主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2020/04/30 (Thu)19:25
「さてさて、お待ちかねの射的タイムだ!射撃場が嫌いなやつなんかいない、だろ?」
「私、べつに銃器マニアではないんですけどね…」
診療所を出た二人は、基地のじつに四分の一を占める広大な射撃レーンへと足を向けた。拳銃、突撃銃、狙撃銃とカテゴリ別に設置距離の異なる人型の標的プレートが並び、金属製のターゲットの表面には無数の弾痕が刻まれている。
ナターシャはテーブルの上に置いてある拳銃を手に取り、装弾を確かめる。遊底の引きがいやに軽く、妙な弾薬が装填されていることに気づいたナターシャは、ボール紙製の弾薬箱に"訓練用ゴム弾"の表記を見た。
「ゴム弾?」
「装薬量の少ない訓練用弾丸だ」アルフが答えた。
「スライドが軽いのもそれに関係が?」ナターシャが訊き返す。
「スプリングを弱いものに交換してある。でないと作動不良を起こすからな、あくまでも訓練用で暴徒鎮圧用じゃない。ゴム弾でも、初速が高いと危険な威力になる」
「人道的ですね。命中精度のほうは?」
「練習用には充分だ…としか言えないな。どちらかといえば銃器の操作に慣れるためのもので、シリアスに腕を競うためのもんじゃない。マカロフを扱ったことは?」
「ありますけど…これ、マカロフですか?」
「そうだが?」
「なんか、私の知っているマカロフと形が違うような…」
(本作に登場するマカロフのアイコン、及び3Dモデルはなぜかドイツ製のHK4がベースになっている。HK4はH&K社が最初に製造した拳銃であり、設計は同社の協同設立者であるアレックス・ザイデルの手による。モーゼルHScと機構が似ているが、これは設計者が同一人物であるため。ドイツ警察にP11の名称で納入され、パーツ交換によって四種類の口径を使い分けることができるが、勿論9x18mmマカロフ弾を扱うパーツは存在しない)
ゴム弾を装填し、ナターシャは三つの人型ターゲットに向けて撃つ。命中と同時に乾いた金属音が響き、マンターゲットがパタンと後ろに倒れた。おそらく、人体に当たっても無傷では済まないだろう。
一発も外すことなく全弾をターゲットに命中させ、今度は隣のレーンに置いてある突撃銃を手に取った。
ロシア製のAK-47だ。かつてナターシャが扱い慣れていたAK-74に比べるといささか重く、しかも形式の古い初期型だった。こういう骨董品はすべて外国に流れたものと思っていたが。
こちらも一発たりと撃ち損じることなく全てのターゲットを倒し、次のレーンで手にしたのはSVD狙撃銃だった。搭載されているPSO-1スコープを覗き、西側のライフル・スコープとはまるでレイアウトの異なるレティクルを確認する。
実のところ、これまで扱った三種類の銃器のうちでもっとも馴染みがあるのはこのSVDだった。そのことが慢心に繋がったのかはわからないが、中距離にセッティングされたターゲットを撃ったとき、はじめてナターシャは弾を外してしまった。
「あまり納得がいってないようだな」すべての標的を撃ち倒し、眉間に皺を寄せるナターシャにアルフが声をかける。
「ええ。だいぶ鈍っています、なにぶん、十年以上は銃器に触れてさえいなかったので…あるいは、加齢のせいですかね?任務中に少しは勘を取り戻せると良いのですが」ため息混じりにナターシャは言った。
最後のレーンで行った投擲物の訓練結果はさらに悲惨なものだった。ゴム製の粒弾をばら撒くF1手榴弾のレプリカを使ったのだが、思い通りの場所に投げ込めなかったどころか、一度など足元のすぐ近くに落としてしまった。
(本プレイ記におけるナターシャは長い廃墟生活で能力が大幅に落ちており、レベルアップとともに本来の能力=戦闘勘を取り戻していく、という設定)
がっくりと肩を落としたナターシャは、洒落か本気か手榴弾のかわりに投げるよう用意された煉瓦ブロックに頭をぶつけながら言った。
「すいません、煙草あります…?」
「ほら」
【 Ciggy: Recipe 】
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+=
(手巻き煙草はトイレットペーパーのほか、古紙を使っても製作可能。軽量ながら売値がそれなりに高いため換金用アイテムとして重宝するほか、回復アイテムと同じ要領でNPCに大量投与し暗殺するというドラムーチェばりのテクニックが存在する)
「一服つけたら戦闘訓練に行くぞ」
「え?ああ、はい」
基地の中心、フェンスに囲まれ土嚢やらドラム缶が無造作に積んである謎のスペースで休憩のような何かをしていた人相の悪い二人組を相手にタッグマッチを挑むナターシャとアルフ。
おもむろに訓練用ピストルを抜く二人組、それに対し手製ナックルを嵌めてナターシャはインファイトを挑む。ゴム弾を喰らいつつ相手をボコボコに殴るナターシャの背後で、アルフがいそいそと後方へ下がっていった。実質の二対一である。
二人組のうちの片方を殴り倒したあたりでお開きとなり、ゴム弾を受けた痕をさすりながらナターシャは戦闘に参加する意志を見せなかったアルフを睨みつけた。
「私が迂闊でした。弾薬を分け合ったこともない男に背中を任せるなど」
「弾薬を…なんだって?」
「なんでもありません」
