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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/10/05 (Sat)22:32
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2016/11/10 (Thu)18:45





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 マグナスの杖を回収するためムズルフト遺跡へと向かった俺は、サイノッド調査隊の生き残りであるパラトゥスから杖がラビリンシアンに存在することを教えられる。
 ムズルフトを出る直前、サイジックの僧兵からウィンターホールド大学で異変が起きたことを知らされた俺は、杖の回収に向かうまえに大学へと帰途を辿った。いったい、何がはじまろうとしているのか?







 元素の間の扉を開き、大学へ足を踏み入れた俺と相棒のボルガクは、目の前の光景に息を呑む。






 広間は特殊な魔力障壁のようなもので塞がれており、アークメイジのサボス・アレンと、マスターウィザードのミラベル・アーヴィンが立ち往生している。
 いったいなにごとだ?これもマグナスの目の力なのか?とりあえず、悠長に状況報告している暇はなさそうだ。
「学長、これはなんの騒ぎだい?」
「アンカノだ!あいつめ、我々を締め出してマグナスの目で何かをやらかすつもりらしい」
「アンカノが!?」
 珍しく語気を荒げて息巻いているサボス・アレンの言葉に、俺は耳を疑った。
 あのくそったれエルフ、行動が早すぎるぞ!?
 まさか何の策も弄さずに、ゴリ押しで不審な行動を取るとは思っていなかった。いったい、なんのつもりだ?
「学長、対策は…」
「とりあえず、この障壁を破らんと話にならん。さっきから手当たり次第に物を投げつけているが、びくともせん」
「いや、魔法使えよ」
「使っているとも!念動力をな!」
「違うそうじゃない」
「押し入ったらやつを倒し、何をやろうとしていたか確認せねばなるまい。もし抵抗するようなら…殺しても構わん!私が許可する!」
 サボス、ミラベル、俺の三人で破壊魔法をぶち込み、魔力障壁を打ち破る。
 その先には、マグナスの目に向けて魔法を放射するサルモールの使者アンカノの姿が…






「ヤツを止めろ!」
「アンカノ、てめぇーーーッ!!」
 カタナを抜いた俺とサボスが咆え、同時にアンカノへ襲いかかる。
 ダメージを覚悟で飛びかかったとき…強烈な閃光とともに俺の身体ははじき飛ばされ、束の間、意識を失った。







「核(ティルトウェイト)でも落ちたのか、畜生…!」
 強烈な衝撃波の一撃を受け、俺は多少ふらつきながらもどうにか立ち上がる。どうやらボルガクは無事のようだ。しかしミラベルは…






「先生ッ!」
 柱にもたれかかり、苦しそうに身悶えるミラベルに駆け寄り、俺は慌てて回復の呪文をかける。眩い暖色の光に包まれたミラベルは若干平静を取り戻した様子で口を開いた。
「アンカノはいったい何をしようとしているのか…悔しいですが、このままでは手出しができません。それよりも、アークメイジの姿が見えないのです。彼を探し出してください」
 どうやら命に別状はないようだ。
 先刻の爆発のあと、アンカノはふたたびマグナスの目の周囲に障壁を展開していた。おそらく、ふたたび全力で破壊魔法をぶつけ障壁を破壊しても、さっきの二の舞になるだけだろう。
 それよりもミラベルの言う通り、サボスの安否が気がかりだった。
 爆発の衝撃で開け放たれた正面玄関をくぐり、外の広場へと出る。そこには動揺した生徒達が、ぐるりとサボスを取り囲むように立っていた。






「アークメイジが…死んだ!」
 ごろりと横たわり、微動だにしないサボス・アレンの姿を目の当たりにした生徒たちが悲鳴をあげる。
 なんてこった、なんてことをしやがる、あの野郎…!
 こんなことになるなら、隙のあるうちにさっさとアンカノを刺しておけばよかった…そう思いつつ、今回の事態に陥るまでアンカノに不備はなかったことを思い出し、けっきょく、これは避けられない事態だったのだと思い知らされる。世の中のルールっていうのは、大概クソ野郎に有利にできているものだ。
 問題は、今回の件がアンカノの処分だけでは終わらない可能性があるということだ。
「大変だ、きみ、ウィンターホールドの街に化け物が出現しはじめている!いますぐに鎮圧しなくては!」
「なんだって!?」
 慌てた様子で駆け寄ってきたトルフディルの言葉に、俺は驚きの声をあげる。
 ええい、なんだってこう、次から次へと…!
 トルフディルはアルトマーとブレトンの講師を指差し、早口で捲したてる。
「ファラルダとアーニエルを連れて行ってくれ。私はミラベルとともに、アンカノをどうにかできないか試してみよう」
「わかった。無茶はするなよ、ジーサン」
 老練の魔術師の肩を叩き、俺は二人の先輩魔術師とともにウィンターホールドへと向かった。
 足元の危うい橋を渡る途中で、ブレトンのアーニエルが質問してくる。
「いったい、中でなにがあったんだ?」
「アンカノがマグナスの目を使って悪企みを考えているらしい。障壁を張って俺たちを締め出し、アークメイジを攻撃して殺した」
「そ、それはテロ行為じゃないのか!?」
「そうだよ!他国から派遣されてきた顧問が現地機関の最高権力者を暗殺し、さらに被害を拡大させているんだ。これは立派な侵略行為だぜ、下手をしたら、これがきっかけでアルドメリとスカイリムの全面戦争に発展するかも…」
「う、嘘だろ…?」
「有り得なくはないさ」
 そう、俺が懸念しているのは、アンカノが何を企んでいるかじゃない。アンカノは潰す。問題はその後だ。
 アンカノの行動がサルモールを代表してのものなのか、それともアンカノ個人として先走った結果なのかで話は変わってくるが、とにかく、このような事態に首長や上級王も黙ってはいられないだろう。
 なんたって、これはれっきとした主権侵害であり、由々しき犯罪行為だ。サルモールが相手だからといって見過ごすようでは、国家としてのスカイリムの威信は失墜するだろう。アンカノを処分すればそれで済まされるものではない。
 サルモールとしては謝罪せざるを得ない事態になるだろうが、そもそもあのエルフどもがスカイリムに頭を下げるだろうか?逆に、俺たちがアンカノを処分したこと…するであろう…を弾劾するようなことがあれば、それこそ取り返しがつかなくなる。
 畜生、なんだって俺はこう、面倒に巻き込まれるんだよ!?
「チッ…とりあえずは、目前の問題に対処しなくッちゃあなあ」
 事前に警告が発せられていたのか、ウィンターホールドの住民は屋内に避難したらしく、扉や窓は固く閉ざされている。過酷な寒さをやり過ごすための堅牢な戸造りがいま、役に立っていた。






「いくぜ、ボルガクさん!」
「応(おう)ッ!」
 ウィンターホールドの街には、アンカノがマグナスの目の魔力を利用して呼び出したらしい異形の発光体が複数、群れをなして漂っていた。俺たち四人の気配を察知するなり、異形魔法は素早く接近してくる。
 俺と相棒のボルガクは接近戦を挑み、ファラルダは雷撃魔法で追撃を試みる。アーニエルは…なんと鉄の魔力装甲(アイアンフレッシュ)を纏い、素手で殴りかかっていった!
 なんだこいつ、フィジカル・アデプトか?
 おそろしく頑丈な異形魔法に苦戦しつつ、俺たちはどうにか深刻な被害を出さずに異形魔法を退治することに成功した。






「皆、無事か!?」
 戦いで傷ついた仲間に回復魔法をかけてやり、俺は皆の安全を確認する。
 しかし、衛兵まで逃げることはないだろうが…魔術師のほかに戦いの担い手がいないことを苦々しく思いつつ、俺は宿屋の前に死体が一つ転がっているのを発見した。
 あれはたしか…ランミルとかいう、いつも酒を飲んでクダを巻いてた酔っ払いだ。まあ、どうでもいいことだろう。
 やがてファラルダが俺に言った。
「私たちはしばらく街に残ります。あなたは大学へ報告に戻って」
 俺たちはこの場をファラルダとアーニエルに任せ、来た道を引き返した。

 大学へ戻った俺たちはひとまずウィンターホールドの混乱が沈静化したことを知らせ、ミラベルの指示を乞う。
 彼女は俺たちがマグナスの杖を回収しにラビリンシアンへ向かうべきだと言い、生前のアークメイジから預かった道具を差し出す。一見、なんの変哲もないサファイアのアミュレットと、ノルド細工の鉄製ネックレスだが、なんと、これらは以前サボスがラビリンシアンから持ち帰ったものらしい。
 いつか必要になるときがくる、とサボスは言っていたらしい。彼は今回の出来事を予見していたのだろうか?







 ウィンターホールドからラビリンシアンまでは多少距離があったため、俺たちはドーンスターを経由する北回りのルートで向かうことにした。
 途中、クエストマーカーがぶっ刺さっていたユングビルド墓地へと侵入。
 なにか用があったらしいのだが、なにせジャーナルの中でも「その他」カテゴリに入っており、誰の依頼で何をするために来たのかがまったくわからない。






「そういえばシロディールと違って、スカイリムには低級のゴーストって存在しないのかな」
 生前の自我を幾らか保つ霊体を前に、俺はそんなことをつぶやく。
 ひょっとして味方ではないかと思い接触を図るが、やはりというかなんというか、霊体は俺を認識した途端、ダガーを抜いて襲ってきた。幽霊のくせに物理特化とか、やはりノルドは死んでも脳筋か。あるいはソブンガルデとやらの思想が影響しているのかもしれない。
 どうやらここでの俺の目的は日記の回収のようだった。アロンディルとかいう、ドーンスター出身の死霊術師が記したものらしい。女性の実験体ばかりを集め、霊として使役していたようだ。
 どうも霊体との「交わり」についても研究していたようで、これについては個人的にも非常に興味深い。
 すべての日記を回収し、ユングビルドの最奥聖域へと向かったとき、右手に女の霊を侍らせた玉座の主…アロンディルその人と対面した。
 アロンディルは俺を見るなり攻撃を仕掛けてきた。まあ、当然か…人目を忍んで死霊術の研究に没頭してたのだものな。彼のオタク精神には敬意を表したいが、敵対するなら戦わざるを得ない。






 どうやらヤツの専門は俺と同じ冷撃魔法らしい、氷結の嵐を一身に受けた俺は咄嗟に火鉢へと飛び乗り、荒っぽい方法で身体を解凍し、カタナを手にアロンディルに飛びかかった。
「そんな、まさか…!」
 驚きおののくアロンディルの胴に刃を突き刺し、そのまま上方へ振り上げて真っ二つにする。
 肉体の断面からおびただしい量の血を噴き出しながら、アロンディルは前のめりに倒れた。
 クエストを進め、日記を持って行くべき場所は…
「…盗賊ギルド?」
 やばい、まったく身に覚えがない。







 その後スカイリム北方の都市ドーンスターへ到着した俺たちは、以前より招待状を預かっていた博物館へと向かった。博物館というか、自宅兼展示場とでも言うような、極めて小規模なものではあったが。






