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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/20 (Sat)08:52
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2014/10/15 (Wed)00:53

「俺の名はクレイブ、傭兵だ。物語が終わっても時間の流れが止まることはない、当たり前のことだが人々はみなそのことを忘れがちだ。めでたし、めでたしで締めくくっても結局それは自己完結に過ぎない。大きな流れの中の小さな節目に過ぎないのだ、今回も。そして、あのときも…」



  **  **  **  **





 夜明けとともにスティールの急襲部隊と合流した俺は、隊員の一人が持っていた奇怪な武器に目を留めた。
「バズーカかなにかか?」
「ああ傭兵、丁度良いときに来た。パラディン・トリスタンから、こいつをあんたに渡すよう言われていた」
 そう言って、パワーアーマーに身を包んだ隊員はロケットランチャーにも似た巨大な円筒形の光学兵器を俺に差し出す。
 クロームメッキ加工され、朝日を受けて輝くその新兵器はついさっき、ベルチバードをものの数撃で叩き落した凄まじい性能を有している。たったの一発でカートリッジを交換しなければならないほどに多量のエネルギーを必要とするが、その変換効率は高く、通常の光学兵器ではカートリッジすべてのエネルギーを使ったとしてこの兵器一発分の威力の足元にも及ばないだろう。
 これが以前、クレイブがオルニー発電施設から回収したテスラ・コイルをもとに急造されたスティールの最終兵器。
「テスラ・キャノン、か…俺、光学兵器はあまり好きじゃないんだけどねぇ」
「不服なら返してくれ。みんな使いたがってるんだぜ、そいつは」
「そりゃあ、ミッキー・マウスのオナホールが出たら誰だって一度は試してみたいもんさ」
 下劣かつ不可解なジョークに、隊員が絶句する。
 しかしそれに対するフォローはせず、俺は航空管制塔へと向かった。



「改めて全景を見ると、まあしかしリバティ・プライムとどっこいのトンデモ兵器だな、こいつは」
 エンクレイブのとっておきの秘密兵器、移動要塞クローラー。
 軍事衛星との通信に用いる巨大なパラボラアンテナをトレードマークに、漆黒のパワーアーマーに身を包んだ兵士たちが給水塔や無人タレットの周囲を所狭しと動き回っている。ガスタンクも併設されているところを見ると、外部からの補給を受けなくても長期間施設内で生活できるよう設計されているようだ。
 クローラーへの侵入路は限られている。
 ベルチバードを使った空挺降下も不可能ではないが、それをもっとも懸念しているエンクレイブはばっちりと対策を立てているはずだ。周到に用意された対空火器によって、近づいただけで叩き落されるだろう。
 ロックランド基地から持ち帰り解析した情報をもとにパラディン・トリスタンが発案したのは、航空管制塔からクローラーのコントロール・システムにインタラクトし、乗降用のタラップを降ろすことだ。俺もそれに賛成した。
 航空管制塔からはすでに人員が出払っているようで、無人の施設内をしかし警戒しながら俺は進んでいく。
 コントロール・ルームに到着した俺は端末を操作し、クローラーへの侵入路が確保できたことを確認する。
 最後の防衛戦を展開すべく、すべての人員をクローラーに収容したエンクレイブはすぐにそれとは気づかないはずだが、それも時間の問題だ。俺はすぐに航空管制塔を飛び出し、クローラーに向かって駆け出した。
 ある程度近づいたところでクローラーが急遽移動をはじめ、さらにタラップが格納されていく。
「くそ、気づかれたか!」
 俺はほとんど無意識のうちに膝をつき、テスラ・キャノンをクローラーの脚であるキャタピラに向かって撃ち放した。



 バシュウゥゥゥッ、ズアッ!
 凄まじい量のエネルギー放射とともにカートリッジがはじき飛ばされ、履帯とともに破損したギアが轟音を立てて地面を転がり落ちる。
「なるほど、凄ぇ威力だ。多少の足止めはできるわけだな」
 ふたたび駆け出し、俺は半ばまで格納されつつあったタラップに向かって飛び込む。どうにかして手摺を掴むことに成功した俺はそのまま無理矢理よじのぼり、入り口のドアに手をかけた。



  **  **  **  **



 クローラーへの侵入に成功した俺はテスラ・キャノンのエネルギー・カートリッジを交換し、壁面に埋め込まれていたコントロール・パネルを操作して施設内の電磁シールドを解除する。
「「「侵入者だ!」」」
 シールド解除とほぼ同じタイミングで警報装置が作動し、重武装のエンクレイブ・ソルジャーたちがなだれこんでくる。
「おいおい、こいつは単発式なんだぜ。いくら威力があるからって、数は捌けねーぞ」
 俺はひとまず先陣切って向かってきた兵士にテスラ・キャノンをぶちこみ、再装填はせずその場に放り出すと、軍用バヨネットをシースから数本引き抜き、パワーアーマーの装甲目掛けて投げつけた。



