主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2016/07/31 (Sun)03:52
プリムの町を解放したブレンダは、モハビ・エクスプレスの支店長ジョンソン・ナッシュと元保安官補のビーグルの情報から、自分が追っている男キャリア・シックスがクレイブ本人であることを確認する。
クレイブを襲い、ブレンダを撃った謎の一団がニプトン経由でノバックへ向かったことを知ったブレンダは、プリムで小休憩したのち出発の準備をはじめる。
「なにをやっているんだ?」
「いや、やっぱりストックは長いほうがいいかと思って」
パウダーギャングたちが立て篭もっていたバイソン・スティーブホテルで睡眠を取ったあと、ブレンダはギャングの一人が持っていたショットガンの銃床を切り落とし、ドック・ミッチェルから譲ってもらったときすでに銃床が削られていた自分のショットガンに継ぎ足しで移植するという器用なことをやっていた。
作業がやりやすいよう銃身を外し、スウィッチ・ブレードで外形を整える。
サラとエックス・テックは普段からこのホテルを利用していたらしく、多少荒らされはしたものの、ギャングたちの手から取り戻せたことを素直に喜んでいた。もっとも血の池風呂と化したホールを掃除しなければならないとわかったときは、露骨に嫌そうな顔をしたが。
ホールは未だに硝煙の残り香が漂っており、血の匂いも完全に消えたわけではない。そんな場所で眠るのは、平和な世界であれば正気の沙汰ではなかったろう。
もっともブレンダにとって、雨風を凌ぐことができ、ついでに銃弾が飛んでくる心配がなければ、それはもう上等な寝床であった。すくなくともワシントンではそうだったし、ここモハビでもそう違いはないだろう、と彼女は思っていた。
「あんた、ブレンダ、だっけ、モハビに来てからの記憶がないって言ってたわね」不意にサラが尋ねる。「じゃあ、その前の記憶はあるんだ?」
「ワシントンにいたときのことは。多少は」
なにせ一度死んでいるし、しかも頭を撃たれたあとだから、とまでブレンダは言わなかった。
昔の記憶もあまり鮮明ではなく、要所は覚えているが、はっきりとしたイメージを出力することができない。それはブレンダの物覚えが特に悪いというわけではなく、もともと人間の記憶というのが曖昧にできているに過ぎないのだが。
なにか聞きたいことでもあるのか、と言うブレンダに、サラは質問した。
「どこで戦い方を覚えたの?軍隊?」
「みたいなものかな。昔付き合ってた男が、アウトキャストっていう組織の出身でね。彼に戦い方を教わったんだ。随分世話を焼いてもらった」
それはクレイブに出会う以前、ユニオン・テンプルの用心棒になる前の話だ。
まだティーンエイジャーだった頃、ブレンダの故郷はレイダーの襲撃を受け、大勢の同胞が殺された。殺された人間のなかにはブレンダの両親も含まれていた。そしてブレンダは生き残った同胞の多くとともに奴隷として使役され、屈辱の日々を送ることになる。
数年後、ブレンダの故郷を根城に略奪行為を続けていたレイダーたちは、ウェイストランドをパトロール中だったアウトキャストの部隊と偶然接触してしまい、銃撃戦に発展。
レイダーは皆殺しにされ、多くの奴隷が銃撃戦に巻き込まれ死んだなかで、ただ一人ブレンダだけが生き残る。手足が拘束され不自由な身であったにも関わらず、混乱した状況を利用して果敢にレイダーへ反撃を敢行したブレンダにアウトキャスト隊員の一人が興味を抱き、彼女を保護、インディペンデンス砦に連れ帰った。
アウトキャストとともに生活し、彼らから生存術や戦闘技術を学んだブレンダは、ウェイストランドの人々(アウトキャスト曰く「野生の原住民」)に溶け込みつつロストテクノロジーの捜索をする非正規の連絡要員として活動。
その素性を隠しながら放浪を続け、行き着いた先がユニオン・テンプルだった。
彼女自身が元奴隷だったこともあり、奴隷解放を目的として行動するユニオン・テンプルの信条に素直に感銘を受けたブレンダはそれ以降、ほぼ私情のみで奴隷商人との戦いに身を投じていく。
そしてあの傭兵、クレイブと出会い……
ガリッ、そこまで考えたとき、ブレンダの手に余計な力が入った。銃床が妙な形に削れる。いかん、失敗だ、動揺した。癪に障る、こっちも話を振ってやれ。
「サラはどうなの?そのリボルバーと早撃ちはヴォールト・テックの趣味じゃないでしょう」
「この銃はね、兄さんの形見なんだ。ヴォールトがフィーンドに襲われたあと、兄さんは私を連れてヴォールトから脱出した。それから兄さんはずっと、私を守ってくれた…運悪くレイダーと撃ち合いになって、命を落とすまで。銃の撃ち方も、兄さんから教わったんだ」
そう語るサラの表情は穏やかで、兄さん、と口にするときの発音が柔らかい。
心底兄のことを敬愛していたのだろう、そこまで考えて、ブレンダはサラの話に奇妙な違和感を覚えた。
サラとエックス・テックの姉妹は、フィーンドというレイダー集団の襲撃を受けたヴォールト3の生き残り…ジョンソン・ナッシュはそう言っていた。
「エックス・テックは一緒じゃなかったの?」
「うん。だからモハビ・エクスプレスでキティに会ったとき、ものすごく驚いた。たった一人でヴォールトを抜け出して、ここまで来たんだって」
「キティ?」
ブレンダが首を傾げる、とほぼ同時に、エックス・テックが金切り声を上げた。
「おねーちゃん、その名前で呼ばないでって言ってるじゃん!」
「あんた、キティっていうの?」
「ちーがーうー!はぁ…私の本名は、ケイティ。昔っから、おねーちゃんがキティ(子猫ちゃん)なんて呼んでからかうから…ウェイストランドの連中にまでキティなんて呼ばれたらたまったもんじゃないから、ここではハンドル・ネームを名乗ってるわけ」
「ごめんごめん、ケイティ」サラが微笑む。
まったく仲の良い姉妹だこと…ブレンダはそう思ったが、しかしエックス・テックの態度にはすこし引っかかるところがあった。
いまも名前のことで不機嫌そうにしているが、彼女はサラが兄の話をはじめたときから、どこか不愉快そうな顔を見せていた。サラがキティの名を口にしたのは、むしろそんなエックス・テックをたしなめるためだったようにも見える。
なんだろう?
どうにも釈然としない部分が残るが、そこをあえて深く突っ込むほどブレンダは無粋ではなかった。
人にはそれぞれ人なりの事情がある。もちろん自分にも、そして相手にも。
あの姉妹のことはすこし気になったが、いますぐ探求欲を満たさなければならないような問題ではない。
荷物を整えてバイソンスティーブ・ホテルを出たブレンダはサラとエックス・テックに見送られ、プリムを出発しようとしていた。
陽はすでに傾きかけ、雲が夕日に照らされている。これからクレイブを追い、ノバックへ向かわなければ。そうだ、自分の記憶すら覚束ない状況で、他人の人生に首を突っ込む余裕などない。
プリムに背を向けようとしたとき、ブレンダを呼び止める声があった。
「ハイ」
エックス・テックだった。サラの姿はない、一人で追ってきたのだろう。
「あなたのこと、記事にしてもいい?」
「記事?」
「そういえば言ってなかったっけ、私、月イチで発行してる会報の編集をしてるんだ。運び屋があちこちで聞いた話や体験したことを記事に纏めるの、けっこう評判良いんだよ」
「そういえば君は広報担当だってジョンソンが言ってたな、そういうことか。会報の名前は?」
「モハビ・エクスプレス」
「そのまんまじゃん」
「そのまんまだけど!これが一番良い名前だと思ったんだよう、覚えやすいし。で、どう?」
「うーん…」
頭を撃たれた女が奇跡の生還、という見出しを思い浮かべ、ブレンダは低い声で唸る。
会社のために自分を切り売りする気はなかった(そもそもブレンダ自身はモハビ・エクスプレスの職員ではない)し、自分の存在や行動目的が不特定多数に知られては、今後の活動に支障が出るかもしれない。
まして自分の過去が大衆を慰めるための三文記事に仕立て上げられる可能性を考えると、とてもじゃないが首を縦には振れなかった。
「他人のことを書くまえに自分のことでも書けば?ヴォールトでの体験とか。それとももう書いた?」
「…書いてない、けど」
「じゃあ、君の提案はフェアじゃないね」
そこまで言って、ブレンダはもう一つ藪を突いてみようと思った。
「ところで君は、兄のことをどう思ってたの。お姉さんは随分懐いてたみたいだけど」
おそらく彼女たちの兄はサラだけを助け、エックス・テックのことは置き去りにしたのだろう。ヴォールトを脱出した時期が異なるというのは、つまり、そういうことだとブレンダは考えた。
もちろん妹一人を置き去りにした事情はあったのだろうが、そうだとしても、エックス・テックが兄を恨み、サラが兄を慕っていることに不満を覚えることに納得はできる。
しかしエックス・テックの口から語られたのは、もっと飛躍した事実だった。
「…私たちに、兄なんていない」
「え?」
「いままでこの話は誰にもしたことがなかったし、絶対におねーちゃんの耳には入れたくない。けど、あなたは信頼できそうだし…ううん、そうじゃない、でも一人くらい知ってたって、一度くらい他人に話したって、いいと思わない?」
「なにが言いたいの?」
「お姫様にはロバの耳が生えてるってこと。もし興味があるなら教えるけど、ねえ…誰にも言わないでね。特におねーちゃんには」
