主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2014/06/21 (Sat)08:13
どうも、グレアムです。今日もLost Alphaいっちょういってみよう。
Guideに会いに行け?どうせまたあの教会へ戻れっていうんだろハイハイワロスワロス。とか思いながらマーカーに従って惰性で移動してたら新MAPに到達するとかこのMODマジで油断できない。
自分が通ったルートはいまMilitaryがMonolith掃討のために封鎖しているから使えない、Guideに協力してもらい別ルートからPripyatに侵入してくれ、というGhostの指示に従い向かった先はCS終盤で訪れることになったHospital。展開としてはまったく自然な流れだ。
しかしここで激戦が展開されることはなく、少数のMutantと戦闘したのちGuideとはHospital出口付近で別れることに。「Remenber to trust your instincts(自分の本能を信じろ)」とか言われましてもですねぇ…
そして、この先はGuideの言う通り悪夢のような迷宮の様相を呈している。一瞬で被爆線量メーターがMAXに振り切れる地点が至るところに存在しており、この時点で相応の装備を持ち込んでいなければ詰み確実である。
ちなみにPripyatへ向かう移動ポイントを目指したとき、「Entrance sealed off due to a cave int」という文章とともに追い返される地点があるが、これはハズレのルートだ。正解の扉はまったく違う場所にあり、かなり引き返す必要がある。
さて正解の扉の近くには暗証番号を入力する端末があり、今度は暗証番号を探すタスクが追加される。このとき探すべき死体こそ、先に書いたハズレのルートの近くにある。もっとも探すべき死体はちょっと見つけにくい場所にある(レーダーに表示される、一体だけ存在する死体…ではない!その近くではある)が、これはちゃんとマーカーが出るので落ち着いて捜索しよう。ヒントは…「登れ!」。
こいつだ。
で、死体の近くに落ちている書類(死体そのものはオブジェクト扱いで調べることができない)を取得すると暗証番号が入手できる。が、肝心の暗証番号を入力する段階で端末を調べることができないという事態に遭遇。暫く試行錯誤した結果、端末のすぐ下の地面を調べると端末操作画面になった。これ明らかに判定ミスです本当にどうも。
扉を開けた先は、CoPに登場したPripyat Undergroundだった!
HospitalとPripyat Undergroundがシームレスで繋がっているというちょっとスゴイ場面を見せられたところで、さっきまでの苦労がちょっとだけ報われた気分になる。とはいえここでも大した戦闘は起こらず、たんなる通り抜け地点ではあるのですが。
またCoPのPripyat Undergroundそのままではなく、ちょっとだけアレンジが加わっています(というか、Alpha版ではこの構造だった?)。みんな大好きバケットホイールエクスカベーターがあるよ!ちなみに頑張ってStrerokのStashがあった部屋に行っても何もなかった。
Pripyatへ到着、するとMonolithと交戦中のMilitaryに加勢しろという通信が。Dead Cityのときもそうだけど、意外とMilitaryとの共闘場面が多いのだよな。バニラでは単なる敵対勢力だったのでちと新鮮な感覚だ。
またこのMAPの建物のあちこちにGauss Rifleを持ったMonolith兵が点在しているので注意が必要である。その性能は折り紙つき、ただし持ったまま走ることができないのが難点だ。
Militaryに加勢したあとはScientistと話をしよう。なんと、ここで研究員に同行して調査を助ける(バニラだとYanterで遂行した)あのタスクが!ちなみにこの男、ほとんど戦闘能力がないので気がつくとネズミに齧られて死にかけていたりする。気をつけよう。
途中でBlowoutに襲われるかとも思ったがそんなハプニングもなく、無事に帰還。ここでようやくGhostの待つHotelへ向かうことができるようになる。
ちなみにGhostの居場所にはマーカーがつかないが、これはバニラをクリアした経験のあるStalkerであれば造作もなく発見することが可能だろう。Ghostと接触したのち、スタジアムを抜けてCNPPへ向かうことになる。
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2014/06/19 (Thu)04:49
どうも、グレアムです。Lost Alphaです。ちょっとペース落ちてますがダラダラ続けておりますですよ。
プレイ日記のほうはちょっと駆け足というか、まともに進むとバグで落ちる箇所があったりしてなんかもうわけわかんないことになってるので飛ばし飛ばしというか、そんな感じでやっていきます。
というわけで、やってきましたDead City。α版のタスクを追加するSoC用のMOD「Old Story」ではここでMercsどもに捕まっちまうのだが、コンセプトが近いLost Alphaでも案の定Doctorとともに牢の中へ。Militaryの襲撃をきっかけに脱出する点も同じだが、その細部はかなり異なっている。
捕まるときに装備をブン獲られてしまうが、すぐに取り戻すことができる。ただ所持金が全額返ってくるわけではないようで(詳細は検討してない)、その点だけ注意が必要かもしれない。
わかりにくいと評判の、ScientistからWireを取ってこいと言われるタスク。馬鹿正直にマーカーの指し示す方向へ向かっても何もない、そんなときは勿論地下だ。Militaryの部隊が駐留している建物内にある、アノマリーが大量発生しているエレベータを降りるか、これまたアノマリーが大量発生している地表の穴を通って行くことになる。
地表に空いた穴の近くにはLonerが座り込みを敢行しており、中に取り残してきた武器を取ってきてくれないかと依頼してくる。肝心の銃はWireの近くにあるのでついでに探してきてやろう、ただしかなりの決死行になる。覚悟していこう。
Ghost生きとったんかワレ!
