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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)07:33
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2012/05/09 (Wed)12:37
 帝都の北東、監獄へと続く下水道入り口からほど近い位置にある脇穴洞窟に身を隠してから、もう3日も経つだろうか。
 冷たい石床に横たわるオーガ亜種の亡骸から短刀を抜くと、ブラック17はその場に腰を落ち着けた。



『元気そうだな。暗いところは落ち着くか?』
「日なたに身を晒せる身分でもないでしょうに。随分と遅かったわね」
 ブラック17が通信支援用の水晶を取り出すと、視界の右上にブラック16の姿がノイズ交じりに表示された。サングラスの奥の冷たい瞳と、口元に浮かべた微笑のアンバランス加減が絶妙な胡散臭さを演出している。
『ようやく活動方針が決まったのでね。そちらは大事ないかね?』
「低脳なバケモノどもを幾ら殺しても感慨が沸かないわ。はやく任務に就きたいのだけれど」
 そう言って、ブラック17はオーガ亜種の亡骸を一瞥した。
 次の指令が来るまでに身を隠すための場所として選んだこの洞窟はモンスターの住処となっており、最初は身の安全の確保のために排除していたが、1日、2日と経つにつれ、ブラック17は憂さ晴らしを兼ねて必要以上にモンスターを殺しはじめていた。
 それは本来まったく必要性のない、たんなる「余興」以上のなにものでもない行為だった。
 もっとも、指令が来たとなれば…いつまでも、こんな場所にいる理由はない。ブラック17は洞窟から出ると、ひさしぶりの外の風景を前に目を細めた。義眼の光量自動調節機能が作動するとともに、各種ステータスウィンドウが展開する。



『さて…先の皇帝暗殺失敗と、こちらの任務に干渉してきた謎の組織への対処を協議した結果、君にはひとまず現地の暗殺ギルドに協力してもらうことになった』
「へぇ。共同任務?」
『いや、違う。我々と彼等の活動内容は、基本的には無関係だ。我々の活動は秘匿性が極めて高いため、他の組織と任務上関わることはまずない。しかし我々の組織の<この世界>に関する知識は発展途上で、おまけに現地工作要員も不足しているというのが現状なのだ』
「つまり例の、謎の組織の情報を得るために彼等に協力しろってこと?」
『身も蓋もなく言えばそうなる。彼等ダーク・ブラザーフッドはこの世界の情報に通じている、表にも…裏にも、な。これは単純なギヴ&テイクだ』
「…わたしの活動方針は?黒の里はなんと」
『基本的には彼等に従え、だ。無理難題を押し付けられるかもしれないが、ブラザーフッドも黒の里の実力は認識しているだろう。待遇そのものは悪くないはずだ…仔細は自己判断で対処してくれ』
「了解。それで、彼等とはどう接触すればいいのかしら?」
『君は帝都に向かってくれ。じきにブラザーフッドのエージェントが接触に来るはずだ』
「帝都、ね。賑やかな場所に行くのは久しぶりだわ」
『その通りだな。だから任務用の黒装束ではなく、ちゃんと身なりを整えて行くことだ。くれぐれもな』
「了解」
 ブラック17が気のない返事をすると同時に、手の内の通信水晶がパキンと音を立てて砕けた。
 身なりを整えて…とはいうものの、ブラック17は代わりの着替えも、ましてこの国の通貨も何一つ所持していない。
 さて、どうしたものか…思案に暮れるブラック17がふと街道沿いに目をやると、そこには丁度商隊キャラバンが通りがかったところだった。

「部屋をお借りしたいのだけれど、宜しいかしら?」



 夕刻過ぎ。
 帝都タロス広場地区の高級宿タイバー・セプティム・ホテルにて、義眼をアイパッチで隠した瀟洒な身なりのブラック17が受付に立っていた。オーナーのアウグスタ・カリディアが笑顔で迎える。
「あらまあ、旅のお方ですか?冒険者には見えないし、付き人の姿も見えないけれど」
「じつはお忍び旅行中なのよ。ここはシロディールでもっとも評判の良いホテルだと聞いたけど」
「貴族のご令嬢かしら?いやぁね、私ったら。詮索は良くないわね?この宿を選んでくださったことには感謝していますわ。あまり他所様の悪口を言うつもりはありませんけど、その、なんというか、衛生にあまり気を使っていないところも多いですから」
 部屋は2階ホール西端です、と言ったアウグスタから鍵を受け取り、「どうぞごゆっくり」という声を背にブラック17は階段を上がっていく。こういう文化的な場所で時間を過ごすのはひさしぶりだ、と思いながら。

