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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2014/10/13 (Mon)22:04

「俺の名はクレイブ、傭兵だ。今日もウェイストランドでの旅がはじまる…」



  **  **  **  **



 荒涼とした街路地に、累々と死体が横たわっている。
 ペンシルバニア通り、ホワイトハウス前。
 バリケードが張り巡らされ、かつて国政の中枢だった爆心地への侵入を防がんと積み上げられた土嚢の影にはスティール隊員の亡骸が残っている。その目前、旧時代の戦争で大穴が穿たれた道路には巨像の如き強靭な肌を持つスーパーミュータントの死体が散乱していた。



「ひどいざまだな、兄弟」
 先刻まで激しい戦闘が繰り広げられていたらしい、硝煙の残り香を放つ薬莢を蹴飛ばしながら、俺は金属製のボックスに所在無く腰掛けるスティール隊員に話しかけた。
 疲れきった様子の隊員はしばらく俺を見つめてから、まるで期待していないような素振りで口を開く。
「あんた…援軍かい?」
「残念だが違う、上からの勅命でね。新設されたエンクレイブの基地に潜入するため、大統領専用の…古い政府のな…メトロを使いたい。場所はわかるか?」
「ああ、あんたがトリスタンから連絡のあった傭兵か。そこのマンホールからホワイトハウスの地下トンネルへ入れる、大統領専用メトロに繋がっているはずだ。幸運を祈るよ…他に頼れるものなんか、ないだろうからな」
「…ここの状況は酷いみたいだな?」
「俺以外の隊員は全滅した。指揮官も、仲間も。だのに物資の補給も、補充兵が来る様子もない。忘れられちまったんだろう、いまはエンクレイブ狩りがトレンドだからな。スーパーミュータントの脅威なんか過去の話ってわけだ、まだそこいら中にいるってのに」
 なにもかも諦めきった口調で話す隊員に気の利いた台詞の一つでも言いたかったが、今の俺にできることはなにもなかった。
 スティールは明らかに手を広げすぎている。拡大する戦線に人員も物資も追いついていないのだ、だがそれを改める気はないらしい。大義はときに目を曇らせる、だから俺は政治信条など信用しない。
 孤独なソルジャーに背を向け、俺はマンホールの蓋を開けると、薄暗い閉鎖空間へと身を落とした。



  **  **  **  **



 ガガガガガガッ、ガシャン!
『俺の亡骸は故郷の土に埋めてくれ…』



「まだセキュリティが生きていたとはな。厄介なことになりそうだ」
 Mr.ガニーことMr.ガッツィーに中国製の弾丸を浴びせた俺は、ガチャリと弾帯を揺らしながら周囲の様子を窺う。
 旧世紀のセキュリティ・ロボットに守られた地下施設の中で、俺は未だに色褪せぬメッキの光を放つトマス・ジェファーソンの銅像を見つめながら、複雑なため息をついた。
 テスラコイル回収後、俺がスティールのパラディン・トリスタンから新たに命ぜられたのは、エンクレイブの第二の拠点アダムス空軍基地への潜入。
 アンカレッジ記念館前の下水溝からジョージ・タウンを経由し、ホワイトハウスの地下くんだりまでやって来たのは、他に安全なルートがなかったからである。単独でのステルス・ミッションゆえ、エンクレイブから接収したベルチバートを使うこともできなかった。
「部隊の大部分を陽動作戦に導入するとか言ってたが、大丈夫なんだろうな…?」
 エンクレイブの拠点の位置割り出しと潜入ルートの特定は、以前ロックランドの通信施設から得た情報によるものである。テスラコイルをスティールの要塞の届けたとき、暗号解析が終了し潜入作戦の算段が整ったことを聞かされた俺は、そのまま休む間もなくこんな場所まで向かわされたわけだ。
「愚痴はほどほどにして、ゆっくり休むのは全てが終わってからにするか」
 前向きに考えよう。
 あまり役に立たない自己暗示をかけながら、俺は旧世紀の死体が散乱する通路を通り抜けた。
 幾つかのフロアを経由し辿りついたのは、M.A.R.Go.T.(マーゴット)と呼ばれる、人工知能を搭載したセキュリティの中枢端末だった。
『ただいま当施設は厳戒体制下にあります。端末の利用に際してはセネター・クラスのIDの提示を願います』
「IDね…こいつでどうかな?」
 俺は道中で見つけた上院議員のものと思われる死体から取ったIDカードをM.A.R.Go.T.の視覚センサーに提示してみせる。
「個人的には、対話形式よりもコンソールを使うほうが好みなんだけどな。現在のメトロの利用状況を教えてくれ」
『貴君のIDを承認しました。現在メトロ構内に多数の不審人物が侵入しており、セキュリティ・ユニットが対処に当たっています。すべての路線はステータス・グリーン確認後に再開される予定です』
「路線は再開予定…ってことは、いまは閉鎖されてるってことか。アダムス空軍基地に繋がる路線だけ、管理者権限を使って特例で稼働させることはできないかな?」
『不可能です。現在、アダムス空軍基地行きの路線は電源ボックスの不備により再開することができません。ステータス・グリーン確認後にセンチネル・ユニットが修理予定です』
「参ったな。てことは、例の不審者を排除しない限り電車を走らせることはできないわけだ。で、その不審者の特徴は?」
『各種センサーによる情報を統合したところ、対象はいずれも人型でありながら体温では検知できず、さらに致死量の放射線を帯びていると予測されます』
「…体温を検知できない、だって?」
 てっきりメトロ構内を徘徊する不審者はエンクレイブ・ソルジャーだとばかり思っていた俺は、M.A.R.Go.T.の意外な返答に困惑してしまった。
 ひょっとして、エンクレイブ製のパワーアーマーが体温の放射を遮っているのか?
 そう思った俺はしかし、それでは「致死量の放射線を帯びている」という点に説明がつかないことに気づき、ようやく不審者の正体を察することができた。
「まさか…フェラル・グールか!」
『そのような単語は私のメモリ・バンク内には存在しません』
 M.A.R.Go.T.は戦前に作られたAIで、まして閉鎖的な環境で稼働し続けていたため、フェラル・グールの存在を知らなくても無理はない。
「なるほど、あいつら地下鉄大好きだもんなぁ。わかった、連中を掃除すればいいんだな?おっと、セキュリティ・システムの攻撃対象から俺を外しておいてくれよ」
『了解、貴君の外観的特長を全セキュリティ・ユニットに送信しました。よい一日を』



