままガソリンの漏れた車に火を放った。略奪ですらない、無軌道な暴力の発露にニコラは嫌悪を覚える。どうやら彼らに罪悪感といった概念はないらしい。
 彼らの服装を観察し、ニコラはあることに気づく…なんてことだ、彼らは警官だ!
 本来ならば市民を守るべき警官が、あろうことか暴徒と化し無闇に人々を傷つけている。こんなことってあるだろうか?
 警官たちはニコラの存在に気がついていない、おそらく奇襲を仕掛けることは可能だろう。しかしこちらの武器は装弾数が二発の散弾銃、それに対し相手は三人だ。二発で三人を倒せるだろうか、散弾銃だとして?
 弾を切らしたあとですぐ拳銃にスイッチすれば反撃の隙を与えることなく制圧できるだろうか?脅威は短機関銃を持った男だ、彼を真っ先に排除したとして、他の警官に散弾銃を見舞われたら…
 いいや…ニコラはかぶりを振る、分が悪い。それに、自分に彼らの命を奪うどんな権利があるというのだ?彼らが悪人だったとして?それは正当防衛ですらない先制攻撃を仕掛ける理由になるだろうか?
 ニコラは構えかけた銃を降ろす、静かに迂回すれば彼らに見つからず集積所へ向かうことは可能のはずだ。おそらく、見つかれば戦闘になるだろう。なら、見つからなければいい。


 *Intel*
 坂道の手前にあるバス亭のベンチや、坂を上がった先にあるワゴン内にはスーツケースやロッカーといった調査可能なストレージが存在する。他にも机や箱など調べてアイテムを入手するといったスカベンジングが本作の肝であり、丁寧にマップ内を探索することでゲームを有利に進めていくことができる。そうして回収したアイテムは後々バザーで売却できる。
 とはいうもののサバイバル系のゲームとは違い空腹や渇きといった概念はなく、武器や弾薬は基本的に向かう先で入手できるため、効率最優先でアイテムや資金を回収しておかないと詰むといったバランスではない。
 なお一般市民を襲撃した警官についてだが、もちろん、倒して経験値の足しにすることもできる。ただし、本作はマップ内に存在する敵を必ずしも全滅させる必要はない、という点は覚えておいて損はないだろう。







 集積所の前にはヴァレクのワゴン車が停めてあった。バックドアが開けっ放しになっており、車内に大量の物資が積み込まれている様子が遠目からも見て取れる。
 おそらくヴァレクは集積所の中にいるのだろう、しかし、何かがおかしい…
 二階の窓の向こう側に人影が見える。ヴァレクではない、が以前に見かけたことがあった。ヴァレクの友人、あるいは知人か。銃を手に、何かを警戒するように窓の外を監視しているようだった。
 たんに軍人の追跡を恐れているのかもしれない、あるいは、見捨てられたことを根に持って散弾銃を手に乗り込んでくるであろう赤ずきんの小さな友人を厄介払いすることを思いついたか。

 建物は通常の入り口のほかに、梯子を上って屋上からも侵入できるようだ。とはいえ、まだ敵になったと決まったわけではない友人と会うのに不法侵入の真似事をする必要もないだろう。ニコラは地上の扉から建物に入り、階段を上がって二階に到着する。









 ヴァレクの友人はニコラを見ると、躊躇無く銃口を向けてきた。彼らの表情を見て、おそらくは警告の言葉より先に銃弾が脳天に送り込まれることを直感したニコラは本能的に散弾銃の引き金をひく。
 こうなってはもう、状況が穏便に済む見込みはなかった。
 見知らぬ友人たちを倒し、ヴァレクも倒す。彼らは一言も発さなかった。何を考えているのかはわからなかった、明確な殺意を抱いていること以外は。


 *Intel*
 Jagged Allianceフォロワーであった従来シリーズ同様、本作はライフルや散弾銃より拳銃のほうが早く撃つことができる。またダメージを受けると出血やスタンといったデバフを伴うため、先に攻撃を当てたほうが勝つと考えていい。
 今回のような屋内戦では散弾銃よりも拳銃のほうが有利になることもある。しかしフルサイズの散弾銃でも、銃を構えた状態からのスナップショットの速さは目を見張るものがある。
 Altキーを使ったサイドステップ等も駆使しつつ、上手く立ち回っていきたい。







 ヴァレクが無条件の信頼に値しない男だったのは確かだ。彼にはどこか油断ならないところがあった、だからこそニコラは彼に親愛の情を抱くことはなかった。あくまでビジネスライクな関係だったのだ。
 しかし、だからといって、こんな結果になるとはまったく思ってもみなかった。たしかに今、ロシアは混乱している…略奪や殺人が横行し、まったくの無法地帯と化している。しかし自分がその流儀に染まる必要はないと、どこか他人事のように考えていたこともまた、事実であった。


 *Intel*
 部屋の中を探索し、死体からアイテムを回収するのも忘れずに。
 屋内には鍵のかかった扉が二箇所あり、通常はバールかロックピックを使ってこじ開けることになるが、じつは扉はショットガン等を使ってぶち破ることができる。これによってロックピックを節約することができるだろう。たとえ戦闘に使わなくとも、ドアブリーチ用にソウドオフを携帯しておくと役に立つ。
 なお鍵のかかったストレージもショットガンで無理矢理開けることが可能だが、ショットガンを使って鍵を破壊した場合、中身も破壊された扱いになるのか、アイテムを入手することができなくなる。







 ヴァレクを殺したのは正当防衛だ。それは間違いない。
 正当な理由があったにも関わらず、ニコラの気はまったく晴れることがなかった。かつて紛争で多くの人間を殺したというのに、かつては敵を殺すことに使命感すら覚えていたというのに、いま心に去来するのは暗く深い後悔の念だけだ。
 彼らはセルビア人ではない。ただ一つ、その言葉だけを繰り返し心の中で呟き続けていた。
 彼らはセルビア人ではない…





 【続く】





 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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