Army Warehouseにて仲間と再会、しかしこのあたりでタスクに関する内容のスクショを悉く撮影し忘れたため前後の流れをよく覚えていなかったりする。基本的にだだっ広いMAPをひたすら右往左往させられるんでタスクの内容なんかどうでもよくなってくるんだぜ!
とりあえず新MAPのCountry Sideは広い。広いというか長い。めっちゃ長い。もう歩きたくない。というかもう走りたくない。
X10にて科学者の記憶を追体験する。
ここに限らずだが、カットシーン絡みのイベントは正常に作動せず詰むことが多い。まめに複数セーブをとるほか、進まなくなった場合はその場でセーブ&ロードすればちゃんと進むことも多い。
これは重要NPCに話しかけることができなくなった場合も有効である。無視されたからといってボルトをぶつけまくるのはやめよう、そのうち敵対化して鉛弾を叩きこまれる破目になる。
X8で遭遇するホログラム型セキュリティシステム「Matrix」。
彼に謎ビームを当てられるか、こちらが銃撃を加えると脳髄を焼かれて殺される。Voroninの指示に従い、彼に追いつかれる前にDoomsday(終焉の日) Deviceの動力を切る必要がある。施設内は迷路のように入り組んでいるうえ、一部一方通行のデッドエンドまで存在するので注意が必要だ。
巨大な脳髄を利用したDoomsday Deviceの動力を切ったあと、いままでに幾度か遭遇した(あるときはカットシーンで、またあるときは脈絡のない場所で…たぶん設定ミスだろう…)謎のSinと接触する。彼は謎の炎バリアーを展開したあと姿を消し(ちなみに、これに触れると即死する。じっと待とう)、帰路には最初いなかったはずのZombieが沸いている。彼の目的はいったい…
おまえ、誰ッ!
ああいや、わかっている。彼はFang、Strelokチームの一員だ。Ghost同様彼もLost Alphaでは生き残っていたようだが、なんというか、その…他のMODではもうちょっとダウナー系のイケメン姿で登場することが多かった気がするのだが、Lost Alphaでの彼はサル顔で眼鏡のオッサンである。
呼び出して早々、Pripyatに向かったGhostを追えとのお達しが。「早く行け!」とか言ってくるけど、おまえがわざわざここまで呼び出さずに通信で全部伝えてくれたらすぐ追いつけたんだけど…
2014/06/17 (Tue)18:28
ティナーヴァの訃報はシェイディンハルの聖域に衝撃を与えた。
またサッチ砦でブラック17とティナーヴァを待ち伏せしていたのが帝国軍の兵士だったこと、そして暗殺者の死を帝国軍の手柄として黒馬新聞が一面の記事に載せたことも、事態の深刻化に拍車をかけた。
あまりに早い情報の伝播は帝国軍が意図的に新聞社へ情報をリークしたからだと予測され、それはつまり、情報を流す用意があったこと、今回の襲撃計画があらかじめ周到に計画されたものであることの証明でもあった。
『ついに伝説の暗殺教団の手掛かりを掴んだ!?多大な犠牲を払いながらも暗殺者のうちの一人の討伐に成功した帝国軍、もう一人の暗殺者を寸でのところで逃したものの、その追及を緩める気配は一向になく、捕らえるのも時間の問題と思われる…』
そう書かれた黒馬新聞の一面記事を見つめ、ブラック17はため息をつく。
今回の作戦を指揮したのは、以前よりダーク・ブラザーフッド壊滅に心血を注いできた帝国軍総司令官アダムス・フィリダ。
どうやら彼は年齢を理由に引退を間近に控えていたらしく、以降は後任のジョバンニ・チベッロに作戦の指揮を任せレーヤウィンの別邸で隠居生活を送る予定だ…と、記事の末尾に付記されていた。
そこでダーク・ブラザーフッドの幹部連<ブラックハンド>より、シェイディンハル支部に「アダムス・フィリダ暗殺」の勅命が下った。
「おそらく、隠居先を新聞記事に載せたのは我々を誘い出すためでしょう。大勢の護衛を従え、手ぐすね引いて待ち構えているはず…しかし、ここで引き下がるわけにはいきません」
長年連れ添った兄を失った悲しみと怒りに燃えながらも、自ら動くことを許されていないオチーヴァは今回の任務をブラック17とティリンドリル…弓の名手として知られるウッドエルフ…の二人に一任することを決めた。
そして任務に赴く二人の前に差し出された、一本の矢。
「これは、シシスの黒薔薇と呼ばれる伝説のマジックアイテムです。この矢を受けた人間の全身に猛毒を伝播させ、一瞬のうちに死に至らしめるもの。アダムス・フィリダを絶命させるのは、この矢の一撃でなければなりません!それは我々を敵に回した帝国軍へのメッセージとなり、恐怖の象徴として伝わるものとなるのですから」
「私は弓は使わないから…このとっておきの一撃はあなたのものになるわね。今回はあなたが主役よ、ティリンドリル」
そう言って、ブラック17はシシスの黒薔薇をティリンドリルに手渡した。
「まさか、この伝説の矢を私が扱うことになるなんて…まさに名誉だわ。暗殺者としての誉れよ」
「感動するのは任務を実行してからよ。土壇場で外されたんじゃあ、私の立場がないわ」
組織に伝わる希少なマジックアイテムを手に目を輝かせるティリンドリルを、ブラック17は幾分冷めた態度で諌める。
かくして、二人の暗殺者はレーヤウィンへと向かった。史上もっとも困難と思われる任務を遂行するために…
** ** ** **
「ねぇ、ティリンドリル」
「なにかしら?」
道中立ち寄った、ボーダーウォッチという名の村にあった宿。
互いに私服姿で夕餉を嗜んでいたとき、不意に、ブラック17はティリンドリルに尋ねた。
「あなたにとって、聖域って…なに?」
「なによ、いきなり。どうしたの?らしくないわよ、ノワール・ディセット」
沈痛な面持ちのまま質問するブラック17に、ティリンドリルが戸惑いがちな笑みを浮かべる。ちなみに、ノワール・ディセットとはブラック17が外界で活動するときに使っている偽名だ。
この村の特産であるチーズをつまにみタミカ・ワインを口の中で転がしながら、ティリンドリルが言う。
「あなた、ティナーヴァが死んでから随分と気を落ち込ませているわね。あなたの責任ではないのに」
「私は、そんなつもりじゃあ…」
「責任感に苦しんでいるのでなければ、情が移ったのかしら?」
「…かも、しれない。違うかもしれない。わからないのよ、それが」
「まさか冷酷非道な殺人機械だったあなたが、この短期間でこうも変わるとはね。でも、まあ、悪いことではないと思うわ。人間らしい心を持つというのは」
「そうかしら?」
「そうよ。私も、ときおり故郷のヴァレンウッドが恋しくなるけど…それでも、私にとって家族とは、真に家族と呼べる存在は、聖域の皆だけ。大切なものがあるからこそ、それを守るために冷酷にもなれるのよ。ただの人形に大義は務まらないわ」
「ただの人形、か…」
そうだったのかもしれない。
いままでの自分は、意思も感情も持たないただの奴隷人形に過ぎなかったのかもしれない。こうして人間らしい心を自覚しはじめたのは、良い兆候なのでは?