 しかしショーケースに陳列されていたものは、どれも歴史的価値のある貴重な品々だった。
 いずれも、第三期のセプティム王朝滅亡のきっかけとなるオブリビオン動乱を引き起こした深遠の暁教団にまつわるものだ。管理人のサイラス・ヴェスイウスはかつて深遠の暁に所属していた信者たちの子孫らしく、いわゆる由緒正しい血統というわけだ。アリノールにでも行けばVIP待遇で迎えられるんじゃないかと思う。
「オブリビオン動乱以降、当然のことではあるが深遠の暁のメンバーを一掃しようと幾つかの討伐グループが発足した。そうした勢力から逃れるため、我々の一族は過去を隠し、商人としてひっそりと繁栄してきたのだ。いまでは多大な資金と影響力を持つ、街のちょっとした名士なのだよ」
「へぇ。カバルコ社みたい」
「しかし私は、タムリエルの歴史を語るうえで我が一族が重要な役割を果たしたことが世間から忘れ去られつつある、いや、蔑ろにされつつあることに危機感を覚えた。我が一族が歴史に与えた影響は、もっと多くの人間に認知されて然るべきだろう?そう思い、この博物館の設立に至ったのだ」
 それは、あまりにも危険な試みであった。
 なにせ現在のエルフ好き勝手絶頂社会はセプティム王朝の崩壊と、それに伴う帝国の弱体化が原因であり、そのきっかけを作った深遠の暁の存在は、スカイリムにとっても忌むべきものである。下手をすれば、国粋主義者…ストームクロークのような…に命を狙われてもおかしくはない。
 だが、彼の目的はあくまで教育を目的とした歴史の再認識であり、その志は通常の博物館と何ら変わるものではない。彼自身が過去の深遠の暁の所業を礼賛しているわけではないし、社会不安を煽る意図はないものと思われる。
 要するに、俺個人としては「おおいに結構なんじゃねぇの?」と言いたいわけである。やや好意的解釈に過ぎるかもしれないが。
 また、サイラスは俺に一つ仕事を依頼してきた。
 どうやら過去に深遠の暁を駆り立てた勢力に、教団が崇拝していたデイドラ神メエルーンズ・デイゴンのもたらしたアーティファクト「メエルーンズのカミソリ」を奪われたらしく、狩人たちはそれを破壊して三つに分け、現在は狩人の血筋を引く末裔たちが保管しているという。
 なんという因縁。
 サイラス曰く、金に糸目はつけないので、もしそれらを見つけたら買い取りたいという。また、入手手段は問わない…と。
 そこまで聞いた俺は、とびきり愛想の良い笑みを浮かべると、ざらざらした猫撫で声を発した。
「実を言うとだね。俺は、あんたが欲しがってるブツのうち二つを既に持っているんだ」
「なんだって!?」
「刃の破片と、柄頭石だ。冒険中、たまたま手に入れてね。良い買い手はいないかと思ってたんだけど、モノがモノだけに、誰にでも気軽に売れるわけじゃないし。アンタみたいに正統な理由があるんなら、俺としては喜んで売りたいと思うワケね」
 というわけで、商談成立。
 パーツ一つで金貨1500枚、二つあわせて3000枚。良い商売である。
 最後の一つである柄を手に入れたらまた来ると言い残し、俺たちは博物館を出た。







 ドーンスターの宿屋ウィンドピークに足を運んだ俺たちは、ひさしぶりに吟遊詩人としての腕を発揮。






「おひさしぶりの楽団アーケイドだよ!さァ寄った寄った!」
 それにしてもこのカリタという娘、ちょっと音痴すぎるじゃねぇの?
 演奏を終えたあと、俺はエイドラの信徒と思われるローブを着た男に話しかける。こういう場所ではあまり見かけない人種だったし、なにより腰にぶら下げた黒檀のメイスが目立って仕方がない。
 どうやら彼は、このところドーンスターの住民を悩ませている悪夢について何か知っているらしかった。
「いやーなにせさ、俺が街に来たときはドラゴンが襲来してて、倒したあとにあちこちイベント会話が聞こえてはいたんだけど、生存者の確認を優先しててそれどころじゃなかったんだよねェ…」
 などとぼやいてみる。
 しかも、よりにもよって伝説のドラゴンが相手だったから、死人の一人や二人は出るだろうと思っていたのだが、幸いにも死傷者は出なかった。傷ついた衛兵を魔法で治療して回る俺の姿はさながら戦場の衛生兵、もとい治癒師の如しである。
 まあ、それはともかく。
「現在ドーンスターを覆っている悪夢、その原因はデイドラ神ヴェルミーナによるものだ。さらに言えば、ドーンスターの近くにある暁の塔…ナイトコーラー聖堂に安置されているアーティファクト、『堕落のドクロ』によってもたらされたもの。頼む、私に協力してほしい」
 目前の男、マーラの信徒エランドゥルはそう言うと、ジョッキのエールをグイッと呷った。
 その様子を見ながら、俺は一言。
「それはいいんだけどさ。そのー…ヴァーミルナ?」
「ヴェルミーナ」
「ヴァーミルナ?」
「ヴァールミナ」
「ヴァーミルナ?」
「…わかった。ここはヴァーミルナで統一しよう」
 なぜヴァーミルナだけ表記揺れや誤訳がこうも混在しているのかッ!とりあえず、ここではオフィシャル訳であるヴァーミルナで統一したいと思う。
「すべての疑問に答えると約束しよう。ついてくるがいい!」
「ついていくのはいいけど、アンタちょっと飲み過ぎじゃないかえ?」






 なんたってこの男、演奏中からずっと飲みっぱなしである。なんというウワバミ。神の信徒とは思えん。
 俺が頼みを快諾したあとも、この男、しばらくその場から動かず飲んでばかりだった。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。魔術大学のクエストが急展開、でもって寄り道再開の巻。
 しかしあのー、ウィンターホールドに出現した異形魔法ってヤツはヤバイですね。レベル180で体力が2000くらいありましたもの。どんだけタフなんだよ。しかもアーニエルはステゴロで殴りかかっていくし。魔術大学っていったい…




アイアンフレッシュ&素手。脳筋ブレトン



 あとエランドゥルがずっと酒飲んで微動だにしなかったのはガチです。クエスト更新したのに全然動きゃしねー。動いたら動いたで足遅いし。もっとキリキリ走らんかいワリャア!












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2016/11/08 (Tue)18:31





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 ウィンターホールドへと帰還した俺は、サイジック会の僧兵からマグナスの目が持つ脅威について説明を受ける。なんでも、このままだと世界がヤバイらしい。連中はこの謎のオーブの正体を知っているらしいが、それにしてはメッセージが抽象的すぎるじゃねえの?
 とりあえずはとっかかりとして、ダンレインの預言者とかいうやつを探すことになった。そいつは魔術大学の地下、ミッデンという魔窟に潜んでいるという。
 スカイリムの内戦もいよいよ本格的におっ始まりそうな気配だし、おっかない事態が続きそうだぜ…







 ミッデンへと向かうまえに、俺はアルケイナエウムのウラッグのところへ立ち寄った。






「持ってきたぜ、例の本。涙の夜、アルテウムについて、アイレイド最後の王…の三冊だ」
 サールザルで発見したマグナスの目についての情報を集めるため、オーソーンが持ち逃げした本をフェルグロウ砦から回収していた俺は、それを書庫管理人のウラッグに渡した。
 保存状態を確認し、さほど損傷していないことに安心したのか、ウラッグは機嫌が良さそうな声で言った。
「よくやってくれたな。フム、そう…これだ。涙の夜、だ。読んでみたか?」
「ざっと目は通したよ、旅の途中で熟読はできなかったけど。スカイリム最古の都市であるサールザルにエルフが侵攻した事件についての論文だな。なんでも、原因は領土紛争や人種問題ではなく、もっと別の、サールザル地下に眠っていた、大きな力を持つ遺物を巡る戦いだったと」
「そうだ。そして500の同胞団を率いるイスグラモルはエルフを追い払ったあと、それをふたたび封印した…これは明確に証明された論説ではないが、そう考えれば辻褄が合う箇所は多い。非常に多い」
「エルフが狙い、イスグラモルが封印した遺物の正体が、あのマグナスの目だと?」
「その可能性はある。仮説に過ぎないがな」
 そもそも、マグナスとは何者か。
 ムンダス(いわゆる、我々定命の者が存在する次元)の創造に関わったとされるエイドラ神だが、九…いや、八大神とは関係がない。かつて魔法を司る神として崇められ、神々の領域であるエセリウスからマジカを持ち込み、定命の者に魔法を授けたという。
 そういう、いわば魔法の始祖、大それた存在の名を冠するマグナスの目がいかなるものか、本来どのような使用を想定した魔道具なのかを解明しなければならない。
「ところでウラッグさん、妖精族は入荷した?」
「まだだ」
「そっかー…」
「ところで、少々珍しい書物が入ったぞ。『狩りへの出立』という、やや示唆的に過ぎて難解な内容だが、デイドラの儀式について書かれたものだ」
「あ、じゃあそれ貰います」
「ついでだが、私も探している本があってな。『野生のエルフ』の写本だ、もし旅の途中で見つけるようなことがあったら持ってきてくれないか」
「エロ本?」
「違うわ。古代アイレイド、ワイルドエルフに関する本だ」
「なあんだ。てっきり森の中で野生のエルフに出くわした冒険者がムフフな体験をする本かと思ったのに」
「たわけか貴様は」
 阿呆なやり取りもそこそこに、アルケイナエウムを出た俺たちはミッデンへ向かう前に情報収集をする。
 一ヶ月前から屋外で活動している生徒たちの消息が掴めないこと、トルフディルが魔法の実験にドラゴンの鱗を必要としていること、また彼が愛用していた蒸留器が紛失したことなどを小耳に挟みつつ、俺とボルガクは閉ざされた地下への入り口を開いた。







 大学地下のダンジョンは下水や牢獄を思わせる環境で、凶暴なクリーチャーや、怪しげな実験跡などをところどころで見かける。
 もとは人工的に整備された施設だが、最初はどんな目的で作られたのか?また、なぜ大学はこのような危険な環境を放置しているのか?といった疑問が尽きない。いつ大学に深刻な被害をもたらしてもおかしくはない、というのは大学側を過小評価しているのかもしれないが、少なくとも街の住民にこのダンジョンの存在を知られれば、大学への不審を抱かれることは避けられまい。
 もっとも、そのテの心配をするのは俺の仕事ではない。
 しばらく捜索を続け、俺たちはダンレインの預言者を発見する。
『忍耐は絶望へと変わるだけだ。しかし不屈の志を持つのであれば…来るがよい』
 突如響いた声に導かれ、俺たちが向かった先に待ち受けていたのは…






「うおっまぶしっ!」
『私を探していたようだな』
「エート、あんたがダンレインの預言者…霊体?エーテル?魔法の実験による事故が原因で姿を消したと聞いてたけど、なんだか最近はこういう妙なのばっかりに縁があるなぁ」
『残念だが、ここへ来るのが遅かったようだな。すべては動きはじめてしまった』
「あ、そっすか。じゃあ俺はこのへんで失礼します」
『待たんか。馬鹿者、たわけ、少しは食い下がらんかタマナシヘナチンが』
「(めんどくさいやつだなあ…)」
『もとへ…お前をここへ導いた遣いは、求めるべきものを伝えなかったようだな。それは、すなわち知識。すべての魔法使いが追い求めるもの。しかし知識は腐敗し、やがて破滅をもたらす』
「あの、ポエムはいいんで手短にお願いします」
『ここからが盛り上がるところなのだがのう、まあよい。精神が汚染されることなくあのオーブの力を利用するには、マグナスの杖が必要だ。くれぐれも気をつけるがよい、サルモールも同じものを探していた』
「サルモール?どのサルモールだ?」
『アンカノという男だよ』
「アンカノ!?」
 預言者の言葉に俺は耳を疑う。
 目の前の電飾ジジイがどれだけ長生きかは知らないが、サルモールと聞いて俺が咄嗟に思い浮かべたのは涙の夜の事件があった当時のことだった。あるいは、俺たちがサールザルでマグナスの目を発見する以前のことではないかと。
 だから、「どのサルモールだ」と訊ねたのだ。まさか、これほど直近の話だとは思わなかった。
 俺の前ではすっとぼけていたが、やはりアンカノは今回の事態を正確に把握していると見做して間違いない。それも、俺たちに先んじて動いている。由々しき問題だ。

 大学へ戻った俺たちはマグナスの杖に関する情報を集めはじめた。
 おそらくはアンカノと対立する行動であるから、慎重を期さなければならない。救いがあるとすれば、アンカノは大学の連中に頼らない…「マグナスの杖を知っているか?」などと聞いて回ったりはしないだろう…ということだ。内部に協力者を抱えていれば別だが。
 そういえば前に別の人間から同じ質問を受けた、などという言葉は聞きたくなかったが、幸いにもそうした事態には出くわさなかった。
 マスターウィザードのミラベルによれば、最近サイノッド…メイジギルドの解体後に出現した、シロディールの魔術結社だ…の連中がマグナスの杖の在り処を尋ねてやってきたという。
 ムズルフト遺跡について質問をし、場所を知った彼らはそこへ向かったらしい。単純に考えれば、サイノッドはマグナスの杖がムズルフト遺跡にあることを知っていて、回収へ向かったと見るべきだが。
 現在サイノッドは派閥抗争に明け暮れているらしく、帝国の寵愛を受けるために強力な魔道具の収集を続けているという。サルモールと手を組んではいないだろうが、みすみす杖を渡していい相手かどうかは疑問が残る。
 少なくとも、協力を期待できる相手だとは考えないほうがいいだろう。







 ウィンターホールドよりさらに北、セプティマス・シグナスの隠れ家へと向かった俺たちは、旅の途中で収集したエルフ族五種の血液を老人に渡した。
「聞こえるぞ…彼らの生命の鼓動が。来なさい、混合をはじめよう」
 相変わらずわけのわからないことを口にしながら、老セプティマスは採血器を自らの身体に突き立て…血液を注入した!






