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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/27 (Sat)08:54
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2016/06/05 (Sun)00:46








「これにて任務完了、か…」
 ニューベガス・フリーサイド地区。
 ザイオンにおけるホワイトレッグスとの部族間抗争が終結し、一族の集落から出てモハビ・ウェイストランドを旅していたフォローズ・チョーク。当初はキャラバンの護衛として各地を巡回していたが、現在はキャラバンとの雇用契約が切れ、モハビ・エクスプレスの運び屋として活動していた。
 先刻まで請け負っていた仕事は「純金製のチェスの駒をニューベガス・ストリップ地区のゲートまで配達する」というもの。
 特に大きなトラブルもなく依頼者の代理人に荷物を届けたフォローズ・チョークは、報酬の250Capを手に、セキュリトロンたちによって堅固に守られているゲートを見つめていた。
「せっかくニューベガスに来たからには、ストリップ地区に行ってみたかったんだけどなあ」
 セレブたちが集うニューベガス最大の娯楽エリア、ニューベガス・ストリップ。
 誰でも入れるわけではなく、パスポートか、最低限の持ち合わせがあることを証明するため2000Capの所持金額を提示しなければならない。もちろん、出るときはその限りではないが。
「2000Capか…稼げないことはない、のかな?しばらく仕事の予定は入ってないし、このあたりで割の良い仕事を探してみよう」
 根が純粋なフォローズ・チョークは、パスポートを偽造するとか、報酬の250Capを元手にギャンブルで増やそうなどという選択肢はハナッから思い浮かびもしないのである。
 フリーモント通りを歩きながら、フォローズ・チョークはぽつりと独り言を漏らした。
「…けっきょく、あの人には会えなかったな」
 あの人。ザイオンでの部族間抗争に終止符を打ち、ふたたびモハビの砂漠へと舞い戻った傭兵。
 広い世界を見たいというフォローズ・チョークの願いを後押ししてくれた恩人、クレイブ・マクギヴァン。
 彼が去り際に渡してくれた著書「ウェイストランド・サバイバル・ポケットガイド」はフォローズ・チョークの活動の指針となり、危険な場所での生存術を書いた実践的な知識に、何度助けられたか知れない。
 今回の仕事は複数の配達物を、複数の運び屋が同時に移送するというもので、参加者のリストの中にクレイブの名前もあったため、そのうち再会できるのではないかと思っていたのだが。
「彼のことだ、きっと僕なんかよりも先に仕事を終えて行ってしまったに違いない」
 そう言って、フォローズ・チョークはふたたび金を稼ぐ方法について考えはじめた。
 もちろん実際のところ、クレイブはとんでもないトラブルに巻き込まれ、未だ任務を遂行できていなかったのだが…そのことをフォローズ・チョークが知る機会はなかった。










 フリーサイドをあちこち回ってフォローズ・チョークが得たのは、シルバー・ラッシュというエネルギー火器専門店の用心棒のバイトだった。 
「いいか、酔っ払い、不良、文無しのクズどもは容赦なく追い返せ。ここは上品な店なんだからな、ブランド・イメージってものがある」
「はい、わかりました」
「有望そうな客でもボディチェックを怠るなよ」
 先輩役のサイモンの指示に従い、フォローズ・チョークは不審な人物が周囲をうろついていないかどうか目を光らせる。
 支給されたアーマーとプラズマ・ライフルは彼の趣味には合わないものだったが、店の用心簿うとして働くうえで必須の条件ということで、仕方なく身に着けていた。
 しばらくして、本日最初の来客がお目見えする。
「オウフ、ここでぇレーザージューが買えるって聞いたんですけおぉぉ」






 二人の前に現れたのは、どう見てもベロンベロンに酔っ払った貧相な男だった。
「あの、随分とお酒を飲まれているようですが。大丈夫ですkうわああああああ!!」
「オロロロロロロロロ」
 ゲロゲロゲロ。
 酔客はフォローズ・チョークの肩に手を置くと、いきなり吐瀉物をモリモリと吐き出しはじめる。
「こういうヤツはさっさと追い出すんだ!」
 そう言って、サイモンが酔客を容赦なく蹴って店先から叩き出した。






 それからしばらく二人は用心棒としての仕事を続け、万事問題なし、トラブルが起きることなく時間が過ぎていく。
「おまえもだいぶコツが飲み込めてきたようだな。俺はちょっと裏で煙草を吸ってくるから、いままでと同じ調子で頼むぞ」
「わかりました。任せてください」
 小休憩に入るサイモンを見送り、フォローズ・チョークは店先へ視線を戻す。
 すると…
「護身用にあつらえの武器を置いてるそうだね。ちょっと店内を見せてもらうよ」
「ああ、どうぞお入りください」
 商人風の男がサッと店の扉を開け、フォローズ・チョークはその後ろ姿を見送る。
 その直後、彼はたったいま入っていった客のボディチェックを怠ってしまったことに気がついた。
「あっ、ヤバイかな…でも店の中だって武装した用心棒が大勢いるし、わざわざ問題を起こすような真似はしないだろう。たぶん」
 きっと大丈夫だ、問題など起きるはずがない。
 そう思い、気を取り直して銃をふたたび構えた、そのとき。






ドガアアァァァァアアアンッッ!!



「うわあああぁぁぁぁああああああ!!!」
 突如として店が大爆発を起こし、フォローズ・チョークは前のめりに吹っ飛ばされた!
 店内から盛大に炎が噴き出し、巨大な看板が地面に突き刺さる。
 爆発が起きてすぐにサイモンが血相を変えて飛び出し、フォローズ・チョークに詰め寄った。






「おまえーーーっ、いったい何をやらかした!?」
「わっ、わかりません!さっきお客さんが入っていって、そのあと急に爆発が…」
「どう考えても自爆テロじゃねーか!」
 激昂して叫ぶサイモン、彼がさらにフォローズ・チョークに詰問しようとしたとき、店内から地鳴りに似た轟音が近づいてくる!

 ドスドスドスドスドスドス……!!





「あの客を通したのは誰だあっ!!」

「ジーン!」
 ドガンッ!扉を破壊しかねない勢いで店内から飛び出してきたのは、あの爆発のさなかにあって傷一つ負った様子のないガード長、店主グロリアの兄ジーン・バティストであった!
 怒髪天を突く勢いで双方を睨み、ジーンはフォローズ・チョークに焦点を合わせる。





「貴様か!!」







 

You're Fired  

貴様はクビだ!!







