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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/11/04 (Fri)01:03





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 帝国と戦う反乱軍ストームクロークに入隊した俺は、古き権力の象徴である「尖った王冠」を入手した。それを指導者ウルフリックのもとへ持ち帰るため、一路ウィンドヘルムへと向かう。
 またサールザル遺跡で発見した謎のオーブの正体を調べるために必要となる書籍の回収にも成功したため、ウィンターホールド大学へ戻る必要もあるだろう。
 しばらく大陸北端での活動が続き、そろそろ雪景色も見飽きつつある。そろそろ別天地での活動をはじめたいところだ。まだ立ち寄っていない街もあることだしな…










 ウィンドヘルムへと戻る道中、洞窟の前でキャンプを張る二人組の冒険者を発見。なにやら言い争っている様子だが、それ以上にレッドガードの戦士とアルゴニアンの魔術師という組み合わせが珍しかったため、接触してみることに。
 といっても、こうした洞窟を根城にしているのは大抵山賊だったりするため、先制攻撃を諦めてコンタクトを取ることはわりと危険な行為なのだが。
「あーもしもし、どうなされたのかな?」
「あなた、何者?」
「旅の商人でござんす。隣のオークは護衛の戦士です、怪しい者じゃございませんのことよ」
 レッドガードの女戦士と言葉を交わす。
 相手は帝国兵には見えなかったが、思想の違いで議論になることは避けたかったので、俺がストームクロークの兵士だとは言わなかった。他の肩書きにしても、盗賊、暗殺者、どれも人前で口にできることではない。この地ではあまり歓迎されない魔術師然り。
 それに俺が商人だというのは嘘ではない、スカイリムに来てから商人らしいことをほとんどしていないのは確かだが…
 レッドガードの女戦士(どうやらこちらがリーダーのようだ)の名はサルマ。なんでもこの洞窟、アイアンバインド墓地…ノルド人の墓だ…に眠る財宝を狙ってきたらしい。要するに、トレジャーハンターだ。当人は冒険者を自称しているが。
 お供のアルゴニアンの魔術師の名はビーム・ジャ。一見するとサルマの部下のようだが、彼の態度を見るに、ワガママなお嬢様の目付け役、という気もしないではない。
 言い争いの元凶は、慎重派のビーム・ジャが洞窟への侵入を躊躇しているせいのようだ。
「二人で持ち運ぶのに苦労するほどのお宝が眠ってるなら、あと二人面子が増えても問題ないんじゃないかな?」
「ちょっと!ここには私達が先に来たのよ、変な気を起こさないで」
 俺の提案に、サルマが険しい表情を見せる。
 しかし実際問題、どうもこの二人をそのまま放っておくのは危なっかしい。素人には見えないが、サルマの鎧はすこし綺麗すぎる(熟練の戦士は必要以上に鎧を磨くような労力を割かない)し、なにより冒険者に特有の険(ケン)がない。
 経験不足というわけでもないだろうが、どうにも違和感というか、引っ掛かりを覚えるのは確かだ。
 もちろん、俺がそんなことを気にしてもしょうがないのだが。ヤキが回ったかな…?
「それじゃあ、分け前はそっちが六、こっちが四でどうだろう?それと、何か特定のモノを探してるなら、それはそっちに譲る。悪い条件じゃないと思うけどな」
 さらに提案を重ねる俺に、「気前が良すぎるのはかえって怪しい」とサルマが反論しかけたが、ビーム・ジャがそれを制した。
「数は力なり、と言うしな。それにサルマさんは普段から無茶をし過ぎる。他の冒険者と一緒なら、そうそう迂闊な突撃もできないだろう」
「う、うるさいわねっ…!」
 サルマがじろりとビーム・ジャを睨みつけるが、当の本人はどこ吹く風だ。
 押しが強いのはサルマだが、ここ一番の意見を通すのはビーム・ジャらしい。そうでなければ、二人はとっくに墓地の攻略を進めていただろう。
 迂闊な突撃はできまい、というのは、裏切るかもしれない見知らぬ協力者に隙を見せるな、という意味だろう。彼も俺たちのことを信用していないようだが、この状況では当然の判断だ。
 ともかく話が纏まったのなら、入り口でいつまでもグズグズしている理由はない。
 前衛にサルマとボルガク、後衛にビーム・ジャと俺を配置する、オーソドックスなダンジョン攻略用の陣形でアイアンバインド墓地に侵入した。







