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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/07/15 (Fri)18:35





「止まれ。ここから先は通行禁止だ」






 プリムの街へ向かおうとしたブレンダは、NCRのキャンプ付近で見張りに立っていた歩哨に呼び止められた。
 NCR…新カリフォルニア共和国。
 グッドスプリングスでトルーディから聞いたところによれば、旧世界の規範…確固たる基盤を持つ政府機関、強力な軍隊…により広大な領土を支配する組織らしい。名の通りベース(基盤)はカリフォルニアだが、近年はさらなる領土拡大を目指して活動中らしい。イケイケである。
 ならばこのネバダ、ニューベガスもNCRの支配下にあるのかといえば、さにあらず。
 核戦争の被害を逃れ、自らが開発したセキュリトロンの軍隊を擁する元ロブコ社社長、ニューベガスの庇護者ミスター・ハウスによって進軍を阻まれたNCR軍は彼と交渉し、フーバーダムが発電する膨大な電力の95%を得る代わり、ニューベガスの独立と、NCR市民の出入国の自由化を承認することで一応の決着となったのである。
 以後NCRはネリス空軍基地に大規模な兵力を駐屯させ、モハビ各地に前哨基地を設立。モハビ全域にパトロール隊を派遣し、治安維持に努めているという話だった。
「なにか問題でも?軍人さん」
「いまプリムはギャングに占拠されており、周囲は厳戒態勢下にある。またプリムより南は複数のレイダー集団が出没中との報告も入ってきている。見たところグッドスプリングスから来たようだが、悪いことは言わない、引き返したほうがいい」
「…それは、困るんだけど」
 おそらく行き交う旅人すべてに同じ文言を繰り返しているのだろう、あまりやる気のない態度で状況を説明するNCR兵に、ブレンダは困った表情を見せた。
 キャリア・シックス…ブレンダと同行していたらしい、クレイブと目される男を追って旅に出た彼女としては、こんな場所で足止めを食うわけにはいかない。ましてキャリア・シックスはブレンダを撃った集団を追跡しているらしく、一刻も早く追いつかなければ行方を見失う可能性があった。
 ならば、どうするべきか。
「あたしは仕事の契約で、プリムのモハビ・エクスプレスへ行かなければならない。非常に重要で、緊急を要する仕事。プリムの問題を片づけるなら協力してもいい」
「なんの仕事だ?格好から察するに、商人か?」
「用心棒。銃の腕なら自信がある。グッドスプリングスから来た、そう…つい先日、町を襲ったギャングを始末してきたところ。疑うなら町に連絡員を送るといい、望む回答が得られるはず。でも、こっちは急いでる」
「参ったな…う~ん、俺の一存ではなんとも」
「ここの責任者は?」
「ヘイズ少尉だ、キャンプのテントにいる。彼と相談してくれ」
 NCR兵に促され、ブレンダは瓦礫の積み重なった道を歩いていく。
 ほぼ嘘はついていない、不要な情報を教えなかっただけだ。頭を撃たれて記憶を失い、一緒に行動していた男を追ってきている、などと言う必要はない。そんなことをしても無用な疑いを持たれるだけだ。
 用心棒?イエス、かつてはそうだった。
 腕に自信がある?イエス、つい先日、それはグッドスプリングスで証明したばかりだ。記憶を無くしているからといって、気後れする必要などない。










「グッドスプリングスを襲ったパウダーギャングどもを始末してくれたらしいな」
 口元を覆っていたスカーフを下ろし、素顔を晒したブレンダに、ヘイズ少尉は若干の疑いを含んだ眼差しを向けて言った。
「おおよその事情は聞かせてもらったよ。ひとまず我々や、プリムの民に危害を加える意思がない限り、君のことを信用しよう。目下の状況についてだが、我々は苦しい立場にある。おそらく君の手を借りることはないだろう、無用な危険は冒せない」
「状況の説明を」
「フゥ…わかった。プリムを占拠しているのはパウダーギャングで、高度に武装、組織化されている。プリム市内をパトロールしている連中だけでも我々の戦力を上回っているが、さらに主戦力がバイソン・スティーブホテルに潜伏している。また、施設内に人質が囚われているという情報もあるが、未確認だ」
「プリムの人たちはどこへ?」
「ホテルの向かい、ビッキ&ヴァンス・カジノに立て篭もっている。多くが武装しているからギャング達は手を出せないが、逆にプリム市民も外に出ることができず閉じ込められた形になっている。食料の備蓄はそれなりにあったはずだが、なにせ収容人数が多い。尽きるのは時間の問題だろう」
「ギャングの掃討と、プリム市民の救助に関するプランは」
「本隊に支援を要請中だが、いつ到着するかは未定だ。我々だけではどうにもならん…いまキャンプにいる隊員の多くは新兵で、練度も経験も不足している。装備も貧弱だ。さらに厳しいことを言うなら、プリムはNCRの勢力下にない。無理を押して助ける必要はない」
「勢力下にない?」
「彼ら自身が拒否したんだ。税の支払いに不満があるらしい…」
「だから見捨てると?」
「自殺隊を送るだけの義理はない、というだけの話だ」
 それだけ言うと、ヘイズ少尉はふさぎこんだような態度で椅子に背をもたれた。
 兵の安全を守るためにプリム市民を見捨てる、という彼を批難する気は起きない。それではなんのための軍隊か、という気はするものの、彼の言う通りプリムがNCRの庇護下にないのであれば、熱意に欠けるのも当然の話だろう。
 黙って状況を思案するブレンダに、ヘイズ少尉がやや皮肉めいた態度で問いかけた。
「それ、で…なにか妙案でもあるのかな?」
「表のパトロールをあたしが始末する。消音機つきのライフルを持ってる、扱いには自信がある」
「もし君の存在が連中に気づかれて、騒ぎになったらどうする?プリムの民が危険に晒されることになるぞ。当然、我々もだ」
「ゲームオーバーの条件は三つ。あたしが死ぬか、連中がカジノに押し寄せるか、このキャンプに攻め入るか。でもカジノに潜伏している市民は武装していると、さっきあなたは言った。それをわかってて、自棄になって押し入るとは思えない。このキャンプも、連中が辿り着くまでの道に死角がない。それに引き換え、こっちは遮蔽が多く待ち伏せしやすい立地。防戦には一方的に優位」
「それは…そうだな。しかし、こちらから攻めることはできなかった。だから膠着状態にあったんだ」






