主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2019/05/28 (Tue)01:55
ヴァレクに置き去りにされ、軍の倉庫に取り残されたニコラ。戻ってきた兵士たちは見たところ軽装で、防弾ベストやライフルといった戦闘装備を身につけている様子はない。人数はせいぜい五人前後だろう。とはいえ楽観視できる状況ではなく、また無分別に軍人を攻撃するのも躊躇われる。なにせ、悪いのは盗みに入ったこちら側なのだ。
敷地の外周に沿って移動し、侵入したときと同じように壁の崩れた箇所から脱出すれば、誰にも撃たれず、また誰も撃たずにこの場から脱出できるはずだ。
*Intel*
初期装備は狩猟用の上下二連散弾銃に弾薬、そして狩猟用ナイフだけだ。しかし、もしあなたがチュートリアルをしっかりこなしているか、あるいは倉庫内の探索を済ませている場合、マカロフ拳銃や包帯、そして背嚢といった役立つアイテムを追加で入手していることだろう。また、鍵のかかったストレージをバールでこじ開ける方法も学んだはずである。…それが成功したかどうかはともかくとして。
軍の敷地内には他にも幾つかのアイテムが隠されている。今回はそれらを無視して脱出を最優先したが、もしあなたが取得可能なアイテムや経験値を見過ごすことができない絶滅主義者であるなら、軍人を皆殺しにし、アイテムをすべて奪取しても構わない。
逃げる途中で軍人と出くわしたものの、ニコラは足を止めることなく全力疾走を続ける。背後から銃声が響き、マカロフ弾が背中を掠めたが、命中はしなかった。ちゃちなコンパクトオートで移動目標を狙撃するのは難しいものである、たとえそれが10m以内だったとしても。
敷地から出たあたりで、ニコラを追う軍人たちの足音がにわかに鈍くなった。どうやら深追いをする気はないようだ。
背中から撃たれる心配はなくなったようなので、ヴァレクの足取りを追うことにしよう。本来ならば二人で東にある集積所へ向かい、そこで荷物の仕分けをする予定だったが、一人で逃げ出したあとでも彼はそこへ向かったろうか?
坂道を上がったとき、人の気配を感じたニコラは咄嗟に物陰へ身を隠した。
乗用車がスピードを上げてカーブを曲がった直後、数人の無法者が散弾銃、そして短機関銃を車に向けて見境なしにぶっ放す。フロントガラスが穴だらけになり、車は電柱に突っ込んで停止した。
無法者たちは車に近づくと、そのままガソリンの漏れた車に火を放った。略奪ですらない、無軌道な暴力の発露にニコラは嫌悪を覚える。どうやら彼らに罪悪感といった概念はないらしい。
彼らの服装を観察し、ニコラはあることに気づく…なんてことだ、彼らは警官だ!
本来ならば市民を守るべき警官が、あろうことか暴徒と化し無闇に人々を傷つけている。こんなことってあるだろうか?
警官たちはニコラの存在に気がついていない、おそらく奇襲を仕掛けることは可能だろう。しかしこちらの武器は装弾数が二発の散弾銃、それに対し相手は三人だ。二発で三人を倒せるだろうか、散弾銃だとして?
弾を切らしたあとですぐ拳銃にスイッチすれば反撃の隙を与えることなく制圧できるだろうか?脅威は短機関銃を持った男だ、彼を真っ先に排除したとして、他の警官に散弾銃を見舞われたら…
いいや…ニコラはかぶりを振る、分が悪い。それに、自分に彼らの命を奪うどんな権利があるというのだ?彼らが悪人だったとして?それは正当防衛ですらない先制攻撃を仕掛ける理由になるだろうか?