「なるほど、そういうことだったのか…」
 セプティマスの全身にエルフの血が巡り、これまで頑なに閉ざされていたシェルターの扉が開く。ドゥーマーにしか開くことのできないゲート、自らの体内にエルフの血を取り込むことで、保安装置を誤認させたのか。
 だがしかし、危険な方策には違いない。おそらくセプティマスは無事ではいられないだろう…彼を利用し使い捨てる、ハルメアス・モラの冷酷な意図が垣間見えた。
 はてしなく遠いドゥーマー坂を全力疾走するセプティマスを追い、俺とボルガクも古代のシェルターに足を踏み入れる。
 最奥の祭壇に安置されていたのは、一冊の本だった…
「これは…本か?いや、違う、そうか。わかったぞ…超越した世界は心の中で燃えるのだ、なんと素晴らしい…!」
 ただならぬ様子で絶叫するセプティマス、断末魔の声とともに肉体が崩れ落ち、灰と化した。






「畜生…ないぞ。これはない」
 デイドラに一身を捧げた哀れな老人の末路を目の当たりにし、俺は顔を歪める。
 やつらは悪魔そのものだ、というネラカーの言葉を思い出す。まさしくその通りだ。デイドラ神はムンダスという遊び場で好き勝手に駒を動かし、結果が思い通りにいったの、いかなかったので楽しんでいる。
 そのせいで人間が死のうが…構いやしない。そのせいで誰が苦しみ、悲しもうと、その一喜一憂ですら連中にとっては酒の肴に過ぎないのだ。そんなことでもしなければ楽しめないのだ、連中は。けったくそ悪い永遠の命というやつは、さぞかし愉快な代物らしい。
 俺はセプティマスが追い求めたもの…すべての魔術師が追い求めたもの…知識に手を触れる。
 その知識は本の形をしていた。奇妙な装丁で、見たところ、様々な人種の皮を繋いだもののように見える。ページを開いてみるが、わけのわからない記号や文字が並ぶだけだ。
 本…オグマ・インフィニウムを手に、シェルターを出ようとしたとき、すべての仕掛け人であるデイドラ神ハルメアス・モラが姿を現した。






『我が勇者よ、こちらへ…オグマ・インフィニウムを手に入れたな。信徒ザルクセスが記した、我が知識の結晶の書を』
「セプティマスを殺したな」
『間接的ではあるが、いかにも。数百年ものあいだ、日の目から遠ざけられていたその書をおまえに渡すためには、あやつの協力が必要だった』
「俺に?」
『セプティマスはおぬしのために死んだのだ。それはおぬし自身、よくわかっているだろう。そのことを知ってなお、知識の書を手放すことはできまい?』
「なぜ俺を選んだ?この本を俺に授けるどんな理由があんたにあるっていうんだ?」
『ともに奇跡を起こすために』
 その声を聞いた俺はゾッとする。
 俺の非礼を意に介すことなく、歓喜の声をあげる異形の存在に。
『おぬしは自身の本能の赴くままに行動すればよい。それこそ我が望み』
 そう言って、ハルメアス・モラは姿を消した。最後に一言言い残して。
『また会おう』
 嫌味の一つを返す気力も沸かなかった。
 一人の老人を犠牲にして得たデイドラの知識の結晶。安い取り引きではあったのだろう、べつにセプティマスとは懇意の仲ではなかったし、もっとつまらない物のために人を殺したこともある。
 等価交換、大局的に見れば些事…だが、と俺は思う。不愉快だった。
 俺のいつもの行動は、俺のルールに従って動いた結果だ。ポリシーとか、内的倫理とか、呼び方はなんでもいいが、とにかく、デイドラの連中にはそれがない。尊重という概念が。
「勝手なことばかり言いやがって」
 そう吐き捨てると、俺は主のいなくなった隠れ家をあとにした。







 その後、俺たちはサイノッドの魔術師たちが調査に向かったというムズルフト遺跡へ向かった。






「てっきり問答になるかと思ったが…手間のかからない展開になりそうだな」
 遺跡へと足を踏み入れて最初に発見したのは、サイノッドの一員と思われる魔術師の遺体。彼が死んだのは俺たちが遺跡に到着した直後で、なにやらわけのわからないうわごとをつぶやいた直後に絶命した。
 彼のローブを探り、遺跡の鍵と、サイノッド本部からのものと思われる通達書を抜き出す。
 どうやらスカイリムへ遠征に来た調査隊は期待された成果を出せておらず、そのせいで能力を疑われているらしい。そのことは、こちらにとって有利に働く可能性がある…余裕を失った相手とは交渉の余地がある。理性を失っていなければ、だが。

 ちなみに今回の探索から、俺は新しく用意した装備を着用している。
 吸血鬼のローブから『黒檀の軽鎖帷子』…ボエシアより賜った黒檀の鎖帷子を改造し軽量化したもの(エンチャントを外し軽装カテゴリ化)に着替え、エルフの篭手に黒染め処理(テクスチャ改造)を施した『エルフの黒染篭手』、そして革を加工して作った(革素材/軽装カテゴリ)の『南方商人のフード』を着用している。
 いずれも自作のModで用意したものだが、基本性能はベースとなった装備の数値を継承しているのでロアフレンドリーだ。もっともチート鍛冶&付呪(薬品ブーストつき)は遠慮なく利用させてもらったが。
「本土(シロディール)の魔術師とやり合う可能性もあったから、ちょっと気合を入れて装備を新調したんだけど…取り越し苦労だったかねェ」
 ドゥーマーの自動人形が稼動しているあたり(おそらく魔術師たちはこいつにやられたのか?)、あまり深い領域まで調査は及んでいないだろうと俺は予測をつけた。






 遺跡はところどころ行き止まりになっており、壁を破壊して洞窟を掘り、別のフロアへの突破口を開いたらしき形跡が残っている。
 これを魔術師たちがこしらえたのか、あるいはファルメルたちがこしらえたのかはわからないが、いずれにせよ、大変な労働だったに違いない。また、このあたりは月長石の鉱脈でもあったようだ。
 あちこちに亡骸となって転がっている魔術師たちの装備はスカイリムのそれとほとんど変わらず、ファルメルたちを相手に善戦したものの(魔法で殺されたらしいファルメルの死体も散見される)、駆逐するまでには至らなかったようだ。
 少なくとも、シロディールのゴブリンどもよりは厄介な相手だったろう。
「こりゃあ、生き残りはいないかもな…」
 邪魔が入らないのは結構なことだが、もしサイノッドの連中の探し物がマグナスの杖なら、その情報を入手できないのはこちらにとっても不利だった。入り口でくたばった魔術師のほかに、記録その他を身につけている者をまだ見かけていない。
 これほど手酷くやられた状況なら、身柄の安全と引き換えに情報を提供させることは難しくないだろう。友好的にやるにしろ、尋問して口を割らせるにしろ、まずは生きた情報源がいなければ話にならない。
 俺がサイノッドの生存者と鉢合わせたのは、手がかりが一向に見つからず焦りはじめたときだった。






 男は俺たちの姿を確認するなり、両手から炎を迸らせて咆えるように言った。
「ガヴロス…ではないな、おまえたち何者だ?なぜこんなところにいる?」
 同胞が壊滅したのだ、気が動転していても不思議はない。俺はなるべく相手を刺激しないよう、慎重に言葉を切り出した。
「落ち着いてくれ、心配するな。俺たちは敵じゃない…ウィンターホールド大学の者だ。サイジックの調査隊がこの遺跡に向かったと聞いて、助言を求めに来た」
「大学の生徒か?なぜ、わざわざ…まあいい、ここまで来れたのなら、ブチ切れたファルメルやガラクタ人形どもを相手にできるってわけだよな?さっきまで聞こえてきた戦闘音は、あんたたちのものか」
 男の名はパラトゥス・デシミウスといった。
 調査隊の中枢メンバーの一人で、相棒のガヴロス・プリニウス(入り口で死んでいたやつだ)とともに特殊なクリスタルの作用について研究をしていたらしい。もっとも、彼はガヴロスに研究成果を横取りされる寸前だったらしいが…
 パラトゥスはクリスタルというものについて延々と講釈を垂れていたが、その口からマグナスの杖に関する言葉はまったく漏れてこない。連中の探し物はマグナスの杖ではないのか?
 オーケイ、俺はそう言って、提案を申し入れる。
「その、クリスタルとやらの捜索に協力しよう。で、あんたが無事にシロディールへ帰れるよう、この遺跡を出るまでの身の安全を保障する。無事に国へ帰れれば、あんたは貴重な研究成果をすべて自分のものにできるわけだ(俺はこの部分を強調した。彼が仲間の死を悼んでいるようには見えなかったので)。そのかわり、俺たちにも協力してほしい」
 はっきり言って、これは賭けだった。
 まずサイノッドの連中が味方かどうか(連中が大学をどう思っているのか)がわからないし、マグナスの杖の行方を追う者をどう対処するかも未知数だ。だがこちらの状況も一刻を争うし、相手の知見がどれほどのものかがわからない以上、迂闊にハッタリをかますのは危険だ。
「俺たちは、マグナスの杖を探している」
「なんだと?なぜ、そんなものを…まあいい。いま俺が話せることは何もない。まずはクリスタルを回収してくれ、話はそれからだ」

 クリスタルはファルメルの魔術師が持っていた。スノーエルフの成れの果てを倒し、一部が破損したように見えるドゥーマーの細工物…フォーカス・クリスタルというらしい…を回収する。
 もとはガヴロスがこのクリスタルを持ち逃げし、調査隊を遺跡に置き去りにしたままシロディールへ逃げるつもりだったらしいが、彼はファルメルの襲撃を受け、クリスタルを奪われたうえ致命傷を負い、遺跡の入り口で果てた…というのが顛末らしい。
 クリスタルをパラトゥスに渡し、彼に連れられるまま俺たちは遺跡の深部へと向かう。
 そこで目にしたのは、かつてムザークの塔で見たようなドゥーマーの天体儀だった。






「こいつにフォーカス・クリスタルを組み込んで作動させれば、もし俺の予想通りにいけば、素晴らしい光景が見れるはずだ。上手くいくといいが」
 どうやらパラトゥスはクリスタルを手に入れただけでは満足しないらしく、それ以上のものを俺たちに求めているようだったが、いまのところ、俺たちに選択肢はなかった。やつを縛り上げて爪を一枚づつ剥がすのは、やつが俺たちに協力する気が微塵もないと確信できてからでいい。
 中央の装置にフォーカス・クリスタルを装着し、魔法を使って投射された光の向きを調整する。
 やがて機械が動きだし、レンズに反射された光が壁に向かって集束する。それは、スカイリムの地図を表していた。
 てっきり星霜の書でも出てくるのかと思っていた俺は拍子抜けしたが、パラトゥスはそれ以上に驚いている様子だった。