だが、結論を出すには早すぎる…とりあえずは、目の前の任務に集中しなくては。
この困難な任務を終えたとき、そのあとで考えよう。
そう思い、ブラック17はビールをぐっと呷った。
** ** ** **
「酷い天気ね」
レーヤウィンは嵐のような大雨だった。もっとも、普段から任務(監視任務らしい、シロディールの外の勢力からの干渉を見張るためというが…)でレーヤウィンに足を運ぶ機会が多いティリンドリル曰く、「ここはいつもこんな天気」らしいのだが。
目的地に到着した二人は、教会の尖塔から標的の居場所を監視していた。
シシスの黒薔薇の持つ猛毒の威力は疑うべくもないが、しかし遠距離からの狙撃で確実に鎧の装甲を貫くのは難しい、というのはティリンドリルの意見だ。おまけに帝国軍の鎧は矢を弾きやすいよう曲線が多用されていることから、鎧を着用しているときに狙うのは困難だ…ということらしい。
もちろん顔面を正確に射抜けば鎧の装甲云々は関係なくなるが、頭部というのは四肢の末端と同様、人間の身体のパーツの中でももっとも動きが激しい部分だ。
狙撃というのは遠距離の的を正確に射抜く技術だけではなく、確実に標的を仕留める状況を作り出す能力も必要とされる。ブラック17にしても、不確定要素に任務の重要部分を委ねるような真似は避けたかった。
ゆえに、標的であるアダムス・フィリダがその鎧を外しているときこそ好機…そう考え、二人はずっと監視を続けていたのである。
「ここから見えるだけでも護衛が六人はいるわね。たぶん、敷地の外側を巡回している連中を数に入れるともっといるはず」
ブラック17は、自らの右目…<シルヴィアの魔眼>から得た視覚情報を頼りにそうティリンドリルに伝える。
すでに二人はアダムス・フィリダの生活パターンをある程度把握しており、一日に一度決まった時間に水浴びすることを掴んでいた。
どれだけ生命の危機に脅かされていようと、重装のまま水浴びをする人間はいない。
だが水浴びしている最中のアダムスの動きは決してゆっくりとは言い難く、おまけに身体の大半が水に浸かっているため、事実上、狙えるのは頭部のみとなってしまう(矢を着水覚悟で胴を狙うことも可能だが、殺傷能力がなくなるわけではないとはいえ威力は大幅に削がれ、狙いも予想できない方向にずれるため、確実性は下がる)。
「念のために確認しておくけど、この位置から人を狙撃できるだけの腕はあるのよね?」
「もちろん、人間大の的に確実に当てれる自信はあるわ。ただ不確定要素が多い以上、過信は禁物だけど」
「狙撃手が正体を悟られず確実に逃走するには、ここが最至近距離なのよね。鎧を着用していないとはいえ、頭しか出ていないんじゃあアドバンテージがほとんどないのも問題だわ」
任務の遂行をより確実なものにすべく、二人は綿密な打ち合わせを行なう。
一番確実なのは水浴びを終えた直後、水から上がった瞬間に狙撃することだが、いつ上がるかの正確な時間がわからないうえ、タイミングを測りながら弓の弦を引き続ける必要がある。
当然、アダムスは狙撃の可能性も考慮に入れている。いままで観察した中では、水から上がってから護衛に連れられてからのわずかな時間しか猶予がない…つまり、陸に上がってから弓を引いてからでは遅い。
しかも弓の弦を引き続けるのは大変な力と労力を要する。集中力もだ。もし「その瞬間」がやってきたとき、集中力が途切れてしまっては何もかもが台無しになってしまう。
狙撃の確実性を上げるためには、こちらが狙ったタイミングで水面から身体を晒させる必要がある。
「私が護衛の注意を惹きつける。すぐ近くで暗殺者が暴れたとなれば、奴はすぐに水から上がってその場から離れようとするはず」
「あなた一人であそこに行くの!?自殺行為よ」
「…それに、私がすべての注意を惹けば狙撃があってもすぐに狙撃者の場所の特定はできないはず。あなたも逃げやすくなる」
ブラック17の提案に、ティリンドリルが目を丸くする。