「出ていけ!!」











「ハァ…一日でバイトをクビになってしまった……」
 取り返しのつかない失敗をしでかし、落ち込むフォローズ・チョーク。
 あまりのことに、支給された装備を返すこともできぬまま追い出されてしまった。
「仕方がない、この装備を売ってパスポート代の足しにしよう」
 本来それはやってはいけないことだが、ウェイストランドではそのしたたかさこそが生きるために必要なのだ。不毛の世界は善意や責任感では生きてはいけない!

 お人好しでおっちょこちょいなフォローズ・チョーク、果たして彼は無事に2000Capを貯めてストリップ地区へ入ることができるのか!?





< Wait For The Next Deal... >








 どうも、グレアムです。
 何を思ったかフォローズ・チョーク編です。基本的に本編ではメインクエストのみを追う形になるので、彼にはサイドクエストを拾ってもらおうとかそういう魂胆での起用です。まあ、あまり丁寧に回収するつもりはありませんけども。
 店を爆破されてもクビで済ませるバティストさんは聖人か何かだと思います(ゲーム本編だと爆破で死にますが)。クビ宣告のシーンは海原雄山とビンス・マクマホンが混じってます。ちゃんと画像もそれっぽい構図になっている…ハズ。














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2016/05/28 (Sat)00:24






没画像、クレイブとクリスティーン
顔の写りは良いが前後の画像の構図との兼ね合いで没に







 どうも、グレアムです。今回は前回に引き続きFallout: New Vegas小説Dead Money編のこぼれ話をダラダラと書いていきます。




驚きのエリヤ、隔壁閉鎖時のリアクション




怒りのエリヤ、傭兵への復讐を誓い隔壁解放に挑む日々



 傭兵クレイブの物語において、エリヤは最後にシエラ・マドレの金庫室に閉じ込められます。実績「Safety Deposit Box」解除のシナリオ(通称:エリヤ閉じ込めエンド)ですね。あれゲーム中だと条件がすげーわかりづらいですよね。あれで閉じ込めたことになんのか?という。なので小説では視覚的にわかりやすく、話の内容もわりと改変してあります。
 ちなみにエピローグ時の金庫室はエリヤの内心を表現するかのようにめっちゃ散らかってます(笑)メンタスが大量に転がってる(&机の上にも置いてある)のがわかるでしょうか。たしかOld World Bruesで入手できる情報で、エリヤも若干メンタス中毒っぽい描写があったと思うので、こういった小ネタを仕込んでみた次第。ドッグ&ゴッドとディーンの画像の悲惨さに比べてギャグっぽくなってしまうので、極力雰囲気を壊さないよう控え目にはしたつもりですが(なのでインパクトの強い正面アップ顔は没になった)。
 ベンダーマシンでメンタス買いまくりながら日々コンソールに向かう地獄のよォな日々を送るエリヤに未来はあるのかッ!

 ちなみにFOOKではエリヤの外観がリプレイスされています。
 バニラでは種族Caucasian Old(HispanicOldAged)で作成されているエリヤですが、FOOKではFather Elijah(FookFatherElijahRACE)という専用種族で作成されており、ホログラム等で見られる肖像画により近い外観になっております。

 なんでこんなところに力入ってるんだよ!





左:オリジナル、右:FOOK版。並べてみると違いが一目瞭然



 ぶっちゃけオリジナル版は肖像画と全然似てなくて「誰このジジイ」状態だったのですが、どうもそう考えたのは俺だけじゃなかったらしい。わざわざModで作り直されるって相当ですよ。女性NPC美化とかいうんならまだしもジジイですからね。

 ちなみに小説でクリスティーンをBOSナイトと書きましたが、Fallout Wikiによると、どうも彼女は元スクライブで後からナイトに転向したという珍しい遍歴の持ち主であるようです。
 恋人のヴェロニカがスクライブなので、おそらくはエリヤがヴェロニカと引き離すため無理矢理クリスティーンをスクライブからナイトへ転向させたのではないかと思います。かなり無茶な配置転換ですが…
 おそらくクリスティーンがエリヤを憎んでいるのは、そうした環境の変化によるストレスもあったのでしょう(珍しい事例なので、当然仲間から変わった扱いを受けるようになるでしょうし)。もっともナイトに転向したおかげで卓越した戦闘能力を得、自らエリヤ抹殺を任ぜられるというチャンスをものにするわけですけども。







疑問:ディーンはヴェラを愛していたのか?





 ここからはかなり私見と偏見に満ちた考察をお送りします。
 ディーンとヴェラは共謀してシンクレアを陥れようとしますが、そもそもこの二人はどんな関係だったのでしょうか?そこでまず、ヴェラ・キーズという人物について考えてみましょう。

 戦前の若きスターだったヴェラですが、ゲーム中で入手できるホロテープやディーンの評価を聞く限り、ヴェラは決して歌や演技に絶大な才能があったわけではないことがわかります。しかし才能があれば大成できるわけではないのが芸能界の怖いところ、逆もまた然りです。
 おそらくヴェラには「彼女の才能を買っていた」パトロンのような存在がついていて、その人物のコネで仕事を紹介してもらっていたのではないでしょうか。業界に広く顔を持ち、強い影響力を持つ人物…たとえば、そう、ディーンのような。
 当のディーンは純粋にヴェラに心酔していたというよりも、邪魔者を陥れるための駒として彼女を「飼っていた」可能性が高いと思います。シエラ・マドレ各所で知ることができるディーンの戦前の暗躍ぶりを見るに、彼はシンクレアと出会う前から、ああいった謀略は自家薬籠中のものであったと推察できます。

 俺はディーンはヴェラを「愛していなかった」と考えています。
 というのも実際のところ、作中でディーンがヴェラについて「愛している」あるいは「個人的に特別な感情を持っていた」という趣旨の発言をしたことは無く、むしろシンクレアを嵌めるためいかにヴェラを利用したか、事の成り行きが計画通りに進んでいったかということばかり得々と語る様子から、ヴェラに恋愛感情を持っていたと考えるのは少々難しいです。
 おそらくディーンにとって、ヴェラは利用価値のある数多くの駒の一つ、程度の存在でしかなかったのではないでしょうか。ゲーム中、クリスティーンの声についてディーンが口にする「代わりのヴェラ・キーズは幾らでもいる」という台詞が示唆的だというのは考え過ぎでしょうか?

