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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2012/05/24 (Thu)18:48
「てやぁーっ!!」
 すでに荒廃し、本来の機能をうしなった砦の内部で、ちびのノルドのときの声がこだまする。



『グギェェエエエェェェェッ!』
「フッ、せやぁッ!」
 ガッ!
 かつてこの場所に駐屯していた兵士たちはとうの昔に退去し、いまではゴブリンやヴァンパイア、アンデッドの巣と化している。死霊術師や山賊など、非合法活動に携わる輩の拠点となっていることも多い。
「トウッ!」
『ブギェッ!?』
 ゴガッ!
 ちびのノルドの放った鋭い蹴りがゴブリンの延髄を強打し、ゴブリンは鼻から黄色い汁を噴出しながらぶっ倒れた。
「…ぷふーーーッ……」
 周囲に敵の姿がなくなったことを確認し、構えを崩さぬまま一息つくちびのノルド。



 もきゅもきゅもきゅ。
「けっきょく、ここにもなかったですねー…あ、この巨大ネズミの丸焼き、おいしい」
 数刻後…本来ならば、ここを根城にしていたゴブリンたちの夕食になるはずだったネズミの丸焼きをモリモリと食べながら、ちびのノルドはため息をついた。
 ちびのノルドはいま、とある婦人の依頼で「あるモノ」を探していた。
 幻の銘酒と言われるワイン、「シャドウ・バニッシュ」。その昔、砦を守る兵士のために錬金術師が生成したというそのワインは夜中に歩哨に立つ兵士の夜目を利かせ、また体温を効果的に高めてくれたという。
 現在では作られることなく、またその製造法も失われたシャドウ・バニッシュ・ワインは、いまとなってはかつて帝国軍が駐屯していたシロディール各地の砦にひっそりと残された少数が現存しているのみであるらしい。

 幾つかの破棄された砦を回るうち、ついにちびのノルドは「それ」を見つけた。
「これが、伝説のシャドウ・バニッシュ・ワイン…」
 鍵のかかったチェストから、2本の瓶を取り出すちびのノルド。薄汚れ、傷つき剥がれかけたラベルから、かすかに「シャドウ・バニッシュ」の文字が読み取れた。
 ワインの瓶を手に取りかけたそのとき、背後から何者かの声が聞こえてきた。



「ほう、それが、あの伝説のシャドウ・バニッシュ・ワインか…」
「…!?誰ですか!」
 ちびのノルドは警戒し、構えのポーズをとりながら振り返る。そこにいたのは、真紅のローブに身を包んだ謎の男だった。
 男の方は警戒するというより、むしろ興味津々といった表情でちびのノルドを見つめる。
「高額報酬につられていろんなヤツが探し回っているとは聞いたが、まさか貴様もとはな」
「…どこかで会いましたか?」
 どうやら以前ちびのノルドを見かけたことがあるらしい男の言動に、ちびのノルドは首をかしげる。
 スカイリムならいざ知らず、ここシロディールでは(まだ)あまり目立つような活動はしていない。そもそもちびのノルドにとって、この男に見覚えはないのだが…
 そんな心中を察してか、真紅のローブの男は不適な笑みを浮かべると、口を開いた。
「どうやら俺のことがわからないらしいな?まあ、無理もないが…」
 そう言って、男は掌を宙空に晒した。魔法の光が男の拳に集中する。
「……来るッ!?」
 ちびのノルドが警戒を一層強くしたとき、男が叫んだ。
「ハアァァァーーーッ…、カメン・ライド!」
「え…えぇッ!?」



 男を中心に赤い光が収束し、まばゆい閃光とともに男が戦闘装束を身に纏う。
 召喚装着されたデイドラの鎧、その姿にちびのノルドは見覚えがあった。
「あなたは…帝都に続く橋の上でわたしに襲いかかってきた自称暗殺者!?」
「自称じゃない!本当に暗殺者だ!だった…あのときまでは!だが皇帝暗殺に失敗し、さらに失態まで犯したうえ、おめおめと逃げ帰った俺を、組織は破門にしたんだ!いまじゃ立派な風来坊ってワケよ」
「いや立派かどうかは知りませんけど…ていうかアナタ、皇帝暗殺に関わった連中の一派なんですか?」
「マァそのへんの話はいいんだ。もう俺には関係ないし、口を滑らせたらいまからでも組織から追っ手がつきかねんしな」
「なんだかよくわかりませんが…」
「とにかく、いまの俺は根無し草、日銭を稼いで明日を凌ぐ傭兵家業よ。おまえと同じようにな…そのワインには莫大な賞金がかかってる、大人しく渡してもらうぜ!」
 クッ、面倒な…ちびのノルドは舌打ちした。
 このシャドウ・バニッシュ・ワインを6本持ち帰った者に、1000Gを支払うと依頼主は公言していた。この報酬はかなり高額である。そして告知は大々的に行なわれていたため、各地の冒険者がこぞって幻のワイン探しに躍起になっていることもまた、事実であった。
 競争相手がいることは認識していたが、それにしても厄介なのが来たな…と、ちびのノルドは一人ごちる。
「股間を蹴られた恨みはチャラにしても、こいつを譲ることはできんぜ。アタック・ライド、メイス!」
 ふたたび呪文を唱える真紅の暗殺者、その手に異界の物質で練成された禍々しいフォルムのメイスが握られる。
「素直に渡してくれたら、命だけは助けてやるが?」
「お断ります。1000Gは大金なので」
「それじゃあ死ぬしかないな!」
 そう言い、真紅の暗殺者はためらいもなくメイスを振りかぶる。しかし、徒手格闘の達人に接近戦闘を仕掛けるにしては、その動作はいささか隙がありすぎた。