ニコラは構えかけた銃を降ろす、静かに迂回すれば彼らに見つからず集積所へ向かうことは可能のはずだ。おそらく、見つかれば戦闘になるだろう。なら、見つからなければいい。
*Intel*
坂道の手前にあるバス亭のベンチや、坂を上がった先にあるワゴン内にはスーツケースやロッカーといった調査可能なストレージが存在する。他にも机や箱など調べてアイテムを入手するといったスカベンジングが本作の肝であり、丁寧にマップ内を探索することでゲームを有利に進めていくことができる。そうして回収したアイテムは後々バザーで売却できる。
とはいうもののサバイバル系のゲームとは違い空腹や渇きといった概念はなく、武器や弾薬は基本的に向かう先で入手できるため、効率最優先でアイテムや資金を回収しておかないと詰むといったバランスではない。
なお一般市民を襲撃した警官についてだが、もちろん、倒して経験値の足しにすることもできる。ただし、本作はマップ内に存在する敵を必ずしも全滅させる必要はない、という点は覚えておいて損はないだろう。
集積所の前にはヴァレクのワゴン車が停めてあった。バックドアが開けっ放しになっており、車内に大量の物資が積み込まれている様子が遠目からも見て取れる。
おそらくヴァレクは集積所の中にいるのだろう、しかし、何かがおかしい…
二階の窓の向こう側に人影が見える。ヴァレクではない、が以前に見かけたことがあった。ヴァレクの友人、あるいは知人か。銃を手に、何かを警戒するように窓の外を監視しているようだった。
たんに軍人の追跡を恐れているのかもしれない、あるいは、見捨てられたことを根に持って散弾銃を手に乗り込んでくるであろう赤ずきんの小さな友人を厄介払いすることを思いついたか。
建物は通常の入り口のほかに、梯子を上って屋上からも侵入できるようだ。とはいえ、まだ敵になったと決まったわけではない友人と会うのに不法侵入の真似事をする必要もないだろう。ニコラは地上の扉から建物に入り、階段を上がって二階に到着する。
ヴァレクの友人はニコラを見ると、躊躇無く銃口を向けてきた。彼らの表情を見て、おそらくは警告の言葉より先に銃弾が脳天に送り込まれることを直感したニコラは本能的に散弾銃の引き金をひく。
こうなってはもう、状況が穏便に済む見込みはなかった。
見知らぬ友人たちを倒し、ヴァレクも倒す。彼らは一言も発さなかった。何を考えているのかはわからなかった、明確な殺意を抱いていること以外は。
*Intel*
Jagged Allianceフォロワーであった従来シリーズ同様、本作はライフルや散弾銃より拳銃のほうが早く撃つことができる。またダメージを受けると出血やスタンといったデバフを伴うため、先に攻撃を当てたほうが勝つと考えていい。
今回のような屋内戦では散弾銃よりも拳銃のほうが有利になることもある。しかしフルサイズの散弾銃でも、銃を構えた状態からのスナップショットの速さは目を見張るものがある。
Altキーを使ったサイドステップ等も駆使しつつ、上手く立ち回っていきたい。
ヴァレクが無条件の信頼に値しない男だったのは確かだ。彼にはどこか油断ならないところがあった、だからこそニコラは彼に親愛の情を抱くことはなかった。あくまでビジネスライクな関係だったのだ。
しかし、だからといって、こんな結果になるとはまったく思ってもみなかった。たしかに今、ロシアは混乱している…略奪や殺人が横行し、まったくの無法地帯と化している。しかし自分がその流儀に染まる必要はないと、どこか他人事のように考えていたこともまた、事実であった。
*Intel*
部屋の中を探索し、死体からアイテムを回収するのも忘れずに。
屋内には鍵のかかった扉が二箇所あり、通常はバールかロックピックを使ってこじ開けることになるが、じつは扉はショットガン等を使ってぶち破ることができる。これによってロックピックを節約することができるだろう。たとえ戦闘に使わなくとも、ドアブリーチ用にソウドオフを携帯しておくと役に立つ。
なお鍵のかかったストレージもショットガンで無理矢理開けることが可能だが、ショットガンを使って鍵を破壊した場合、中身も破壊された扱いになるのか、アイテムを入手することができなくなる。
ヴァレクを殺したのは正当防衛だ。それは間違いない。
正当な理由があったにも関わらず、ニコラの気はまったく晴れることがなかった。かつて紛争で多くの人間を殺したというのに、かつては敵を殺すことに使命感すら覚えていたというのに、いま心に去来するのは暗く深い後悔の念だけだ。
彼らはセルビア人ではない。ただ一つ、その言葉だけを繰り返し心の中で呟き続けていた。
彼らはセルビア人ではない…
【続く】
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