「なんだ、これは…予想と違う。誤差なんてものじゃない、こんな結果になるはずがない!」
「なに…?」
 ただならぬ様子でまくしたてるパラトゥスに、俺は眉をしかめる。
 とりあえずこの装置が兵器ではないらしいこと、パラトゥスに俺たちを騙し討ちするつもりがないらしいことはわかった。だからこそ、物事が順調に進んでいないのは気がかりだ。
「この投射機は一面に夜空を映しだすはずなんだ!なにかが装置の機能を阻害している、魔術的な力が…この力の発信源は、ウィンターホールドからか!?」
 そのパラトゥスの言葉に、俺は動揺する。
 まさか、マグナスの目の影響力がこんな場所にまで及んでいるのか!?
 パラトゥスが口から出まかせを言っているようには見えなかった。しかし、だとすれば…これはまずい。
「おまえ…最初からこうなることがわかっていたのか?いったい何を隠している、ウィンターホールドの魔術師め!いったい、『何を大学に隠し』ているんだ!?」
「待て、待ってくれ…あんたの仕事を邪魔する気はなかった。説明させてくれ」
 先刻まで青ざめていた顔を紅潮させて詰問してくるパラトゥスに、俺は喉を詰まらせつつ弁解を試みる。
 大学がサールザルの遺跡を調査していたこと、そこでマグナスの目を回収し大学に持ち込んだこと、マグナスの目が及ぼす未知の影響を憂慮し、事態解決のためにマグナスの杖を探していることを説明した。
 ただし必要以上の猜疑心を抱かせないため、行動のすべては予知能力を持つ大学の生徒に従ったものであると言い(嘘ではない。ダンレインの預言者が人間の形をしていないことは説明しなかったが)、また、サイジックの介入についてはその一切を伏せた。
 もちろんパラトゥスとて、俺が徹頭徹尾、何もかも正直に打ち明けたとは考えていないだろうが、それでも一応は納得すると、渋面を崩さぬまま口を開いた。
「なるほどな。マグナスの目か…それなら説明がつく。だが、そもそも、そんなものを大学に持ち込もうとしたこと自体の言い訳にはならないぞ。何を企んでいるかは知らないが、身の丈以上のことをした報いだな」
「マグナスの目について何を知っている?」
「それは言えない。我々の極秘研究の内容を明るみに出すわけにはいかない、ここでの活動の詳細然り…それらはすべて、シロディールの、帝国の安全を守るための措置だ。妙な誤解をするなよ」
「アルドメリの脅威について言っているのなら、俺たちは協力し合えるんじゃないか?どうして必要以上に大学を警戒するのか、俺にはわからないな」
「それは現状における立場が不安定だからだ。互いにな。サイノッドがシロディールに確固とした基盤を築くにはまだ時間がかかるし、サルモールの監視者が駐在している大学の技術がアルドメリに漏れないと、どうして言える?」
「…… …… ……」
「壁に投射された地図を見る限り、マグナスの杖はラビリンシアンの遺跡にあるようだ。印が二つあるだろう、一つは大学、もう一つはラビリンシアン、魔術神マグナスゆかりの魔道具が存在する位置を示している。まあ、せいぜい幸運を祈っておくよ」
 そう言い残しパラトゥスは踵を返した。どうやらマグナスの杖を捜索する大学の動きを邪魔するつもりはないらしい。
 今の彼の言動は彼個人というより、サイノッドの立場を代表してのものだろうから、彼らがマグナスの目にまるわる一連の出来事に介入する気がないらしいことは理解できる。
「私はシロディールに帰還し、本部に今回の出来事を報告する。おそらく、本部は大学のことを快くは思わないだろう」
 最後にそう言って、パラトゥスは俺たちに背を向けた。
 手を下すなら、今しかない。
 だが…俺はカタナの柄にかけていた手を離し、パラトゥスが立ち去るのを見送った。
 それまで寡黙を保ち続けていたボルガクが口を開く。
「あのまま行かせていいのか?」
「たぶん、あいつの報告は大学にとって不利になるだろう…表面的には、ね。だから、ここであいつを始末して、調査隊は誰一人帰還できなかったってことにしてもよかった。ただ、それはちょいと近視眼的判断に過ぎる。スカイリムの今後を考えれば、多少のリスクを考慮に入れてでもシロディールの魔術結社と繋がりを作っておきたい」
 煌々と壁に照らされる光の地図を見つめながら、俺は言葉を続けた。
「パラトゥスが、ここでの俺たちの行動をそのまま本部に報告すれば…少なくとも、俺たちがクリスタルの回収に協力して、パラトゥスには危害を加えず遺跡の脱出を手助けしたことは伝わるはずだ。そう願いたい。連中も、無闇に大学と敵対したいわけじゃないだろうから」
 もちろん、今回の判断が裏目に出る可能性もある。だが、直接的な利益が判断のすべてではないことは肝に銘じておくべきだ。

 ムズルフトから出ようとしたとき、またしてもサイジックの僧兵が姿を見せた。
 例によって周囲の時間を止め、たった二人で恋人のように密談するという、例のスタイルだ。






「あんたは、たしかサールザルで見たほうだな」
『ひとまず守備は上々といったところか。しかし、本当の試練はまだ先にある』
「マグナスの杖はラビリンシアンって場所にあるらしい、これから回収に向かうよ」
『そのまえに一度大学へ戻ったほうがいい。どうやら抜き差しならぬ事態に陥っているようだ』
「大学?」
 いったい、なにがあったっていうんだ?





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。今回の中盤から防具を新しいものに変更しました。詳細は本文中に説明した通りです。最初はローブ系のMod入れようかと思ってたんですが、なにやら種類が多いし面倒臭くなったのでいいや以前それなりにビビッときた黒檀の鎖帷子を軽装扱いでデッチ上げちまえということでこうなりました。
 アーケイドは特別な個性を持ったスペシャルな存在というのではなく、あくまでロアフレンドリーなキャラとして扱っていきたいので、見た目が個性的になり過ぎないよう注意はしています。無駄にレベルが高いけど(現在レベル103)、それは普通にプレイしててそうなってしまったんだからしょうがない。





 








2016/11/06 (Sun)05:56








 どうも、グレアムです。Skyrimプレイ記(テキストは3分の1くらい創作入ってる)の主人公、アルゴニアンの商人ビル・アーケイドのイラストを描いてみました。エルフの篭手マジ面倒臭い造型してる。死ねばいいのにアイレイド人。
 このテのRPGでは普段、脳筋近接戦闘系ばかりプレイしていたのでSkyrimでは魔法使いでプレイしようと思ったら、蓋を開ければ武器戦闘長優遇システムだったというこの。スキルで威力爆上げ&チート鍛冶のコンボとか、これ構想段階で誰もツッコミ入れなかったのかよ…というレベルの酷さ。
 弓なんて前作の時点でバランスブレイカー扱いだったのに、今作ではそれを遥かに飛び越えるヤバさですからね。普通に戦うと大苦戦するドラゴンの体力が一瞬で溶けるという。
 そんなわけで次第に戦闘スタイルが脳筋になりつつありますが、なんとかして魔法を活かしていきたい。氷の谷もいいんだけど、氷の壁使ったら思ったより強かったので最近はそっちを利用してます。
 もっと強力な敵専用魔法とかあればそっちに乗り換えるつもり。

 あんまり関係ないんだけど、最近シロディールへの郷愁が沸きつつある。
 ずっとご無沙汰なOblivionの二次創作は、あれは当初の予定だとクエスト全部拾う予定で、誰がどのクエストをこなすか、というのも全部フローチャート作ってあったんですが、たぶん今更そこまでやれないと思ってます。
 というかそもそもアレは、俺のオリジナル創作とのクロスオーバーっていう側面があって、オブリの二次創作単体で見るとわけのわからない描写っていうのがけっこう入ってるんですが、俺がオリジナルのほうをあまり書かなくなったっていうのがあって、そういう面でも続けるのが辛いなァ…という部分があるのです。
 いっそSkyblivionが出たときに設定を刷新してやり直そうかとも考えてるんですが、たぶん出ねぇよなアレ(笑)ベセが64bit版のSpetial Editionなんていう面倒なモノぶちこんできてMod開発の現場が多少混乱しつつあるっていうのもあるし、特に大型Modは影響受けてるんじゃないかと思います。

 とりあえず駆け足でいいので、ストーリーだけ完結させるべきかなぁ…とは考えてるんですけどね。ただ再インストールとMod環境再構築から始めなければならないので、ウウム。
 というか、オブリは女キャラの顔がキツイんだよ!今見るとな。というか当時ですら、顔を真正面から見せないよう、美人に写るようにかなりカメラの角度とか気をつけて画面写真撮ってますからね。あとはやっぱりtfc_1が使えないのは痛い。















2016/11/04 (Fri)01:03





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 帝国と戦う反乱軍ストームクロークに入隊した俺は、古き権力の象徴である「尖った王冠」を入手した。それを指導者ウルフリックのもとへ持ち帰るため、一路ウィンドヘルムへと向かう。
 またサールザル遺跡で発見した謎のオーブの正体を調べるために必要となる書籍の回収にも成功したため、ウィンターホールド大学へ戻る必要もあるだろう。
 しばらく大陸北端での活動が続き、そろそろ雪景色も見飽きつつある。そろそろ別天地での活動をはじめたいところだ。まだ立ち寄っていない街もあることだしな…










 ウィンドヘルムへと戻る道中、洞窟の前でキャンプを張る二人組の冒険者を発見。なにやら言い争っている様子だが、それ以上にレッドガードの戦士とアルゴニアンの魔術師という組み合わせが珍しかったため、接触してみることに。
 といっても、こうした洞窟を根城にしているのは大抵山賊だったりするため、先制攻撃を諦めてコンタクトを取ることはわりと危険な行為なのだが。
「あーもしもし、どうなされたのかな?」
「あなた、何者?」
「旅の商人でござんす。隣のオークは護衛の戦士です、怪しい者じゃございませんのことよ」
 レッドガードの女戦士と言葉を交わす。
 相手は帝国兵には見えなかったが、思想の違いで議論になることは避けたかったので、俺がストームクロークの兵士だとは言わなかった。他の肩書きにしても、盗賊、暗殺者、どれも人前で口にできることではない。この地ではあまり歓迎されない魔術師然り。
 それに俺が商人だというのは嘘ではない、スカイリムに来てから商人らしいことをほとんどしていないのは確かだが…
 レッドガードの女戦士(どうやらこちらがリーダーのようだ)の名はサルマ。なんでもこの洞窟、アイアンバインド墓地…ノルド人の墓だ…に眠る財宝を狙ってきたらしい。要するに、トレジャーハンターだ。当人は冒険者を自称しているが。
 お供のアルゴニアンの魔術師の名はビーム・ジャ。一見するとサルマの部下のようだが、彼の態度を見るに、ワガママなお嬢様の目付け役、という気もしないではない。
 言い争いの元凶は、慎重派のビーム・ジャが洞窟への侵入を躊躇しているせいのようだ。
「二人で持ち運ぶのに苦労するほどのお宝が眠ってるなら、あと二人面子が増えても問題ないんじゃないかな?」
「ちょっと!ここには私達が先に来たのよ、変な気を起こさないで」
 俺の提案に、サルマが険しい表情を見せる。
 しかし実際問題、どうもこの二人をそのまま放っておくのは危なっかしい。素人には見えないが、サルマの鎧はすこし綺麗すぎる(熟練の戦士は必要以上に鎧を磨くような労力を割かない)し、なにより冒険者に特有の険(ケン)がない。
 経験不足というわけでもないだろうが、どうにも違和感というか、引っ掛かりを覚えるのは確かだ。
 もちろん、俺がそんなことを気にしてもしょうがないのだが。ヤキが回ったかな…?
「それじゃあ、分け前はそっちが六、こっちが四でどうだろう?それと、何か特定のモノを探してるなら、それはそっちに譲る。悪い条件じゃないと思うけどな」
 さらに提案を重ねる俺に、「気前が良すぎるのはかえって怪しい」とサルマが反論しかけたが、ビーム・ジャがそれを制した。
「数は力なり、と言うしな。それにサルマさんは普段から無茶をし過ぎる。他の冒険者と一緒なら、そうそう迂闊な突撃もできないだろう」
「う、うるさいわねっ…!」
 サルマがじろりとビーム・ジャを睨みつけるが、当の本人はどこ吹く風だ。
 押しが強いのはサルマだが、ここ一番の意見を通すのはビーム・ジャらしい。そうでなければ、二人はとっくに墓地の攻略を進めていただろう。
 迂闊な突撃はできまい、というのは、裏切るかもしれない見知らぬ協力者に隙を見せるな、という意味だろう。彼も俺たちのことを信用していないようだが、この状況では当然の判断だ。
 ともかく話が纏まったのなら、入り口でいつまでもグズグズしている理由はない。
 前衛にサルマとボルガク、後衛にビーム・ジャと俺を配置する、オーソドックスなダンジョン攻略用の陣形でアイアンバインド墓地に侵入した。







 墓地内部は生ける屍たるドラウグルが数多く徘徊しており、ビーム・ジャの懸念が的中した形になる。下級の雑魚だけならまだしも、強力なデス・ロードまでもが存在しており、二人では大いに苦戦したはずである。
 苦戦…そう、苦戦だ。あくまで「その程度」、ということだ。
 サルマとビーム・ジャのコンビは、俺が予測していたよりもだいぶ強かった。「二人で苦戦」と俺が評したのはそのためだ。並の冒険者なら、手も足も出ずに亡者どもの養分になっているはずの状況で、だ。
 特にビーム・ジャの操る雷撃魔法は強力で、下級ドラウグルであればいとも容易く、上級ドラウグル相手でも危う気なく対処していく。
 まあ…俺たちも、負けちゃいないんだがね。