いったい、彼女たちの過去になにがあったというのか。
すこしためらったあと、ブレンダは返事をした。
「…わかった」
その後エックス・テックの口から語られた事実は、驚くべきものだった。
「ヴォールト3の隔壁が解放されて、いままでずっとシェルターで暮らしていた私たちが最初に接触した外界の人間がフィーンドたちだった。最初で最後のコンタクト、最悪の不運。あっという間に制圧されて、大勢が殺されて、残りは奴隷になった。で、おねーちゃんは…ものすごく酷い目に遭わされた。わかる?悪党がすべすべ肌のプリティ・ガールに対してやりたがるようなことを全部試されたってわけ」
「あなたは?」
「襲撃を受けたときすぐ通気口に逃げて、脱出する直前までずっとそこで息を潜めてた。だから酷い目には遭わなかった、そのことを自慢する気にはなれないけど。ときどき食料庫に忍び込んだり、脱出のための道具を揃えながら、おねーちゃんのことを観察してた。そのうちフィーンドの一人が特におねーちゃんを気に入っちゃって、そいつはおねーちゃんを連れて、仲間を裏切って…何人か撃って、ヴォールトを脱出した」
そこでエックス・テックは一旦話を区切った。
ブレンダはといえば、どう言葉を返していいのかわからなかった。
サラとエックス・テックの姉妹の過去、その境遇は、レイダーの暴力によって破壊されたという点でブレンダとよく似ている。しかし細部は…歪(いびつ)、という表現がしっくりくる、とブレンダは思った。
エックス・テックは、レイダーに嬲られる姉の姿を、どんな心境で見守っていたのだろうか。
やがて彼女の話が再開する。
「そのあと私もヴォールトを出て、何度か死にそうになりながら、どうにかここまで辿り着いて、そしてジョンソンに拾ってもらったの。何年か経って、おねーちゃんに再会したときは…頭が変になったんじゃないかと思った。おねーちゃんは昔のことを何も覚えてなかったの。あたしのことも。あたしがおねーちゃんを見つけたときも、まるで知らない子を見るような目で…それに、兄。誰、それ?でもおねーちゃんは、小さいときからずっと兄と一緒に暮らしてたんだって、本気でそう言ってた」
「でも君の名前は覚えてたんじゃないの?ホラ、君のことをキティって」
「それは、私がそう教えたからそう言ってるだけ。おねーちゃんが私に関して知ってることはみんな、私から聞いたこと、それを知識として覚えているだけ。記憶が戻ったわけじゃない。可哀想なおねーちゃん」
おねーちゃん、私のことをキティって呼んでからかってたでしょ?ねえ、なにも覚えてないの。思い出してよ…
おそらくはそんなやり取りがあったに違いない、その光景を思い浮かべるのはじつに容易く、ブレンダは胸が詰まるような思いをする。
「それじゃあ、兄っていうのは…」
「みなまで言わないでね。そいつが、おねーちゃんに親切にしてたっていうのは本当みたい。だからなんだって話だけど。あのクソ野郎…いままで自分がやってきたことを全部ヴォールトに捨てて、人生やり直しってわけね。私と会う前に死んでくれてせいせいしてるけど。でも、おねーちゃんにそんなこと、言えるわけないでしょう?だから、おねーちゃんは大好きな兄さんと一緒にずっと旅をしてた、それがおねーちゃんの記憶なら、それはそれでいいんだ」
そして、エックス・テックは笑った。ものすごく悲しそうな目で。
「ちくしょう、出発するまえに変な話を聞いちゃったな…」
思わぬ秘密の共有者となってしまったブレンダは、たいした思慮もなしに他人のプライベートに首を突っ込むもんじゃないと改めて思っていた。といっても、話を聞いた後でそんな考えを持つのは失礼なのかもしれないが、今回に限ってはこちらが無理に迫ったわけでもなし、胸の内で後悔するくらいは許されるだろう。
口外さえしなければいい、そのことを自分がどう思おうと、他人には関係ない。
それよりもまずは我が身だ。キャリア・シックス…クレイブを追い、ノバックへと向かう。距離はかなり遠い、おそらくは多難な途(みち)となろう。
高精度ライフルの銃杷を握りなおし、ブレンダは夕日を背に足を踏み出した。
ネバダハイウェイ・パトロールステーションの周辺をうろつく武装集団を見かけたのは、すっかり空が藍色に染まり、コンクリートの放射熱で温まったぬるい風が肌を撫ではじめたときだった。
幸いにしてネバダの秋は過ごしやすい気候で、昼夜の寒暖差もそれほど激しいものではない。
たとえ真夏だったとしても、よく言われる砂漠特有の「昼は50度、夜は-50度」などといった極端な気温差には普通ならない。ああいうデータはいわば最高記録と最低記録を掛け合わせたもので、いささかの誇張と恣意的な解釈が含まれている。乗り物のカタログデータのようなものだ。
もちろんネバダの気候をナメてかかると、痛い目を見るのは確かだが。
「さて…あいつらは何者だ?」
藪に隠れて息を潜め、ブレンダは謎の集団を観察する。
服装はバラバラで、いずれもラフなスタイルであることからNCRの兵士ではない。まだ遭遇したことはないが、噂に聞くシーザー・リージョンとも違うようだ。
旅人か、商人か、あるいは…レイダーか。
バックパックのサイドポケットにしまってあった地図を取り出し、ブレンダは現在地を確認した。
このままルート15沿いを南下するのがもっとも安全だが(迂闊に道を外れると現在地を見失いかねない)、そうするとあの武装集団と接触することになる。どこまで範囲を広げているのかはわからないが、パトロールが出ているので、よほど遠回りをしない限りは捕捉される可能性がある。
また遠回りをするなら東か西へ逸れることになるが、東のイヴァンパ・ドライレイク(名前からして干上がった湖と思われる)には巨大化したアリやサソリなどのクリッターが跋扈し、西のモスキート・マウンテン沿いは多数のフェラル・グールが出没している。いずれも安全ではない。
「しゃーない、ストレートにいくか」
地図を畳んでポケットにしまい、ブレンダはふたたび武装集団に目をやる。
PSG-1で片付けるのは簡単だ。だが相手の正体もわからないのに一方的に撃ち殺すのはキチガイ沙汰だし、なにより弾薬の手持ちが少ない。プリムでかなり使ってしまったうえ、補給が受けられなかった。プリムに駐屯していたNCR軍では.308口径弾の運用がなかったのだ。
幸いにしていまは夜、闇に紛れて接近するまたとない機会だ。
減音器つきピストルの装弾を確認し、マチェットを引き抜きながら、ブレンダは静かに建物へ接近した。
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。意外と手間取ったプリム編、じつはサラとエックス・テックの登場は当初の予定にはなかったものです。
この二人はもともと、以前から度々話題に出していたニューベガスの二次創作案「フォア・エイセズ」の登場人物としてデザインされたキャラでした。この話はニューベガス発売当初、コンシューマ版をプレイしていた当時に考えたもので、運び屋のサラはベニーの一団にプラチナチップと、そして兄の形見であるリボルバーを奪われ、それらを取り戻すために彼らを追跡する、というプロットでした。そう、サラはもともと主人公だったのです。
といっても、当時アイデアだけで終わったこの話をいまさら書く気にはなれず、ならばせめてと、没ネタ供養の意味合いを込めて本作に登場させました。
もともと鬱展開をやりたいがために考えた話で、それは今回出てきたサラとエックス・テックの過去エピソードからも片鱗が窺えると思いますが、とにかく登場人物を惨たらしく死なせよう!という露悪趣味ここに極まれりな展開を想定していて、当時はそういうのが大好きだったんですが、今となっては正直…
展開としてはNCRルートでの進行になるんですが、ラストでリガタス・ラニウスを倒しながらも重症を負ったサラが生きる目的を見失って自問自答するなか、すべてをNCRの手柄とするための陰謀によってレンジャーの狙撃を受け死亡、という結末を考えていました。エックス・テックはフィーンドに捕らえられ拷問の末惨死、またNCRレンジャーでサラの協力者として登場するアンバーという女性兵士(前話で運び屋の一人として名前だけ出しました)はキンバル大統領暗殺の際に裏切り者と誤認されて処刑される、という内容でした。
まあ、いま時間を割いて書くべきものでもないな、と。
似たような境遇で、Fallout3のほうも没になった企画があって、そっちは半ミュータント化した少女が迫害を受けながらもエンクレイブとの戦いに身を投じる…という、そっちはそっちでアレでナニな展開の話が。これも何らかの形で再利用したいなあ。
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2016/07/23 (Sat)08:14
プリムの治安を脅かしていたパウダーギャングたちを殲滅し、ホテルを出たときにはすでに世が開け、空が白みはじめていた。
「死者の収容と負傷者の確保を急げ、ホテル内の再捜索が済んだら他の建物もチェックしろ。ギャングどもが紛れ込んでいるかもしれん、抵抗の意思ありと判断したら射殺して構わん!ムーヴ、ムーヴ!」
ヘイズ少尉の指示のもと、NCR軍兵士たちが慌しく動き回っているのが見える。