 わりと誤解されやすいですが、ディーンとシンクレアはヴェラを巡って争っていたわけではありません。ディーンはシンクレアへの復讐を誓ったあと、シンクレアを陥れるため彼にヴェラを紹介し、そこではじめてシンクレアとヴェラは知り合います。
 なので順序的に、ディーンの復讐の原因が恋愛絡みの嫉妬というのは有り得ないことなのです。むしろシンクレアがヴェラに夢中になるほどディーンにとっては都合が良かったと言えます。

 シエラ・マドレ強奪計画が着々と進むなか、ディーンはヴェラがシンクレアに情を移し、自分を裏切る可能性があることについては気づいていたと思います。ヴェラを薬漬けにし、自分との関係を匂わせるホロテープを脅迫材料として持っていたのは、「裏切ったら俺だけではなくお前も身の破滅だぞ」と自覚させるためのものだったのでしょう(大スターと関係を持ち、深刻な薬物中毒を患った若手女優の醜聞なんてものが世間に知れたら即人生終了のお知らせです)。
 要は「成功するも失敗するも一蓮托生だぞ」、と釘を刺していたわけですね。それに、愛していなくても女を抱くことはできますし(ディーンのような人間にとっては尚更でしょう)。まして相手がヴェラのような美人ならば。
 ディーンにとって予想外だったのは「それでもヴェラがシンクレアに密告した」こと、そして最終的にシンクレアが「ヴェラを許した」こと、だったのではないでしょうか。
 ディーン生存エンドにて、彼はシンクレアがヴェラに宛てたメッセージを読み、彼の心情は「奇妙な悲しみを覚えたが、理由は分からなかった」と描写されます。
 あくまで他人は利用するための存在であり、「対人コミュニケーション=利得絡みの駆け引き」としか認識していなかったディーンにとって、自身の身の破滅を予測したうえで罪を打ち明けること、そして一度は恨んだ相手を損得勘定抜きで許すというのは、まったく理解できない感情だったのではないでしょうか。

 おそらくディーンは「自分以外の人間を愛せない(愛することを知らない)人間」だったのではないかと思います。
 一見完璧に思える彼の計画に穴があったとすれば、損得だけでは動かない人間の感情を軽視した点だと言えるでしょう。




生存エンドの場合、こんな未来もあるのかもしれない…
ザ・エース・シアターにてパフォーマンスを披露するディーン



 ちなみにヴェラはデータ内に未使用NPCとして存在しており、「Starlet」という名前がついています。これは将来有望な若手スターを意味する単語のようですね。
















2016/05/26 (Thu)00:15






伊達男ディーン・ドミノの射撃、作中と別角度から







 どうも、グレアムです。Fallout: New VegasのSSつき小説Dead Money編が終了したので、今回はアクションシーンの撮影についてチラッと説明します。
 ご自身でも画面写真の撮影を行っている方は気づかれるかもしれませんが、今回は主にアクションシーンで通常は撮影できない画像が幾つか存在します。個性的なポーズからの発砲、同じ画面内にマズルフラッシュが複数存在する、トレーサーの数が多い、V.A.T.S.でもないのに弾頭が目視できる等々…
 先に断っておきますが、これは合成ではありません。すべてゲーム内で処理しています。




同シーンでのクレイブの射撃




クリスティーンとの共闘、別角度から



 では、どうやったのか。
 非常に単純です。強引です。力技です。

薬莢・マズルフラッシュ・トレーサー・弾頭、

これらをコンソールからクリックで指定できるよう、

Meshにコリジョンを仕込んで別名で保存し、

Miscアイテムとして登録しました。

 そう、今回の作中の画面内に登場するこれらのエフェクトの大部分は、じつは内部的にはアイテムだったのです!
 画面撮影時はTFC1で時間を止めたあと、Miscアイテムとして新たに作ったそれらをコンソールから呼び出して位置と角度を調整してます。
 キャラクターのポーズはその前に固定していることが多く、実際に敵を攻撃しているのは画面外にいるプレイヤーだったりします。そのため主人公クレイブも実は同じ外観のNPCを立たせていることが多いです。




作中と別角度のディーンVSクレイブ対決シーン
実際はエフェクト類の位置も調整し直している



 また画像撮影時には一枚の絵としてのインパクトを重視するため、マズルフラッシュやトレーサーが実際は銃身の向きからズレていたり、薬莢や弾頭のサイズが二倍だったりすることも珍しくありません。
 エリヤと決着後の首輪を投げるシーンでは首輪のサイズがそれぞれ1.3~1.4倍になっており、実際は同じ距離に置かれていながら遠近感を出すという手法を試みたりもしています(これはENBの持つDoFのピント調整を誤魔化すためでもある)。




タレット破壊シーンの別角度&ブラーなし
ENBのライティング項目も未調整です
これは薬莢の位置&角度も全部手打ちで超面倒臭かった…



 最終戦でのV.A.T.S.を使ったタレット破壊シーンはかなり気合入ってます。
 こう、トライガンみたいな感じでですね。ああいうのをFalloutの画面上で再現してみたかったんです。今回、その気になればやれるということがわかりました。







 以下は撮影方法を確立する前にテスト的に撮影したサンプルです。




狙撃シーンのサンプル




マックスペインというか、スナイパーエリート的な




トリックショットのサンプル




どんなポーズの射撃だって自由自在
実際に敵を攻撃しているのは画面外のプレイヤー




ダブルサブマシンガンのサンプル、Vault3にて
俺はずっとこういうのがやりたかったんだよ!




10mmサブマシンガン二挺でフィーンド殲滅
Hotline Miami 2のマークの如く




エイイッ殲滅殲滅ゥ!!



 まあ…なんでいまさらNew Vegasの撮影でこんなに気合入れようと思ったかっていうと、Fallout4で二挺拳銃が実装されなかったことを知ったからなんですが。なんでだよ!Skyrimで二刀流実装したじゃねーか!チクショウ!















