前作を知っていると思わず「ニヤリ(人によっては爆笑)」としてしまうシーンが全編に散りばめられていて、前作を知らなくてもそこそこ楽しめるのだけれど、前作を観ていたほうが楽しめるという造りになっている。
それと気になる新キャラクターだが、意外にも違和感なく作品の世界観に溶け込んでいてグッドだった。ポストロッコのコリンズJrは他のキャストに負けず強烈な個性を放っていたし、デフォーの後釜ベンツもなかなかの変人ぶりを発揮。「この映画に出す以上、フツーの人間なわけないじゃん」という、監督の嘲笑が聞こえるようだ。
主役の兄弟2人も10年のブランクを感じさせず全開で飛ばしていきます。なにより、兄貴の計画性のなさが前作より酷くなっている(笑)「完璧だ!」じゃねえよ!と、たぶん観ていた誰もが心の中でツッコミを入れたんじゃないかと思う。「どーせまた映画の真似なんだろ!?」とか言われてるし。ビリーおじいちゃんも70近いというのに前作と劣らず二挺拳銃をぶっ放してくれます。
今作はお祭り的な要素が強く、前作に輪をかけて「細かいことは考えちゃいけない」度が高くなっている。私は基本的にそういうのは気にしないが、唯一酒場での銃撃シーンの後の隠蔽工作は「ちょっとこれは…」と思った。
あんなものはすぐに使用した銃器から犯人が特定できるし(ベンツが指揮権を剥奪されたのはこの適当な仕事ぶりが露見したから?)、なにより死者を弔うために銀貨を置いていた兄弟のポリシーに反する。これが一番痛い。あくまで信念をもって悪党狩りをしていたという点に隙ができてしまうのは良い印象を残さない。
あとはマフィアの本拠地に殴りこみに行くシーンで「ベンツは本当にあの格好で銃撃戦に参加したのか?っていうかそもそもどうやって誰にも気づかれずあの場に立っていられたのか?」とか、肝心の銃撃シーンが毎回「兄弟が二挺拳銃撃ちまくり⇒敵が全滅でイナフ」と単調だったりとか色々あるが、そこはまあ不問に処すということで。あと、監督の心情を脈絡なく登場キャラクターに喋らせるのは芸がない。あそこだけ出来の悪い邦画みたいだった。
それにしてもこの映画、前作のファン以外に観に行く人っているんだろうか。私が劇場で観たときはそれほど人数は入ってなかったんですが、あれ多分全員熱心な前作ファンだったと思う。だってクレジット画面になっても一人も席を立たなかった光景なんて初めて見ましたもん。年齢層はバラバラだったけど。
なんにせよ、思わず「おかえり!」と言いたくなるような数少ない(唯一の?)続編映画でした。
最後に、この映画を観てわかることを箇条書きにしておきます。
・兄弟は間違いなくドゥーチェの実の息子(髪とヒゲ的な意味で)
・ノアはヒストリー・オブ・バイオレンス
・装飾つき拳銃を使うやつはホモ
・刑務所に収監されている犯罪者は欲求不満のホモ
・健康マニアはホモ
まるで成長していない…(安西先生風に)
エート、基本的にはTVシリーズとやっていることはそう大差ないです。キャラ設定がTV版準拠っていうのもそうなんですが、まわりに出てくるキャラが全員「ただの人間」なんで、ヴァッシュやウルフウッドも相対的に戦闘力が「人間並」になっています。
つまり、ヴァッシュ達に降りかかるピンチも「まあ人間ならピンチになるかもね」という程度のもので、原作知らない人にとっても「どうせ復活するんでしょ」としか思えないし、原作ファンからすれば「人間ごときにヴァッシュやウルフウッドが殺せるわけないじゃんYO」となってしまうので、緊張感がまったくないんですよね。なので、あの定番な「こいつのおかげで助かったゼ!」というギミックも、原作知ってる人間から見れば「いや、アンタはそれすらいらないでしょ」みたいな今更感ばかりが漂ってしまうわけで。