ブレンダと、彼女に遅れて正面玄関からホテルに突入したガンスリンガー…サラ・スチュアートと名乗った…の二人はモハビ・エクスプレス支社の建物の前に横たわる死体を発見し、足を止めた。
「キャリア・フォーだ」サラが言う。
「え?」
「ダニエル・ワイアンド、四人目の運び屋。私と同じように、仕事を終えて戻ってきたところだったんでしょうね」
サラは六人の運び屋が雇われた配送計画の参加者の一人で、それぞれキャリア・ワン~シックスと名付けられた運び屋たちは皆が異なるルートを通ってニューベガス・ストリップ地区のゲートまで向かったのだという。
仕事を完了したサラはプリムへ戻ってきたとき、武装した市民とNCR兵士たちがホテルを包囲している異様な光景に驚いたらしい。
両者から事情を聞き、得体の知れない余所者(ブレンダのことだ)に事態をほぼ丸投げしたという彼らの態度にサラは憤慨し、制止を無視して正面扉から突入した…ということだった。
おそらくダニエルはサラよりも前、ブレンダより早くプリムに到着し、今回の事態に巻き込まれたのだと思われた。
「パウダーギャングの襲撃とかち合わせたのか。運が悪かったな」
「腕と運の悪いやつは死ぬ。それがモハビの掟よ」
サラの口調は厳しいものだったが、それでも彼女は死んだ同僚の前で跪くと、目を閉じて十字を切り、冥福を祈った。チャリッ、胸の前にぶら下がった銀のクロスが音を立てる。
おそらくさっきの一言はキャリア・フォーを叱責したのではなく、自分に言い聞かせたのだろう、とブレンダは推察した。いつ自分がこうなってもおかしくはない、という自戒を込めて。
事態の解決を見て市民たちがめいめい散っていくなか、サラはブレンダをカジノへ誘った。
「戦勝会をやりましょう。勇敢な命知らずには一杯奢ってやらないとね」
「一杯(グラス)?一本(ボトル)じゃなくて?」と、とぼけるブレンダ。
そんな彼女をジト目で見つめ、サラが一言。
「…VSS」
「なにそれ。ロシアの消音ライフル?」
「バキューム・ストマック・ストレンジャー(底無し胃袋の放浪者)。あんたのことよ」
「あ、ひっでぇ。図体でかいうえに愛想ねーでやんの」
二人はしばらく睨み合う。
生意気な女だ…相手の顔を見れば、互いにそう思っていることがよくわかる。
やがて緊張に耐えられなくなった二人は吹き出し、笑い声を上げた。肩を叩きながらカジノへ向かう二人の姿は、他人からは旧知の仲のように見えたことだろう。
「あっ、おねーちゃん!帰ってきてたんだ」
どうやらカジノで待ちぼうけを喰らっていたらしいエックス・テックが、ブレンダとともに戻ってきたサラを一目見るなり大きな声を上げた。
サラはバーのカウンターに入り、棚に飾ってあった酒瓶を片っ端からテーブルの上に並べていく。本来それらは売り物のはずだったが、まあ町の危機が救われたことだし、無礼講ということだろう。どのみち、請求書が自分に回ってくることはあるまい。
そう考え、ブレンダはウィスキーのボトルを無造作に掴むと、誰かが使ったまま洗われていないショットグラスに琥珀色の液体を注いで一気に呷った。
「朝っぱらから酒だと?まったく最近の若いモンは…」
すこし遅れて戻ってきたションソン・ナッシュが、すでに一杯やりはじめているブレンダとサラの姿を見て仰け反った。
かぶりを振りつつ、ションソン自身も適当なグラスを磨き、ビールを注いで一気に飲み干す。
「じーちゃんも他人(ヒト)のこと言えないじゃん」
「年寄りはいいの」
「なにその理屈」
ジョンソンの滅茶苦茶な理屈に、エックス・テックは呆れ顔を見せる。
ビールをもう一杯グラスに注ぎながら、ジョンソンは二人の銃使いに目配せをし、口調を改めて言う。
「サラ、おかえり。そっちの娘さんも、よくやってくれた。それで…話をしてくれる約束だったな?」
「そういえばこの娘、誰なの?」と、サラ。当然の疑問だ。
「キャリア・シックスが連れていた女だよ」ジョンソンが答える。
「えっ、あの娘?服装は違うけど、そういえば似てる…驚いたわね。人が違ったみたい」
「え?」
サラの言葉に、ブレンダは動揺する。
人が違ったみたい、とは、どういうことだ?
続きを言おうとしたサラを制したのはジョンソンだった。
「いま話をややこしくしても仕方がない。まずは娘さんの身の上話を聞こうじゃないか」
はぐらかされたような気がしないでもなかったが、順序立てて話を進めるにあたってはむしろ有り難かった。それにブレンダが正直に話をすれば、彼らも同様にすべてを話してくれるだろう。
ブレンダはちびり、ちびりとウィスキーをやりながら、頭を撃たれた状態でグッドスプリングスの墓地で発見されたこと、それまで同行していたキャリア・シックスが謎の一団と揉めており彼らを追跡に向かったこと、キャリア・シックスがかつての自分の相棒かもしれないこと、そして、自分がワシントンで死んでからグッドスプリングスで目覚めるまでの間の記憶が一切ないことを話した。
話を聞いていた三人は何といったものやらわからぬといった表情で静まりかえり、しばらくの間、試験的に通電させられていたスロットマシンの電子音だけが響く。
やがてジョンソンが「うーむ」と唸り、複雑な表情を見せて言った。
「なんというか…荒唐無稽な話だなあ。御伽噺でも聞いているようだ」
「その記憶は確かなの?」と、サラ。さすがに「嘘をついているのか」とは聞かない。
「わからない。デタラメかもしれない。そうならそうで、デタラメな記憶だっていう証拠が欲しい」ブレンダは冷静に返す。「だから、今度はあなたたちが話して」
「フム」
ビールで湿った唇を舐め、ジョンソンはじっとブレンダを見つめる。
なるほど嘘つきの目ではない、過去には自身も運び屋として波乱の人生を送ってきたジョンソンは、長い時間をかけて養ってきた観察眼からそう判断する。
しかし正直さと真実が近い位置にあるとは限らない。気が狂った人間は、真剣におかしなことをやらかす。当人にふざけているつもりはない、ただ当人の認識している真実が、他の多くの者が認識している真実と大きく食い違っているだけだ。
目前の娘は気違いか?そうかもしれない。そうではないかもしれない。まあいい、それはいま自分が判断できることではない。
「そうさな…まず、事の発端である今回の仕事、シックス・キャリアーズについて話す必要があるだろうな」
「シックス・キャリアーズ?」ブレンダが問いかける。
「今回の仕事に充てられた特殊な任務コードだ。単独の依頼主から、六つの配送品を、六人の運び屋が、それぞれ別のルートを通って指定場所まで持ち込むという内容だった。思えば、最初から胡散臭い話だったよ」
配送品はそれぞれ特大のサイコロ、純金製のチェスの駒、プラチナ製のカジノチップといった、ゲームにまつわるものだったという。
報酬の額を考えれば、とてもじゃないが割に合わない内容だ…というのがジョンソンの弁だった。工芸品としても特別に凝った代物ではなく、物品そのものの価値より配送量のほうが高くつく、という按配だった。
「依頼内容の複雑さからして、いずれかの品が、見た目通りのモノではなかった可能性がある」
「中にマイクロチップが仕込まれてるとか?」
「おおかた、そんなところだろう。使い古された手だ。だが、仕事を終えたあとにギャングに殺されたキャリア・フォーを別にすれば、襲撃を受けたのはキャリア・シックスだけだ。すくなくとも他の運び屋からは、配送を終えた時点でトラブルはなかったという報告を受けている」
「運び屋は全員同時に出発したの?」
「マラソンじゃないぞ、よーいドンでかけっこをはじめるわけじゃない。それほど日数が離れたわけじゃないが、依頼を受けるのも、出発するのも個々人でバラバラだった」
「他の運び屋って、どんな連中?」
「さてなあ。なにせ危険な仕事だが、ニーズが多い。出入りが激しいんだよ、志願者が指名手配犯でもなければだいたい雇ってるが、すぐやめるやつも珍しくない。臨時雇いや、兼業なんかのアルバイト的感覚で不定期に依頼を受けるやつもいるね。そいつら全員の素性をいちいち覚えてなぞおらんよ。サラとエックス・テックは別だが…この二人はうちの専属スタッフだからな。事務所に戻れば名簿があるから、他の連中の名前も確認できるはずだ」
「依頼人ってどんなやつだった?」
「人じゃなかった。セキュリトロンってやつだ、わかるか、車輪つきの自律機械だ。ふつうは定点警備に使われるんだが、そいつはなんか、特別なプログラムがしてあったみたいでな。まるで人間みたいに振る舞っていた、なんというか…愛があるっていうのか?ああいうのは」
「愛?」ブレンダが眉間に皺を寄せる。
「AI(人工知能)だよじーちゃん。エーアイ。アイじゃなくて」と、エックス・テック。
「ああ、そのアイなんとかってやつだ(ここでエックス・テックがふたたび抗議しようと思ったが、やめた)。妙なヤツだったな、カウボーイみたいな顔をしていた。恐らくは何者かの遣いだったんだろうが、それを追求するのはこっちの仕事じゃなかったからな」
「カウボーイ…?」
カウボーイ顔のセキュリトロン。
ブレンダは他にセキュリトロンを見たことがないので断定はできないが、もしそれが珍しい特徴だったとすれば、その依頼主はグッドスプリングスで撃たれたブレンダを保護した、あのヴィクターである可能性がある。
自分は何も知らないようなこと言っといて、あいつ──!!