 墓地内部は生ける屍たるドラウグルが数多く徘徊しており、ビーム・ジャの懸念が的中した形になる。下級の雑魚だけならまだしも、強力なデス・ロードまでもが存在しており、二人では大いに苦戦したはずである。
 苦戦…そう、苦戦だ。あくまで「その程度」、ということだ。
 サルマとビーム・ジャのコンビは、俺が予測していたよりもだいぶ強かった。「二人で苦戦」と俺が評したのはそのためだ。並の冒険者なら、手も足も出ずに亡者どもの養分になっているはずの状況で、だ。
 特にビーム・ジャの操る雷撃魔法は強力で、下級ドラウグルであればいとも容易く、上級ドラウグル相手でも危う気なく対処していく。
 まあ…俺たちも、負けちゃいないんだがね。






「こっちは古代人処理の専門家なんだよぉ~、『もう、飽きたよ』と言っちまえるくらいにはさァ」
 まずは俺が氷結魔法で相手の動きを止め、そこをすかさずボルガクがドーンブレイカーで攻撃。なにせデイドラ神より賜った対アンデッド特効の宝剣である、こうかはばつぐんだ。
 さらに魂縛魔法を使い、死体に宿った白き魂を魂石に封入。完璧である。
 一連の流れを見たサルマとビーム・ジャも驚きを隠せないようだ。
「あなたたち、本当にただの商人…?」
「イエス!ハグズキュア・ファイブ。まあ物騒な世の中だし、強いに越したことはないからね」
「怪しい…」
 改めてサルマが俺たちの正体を疑うが、それについてフォローする気はない。
 べつに、わざわざ素性を隠す必要もないといえば、ないのだが…ただ過去にドラゴンボーンと名乗ったあと邪教めいた連中に問答無用で襲われたこともあり、やはり迂闊に身元を明かす危険を冒すことはできない。

 しばらく先へ進み、かなり凝った作りの祭壇まで辿り着くと、ビーム・ジャが一歩前に進み出た。
「ついにここまで来たか…ようやく見つけたぞ、ガスリックの墓を」
 感慨もひとしおといった様子でビーム・ジャが熱に浮かされたような表情を見せる。どうやら彼はこの場所の詳細を把握しているらしい、たんにあてずっぽうで墓荒らしに来たわけではないということか。
 もう一方のサルマ、目的は同じはずなのだが、ビーム・ジャほどには感動していない様子でぶっきらぼうに言い放つ。
「誰の墓でもいいけど、さっさとお宝を運び出しましょうよ。ビーム・ジャ、ここには両腕で抱えきれないほどの財宝があるんでしょう?」
「まあ、そう焦ることもないでしょう。焦りは禁物です…特に、こういう場所ではね」
 はやるサルマをビーム・ジャが抑える。とはいえ、どちらかといえばビーム・ジャのほうが興奮しているように見えるが。
 ビーム・ジャの忠告を裏付けるかのように、玉座から漆黒の影がゆらり蠢きだす。
 あれは…ドラゴン・プリーストだ!
 おそらくはビーム・ジャの言った、ガスリックという男の亡霊だろう。法衣の下に頑丈な軍用鎧を身に着けており、その顔は醜悪な化け物よりなお険しい。こいつ、元は軍人か?
『我が安寧を破る者どもよ、死を覚悟せよ!』
「だが、仮面なしってことは大したタマじゃねーな…お呼びじゃあねえんだよッ!」
 俺はヤツが召喚したスケルトン・アンデッドの始末をボルガクに任せ、氷結魔法をブチ込みつつ距離を詰める。
『ヌウウウゥゥゥゥゥッ!?』
 危機を察知したのか、ガスリックは攻撃の手を止め、身を守るための防御装甲を構築する魔法を展開する。