 ズボッ、ゴシャアァッ!
「ロックランドで使った爆装ナイフだぜ、どんなに頑丈な鎧でも内側からの爆発には耐えられないだろ!」
 四散する仲間を目の当たりにしながら、しかし兵士たちが攻撃の手を緩める気配はない。
 ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ、ドゴンッ!
 エンクレイブ・ソルジャーたちを次々と爆殺しながら、どうにかして全滅させた頃には俺も何発か銃弾を受けてしまっていた。
「ガフッ、くそ…こんな狭い場所でバカスカ撃ちまくりやがって。子供だって一発は当てられるだろうよ、こんなやりかたは」
 物言わぬ死体に向かって毒づきながら、俺はMed-X注射を乱暴に腕に突き立てる。
 麻酔は思考能力の低下が厄介だが、それでも痛みがなくなるのはありがたい。俺は空になった注射器を放り出し、床に転がったテスラ・キャノンを拾って再装填すると、階上を目指して移動をはじめた。



 バシ、ズシャアッ…ゴッ!
 テスラ・キャノンの威力は先の例を出すまでもなく、光学兵器を無力化するシールドを展開する特別仕様のパワー・アーマーでさえも消し飛ばす光景を見れば一目瞭然だ。
 肉塊を跨ぎ、血溜まりを踏みつけながら俺は先へ、先へと進む。
 複合施設であるらしいこのエリアには非戦闘員も数多くいた。おそらくエンクレイブが標榜する、純粋なアメリカ人によって築かれる未来社会の礎となるであろう、FEV非感染者。
 貴重な存在には違いない。しかし、だからといって、それが何の役に立つというんだ?
 メイン・システム端末に向かうまえに、俺は中央セキュリティ・コントロール・ルームへと探すことにした。施設を警護するエンクレイブ・ソルジャーの数は多く、さらに警備用のロボット…センチネルやガッツィー・タイプといった本物の戦争用が配備されている。まともに戦える相手ではないし、そうしたいとも思わない。
「パスワードを新規発行…指揮系統に割り込み…攻撃対象を反転、すべてのエンクレイブ構成員に敵対指示。ROE、ウェポンズ・フリー(自由射撃)…呼吸停止を確認するまで銃撃を止めるな、すべてを殲滅しろ!」
 コンソールを使ってコマンドをタイプしながら、俺はうわごとをつぶやく。どうもZAX、M.A.R.Go.T.との対話を経て機械に話しかけるクセがついてしまったようだ。
 エンクレイブ構成員、という言葉にはもちろん、非戦闘員も含まれる。
 しかし俺がここに来た以上、どのみちこの施設にいる人間に助かる道はない。これは、そういう「作戦」なのだ。
 やがてあちこちから銃撃音とともに悲鳴が聞こえてくる。畜生め、誰がこれ以上、正々堂々と戦ってなんかやるもんか。



  **  **  **  **



 管制塔へ向かうため一度外に出た俺は、ベルチバードによる援軍を目にした。
「あれは仲間じゃないな…エンクレイブの増援か」
 センチネル・タイプの軍用ロボットとともに迎撃準備を整え、俺はベルチバードにテスラ・キャノンの銃口を向けた。



 ゴガッ、ズドン!
 テスラ・キャノンの一撃でベルチバードの片翼が吹き飛び、バランスを崩した機体はそのまま地面に落下し爆発炎上する。
 しかし既にかなり多くのエンクレイブ・ソルジャーが降下に成功しており、最新鋭の武装をもって向かってきていた。
 やがて…ガチンッ!
「あ、くそっ!」
 プラズマ・キャノンの一撃を受けたテスラ・キャノンが俺の手元から弾き飛ばされ、手摺を越えて遥か彼方に消えていく。
 高い戦闘能力を有するセンチネル・タイプのロボットが次々と破壊されていくなか、俺はエンクレイブ・ソルジャーの死体から奪った武器を手に応戦する。V.A.T.S.起動、リフレクス・エンハンサーとグリムリーパー・スプリント・プログラム出力最大。
「オオッ!」
 スローモーの世界のなかで、ときの声を上げた俺は照準器のクロスヘアに捉えた標的に的確に銃弾を浴びせていった。