ブレンダはかっと頭に血がのぼりかけたが、おそらくヴィクターにとっても今回のようなトラブルが起きたのは本位ではなかったに違いなく、いまからグッドスプリングスに取って返してヤツを締め上げるより、このままキャリア・シックスを追うべきだろうと考え直した。
もっともあの胡散臭いロボット・カウボーイが嘘つき野郎だという事実は留意せねばならなかったが。
キャリア・シックス…服装はクレイブによく似ていた。本当に彼だろうか。ジョンソンは事務所に名簿があると言っていた。それを見ればはっきりする。
「エディ、無事だったんだ!よかったあ」
無事というか、元の通り壊れたままのアイボットを発見して喜ぶエックス・テック。
「あんなガラクタのどこがいいんだか。私にはわからんよ…まあなんにせよ、事務所が無事でよかった」と、ジョンソン。
運び屋が一人殺られはしたが、事務所内が荒らされた形跡はなかった。
さっそくED-Eをいじくり回すエックス・テック、煙草を吸いながらその様子を見守るサラを尻目に、ブレンダはスツールに腰掛けるジョンソンに尋ねる。
「それで、名簿は」
「ちょっと待っていろ。たしか、キャビネットにしまってあったはずだが…うーむ…おお、あった。これだ」
ジョンソンから分厚い名簿を受け取り、ブレンダはページを素早く捲る。
どうやらモハビ・エクスプレスのプリム支社が設立された当初から記録が残っているらしく、膨大な名前の羅列を読み飛ばし、ブレンダは最新の記録だけを探す。
やがて「シックス・キャリアーズ」の見出しを発見し、慎重に続きを指で綴った。
「キャリア・ワン、フォローズ・チョーク。キャリア・ツー、アンバー・フロスト。キャリア・スリー、ジョニー・ファイブエース。キャリア・フォー、ダニエル・ワイアンド。キャリア・ファイブ、サラ・スチュアート。キャリア・シックス」
リストの最後に記載されていた名前。
「…クレイブ・マクギヴァン……」
やはり、そうなのか…
名簿を閉じ、ブレンダは深いため息をつく。安堵と不安が同時に押し寄せ、感情の整理がつかなかった。
偽者、という可能性はあるまい。ワシントンならいざ知らず、このモハビでは。まして悪行を重ねるでもなく、わざわざ名を騙って運び屋をやる理由などあるはずもない。
ブレンダのただならぬ様子を見て、ジョンソンは慎重に尋ねた。
「…どうやら、探していた相手と同一人物だったようだな」
「彼について知ってることは」
「詳しいことは知らん。あまり自分の素性は話したがらなかったし、私も聞かなかった。志願者にはワケありも多いからな。どこでウチのことを聞いたのか、一ヶ月ほど前にフラリと事務所を訪ねてきたんだ。あんたと一緒に」
「あたしと一緒に…?」
そう、そうだ、ずっと気になっていたが、彼らは私のことを知っているのだ、とブレンダは思った。記憶をなくしている間の自分、自分が知らない自分を。
「そのときのあたしは、どんな様子だったの?」
「どんな、というか…なんと言ったものやら。いつも宙を向いたまま、なにも見えていないような様子で黙っていたよ。一言も口をきかなかったし、ひょっとしたら、喋れなかったのかもしれない。あんたの相棒は『彼女は人形みたいなものだ』と言っていたが…こういう言い方は好まないが、まるで白痴のようだった」
淡々と語るジョンソンに、ブレンダは言葉を返すことができない。
まるで白痴だった?もし、それが本当なら…ここにいる全員が、自ら率先してギャング壊滅に乗り出す私を見て驚いたのも無理はない、とブレンダは思った。人が違ったように見えた、というのも当然の反応だろう。
そして、おそらく、彼らはそれ以上に私のことを知りはしない、ということに思い至り、ブレンダは暗澹たる思いを抱える。これでは何の解決にもならない、何の情報もないに等しい。
追い討ちをかけるように、サラが軽い調子で言い放った。
「だってあんた、シモの世話まで相棒頼りだったのよ。痴呆老人のように前触れなく糞尿垂れられたときはどうしようかと思ったもの…食事も一人じゃできない様子だったし。まあ少なくとも、あんたは機械や人形じゃなく人間だってことは確かみたいね」
「……へ?」
サラの口から語られた衝撃的な内容に、ブレンダは呆然と口を開ける。
ジョンソンとエックス・テックはサラを咎めるような視線を送り…わざわざ気を遣って、そこまでは言わずにおいたのに、という態度を隠そうともせず…それが、サラの言葉が冗談ではないことの裏づけとなり、ブレンダの顔がみるみるうちに紅潮し、間もなく蒼白になった。
「ヴぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
奇妙な呻き声を上げながらブレンダはカウンターに突っ伏し、小刻みに震えたまま動かなくなった。
精神的ショックからブレンダが立ち直るのに少々の時間を要したが、調べるべきことはまだ残っていた。キャリア・シックス…クレイブの行方だ。
パウダーギャングたちがプリムを占拠する直前、余所者の一団と、それを追う男が町を通過したという。その様子をビーグル保安官補が観察していたというので、ブレンダとサラは話を聞くため彼に会いに行くことにした。
カジノの外でドラム缶の焚き火を見つめながらぼんやりしているビーグル保安官補を発見し、ブレンダが声をかける。
「落ち着いた?ちょっと話を聞きたいんだけど」
「これはこれは、殺戮の女神様か。か弱き民になんの御用でいらっしゃる?」
「わけのわからないことを言うな。ギャングが町に来る前、ここを通り過ぎた集団がいたでしょう、そいつらの話を聞きたいの」
「言ってもいいが、そのまえにこっちの条件を呑んでもらいたい」
「条件?」
なにやら企んでいそうなビーグル保安官補の表情に気づき、ブレンダは眉を吊り上げる。
有利な交渉材料が手持ちにあると知って、難題を押しつけようって魂胆か。こういう手合いはワシントンでもよく見かけたものだ。
警戒するブレンダに、ビーグル保安官補はまるで悪びれもしない態度で話をはじめた。
「いま、この町に欠けているものはなんだと思う?」
「うーん…猫?」
「いやそういう話じゃなくて…遠回しな言い方はやめよう。保安官だよ、この町には治安を守る人間がいないんだ。俺は言うに及ばず、ホテルで言ったように、もう危険な仕事をやる気はない。保安官補はやめる。俺はもうただのビーグルだ。面倒は御免だ」
「だから?」
「そう怖い顔をしないでくれよ…つまり君がこの町の保安官になるか、でなければ保安官に適した人間を探してきてくれ。給料は悪くないよ、けっこう。いっそNCRに任せるってのもいいな」
まるで他人事のようにつぶやくビーグル保安官補…いや、「元」保安官補を、ブレンダは厳しい目つきで睨みつけた。
保安官を探してくる、だって?そんな時間はない。自分が保安官になる?論外だ。
ブレンダはビーグルを指でつつき、酒臭い息を撒き散らしながら怒鳴った。
「あたしが嫌いなもの、二つ、なんだかわかる?禁欲主義者と、情けない男の泣き言!」
「そんなこと言われたって!イヤならいいさ、こっちも君に言うことは何もない。帰ってくれ」
それからしばらく二人の言い合いは平行線を辿った。
言い合いというか、まるで子供の口喧嘩のようだった。なにせビーグルはこう見えても頑固で、ブレンダは酔っている。
それでもブレンダが銃に手を伸ばさないのは意外だな、とサラは思った。ウェイストランダー(荒野の無法者)にしては。激しやすい性格に反して、敵と味方の区別には慎重なのだろう。そこには好感が持てた。
もういいだろう、サラはパン、パンと音を立てて両手を叩き、二人を制した。
「あんまり女の子に意地悪をするもんじゃないよ、ビーグル。はぁ…私は仕事が終わったばかりで、当分は町にいるから、その間は保安官をやってあげるよ。それでいいでしょう?」
「サラがかい?いや、君の銃の腕はよく知っているから、それは願ったりな提案だけど」
「そうなら、ブレンダに話をしてあげなさいな。彼女、急いでるみたいだし」
それではと、ビーグルが語るところによれば…
数日前、チェック柄のスーツを着た男が数人の手下を連れて町を通過したらしい。
スーツの男の素性はわからなかったが、その手下はグレートカーンズだった。モハビ北西部、レッドロックキャニオンに住む部族だ。強盗や麻薬売買を糧に生活していたが、ビタースプリングスでNCR軍と大規模な戦闘に発展したあとは凋落の一途を辿っているという。
まるで奇妙な集団で、金持ち、おそらくニューベガスの出身者と思われるキザなスーツの男がなぜ、レイダーとそう違いのない蛮族とツルんでいたのかは見当がつかないらしい。
また彼らは…ひどく急いでいたらしい。慌てていたようだ、とビーグルは言う。
彼らが立ち去ったすぐあとに、もう一人、別の男がプリムを通過した。そちらのほうの正体はよくわからなかった、影に紛れて素早く移動し、あっという間に姿を消してしまったとビーグルは言った。漆黒、あるいは濃い藍色の戦闘服を着ていたという。
聞く限りの特徴はクレイブと一致していた。
「おそらく彼らが向かったのはノバックの町だろう」
「ノバック…」
忘れないようにするためか、ブレンダは何度かその名を反芻する。
事情が事情だけに、サラには彼女のことがすこし心配だった。
「すぐに追うの?」
「まさか。あたし、ギャング退治のせいで寝てないもん。今日はここで休んで、夕方か夜になったら起きて行動をはじめる。そりゃあ、早く行動すれば、それだけ早く追いつけるかもしれないけど。寝ぼけた頭と疲れた身体でマラソンして、砂漠で干からびずにいられると思うほど自信過剰にはなれないな」
「けっこう現実主義なのね。安心した」
ビーグルが立ち去るのと入れ替わりに、ヘイズ少尉がやってきた。
「きみが新しい保安官だって?」
「ずっとじゃないけどね」と、サラ。
「そんなにNCRの傘下に入るのがイヤなのか、プリム市民は。これでは我々がギャング退治に協力した意味がなくなるではないか…」
「どういうこと」ブレンダが尋ねる。
「NCRが人員の犠牲を考慮してまでここでキャンプを張っているのは、プリムを指揮下に置くためだ。この町が我々の傘下に収まれば税収が期待できる。特にプリムは観光で栄える町だ、ホテルもカジノもある。100%機能すればかなりの収益になるだろう。我が軍が潤う。人員が補強できる。装備も良くなる。食事もおいしくなる。そして、それを実現させた私の評価も上がるはずだったのだ。昇級すら有り得たかもしれん。残念至極だ」
「うわー。なんて素直な意見」