 夜も更けた頃、全身を漆黒のローブで包んだ男がブラック17の滞在する部屋の扉の前に立っていた。複雑な構造の鍵を魔法で難なく開けてから、静かに戸を開ける。
「レディの部屋に入るときは、ノックくらいして欲しいものね」
「これは失礼を。随分と夜遅くまで起きているのですな?」
 男の前に、ベッドに腰かけ物思いに耽っていた様子のブラック17の姿があった。口ほどには不意の侵入を気にかけていないようで、たいして興味もなさそうな眼差しで男を一瞥する。



「ほとんど睡眠を必要としないよう訓練されているから。貴方が例のエージェント?」
「申し遅れました。私の名はルシエン・ラチャンス、ダーク・ブラザーフッドの<伝えし者>です」
「伝えし者?」
「我々ダークブラザーフッドは夜母ナイト・マザーを筆頭に、ブラックハンドと呼ばれる6人の幹部と下級構成員から成り立っています。そして伝えし者は6人いるブラックハンドの内の5人を指し、私はその中の1人ということです」
「なるほど、上級構成員というわけね。まあ、わたしは貴方の組織と深く関わるつもりはないから、これ以上の詮索は控えるけど。わたしのことはどこまでご存知?」
「我々とは異なる大陸で活動する伝説的な暗殺者集団である黒の里の殺し屋、その中でも1人で小国の軍隊に匹敵する戦力を有するブラック・ナンバーの17番目。そのように窺っておりますが」
「グッド。これでお互いに最低限の認識はできたわけね」
「あくまでビジネスの上での関係、というわけですな。宜しい、ここで両者の立場を明確にしておきましょう。貴女方は皇帝を暗殺した謎の組織の情報を求めており、こちらはそれに関して調査を進める用意がある。言うまでもなく皇帝を暗殺したのは我々ではありません、そのような説を唱える者も巷にはいるようですがね」
「もしそうなら、手間が省けるのだけれどね」
「…ご冗談を」
 ちょっとした呟きのあと、ブラック17から一瞬だけ発せられた凄まじいまでの殺気を察知し、ルシエンは本能的に緊張し、身を固くする。
「ついては、謎の組織の調査にこちらの人員が割かれることにより、本来の業務に滞りが生じます。その穴を貴女に埋めていただきます、これは公正な取り引きと判断して宜しいでしょうね?」
「結構よ」

 宵闇に紛れ、闇が疾駆する。
 戦闘装束に着替えたブラック17は、帝都とブラヴィルを繋ぐグリーン・ロードの中間点に位置する旅の宿イル・オーメンの地下室に侵入していた。
 施錠された扉を開け、ベッドの上で眠る老人へと近づく。



 この老人の名はルフィオ、今回の任務の標的…暗殺対象だ。
 この男が死ぬことにどんな謂れがあるのか、この男はいかなる罪を犯したのか、依頼人の心情は…そんなことは、ブラック17にとってなんの関係もないことだった。ただ殺すこと、それが彼女の成すべきことであり、そしてそれが彼女にとって至上の喜びでもあった。
「さようなら、ルフィオ」
 ブラック17は微笑を浮かべると、銀光を放つ小太刀の刃先をルフィオの首筋に走らせた。

「いま、なにか物音がしたような…」
 イル・オーメンの主人マンハイム・モールハンドは、地下の私室へと続く戸を見つめながら、訝しげに呟いた。
「気のせいか?」
 そう言って踵を返したその背後に、ブラック17の姿があった。



 素早い動作でマンハイムの口元をおさえ、心臓に刃を突き立てる。声にならない悲鳴を上げ、マンハイムはその場に倒れた。
「いったい、なんの騒ぎ…お、おい、なんだ貴様は!?」
 それまでワインで満たされたタンカードを片手に客人と談笑していた男が、鋭い語調で怒鳴った。ブラック17の姿を認めると同時に、傍らに立て掛けてあった弓に手を伸ばす。
 私服姿なので気がつかなかったが、この男はどうやらただの一般客ではないらしい。帝国軍所属の森林警備員だ…通常、いかなる犯罪組織の構成員も帝国軍所属の兵士には手を出さない。それだけで立場が危うくなるからだ。
 しかしブラック17はマンハイムから手を離すと同時にその場から飛び退き、小太刀を森林警備員の心臓目掛けて投げつけた。