「だが…遅いぜ!」
 バギンッ、俺のカタナ、泉州時次郎拵の一閃と同時に防御装甲は無残にも四散し、同時にガスリック自身の肉体も崩壊する。
 灰と化して床に崩れ落ちたガスリックに駆け寄り、ビーム・ジャがおもむろにつぶやいた。
「ようやく宝を手に入れた…」
「なに?どれだ?」
「これだよ」ビーム・ジャは床に広がった灰の塊を指し、「ガスリックさ。ヤツの持つ力、それこそが金に換え難い宝物なのさ。これを我が物にできれば、そのときは…」
「なにを言ってるの、ビーム・ジャ?」
 両腕一杯の宝、と言っていたサルマが余所者の俺たちにではなく、ビーム・ジャに嫌疑の目を向ける。
 その背後から、ボルガクの苦しそうに呻く声が聞こえてきた。
「相棒気をつけろ、そいつは…!」
 剣を支えに膝を突くボルガク、どうやら肉体的ダメージを受けているわけではなく、麻痺の魔法にかけられたようだ。だが、誰が?
 ボルガクの安否に気を取られた瞬間、俺の身体に雷撃魔法が直撃した。
 掌から閃光を迸らせ、ビーム・ジャが不敵な笑みを浮かべる。
「ガスリックを始末してくれたことは感謝している。おそらく、我々二人では荷が重かったろう…それと、ガスリックの灰から力を取り出すには生け贄の血が要る。恩人を苦しませたくはない、余計な抵抗は試みないことだ」
「貴様…ッ!」
「ビーム・ジャ、どういうこと!?」
 不意討ちを喰らった俺にかわって、サルマが問いかける。
 彼女を見据えたまま、ビーム・ジャは冷たく言い放った。
「召使いとしての役目を果たせたことには満足している。だが、そろそろ自分の人生を取り戻しても良いと思ってね…サルマ、お嬢様、ハイロックに帰ったらお父上に訊ねてみるといい。いかにしてケチな盗賊の弱みを握り、その人生を奪ったのかを」
「そんな…」
「最初はあなたを犠牲に力を手に入れるつもりだった。だが、私にも良心ってやつは残っていたらしい…余所者が首を突っ込んでくれたのは幸いだった」
 そこで、俺が二人の会話に割り込んだ。
「そうかね」
「なに!?」






 いままで悶え苦しむ演技をしていた俺はゆっくり立ち上がると、カタナを手に、初撃を受ける直前からずっと展開していた魔力障壁を前方に集中させた。
 ビーム・ジャは驚きを隠せない。
「馬鹿な、まさか!」
『リズ・スレン( Ice Flesh )!』
 魔力障壁を拡散させビーム・ジャの雷撃を弾くと同時に、俺は氷結のシャウトを放つ。
 竜の咆哮で身体が凍結したビーム・ジャは身動きを取ることができず、ただ凶器を手に近づく俺を見ていることしかできない。
「ま、待て、これはほんの冗談…いや、手違いだ、すまない、命だけは…!」
「やめてーーーっ!!」
 サルマの悲鳴が響き、俺はカタナを素早く鞘に納める。









「…ぐ…ぐはっ……」
 バシッ。
 乾いた音とともにビーム・ジャは首筋をしたたか鞘で打ちつけられ、口と鼻から血を垂らした状態で気を失う。
 彼が倒れる寸前、俺は歯を剥き出しに吐き捨てた。
「てめぇの血なんざ、カタナの錆にもなりゃしねぇよッ…!」