軍人らしからぬ私欲丸出しの物言いにブレンダは口をぽかんと開けて呆れたが、そういうことを正直に言ったヘイズ少尉のことは嫌いにはなれなかった。
大義名分を並べ立てられるよりも、個人の欲望のほうが理解しやすい、というのはブレンダが常々思っていることだった。それに賛同できるか、協力するのかは、また別の話だったが。
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。予想外に長引くプリム編、もうちょっとだけ続きそうな勢いです。
エピソード的にも重要な部分なので、そこにリソースを割くのはまあ仕方のないところなんですけども。
運び屋の名簿でチラッとだけ名前が出たジョニー・ファイブエースは、存在そのものにキャラが立っているので、そのうち端役で登場させたいですね。
2016/07/19 (Tue)19:05
失った記憶の手がかりを探すため、運び屋キャリア・シックスを追ってプリムまでやってきたブレンダ。
しかしプリムの町はNCR刑務所から脱走した犯罪者集団パウダーギャングによって占拠されており、ブレンダは厳戒態勢を敷いていたNCR部隊に交渉を持ちかけ、町内をパトロールしていたギャングたちを狙撃・殲滅する。
ギャングの本隊が潜伏しているバイソン・スティーブホテルへ突入する前に、ブレンダはプリム市民が篭城しているビッキ&ヴァンスカジノへと向かう。
「これからNCRの兵隊数人とホテルへ突入する。だから、武器を持ってる市民はホテル周囲を固めてギャングが逃げられないようにしてほしい」
「その点に異存はない。状況はだいたい飲み込めたが…」
ブレンダがヘイズ少尉とともに立てたプランの説明を受けたジョンソン・ナッシュは、賛意を示しつつもどこか納得しきれていない表情でブレンダを見返した。
そのことがブレンダも気にかかり、首をかしげる。
「何か問題が?」
「お前さんはまだ肝心なことを何も話しちゃいない」
「…… …… …?」
「お前さん自身のことさ。なんでこんな場所にいる?たった一人で…こんな無茶をして?相棒とは一緒じゃないのか?」
「あたしのことを知っているの?」
「なに?」
ブレンダの言葉に、ジョンソンと、隣にいた、エックス・テックと呼ばれる少女が眉を吊り上げた。
きょとんとするブレンダに、ジョンソンはやや語気を荒げて言う。
「おいおい…ないぞ。それは、ない」
「え?」
「私を知っているのか、とは、どういう意味だ?どういう理由(わけ)があってそんな言葉が出てくる、ええ?いったい脳のどの部分からそんなとんちきな言葉が出てくるんだ?」
ああ、ちょっとまずいかな、とブレンダは自分の迂闊さを内心で罵った。
たしかに、お互いに面識があるなら、あなたは私を知っているのか、などという質問はしないだろう。普通は。
記憶でも無くしたのでない限り…フィクションでもなければ、そんなことはまず起こらない。相手がそうなったなどとは考えもしないだろう。ジョンソンの疑問は正しかった。
まして、一部とはいえ記憶を無くした…すなわち脳の機能に障害のある者に、事態の解決を任せたいと思うだろうか?有り得ない。
すこし考えこんだあと、ブレンダは歯切れの悪い口調で言った。
「…悪いけど、今は言えない。けど、この問題が片づいたら全部話す。絶対に」
「うーむ…まあ、なにやら込み入った事情がありそうだしなあ。いちおうはそれで納得するとしよう」
実際は納得などしていないが、という態度を隠そうともせず、ジョンソンは肩をすくめた。
もともとブレンダは口下手で、あまり弁が立つほうではない。かつて用心棒という身の振りを選んだのも、口より拳で言うことを聞かせるほうが得意だったからだ。
それは幼少期に、レイダーから拷問を受け口を滅茶苦茶に切り裂かれたせいで会話そのものが困難だったからなのだが。後遺症からくる激痛で、いつも苛々していた記憶がある。
そこが今の自分との大きな違いだった。
なんとなく気まずい空気が流れるなか、エックス・テックが緊張感のない声でつぶやく。
「あーあ。エディ、無事かなぁ」
「エディ?」
「アイボット・デュラフレームE型、だからエディ(ED-E)。エンクレイブ製の自律機械だって、前に運び屋の一人が持ち帰ってきたんだ。いま修理中なの」
「アイボット?ああ、あの歌うやつ」
「歌?」
「いや、こっちの話」
エンクレイブ・ラジオ、ワシントンではアイボットがそいつを鳴らしながら、あちこちを飛行していたものだ。今でもまだ飛んでいるのだろうか。
キャピタル・ウェイストランドに展開していたエンクレイブの末路を知らぬブレンダ、そして彼女の独り言を意に介すことなく、エックス・テックが言葉を続ける。
「事務所に置いてあるんだ。ギャングが壊したりしてないといいけど」
「うちの事務所に押し入ったんなら、他の物が盗られていないかを心配するよ。私は」とジョンソン。彼はあまりアイボットに興味はないらしい。
しかし、エックス・テックのような少女がモハビ・エクスプレスに私物を置いているというのはすこし気になる。そういえばキャリア・シックスの名を真っ先に出したのも彼女だった。
少女を指差し、ブレンダはジョンソンに尋ねる。
「あの。お孫さん?」
「孫がわりに可愛がってはいるが、れっきとしたウチの従業員だよ」
「運び屋?」
「いや、広報担当だ」
「彼女の御両親は?」
「死んだよ」
そう答えたのはエックス・テック本人だった。
やばい、まずい質問をしてしまった…顔色を変えるブレンダに、ジョンソンが説明を加える。
「彼女はヴォールトからの難民なんだよ。北の、ニューベガスに近いヴォールト3に住んでいたそうだ。そこは何年か前にレイダーの襲撃を受け、エックス・テックはなんとかしてここまで逃げ延びてきたらしい」
そういえば、とブレンダはエックス・テックの服装に目をやる。
ブルーのジャンプスーツ、背中にでかでかと「3」の文字が刺繍された馬鹿みたいな服は、そういえばヴォールト製のものだということに思い当たった。
辛かったであろう過去を、しかし当人はまったく気にしていない様子で大声を上げる。
「お姉ちゃんがいてくれたら、ギャングなんか一人でやっつけてくれるのに」
「へえ、姉がいるんだ」
「そうでなきゃ、トライビーム・レーザーライフルでもあれば私一人でも楽勝なんだけど」
「うん?」
それは冗談で言っているのか。
歳相応の根拠のない憎まれ口だろう、そう思い、しかし地図上でニューベガスから随分と離れたこのプリムまで逃れてきた事実をどう解釈すべきかとブレンダは悩んだ。たぶん姉と一緒だったのだろう。ギャングなんか一人でやっつけれる、という。
カジノを出たあと、ブレンダは三人のNCR兵とともにバイソン・スティーブホテルの二階へと向かった。
おそらくジェットコースター用の通路だったのだろう、ベランダのように張り出した足場でブレンダたちは息を潜める。屋内では使い途のないスコープつきライフルを壁に立てかけ、ブレンダはギャングの一人が持っていたクローム処理・サプレッサー装備のマカロフ拳銃を手に突入のタイミングを図っていた。
間もなく武装したプリム市民たちもホテル周辺の配置につくはずだ。窓から狙撃されるといけないので、ホテルの窓から見えない位置に隠れているようにと指示してある。
計画そのものは単純だ。まず二階から突入し、二階を確保したのち一階を制圧。敵殲滅を確認後、正面扉を使わず二階から脱出する。
そのことはNCR部隊にも、プリム市民にも通達してあった。出入りに使うのは二階の扉だけ、つまり正面扉を使うのは敵しかいないので、正面扉から出てくる者は誰であろうと射殺していいということだ。
それとこれはジョンソンから聞いた話だが、ホテル内には保安官補が人質として囚われているらしい。ギャングたちはプリムに来るなり真っ先に保安官夫妻を殺し、保安官補を捕らえてホテルへ向かったという。
身代金の交渉がない以上、人質はとっくに殺されていると考えるべきだろうが(生かしておく理由がない)、万が一ということもあるので、留意しておく必要があるだろう。
「一人はここに残って、あとの二人はあたしについてきて」
「了解だ、お嬢さん」
兵士たちの口調がフランクなのは、これが正規の任務ではないからか、それともブレンダが軍人ではないからか。
正規軍人が外部の人間の指示に従うなどというのは本来有り得ないことなのだが、プリムに駐屯していたのは実戦経験のない新兵だったので、今回はあくまで特例的な措置だった。書類上の体裁を整えるため、ブレンダは軍事顧問として雇われているという扱いになっていた。
扉に鍵がかかっていないことを確認し、ブレンダは静かにノブを回す。
ホテル内に侵入し、ブレンダは暗視装置で屋内にいる敵の数と位置を探った。
「けっこう多いな…」
壁越しに生体電気を検知する暗視装置のレンズ越しに、ブレンダは二階、そして三階を巡回するギャングたちの動きを補足する。
「いちおうはじめは隠密でいくけど、危ないと判断したら迷わず撃って。それで、一度銃声を立てたらもう隠れることは考えなくていい」
追従する二人のNCR兵士に指示を出し、ブレンダは慎重に進みだした。
まだ表のパトロールが殺されたことには気づいていないのであろう、緊張感のない様子でふらふらと廊下を歩いていたギャングを二、三人射殺したあたりで、NCR兵士のショットガンが轟音を鳴らした。
視線の先には、引き金に指がかかっていたギャングが血を噴いて倒れる姿が映っている。
おそらくいまの銃声で、ホテルにいるギャング全員にこちらの存在が察知されただろう。だが、いい。これは想定の範囲内だ。
「なんだ、いまの銃声は!?」
あちこちから罵声が響き、NCR兵士たちが落ち着きをなくした様子でそわそわしはじめる。
彼らの肩を叩き、ブレンダは冷静な口調で諭した。
「落ち着いていこう。私の背中を見ていて、正面は任せて」
そう言って先へ進もうとしたが、NCR兵士たちがブレンダの背後ではなく、ブレンダのほうをじっと見つめているのに気がつき、彼らが何を期待しているのかがわからず戸惑う。
やがてさっきの自分の言葉を彼らがどう解釈したかに思い当たり、ブレンダは顔を赤くして小声で叱咤した。
「背中って…そういうことじゃなくって!」
なんでこういう状況で漫才みたいな小芝居をやってるんだ、と思ったが、新兵たちの緊張を和らげるには効果があったようだ。
余裕のある笑顔を取り戻す若者たちに、ブレンダは「まったく…」と苦笑する。
やがて二階の制圧に成功し、NCR兵士たちをその場に残してブレンダは三階にいるギャングたちの掃討へ向かう。
タシュッ、タシュッ!