 ブレンダの提案に関心を持ったらしいヘイズ少尉は、大判の写真をテーブルに広げた。
「これはプリムの上空写真に印をつけたものだ。連中がプリムを占拠してからずっと、我々は連中のパトロールを監視していた。その位置と人数を記録したものだ。だが我々には長距離射撃用の火器が支給されておらず、また、それを扱える熟練の兵もいなかった。だから手出しができなかった」
「全部で八人…ジェットコースターのレール上にいるのが厄介。そいつらから始末する必要がある」
「それで、パトロールを始末したあとはどうする?」
「カジノにいる市民を解放して、ホテル周辺を包囲させる。そのあと、あたしが突入する…そのとき、何人か兵を貸してほしい」
「さっきも言ったが、いまキャンプにいるのは新兵ばかりだ。あまり危険な真似はさせられない」
「突っ込みはあたしがやる。ただ、背中を守ってくれる兵が必要」
「…わかった」
「できれば今夜のうちにすべてを終わらせたい。危険な役はあたしが引き受ける、だから協力してほしい」
 狙撃ライフルを手にブレンダはテントを出る。
 彼女の去り際、ヘイズ少尉が決まりの悪そうな表情でつぶやいた。
「本来なら、見ず知らずの風来坊にこんな仕事は任せないのだが。NCRの沽券に関わる…だが、この状況ではそうも言ってられん。申し訳ないが、頼んだぞ」
「任せて」
 親指と人差し指を丸印にくっつけ、ブレンダはほんのわずかに笑みを浮かべる。







 闇に紛れ、ブレンダはプリム外周を素早く移動する。音もなく、気配を殺し。獲物に近づく肉食動物、雌豹のような動きで。
 記憶がないといっても、それはワシントンで命を落としてから今に至るまでの経緯だけだ。それに、過去身につけた戦闘技術…人を殺すための外道の法は、身体のほうが完璧に覚えていた。






 木陰に身を隠したブレンダは、幹にもたれかかるような姿勢で身体を固定し、高倍率スコープ越しに標的の姿を捉える。
 呼吸を整え、大きく息を吐き出し、スコープの十字線が標的の頭部に重なった瞬間、ゆっくりと引き金をひき絞った。














 キシュ…という、合金をハンマーで叩いたような銃声とともに大口径ライフル弾が射出され、火線の尾を引いた銃弾がギャングの側頭部を綺麗に貫通する。
 その成果にため息をついたり、見とれている暇はない。ブレンダは立て続けにレール上を巡回している二人のパトロールを始末し、地上のギャングたちに事態が悟られていないことを確信しながら素早くライフルを抱えて立ち上がる。






「ふっ!」
 アクロバティックな跳躍で柵を乗り越え、プリムに潜入したブレンダは老朽化した骨組みを登ってレール上に到達した。






 キシュッ、キシュッ、キシュッ!
 レールの上から、地上を巡回しているパトロールを次々に始末していく。
 殺人に躊躇はなかった。相手が悪人だから、というよりは、自分にとって邪魔な存在だったからだが、幸いなことに、そういう連中は決まって殺しても胸の痛まない悪党どもだった。
 これまでブレンダは白黒で割り切れない殺しはしたことがなかった。これからもそうであればいいのだが。
 残るパトロールは一人、崩れた建物の二階にいるやつだった。
 こいつの居場所だけは死角が多く、鉄柵の外やレールの上からでは狙うことができなかった。
 ブレンダがふたたび移動を開始するのと、そいつが仲間の死体を発見したのはほぼ同時だった。
「!!…いったい何が起きてやがる!?」
 いつの間にか仲間が惨殺されていた状況を前に、ギャングは混乱した頭で事態の把握を試みる。
 殺し屋か?狙撃兵か!?
 このまま通りへ出たら自分も殺られるのでは?
 なんとしてでも、ホテルにいる仲間へ連絡を…
 壁に立てかけてあった銃を掴み、ギャングはホテルの窓に狙いをつける。銃声が響き、攻撃を受けたとわかれば、少なくとも異常事があったことは伝わるはず…
 しかし彼が引き金にかけた指を完全にひくことはなかった。