無茶を言っているのは自覚している、しかし…ブラック17は固い決意を胸に、口を開いた。
「もう私とともに任務を遂行した…仲間を…死なせない」
「仲間、ね。これは光栄と思っていいのかしら」
「派手にやるから、それを合図に弓を引いて。すぐに標的を水から引きずり出してみせる」
そう言うと、ブラック17は尖塔から飛び降りた。
** ** ** **
「おい、ここは立ち入り禁止だ。なんだその格好、まるで殺し屋みたいな…」
「花売りにでも見える?」
「どっちかっていうと変わった街娼みたいだな」
厳戒態勢の中の私有地に近づいたブラック17は、シェイディンハルから貸し出された護衛の一人に行動を見咎められていた。
事前に暗殺者の襲撃があると知らされているからか、護衛の中に気の緩みを見せる者は一人もいない。
かといって、まさかいかにも暗殺者然とした不審者がやって来るとは思わなかったのか、ブラック17の接近に対してそれほど強硬な態度に出てくることはなかった。
池の中からこちらを覗いてくるアダムスの姿を見つめながら、ブラック17は「いますぐ奴に襲いかかったら殺せるだろうか」などと考えた。
いや、とブラック17はかぶりを振る。
殺せないことはないだろう。しかし暗殺はシシスの黒薔薇によって行なわれなければならない。たとえ自らの手を下せるチャンスがあったとしても、自重しなくては。
「もし私が、本物の暗殺者だ…と言ったら、どうする?」
「本物にしろ、そうでないにしろ、不審な者は捕らえても良いというお達しが出ている。これ以上ここに留まるつもりなら、本当に拘束するぞ?」
「あら、そう」
やんわりと警告を受けたブラック17は、目前にいる護衛の首筋に短刀の刃を走らせた。
「やってご覧なさい。できるものならね」
ざわっ…
多量の血を噴きながら倒れる仲間の姿を見て、周辺を警戒していた護衛たちが一斉に動き出す。
また、騒ぎを聞きつけて敷地の外からも続々と集まってくるシェイディンハルの兵士たちを見て、ブラック17は凄みのある笑みを浮かべた。
「まるでイナゴね。雑兵どもに私が止められるかしら」
こうして…シェイディンハルの市民が悲鳴を上げながら逃げ惑うなか、ブラック17と兵士たちの戦いがはじまった。
万一にでも狙撃手の視界を遮ることがないよう、ブラック17は魔法の使用を控え短刀のみで迫り来る護衛を捌いていく。
やがて…
「ついに出おったか、暗殺者め!誰ぞ、ワシの鎧を持てい!」
ザッバァーッ!
派手な水音を立てて、老練のアダムス・フィリダが立ち上がる。全身を外気に晒し、まさしく射撃場の的のように佇む姿を見て、ブラック17は心の中で叫んだ!
「(…今よ、ティリンドリル!)」
そして…ビシュッ!
空気を切り裂く音とともに、シシスの黒薔薇が標的目がけて飛翔する!
「…え……?」
ドスッ。
鈍い音とともに、矢が胸を貫く。
まさか…?
ブラック17は、自分とはかなり離れた距離にいるアダムスが何処かへと姿を消すのを見つめ、悟った。
的を外したとは考えられない。狙われたのは、私だ…
ブラック17は自らの胸に突き立てられたシシスの黒薔薇を見つめ、倒れた。
** ** ** **
「馬鹿な小娘」
教会の尖塔から一部始終を見ていたティリンドリルは、その一言をブラック17への手向けとした。
まさか、組織からシシスの黒薔薇を授けられるとは思わなかったが…たしかに名誉なことではあったが、そういう希少な武具を裏切りに利用したというのも、それはそれで背徳的な喜びがあったことは確かだ。
あとはアダムスが自分の死を偽装してくれる。それで仕舞いだ…もう、シェイディンハルの聖域と関わることもなくなる。自分の好きなように生きることができる、奴隷のように大陸のあちこちを走り回らされることもなく。
さあ、あとはここから逃げるだけだ…そう考えたとき、眼下で巨大な爆発音が響いた。
さっきまでブラック17を取り囲んでいたアダムスの護衛が、いっせいに吹っ飛ぶ。
「なに?なんだというの!?」
まさか、自爆用のスクロールか?