崩落した天井を伝って三階へ上がり、ブレンダは部屋の入り口を挟んではち合わせたギャングを素早く撃ち倒す。
すぐに三階のギャングたちの殲滅を終えたブレンダは二階へ戻り、NCR兵士たちとともに地階へと続く階段の前へと向かった。
「あなたたちはここに残って、下から上がってくる連中がいないか見張ってて。それと、二階と三階に撃ち損じがいないかどうかも。二階から来た敵に挟まれたら、あたしはどうしようもできない」
「任せてください。死なないでくださいよ、ネーサン」
「もちろん」
銃の装弾を終え、ブレンダは単身一階へと下りる。
二階の銃声を聞きつけ、一階で待機していたギャングたちは騒然となっていた。
大半が中央ホールで就寝中だったが、この期に及んで簡易マットで横になっている者はいない。すでに全員が戦闘態勢に入っていた。
そのうちの一人が従業員通路を通り、キッチンへと向かう。
そこにはブレンダがとっくに殺されたと思っていた、人質のビーグル保安官補が鎮痛な面持ちで膝をついていた。両手を縄で縛られ、身動きが取れない状態で放置されている。
ギャングはビーグル保安官補にピストルの銃口を向け、険しい表情を見せた。
「どうやらテメエの仲間が助けに来たらしいぜ。だが、テメエはここで終わりだ」
そして、銃声。
バシッ!
ビーグル保安官補はきつく目を閉じたが、銃弾が自分の身体に飛び込んでくることはなかった。
ゆっくりと目を開け、顔にびっしりとこびりついた血糊と、首がちぎれて倒れたギャングの死体を発見し、そして、消音機を装着した拳銃を片手に佇む女性の姿に気がついた。
「驚いた。まだ生きてたんだ」
「君は…」
「助けに来た。あなた、ビーグル保安官補?」
ブレンダは手早い動きで彼を拘束していた縄をナイフで切り、ギャングが握っていた拳銃を拾って渡そうとする。
「これ、使って。閃光弾でホールに集まってるギャングたちを釘づけにするから、爆発と同時にあたしを援護して」
「ちょ、ちょっ…ちょっと待ってくれ!俺はまだ戦うなんて言ってない」
「…?あなた、保安官補でしょう」
「姉の旦那が保安官で、そのツテでなっただけだ。無職でブラブラしてたから…戦いは苦手だ。保安官も死んだ、もう保安官補もクソもない。俺はやめる、先にみんなのところへ帰してくれ!他の市民は無事なんだろ?」
「呆れた。はぁ…そこに転がってる首なし死体があんたを撃つまで待つこともできたんだけど」
「…冗談だろ?」
いまだに首の断面から血を噴き出し続けている死体を見下ろし、ビーグル保安官補はごくりと息を呑む。ブレンダが銃を撃つのが僅かでも遅かったら自分がこうなっていた、などとは考えたくもなかった。
「わかった、わかったよ…あんたに協力する、お嬢さん」
9mm口径のブローニング拳銃を受け取り、ビーグル保安官補は意を決したように顔を叩く。
ブレンダはホールへ続く扉をゆっくり開けて中の様子をこっそりと窺い、特殊部隊用の閃光手榴弾のピンを抜いてアンダースローで転がした。
バンッ!!
閃光と轟音がフロアを包み、銃を手に警戒していたギャングたちが頭を抱えてその場にうずくまる。
ビーグル保安官補は扉からすこしだけ身体を覗かせ、そっと銃口を突き出してギャングたちを狙い撃ちにしようとする。ビーグル保安官補は当然、ブレンダもそうするだろうと思っていた。
しかし彼の想像に反し、ブレンダは閃光手榴弾が破裂すると同時にホールへ飛び出すと、片手に拳銃、もう片方の手に切り詰めショットガンを握って前進しながら撃ちまくった。
タンタンタン、ドカン、ドカンッ!!
「おい、おいおいおい!」
連続した銃声が響くなか、あまりに無謀なブレンダの行動にビーグル保安官補は動揺する。
いくら閃光手榴弾を使って戦闘能力を奪ったからって、敵が密集する部屋のど真ん中へ飛び出したりするか!?
やがて拳銃の弾を切らしたブレンダは腰にぶら下げていたナタを引き抜き、飢えた肉食獣のような獰猛さでギャングたちの腕や脚を次々と刎ね飛ばしていった。
「イカレてやがる……!!」
悪鬼のようなブレンダの戦いぶりに、ビーグル保安官の口から意図せずして悪態が漏れた。
またブレンダを恐れたのは彼だけではなかった。
次々と仲間が殺されていく光景を前に恐慌をきたしたギャングの一部は反撃もままならず、一目散にその場から逃げ出しはじめたのだ。
「ばっ、ばっ、ばっ、ばけものだ……っ!!」
なりふり構わず正面玄関へ駆け出すギャングたち、しかしホテルの外では武装したプリム市民たちが正面扉へ照準を向けており、そのままホテルを出れば、蜂の巣になるのは確実であった。
そのことがわかっていたからこそ、あえてブレンダは逃げた者たちを追わなかったのである。
しかし事態はブレンダの予想しない方向へと傾いた。
正面扉の前に、ギャングではない、謎の存在が佇んでいる。
「誰だ、あれ…」
ギャングの一人がその正体を誰何した、そのとき。
ドガガガンッ!!
謎のガンマンは素早い抜き撃ちを見せ、あっという間にギャングたちを撃ち倒していく!
血飛沫を噴き、瓦礫のように折り重なって倒れるギャングたち。
その一部始終を見ていたブレンダは警戒しながら、しかし敵には見えないガンマンにゆっくりと近づいていく。
ガンマンのほうもブレンダに気づき、キリキリと音を立てて撃鉄をゆっくりハーフコック・ポジションへ戻すと、口から大量の紫煙を吐き出した。
「ギャングの巣窟に突入した無謀なヒーロー志願者って、あんたのこと?」
驚いたことに、さきほど力強いパワードロウを見せたガンマンは女性だった。
「とりあえず礼を言っておくわ。まさか町を空けている間に、ギャングが占拠しているとは思わなかった」
その口ぶりから察するに、遠出していたプリム市民だろうか?
といってもプリムはカジノをはじめとする観光業で栄える町だ。外界へ出るとすれば、それは商人か…あるいは、運び屋?