「こっちは古代人処理の専門家なんだよぉ~、『もう、飽きたよ』と言っちまえるくらいにはさァ」
 まずは俺が氷結魔法で相手の動きを止め、そこをすかさずボルガクがドーンブレイカーで攻撃。なにせデイドラ神より賜った対アンデッド特効の宝剣である、こうかはばつぐんだ。
 さらに魂縛魔法を使い、死体に宿った白き魂を魂石に封入。完璧である。
 一連の流れを見たサルマとビーム・ジャも驚きを隠せないようだ。
「あなたたち、本当にただの商人…?」
「イエス!ハグズキュア・ファイブ。まあ物騒な世の中だし、強いに越したことはないからね」
「怪しい…」
 改めてサルマが俺たちの正体を疑うが、それについてフォローする気はない。
 べつに、わざわざ素性を隠す必要もないといえば、ないのだが…ただ過去にドラゴンボーンと名乗ったあと邪教めいた連中に問答無用で襲われたこともあり、やはり迂闊に身元を明かす危険を冒すことはできない。

 しばらく先へ進み、かなり凝った作りの祭壇まで辿り着くと、ビーム・ジャが一歩前に進み出た。
「ついにここまで来たか…ようやく見つけたぞ、ガスリックの墓を」
 感慨もひとしおといった様子でビーム・ジャが熱に浮かされたような表情を見せる。どうやら彼はこの場所の詳細を把握しているらしい、たんにあてずっぽうで墓荒らしに来たわけではないということか。
 もう一方のサルマ、目的は同じはずなのだが、ビーム・ジャほどには感動していない様子でぶっきらぼうに言い放つ。
「誰の墓でもいいけど、さっさとお宝を運び出しましょうよ。ビーム・ジャ、ここには両腕で抱えきれないほどの財宝があるんでしょう?」
「まあ、そう焦ることもないでしょう。焦りは禁物です…特に、こういう場所ではね」
 はやるサルマをビーム・ジャが抑える。とはいえ、どちらかといえばビーム・ジャのほうが興奮しているように見えるが。
 ビーム・ジャの忠告を裏付けるかのように、玉座から漆黒の影がゆらり蠢きだす。
 あれは…ドラゴン・プリーストだ!
 おそらくはビーム・ジャの言った、ガスリックという男の亡霊だろう。法衣の下に頑丈な軍用鎧を身に着けており、その顔は醜悪な化け物よりなお険しい。こいつ、元は軍人か?
『我が安寧を破る者どもよ、死を覚悟せよ!』
「だが、仮面なしってことは大したタマじゃねーな…お呼びじゃあねえんだよッ!」
 俺はヤツが召喚したスケルトン・アンデッドの始末をボルガクに任せ、氷結魔法をブチ込みつつ距離を詰める。
『ヌウウウゥゥゥゥゥッ!?』
 危機を察知したのか、ガスリックは攻撃の手を止め、身を守るための防御装甲を構築する魔法を展開する。






「だが…遅いぜ!」
 バギンッ、俺のカタナ、泉州時次郎拵の一閃と同時に防御装甲は無残にも四散し、同時にガスリック自身の肉体も崩壊する。
 灰と化して床に崩れ落ちたガスリックに駆け寄り、ビーム・ジャがおもむろにつぶやいた。
「ようやく宝を手に入れた…」
「なに?どれだ?」
「これだよ」ビーム・ジャは床に広がった灰の塊を指し、「ガスリックさ。ヤツの持つ力、それこそが金に換え難い宝物なのさ。これを我が物にできれば、そのときは…」
「なにを言ってるの、ビーム・ジャ?」
 両腕一杯の宝、と言っていたサルマが余所者の俺たちにではなく、ビーム・ジャに嫌疑の目を向ける。
 その背後から、ボルガクの苦しそうに呻く声が聞こえてきた。
「相棒気をつけろ、そいつは…!」
 剣を支えに膝を突くボルガク、どうやら肉体的ダメージを受けているわけではなく、麻痺の魔法にかけられたようだ。だが、誰が?
 ボルガクの安否に気を取られた瞬間、俺の身体に雷撃魔法が直撃した。
 掌から閃光を迸らせ、ビーム・ジャが不敵な笑みを浮かべる。
「ガスリックを始末してくれたことは感謝している。おそらく、我々二人では荷が重かったろう…それと、ガスリックの灰から力を取り出すには生け贄の血が要る。恩人を苦しませたくはない、余計な抵抗は試みないことだ」
「貴様…ッ!」
「ビーム・ジャ、どういうこと!?」
 不意討ちを喰らった俺にかわって、サルマが問いかける。
 彼女を見据えたまま、ビーム・ジャは冷たく言い放った。
「召使いとしての役目を果たせたことには満足している。だが、そろそろ自分の人生を取り戻しても良いと思ってね…サルマ、お嬢様、ハイロックに帰ったらお父上に訊ねてみるといい。いかにしてケチな盗賊の弱みを握り、その人生を奪ったのかを」
「そんな…」
「最初はあなたを犠牲に力を手に入れるつもりだった。だが、私にも良心ってやつは残っていたらしい…余所者が首を突っ込んでくれたのは幸いだった」
 そこで、俺が二人の会話に割り込んだ。
「そうかね」
「なに!?」






 いままで悶え苦しむ演技をしていた俺はゆっくり立ち上がると、カタナを手に、初撃を受ける直前からずっと展開していた魔力障壁を前方に集中させた。
 ビーム・ジャは驚きを隠せない。
「馬鹿な、まさか!」
『リズ・スレン( Ice Flesh )!』
 魔力障壁を拡散させビーム・ジャの雷撃を弾くと同時に、俺は氷結のシャウトを放つ。
 竜の咆哮で身体が凍結したビーム・ジャは身動きを取ることができず、ただ凶器を手に近づく俺を見ていることしかできない。
「ま、待て、これはほんの冗談…いや、手違いだ、すまない、命だけは…!」
「やめてーーーっ!!」
 サルマの悲鳴が響き、俺はカタナを素早く鞘に納める。









「…ぐ…ぐはっ……」
 バシッ。
 乾いた音とともにビーム・ジャは首筋をしたたか鞘で打ちつけられ、口と鼻から血を垂らした状態で気を失う。
 彼が倒れる寸前、俺は歯を剥き出しに吐き捨てた。
「てめぇの血なんざ、カタナの錆にもなりゃしねぇよッ…!」






 慌ててビーム・ジャのもとへ駆け寄り、彼の口元から「ウウ…」という苦しげな声が漏れるのを聞くと、サルマは安堵のため息をつく。
 カタナの鞘をベルトにさし、俺は彼女に言った。
「致命傷は負ってないはずだよ。俺、そんなにマッチョじゃないしさ」
「わざわざ手加減してくれたの?」
「ま、いちおう同郷だし」
 本人の性根はどうあれ、ツレがいる相手を殺したら確実に面倒なことになるし、とは言わなかった。
「彼はね…」サルマが話をはじめる。「私が小さかった頃から、ずっと世話をしてくれていたの。ビーム・ジャは私が物心ついたときから家にいた召使いで、両親は彼を信用してなかったけど、それは主人と召使いっていう主従関係を考えれば無理もないと思っていたわ。疑問に感じたことは一度もなかった」
 跳ねっ返りの女戦士の目元から、涙がこぼれ落ちる。
 これだよ。
 俺は思う…あのまま斬っても良かったのだろう。私欲で俺を利用し、殺そうとしたクソ野郎、弁解の余地もない悪党を殺したところで、おそらくは俺に非はなかったのだろう。
 おそらくそれは正しい行動だったのだろう。
 だが、それは誰のための正しさだ?
「宝を手に入れ損なったな。ビーム・ジャに騙されたんだろう?」
「財宝なんていらなかった。私はただ、冒険がしたかっただけ…宝が欲しかったのは、それが私の冒険の成功を証明してくれるから、ただそれだけよ」
 彼女が財宝を必要としていなかったこと、金に興味がないことは、いまさら彼女の口から聞くまでもなかった。
 召使いがいる裕福な家庭に生まれ、おそらくは両親の反対を押し切って冒険に出たのだろう。従者つきで…サルマに冒険者特有の険(ケン)がないように感じたのは、逼迫した真剣さがなかったからだ。
 明日にでも宝を掘り当てないと飢え死にする破目になる。借金取りに追われ、臓器を取られる。金のためなら仲間を騙し、殺すことだってできる。悪を成すためではなく、ただ少しでも自分が長生きするために…
 そういう、いわば生きるための気迫が彼女には欠けていた。ままごと遊びの延長だ、などと言うほど意地悪にはなれないが。
 麻痺の魔法の効果がとけ、若干足がふらついているボルガクに肩を貸しながら、俺は床にのびているビーム・ジャに顎をしゃくり、サルマに言った。
「あいつの対処は任せるよ。あんたのことは憎からず想っていたようだしな」
「迷惑ばかりかけていたんだけどね…」

 その場を立ち去る寸前、ボルガクが俺に言う。
「似合わないことをするじゃないか」
「ときにはね」
 なにも殺すだけが問題の解決法ではない。殺すほうが簡潔で、手っ取り早いのは確かだが。
 もちろん相手は選ぶ。個人的な規範のもと、というよりは、その場のノリと状況判断でだが。俺は神を演じるつもりはない。そんなことをするには、すでに背負った業が深すぎる。







 その後、道中で発見したラルドサールというドゥーマー遺跡に乗り込む。また帰還が遅れるが、これが俺の生き方なので仕方がない。
 遺跡内に巣食うファルメルやドゥーマー製自動人形を撃破し、深部へ潜入する。
 しばらく先へ進むと、どこからか剣戟音が響いてきた。どうやら先客がいるようだ。






 遺跡深部でドゥーマー製自動人形と戦っていたのは、このところご無沙汰だった亡霊のカトリアだった。エセリウム鉱石を巡る調査の最中に命を落とした学者で、エセリウム鋳造器具の捜索にあたって協力する間柄である…いちおうは。
 どうやら苦戦しているようで、俺は慌てて加勢に向かう。
「ちわっすカトリアさん!助太刀するよ!」
『あなたは…ていうか、なにその格好!?あと、なんでドレモラなんか連れてるワケ!?色々突っ込みどころが多いんだけど!?』
「いや、その、重装と防御と召喚スキルを鍛えようと思いましてね」
 普段の装備ではなく、黒檀鎧に鉄のブーツ、ドレモラの盾、ファルメルの篭手、尖った王冠という纏まりのない蛮族めいた格好で駆け寄る俺に、カトレアが青白い目を白黒させる。
 すべて、そのへんのダンジョンの宝箱で入手した間に合わせの装備だ。持ち歩いていたのはエンチャントが付与されていたからだが、どれに何の付呪が施されているのかは忘れてしまった。たぶん、たいしたことのない代物だからだろう。
 理由はさっき俺が言った通り。お供にボルガクではなく(彼女は例によって外の見張りに立たせている)、ドレモラ・ロードを連れているのも然り。
『弱いな、定命の者よ!』
「あのースイマセン、これたぶん定命の者じゃないと思います」
 異界の剣によって破壊されたドワーフ金属製のガラクタに向かって啖呵を切るドレモラ・ロードをたしなめる。
 カトレアがここにいるということは、この遺跡にエセリウム鉱石の欠片が存在しているということだ。たしか四つのうち三つは発見済だったはずだから…これが最後のパズルのピースだ。
 四つ目のエセリウム鉱石を手にしたとき、カトリアが肉体のない身体を弛緩させた。
『正直に言うと、あなたが本当に成し遂げられるとは思っていなかったわ。でも、ほっとしている…ううん、まだ終わりじゃないのよね』
「鋳造器具を見つけないとな。次に会うのはそこで、かな?」
 再会の約束をしたあと、またカトレアは姿を消してしまった。どうやら、彼女は強い執着がある場所にしか存在できないらしい。
 このぶんなら、彼女が完全に成仏できる日も近い…かな?







