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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2014/06/15 (Sun)15:59

「暗殺者に襲われた、ですって!?」
「ええ。といっても、どうもフリーランスのように見えたけれどね。まあ、命を狙われたことに違いはないけれど」



 シェイディンハルの廃屋地下、暗殺教団ダーク・ブラザーフッドの聖域。
 サミットミスト邸…スキングラッドの豪邸での仕事を終えたブラック17は、それが予定通りに行かなかったこと、ブラザーフッドのエージェントが殺されたこと、そして自身もまた命を狙われたことをティナーヴァに報告していた。
 その驚くべき内容にオチーヴァは動揺し、ぶつぶつと小声でつぶやき続ける。
「ありえないわ。ありえない…この聖域の情報管理は徹底しているはず。それに、万一裏切り者が…そんな、ファミリーに裏切り者がいるなんて…信じられないし、ありえない」
「もし私が嘘とついてるというのなら、まあ、疑ってくれても良いけれどね。どのみち私は部外者なんだし」
「いえ…いえ。貴女の報告を信じましょう。これは慎重に受け止めねばならない問題です、にわかに信じ難い話ではありますが、だからといって無視して良いものでも、また、無視すべきことでもありませんから」
 そこまで言うと、オチーヴァは一度席から立ち、棚から液体入りの瓶を取り出した。
 テーブルの上に置かれた薬瓶を見つめるブラック17に向かって、オチーヴァが言葉を続ける。
「任務のあとでお疲れだとは思うけど、じつはもう一つ、貴女にやってほしい仕事があるのよ」
「随分と急ぐのね」
「今回の標的は、あまり長い間一つ処に留まらないの。我々は彼の跡を追い続け、そしてようやく発見した…おそらく、チャンスは今回限り。この機会を逃せば、二度とその足取りを掴むことはできなくなるでしょうね」
「用心深い標的、というやつね。誰なの?」
「ロデリック将軍…元帝国軍将校よ。彼はいま病床に伏せっていて、護衛を伴い各地を転々としているの。抜け目なく、慎重な男。それはかつて帝国軍人だった頃、多く敵を作ったことで形作られた性格だわ」
「それで、奴は何処に?といってもこの組織のことだから、たんに居城に乗り込んで暴れて来いってことにはならないのだろうけど」
「よくわかっていますね」
 そこで、と言って、オチーヴァはテーブルの上の薬瓶をうやうやしく持ち上げた。
「ロデリック将軍は毎日、決まった時間に薬を摂取しているようです。そう、ちょうどこんな瓶に入ったものをね…そこで今回、貴女にはロデリック将軍が潜伏するサッチ砦に潜入してもらい、誰にも見つからず薬をこの毒薬とすり替えてきてほしいのです」
「回りくどいやり方ね。これはクライアントの意向?悪趣味だわ」
「質問は許しません…と言いたいところですが、少しだけ教えましょう。もちろん、たんなる趣向で特別な殺しを求める依頼者も少なくありません。がしかし、今回の件に限っては事故死を装ってもらわねばならない事情があるのです。将軍の生死の動向には、極めて微妙な政治的問題が絡むのですよ」
「なるほど、それ以上は聞かないでおくわ」
 お偉方の事情などどうでもいい、というふうにブラック17は手を振った。
 それにしても、本来の目的を果たすため…ちょっとした情報を得るためだけにどれだけ厄介ごとを押しつけられるのか…と、そこまで考えてブラック17は雑念を振り払った。
 当面の生活の面倒を見てもらっている、という点を抜きにしても、しばらくダークブラザーフッドに従うのは故郷である黒の里の意向でもあるし、本部からの連絡がない以上、ここで任務をまっとうする以外に道はない。
「それで、今回は目付けはいるのかしら?」
「貴女にはもう目付けは必要ありません。その能力と任務への忠誠は疑う余地がありませんし…とはいえ、今回は困難な任務になることが予測されます。そこで、彼を」
 オチーヴァが執務室の影を指すと、そこにさっきまで居なかったはずの男…オチーヴァと瓜二つのアルゴニアン、双子の兄ティナーヴァが佇んでいた。
「彼はこの聖域の中でも特に腕利きです。私と同様、隠密作戦を得意とするところは言うに及ばず」
「貴女に影の加護があらんことを( Shadow hide you )、レディ。いつも妹が世話になっているようで、どうかお手柔らかに頼みますよ」
「そんな、私が彼女をいじめてるみたいな言い方をするわけ?」
「ははっ、ご冗談を」
 そう言って、ティナーヴァは気さくな笑い声を上げた。無論、その爬虫類の瞳は欠片も笑っていなかったが。
 このアンバランスさはなんだろうな、とブラック17は考えた。種族的なものなのか、こいつ個人の個性なのか。いずれにせよ、蜥蜴と人間のハイブリッドという見慣れぬ存在には違いなく、未だに違和感なく接するのに苦労する。
 もっとも、それは彼・彼女らも理解しているらしく、その点について深い突っ込みをかけてくるようなことはしてこない。
「サッチ砦は大陸の西端、アンヴィルの北にあります。かなりの遠出となるでしょうから、早めに出発したほうがいいでしょう」
 オチーヴァに促され、ブラック17は荷造りをはじめる。といっても外界で怪しまれないための私服と最低限の食料だけなので、たいして時間はかからないのだが。