2016/05/24 (Tue)18:39





Fallout New Vegas : Twin Aces
Dead Money - Epilogue -



 傭兵が去ってから、長い時間が過ぎた。

 ヴィラ中央広場の噴水に置かれたラジオからはヴェラ・キーズの歌が流れ、そして噴水に腰掛けるクリスティーン・ロイスの口からヴェラ・キーズとまったくおなじ声が発せられる。
 ラジオにあわせて歌うクリスティーンの前には、ゴースト・ピープルたちがまるで聴衆のように大人しく、攻撃的な態度を見せることなく静かに佇んでいる。
 いつからかゴースト・ピープルはクリスティーンに危害を加えなくなり、まるでそこに誰もいないか、あるいは彼女がホログラムであるかのように振る舞うようになった。その理由はクリスティーンにもわからなかったが、彼らが敵ではないとわかると、彼女自身もゴースト・ピープルの存在を意識することがなくなった。
 ときおりシエラ・マドレの伝説を聞いて無謀な挑戦に訪れる冒険者を丁寧に、しかし強硬的な態度で追い返しつつ、クリスティーンは時間の概念を失ったかのように、今日も歌い続ける。

 ヴェラ・キーズの代表曲、「再出発( Begin Again )」を。










はじまりは夜に訪れるもの
今夜すべてをやり直しましょう





 
あなたの腕でわたしを抱きしめて
頬をそっと寄せてほしい






どこへだって行ける
望みのものが見つかるはずよ






もう行く時間だわ
だから今夜、今夜すべてをやり直しましょう









 一方…モハビ・ウェイストランド東部、188交易所。

 俺の名はクレイブ、傭兵だ。
 シエラ・マドレでの任務を完了しヒドゥン・バレーに潜伏しているモハビBoSに報告を終えた俺は、主要道路の交差点であり、NCR軍やキャラバン隊の通過点として栄えるこの市場に、知人を訪ねてやってきていた。






「よおーアレキサンダー!商売は順調かね?」
「まずまずってところだ。おまえは相変わらず疫病神を演じてるのか、ン?」
「そっちこそ相変わらず初見の客をいびってるんだろ?」
「「アッハッハッハッ!」」
 小洒落たコバルトブルーの傭兵服を着ているのはアレクサンダーという男で、ガンランナーという銃器製造会社の出張販売員だ。質の良い武器を数多く揃えているが、素人客には決して売ろうとしない。ポリシーがあるのだという。
 ウェイストランドで銃を新規に製造できる技術を持つグループは稀で、さらに質の良い銃を作れるというのは滅多にない才気だ。大半がオーバーホールした戦前の銃を扱うウェイストランダーにとって、新造の高性能銃というのは喉から手が出るほど欲しい高嶺の花であり、それが生き馬の目を抜くウェイストランドで売り手市場が成り立つ理由だった。
 なにを隠そう、いま俺が腰にぶら下げている拳銃もガンランナー製だ。それは俺がガンランナーを信頼していることを意味し、そして、ガンランナーも俺を認めていることを意味していた。
 なんたって、こいつは特注品なのだ。専用のシリアルナンバーと刻印が打たれ、俺好みに調整されている。贅沢とは無縁の俺が、いつも財布に穴が空いたようにからっけつなのは、こういうところでの金遣いが荒いからだった。タレットの強化装甲を薄いアルミ缶のように引き裂いた特殊弾然り。
 仕事の道具を選ばずとも戦えるのは傭兵として必須のスキルだが、選べる状況でそれをしないのはただのアホだ。
 なにより…最高の装備で戦いに挑む瞬間ほど、人生で楽しいものはない。
 俺はアレクサンダーと肩を抱き合い、拳を合わせてから、彼の周囲で暇そうに煙草をふかしている護衛を一瞥し、口を開く。
「今日はもう客なんか来ないだろう?カンバンにして、上の店で飲もうぜ。奢るよ」
「奢り?おまえがか?また悪いことをやらかしたな、こいつめ。それじゃあ、不幸を被った誰かのために乾杯するとしよう」
「ちょっとは嬉しそうにしろよ!」
 それから俺たちはサミュエルとミッシェルのケール父娘が経営する188スロップ&ショップへ行き、それぞれウィスキーとビールを注文してスツールに腰かけた。

 空瓶が何本か転がり、灰皿が吸殻で溢れそうになったころ(煙草を吸うのは俺だけでアレクサンダーはあまり良い顔をしなかったが)、俺はバックパックから「あるもの」を取り出し、アレクサンダーに見せた。






 ずっしりと重い金のインゴットを手に取り、しばらくそいつを眺めてから、アレクサンダーは酔いで赤くなった鼻を鳴らし、神妙な面持ちになった。
「色を塗った合金…てわけじゃなさそうだな。カジノでも襲ったのか?」
「まあ、そんなもんかな」
「おまえ、いつから強盗にジョブチェンジしたんだ?やめろよ、ヤバイ話は御免だぜ。なにを敵に回したんだ?まさかストリップ地区の三大ファミリーじゃないだろうな」
「そういうんじゃないよ。もう閉鎖されたカジノさ、戦前の。強盗じゃない、スカベンジ(ゴミ漁り)さ」
「そりゃあ、また。たいした宝を掘り当てたもんだな」
「なあ、そいつを捌けるアテはないか?」
「…おまえな。俺が何に見える、金物屋か?そりゃあ商売柄、ガンランナーは金属に関する知識はあるがな。こういう物(ブツ)の取引は専門外だ」
「上客には金持ちも多いんだろ?そういうツテで欲しがる客を探せないか?」
「簡単に言ってくれるなよ。客にはなんて説明するんだ?『じつは先日、知り合いがこの出所の怪しい金を持ってきまして、できれば買っていただきたいのですが』って言うのかよ?ふざけてんのか…それに今日び、金に絶対的な資産価値があるわけでもないしな」
「そうなのか?」
「というより、適正な価格で扱える人間が少ないのさ。こんな時代じゃあな。それに適正な価格を知ってるからといって、適切な価格で買ってくれるとは限らない。難しい商品なんだよ、こいつは」
「それじゃあガンランナーはどうだ?」
「ハァ?なんでうちが金なんか買わなきゃならないんだ?資産価値として期待は持てないと言ったろう」
「そうじゃなくてさ。金持ちの客を相手に、金そのものが売れないなら、金でできた銃を作って売るっていうのはどうかなと思って」
「金の銃!?なんて悪趣味な発想だ!うちは実用性第一で売ってるんだぞ、宝石屋を気取っておチャラいファンシー・アイテムなんぞ売れるか!」
「需要はあると思うがなぁ…」
 おそらくポリシーに触れたのだろう、癇癪を起こすアレクサンダーに、俺は力なくつぶやいた。
 そう…この金塊はシエラ・マドレの金庫から持ち出したものだ。
 エリヤから連絡を受けターミナルから離れる直前、数本をバックパックに忍ばせておいたのである。大量に盗まなかったのは怪しまれないためというより、単純に重く嵩張るためである。
 退職金を欲しがる歳ではないと言ったが、金に頓着しないわけじゃない。ないよりはあったほうがいい。当たり前の話だ。俺は善人でも聖人君子でもない。役得は有り難く頂戴する、それが俺の流儀ィィッ!
 …なんだが、そう、このウェイストランドじゃあ金のインゴットなんて売り先に困るんだよな。
 そんなわけで、とりあえず顔の広い、特殊な顧客のネットワークを持つアレクサンダーに話を持ってきたのだが…
 それからしばらくは金塊を酒の肴に他愛のない話を繰り返し、夜が更けてから俺は席を立ち上がった。
「もう行くぜ、今日はボルダーシティに宿をとってある。じゃあな」
「ちょっと待て」
 去ろうとする俺を、アレクサンダーが呼び止める。
 テーブルに残したまま忘れていた金塊を手に取り、彼は言った。
「こいつだが…しばらく、俺に預けちゃもらえないか?さっきの話だが、提案そのものは悪くない。俺の一存じゃ決められないが、今度ニューベガスの支社に戻ったときに上と話をしてみるよ。金塊はこの一本だけなのか?」
「あと二本ある。なにせ一本で機関銃より重いからな、その程度が限界だった。預けてもいいが、盗むなよ」
「そんなことするか。こっちは信用商売だからな」