 あちこち寄り道をしたあと、ようやくウィンドヘルムへ到着した俺は休憩する間もなく王宮へと向かった。玉座に腰を据えるウルフリックに、コルバンヤンドで発見した「尖った王冠」を渡す。
 王冠を手に、ウルフリックが口を開いた。
「なるほど、年老いた熊は正しかったというわけだ…途中、なにか問題は?」
「帝国軍の待ち伏せを受けたよ。まあ、たいした規模じゃなかったけど…どういうことだろう?王冠の情報を把握しているなら、もっと戦力を割いていいと思うんだけど。何か別の狙いがあったのかな、それとも、俺たち相手はあの程度の布陣で充分だと思ったのかな」
「ヤツらも王冠を狙っていたのか?」
「外に立っていた見張りのほかに、遺跡の罠にかかって死んだ部隊がいた。俺たちを待ち伏せするだけなら、アレは必要ない…うん、連中も王冠を狙っていたと思う」
「フン。だが、帝国兵はすべてお前たちが始末したのだろう?なら、良しとしよう。ガルマルたちは現地に留まっているんだな?」
「他に使えるものがないか探すと言ってたよ。あまり長居はしないと思うけどね」
「わかった。ソリチュードへ侵攻する日も近い…だが、その前にやってもらいたいことがある」
 ソリチュードへ侵攻?
 帝国のお膝元へ攻め入る、というウルフリックの言葉に、俺は耳を疑う。だが考えるまでもない、彼らは反乱軍で、そのために戦っているのだ。しかし、改めてその現実を認識するには些かの努力が必要だった。
 表情には出さないものの、心中穏やかではない俺に、ウルフリックが刻印入りの片手用斧を突き出した。






「これは…」
 差し出されたそれを受け取り、俺は斧をまじまじと見つめる。
 見た目は変哲のない。ノルド様式の鋼の武具だ。エンチャントされた気配もない。
 ウルフリックが言った。
「それをホワイトランの大バルグルーフに届けてくれ」
「えっと…特別な寄贈品ですか?」
「戦士がもう一人の戦士に斧を送る意味は一つしかない。やつが斧を受け取らねば、そのときはホワイトランと戦争になるだろう…そうか、おまえはスカイリムに来て日が浅いのだったな」
「ああ、儀式的なアレですか」
 おそらくは斧そのものに価値はあるまい。
 ヤクザの兄弟盃のようなものであろう…この斧を受け取り、俺とともに戦うことを誓え、というような。それを突き返すことが最大級の非礼にあたることは容易に予測ができた。
 しかし、まさかウルフリックがホワイトランと一戦交える気でいるとは。
 スカイリムの中心に位置するホワイトランはこの内戦についてどっちつかずの態度を取ってはいるが、どちらかといえば帝国寄りの勢力だ。ここにきて決断を迫るということは、もう後には引けない状況を意味している。
 心配だ…もう、本当に突き進むしかないのだな。
 気が進まないのはたしかだ。いちおう俺はホワイトランの従士という立場だし、ホワイトランの別邸には養子として引き取った二人の娘ソフィとルシアも住んでいる。
 とはいえストームクローク隊員としての立場のうえでも今回の仕事は断れないし、そんなことをしたところで意味がない。別の人間が送られるだけだ。俺を起用したのは、俺がバルグルーフと面識があるからだろう。ドラゴンの脅威からホワイトランを守ったという貸しもある。
 それにしても、気の乗らない仕事だ。戦争の手助けとはな…だが、やるしかあるまい。







 王宮を出てウィンドヘルムで一晩過ごした俺たちは、ホワイトランがある南ではなく、ウィンターホールドがある北へと向かった。
 魔術大学の構内へ足を踏み入れると同時に、奇妙な感覚が頭を覆う。
 その正体はすぐにわかった。元素の間中心部に、サールザルで見たあの「マグナスの目」と呼ばれるオーブが鎮座していたからだ。






「まさか、アレをここまで運んできたの?」
「美しいだろう。こんなものはいままでに見たことがない…」
 恍惚とした表情で語るトルフディル、しかしこれは…この遺物にどんな危険があるかもわからないのに、ちと迂闊すぎやしないか?
 ただのインテリアならいいが、そんなつもりで持ってきたわけではないだろう。いったい何を考えているのか…
「この構造物は、既存のどの文明でも見られないものだ。私の知り得る限りでは…強いて言えばアイレイドに近いが、おそらくは違うだろう」
 どうやらトルフディルはこのまんまるに夢中のようだ。魔性に心を奪われているのか、たんにトシでボケてるのか、わかりづらい。
 俺ですら心を引き込まれるような、奇妙な感覚がある。だからこそ危険だと思う。
 他の連中は誰も疑問に思わないのか?
 なおもこの球体についてトルフディルが語ろうとしたとき、どういうわけかサルモールの手先であるアンカノが会話に割って入ってきた。
「取り込み中に済まないが、そっちの爬虫類に用がある。こいつを借りていくぞ」
「なに?大事な議論の最中だぞ、なんたる無礼!サルモールはサマーセット島に礼儀を置き忘れてきたらしいな」
 会話を中断させられたトルフディルが激昂する。
 ただ、個人的にはジジイの戯言(たわごと)を延々と聞かされるより、陰気なエルフの用事に付き合わされるほうがまだマシだった。たんなる嫌がらせでなければ、だが。
 アンカノが不遜な態度を崩さず言葉を続ける。
「非礼は詫びる。だが、これは火急の用事だ。サイジックの僧兵がここへ来たのだ」
「なに、サイジック!?」
「それもどういうわけか、この余所者のトカゲを名指しで呼んでいるのだ。そういうわけだから、よもやこれ以上引き止めはすまいな?」
「うむむ…」
 不服そうに唸り声をあげるトルフディルを無視し、アンカノは俺を連れて元素の間から離れ、アークメイジ居住区へと続く階段を上りはじめた。
 しかし、まさかサイジックの人間がここへ直接来ようとは。
 それはアンカノも同じ思いらしく、不愉快そうに口を尖らせている。
「サイジックは、自らを超法規的な存在だと思い込んでいる無法の輩どもだ。過去にアルドメリと衝突したこともある。なぜいまこの地に赴き、それもおまえと会いたがっているのかが知りたい」
「協力したら御褒美もらえます?」
「サルモールの活動に貢献するのは生ける者の義務と思わんかね?」
「あ~の~な~。あんたねぇ、こう全方位敵に囲まれてるような環境でよくその態度続けてられるねえ。寝首掻かれる心配とかしたことないの?」
「ここの連中に、サルモールを敵に回してまで私に危害を加える度胸のある者はいないだろうさ。もし私が死んだら…たとえそれが事故だろうと、サルモールはこの大学を放ってはおかないだろう」
「馬に轢かれようと、塔のてっぺんから足を踏み外そうと、サルモールはそれを大学側の敵対的行動と見做すわけね。危なっかしいから、あんた、ずっとベッドで寝ててくんないかな」
「繰り返すぞ鱗野郎、口のききかたに気をつけろ」
「失敬。育ちの悪い余所者なもんで」
「この地の蛮族どもより性質(タチ)が悪いな、貴様」
「どーも」






 相変わらず平穏とは程遠いやり取りをしながらアークメイジ居住区に向かうと、そこにはアークメイジのサボス・アレンと、白い法衣を纏った男がすでに揃っていた。
 これがサイジック…そういえば、サールザルの遺跡で見た幽霊と格好が似ている気がする。ただ、あのときとは別人のようだが。
『どうか警戒しないでほしい。危害を加える気はない』
 サイジックの男が俺に語りかける…と同時に、周囲のものすべてが凍りついた。
 サボス・アレンとアンカノが阿呆みたいに突っ立ったまま、呼吸も、まばたきもなく、木彫りのマネキンのように微動だにしなくなる。俺は歩き、光を見て、そして影を見た。
 いったい何が起きたのか…俺は仰天しそうになった。影が動いていない。光も揺らがず、中庭に植わっている樹から除け者にされた木の葉が、宙で止まっていた。
「これが…サイジックの力か」
『あまり長くは保たないので、手短に話そう。ずっと君に会いたかった』
 どうやら、この停止した時間のなかで動けるのは俺と、サイジックの男だけのようだった。






『この施設はいま、非常に危険な状態にある。それはすべて、君たちが持ち込んだもの…マグナスの目のせいだ。あれが放出する力に、ここにいる者のほとんどが魅入られてしまっている』
「サールザルにいたときからかな…でなければ、あんなモン、持ち込もうなんて考えないもんな」
『残念ながら、マグナスの目のせいで我々の未来視の能力が阻害されている。君と連絡を取るのが遅れたのも、そのせいだ。我々は本来、直接事態に干渉するような行動は取らない。余分な警戒を招くし、我々の戒律にも反する。だが、今回に限っては私自身が直接ここへ赴かざるを得なかった。サイジックの中には、私の行動を反逆と捉える者もいる。そういう隠微な状況だということを理解してもらいたい』
「それはいいけどさ…なんで俺なワケ?」
『それは、きみが美しくカッコ良く世界を救う素質、類稀なる才能を持つスーパーヒーローで、この世の最後の希望だからだ』
「いや~ん。そこまで言われると、なんでもしてあげたくなっちゃうよ?」
『(ああ、本物のバカだこいつ…)まあ、それはともかくとして。この状況を打開するには、まずダンレインの予言者と呼ばれる人物を探さねばならない。この大学のどこかにいるはずだ。おそらく、誰かが居所を知っているだろう』
 そう言って…サイジックの魔法が解けた。
 男は煙のように消えてしまうのかと思ったが、さっきと変わらず立っていた。空間転移とか、そういう魔法は使えないようだ。それに、どうやら幻の類ではなく実体らしい。
 サールザルでの発見からそれほど日数は経っていないはずだが、この男はどこからやって来たのだろう?アルテウム島があったというサマーセット諸島からか?船で?それにしては…随分と早く到着したものだ。
「おい貴様、いまなにをした!?」
 身動きが取れるようになった途端、アンカノが血相を変えてサイジックの男に喰ってかかる。
 俺たちの会話は聞き取れなかったようだが、どうやら「なにかをされた」という感覚はあるらしい。
「申し訳ないが、なにかの手違いだったようだ。それでは、私は本部に帰還する」
 サイジックの男はアンカノに取り合おうとせず、さっさとこの場を退場してしまった。
 ていうか、えーと、このまま誤魔化して帰る気っスか!?ちょっと鋼の心臓持ちというか、豪胆すぎやしませんかねサイジック。そんなライヴ会場間違えたみたいなノリでいけると思ってんの?
 しつこくアンカノが喰い下がるも、彼自身も実力行使に出るまでには至らないようだ。一方で、アークメイジのサボス・アレンは「私がなにか粗相をしたのでなければ良いが…」と、もともと青かった顔をさらに青ざめさせている。こっちはこっちで気の小さい管理職丸出しな態度だなオイ。
 サイジックの男を取り逃がしたアンカノは、いまにも地団駄踏みそうな雰囲気で怒鳴り散らした。
「おのれ、なにを企んでいるサイジックめ!おそらくヤツは、侵略に先立つ偵察に来たか…あるいは、ヤツもあの、マグナスの目とかいうやつを狙っているに違いない!」
「ヤツ『も』?」
「あれはいかにも強力そうな魔道具に見える。なにか良からぬことに利用するつもりに違いない」
 アンカノは適当に誤魔化そうとしたが、俺が覚えた違和感は消えなかった。
 ヤツ「も」、と言ったか?
 マグナスの目「とかいう」などと言って、関心がないフリをしているが、アンカノほど頭が切れる男なら、むしろそういう物言いは不自然だ。
 サイジックの男もアンカノには懸念を抱いている様子だった。注意が必要か…
 それはそうと、俺はサイジックの男からの助言にさっそく従わなければならない。なにやら物憂い表情で椅子に腰かけるサボス・アレンに、俺は訊ねた。
「ところでアークメイジ、ダンレインの預言者って知ってます?」
「どこでその名を聞いた?トルフディルか?もしそうなら、その話を二度と蒸し返すなと伝えておいてくれ。私が話すことは何もない」
「あ、そうですか。スイマセン」
 なるほど、トルフディルが知っているのか。
 とりあえずアンカノの耳にこの名を入れないよう気をつけなければなるまい。わざわざ余計な手助けをしてやる必要もないだろう。

