主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2019/06/06 (Thu)18:03
近隣住民:
「お嬢さんがた、こんな時代に食べ物の独り占めはよくないな!」
近隣住民:
「困ったときは助け合うのがご近所付き合いってものだ、そうだろう!うちの赤ん坊がお腹を空かせてるっていうのに、君達は優雅に砂糖入りの紅茶を楽しむというのか?不公平だ!」
近隣住民:
「持てる者は持たざる者に富を分け与える、それが常識だろう!共産主義的に考えて!」
翌朝。なにやら表が騒がしいので窓の外を見ると、近所の住民が総出でアパートを取り囲んでいた。彼らの口からは頻繁に「独り占め」「不公平」といった単語が飛び出してくる。わけがわからない。
おそらくは扇動している者がいるのだろう、自然にこうして集まったとは思えない。問題は、彼らが武器を持っていることだ。たいていはナイフ、斧といった道具で、なかには石を握り締めている者もいるが、猟銃を持つ者の存在も僅かに見受けられる。
同居人:
「なんなの?これはいったい何の騒ぎ?」
ニコラ:
「たぶん、ボクが市場で買い物してる姿を見た誰かが、良くない勘違いをしたんじゃないかな。やたらに金払いの良い小娘を見て、近所の人たちにあることないこと吹き込んだとか…ボクも迂闊だったよ。目立たないはずがないのに」
同居人:
「彼ら、武器を持っているわ!あなたも…そんなものを持って、どうするつもり?」
ニコラ:
「なんとか説得してみるよ。ひょっとしたら、彼らの誤解を解けるかもしれない。けど、もしものことがあったら…隠れるんだ。ベッドの下とか、クローゼットとか…とにかく、身を隠せる場所に。ひょっとしたら、彼らは部屋に入ってくるかもしれない。物を壊したり、盗んだりするかもしれない。けど、絶対に姿を見せちゃ駄目だ。なにがあっても、彼らが帰るまで出ていったりしちゃ駄目だ。そうすれば、怪我をせずに済むから。いいね?」
それだけ言うと、ニコラは銃身を切り詰めた散弾銃を掴んで部屋を飛び出した。階段を駆け下りながら、窓の外で大声を張り上げる近隣住民の姿をときおり盗み見る。
あれは暴徒だ。すでに話し合いの段階を通り過ぎている、彼らはただ自分の主張を押し通し、相手を打ち倒し、自分たちが当然享受できて然るべきと思い込んでいるものを手にすることしか考えていない。
彼らは目的を達するまで、絶対に退いたりはしないだろう。どんなことをしてでも。あの狂気的な、血走った目…過去に何度も見たことのある目つき。
近隣住民:
「誰かバールを持ってないか!玄関をこじ開けるんだ!」
略奪が日常化した昨今、厳重に戸締りをしておくのは極当たり前の習慣となっている。とはいえ、こういう状況では僅かな時間を稼ぐ程度の役にしか立たない。
メリメリと音を立てて金具が飛び、開放された玄関に近隣住民たちが押し寄せてくる。ニコラは彼らのど真ん中に向けて散弾銃を発砲した。
近隣住民:
「銃を撃ってきた!人殺しだ、人殺しィーッ!」
口々にニコラを批難しながらも、近隣住民は一方に怯む気配を見せない。
大の大人の男だけではなく、若者、老人、女性、老婆までもが一心不乱に武器を振り回して襲い掛かってくる。そのさまは悪夢的狂気としか言い様がない。
二つの銃身に装填されていた散弾を撃ち尽くし、ニコラは拳銃に持ち替えて応戦する。再装填している暇はない、狙いをつけている暇さえ…二本の予備弾倉が空になったとき、ニコラはナイフを抜くと決死の覚悟で表に飛び出した。
直後、散弾銃の閃光が目に飛び込んでくる。
やられた…!そう思ったが、痛みは感じなかった。アドレナリンのおかげか、いや違う、弾はすべて目の前にいた別の暴徒に命中したのだ。同士討ちだ!
統制がとれず、闇雲に突撃することにか頭にない彼らは、手にした銃がどこに向いているのか、その先に誰がいるのかさえ気にしていない!
全力でその場を脱し、物陰に隠れたニコラは二挺の銃に弾を装填すると、ふたたび射撃を開始した。
拳銃、散弾銃を交互に撃ち、暴徒たちを血の海に沈めていく。
やがて彼らのうち半数が減ったあたりで、恐れをなしたのか、あるいは扇動していたリーダー格の者が倒れたせいかはわからないが、暴徒たちは散り散りに退散していった。
助かった…
安堵のため息をついたニコラは、ふと周囲を見回して心が凍りつく。
死体だらけだ。
兵隊でもなんでもない、ただの一般人たちが血まみれで倒れている。あたり一面血だらけだ。戦闘状況下での興奮が醒め、アドレナリンが抜けたいま、ニコラは自分が何をしたのかを冷静に受け止める必要があった。
正当防衛だったことに疑う余地はない。もし抵抗せずにいたら、いまごろはニコラが亡骸となって路上で無様に転がっていたことだろう。しかし身を守った結果どうなったかといえば、一人が生き延びるかわりに十数人の死体が出来上がったという、ただそれだけの現実が残されたのだった。
…なぜこんなことになってしまったのだろう?自分は彼らに恨みなど何もないのに。
暗澹たる気持ちを抱えたまま、ニコラはアパートに戻った。問題が解決したことを同居人に報告しなくては。
*Intel*
序盤の難関ミッション。一箇所に留まってモタモタと銃を撃っていると、あっという間に囲まれてボコボコにされるので上手く立ち回る必要がある。近接攻撃を受けると直前のアクションをキャンセルして防御動作に入ってしまううえ、ダメージを受けると出血とスタンを伴うので一方的にやられてしまう。いざとなったら走って敵との距離を離すのも手。
投石もなかなか厄介で、命中するとスタンを引き起こす。視界外からの投石でスタンし、囲まれてAkhmet is killedされないよう注意しよう。基本的に本作はプレイヤーと敵の性能がフェアな関係にあるので、自分が攻撃を当てづらいと思った敵の動作を覚えておき、自分もそれを実践すること。移動する相手に近接攻撃は当てられないし、遮蔽物で視界を切れば射撃も命中しない。
もし地雷を入手しているなら、それを利用するのも有効だ。
同居人:
「無事だったの!?」
ニコラ:
「隠れてって言ったのに…でも、もうその必要もないか。うん、ボクは大丈夫。たぶん彼らは、二度とボクらを襲おうなんて気は起こさないんじゃないかな」
同居人:
「銃声が聞こえたわ、それも、たくさん。彼らを殺したの?」
どう答えれば良いというのだ?
正当防衛だった、やらなければやられていた、自分が銃を撃たなければ、あなただって殺されていたはずだ。そのほうがよかったのか…そう言うこともできたはずだ。しかしニコラは、そうした言葉で自分の行動を正当化できるとは思えなかった。
どんなに取り繕ったところで、自分が平然と人を殺せる人間であることに変わりはない。
自分が戦うべき戦争は終わり、人を殺す必要なんかなくなったはずなのに、まるで自分の中でだけいつまでも戦争が続いているようだ。軍人が敵を殺すように、故郷から遠く離れた地でわけもわからず人を殺し続けている。
ニコラ:
「ボクは…汚れているんだ」
【続く】
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