そこまで考えたとき、ブレンダの脳裏にエックス・テックの言葉が不意に蘇る。
『お姉ちゃんがいてくれたら、ギャングなんか一人でやっつけてくれるのに』
ああ…なるほど。
たぶん、彼女が、そうだ。エックス・テックの言葉は誇張ではなかったわけだ、とブレンダは一人ごちる。おそらくこのガンマン、いや、ガンウーマン?違う、ガンスリンガーだ。いや呼び方など、どうでもいいが…彼女なら一人でも、プリムを占拠していたギャングの制圧など、ものともせずにやってのけだだろう。
彫刻入りのリボルバーに、撃ったぶんの弾を装填しなおす女性を見て、ブレンダは一言つぶやいた。
「…でけー女だな」
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。意外と長引くプリム編、あと一回だけ続きます。
構想時間が長かったぶん(作業時間が長かったというより、作業に入るまでに時間がかかったので余計な妄想を持て余した)、画面写真のほうもわりと凝ったものになっていると思います。
作中で登場するクローム仕上げのマカロフはFOOKで登場するやつのTextureを改造したものです。ブルガリア製のアーセナル・マカロフみたいな感じにしたかった。ブレンダは東側のサイドアームが似合うと思っています。相棒のクレイブが主に西側の銃器を使うので、その対比というか。まあ、メインのハードウェアはPSG-1だったりするんですけども。
ちなみにパワードロウというのは力強い抜き撃ちを意味する、クイックドロウの呼称の一つ…だったと思うのですが、Webで検索してもそれらしい解説はヒットしませんね(日本語、英語ともに)。たしか昔銃器専門誌でそのような単語を見かけた記憶があるのですが、ひょっとしたら造語だったのかもしれません。
2016/07/15 (Fri)18:35
「止まれ。ここから先は通行禁止だ」
プリムの街へ向かおうとしたブレンダは、NCRのキャンプ付近で見張りに立っていた歩哨に呼び止められた。
NCR…新カリフォルニア共和国。
グッドスプリングスでトルーディから聞いたところによれば、旧世界の規範…確固たる基盤を持つ政府機関、強力な軍隊…により広大な領土を支配する組織らしい。名の通りベース(基盤)はカリフォルニアだが、近年はさらなる領土拡大を目指して活動中らしい。イケイケである。
ならばこのネバダ、ニューベガスもNCRの支配下にあるのかといえば、さにあらず。
核戦争の被害を逃れ、自らが開発したセキュリトロンの軍隊を擁する元ロブコ社社長、ニューベガスの庇護者ミスター・ハウスによって進軍を阻まれたNCR軍は彼と交渉し、フーバーダムが発電する膨大な電力の95%を得る代わり、ニューベガスの独立と、NCR市民の出入国の自由化を承認することで一応の決着となったのである。
以後NCRはネリス空軍基地に大規模な兵力を駐屯させ、モハビ各地に前哨基地を設立。モハビ全域にパトロール隊を派遣し、治安維持に努めているという話だった。
「なにか問題でも?軍人さん」
「いまプリムはギャングに占拠されており、周囲は厳戒態勢下にある。またプリムより南は複数のレイダー集団が出没中との報告も入ってきている。見たところグッドスプリングスから来たようだが、悪いことは言わない、引き返したほうがいい」
「…それは、困るんだけど」
おそらく行き交う旅人すべてに同じ文言を繰り返しているのだろう、あまりやる気のない態度で状況を説明するNCR兵に、ブレンダは困った表情を見せた。
キャリア・シックス…ブレンダと同行していたらしい、クレイブと目される男を追って旅に出た彼女としては、こんな場所で足止めを食うわけにはいかない。ましてキャリア・シックスはブレンダを撃った集団を追跡しているらしく、一刻も早く追いつかなければ行方を見失う可能性があった。
ならば、どうするべきか。
「あたしは仕事の契約で、プリムのモハビ・エクスプレスへ行かなければならない。非常に重要で、緊急を要する仕事。プリムの問題を片づけるなら協力してもいい」
「なんの仕事だ?格好から察するに、商人か?」
「用心棒。銃の腕なら自信がある。グッドスプリングスから来た、そう…つい先日、町を襲ったギャングを始末してきたところ。疑うなら町に連絡員を送るといい、望む回答が得られるはず。でも、こっちは急いでる」
「参ったな…う~ん、俺の一存ではなんとも」
「ここの責任者は?」
「ヘイズ少尉だ、キャンプのテントにいる。彼と相談してくれ」
NCR兵に促され、ブレンダは瓦礫の積み重なった道を歩いていく。
ほぼ嘘はついていない、不要な情報を教えなかっただけだ。頭を撃たれて記憶を失い、一緒に行動していた男を追ってきている、などと言う必要はない。そんなことをしても無用な疑いを持たれるだけだ。
用心棒?イエス、かつてはそうだった。
腕に自信がある?イエス、つい先日、それはグッドスプリングスで証明したばかりだ。記憶を無くしているからといって、気後れする必要などない。
「グッドスプリングスを襲ったパウダーギャングどもを始末してくれたらしいな」
口元を覆っていたスカーフを下ろし、素顔を晒したブレンダに、ヘイズ少尉は若干の疑いを含んだ眼差しを向けて言った。
「おおよその事情は聞かせてもらったよ。ひとまず我々や、プリムの民に危害を加える意思がない限り、君のことを信用しよう。目下の状況についてだが、我々は苦しい立場にある。おそらく君の手を借りることはないだろう、無用な危険は冒せない」
「状況の説明を」
「フゥ…わかった。プリムを占拠しているのはパウダーギャングで、高度に武装、組織化されている。プリム市内をパトロールしている連中だけでも我々の戦力を上回っているが、さらに主戦力がバイソン・スティーブホテルに潜伏している。また、施設内に人質が囚われているという情報もあるが、未確認だ」
「プリムの人たちはどこへ?」
「ホテルの向かい、ビッキ&ヴァンス・カジノに立て篭もっている。多くが武装しているからギャング達は手を出せないが、逆にプリム市民も外に出ることができず閉じ込められた形になっている。食料の備蓄はそれなりにあったはずだが、なにせ収容人数が多い。尽きるのは時間の問題だろう」
「ギャングの掃討と、プリム市民の救助に関するプランは」
「本隊に支援を要請中だが、いつ到着するかは未定だ。我々だけではどうにもならん…いまキャンプにいる隊員の多くは新兵で、練度も経験も不足している。装備も貧弱だ。さらに厳しいことを言うなら、プリムはNCRの勢力下にない。無理を押して助ける必要はない」
「勢力下にない?」
「彼ら自身が拒否したんだ。税の支払いに不満があるらしい…」
「だから見捨てると?」
「自殺隊を送るだけの義理はない、というだけの話だ」
それだけ言うと、ヘイズ少尉はふさぎこんだような態度で椅子に背をもたれた。
兵の安全を守るためにプリム市民を見捨てる、という彼を批難する気は起きない。それではなんのための軍隊か、という気はするものの、彼の言う通りプリムがNCRの庇護下にないのであれば、熱意に欠けるのも当然の話だろう。
黙って状況を思案するブレンダに、ヘイズ少尉がやや皮肉めいた態度で問いかけた。
「それ、で…なにか妙案でもあるのかな?」
「表のパトロールをあたしが始末する。消音機つきのライフルを持ってる、扱いには自信がある」
「もし君の存在が連中に気づかれて、騒ぎになったらどうする?プリムの民が危険に晒されることになるぞ。当然、我々もだ」
「ゲームオーバーの条件は三つ。あたしが死ぬか、連中がカジノに押し寄せるか、このキャンプに攻め入るか。でもカジノに潜伏している市民は武装していると、さっきあなたは言った。それをわかってて、自棄になって押し入るとは思えない。このキャンプも、連中が辿り着くまでの道に死角がない。それに引き換え、こっちは遮蔽が多く待ち伏せしやすい立地。防戦には一方的に優位」
「それは…そうだな。しかし、こちらから攻めることはできなかった。だから膠着状態にあったんだ」
ブレンダの提案に関心を持ったらしいヘイズ少尉は、大判の写真をテーブルに広げた。
「これはプリムの上空写真に印をつけたものだ。連中がプリムを占拠してからずっと、我々は連中のパトロールを監視していた。その位置と人数を記録したものだ。だが我々には長距離射撃用の火器が支給されておらず、また、それを扱える熟練の兵もいなかった。だから手出しができなかった」
「全部で八人…ジェットコースターのレール上にいるのが厄介。そいつらから始末する必要がある」
「それで、パトロールを始末したあとはどうする?」
「カジノにいる市民を解放して、ホテル周辺を包囲させる。そのあと、あたしが突入する…そのとき、何人か兵を貸してほしい」
「さっきも言ったが、いまキャンプにいるのは新兵ばかりだ。あまり危険な真似はさせられない」
「突っ込みはあたしがやる。ただ、背中を守ってくれる兵が必要」
「…わかった」
「できれば今夜のうちにすべてを終わらせたい。危険な役はあたしが引き受ける、だから協力してほしい」
狙撃ライフルを手にブレンダはテントを出る。
彼女の去り際、ヘイズ少尉が決まりの悪そうな表情でつぶやいた。
「本来なら、見ず知らずの風来坊にこんな仕事は任せないのだが。NCRの沽券に関わる…だが、この状況ではそうも言ってられん。申し訳ないが、頼んだぞ」
「任せて」
親指と人差し指を丸印にくっつけ、ブレンダはほんのわずかに笑みを浮かべる。
闇に紛れ、ブレンダはプリム外周を素早く移動する。音もなく、気配を殺し。獲物に近づく肉食動物、雌豹のような動きで。
記憶がないといっても、それはワシントンで命を落としてから今に至るまでの経緯だけだ。それに、過去身につけた戦闘技術…人を殺すための外道の法は、身体のほうが完璧に覚えていた。
木陰に身を隠したブレンダは、幹にもたれかかるような姿勢で身体を固定し、高倍率スコープ越しに標的の姿を捉える。
呼吸を整え、大きく息を吐き出し、スコープの十字線が標的の頭部に重なった瞬間、ゆっくりと引き金をひき絞った。
キシュ…という、合金をハンマーで叩いたような銃声とともに大口径ライフル弾が射出され、火線の尾を引いた銃弾がギャングの側頭部を綺麗に貫通する。
その成果にため息をついたり、見とれている暇はない。ブレンダは立て続けにレール上を巡回している二人のパトロールを始末し、地上のギャングたちに事態が悟られていないことを確信しながら素早くライフルを抱えて立ち上がる。
「ふっ!」
アクロバティックな跳躍で柵を乗り越え、プリムに潜入したブレンダは老朽化した骨組みを登ってレール上に到達した。
キシュッ、キシュッ、キシュッ!
レールの上から、地上を巡回しているパトロールを次々に始末していく。
殺人に躊躇はなかった。相手が悪人だから、というよりは、自分にとって邪魔な存在だったからだが、幸いなことに、そういう連中は決まって殺しても胸の痛まない悪党どもだった。
これまでブレンダは白黒で割り切れない殺しはしたことがなかった。これからもそうであればいいのだが。
残るパトロールは一人、崩れた建物の二階にいるやつだった。
こいつの居場所だけは死角が多く、鉄柵の外やレールの上からでは狙うことができなかった。
ブレンダがふたたび移動を開始するのと、そいつが仲間の死体を発見したのはほぼ同時だった。
「!!…いったい何が起きてやがる!?」
いつの間にか仲間が惨殺されていた状況を前に、ギャングは混乱した頭で事態の把握を試みる。
殺し屋か?狙撃兵か!?