 慌ててビーム・ジャのもとへ駆け寄り、彼の口元から「ウウ…」という苦しげな声が漏れるのを聞くと、サルマは安堵のため息をつく。
 カタナの鞘をベルトにさし、俺は彼女に言った。
「致命傷は負ってないはずだよ。俺、そんなにマッチョじゃないしさ」
「わざわざ手加減してくれたの?」
「ま、いちおう同郷だし」
 本人の性根はどうあれ、ツレがいる相手を殺したら確実に面倒なことになるし、とは言わなかった。
「彼はね…」サルマが話をはじめる。「私が小さかった頃から、ずっと世話をしてくれていたの。ビーム・ジャは私が物心ついたときから家にいた召使いで、両親は彼を信用してなかったけど、それは主人と召使いっていう主従関係を考えれば無理もないと思っていたわ。疑問に感じたことは一度もなかった」
 跳ねっ返りの女戦士の目元から、涙がこぼれ落ちる。
 これだよ。
 俺は思う…あのまま斬っても良かったのだろう。私欲で俺を利用し、殺そうとしたクソ野郎、弁解の余地もない悪党を殺したところで、おそらくは俺に非はなかったのだろう。
 おそらくそれは正しい行動だったのだろう。
 だが、それは誰のための正しさだ?
「宝を手に入れ損なったな。ビーム・ジャに騙されたんだろう?」
「財宝なんていらなかった。私はただ、冒険がしたかっただけ…宝が欲しかったのは、それが私の冒険の成功を証明してくれるから、ただそれだけよ」
 彼女が財宝を必要としていなかったこと、金に興味がないことは、いまさら彼女の口から聞くまでもなかった。
 召使いがいる裕福な家庭に生まれ、おそらくは両親の反対を押し切って冒険に出たのだろう。従者つきで…サルマに冒険者特有の険(ケン)がないように感じたのは、逼迫した真剣さがなかったからだ。
 明日にでも宝を掘り当てないと飢え死にする破目になる。借金取りに追われ、臓器を取られる。金のためなら仲間を騙し、殺すことだってできる。悪を成すためではなく、ただ少しでも自分が長生きするために…
 そういう、いわば生きるための気迫が彼女には欠けていた。ままごと遊びの延長だ、などと言うほど意地悪にはなれないが。
 麻痺の魔法の効果がとけ、若干足がふらついているボルガクに肩を貸しながら、俺は床にのびているビーム・ジャに顎をしゃくり、サルマに言った。
「あいつの対処は任せるよ。あんたのことは憎からず想っていたようだしな」
「迷惑ばかりかけていたんだけどね…」

 その場を立ち去る寸前、ボルガクが俺に言う。
「似合わないことをするじゃないか」
「ときにはね」
 なにも殺すだけが問題の解決法ではない。殺すほうが簡潔で、手っ取り早いのは確かだが。
 もちろん相手は選ぶ。個人的な規範のもと、というよりは、その場のノリと状況判断でだが。俺は神を演じるつもりはない。そんなことをするには、すでに背負った業が深すぎる。







 その後、道中で発見したラルドサールというドゥーマー遺跡に乗り込む。また帰還が遅れるが、これが俺の生き方なので仕方がない。
 遺跡内に巣食うファルメルやドゥーマー製自動人形を撃破し、深部へ潜入する。
 しばらく先へ進むと、どこからか剣戟音が響いてきた。どうやら先客がいるようだ。