  **  **  **  **



「まだターゲットが移動していないといいけど」
 ブラック17とティーヴァの二人がサッチ砦に到着したのは、一週間後の夜だった。
 私服を近場の宿に置き、暗殺装束に着替えた二人は砦の全貌が見える位置まで移動する。
「ここが砦に続く隠し通路ね?」
「そうだ。かつての軍事拠点にはありがちな代物だが、いざというときに階級の高い者だけでも逃げ延びることができるよう、こういったものが用意されていたらしい」
 そう言って、ティナーヴァはサッチ砦へと続く隠し通路への戸を引き上げた。
 これはダーク・ブラザーフッドが行なっていた事前調査で判明したルートだ。標的がこの通路の存在を知っているかどうかまではわからなかったが、すくなくとも、正面から乗り込むよりはましなはずだ。
 ただ…戸が開いた途端に漂ってくる異臭に、ブラック17は思わず顔をしかめる。一方、ティナーヴァはといえば普段通りの平静さを保っていた。
「…ちょっと聞いていいかしら?」
「なにかな?」
「これ、専用の隠し通路だったの?というか、元は他の用途に作られたものを転用したのではなくて?」
「ああ、そうだな。たしか普段は用水路として運用されていたはずだ」
「用水路って…要するに下水よね、これ」
「そうだが?」
「そうだがって…」



 お世辞にも衛生的とは言えない廃墟の、さらに地下の下水ともなればそれはもう相当な匂いを発するのは火を見るより明らかなことだ。
 おまけに、先に進むにはどうも、天井までどっぷりと浸水した道を通らなければならないようだった。
「どうした?早くしてくれないか」
「…これ、潜るの…?」
「当たり前だろう」
 しかし、異臭や汚水をものともせず飛び込み、さっさと先に進もうとするティナーヴァにブラック17は重いため息をついた。
 そういえば以前、オチーヴァと一緒に仕事をしたときも、こんなシチュエーションがあったような気がしたのだが…
「私は機械…ただの機械…殺人機械…感情なんかないわ…感情なんて…」
 ぶつぶつぶつぶつ。
 平常心を保つため必死に自分に言い聞かせながら、ブラック17は汚水の中へ足を踏み入れた。

  **  **  **  **



 用水路を抜け地上階へと出た二人は、ロデリック将軍についている護衛の様子を影の中から観察した。
「どうやら傭兵を数人雇っているだけのようだな。もともと秘匿された場所だからか、士気もそれほど高くない」
「といっても、どうやら個人的な縁で雇った連中みたいね。最低限のプライドは持っているみたい」
 通常、こういう場所の護衛を任される人間は「そもそも居場所を知られていないはずなのに襲われるはずがない」だの、「時間の無駄だ、やってられねえ」だのといった愚痴をこぼすのが常だが、ここの傭兵たちはそうではなかった。
 将軍の容態は良くなるのか、このままでは自分たちは働き損になるのではないか…特に将軍の名を口に出すときには一際気を遣う様子が見られ、依頼主への経緯を態度で表しているのがよくわかる。
「まあ、装備はあまり高価なものを身につけていないし、注意が散漫になっているのも確かだから、連中を出し抜くのはそんなに難しくないでしょうね」
 そう言って、ブラック17は病床に伏せるロデリック将軍のもとへ向かった。