「ぐおっ…!?」
 そのままブラック17は歩を進め、苦悶の呻き声を上げる森林警備員の胸に刺さった小太刀を抜くと、逆手に持ちかえて森林警備員の首を掻き切った。とどめの一撃だ。
「きゃーーーっ、きゃーーーっ、きゃーーーっ!!」
 一連の様子を目撃し、パニックのあまり悲鳴を上げる女性客を、ブラック17は容赦なく斬り捨てた。
 すでに生きている者が存在しなくなったイル・オーメン亭をあとに、ブラック17が歓喜のため息を漏らす。
「デモンストレーションには丁度良いかもしれないわね」
 そう呟くブラック17の全身を漆黒のオーラが覆うと同時に、大気が悲鳴を上げはじめる。空が紅く染まり、戦槌を叩きつけたような轟音が続けざまに鳴り響く。



 ブラック17はイル・オーメン亭を一瞥すると、すっと腕を伸ばし、掌を建物に向かってかざした。そして、力を解放するキーコードを口にする。
「ヘルブレイズ・インフェルノ(覚醒せし煉獄の業火)」
 ブラック17の腕の中で一連の術式が作動し、閃光があたりを包んだ。

「これを、貴女がやったのかね?」
 翌朝。
 現場検証も兼ねたデブリーフィングのために、ブラック17はルシエンとともにふたたびイル・オーメン亭を訪れていた。跡地、とつけ加えたほうがいいかもしれない。建物は廃墟と化し、焼け焦げばらばらになった死骸が無残に散乱している。



「予想以上だよ。予想外、と言ったほうがいいかもしれない。あるいは、予想のナナメ上の結果だと」
「不服かしら?」
「控え目に言って、これはやり過ぎだ」
「ターゲットを確実に抹殺し、証拠も証人も残さない。なにが不満なの?」
「今回の依頼は、標的が死んだことが公に知られることが重要だったんだ。死体を目撃し、公的機関に知らせる者の存在がね。これでは誰が死んだのかすらわからないではないか」
「オプションつきなら最初から言って欲しいものだわ。徹底殲滅が黒の里の基本的方針だと知らなかったの?」
「…どうやら初動の段階で認識にズレがあったようだ。留意しよう」
 それだけ言うと、2人は今後の活動について話し合うためにその場を離れた。都市部から離れた場所とはいえ、そろそろ帝国軍の巡察警備がこのあたりを通りがかってもおかしくはない。
 それにしても。
 まるで悪びれた素振りを見せないブラック17の態度に、ルシエンはため息をついた。
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無題
クール&ビューティーやないか!!!!ブラック17様(*'-')

惚れてまうやろー!!!!(笑)

しかしマンハイムさん、顔からしてヤラレ役全開なのが妙にツボに入りましたねwww
あ、ヤラレた・・・・と
セブン@ハードボイルど 2012/05/15(Tue)01:37 編集
無題
自分のキャラを褒めていただき恐悦至極!
まぁ俺ツエーキャラなんで原作ファンからすれば微妙な存在だとは思いますが…
そこいらへんは原作とは違った角度からのアプローチでシナリオ書くことで緩和できたらなーと思っております。

じつはマンハイム氏にはちょっとした裏話がありまして。
エプロン姿のこの中年紳士、なんの変哲もない善良な宿屋のオヤジなんですけどね。
最初に遭遇したとき、この御仁、ズボン穿いてなかったんですよ。
ヌードMOD入れてたおかげでケツ丸出し。正面から見ても気づかなくて、背後からプリケツ見てようやくわかりました。

たぶんバグだと思いますが(キャラを初期状態に戻したらキチンと穿いてました)、深夜にこういう不意打ちはやめてほしいもんです。
裸エプロンとまではいかずとも、このさりげない自己主張は妙にツボにハマりました。
まあ殺しましたけどね。
グレアム@狂うビューティー 2012/05/15(Tue)12:57 編集
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