 遺跡深部でドゥーマー製自動人形と戦っていたのは、このところご無沙汰だった亡霊のカトリアだった。エセリウム鉱石を巡る調査の最中に命を落とした学者で、エセリウム鋳造器具の捜索にあたって協力する間柄である…いちおうは。
 どうやら苦戦しているようで、俺は慌てて加勢に向かう。
「ちわっすカトリアさん!助太刀するよ!」
『あなたは…ていうか、なにその格好!?あと、なんでドレモラなんか連れてるワケ!?色々突っ込みどころが多いんだけど!?』
「いや、その、重装と防御と召喚スキルを鍛えようと思いましてね」
 普段の装備ではなく、黒檀鎧に鉄のブーツ、ドレモラの盾、ファルメルの篭手、尖った王冠という纏まりのない蛮族めいた格好で駆け寄る俺に、カトレアが青白い目を白黒させる。
 すべて、そのへんのダンジョンの宝箱で入手した間に合わせの装備だ。持ち歩いていたのはエンチャントが付与されていたからだが、どれに何の付呪が施されているのかは忘れてしまった。たぶん、たいしたことのない代物だからだろう。
 理由はさっき俺が言った通り。お供にボルガクではなく(彼女は例によって外の見張りに立たせている)、ドレモラ・ロードを連れているのも然り。
『弱いな、定命の者よ!』
「あのースイマセン、これたぶん定命の者じゃないと思います」
 異界の剣によって破壊されたドワーフ金属製のガラクタに向かって啖呵を切るドレモラ・ロードをたしなめる。
 カトレアがここにいるということは、この遺跡にエセリウム鉱石の欠片が存在しているということだ。たしか四つのうち三つは発見済だったはずだから…これが最後のパズルのピースだ。
 四つ目のエセリウム鉱石を手にしたとき、カトリアが肉体のない身体を弛緩させた。
『正直に言うと、あなたが本当に成し遂げられるとは思っていなかったわ。でも、ほっとしている…ううん、まだ終わりじゃないのよね』
「鋳造器具を見つけないとな。次に会うのはそこで、かな?」
 再会の約束をしたあと、またカトレアは姿を消してしまった。どうやら、彼女は強い執着がある場所にしか存在できないらしい。
 このぶんなら、彼女が完全に成仏できる日も近い…かな?







 あちこち寄り道をしたあと、ようやくウィンドヘルムへ到着した俺は休憩する間もなく王宮へと向かった。玉座に腰を据えるウルフリックに、コルバンヤンドで発見した「尖った王冠」を渡す。
 王冠を手に、ウルフリックが口を開いた。
「なるほど、年老いた熊は正しかったというわけだ…途中、なにか問題は?」
「帝国軍の待ち伏せを受けたよ。まあ、たいした規模じゃなかったけど…どういうことだろう?王冠の情報を把握しているなら、もっと戦力を割いていいと思うんだけど。何か別の狙いがあったのかな、それとも、俺たち相手はあの程度の布陣で充分だと思ったのかな」
「ヤツらも王冠を狙っていたのか?」
「外に立っていた見張りのほかに、遺跡の罠にかかって死んだ部隊がいた。俺たちを待ち伏せするだけなら、アレは必要ない…うん、連中も王冠を狙っていたと思う」
「フン。だが、帝国兵はすべてお前たちが始末したのだろう?なら、良しとしよう。ガルマルたちは現地に留まっているんだな?」
「他に使えるものがないか探すと言ってたよ。あまり長居はしないと思うけどね」
「わかった。ソリチュードへ侵攻する日も近い…だが、その前にやってもらいたいことがある」
 ソリチュードへ侵攻?
 帝国のお膝元へ攻め入る、というウルフリックの言葉に、俺は耳を疑う。だが考えるまでもない、彼らは反乱軍で、そのために戦っているのだ。しかし、改めてその現実を認識するには些かの努力が必要だった。
 表情には出さないものの、心中穏やかではない俺に、ウルフリックが刻印入りの片手用斧を突き出した。






「これは…」
 差し出されたそれを受け取り、俺は斧をまじまじと見つめる。
 見た目は変哲のない。ノルド様式の鋼の武具だ。エンチャントされた気配もない。
 ウルフリックが言った。
「それをホワイトランの大バルグルーフに届けてくれ」
「えっと…特別な寄贈品ですか?」
「戦士がもう一人の戦士に斧を送る意味は一つしかない。やつが斧を受け取らねば、そのときはホワイトランと戦争になるだろう…そうか、おまえはスカイリムに来て日が浅いのだったな」
「ああ、儀式的なアレですか」
 おそらくは斧そのものに価値はあるまい。
 ヤクザの兄弟盃のようなものであろう…この斧を受け取り、俺とともに戦うことを誓え、というような。それを突き返すことが最大級の非礼にあたることは容易に予測ができた。
 しかし、まさかウルフリックがホワイトランと一戦交える気でいるとは。
 スカイリムの中心に位置するホワイトランはこの内戦についてどっちつかずの態度を取ってはいるが、どちらかといえば帝国寄りの勢力だ。ここにきて決断を迫るということは、もう後には引けない状況を意味している。
 心配だ…もう、本当に突き進むしかないのだな。
 気が進まないのはたしかだ。いちおう俺はホワイトランの従士という立場だし、ホワイトランの別邸には養子として引き取った二人の娘ソフィとルシアも住んでいる。
 とはいえストームクローク隊員としての立場のうえでも今回の仕事は断れないし、そんなことをしたところで意味がない。別の人間が送られるだけだ。俺を起用したのは、俺がバルグルーフと面識があるからだろう。ドラゴンの脅威からホワイトランを守ったという貸しもある。
 それにしても、気の乗らない仕事だ。戦争の手助けとはな…だが、やるしかあるまい。