そう考えてすぐ、ティリンドリルはその推測が間違いであると思い直した。
ブラック17はダーク・ブラザーフッドの一員ではない、ティナーヴァと同様のスクロールは持っていないはず。それにあの爆破魔法、もしあれが魔法だとすれば、だが…ブラック17が放った魔法だとすれば。
「まさか、まだ生きている!?」
そう確信したティリンドリルはふたたび弓を構え、矢をつがえる。
だが。
「まさか、あなたが裏切り者だったとはね」
「ど、どうして…」
「私に人間用の毒は効かない…立て!」
果たしてブラック17は、ティリンドリルの背後に立っていた。血塗れの姿で。
咄嗟に短剣を抜いて襲いかかろうとするティリンドリル、しかしブラック17は短剣を持つ手首ごとへし折ると、彼女の首筋を掴んで持ち上げた。
「ぐあっ…く、くぎぎ…っ!」
「貴様、いつから帝国軍に加担していた?なぜ裏切った?」
「…く、ほほっ…なんのこと、かしら?」
「とぼけるな!サッチ砦での作戦の情報を流したのも貴様だろう、吐け!」
「ふふ…た、たしかに、帝国軍に情報を流したのは私よ。でも、べつに帝国軍のためにやったわけじゃないわ。もちろん、帝国軍からも報酬は頂いたけどね」
「なんの話だ」
「いい、これはね…もっと個人的な復讐なのよ。といっても、私も詳しくは知らされていないけど」
手首を折られ、首を絞められていてもなお、ティリンドリルは不適な笑みを崩さず話し続ける。
その態度は、ブラック17にとってまったく気に入らないものだった。
「あの宿で…聖域の皆は家族だと言った、あれは嘘だったの…?」
「あなたも意外とネンネなのね。あんなもの、あなたを油断させるための嘘に決まっているでしょう?どうせ他の連中も、腹の中で考えていることはそう変わりはしないわよ」
「…そう……」
「それで、どうするの?私を殺す?いいわよ、できるものならね。でも、私を殺したって何も変わらないわよ。裏切りは止まらない、この大きな流れを止めることはすでに不可能なのよ」
「…たしかに、貴様を殺しても何も変わらないかもしれない。ただの下っ端の貴様を殺したところでな」
そこまで言って、ブラック17も笑みを浮かべる。
ティリンドリルの瞳を真っ直ぐに見つめ、その首を掴みながら尖塔の縁に立ち、そして言った。
「だったら、別に殺しても構わないわけよね?」
「……え?」
そして。
教会の尖塔から投げ出されたティリンドリルは、街路地にはらわたをぶち撒けて、死んだ。
ここに来る前、キャスト・デバイスを用いた術式を行使したとき、すでにアダムス・フィリダの姿はなかった。うまく爆発に巻き込めれば良かったのだが、おそらくは逃げられたのだろう。
任務に失敗した。しかし、これはもともと遂行不可能な任務だったのだ。裏切り者に命運を託したとあっては。
ブラック17は自らの胸に突き刺さったシシスの黒薔薇を引き抜き、片手でへし折って捨てる。
そう、自分には人間用の毒は効かない。自分の体内に流れているのは人間の血ではないからだ。この肉体は、すでに人間とはかけ離れているからだ。
「…帰ろう」
そうつぶやくと、ブラック17は尖塔から飛び降り、影のようにレーヤウィンから姿を消した。
レーヤウィンに残されたのは理不尽な暴力が生み出した喧騒と、謎の暗殺者の死体に集う群集のざわめきだった。
2014/06/15 (Sun)15:59
「暗殺者に襲われた、ですって!?」
「ええ。といっても、どうもフリーランスのように見えたけれどね。まあ、命を狙われたことに違いはないけれど」
シェイディンハルの廃屋地下、暗殺教団ダーク・ブラザーフッドの聖域。
サミットミスト邸…スキングラッドの豪邸での仕事を終えたブラック17は、それが予定通りに行かなかったこと、ブラザーフッドのエージェントが殺されたこと、そして自身もまた命を狙われたことをティナーヴァに報告していた。
その驚くべき内容にオチーヴァは動揺し、ぶつぶつと小声でつぶやき続ける。
「ありえないわ。ありえない…この聖域の情報管理は徹底しているはず。それに、万一裏切り者が…そんな、ファミリーに裏切り者がいるなんて…信じられないし、ありえない」
「もし私が嘘とついてるというのなら、まあ、疑ってくれても良いけれどね。どのみち私は部外者なんだし」
「いえ…いえ。貴女の報告を信じましょう。これは慎重に受け止めねばならない問題です、にわかに信じ難い話ではありますが、だからといって無視して良いものでも、また、無視すべきことでもありませんから」
そこまで言うと、オチーヴァは一度席から立ち、棚から液体入りの瓶を取り出した。
テーブルの上に置かれた薬瓶を見つめるブラック17に向かって、オチーヴァが言葉を続ける。
「任務のあとでお疲れだとは思うけど、じつはもう一つ、貴女にやってほしい仕事があるのよ」
「随分と急ぐのね」
「今回の標的は、あまり長い間一つ処に留まらないの。我々は彼の跡を追い続け、そしてようやく発見した…おそらく、チャンスは今回限り。この機会を逃せば、二度とその足取りを掴むことはできなくなるでしょうね」
「用心深い標的、というやつね。誰なの?」
「ロデリック将軍…元帝国軍将校よ。彼はいま病床に伏せっていて、護衛を伴い各地を転々としているの。抜け目なく、慎重な男。それはかつて帝国軍人だった頃、多く敵を作ったことで形作られた性格だわ」
「それで、奴は何処に?といってもこの組織のことだから、たんに居城に乗り込んで暴れて来いってことにはならないのだろうけど」
「よくわかっていますね」
そこで、と言って、オチーヴァはテーブルの上の薬瓶をうやうやしく持ち上げた。