「しかし、よく寝ていること」
 苦悶の表情を浮かべ、全身から玉のような汗を噴き出しているロデリック将軍の傍らに立ち、ブラック17は短刀を構えた。
「このままだと楽に殺せそうよね」
「気持ちはわかるが、シスター(妹よ)、それはメニューにない」
「シスター?」
「おっと、すまない。貴女はブラザーフッドの一員ではないのだったな。つい、口癖でな」
 組織内の敬称で呼ばれたことに片眉を吊り上げたブラック17に対し、ティナーヴァは弁解がましくそう答えた(といっても、その態度はまったく悪びれていなかったが)。
 ダーク・ブラザーフッドの信徒、それがシェイディンハルの聖域内でのみ通用するローカルなルールなのか、それとも組織全体にそういった教義が浸透しているのかまではわからなかったが、ともかく、彼らは互いをファミリーと見なし、それぞれを兄弟、姉妹と呼び合っている。
 もっともティナーヴァとオチーヴァに至っては本物の兄妹のため、そのあたり実にややこしかったりはするのだが。
「わかってるわよ。今回の任務はあくまで事故死を偽装すること…そこに暗殺者の介在があったことを知られてはならない、でしょう?」
「その通り」
 もっともらしく頷いてみせるティナーヴァに、ブラック17は肩をすくめてみせる。
 さて、薬瓶の納まっている棚を探さなくては…
 音を立てないよう周囲を捜索し、数分後にブラック17は目的のものを発見した。
「あったわ。これを毒薬と交換すればいいのね」
 ラベルに薬効が書かれた(名のある錬金術師の手による薬らしい)瓶を取り出し、ブラック17は腰に巻いたベルトのポーチに入っている毒薬瓶とすり替える。
 そういえば手元に残ったほうの薬瓶をどうすべきかは聞いていなかった、これだけでも結構な値打ち物なのでは…そんなことを考えながら棚の戸を閉めようとしたとき、ブラック17は一枚の紙片が残されていることに気がついた。
「なにかしら、これ」



『残念でした、おまぬけさん!( Stupid Bitch!! )』
 ブラック17が取り上げた紙片には、そう、書かれていた。茶目っ気たっぷり、悪戯心に溢れる、悪意に満ちたメッセージ。
 まるで子供の落書きのようなそれを目にしたブラック17はしかし、本能的に自分たちがとてもまずい状況に置かれていることを察した。
「…嵌められた!」
「どうした、レディ?」
「ティナーヴァ、これは罠よ!」
「なんだって!?」
 ザンッ!



「ぐああっ!?」
 ブラック17が叫んだ直後、ティナーヴァに向けて鉄の剣が振るわれた!
「くそ、あっ、足が!足をやられた!」
「罠に引っかかってからそれと気づくようでは遅いな、あまりにも遅い!」
 ずっと息を潜めて隠れていたのだろう、二人を取り囲んだのは帝国軍の兵士たちだった!
「貴様らが例の、暗殺教団とやらの使者か」
「夜母とかいうイカレたバーサマを信仰しているキ印どもなんだってな?」
「ッ、貴様ら、我らがナイト・マザーを愚弄することは許さんぞ!」
「足から血を流しながら言っても説得力なんかないぜ、トカゲさんよ」
 やられた。完璧に嵌められた。
 そもそも、このシチュエーション自体がダーク・ブラザーフッドを罠にかけるためにセッティングされたものに違いないのだ…ブラック17はそう理解し、奥歯を噛み締める。
 おそらくベッドで横になっていた男も、標的であるロデリック将軍とやらではないのだろう。周辺を警護していた傭兵も、おそらくは油断を誘うための見せ餌。
 こうなればもう、任務どころではない。この場からの脱出を最優先させなければ。
「ティナーヴァ、逃げて。ここは私がなんとかする」
「し、しかし…」
「いいから行って!」
 今すぐ動かなかったら私が殺す。
 そんなブラック17の覇気に気圧されたのか、ティナーヴァは足を引きずりながらその場を慌てて離れた。
 もちろん、その動きを帝国兵が見逃すはずもなかったが。
「おい、トカゲのやつが逃げるぞ!」
「放っておけ。どうせあの怪我では遠くまでは行けん、後でゆっくり始末すればいい。まずはこの女からだ…いいか、生け捕ろうとか、お楽しみのことは考えるな。まずは殺せ」
 隊長格の男がそう言うや否や、四人の帝国兵がいっせいに襲いかかってきた。
 ガッ!
「ー…、くぅっ…!」
「なんだ、この女!?」
 不意を打たれたせいもあるだろうが、ブラック17は剣の一撃をまともに頭部に喰らってしまった。頭部からおびただしい量の血が吹き出る。
 しかしそれを見た帝国兵は、それが自らの所業であるにも関わらず驚きの声を上げていた。
 普通なら真っ二つに裂けるか、頭骨が砕けるかのどちらかのはずだ。軍用の鉄製の長剣の一撃を受けて、出血するだけとは、こいつはいったい…?
 その動揺を打ち消すかのように、隊長格の男が大声で叫んだ。
「躊躇うな、一撃で死なねば何度でも打ち下ろせば良い!とにかく、死ぬまで殺せ!」
 そして始まったのは、一方的なリンチ。
 幾度となく剣の一撃を受けるブラック17だったが、しかし、ただ黙ってやられているわけではなかった。
 右腕のキャストデバイス・ユニットが展開し、内部に格納されている魔導球が発光をはじめる。
『ストーム(暴嵐)…単体術式始動』
「いつまでも…調子に…乗ってるんじゃ…ないわよ…!!」