  **  **  **  **





「しかし、あいつ…どことなく、エデン大統領とおなじZAXシステムに似てる気がするんだよなぁ」
 M.A.R.Go.T.から離れた俺は、どうやら相打ちとなったらしいセキュリトロンのスクラップとフェラル・グールの死骸を見つめながら、そんなことをつぶやいた。
 メトロ構内のグール狩りはそれほど難しいものではなかった。
 セキュリティ・ロボットたちが手こずっていたのは小回りがきかないからだが、ひとたび銃声が聞こえれば機敏に対処することができるため、俺は機械が見つけにくい場所に隠れているやつを探し出せば、あとは血の気の多いMr.ガッツィーが過剰な武装で処理してくれるといった按配だ。
 やがて何十年かぶりに構内の安全を確認したセキュリティ・システムの命令によりセンチネル・ユニットが破損した電源ユニットを修理し、地下鉄にふたたび命が吹き込まれた。
「どうやら電源ユニットの破損は経年劣化や流れ弾とかじゃあなく、人為的な工作跡があったな。グールの爪跡なんかじゃあない、あれに限ってはエンクレイブの仕業…だろうな」
 地下鉄に乗車し、走行中に他の路線から流れてきたらしいフェラル・グールの大群とセキュリティ・ロボットたちの交戦を眺めながら、俺はそんなことをつぶやいた。
 拠点とD.C.を繋ぐ交通網だ、まさかエンクレイブがこの施設の存在を把握していないはずがない。
 エンクレイブの主要な移動手段はベルチバードだ、地上の交通ルートを潰しても問題はない、という思惑だろう。もっとも暗号化された情報が奪われ解析される可能性はほとんどないと考えていたのか、スティールが侵入に使うという懸念については大した対策はされていないようだ。