「ロデリック将軍は毎日、決まった時間に薬を摂取しているようです。そう、ちょうどこんな瓶に入ったものをね…そこで今回、貴女にはロデリック将軍が潜伏するサッチ砦に潜入してもらい、誰にも見つからず薬をこの毒薬とすり替えてきてほしいのです」
「回りくどいやり方ね。これはクライアントの意向?悪趣味だわ」
「質問は許しません…と言いたいところですが、少しだけ教えましょう。もちろん、たんなる趣向で特別な殺しを求める依頼者も少なくありません。がしかし、今回の件に限っては事故死を装ってもらわねばならない事情があるのです。将軍の生死の動向には、極めて微妙な政治的問題が絡むのですよ」
「なるほど、それ以上は聞かないでおくわ」
お偉方の事情などどうでもいい、というふうにブラック17は手を振った。
それにしても、本来の目的を果たすため…ちょっとした情報を得るためだけにどれだけ厄介ごとを押しつけられるのか…と、そこまで考えてブラック17は雑念を振り払った。
当面の生活の面倒を見てもらっている、という点を抜きにしても、しばらくダークブラザーフッドに従うのは故郷である黒の里の意向でもあるし、本部からの連絡がない以上、ここで任務をまっとうする以外に道はない。
「それで、今回は目付けはいるのかしら?」
「貴女にはもう目付けは必要ありません。その能力と任務への忠誠は疑う余地がありませんし…とはいえ、今回は困難な任務になることが予測されます。そこで、彼を」
オチーヴァが執務室の影を指すと、そこにさっきまで居なかったはずの男…オチーヴァと瓜二つのアルゴニアン、双子の兄ティナーヴァが佇んでいた。
「彼はこの聖域の中でも特に腕利きです。私と同様、隠密作戦を得意とするところは言うに及ばず」
「貴女に影の加護があらんことを( Shadow hide you )、レディ。いつも妹が世話になっているようで、どうかお手柔らかに頼みますよ」
「そんな、私が彼女をいじめてるみたいな言い方をするわけ?」
「ははっ、ご冗談を」
そう言って、ティナーヴァは気さくな笑い声を上げた。無論、その爬虫類の瞳は欠片も笑っていなかったが。
このアンバランスさはなんだろうな、とブラック17は考えた。種族的なものなのか、こいつ個人の個性なのか。いずれにせよ、蜥蜴と人間のハイブリッドという見慣れぬ存在には違いなく、未だに違和感なく接するのに苦労する。
もっとも、それは彼・彼女らも理解しているらしく、その点について深い突っ込みをかけてくるようなことはしてこない。
「サッチ砦は大陸の西端、アンヴィルの北にあります。かなりの遠出となるでしょうから、早めに出発したほうがいいでしょう」
オチーヴァに促され、ブラック17は荷造りをはじめる。といっても外界で怪しまれないための私服と最低限の食料だけなので、たいして時間はかからないのだが。
** ** ** **
「まだターゲットが移動していないといいけど」
ブラック17とティーヴァの二人がサッチ砦に到着したのは、一週間後の夜だった。
私服を近場の宿に置き、暗殺装束に着替えた二人は砦の全貌が見える位置まで移動する。
「ここが砦に続く隠し通路ね?」
「そうだ。かつての軍事拠点にはありがちな代物だが、いざというときに階級の高い者だけでも逃げ延びることができるよう、こういったものが用意されていたらしい」
そう言って、ティナーヴァはサッチ砦へと続く隠し通路への戸を引き上げた。
これはダーク・ブラザーフッドが行なっていた事前調査で判明したルートだ。標的がこの通路の存在を知っているかどうかまではわからなかったが、すくなくとも、正面から乗り込むよりはましなはずだ。
ただ…戸が開いた途端に漂ってくる異臭に、ブラック17は思わず顔をしかめる。一方、ティナーヴァはといえば普段通りの平静さを保っていた。
「…ちょっと聞いていいかしら?」
「なにかな?」
「これ、専用の隠し通路だったの?というか、元は他の用途に作られたものを転用したのではなくて?」
「ああ、そうだな。たしか普段は用水路として運用されていたはずだ」
「用水路って…要するに下水よね、これ」
「そうだが?」
「そうだがって…」
お世辞にも衛生的とは言えない廃墟の、さらに地下の下水ともなればそれはもう相当な匂いを発するのは火を見るより明らかなことだ。
おまけに、先に進むにはどうも、天井までどっぷりと浸水した道を通らなければならないようだった。
「どうした?早くしてくれないか」
「…これ、潜るの…?」
「当たり前だろう」
しかし、異臭や汚水をものともせず飛び込み、さっさと先に進もうとするティナーヴァにブラック17は重いため息をついた。
そういえば以前、オチーヴァと一緒に仕事をしたときも、こんなシチュエーションがあったような気がしたのだが…
「私は機械…ただの機械…殺人機械…感情なんかないわ…感情なんて…」
ぶつぶつぶつぶつ。
平常心を保つため必死に自分に言い聞かせながら、ブラック17は汚水の中へ足を踏み入れた。
** ** ** **
用水路を抜け地上階へと出た二人は、ロデリック将軍についている護衛の様子を影の中から観察した。
「どうやら傭兵を数人雇っているだけのようだな。もともと秘匿された場所だからか、士気もそれほど高くない」
「といっても、どうやら個人的な縁で雇った連中みたいね。最低限のプライドは持っているみたい」
通常、こういう場所の護衛を任される人間は「そもそも居場所を知られていないはずなのに襲われるはずがない」だの、「時間の無駄だ、やってられねえ」だのといった愚痴をこぼすのが常だが、ここの傭兵たちはそうではなかった。
将軍の容態は良くなるのか、このままでは自分たちは働き損になるのではないか…特に将軍の名を口に出すときには一際気を遣う様子が見られ、依頼主への経緯を態度で表しているのがよくわかる。