そしてシナリオ上なにより問題なのが、ヴァッシュの「不殺」が場当たり的過ぎることだ。すくなくとも原作では「何も考えず、ただ死ななければそれでいい」みたいなテキトーはぶっこいてなかったと思うが。おかげで「不殺」に対する是非もただの結果論となってしまい、原作の領域にまでまったく踏み込めていない。
総評として。
アニメーションそのものの出来はいいが、いかんせんシナリオがどっちつかず(ヴァッシュの「不殺」に関する信念が本作では「幼稚な正義」と大差ないのは問題だ。そこに命を賭ける、賭けないはたいした問題ではない)なので、原作を知らない人にも、原作ファンにもいまいち勧めづらい作品となってしまった感はある。
そういうのをすべて承知したうえで「いや、エンターテイメントだから」と寛大な気分で見れる人にのみ勧められる映画。あと、超画質でパニッシャーが動くところを見たい人向け。あと、ヴァッシュの超速リロード。
アワーズで「原作終了後だからこそ作れた」という記事を鵜呑みにして期待してしまったのだが、この程度なら無印トライガンの終了後でも充分作れたと思う。最初の「(TVシリーズから)まるで成長していない…」というのはそういった心情から出た、素直な感想です。
ということで、最後にこの映画を一言で体言するならば…「マキシマムな要素は一切なし」。
だって、ねえ…期待しちゃうでしょ?
一言で言うと、心臓に悪い映画だった。演出的にも映像的にも。以上終わり。
ってんじゃあ、あんまりなんで、せっかくだから感じたことをグダグダと書いてみる。
なんというか、地味…と書くと齟齬があるかもしれないけれど、コアというか、マニアックな作品だなとは思った。悪い映画ではないんだけれど、それほどスゴイ賞をバンバン取るほど希求力のある作品だとは思えなかったなあ。よっぽど他にロクな作品がなかったのか。
いきなりボロクソにけなしてるように見えますが、それは誤解です。個人的にはこの作品を高く評価しています。にも関わらず上のような台詞が出るのは、この作品が「コア」で「マニアック」だからです。
たぶん、「なんだかスゴイ賞をたくさん取ってるみたいだし、とりあえず観ておこうか」という客層には一番不向きな映画なんじゃないかなと思う。イラク戦争(というか、戦争という事象そのもの)に興味があるならまだしも、そうでない一般ピーポーにはまったくもって観る必要性も必然性もない映画です。
ていうか日本人ウケする要素がまったく見当たらないですこの映画。盲目的に「戦争は良くない!」とか言いつつ、なぜ戦争が良くないか、そもそもなぜ戦争が起きるのかをまったく考えようともしないスットボケた国民性を持つ日本人にとっては、この映画で語られるすべてがワケワカメなんじゃなかろうか。というより、ヴェトナム戦争時にホー・チ・ミンを英雄視した米国の一般ピーポーにすらウケるかどうか怪しい。
内容的にはドキュメンタリーっぽい色が強く、ただ単に「こういうことがあったんですよ」という事実を淡々と描いていたように思う。そこに脚色や個人のエゴが入る余地はない。
この映画は一般ウケしないと思った(そして、この映画が「コア」で「マニアック」だと思った)最大の理由は、この映画は正義や悪といった抽象的な概念を超越した作品であり、作り手のポロパガンダでも、反米でも、ましてや反戦映画ですらないからだ(すくなくとも私にはそう感じられた)。
とある爆弾処理兵の日常。この映画の内容は、それ以上でも、以下でもない。そういうのに興味がある人は是非。興味がないならスルーしてもまったくOKな作品です。
あーあと、一箇所だけ疑問点が。
砂漠のド真ん中で出会った賞金稼ぎの正体って、なんだったんでしょう?米軍じゃなさそうだし…SASか、それともPMC?SOPMOD・AKなんか使ってる時点で、そこいらのゲリラじゃなさそうだってのはわかったんですが、所属に関しては作中で名言されてませんでしたよね。デルタかグリーンベレーって可能性も…う~む。