 その後、ガンランナーは特別な顧客向けに金を使った銃の製造を開始。
 金を預けた俺は売り上げの一割を受け取る、という契約で話が纏まった(もっともこの部分のやり取りに関してはだいぶ揉めたのだが)。







 その後、完成した銃を仕入れたアレクサンダーは188交易所で限られた客のみをターゲットに販売をはじめた。
 黄金に輝く銃を観察しながら質問する客に、アレクサンダーは饒舌に説明を加える。
「純金か?」
「いえ、合金です。金は熱と衝撃に弱いので、そのままでは実用に向きません。インテリア用の飾りでなら問題ありませんが、我がガンランナーでは見た目と実用を兼ねた銃器製造をモットーにしておりますもので」






 全体に彫刻(エングレーヴ)が施されたブローニング・ハイパワーを手に、「選ばれた客」に対してだけ向ける愛想の良さを振りまきながら、アレクサンダーは言葉を続けた。
「見た目が派手なだけじゃありません、内部パーツもすべて吟味された精度の高い部品を選りすぐって使用しています。トリガーは引きと戻しが最小になるよう調整され、バレルは内側にクロムめっき処理が成されています。汚れに強く、寿命が飛躍的に延びます。精度はわずかに落ちますが、拳銃の有効射程内では問題になりません。リコイル・スプリングはコイル型の二重式を採用しておりまして、プリンキング用のアモからホット・ロードまで弾の種類を選びませんよ。サイトはオールドなスタイルですが、緑に発光するトリチウム・カプセルが埋め込まれ暗所でのサイティングを容易にします」






「本物の白蝶貝を使ったパールグリップには、聖母マリアを象ったレリーフが嵌め込まれています。格調高く、気品漂う逸品に仕上がっておりますよ」
「すこし隙間が目立つな?」
「ええ、モハビは砂が吹きますもので。マッチ用ならタイトに仕上げるんですが、コンバット・シューティングを想定した場合、砂を噛んで動作不良を起こさないよう、あえてクリアランスを設けてあるんです。精度に致命的な影響を与えないギリギリのスペースを、我がガンランナーの腕利きの職人が見極めて調整しています。安心してお使い頂けることでしょう」
「なるほど、実戦的なカスタムというわけか。気に入ったぞ」
 客の男…白いチェック柄の派手なスーツを着た伊達男は、アレクサンダーから銃を受け取ると、しばらく眺め、遊底を引き、アクションを確認したのち、満足げなため息をついた。






「こいつをもらおう。一括払い、キャップでだ」
「ありがとうございます。

ベニーの旦那」

 このときのアレクサンダーには知る由もなかった。
 目の前の男、ザ・トップス・カジノを経営するニューベガス・ストリップ地区の三大ファミリー「チェアメン」のボスが、間もなく知人の傭兵と因縁を築くことになるなどとは…





< Wait For The Next Deal... >








 どうも、グレアムです。Fallout: New Vegas、Dead Money最終回です。
 ヴェラ・キーズのBegin Again、作中のはかなり適当な和訳です。ディーン・ドミノの回でちょっとだけ出てきた、Saw Her Yesterday(というかSomething's Gotta Give)もそうなんですが。
 因果はどんなふうに巡るかわからない、ということで、ベニーの愛銃マリアの出自をでっちあげてみました。本来はマリアのカラーは金ではなく銀(クロムめっき?)なのですが、せっかくなのでテクスチャを改造。FOOKはバニラに登場する銃のほとんどをMeshから差し替えるのですが、なんと新Textureはグリップのマリアの肖像が消されてて参った。Textureの配置が違ってるかもわからないので、この部分だけバニラのTextureを抜き出して移植しました。面倒臭かった…
 ていうかベニーがカッコ良く撮れねェよ!なんでゲーム中のグラフィックはこんなに冴えない顔なんだよコイツ!ハの字眉で垂れ目で若干下膨れ気味とかどうすんだこれ。ベニーだけリプレイス系のMod入れたいなぁ本当に…あるかな?