 王宮を出てウィンドヘルムで一晩過ごした俺たちは、ホワイトランがある南ではなく、ウィンターホールドがある北へと向かった。
 魔術大学の構内へ足を踏み入れると同時に、奇妙な感覚が頭を覆う。
 その正体はすぐにわかった。元素の間中心部に、サールザルで見たあの「マグナスの目」と呼ばれるオーブが鎮座していたからだ。






「まさか、アレをここまで運んできたの?」
「美しいだろう。こんなものはいままでに見たことがない…」
 恍惚とした表情で語るトルフディル、しかしこれは…この遺物にどんな危険があるかもわからないのに、ちと迂闊すぎやしないか?
 ただのインテリアならいいが、そんなつもりで持ってきたわけではないだろう。いったい何を考えているのか…
「この構造物は、既存のどの文明でも見られないものだ。私の知り得る限りでは…強いて言えばアイレイドに近いが、おそらくは違うだろう」
 どうやらトルフディルはこのまんまるに夢中のようだ。魔性に心を奪われているのか、たんにトシでボケてるのか、わかりづらい。
 俺ですら心を引き込まれるような、奇妙な感覚がある。だからこそ危険だと思う。
 他の連中は誰も疑問に思わないのか?
 なおもこの球体についてトルフディルが語ろうとしたとき、どういうわけかサルモールの手先であるアンカノが会話に割って入ってきた。
「取り込み中に済まないが、そっちの爬虫類に用がある。こいつを借りていくぞ」
「なに?大事な議論の最中だぞ、なんたる無礼!サルモールはサマーセット島に礼儀を置き忘れてきたらしいな」
 会話を中断させられたトルフディルが激昂する。
 ただ、個人的にはジジイの戯言(たわごと)を延々と聞かされるより、陰気なエルフの用事に付き合わされるほうがまだマシだった。たんなる嫌がらせでなければ、だが。
 アンカノが不遜な態度を崩さず言葉を続ける。
「非礼は詫びる。だが、これは火急の用事だ。サイジックの僧兵がここへ来たのだ」
「なに、サイジック!?」
「それもどういうわけか、この余所者のトカゲを名指しで呼んでいるのだ。そういうわけだから、よもやこれ以上引き止めはすまいな?」
「うむむ…」
 不服そうに唸り声をあげるトルフディルを無視し、アンカノは俺を連れて元素の間から離れ、アークメイジ居住区へと続く階段を上りはじめた。
 しかし、まさかサイジックの人間がここへ直接来ようとは。
 それはアンカノも同じ思いらしく、不愉快そうに口を尖らせている。
「サイジックは、自らを超法規的な存在だと思い込んでいる無法の輩どもだ。過去にアルドメリと衝突したこともある。なぜいまこの地に赴き、それもおまえと会いたがっているのかが知りたい」
「協力したら御褒美もらえます?」
「サルモールの活動に貢献するのは生ける者の義務と思わんかね?」
「あ~の~な~。あんたねぇ、こう全方位敵に囲まれてるような環境でよくその態度続けてられるねえ。寝首掻かれる心配とかしたことないの?」
「ここの連中に、サルモールを敵に回してまで私に危害を加える度胸のある者はいないだろうさ。もし私が死んだら…たとえそれが事故だろうと、サルモールはこの大学を放ってはおかないだろう」
「馬に轢かれようと、塔のてっぺんから足を踏み外そうと、サルモールはそれを大学側の敵対的行動と見做すわけね。危なっかしいから、あんた、ずっとベッドで寝ててくんないかな」
「繰り返すぞ鱗野郎、口のききかたに気をつけろ」
「失敬。育ちの悪い余所者なもんで」
「この地の蛮族どもより性質(タチ)が悪いな、貴様」
「どーも」