たったいまの言葉が、かつて部隊内で流行った詩の一節からの引用であることをわざわざ説明したものだろうか、とナターシャは唸る。一方でアルフも戦闘開始から早々に背を向けて逃げ出したのは気紛れなAIのせいであり自分のイメージを損なった点について開発者に抗議を(以下略 実際プレイ中にこんな有り様になっちまったんだから仕方ないじゃないか
「悪かったよ。俺も本意じゃなかった、いや本当に。メシでも食って機嫌を直してくれ、誰かがビーフシチューの缶を置きっぱなしにしていったようだ。そこのキャンプファイアで温めよう、コーヒーと紅茶もある」
いささかに疲れた様子でアルフがフィールドキッチン(野外炊事車)の近くで炊かれている焚き火へとナターシャを誘導した。誰が用意したのかはわからないが、薪の無駄だな、とナターシャは思った。
おそらくは椅子がわりに置かれているのであろう、切り株の上に見慣れた缶が放置されている。ツションカと呼ばれる、軍用の携行食だ。つぶらな瞳の牛のシンボルがナターシャを見返していた。やたらと古びたラベルを見るに、戦前のテクノロジーと材料と思い出が詰まっているものと思われた。さらによく観察すると、すこし缶が膨らんでいるようにも見える。
「食べれるんですか、これ」ナターシャがアルフに尋ねた。
「少しばかりの放射能入りだが、なに、空港でX線検査を受けたとでも思えばいい。おかげで雑菌の繁殖も抑えられているし、クリーンなもんだ」
「えぇ……」
近くのテーブルに乗っていた紅茶とコーヒーも共に戦前のものと思われたが、なぜだかこちらは缶詰ほど嫌悪感は抱かなかった。本物の茶葉、本物のコーヒー豆だ。代用品やインスタントではない。
(紅茶とコーヒーはキャンプでのみ調理が可能で、紅茶は四時間のEndurance+1、コーヒーは三時間のStrength+1バフを受けることができる。またキャンプでの調理は少量ではあるが経験値も獲得できるため、後生大事に取っておかず積極的に使用していくべきだろう)
最終仕上げはリング上でのアルフとのタイマン勝負だった。逞しい肉体を持つアルフは、おそらく年齢的にも兵士としてもっとも脂の乗っている時期であろう。経験と知識、そして鍛えられた身体のバランスがもっとも整っている状態だ。
過去に何度も組織の特殊作戦に従事しているに違いない、いままでナターシャがATOMで出会ったなかでも最も戦闘能力の高い人物であることに疑いの余地はなかった。
たんなる練習がわりの組み手だったはずだが、気づくと二人とも加減や容赦など考えないようになっていた。それはそうだ、訓練学校での格闘技教練でも相手の怪我や負傷をいちいち心配して打撃を躊躇することなどなかった。かつてナターシャが習い、実践し、そしてアルフも同等の訓練を受けているであろう技術は、スポーツ格闘などではなく、人殺しの手段なのだ。
はじめはアルフも手加減していたが…戦っているうちに、ナターシャが自己申告する通りの"本物の兵隊"であることを肌で理解したアルフは、女だから、新人だからという思い込みを捨てて挑んでいた。
けっきょく、どっちが勝ったのか、あるいは負けたのかはわからなかったが…荒い息を吐きながら膝をつくナターシャに、アルフが手を差し伸べた。
「鈍っているにしては、やるじゃないか」
「"テスト"は合格ですか?」
「これから君の前に立ち塞がるやつの不運に同情するよ」
さっきまでは互いに本気で打ち合っていたが、戦いが終わったいま、不思議と遺恨やわだかまりは残っていなかった。リングに上がる前に抱いていた不信さえも。
「ああ、痛ぇ…そろそろブリーフィングの時間だな。メインバンカーへ行くといい、どんな任務を与えられるかはわからんが…まあ、君なら上手くやれるだろう」ナターシャに殴られた顎をさすりながらアルフが言う。
「その期待に応えないといけませんね」若干足元をふらつかせながらもナターシャが笑顔で返す。
さて、そろそろ自分の運命について尋ねる時間だ。
ナターシャはアルフに別れを告げると、メインバンカーの入り口へと向かった。魔物が大口を開けて待ち構えているように見えたのは、たんなる弱気の表出だろうか、と思いながら。
(レベル7のAlfは高い戦闘能力を持ち、勝つためには装備選択が重要となる。おそらくはQuality Knuckledusterの使用がもっとも勝率が高くなるだろう。事前にAlfに弾切れの銃器を渡しておくという小技もあるが、どのみち経験値の入手はできないので、勝っても負けてもあまり意味はない…あくまで戦闘メカニックのテスト機会であると割り切ろう)
[次回へつづく]
どうも、グレアムです。なんか途中で文章が投げやり気味になってますが、シリアスで通すにはチュートリアル的ご都合主義が多過ぎてツッコミどころ満載だったからしょーがねぇじゃんかよう!なるべく作中でメタ発言はしたくないんだけどなあ。いや本当に。
本作のチュートリアルの舞台となるATOM Base、またの名をTraining Campは色々と手の込んだ作りとなっていて、一連の記事で触れたように様々な訓練を受けられるほか、目立たない場所にアイテムが隠されていたり、レシピ製作等で経験値を入手できるので、早く冒険に出たいという気持ちを抑えて色々試してみるのがいいんじゃないかと思います。
次回からようやく本編がはじまります。
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