 ズボギャアッ!!
 周囲一帯に瞬間的な暴風が巻き起こり、その際に生じた衝撃波が帝国兵の身体を紙のように引きちぎる!
 ゴト、ゴン、ボドッ、ボトボトッ。
 暴風が過ぎ去ったあと、帝国兵、いや、帝国兵「だったもの」、その身体の部品が床に散乱する。
 自分と他人の血にまみれたブラック17は、血まみれのフロアから出ると、ティナーヴァの姿を求めて砦の中を彷徨いはじめた。

  **  **  **  **

 やがて…



「ティナーヴァ!あぁ、なんてこと…」
「グホッ、ガハ…まったく、なんという醜態だ」
 ブラック17は焚き火の近くでティナーヴァを発見した。重症を負い、口からおびただしい量の血を吐いている。
「傭兵にやられたよ。ああ、心配はいらない。傭兵どもは始末した…足さえ無事なら、こんなことには…」
「いいから黙って、喋らないで。いますぐ応急手当を」
「必要ない。わかるんだ、俺はもう長くない」
「だったら聖域まで運ぶから」
「駄目だ。我々ダーク・ブラザーフッドの信徒は死体を残すことを許されない」
 そう言って、ティナーヴァは懐から一枚のスクロールを取り出した。
「高威力の爆破呪文が書かれている。詠唱と同時に発動し、あまりに破壊力が高いため自殺くらいにしか用途がない。だが、まぁ…つまり、俺がこれを持っている理由は、わかったな?」
「自殺する気なの!?」
「これは陽動にもなる。おそらく、外にも帝国軍の兵士が待機しているはずだ。俺がこいつを、読むまで…少しでも、この砦から遠くへ」
 そこまで言って、ゴホッ、ティナーヴァはまた血を吐いた。
 止めたかった。ブラック17は、なんとしても彼の行いを止めたかった。だが、ティナーヴァ自身がそれを受け入れないだろうということはわかっていたし、そもそも止める意味がないこともまた、充分に理解していた。
 だが、せめてもの手向けに…ブラック17はティナーヴァの額に口づけすると、そのまま砦の出口へと向かった。

  **  **  **  **



 爆発音とともに、サッチ砦が崩落する。
「ティナーヴァ…」
 すでに帝国兵の目の届かない位置まで避難していたブラック17は、仲間の死に胸を痛めていた。
 …仲間、だって?
 無意識にそう考えていた自分の思考に、ブラック17は疑問を抱く。
 そもそも連中は仲間でもなんでもない。自分だって部外者で、ほんの、そう、ちょっとした利害の一致があったため、短い時間を共に過ごしただけ。
 …まるで、家族のように?
「わからない」
 なんでいまさら、自分がこんな感情を抱くのか。
 私はただ人を殺すためだけに生きてきた、生かされてきたのではないのか?そして、そういう生き方に納得していたのではないのか?
 それを、そんのすこしの家族ごっこで心が揺らぐなどと…家族ごっこ…家族…
 私の本当の家族は、どんなだっただろう?
 そこまで考えるに至って、ブラック17はあることに思い当たった。
 そういえば自分は、家族のことをほとんど憶えていない、ということに。
 過去が思い出せない。
 私はいったい誰?誰なの?誰「だった」の?





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