2016/05/22 (Sun)09:03





 俺の名はクレイブ、傭兵だ。
 シエラ・マドレ…誰もが人生をやり直すチャンスを与えられる場所。伝説のカジノ。俺がそこで目にしたのは、娯楽施設の皮を被った要塞と、張り巡らされた死のワナ、そして悲しい男女の物語だった。
 さあ、幕引きのときだ。金庫室に到着したいま、俺の任務は最終段階へと移行した。俺は傭兵だ…任務は忠実に遂行する。誰からのものであっても。どんなものであっても。







 俺がコンソールから離れたそのとき、無線機からエリヤの声が聞こえてきた。
『応答しろ傭兵、やったのか?金庫室への侵入に成功したのか?』
「やったとも。それと、あの三人も始末した。ドッグはキッチンでケバブ焼きになってるし、ディーンは最後の晴れ舞台を終えて退場した。クリスティーンはあんたの言った通り、首輪爆弾にやられたらしいな。ラジオの干渉波で信管が作動したようだ」
『よくやってくれた。よし、今から私もそちらへ向かう。金庫の中の物にはまだ手をつけていないだろうな?』
「報酬は任務終了後にっていう取り決めだったからな。そうそう手癖の悪い真似はしないさ」
『よし、いいぞ。それで…私が到着するまで、金庫室から離れていてくれないかね?」
「あんたの懸念はわかるよ、どいつもこいつもヒトが宝を目の前にすれば人間性が変わるってしつこく忠告してくれたもんでな。だから俺はちょっと離れた場所で、銃を足元に置いて、煙草を吸いながら、もう片方の手はキンタマでも握ってることにするよ。そうすれば変な気を起こしたって、すぐに妙な真似はできないだろう?」
『うーむ…』
 俺の提案が気に入らなかったのか、それとも下品な物言いが気に障ったのかはわからないが、エリヤは返事をするかわりに唸ってから、通信を切断した。
 しばらくして俺が解除できなかったセキュリティ・フォースフィールドが消失し、そこからガウスライフルを手にしたエリヤが警戒した様子で歩いてくる。彼は彼で俺がシエラ・マドレを駆けずり回っているあいだ、セキュリティ・システムのコントロールを試みていたらしい。






「私が金庫室を調べているあいだ、妙な真似をするなよ?」
 そう言って睨みつけてくるエリヤに、俺は遠くからヒラヒラと手を振ってみせる。
「心配しなさんなって、俺はあんたに傷一つだってつけるつもりはないさ」
「……フン」
 目的が達されつつあるからか、エリヤの態度は以前に増して無愛想になっていたが、いますぐに俺を撃ち殺そうとしているのでなければ、そんなことはどうでも良かった。俺がいまの仕事を選んだのは他人に好かれるためではない。
 エリヤが金庫室へ向かうあいだ、俺はひたすら煙草を吸いつづけた。今は他にやることがない。それに妙な動きをしていると思われて、エリヤに撃たれたくはなかった。立ち小便をしようとズボンのファスナーを上げる動作が、遠目にはホルスターから銃を抜く動作に見えないとも限らないのだ。
 やがてエリヤが金庫室に入り、執務テーブル上のターミナルをいじりはじめ、俺が吸殻を毒霧のくすぶる奈落に放り込んだとき、通信機から興奮を隠しきれないエリヤの声が聞こえてきた。
『ようやく…ようやくだ。これで私はシエラ・マドレのすべてを手に入れることができる…ホログラムの軍隊。毒霧。ベンダーマシン。あの忌々しいゴースト・ピープルでさえ。すべてが再出発( Begin Again )の礎となるのだ…』
「そして首輪、か?」
『そう、首輪だ…君たち、君とあの三人が協力してカジノへの突破口を開けたのはまさしく首輪のおかげなのだ。それぞれが異なる目的を持ち、カジノへの侵入に成功した途端に反目し殺しあった人間たちがいっときでも協力できたのはな』
「着け心地はあまり良くないけどな。そのうち小型化すべきだろう」
『無論だとも。なに、時間はいくらでもある。この地に残された資産をもってすれば、不可能なことなど何も…ちょっと待て』
 ガチャリ。
 金庫室の隔壁が封鎖され、エリヤの声に動揺が混じる。






 俺はくわえていた煙草を捨て、無線機をすべて放り投げてから、内蔵ピップボーイの無線通信機能を使ってエリヤに語りかけた。
「ディーン・ドミノの言った通りだな…

黙ってたってシエラ・マドレが始末してくれるのに、

なんでわざわざ自分で手を下す必要がある?」

『き、貴様ッ!このターミナルに何か細工したな!?』
「シンクレアの個人アカウントにアクセスすれば、金庫を中から開けることができなくなるっていうメッセージを消しただけさ。あんた、なにも知らずにシンクレアの個人アカウントにアクセスしたろ?もとは核戦争に備えた安全措置だが、いまとなってはその中に閉じ込められる生活ってのはゾッとしないな」
『このッ…裏切りおったな!?』
「裏切っただって?馬鹿を言っちゃいけない、俺はあんたから与えられた任務を完璧に果たしたじゃないか」
『なに…?』

「あんたはシエラ・マドレが欲しかったんだろ?