「まあ、装備はあまり高価なものを身につけていないし、注意が散漫になっているのも確かだから、連中を出し抜くのはそんなに難しくないでしょうね」
そう言って、ブラック17は病床に伏せるロデリック将軍のもとへ向かった。
「しかし、よく寝ていること」
苦悶の表情を浮かべ、全身から玉のような汗を噴き出しているロデリック将軍の傍らに立ち、ブラック17は短刀を構えた。
「このままだと楽に殺せそうよね」
「気持ちはわかるが、シスター(妹よ)、それはメニューにない」
「シスター?」
「おっと、すまない。貴女はブラザーフッドの一員ではないのだったな。つい、口癖でな」
組織内の敬称で呼ばれたことに片眉を吊り上げたブラック17に対し、ティナーヴァは弁解がましくそう答えた(といっても、その態度はまったく悪びれていなかったが)。
ダーク・ブラザーフッドの信徒、それがシェイディンハルの聖域内でのみ通用するローカルなルールなのか、それとも組織全体にそういった教義が浸透しているのかまではわからなかったが、ともかく、彼らは互いをファミリーと見なし、それぞれを兄弟、姉妹と呼び合っている。
もっともティナーヴァとオチーヴァに至っては本物の兄妹のため、そのあたり実にややこしかったりはするのだが。
「わかってるわよ。今回の任務はあくまで事故死を偽装すること…そこに暗殺者の介在があったことを知られてはならない、でしょう?」
「その通り」
もっともらしく頷いてみせるティナーヴァに、ブラック17は肩をすくめてみせる。
さて、薬瓶の納まっている棚を探さなくては…
音を立てないよう周囲を捜索し、数分後にブラック17は目的のものを発見した。
「あったわ。これを毒薬と交換すればいいのね」
ラベルに薬効が書かれた(名のある錬金術師の手による薬らしい)瓶を取り出し、ブラック17は腰に巻いたベルトのポーチに入っている毒薬瓶とすり替える。
そういえば手元に残ったほうの薬瓶をどうすべきかは聞いていなかった、これだけでも結構な値打ち物なのでは…そんなことを考えながら棚の戸を閉めようとしたとき、ブラック17は一枚の紙片が残されていることに気がついた。
「なにかしら、これ」
『残念でした、おまぬけさん!( Stupid Bitch!! )』
ブラック17が取り上げた紙片には、そう、書かれていた。茶目っ気たっぷり、悪戯心に溢れる、悪意に満ちたメッセージ。
まるで子供の落書きのようなそれを目にしたブラック17はしかし、本能的に自分たちがとてもまずい状況に置かれていることを察した。
「…嵌められた!」
「どうした、レディ?」
「ティナーヴァ、これは罠よ!」
「なんだって!?」
ザンッ!
「ぐああっ!?」
ブラック17が叫んだ直後、ティナーヴァに向けて鉄の剣が振るわれた!
「くそ、あっ、足が!足をやられた!」
「罠に引っかかってからそれと気づくようでは遅いな、あまりにも遅い!」
ずっと息を潜めて隠れていたのだろう、二人を取り囲んだのは帝国軍の兵士たちだった!
「貴様らが例の、暗殺教団とやらの使者か」
「夜母とかいうイカレたバーサマを信仰しているキ印どもなんだってな?」
「ッ、貴様ら、我らがナイト・マザーを愚弄することは許さんぞ!」
「足から血を流しながら言っても説得力なんかないぜ、トカゲさんよ」
やられた。完璧に嵌められた。
そもそも、このシチュエーション自体がダーク・ブラザーフッドを罠にかけるためにセッティングされたものに違いないのだ…ブラック17はそう理解し、奥歯を噛み締める。
おそらくベッドで横になっていた男も、標的であるロデリック将軍とやらではないのだろう。周辺を警護していた傭兵も、おそらくは油断を誘うための見せ餌。
こうなればもう、任務どころではない。この場からの脱出を最優先させなければ。
「ティナーヴァ、逃げて。ここは私がなんとかする」
「し、しかし…」
「いいから行って!」
今すぐ動かなかったら私が殺す。
そんなブラック17の覇気に気圧されたのか、ティナーヴァは足を引きずりながらその場を慌てて離れた。
もちろん、その動きを帝国兵が見逃すはずもなかったが。
「おい、トカゲのやつが逃げるぞ!」
「放っておけ。どうせあの怪我では遠くまでは行けん、後でゆっくり始末すればいい。まずはこの女からだ…いいか、生け捕ろうとか、お楽しみのことは考えるな。まずは殺せ」
隊長格の男がそう言うや否や、四人の帝国兵がいっせいに襲いかかってきた。
ガッ!
「ー…、くぅっ…!」
「なんだ、この女!?」
不意を打たれたせいもあるだろうが、ブラック17は剣の一撃をまともに頭部に喰らってしまった。頭部からおびただしい量の血が吹き出る。
しかしそれを見た帝国兵は、それが自らの所業であるにも関わらず驚きの声を上げていた。
普通なら真っ二つに裂けるか、頭骨が砕けるかのどちらかのはずだ。軍用の鉄製の長剣の一撃を受けて、出血するだけとは、こいつはいったい…?
その動揺を打ち消すかのように、隊長格の男が大声で叫んだ。
「躊躇うな、一撃で死なねば何度でも打ち下ろせば良い!とにかく、死ぬまで殺せ!」
そして始まったのは、一方的なリンチ。
幾度となく剣の一撃を受けるブラック17だったが、しかし、ただ黙ってやられているわけではなかった。
右腕のキャストデバイス・ユニットが展開し、内部に格納されている魔導球が発光をはじめる。
『ストーム(暴嵐)…単体術式始動』
「いつまでも…調子に…乗ってるんじゃ…ないわよ…!!」
ズボギャアッ!!
周囲一帯に瞬間的な暴風が巻き起こり、その際に生じた衝撃波が帝国兵の身体を紙のように引きちぎる!