「ジョニー直伝(ケイジの方の)、ダイヤモンド・クラッシャー!」
 キン☆
 金星。こ○ろぎさとみ似のアタックボイスとともに繰り出されたちびのノルドの爪先が、真紅の暗殺者の睾丸と菊門を同時に蹴り上げた。
「バイショオオオ!!」
 真紅の暗殺者が、意味はわからないが悲惨さだけはよく伝わる悲鳴を上げる。
「ちょっと出たぁぁぁーーーっ!!」
「え、なにが?ちょ、ウソ、ねぇ、なにが?」
 不穏な言動を口走る真紅の暗殺者に、ちびのノルドもいささかの動揺を隠せない。
 やがて「ズシン」という音を立てて昏倒した真紅の暗殺者を困惑の表情で見つめつつ、ちびのノルドは幻のワインを慌てて掴むと、すぐにその場を離れた。
「ワインはあと4本。他の連中より先に見つけないと…」



 そしてまた、別の砦にて。
「どーしてまたアナタがいるんですかっ!?」
「フハハハハ、貴様を追ってきたのよ!気絶したフリをしてな!まあしばらく気絶してたのはマジだがな!」
 ゾンビやゴーストといったアンデッドが巣食う砦の中で、ちびのノルドと真紅の暗殺者はふたたび鉢合わせていた。
「今度こそ遅れはとらんぞー!伝説のワインを先に見つけるのはこの俺よォーッ!」
「させません、させませんよ!むしろ、させませんぞぉっ!」
 そう叫び、徒競走よろしく駆け出した2人は、道中を阻むアンデッドの一群を容赦なく叩き潰していった。



「よぅし、見つけたぁッ!」
「ああぁっ、ズルイ!」
「宝探しにズルイもジャン・ルイもない。先に見つけたもん勝ちじゃあー!」
 水没したチェストの数々の中から、2本のシャドウ・バニッシュ・ワインを真紅の暗殺者が探し当てた。思わず歯噛みするちびのノルド。
「く、く、く、悔しいーっ!今度こそは!」
「無駄無駄無駄ァーッ!賞金はこの俺様のものよォーッ!」

 そんなんこんなんで、数々の砦を回り、立ち塞がるモンスターや競争相手の冒険者たちを薙ぎ倒し、押し潰し、粉砕したりしながら、2人は最後に潜った砦の最奥にて、同時に巨大なチェストの蓋に手をかけたのだった。
 互いに顔を見合わせ、絶対に譲らぬと闘気をみなぎらせる2人。
「…これはわたしのものです」
「いいや、俺のだね」
「譲れません」
「こっちだって」
「…うぅ~」
「…むぅ~」
 しばらく無言のまま睨みあう2人。やがて、どちらが先に行動を起こすでもなく、同時に蓋を開ける。
 ギイィィィ~……
 チェストの中には果たして、シャドウ・バニッシュ・ワインが収められていた。
「あの、ですね」
 そのとき、ちびのノルドがやや言いにくそうに口を開いた。
「提案が、あるんですけど。わたしとアナタで、いま、2本づつ持ってるじゃないですか。ここにある2本を合わせれば、ちょうど6本になるんですよね」
「う、うむ」
「ここまで来れたのって、その、なんというか、なんだかんだいって、2人一緒だったからだと、思うんですよ。だからその、2人で6本持っていって、500Gづつ報酬を分け合うっていうのは、その、うん、え~っと…どう、でしょう?」
「う~む…」
「ぇ、だ、だ、駄目ですか?そうなると、どっちかが、どっちかのワインを奪うために殺し合うっていうのが合理的ってハナシになりますよね。い、いや、勿論、わたしも傭兵ですから?そういうのがはじめてってわけじゃ、ないですよ?でも無駄な殺し合いはしたくない、っていうか、アナタとは本気で殺し合いたくない、っていうか。い、い、い、いや、ですから、その、ですね?」
「ああ、いや、提案はいいんだけどさ」
「な、なんですか、他になにか案でもあるんですか。わたし、いま、真面目な話をしてるんですよ?ちょっとは真剣に聞いてくれたって…」
「いやいやいや、その、あのな?」
 どもりながら、まるで初恋相手に告白する生娘みたいな態度で喋るちびのノルドに対して、真紅の暗殺者はただ、ぽつんと、こう言った。
「ワイン、3本あるんだが。この中に」
「え?」
「そのな、2人の分合わせるとな、1本余るんだよ」
「え~と…つまり……」
「ここで1本空けても、文句言うやつはいないってことだろ?依頼主含め」
 その言葉は、つまりちびのノルドの提案を受け入れることを意味していた。