手に入れたじゃないか。

それをどう使うつもりだったのか、それで何がしたかったのかなんて、聞いてないし知らないね」
『貴ッ様ぁぁあああ…!!この周波数、私が渡した無線機のものではないな!?いったいどうやって私のピップボーイに通信している!?』
「ピップボーイだよ。俺自身は持ってないなんて言った覚えはないぜ?以前、連邦の技術者に頼んで体内に埋めてもらったのさ。リフレクス・エンハンサー、ニューラル・インターフェースと一緒にな…幾つかの機能はオミットしちまったが、あんたみたいな人間に見せびらかして利用されるのは避けたかったんでね」
『ピップボーイだと?フッフ…種をばらしたのは早計だったな。ロブコ社製のOSはセキュリティに脆弱性を抱えていることを知らんな?体内に埋められているとは好都合!ニューラル・インターフェース?神経接続だと…脳に直結している?ならばピップボーイをハッキングすれば、貴様を操り人形にできるというわけだな!』
「無駄だと思うけどな…」
 その言葉にエリヤは答えなかった。俺が強がりを言ったんだと、ブラフをかましていると思ったのだろう。いまごろは必死にピップボーイを操作しているに違いない。
 俺の身体にハッキングしているエリヤは忙しいに違いなかったが、俺は暇だったので、ためしに世間話の水を向けてみた。
「それで…あんたはシエラ・マドレを手にして、何がしたかったんだ?」
『知れたこと、NCRへの復讐だ!毒霧は逃げ場のない戦場を作り上げる!そしてホログラムの兵隊…エミッター(中継器)を設置してやつらの拠点に一体でもホログラムを送り込めれば、それだけで戦闘の勝利が確定するのだ!無敵の兵士、対抗する術はない!それは貴様がいちばん良く知っているだろう』
「で?」
『…で、とは』
「そのあとは」
『そのあと?』
「毒霧撒いて、ホログラムの軍隊で制圧して、殺して、殺して、殺しまくったあとは。どうするんだ?もう人間の住める環境じゃなくなるんだぜ。ヴィラを見ろよ。このシエラ・マドレを見ろよ。死体の山を築き、自分一人生き残った土地で、そのあとどうするんだ」
『ぁあああああああぁぁぁあああああああッッ!!』
 聴覚に、脳に直接訴えてくる絶叫に、俺は顔をしかめた。
 それは人間の言葉ではなかった。人間の声ではなかった。獣の声だった。怒り狂い、理性をなくした動物の声だった。俺の言葉が気に入らなかったのか、あるいはハッキングが徒労に終わることがわかったのかもしれない。
『なんだ、このシステムは!?』
「最初に言ったろう、ザ・シンクの連中に改造されたって。そのときに、OSの構成から何からオーバーホールされたんだよ。知ってるだろ?あいつら、ロブコ製品が大嫌いなのを」
『貴様、殺してやるッ!!』
 いったい、どうやって?
 そう問いかけようとしたとき、金庫室をぐるりと取り囲むように配置されたタレット(自動銃座)がいっせいに俺に銃口を向けてきた。
 しまった!フォースフォールドが破られたときに気づくべきだった、タレット・システムもエリヤの制圧下にあるってことを!
 俺はすぐにV.A.T.S.を起動し、グリムリーパー・スプリント・プログラムを最大出力にセット、ターゲッティング・システムを使って全タレットに照準をロックする。
 地面に置いてあった拳銃を拾ったときには、タレットが最初の銃撃を開始するまでの予測時間が0.5秒を切っていた。標準的なボール弾がフル装填された弾倉を抜き、新たな弾倉を…鉄芯入りのダートチップ弾頭に、限界まで火薬を充填したマキシマム・リロード弾がセットされた弾倉を銃杷に叩き込む。残り0.3秒。
 遊底を引き、薬室から弾丸がはじき出される。残り0.2秒。遊底が前進し、特製弾丸がフィーディング・ランプを滑って薬室にセットされる。残り0.17秒。






 ドガガガガンッ!!

 発砲を開始。銃声が連続した一つの音となって響き、全タレットが破壊、爆散する!
 残り…0秒。
『お、おお…おおお……』
 宙を舞っていた多量の薬莢がほぼ同時に地面に落下し、ピップボーイから全タレットの反応が消失したことを確認したエリヤが言葉にならない声を発した。
 嫌味を言うつもりはないが、俺は状況確認のためにエリヤに事実を告げる。
「隔壁の閉鎖と同時に救難信号が発信されるらしい。そのうち救助が来るだろう、核戦争後に俺がここへ辿りついたようにね。核戦争からは二百年経ってるわけだが、次に誰かがこの金庫へ到達するまでにはいったい何百年かかるのかな?」
『外からは…開けることができるんだな?おい傭兵、いますぐこの隔壁を開放しろ!財宝が…惜しくないのか!?』
 たしかにエリヤの言う通り、シエラ・マドレの財宝は金庫室に眠ったままだ。このままでは俺が得るものは何もない。そう、エリヤから受けた任務だけを考えるなら。
 エリヤからの任務を達成したと同時に、俺は自分が帯びていた「もう一つの任務」をも達成していたことを彼に告げた。
「クリスティーンがよろしく言ってたぜ」
『クリス…まさか…貴様、まさかBoSの差し金かッ!?くそ、だからか…ビッグ・マウンテンに居たのは!傭兵風情が、私を見くびるなよ。こんな金庫、内側からだって開けてみせる!私を誰だと思っているんだ?元BoSエルダーだぞ!』
「待ってるよ。俺は過去に受けた依頼にも寛容でな、もしあんたがモハビに戻るようなことがあれば…契約継続だ。そのときは俺の手できっちりあんたを殺してやる」
 そう言って、俺はエリヤからの通信を遮断し、踵を返した。

 かつて…
 ワシントンからネバダへやってきた俺はまずモハビBoSと連絡を取り、彼らのもとで活動していた。そして、元エルダーのファザー・エリヤ抹殺指令が下った…奴がビッグ・エンプティへ向かったという情報を掴んだBoSは、俺とクリスティーンを暗殺部隊として送り込んだのだ。
 もっともビッグ・エンプティではエリヤを逃し、俺とクリスティーンはシエラ・マドレに向かったエリヤを改めて追うことになった。ただし俺は諸事情で一度モハビBoSが姿を隠しているヒドゥン・バレーに戻らねばならず、俺の復帰を待てなかったクリスティーンは先行し、結果としてエリヤに捕えられてしまうわけだが。
 クリスティーンはかつての師であるエリヤに個人的な恨みがあり、またそのことはエリヤも承知していた。彼女が自分の前に姿を見せたという事実だけで、エリヤはBoSが殺し屋を送り込んできたことを理解していたのだ。
 しかし俺のことは知らなかった。エリヤはビッグ・エンプティで俺とクリスティーンが一緒に行動しているのを見ていなかった。そうでなければ、エリヤの部下として雇われるという今回の計画は実行できなかっただろう。
 俺は傭兵として、エリヤを始末するというBoSの任務と、シエラ・マドレを手に入れるというエリヤの任務を同時にこなしたのだ。