ゴト、ゴン、ボドッ、ボトボトッ。
暴風が過ぎ去ったあと、帝国兵、いや、帝国兵「だったもの」、その身体の部品が床に散乱する。
自分と他人の血にまみれたブラック17は、血まみれのフロアから出ると、ティナーヴァの姿を求めて砦の中を彷徨いはじめた。
** ** ** **
やがて…
「ティナーヴァ!あぁ、なんてこと…」
「グホッ、ガハ…まったく、なんという醜態だ」
ブラック17は焚き火の近くでティナーヴァを発見した。重症を負い、口からおびただしい量の血を吐いている。
「傭兵にやられたよ。ああ、心配はいらない。傭兵どもは始末した…足さえ無事なら、こんなことには…」
「いいから黙って、喋らないで。いますぐ応急手当を」
「必要ない。わかるんだ、俺はもう長くない」
「だったら聖域まで運ぶから」
「駄目だ。我々ダーク・ブラザーフッドの信徒は死体を残すことを許されない」
そう言って、ティナーヴァは懐から一枚のスクロールを取り出した。
「高威力の爆破呪文が書かれている。詠唱と同時に発動し、あまりに破壊力が高いため自殺くらいにしか用途がない。だが、まぁ…つまり、俺がこれを持っている理由は、わかったな?」
「自殺する気なの!?」
「これは陽動にもなる。おそらく、外にも帝国軍の兵士が待機しているはずだ。俺がこいつを、読むまで…少しでも、この砦から遠くへ」
そこまで言って、ゴホッ、ティナーヴァはまた血を吐いた。
止めたかった。ブラック17は、なんとしても彼の行いを止めたかった。だが、ティナーヴァ自身がそれを受け入れないだろうということはわかっていたし、そもそも止める意味がないこともまた、充分に理解していた。
だが、せめてもの手向けに…ブラック17はティナーヴァの額に口づけすると、そのまま砦の出口へと向かった。
** ** ** **
爆発音とともに、サッチ砦が崩落する。
「ティナーヴァ…」
すでに帝国兵の目の届かない位置まで避難していたブラック17は、仲間の死に胸を痛めていた。
…仲間、だって?
無意識にそう考えていた自分の思考に、ブラック17は疑問を抱く。
そもそも連中は仲間でもなんでもない。自分だって部外者で、ほんの、そう、ちょっとした利害の一致があったため、短い時間を共に過ごしただけ。
…まるで、家族のように?
「わからない」
なんでいまさら、自分がこんな感情を抱くのか。
私はただ人を殺すためだけに生きてきた、生かされてきたのではないのか?そして、そういう生き方に納得していたのではないのか?
それを、そんのすこしの家族ごっこで心が揺らぐなどと…家族ごっこ…家族…
私の本当の家族は、どんなだっただろう?
そこまで考えるに至って、ブラック17はあることに思い当たった。
そういえば自分は、家族のことをほとんど憶えていない、ということに。
過去が思い出せない。
私はいったい誰?誰なの?誰「だった」の?
2014/06/14 (Sat)15:53
どうも、グレアムです。
今更ですがHPのコンコレ小説コーナーにプロキシマ防衛イベント関連の短編を掲載しました。
<< プロキシマ戦役 >>
この怪文書を書くに至った経緯はちょっとアレなんで言及は避けますが、まぁ大元を正せば「ダークひーこいいよね」「いい…」したかっただけというか。
設定的には遠未来を描いたSFということで、メインである重装狐のエピソードとはまったく関係ありません。パラレル…というか、まあどう捻っても両者を繋げようがないので、わざわざ別世界の話にする理由もないんですが。
ただこれを伏線として重装狐エピソードに絡ませようとかいう気はまったくないので、そのへんはハッキリしておこうかなと。
で、当時某所で公開したときは作中に登場するコレクターのヴィジュアルや設定にはまったく触れなかったので(これは意図的なものですが)、今回はそのへんについてチラッと紹介したいと思います。
↑ちなみに、これがコレクターの外観(イメージ)。
普段はPCで線は引かないんですが、まぁたまにはこういうのも。
もとより二次創作でポッと出のオリキャラを目立たせても仕様がないっていう前提があるので、作中でも(読み手が共感しやすいよう)コレクターのパーソナリティに関する描写は最小限に抑えたのですが、いちおう設定らしきものはあります。
このコレクターは元宇宙海賊で、コレクターになるまでは部下を率いて宇宙を放浪していたという過去があります。もともと父が宇宙海賊の親玉で(といっても極めて小規模なコミュニティですが)、彼は父の座を継いで組織のリーダーとして活動していました。
といってもその境遇に満足していたわけではなく、根っから正義感が強かったこともあり、しばしば部下や敵対組織とトラブルを起こします。そんなところを水連に見込まれ、コレクターとしてスカウトされたところを快諾。組織を副官に引き渡し、一匹狼として行動することになります(ちなみにこの副官は組織内でもっとも彼との対立が激しく、自分がリーダーになったあとは無謀な略奪行為を繰り返し統治機構との銃撃戦を誘引。このとき組織は壊滅しています)。
個人志向が強いのは彼の生来の性格です。また銃火器の扱いに手馴れているのは訓練の賜物ですが、利益にならない争いはしない主義なので極力戦闘は避ける傾向にあります。プロキシマでの戦いで持ち出した軍用レーザーライフルは軍の倉庫から流失した横流し品で、これは海賊時代に入手したものです(手に入れた当初は新品同様でしたが、彼は大抵の場面で威力過剰になるその銃をほとんど使わなかったため、久しぶりに船倉の奥から取り出したときにきちんと動作するか心配していました)。
造型としては、アダルティな魅力みたいなものが出せればなぁとか思いながら描きました。
たいてい、二次創作でオリキャラ主人公というとラノベから飛び出してきたようなテンプレ的自称一般人みたいなのが多い印象があるので(そういうのが駄目だという気はありません。俺の趣味からは外れますが)、もうちょい渋めの路線を狙いたかった、というのがあります。