このまま通りへ出たら自分も殺られるのでは?
なんとしてでも、ホテルにいる仲間へ連絡を…
壁に立てかけてあった銃を掴み、ギャングはホテルの窓に狙いをつける。銃声が響き、攻撃を受けたとわかれば、少なくとも異常事があったことは伝わるはず…
しかし彼が引き金にかけた指を完全にひくことはなかった。
キシュッ!
隣の建物の屋上へ上がっていたブレンダが、彼を狙撃したからである。
頭部を撃ち抜かれた男はどうと音を立てて倒れ、どす黒い血を床に垂れ流す。
これで外に出ていたギャングは全員始末したはずだった。ヘイズ少尉の情報が正しければ。
もっともブレンダ自身、あの地図の情報を鵜呑みにしていたわけではなかった。時間の経過で配置が変わるのはまったく有り得ることだったからだ。
だから彼女は移動するたび、暗視装置で周辺の状況を確認していた。ブレンダが身に着けていたのは生体電気を検知する特別なもので、レンズ越しの黒い視界のなかで人間を発見すると、発光する白い粒子が確認できる。それは壁越しでも同じことだ。
そうした慎重な偵察行動を通して、ブレンダはパトロールの配置が地図で確認されたものとまったく変化がなかったことを知った。すくなくともプリム周辺に展開するパトロールは全滅した。
そろそろ作戦を次の段階へ移行させなければならない。
カジノに立て篭もっているプリム市民と接触し、今後の行動が円滑に進むよう説得する。
ライフルを背負い、地上へと降りたブレンダはカジノ正面入り口の取っ手に触れる。
…市民は武装している、と言ったっけ?
扉を開けた途端に撃たれたら洒落にならないな、と思いながら、ブレンダはほんの少し考えこむ。ノックや声をかけたところで警戒されるのは変わらないだろうし、音を立ててホテルにいるギャングたちに存在を知られるのもまずい。
けっきょくブレンダは何の策もなしに、ただ普通に扉を開けた。
幸いにも、いきなり撃たれるようなことはなかった。銃口は向けられたが。
「お若いレディ、何の用かな?事と次第によっては、ただでは済まさんぞ」
「ねえジョンソン、この娘はギャングの仲間ではなさそうよ?」
褐色肌の老夫婦を前に、ブレンダは口を開くよりも先にカジノ内を観察する。
もともとプリムは大きな町ではないから、市民すべてを収容しても空間にはかなりの余裕があった。市民たちの顔色には多少の気疲れの様子が見えたものの、さほどに困窮しているわけでもなさそうだ。
目前の老人を除いて、武装している市民の大半は見るからに銃の扱いが素人だった。だが、それでも窓や入り口に向けて銃を撃つだけなら事足りる。ギャングが手を出せないはずだ。
ブレンダにリボルバーの銃口を向ける老人の正体が気にかかった。この町の有力者だろうか?
金持ちには見えなかったが、無頼にも見えなかった。歳の割に背筋をピンと伸ばし、鋭い眼光を向けてはいるが、軍人や殺し屋のような、殺人を生業としている者ともまた違う雰囲気だ。
最初の一言になんと言うべきかブレンダが迷っていたとき、ブルーのジャンプスーツを着た赤毛の少女が口を開いた。
「ねえじーちゃん、こいつ、キャリア・シックスと一緒にいた女じゃない?」
「!!」
キャリア・シックス。
少女のふてぶてしい態度と物言いはともかく、まさしく自分が追い求めていた名前が飛び出したことで、ブレンダは驚きに目を見開いた。
キャリア・シックスと一緒にいた女?そう言ったか?
この少女は、記憶を無くしている間の自分のことを知っているのか?
「そうかいエックス・テック、そういえばどこかで見たような顔だと思ったな。フム」
ブレンダの動揺をよそに、一人納得した様子で銃を下ろすと、老人…モハビ・エクスプレスのニューベガス支店長、ジョンソン・ナッシュはブレンダを真っ直ぐに見据えて言った。
「事情を説明してくれるね?お若いレディ」
< Wait For The Next Deal... >
どうも、グレアムです。ひさびさニューベガス小説本編の再開です。ほぼ一年と四ヶ月ぶり。投げ出したわけじゃないのだよー!
きたるべき盆休みで一気に話を進めるべく、前もって勘を取り戻しておくとかそういう感じで。画面写真撮影はわりとカンに頼っている部分が大きいので、一度勘が鈍ってしまうと手順を思い出すのに苦労するんですよ。
作中の描写に関して。
本来、サプレッサーを装着した火器はこんな派手にマズルフラッシュは噴かないんですが、これはまあ絵的な派手さを優先ということで。
ちなみに作中で言う「殺しても胸の痛まない悪党」という表現はあくまでブレンダの主観です。
最後のほうで登場したオリキャラの設定解説は一つか二つ後の話でやります。
2016/06/27 (Mon)07:24
どうも、グレアムです。Fallout: New Vegas、Dead Money編の途中であれこれ実験していたものをすっかり忘れていたので、画像フォルダの半端な場所に埋もれていた写真どもをいまさら公開します。
ジョシュア・グラハムのアーマーはプレイヤー用とジョシュア専用の二種類が存在しています。ジョシュア専用のはNPC専用属性がついているだけではなく、細部に若干の相違があります。上の写真を見てわかる通り、腕の包帯なんかがまさにソレですね。
また女性用スキンが存在しない、首の部分に包帯が巻かれている、など。
そもそも性能が違うのは言わずもがな。プレイヤーのはDT15ですが、ジョシュア専用のはDT40あります。そこに頭の包帯DT10を合わせて計DT50というバケモノじみた頑丈さを誇るわけですね。作中最強と言われる所以のチート装備であります。
頭部の包帯( Joshua Graham's Headwrap )もNPC専用属性を外せばプレイヤーも装備できるようになります。おそらく入手はチートに頼るしかないですが…いやエディタやCKを扱うなら適当なコンテナに放り込んどけばいいんですけどね。
また今回の写真ではBiped FlagsのHair属性を外して髪の毛が表示されるように改造しています。
でもってModで追加される髪型のMeshの一つをこの包帯に合わせて改造。基本的に包帯は通常の頭部より一回り分大きいので、髪型のサイズが合わないんですよね。
サイズを合わせたら合わせたでカツラみたいになっちゃったけど、まあ、いいや。
そうそう、New Vegas小説のDead Money終盤で登場したロボトミー化クレイブについても言及せねばなりますまい。
これはOld World Bluesで登場したロボトミー種族を用いたキャラであります。
もともとFOOKでロボトミー、クリスティーン、デッドホース、ソローズ、ホワイトレッグスがプレイアブル種族として登録されているため、そのあたりから着想を得たアイデアなんですけども。フォローズ・チョークの出番が増えたのもそのへんの関係です。
あと以前から写真を載せていた、小説とは関係ないゲームプレイ用として作製したキャラの設定もなんとなく考えたので、ここで紹介しておきます。
クリス・マカーティ、スカベンジャー。
ニューベガスを拠点に活動するマカーティ・キャラバンの娘として生を受ける。幼少から元デザートレンジャーの叔父の訓練を受け、キャラバンの護衛として両親に付き添っていた(といっても、真面目に戦力として期待されていたわけではない。実力も、たんに同年代の少女よりは銃の扱いが上手い、という程度のものだった)。
しかし数年前に謎のグループから襲撃を受け、キャラバンは壊滅。襲撃当時、クリスは倒れたパックバラモンの下敷きになり早々に気絶。そのおかげで死んだものと誤認され見過ごされたわけだが、危うく窒息しかけたところで意識を取り戻し、死んだ家族を葬る暇もないまま現場に残された物資を掻き集め、その場を離れる。
その後クリムゾン・キャラバンから持ちかけられた交渉によって、マカーティ・キャラバンの看板を格安で売り渡し、以後は組織に所属しないスカベンジャー(ゴミ漁り)として活動するようになり、今日に至る。
置かれた立場は本編に登場するコンパニオンのキャスと酷似しているが、クリスは亡き家族が支えていた看板に固執することも、また、殺された家族の復讐を考えることもなかった。
襲撃者は強盗や辻斬りではなく、明らかに自分達を狙っていた。そのことがクリスに一つの人生訓を与えるには充分な理由になった。
曰く…「その仕事をしている」というだけで、命を狙われるような人生は送りたくない、と。
だから復讐はしない。銃の腕は立つが、争いに加担するような仕事は極力避ける。銃を使うのは、あくまで自衛のため、止む無く相手を傷つけなければならない場合のみ。
臆病者と揶揄されようと、彼女は意に介さない。ただ生きること、それこそが彼女にとって唯一つの尊い生存目的だった。
確たる目的意識もなく無為に生きて、それで何が悪い?
…とか、まあ、そんな感じで。
無為奔放に生きるスカベンジャー、ある意味では最初から人生を見限っている、達観した人生観の持ち主であります。
実際のゲームプレイでは撃ちまくり殺しまくりなんですけど、それはまあ、しょうがない。
New Vegas小説本編の主人公ブレンダ・フォスター、これはHPのまとめページで使用している画像の元になったもの。言わずもがなですが、あの画像でモニターに写っている映像はハメコミ合成です。べつに、Textureを加工できなくもないんですけどね…手間としちゃどっちが面倒臭いのかなぁ。ううn。
それはそうと、そろそろこっちも再開したいなあ。いまのところ外伝のほうがぶっちぎりで話数が多いという。