「伝説のワインのテイスティングとか、胸がドキドキしますね」
「いやー、役得ってあるもんだな」
 巨大なチェストに腰かけ、互いにワインを注いだグラスを手に乾杯をする。
 年代モノのワインを口にしたちびのノルドは、その独特な風味に顔をしかめた。
「…あんまりおいしくない」
「そーだろ、そーだろ。この味はお子様にゃあわかるまいよ」
「こ、子供じゃないですよ!?剃ってるだけですからね!?」
「酔ってんのか。そこまで言ってねえし聞いてねえ」
 緊張も解け、和気藹々と談笑しながらワインを1瓶空けた2人は、シャドウ・バニッシュ・ワインが6本詰まったザックを手に、依頼主のもとへ向かうべく、月明かりがまぶしい寒空の下を肩を並べて歩くのだった。



「いやー、まさか本当にこの目でシャドウ・バニッシュ・ワインを見ることができるとは思わなかったわ!もう最高、感動的だわ!これは約束の1000Gよ」
 帝都から西へ少し移動した場所にある旅の宿ワネット亭にて。
 ハイエルフの女主人ナルッサは、やけに甲高いハスキーボイスで歓待の声を上げた。彼女はシルディールでも有数のワイン・コレクターとして知られているが、お世辞にも大金が稼げるわけでもない宿のオーナー職が、どうしてワインのために1000Gもの大金をポンと支払うことができるのかはちょっとした謎だった。
「ま、俺たちコンビにかかりゃあ、こんなもんだぜ」
「今後、あえて手を組もうとは思いませんけどね。今回だって偶然の産物みたいなもんですし」
「う~ん、まあ、パートナーにするんだったらもちっと女性的魅力に溢れたレディじゃないとな」
「だから子供扱いはやめてくださいってば!これでも胸はそれなりにあるんですよ!?」
「あらまあ、仲の良いこと」
 2人のやり取りを聞いて、オホホ、と上品な笑い声を上げるナルッサ。
「あなたたちなら、シロディールにまだまだ隠されているシャドウ・バニッシュ・ワインを探し出してくれそうね。もしまた見つけてくれたら、そのときは1本100Gで買い取ってあげるわよ」
「「え?」」
 ナルッサの提案を聞いて、2人はその場に凍りついた。
 100Gといえば、1000Gには及ばないものの、それはそれで結構な額である。ブランドもののヴィンテージ・ワインですら足元にも及ばない値段だ。つまり、それだけの額を支払う価値が、あのワインにはあるということで…
 不穏な空気を察したのか、ナルッサがその温和な表情を般若のような鬼面に変貌させていく。
「…まさか、飲んだりしてないわよね?」
「え?いや…」
「6本だけあればいいとか思って、余分に見つけたワインを飲んだりしてないわよね?希少価値の高い、それはもう世界一入手困難なシャドウ・バニッシュ・ワインを、専門家の監督下でもない環境で飲んだりなんかしてないわよね?」
 そんなことは神に対する冒涜ですものね?と付け加え、ナルッサは殺気がバリバリみなぎる笑顔で2人を見つめる。その様相たるや、見た者を石に変えるゴーゴンそのものであった。
「イヤー、マサカ、ソンナコトアルワケナイジャナイデスカー。アハハ」
「そう、なら、いいんだけど…もしまた見つけてくれたら、そのときは私のところに持ってきてくれるわよね?」
「ハ、ハ、ハイ、モチロンデストモ。マダム」
 2人はそれだけ言うと、ゼンマイ仕掛けの人形のようにギギギ、とぎこちない動作で方向転換し、ワネット亭を後にした。
 外に出て、ナルッサの姿が見えないことを確認し、互いに顔を見合わせる2人。
「…おれ、しーらねっ!」
 そう言って、真紅の暗殺者は一目散に駆け出した。
「あ、あぁ~っ、ちょっとぉ!待ってくださいよぉっ!」
 ちびのノルドはその後を追おうとし…その場に、盛大にコケた。

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