 相変わらず平穏とは程遠いやり取りをしながらアークメイジ居住区に向かうと、そこにはアークメイジのサボス・アレンと、白い法衣を纏った男がすでに揃っていた。
 これがサイジック…そういえば、サールザルの遺跡で見た幽霊と格好が似ている気がする。ただ、あのときとは別人のようだが。
『どうか警戒しないでほしい。危害を加える気はない』
 サイジックの男が俺に語りかける…と同時に、周囲のものすべてが凍りついた。
 サボス・アレンとアンカノが阿呆みたいに突っ立ったまま、呼吸も、まばたきもなく、木彫りのマネキンのように微動だにしなくなる。俺は歩き、光を見て、そして影を見た。
 いったい何が起きたのか…俺は仰天しそうになった。影が動いていない。光も揺らがず、中庭に植わっている樹から除け者にされた木の葉が、宙で止まっていた。
「これが…サイジックの力か」
『あまり長くは保たないので、手短に話そう。ずっと君に会いたかった』
 どうやら、この停止した時間のなかで動けるのは俺と、サイジックの男だけのようだった。






『この施設はいま、非常に危険な状態にある。それはすべて、君たちが持ち込んだもの…マグナスの目のせいだ。あれが放出する力に、ここにいる者のほとんどが魅入られてしまっている』
「サールザルにいたときからかな…でなければ、あんなモン、持ち込もうなんて考えないもんな」
『残念ながら、マグナスの目のせいで我々の未来視の能力が阻害されている。君と連絡を取るのが遅れたのも、そのせいだ。我々は本来、直接事態に干渉するような行動は取らない。余分な警戒を招くし、我々の戒律にも反する。だが、今回に限っては私自身が直接ここへ赴かざるを得なかった。サイジックの中には、私の行動を反逆と捉える者もいる。そういう隠微な状況だということを理解してもらいたい』
「それはいいけどさ…なんで俺なワケ?」
『それは、きみが美しくカッコ良く世界を救う素質、類稀なる才能を持つスーパーヒーローで、この世の最後の希望だからだ』
「いや~ん。そこまで言われると、なんでもしてあげたくなっちゃうよ?」
『(ああ、本物のバカだこいつ…)まあ、それはともかくとして。この状況を打開するには、まずダンレインの予言者と呼ばれる人物を探さねばならない。この大学のどこかにいるはずだ。おそらく、誰かが居所を知っているだろう』
 そう言って…サイジックの魔法が解けた。
 男は煙のように消えてしまうのかと思ったが、さっきと変わらず立っていた。空間転移とか、そういう魔法は使えないようだ。それに、どうやら幻の類ではなく実体らしい。
 サールザルでの発見からそれほど日数は経っていないはずだが、この男はどこからやって来たのだろう?アルテウム島があったというサマーセット諸島からか?船で?それにしては…随分と早く到着したものだ。
「おい貴様、いまなにをした!?」
 身動きが取れるようになった途端、アンカノが血相を変えてサイジックの男に喰ってかかる。
 俺たちの会話は聞き取れなかったようだが、どうやら「なにかをされた」という感覚はあるらしい。
「申し訳ないが、なにかの手違いだったようだ。それでは、私は本部に帰還する」
 サイジックの男はアンカノに取り合おうとせず、さっさとこの場を退場してしまった。
 ていうか、えーと、このまま誤魔化して帰る気っスか!?ちょっと鋼の心臓持ちというか、豪胆すぎやしませんかねサイジック。そんなライヴ会場間違えたみたいなノリでいけると思ってんの?
 しつこくアンカノが喰い下がるも、彼自身も実力行使に出るまでには至らないようだ。一方で、アークメイジのサボス・アレンは「私がなにか粗相をしたのでなければ良いが…」と、もともと青かった顔をさらに青ざめさせている。こっちはこっちで気の小さい管理職丸出しな態度だなオイ。
 サイジックの男を取り逃がしたアンカノは、いまにも地団駄踏みそうな雰囲気で怒鳴り散らした。
「おのれ、なにを企んでいるサイジックめ!おそらくヤツは、侵略に先立つ偵察に来たか…あるいは、ヤツもあの、マグナスの目とかいうやつを狙っているに違いない!」
「ヤツ『も』?」
「あれはいかにも強力そうな魔道具に見える。なにか良からぬことに利用するつもりに違いない」
 アンカノは適当に誤魔化そうとしたが、俺が覚えた違和感は消えなかった。
 ヤツ「も」、と言ったか?
 マグナスの目「とかいう」などと言って、関心がないフリをしているが、アンカノほど頭が切れる男なら、むしろそういう物言いは不自然だ。
 サイジックの男もアンカノには懸念を抱いている様子だった。注意が必要か…
 それはそうと、俺はサイジックの男からの助言にさっそく従わなければならない。なにやら物憂い表情で椅子に腰かけるサボス・アレンに、俺は訊ねた。
「ところでアークメイジ、ダンレインの預言者って知ってます?」
「どこでその名を聞いた?トルフディルか?もしそうなら、その話を二度と蒸し返すなと伝えておいてくれ。私が話すことは何もない」
「あ、そうですか。スイマセン」
 なるほど、トルフディルが知っているのか。
 とりあえずアンカノの耳にこの名を入れないよう気をつけなければなるまい。わざわざ余計な手助けをしてやる必要もないだろう。