「それで、万一のことを考えての監視には最低限の人員しか配置されてないわけだ」
 たいして警戒している素振りも見せないエンクレイブ・ソルジャーを壁越しに発見した俺は、コンバット・ショットガンの銃口を持ち上げ発砲のタイミングを計る。
 こんな場所に人数を割くわけにいかないのはわかるが、俺だったら天井を爆破なりして侵入路を完全に塞いじまうけどな…などと考えてみるものの、万一のことを考えて施設を稼動状態のまま保っておきたかったのかもしれない。
「判断ミスとまでは言わないが、俺が相手では不幸だったな」
 V.A.T.S.起動、リフレクス・エンハンサーとグリムリーパー・スプリント・プログラムの出力を最大設定。
 壁から飛び出した俺は、まず一人目の股関節…パワーアーマーが保護しきれない部位にスラッグ弾を叩き込む。内股の動脈が破裂し、おびただしい出血とともに相手はもんどりうって倒れる。続けて、慌てて銃を構えた兵士の指を弾き飛ばし、宙空に舞う大口径拳銃を視界の隅に捉えながら首を狙い撃った。
 ゆっくり流れていた時間がふたたび元の速度を取り戻し、首が吹き飛ばされた死体と、脚の付け根から大量の血を流し床をのたうち回りながら悲鳴を上げる兵士を眼下に捉える。
 急所っていうのはなにも、即死部位だけを指すものじゃない。動脈を破壊すれば、たいていの人間は助からないものだ。首だろうが、脇だろうが、内腿だろうが、それは変わらない。
 いますぐ適切な治療をすれば助かるだろう。だが、そんな手段はこの荒廃世界にはもう残されていない。
「No, no, no... Sorry, sorry... 」
 こういうときに苦痛から解放してやるのは、傭兵にとっての義務のようなものであり、また、兵士への敬意を示すものでもある。
 俺はかぶりを振り、12ゲージの巨大な銃口をエンクレイブ・ソルジャーのこめかみに突きつけると、引き金をひいた。



  **  **  **  **





 地下施設から這い出たとき、最初に聞こえてきたのはベルチバートの飛行音だった。
「元気だねぇー…まだあんな余力が残ってたのかい」
 アダムス空軍基地には多数のベルチバードが駐留し、施設全体にやけくそのような数の無人タレットが配置されている。
「まずはあれを潰すか」



 俺は狙撃用ライフルを取り出すと、一つ、また一つと高火力無人タレットを潰していく。
 おそらく施設を探して回れば制御用のコンソールが見つかるはずだが、どこにあるか検討もつかない代物をアテにする気はない。それに、呑気に探し物ができるほどエンクレイブ製タレットのセンサーは鈍臭くはない。
 そして俺が狙撃をはじめたのとほぼ同時に、どこからか飛来したベルチバードが施設の攻撃をはじめた。
 あれはスティールが鹵獲したもので、はじめはエンクレイブの連中も戸惑っていたが、すぐに攻撃の正体を察知すると、反撃をはじめた。
 先の攻撃は、俺がアダムス空軍基地に到着してすぐに作動させたビーコンを合図に行なわれたものだ。もちろん、ビーコンが発した信号を傍受され侵入が察知される可能性もある。それをスティールの陽動攻撃が覆い隠してくれるといいのだが。
 無人タレットを始末し、居住区域への侵入は不可能だと判断した俺は倉庫のような場所へ入る。
「…!?お、おまえは!?」
 そのとき、俺の姿を見て狼狽した何者か…おそらくエンクレイブ所属の研究者だろう…白の防護スーツに身を包んだ男が慌てて警報装置を鳴らそうとする。
 しかし…ビシュッ!



「う、うわあああああ!」
 サプレッサーを装着したサブマシンガンの掃射で腕を切断され、エンクレイブの研究員が悲鳴を上げる。
「あまり騒ぐな、俺は無用な殺しをしたいわけじゃない」
「くっ、畜生!」
 俺の警告を無視するかのように、男は左手で自衛用のイオン・ピストルを抜こうとする。
 パキャッ!
 その手がピストルのグリップに触れる間もなく、俺の手のなかでサブマシンガンが震えた。
 頭部を砕かれた男の死体を跨ぎ、俺は階段を上がって倉庫内の様子を一望する。



「これは…デスクローの飼育施設か」
 バケツに雑多に押し込められた餌用の生肉…何の肉かは考えないでおこう…の放つ異臭に顔をしかめながら、俺は電磁シールドで覆われた檻を見下ろす。
 試作型のスクランブラーはまだ手元にある、が先例にある通りこいつらを放したとして物の役に立つとは思えない。なによりスクランブラーは俺の身の安全を保障するものではないのだ。
 ひとまずデスクローは無視するとして、俺は先を急ぐことにした。
 やがて日が落ち、俺は未だに続くスティールとエンクレイブの攻防を遠目に歩を進める。



「あれか…」
 巨大な電磁シールド越しに見つけた、最終的な潜入目標。
 ベルチバードによる攻撃にもビクともせず、その威容を見せつける巨大施設。
 エンクレイブ最後の砦、移動要塞クローラー。






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