 とりあえず元素の間に行きトルフディルの姿を探したが、彼の姿が見当たらない。
 あちこちを歩き、ようやく達成の間(大層な名前だが、要するに宿舎だ)でトルフディルを見つけることができた。
 ダンレインの預言者の名を出すと、彼はなにやら旧友のことを話すような顔つきで言った。
「懐かしい名だ。久しく聞いていなかった…そうか、彼に会いに行くのか。おそらくはミッデンにいるはずだ、大学地下のダンジョンだよ。危険な場所だから、普段は立ち入り禁止になっている。といっても、まあ、サールザルでの君の活躍を見れば、馬の耳に念仏だな」
「それを言うなら釈迦に説法でしょう。似てるけどニュアンスが真逆だ」
「ほう、これは失礼した。ともかく、彼に会ったらよろしく言っておいてくれ」
 それだけ言うと、トルフディルは一言断ってからベッドで横になった。
 もう夜も遅い。俺も一休みするとしよう。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。今年のハロウィンは何もしなかったな…
 ともかく、順調にメイン筋のクエストが進みつつあると同時に、アイアンバインド洞窟でのミニクエスト(とも言えないか)を多少キャラの性格を盛ってお送りしました。俺こういう、キャラクター性を前面に押し出したプロットって好きなんですよね。重要でもなんでもないんだけど、妙に記憶に残るというか、愛着が湧くというか。
 そういえば大学をうろうろしていたとき、訓練中のオンマンド君の前を通ったときに彼の放った魔法が俺に命中したんですが、直後にボルガクが血相変えて剣を抜き、ノータイムで彼を斬り殺したときはさすがに目を疑いました。




殺人事件だよこれ…



 いくら相棒が攻撃されたといっても、攻撃魔法を一回誤爆しただけで殺すのはやり過ぎだよボルガクさん…しかも俺まったく気にしてなかったのに…
 すわ大学側と戦争になるか!?と思ったんですが、どうやらボルガクの行為は正当防衛と見做されたらしく、特にお咎めはありませんでした。それでいいのかSkyrim…
 あ、ちなみにオンマンド君は生き返らせました。Ressurectコマンドで。死霊術じゃありませんよ。
 本文中には書きませんでしたが、じつはラルドサールで猛特訓を積んで回復と片手剣武器と両手武器以外のスキルをすべて100にしました。現在レベル100を超えています。














2016/11/02 (Wed)00:56





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 旅の途中でウィンドヘルムに立ち寄った俺はストームクロークへの入隊を決意し、首長ウルフリックに対して宣誓を果たす。
 帝国軍とストームクロークの内戦はいまのところ小康状態にあるが、アルドメリから派遣されてきたエルフたちの動きがキナ臭いこともあり、いつ激しい戦いがはじまるともわからない。
 当初の予定では、俺はたんに商人として関わりたかっただけだが、どうもそれだけでは済まなそうな雰囲気だ。







 ガルマルの話によれば、かつて上級王の権威の象徴であった「尖った王冠」がコルバンヤンドという遺跡に眠っていることが確認されたらしい。古竜の骨と歯から作られたその王冠には、かつての王位継承者たちの力が宿っているという。
 もしウルフリックが帝国やアルドメリに先んじてその王冠を手にすることができれば、彼の王位主張の正当性における信憑性が高まるというわけだ。ノルドは伝統を重んじる性格ゆえ、この内戦においてかなりの優位性を確保することができるだろう。
「すでに兵を派遣してあると言っていたが、なにか懸念でも?」
「ああ。帝国やエルフどもが狙っているとは思えんが、最後の戴冠者であるボルガス王はエルフどもの率いるグレートハントによって暗殺された。あのエルフどもが権力者をただ殺すなどとは考えられん。何がしかの呪いをかけているはずだ。そのための警戒だよ」
「なるほど。この地じゃあ、ご先祖様はあまり安眠できてないようだからなぁ」
 石拳のガルマルとの会話で、俺は次なる任務の概要の把握に努める。
 安眠云々は、これまでのスカイリムでの活動であまりにもアンデッドとの戦いが多かったための感想である。
 目的地であるコルバルヤンドはウィンドヘルムからそう遠くない。ウィンターホールド大学からの依頼である書籍の回収地点とも近い。順番に解決していくとしよう。

 出発の前に、王宮魔術師のウーンファースのもとへ挨拶に訪れる。






「ほう、おまえさんか。いつぞやは世話になったな」
「そう嫌味を言わんでくださいよ…」
 皮肉っぽい笑みを浮かべるウーンファースに、俺は気まずそうな表情を浮かべる。
 以前ウィンドヘルムで殺人事件の調査をしていたとき、俺はこのジーサンの誤認逮捕に加担してしまったことがあるのだ(どちらかといえば俺の調査報告を聞いたヨルレイフが先走ったせいなので、「俺が誤認逮捕した」とは言いたくない)。
 とはいえ魔法嫌いのノルドの地であるスカイリムでは貴重な魔術師仲間だ。過去のことは水に流して、できれば仲良くしたいものである。
「今日は届けるものがあって来たんだよ。市場のヒレヴィ・クルーエル・シーから、ベラドンナのエキスと言ってたが」
「おお、それはまさしく儂が頼んでおいたものだな。よし、駄賃をくれてやろう」
 そう言ってウーンファースが差し出した革袋には、なんと750枚もの金貨が入っていた。
 さんざん苦労して金貨5枚で済まされかかった直後とあって、俺はこれが何かの間違いではないかと目を疑う。
「さぁすが、宮仕えは豪儀だねぇ」
 子供の使いで金貨750枚とは。だが、仕事は楽に越したことはない。必ずしも報酬が苦労に見合ったものとは限らない、というのはどの世界でも変わらぬということか。
「力も鋼もいいだろう。だが魔法こそがこの世の真の力だ」
 別れしな、老ウーンファースがいつもの調子で捲し立てる。
 この世界では、魔法は冷遇されているんだよ…とは、さすがに言えなかった。






 王宮を出たとき、俺は石拳のガルマルから受け取ったストームクロークの標準装備を身につけていた。
「ねぇボルガクさん、この新衣装どう思う?」
「以前より貧相に見えるな」
「やっぱり?」
 俺もそう思う。
 ていうか、なんで袖出してんの?雪国で肌を露出する装備が多いのはなぜなの?ノルド人は露出性癖があるの?肌を出してないと死ぬ病気なの?
 生暖かい湿地の出身である俺にノルドの衣装はちとレベルが高すぎる。ひょっとしたらこれも、ストームクロークの一員として、ノルドの一員としての試練なのかもしれない。







 すぐにいつも通りの服装へ着替え、俺はまずウィンターホールド大学から請けた仕事をこなすためフェルグロウ砦へ向かった。サールザルで発見したオーブの謎を解明するために有用な書籍を持ち出したオーソーンという魔術師が、この砦にいるらしい。






「うおりゃたあーっ!」
 ゴガッ!
 俺はカタナを抜かずに鞘を装着したままの状態で砦の見張りを叩き伏せ、状況を確認する。
「どうやら死霊術師だけじゃなくて、ありとあらゆる種類のはぐれ魔術師が集まってるらしいな。大学という権威に頼らず、独力で研究を続けることを選んだ不良どもの集いか」
 権威に頼らず…なんて言い方をすれば、ちょいとカッコ良く思えてもくるが、要するに大学で禁止されている危険な魔術を研究するため離れていった連中だ。中には腕の立つやつもいるので、生活には困らなかったことだろう…
 幾らかは作物を育てて自給自足していたようだが、少なくとも、農業や畜産だけで研究道具や書籍、まして宝飾品まで賄えるはずもない。その大部分は旅人を襲って得たものに違いなかった。
 ちょうど、俺の姿を見かけて一も二もなく破壊魔法をぶち込んできたように。
「で、いつものように私は外で待機というわけだな」
 不服そうにつぶやくボルガク。でもやっぱ閉所は一人のほうが探索しやすいんですよ。
 俺は彼女に外の見張りを頼むと、以前攻略したはずの(そういうパターン多くなってきたな…)フェルグロウ砦へ侵入した。

 檻に囚われていたオーソーンを発見したのは、砦の地下牢にたむろしている魔術師や吸血鬼をボコボコにのして回った後のことだった。






「随分と快適な別荘住まいじゃないか」
「あんた、俺を知っているのか?たのむ、ここから出してくれ!」
 俺の皮肉に反論する余裕もなく、アルトマーの魔術師オーソーンは鉄格子越しに哀願してきた。
 彼の言う通りにレバーの仕掛けを作動させ、鉄格子を解放する。
 いままでのパターンだと「助けてくれてありがとう!お礼に殺してやる!」という結果になることがおおいに予想できたので、俺はすぐにカタナをぶっ刺せるよう警戒していたが、どうやらオーソーンに反抗の意志はないようだ。
「俺は大学の命令で、おまえさんが持ち去った本を回収するために来たんだ。おまえさんを助けるためじゃないが、まあ、大学の連中だって、おまえさんの死まで望んじゃいまいよ。いったい、どうなってるんだい?」
「ここにいる連中、俺から本だけを奪って、あとは実験体として利用するために俺を閉じ込めやがったんだ!こんなのあんまりだぜ!」
「それにしたって、ここの連中、いったい何の研究をしてるんだ?いろんな種族の死体やら、牢に生きたまま捕えられた吸血鬼やら、ちょっと普通じゃないぜ」
「俺が知るもんか…俺は蚊帳の外だったんだから」
「ま、いいや。とりあえず本を回収して、ここから脱出しますか」
「三冊の本はここにいる連中の親玉が持ってる。行こう、俺も援護するよ」
 その後はオーソーンとともに、はぐれ魔術師たちを始末していく。
 このオーソーン、炎の精霊を召喚できるのはいいが、本人自身は至って打たれ弱く(なんせレベル10だ!)、注意していないとすぐに死にそうな雰囲気だ。






「こいつは…それらしい本は持ってないな…」
「そいつは親玉じゃない。親玉はアルトマーの女だ、いい声をしてる、いい女だよ」
「ああそう」
 殺した魔術師たちの死体を逐一確認しながら、俺たちは慎重に先へ進んでいく。
「しかしあんたねえ、いちおう隠れて行動してるんだから、物音立てないよう少しは注意してちょうだいよ」
「仕方がないだろう、俺は魔術師で、薄汚い盗賊とは違うんだ」
「…置いてくよ?」
「すまなかった。悪かった」
 このオーソーンという男、こちらがスニーク状態で移動していても平気で立ったまま走ってくるので、たいてい先制攻撃を仕掛ける前に敵に気づかれてしまうのだ。
 ヤツが召喚する炎の精霊も、見た目は魅力的だし強そうだが、実際の戦闘力はそれほどでもない。すこし腕の立つ魔術師なら、ヤケド一つ負わずに倒すことができるだろう。
 ぶっちゃけ足手まといでしかないのだが、まだ敵の親玉とやらを始末していない以上、勝手に行動させるのは危険だ。それにまだ、何も企んでいないと決まったものでもない。
 やがて俺たちは砦の最上階にて待ち受ける召喚者と相対した。






「貴方ね…私の研究を台無しにして、仲間を皆殺しにしてくれたのは。いちおう名前と、目的を聞いておこうかしら」
「あっしゃあブラックマーシュはリルモスの生まれ、ビル・アーケイド。意地には強いが人情にゃあ弱い、男の中の男一匹!」
「そんなことは聞いてないわ」
「ああそう」
 追い詰められたにしては殊勝な態度を取る召喚者に、俺は思わず感心の声をあげる。
「なるほどオーソーンの言う通り、いい声をした美人さんだ。トカゲの俺でも惚れそうだぜ」
「お褒めの言葉をどうも。オーソーンを連れ出したということは、貴方、大学の関係者ね?残念だわ…アレンの腰巾着に用はないの」
「つれないねぇ。交渉の余地はないのかい?どっちかが死ぬしかないかね」
「あれだけ好き勝手に暴れておいて、よく言うわ。でも、ええ、その力に免じて…オーソーンを置いていくなら、貴方の暴虐に目を瞑って、本を渡しても構わないわ。そして、無事に帰してあげる」
 それは破格の提案だった。
 彼女の資産をぶち壊し、仲間を皆殺しにしておいて、俺は三流の魔術師を見捨てるだけで目的を達成することができるわけだ。もともと俺の目的は本の回収で、オーソーンの安否は勘定に入ってない。
「おい、まさか俺を見捨てたりしないよな!?」
 哀れっぽい声をあげ、オーソーンが立ちすくむ。
 俺はカタナを鞘に納め、オーソーンを見つめ、召喚者に目配せをすると、ゆっくり頷いた。
「本はもらっていくぜ。この青瓢箪は煮るなり焼くなり、好きにするといい」
「交渉成立ね」
 召喚者が氷のように冷たい微笑を浮かべる。
 俺は祭壇に奉げられた本を回収するため彼女の脇を通り過ぎ、その背後まで近づいたとき、ふと足を止めた。
「ああそうだ、一つ言い忘れてたことがある」