 とりあえず元素の間に行きトルフディルの姿を探したが、彼の姿が見当たらない。
 あちこちを歩き、ようやく達成の間(大層な名前だが、要するに宿舎だ)でトルフディルを見つけることができた。
 ダンレインの預言者の名を出すと、彼はなにやら旧友のことを話すような顔つきで言った。
「懐かしい名だ。久しく聞いていなかった…そうか、彼に会いに行くのか。おそらくはミッデンにいるはずだ、大学地下のダンジョンだよ。危険な場所だから、普段は立ち入り禁止になっている。といっても、まあ、サールザルでの君の活躍を見れば、馬の耳に念仏だな」
「それを言うなら釈迦に説法でしょう。似てるけどニュアンスが真逆だ」
「ほう、これは失礼した。ともかく、彼に会ったらよろしく言っておいてくれ」
 それだけ言うと、トルフディルは一言断ってからベッドで横になった。
 もう夜も遅い。俺も一休みするとしよう。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。今年のハロウィンは何もしなかったな…
 ともかく、順調にメイン筋のクエストが進みつつあると同時に、アイアンバインド洞窟でのミニクエスト(とも言えないか)を多少キャラの性格を盛ってお送りしました。俺こういう、キャラクター性を前面に押し出したプロットって好きなんですよね。重要でもなんでもないんだけど、妙に記憶に残るというか、愛着が湧くというか。
 そういえば大学をうろうろしていたとき、訓練中のオンマンド君の前を通ったときに彼の放った魔法が俺に命中したんですが、直後にボルガクが血相変えて剣を抜き、ノータイムで彼を斬り殺したときはさすがに目を疑いました。




殺人事件だよこれ…



 いくら相棒が攻撃されたといっても、攻撃魔法を一回誤爆しただけで殺すのはやり過ぎだよボルガクさん…しかも俺まったく気にしてなかったのに…
 すわ大学側と戦争になるか!?と思ったんですが、どうやらボルガクの行為は正当防衛と見做されたらしく、特にお咎めはありませんでした。それでいいのかSkyrim…
 あ、ちなみにオンマンド君は生き返らせました。Ressurectコマンドで。死霊術じゃありませんよ。
 本文中には書きませんでしたが、じつはラルドサールで猛特訓を積んで回復と片手剣武器と両手武器以外のスキルをすべて100にしました。現在レベル100を超えています。














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