 キシュッ!
 隣の建物の屋上へ上がっていたブレンダが、彼を狙撃したからである。
 頭部を撃ち抜かれた男はどうと音を立てて倒れ、どす黒い血を床に垂れ流す。
 これで外に出ていたギャングは全員始末したはずだった。ヘイズ少尉の情報が正しければ。
 もっともブレンダ自身、あの地図の情報を鵜呑みにしていたわけではなかった。時間の経過で配置が変わるのはまったく有り得ることだったからだ。
 だから彼女は移動するたび、暗視装置で周辺の状況を確認していた。ブレンダが身に着けていたのは生体電気を検知する特別なもので、レンズ越しの黒い視界のなかで人間を発見すると、発光する白い粒子が確認できる。それは壁越しでも同じことだ。
 そうした慎重な偵察行動を通して、ブレンダはパトロールの配置が地図で確認されたものとまったく変化がなかったことを知った。すくなくともプリム周辺に展開するパトロールは全滅した。
 そろそろ作戦を次の段階へ移行させなければならない。
 カジノに立て篭もっているプリム市民と接触し、今後の行動が円滑に進むよう説得する。
 ライフルを背負い、地上へと降りたブレンダはカジノ正面入り口の取っ手に触れる。
 …市民は武装している、と言ったっけ?
 扉を開けた途端に撃たれたら洒落にならないな、と思いながら、ブレンダはほんの少し考えこむ。ノックや声をかけたところで警戒されるのは変わらないだろうし、音を立ててホテルにいるギャングたちに存在を知られるのもまずい。
 けっきょくブレンダは何の策もなしに、ただ普通に扉を開けた。






 幸いにも、いきなり撃たれるようなことはなかった。銃口は向けられたが。
「お若いレディ、何の用かな?事と次第によっては、ただでは済まさんぞ」
「ねえジョンソン、この娘はギャングの仲間ではなさそうよ?」
 褐色肌の老夫婦を前に、ブレンダは口を開くよりも先にカジノ内を観察する。
 もともとプリムは大きな町ではないから、市民すべてを収容しても空間にはかなりの余裕があった。市民たちの顔色には多少の気疲れの様子が見えたものの、さほどに困窮しているわけでもなさそうだ。
 目前の老人を除いて、武装している市民の大半は見るからに銃の扱いが素人だった。だが、それでも窓や入り口に向けて銃を撃つだけなら事足りる。ギャングが手を出せないはずだ。
 ブレンダにリボルバーの銃口を向ける老人の正体が気にかかった。この町の有力者だろうか?
 金持ちには見えなかったが、無頼にも見えなかった。歳の割に背筋をピンと伸ばし、鋭い眼光を向けてはいるが、軍人や殺し屋のような、殺人を生業としている者ともまた違う雰囲気だ。
 最初の一言になんと言うべきかブレンダが迷っていたとき、ブルーのジャンプスーツを着た赤毛の少女が口を開いた。
「ねえじーちゃん、こいつ、キャリア・シックスと一緒にいた女じゃない?」
「!!」
 キャリア・シックス。
 少女のふてぶてしい態度と物言いはともかく、まさしく自分が追い求めていた名前が飛び出したことで、ブレンダは驚きに目を見開いた。
 キャリア・シックスと一緒にいた女?そう言ったか?
 この少女は、記憶を無くしている間の自分のことを知っているのか?
「そうかいエックス・テック、そういえばどこかで見たような顔だと思ったな。フム」
 ブレンダの動揺をよそに、一人納得した様子で銃を下ろすと、老人…モハビ・エクスプレスのニューベガス支店長、ジョンソン・ナッシュはブレンダを真っ直ぐに見据えて言った。
「事情を説明してくれるね?お若いレディ」





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 どうも、グレアムです。ひさびさニューベガス小説本編の再開です。ほぼ一年と四ヶ月ぶり。投げ出したわけじゃないのだよー!
 きたるべき盆休みで一気に話を進めるべく、前もって勘を取り戻しておくとかそういう感じで。画面写真撮影はわりとカンに頼っている部分が大きいので、一度勘が鈍ってしまうと手順を思い出すのに苦労するんですよ。

 作中の描写に関して。
 本来、サプレッサーを装着した火器はこんな派手にマズルフラッシュは噴かないんですが、これはまあ絵的な派手さを優先ということで。
 ちなみに作中で言う「殺しても胸の痛まない悪党」という表現はあくまでブレンダの主観です。
 最後のほうで登場したオリキャラの設定解説は一つか二つ後の話でやります。














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