「な、なぜ…」
 祭壇に串刺しにされ、召喚者は血を吐きながら問いかける。
 俺は先刻の彼女よりもなお冷たい、爬虫類の瞳でその無残な姿を見下ろした。
「俺にゃあ、そうまでしてあんたを生かす理由がねぇ」
 さっきの、情には弱い、なんてのは嘘っぱちだ。
 いままでにいったい、打算や目先の利益のために何人殺してきただろうか。






「お、驚かしやがって…でも、あんたが俺を見捨てるわけはないと思ってたよ!」
 スラリ、音を立てて納刀する俺に、オーソーンが安堵のため息を吐く。
 べつに…オーソーンを助けたのは情からではない。そのほうが大学からの評価が上がるだろうと思っただけのことだ。もし、それを上回る好条件を召喚者が提示したのなら…そんなことが可能だったなら、の話だが…俺はあっさりそっちに乗っていただろう。
「因業かねぇ…」
 血にまみれ、驚きの表情のまま絶命した女の顔を見つめながら、俺は深いため息をついた。






 フェルグロウ砦を出た俺はボルガクと合流し、オーソーンの無事を見届けた。
「いちおう大学に話は通しておくよ。戻るならある程度の罰は覚悟だろうが、まあ、ガチでキレてる様子もなかったし、そこまで深刻に考える必要はないだろう」
「すまない…この恩は忘れないよ。いつかきっと、借りは返す」
 そう言い残し、炎の精霊を連れてダバダバと走り去っていくオーソーン。道中で野良吸血鬼や野良死霊術師にやられたり、巨人にホームランされたりしないといいが…
 回収した三冊の本のタイトルはそれぞれ「涙の夜」「アルテウムについて」「アイレイド最後の王」。いずれも貴重な品々だ、まだ内容は確認していないが、今回の件で重要なのは果たしてどの本か。
 ウィンターホールド大学へ戻る前に、ガルマル以下ストームクローク部隊が待機しているコルバンヤンドへ向かおう。ここで少し休憩を取ったとしても、明朝には着けるはずだ。










 コルバンヤンドでは懐かしい顔が俺を出迎えた。
「おまえ、正式に我々の仲間になったらしいな!一緒に帝国の手からスカイリムの地を取り戻そうぜ!」
「レェイロフぅ!もうリバーウッドで呑んだくれるのには飽きたのか?」
「そういうことを言うなよ…」
 石拳のガルマル率いる分隊には、俺がかつてヘルゲンで帝国軍に処刑されかかったとき、一緒に脱出して束の間世話を焼いてくれたノルドの戦士レイロフも加わっていた。
 旧友同士肩を抱き合い、拳を突き合せて再会を喜ぶ俺たち。思えば、このスカイリムの地に来て最初に出会った友好的な相手なんだよな、この男は。
 男同士の友情の確認もそこそこに、ガルマルが状況を説明しはじめる。
「いま遺跡の周辺に数名の帝国軍兵士を確認している。連中は尖った王冠のことを知って派遣されてきたはずだが、規模は小さく、奇襲を仕掛ければ容易く殲滅することができるだろう。こちらの動きに気づかれるまえに、やつらの腹を切り裂いてやる」
 分隊は移動をはじめ、腰を低くしたまま静かに歩を進めていく。
 その途中、俺はボルガクに向かって小さくつぶやいた。
「ヴァイキングの復讐、か」
「なに?」
「腹を切り裂く、と言ったろう?それから腸を引っぱりだして、相手が死ぬまで苦しみのたうちまわるのを眺めるのさ。死ぬまで半時間ほどかかるらしい。ネディックの伝統的な処刑法だ」
「おまえは悪趣味な本ばかり読んでいるな」
「どうも」
 やがて帝国軍兵士の守備隊に接近した俺たちは一気に襲いかかり、反撃の隙を与えぬまま全滅させる。






 コルバンヤンド内部へ侵入、ガルマルの鋭い声が響く。
「全員、無事か?」
「一人も欠けていません。負傷者もかすり傷で済んでいます」レイロフが答える。
「よし…どうやら内部にも帝国兵が潜んでいるな。おそらく表の連中がやられたことには気づいているだろう、待ち伏せする気でいるらしい。生意気な」
 周辺には山賊と思しき死体が転がり、そこいらに放置された宝箱は中身が空っぽになっている。
 どうやら、元々は山賊が住み着いていたのを帝国軍が乗っ取ったらしい。
 俺たちは内部の様子を窺いつつ、隙を見て攻撃を仕掛けた。






「スカイリムのために!」
 ガルマルの咆哮とともに、双方入り乱れての乱戦がはじまる。
 本来なら弓を使った遠距離からの狙撃でセコセコと数を減らしたいところだが、ここはストームクロークに俺の実力を見せつけるためにも、剣を使った戦闘に参加したほうがいいだろう。
 幸か不幸かいままで散々に強敵と戦ってきたこともあり、たいした訓練も受けていない下っ端の帝国軍兵士如きに後れを取る気はない。
 それに今回同行している、名も知らぬストームクロークの戦士たちも中々に勇猛かつ手練であった。どうやらガルマルは下級兵士の訓練ではなく、相当な困難を予想した布陣でここへ来たようだ。






 帝国軍兵士たちを葬り去り、ストームクローク隊とともに遺跡の深部へ向かった俺は、なにやら見覚えのある部屋へ辿り着いた。
「これは物語の間だな。ここに描かれた壁画は、かつてこの地を築いた古代人たちの歴史を表しているのだ」
「へぇ」
 ガルマルの説明に、俺は適当な相槌をつく。
 物語の間という呼称は知らなかったが、俺はかつて古代ノルド人の遺跡を探索したときに、何度も同じものを目にしている。行く手を塞ぐ壁の仕掛けも、もはや謎でもなんでもなくなっていた。
「これは竜の爪っていう鍵が必要なんだよ。さて、どれが合うかな?エメラルド?サファイア?ルビー?アイボリー?コーラル?金?鉄?」
「いや、足元に落ちているやつではないのか」
 やおらバックパックから色とりどりの、竜の爪をかたどった装飾品を取り出す俺に、ガルマルが帝国軍兵士の死体の傍らに転がっている黒檀製の爪を指差した。
 この帝国軍兵士は俺たちが殺した連中とは違う。どうやら、仕掛けを正しく理解せず竜の爪を使い、遺跡の罠にやられたらしい。
 ともあれ。
「なぁんだ、俺のコレクションの出番はナシかね。さてキーの順番は、オオサンショウウオ、ハト、イソギンチャクか」
「……え?」
 爪に嵌め込まれたレリーフ…おそらくはキツネ、蝶、竜と思われる…を見て壁の仕掛けを作動させる俺に対し、ガルマルは眉をひそめる。
 レリーフに描かれたキツネのモチーフですら「え、おれオオサンショウウオなの?」と問うてきそうな雰囲気である。
 実態はともかく、絵柄さえきちんと合っていれば問題はないわけで。
 仕掛けを作動させ、閉ざされた扉が開いた先には数々の棺が安置された部屋が広がっていた。






「あのーガルマルさん」
「どうしたアルゴニアン?」
 いつぞや習得した死者探知の魔法で周辺の気配を読み取った俺は、あまり思わしくない表情でガルマルに告げた。
「たぶん、この部屋ドラウグルだらけです。扉の鍵を開けるレバーを引いた瞬間に棺から襲いかかってくるですよ?」
「ドラウグルだと?ハッ、ボーンウォーカーごとき、なにを恐れる必要がある!」
「ですよねェー。じゃ、いきますよ」
 さらに先へ進むための道を閉ざすゲートを開くためのレバーを握り、俺はストームクロークの兵士たちが配置についたことを確認する。ドラウグルにもっとも隙ができる瞬間は目覚めた直後、ということを知っているため、棺から出てきた瞬間に叩き伏せるための配慮である。
 深呼吸し、俺は勢いよくレバーを引いた。
「レッツゴウ!」
 案の定、レバーを引いてゲートがせり上がると同時に棺の蓋がバタンと音を立てて倒れ、武器を手に潜んでいたドラウグルたちがいっせいに襲いかかってくる。
 雑魚の相手はストームクロークの兵士たちに任せ、俺とボルガクはゲートを抜けた先、ボルガス王の待つ玉座へと向かう。果たしてそこには尖った王冠を頭に乗せたまま、強力なアンデッド・ロードと化したボルガス王が佇んでいた。
「ボルガクさん!」
「おう!」
 ボルガス王がこちらを認識するのとほぼ同時に俺の放った破壊魔法「氷の谷」が炸裂し、一瞬だけ怯んだボルガス王の胴をボルガクが袈裟斬りにする。
 対アンデッド専用の宝剣であるドーンブレイカーの一撃を受け、苦しみ悶えるボルガス王に俺が最後の一撃を加えた。






「寝起きの直後で悪いけど、王冠だけ置いてまた寝ててくれないかねェ」
 そう言って、俺は「パチリ」と音を立て納刀した。
 抵抗らしい抵抗をすることもなく無様に転がるボルガス王の頭から王冠を取り、俺はそれをしげしげと眺める。
「いかにもノルドって感じだねぇ。大層な噂ほどの力は感じないが…まあ、あくまで権威の象徴だし、いいか」
「おお、尖った王冠を手に入れたのか!」
 別室での戦闘も終わったらしい、他のドラウグルたちを殲滅したガルマルが歓喜の声をあげる。
「急いでそれをウルフリックのもとへ持ち帰るのだ。我々はいましばらくこの遺跡を捜索し、なにか使えるものがないか調べるつもりだ」
「帝国軍兵士は俺たちを待ち伏せしていたんだろう?おそらく、本隊と頻繁に連絡を取り合っていたはずだ。連絡が途絶えたとなったら、おそらく増援部隊が駆けつけてくるぞ」
「なぁに、帝国軍なぞ幾ら来たところで、儂のこのコブシで砕いてやるわい!」
「あー、ノルドってそうだったよねぇ…いや、いいや。頼もしい限りです」
「心配せんでも、ちゃんと表に見張りを配置してある。怪しいものを見かけたら手を出さず、すぐに戻って報告するよう伝えてあるからな。それに儂らも戦況が厳しくなったらすぐに引き揚げる、こんな場所で無茶はせぬわ」
 どうやらこのガルマルという男、たんに猪突猛進というわけではないらしい。
 俺とボルガクはこの場をガルマルに任せ、遺跡を出る前にレイロフへ挨拶していく。
「おまえさんもここに残るのかい?帰ったらまた一緒にハチミツ酒でも飲もうや」
「今度はそっちが奢ってくれよ?随分と出世したらしいからな、えぇ、ドラゴンボーンよ?竜殺しの噂はリバーウッドまで届いていたぞ」
「だからといって、特別に待遇が良くなったわけじゃないけどね。そっちも、無茶はするなよ」
「ああ。俺の親父は、こういう場所を荒らすなと言っていたが…まあ、未来のスカイリムのためなら、ご先祖様たちも許してくれるだろう。たぶん」
 元はといえばここは古代ノルド人の墓、レイロフたちノルド人にとってはいろいろと感慨深いものがあろう。他の兵士たちも興味深い様子で壁画などを観察している。
 これといってルーツのない俺にはない、羨ましい感覚だ。
 そんなことを考えながら、俺はボルガクを連れてコルバンヤンドをあとにした。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。少しづつですがクエストが進行しつつあります。
 今回は必殺!のようなセコ突き処刑シーンを再現してみました。これじゃ時次郎じゃなくて主水じゃねーか!ちなみにアーケイドが「トカゲの俺でも惚れそう」と言ったのは相手の油断を誘うためではなく割とマジな話で、だから殺した後にすこしナーバスになっています。
 また、あまり目立たないシーンですが最初のほうで鞘を装着したままで戦闘していますが、これは別装備扱いで用意した、れっきとした武器です。いちおう非殺傷を目的とした戦闘を想定して用意したもので、戦闘スタイルは両手剣、モーションは両手斧で設定してあります。ただアーケイドはこれまで両手剣と防御スキルをまったく育てていなかったので、手加減どころか大苦戦してしまいました(笑)
 鞘のみの武器もそうなんですが、NifSkopeでの流血ノードの設定がすこしだけ面倒臭かったです。

 コルバンヤンドでは戦闘シーンでの撮影でレイロフがすごい良い表情をしています。




戦闘で恍惚するイキ顔レイロフ



 なんつー顔をしとるんだこいつ…
 思わず別撮りしてしまいました。












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