「あばよ…シエラ・マドレ」
 俺はエレベータに乗り込み、クリスティーンのもとへ戻った。










「終わったのね…」
「ああ。これでもう首輪生活ともオサラバだ」
 無造作にブン投げた首輪が噴水に散らばり、ガチャリという硬質な音を立ててバウンドする。
 モハビ・ウェイストランドへと続くゲートの正面で、俺とクリスティーンは爆殺首輪のロック解除に成功していた。本来エリヤにしか外すことのできないものだが、ビッグ・エンプティでエリヤの残したメモ書きを回収していたクリスティーンは首輪の内部構造をある程度把握していたのだ。
 もっとも自分の首に嵌まっているものをいじるのは無理だったようだが、クリスティーンが俺の首輪を外したあと、解除方法の説明を受けた俺が改めて彼女の首輪を外したのである。
 シエラ・マドレを見上げながら、クリスティーンはやや釈然としない様子で口を開く。
「あの男がまだ生きているっていうのは、あまり気分の良いものではないわね」
「個人的な恨みがあったんだろ?老い先短い年寄りを狭い空間にたった一人閉じ込めておくっていうのは、殺すよりも有効な復讐方法だと思うけどな」
「まさか、わざと殺さなかったの?そのために?」
「いやいや。エリヤは狂気に取り憑かれていたかもしれないが、その妄執こそが最大の武器でもあった。正面から銃口を向けていたら、逆にやられていたかもしれない。どんな隠し手を持っていたかわからないからな。だから、抜け出せない罠にかかる最後の瞬間まで敵意を見せないこと、それこそがやつを確実に始末するもっとも有効な方法だったんだ」
 いまとなってはもう、どうでもいいことだが。
 俺はホログラムの消えた噴水に背を向け、ゲートに向けて歩きはじめた。こんな陰気な場所、仕事でもなければ一秒だって長居したくはない。
 しかしクリスティーンは俺とは違う感想を持っているようだった。
 その場から動こうとしないクリスティーンに俺は言った。
「行こうぜ」
「…私はここに残るわ」
「なんだってぇ!?」
 素っ頓狂な声を出したせいか、俺よりもクリスティーンのほうが驚いてしまったようだ。
 目を丸くするクリスティーンに、俺は「いやいや」と首を振りながら問い詰める。
「なんでだ?エリヤが生きてるからか?なんでそうなるんだよ?俺はそんなことのために…どういう理屈だよ、おい」
「いや、あの…そんなに驚くとは思わなかった。あなたってもっとドライな人間かと思ってたわ」
「悪かったねぇ」
「エリヤの企みは潰えたかもしれないけど、シエラ・マドレの脅威は依然残ったままだわ。毒霧、ゴースト・ピープル…それらがモハビに影響を及ぼさないよう、私はここで監視を続けるつもりよ。それに、そう…まだエリヤも死んでないしね。無謀な冒険者に警告もしなくちゃならないし」
「こんな場所じゃ食料だってロクに手に入らないぜ」
「その点は心配いらないわ、ビッグ・エンプティ製のベンダーマシンがあるし。専用の貨幣があればほぼ無限に物を作り出せるらしいわ。戦前の技術って凄いわよね」
「俺はほとんど使わなかったけどな。買い物に必要なシエラ・マドレ・チップは有限だぜ?」
「あら、気づかなかった?あれ、携帯型の小型核燃料と廃材があれば幾らでも偽造できるわよ」
「そーいうのはもっと早く言って欲しかったなァ!?」
 そうとわかっていれば、もうちょっとラクに任務を運べたのに…などとブツブツ愚痴をこぼす俺を、クリスティーンが苦笑しながら見つめてくる。
 まあ自販機はもういいとして、彼女にはまだ聞きたい、いや、言いたいことがある。
「で、いつまでここに居るつもりよ」
「さあ」
「なんで。義務感か?それを自分の使命にしちまうってのか?それでいいのかよ?」
「…… …… ……」
 最後の言葉にクリスティーンは答えなかった。ただ、素敵な声でため息をつき、俺をじっと見つめた。「あまり私を困らせないで」と言外に語る瞳で。
 決意は固そうだった。一時の気の迷いではないようだった。それでもやはり、俺には彼女の行動が理解できなかったが。
 だが自分が理解できないのと、止めるべきかどうかっていうのはまるで別問題だ。本人が納得していないなら問題だ。大問題だ。ただ本人が納得づくなら、他人がとやかく言う筋合いはなかった。
 今度は俺がため息をつき、小柄な彼女の肩に手をかけて言う。
「その美貌をこんな僻地に残していくのは人類にとっての損失だな」
「馬鹿を言わないで、このツギハギだらけの顔を見て言ってるの?それとも、こうなる前の私を覚えているから?あるいは、この可愛らしい声に免じて…かしら?」
 口を尖らせ、幾分自嘲気味にクリスティーンは反論する。
 俺はすぐにそれには答えず、マスクを外し、彼女の前に素顔を晒した。その瞬間、クリスティーンが「はっ」と息を呑む音が聞こえる。






「顔に道路地図が彫ってあるのは、そう珍しい個性でもないんじゃないかな」
「あなた、その顔…!!」
 暗く落ち窪んだ瞳、頭部を切開された手術痕を見て、クリスティーンが言葉を失う。
 ビッグ・エンプティでザ・シンクの科学者にロボトミー手術を受けた結果だ。あのときはクリスティーンと引き離されて単独で行動していたし、彼女の前ではずっとマスクをかぶっていたから、クリスティーンは俺が改造されたのを知らなかったのだろう。
「言ってなかったっけ?」
「そんな…そんなの、私、聞いてないわよ!?そんなの一言も…!」
「いや、そんな深刻にさせるつもりで見せたわけじゃないんだけどね?」
 思っていた以上にクリスティーンがショックを受けたことに俺は若干戸惑い、少々気まずい思いをしながら頬を掻く。
 ほんのすこし悩んでから、俺はもとから彼女に言おうとしていたこと、俺の本心を伝えた。
「人間の傷っていうのは勲章だ。傷を見れば、その人がどんな人生を歩んできたかがだいたいわかる。誇らしいことさ。たとえ、それが…女の子の顔についたものだとしても」
「喉も?」
「そう、喉も。だから…俺の目には、いまの君のほうが前よりずっと輝いて見えるぜ」
 そう言って、彼女を抱き締めようとする。が、軽くかわされてしまった。
 おや?という、都合通りの展開にならなかった人間が見せるまぬけ顔を晒す俺を押しのけ、クリスティーンは苦笑しながら、ほんの少し俺を咎めるような目つきで見つめてきた。

『余計なお世話よ』

 彼女の視線はそう告げていた。
 だから、俺は言った。

「つれないねぇ」







 ゲートへと向かう俺の背中に、クリスティーンが声を投げかける。
「行くのね?」
「ああ。俺は、傭兵だからな…次の仕事がある」

 それで終わりだった。それが最後の言葉、最後のやりとりだった。
 俺はゲートを開き、モハビ・ウェイストランドへと続く道をたった一人で歩きはじめる。振り返らずに。ただの一度も振り返らずに。





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 どうも、グレアムです。Fallout: New Vegas、Dead Money七回目です。
 まだ最終回ではありません、あと一回だけ続きます。













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