 やがて管制塔への侵入に成功し、残存兵を掃討しつつ俺はメイン・システム端末が設置されたフロアへと向かう。
 そして端末のコンソールに触れたとき…生き残っていたエンクレイブの士官が俺に銃を突きつけ、口を開いた。
「おまえ、スティールに雇われた傭兵らしいな。キャピタルに展開していた我が同胞を壊滅状態に追い込み、そしてオータム大佐を殺したという」
「ああ。特に大佐はオヤジの仇だったからな、一応」
「いま、おまえが触れているそれが何なのか…わかっているのか?」
「わかっているとも」
 コンソールを操作する手を止め、振り返った俺は銃口を正面に見据えながら言葉を続ける。
「核弾頭を搭載した軍事衛星への接続ターミナル。こいつだろう、リバティ・プライムをヤッたのは」
「スティールは我々が考えていたよりも優秀だった、というわけだ。そこまで掴んでいたとは…それで、どうするつもりだ」
「残りの核弾頭をすべてこの真上に落とす」
「馬鹿な!」
 グリッ、エンクレイブ士官が銃口を俺の首筋に押しつける。
 あと少しでシアの連結が外れそうになるほど引き金に力をこめたところ、急に思いついたような態度で彼は言った。
「なあ傭兵、我々と手を組まないか?おまえはスティールの本拠地の場所を知っている…その位置座標を入力し、核弾頭の発射コードをセットしろ」
「それで俺が得るものはなんだ」
「金だ。それと、混沌(カオス)。おまえも傭兵なら、争いの絶えない世界ほど都合が良いはずだ。ここで我々を壊滅させるよりも、スティールの連中に打撃を与え戦いを継続させたほうが儲かるだろう?おまえが金のために人を殺すのか、それともスリルに酔う魅力に抗えず戦場に身を置いているのかは私は知らん。どちらにしろ、私の提案は悪くないはずだ」
「それで、そうすればいままでの行為は全部水に流してくれるってわけか?」
「そうしたくはない。おまえのせいで数多くの同胞の命が失われた…しかしおまえが味方につくということは、それ以上に価値があるということを認めざるを得ない、ということだ」
「なるほどね」
 わかった、というふうに両手を挙げ、俺は賛意を示す。そこでエンクレイブ士官が油断して銃口をわずかに下げた、本当に馬鹿なやつだ。
 俺は即座にV.A.T.S.を起動し、ホルスターからの抜き撃ちで相手の握る銃を、続いて両膝を砕く。
「ぐあああぁぁぁっ!?」
「あんたさ、なにか勘違いしてないかい」
 サプレッサーの先端から漂う硝煙を鼻から大きく吸い込みながら、俺は呆れたような口調で言い放つ。
「混沌とした世界、争いの絶えない世界が望みだろうとあんたは言ったな。まるでスティールの味方について、エンクレイブを壊滅させれば世界が平和になっちまうような口ぶりでさ。エンクレイブがなくなれば、争いのない世界でスティールが平和な統治をするかもしれないって具合にさ」
「…… …… ……?」
「そんなわけねぇだろう」
「なにを…」
「有史以来、人間はずっと同族同士で殺し合ってるんだ。何千年もの間、どの大陸でも、どの部族も馬鹿の一つ覚えみたいに隣人の頭蓋骨を砕きながら生きてきたんだ。それをあんた、たかがスティールごときが、その争いの歴史に幕を引けるとでも思ってるのか?有り得ないね」
「おまえは…まさか、最初から何も信用して…」
「俺がどれだけ血を流したって、浄水施設が清浄な水を垂れ流したって、ウェイストランドはなにも変わりゃしなかったよ。なーんにもな。人は過ちを繰り返すって言葉、知ってるか?人間が人間である限り、この世から争いがなくなることは有り得ない。だから、俺は安心して正しい側につくことができるのさ」
「スティールが正しいと言うのなら、その正しいというのはなんだ!?」
「そうだな」
 俺はエンクレイブ士官の頭に銃口を向けると、すこしだけ考えてから、言った。
「より多数の同意ってやつかな。民主主義。好きだろ?ミスター・純血アメリカ人」
 そして。



 パシュッ。
 俺は引き金をひいた。
「言ったろ。神様は、戦いの道義の正当性なんて気にしてないんだよ」
 血がべっとりとこびりついたコンソールにふたたび向き直り、俺は核弾頭の標的をこの機動要塞にセットする。
 さて…核弾頭の発射から目標地点への着弾まで、それほど時間はない。
「これでいいかい、神様?そろそろ彼女に会わせてくれてもいいだろう」
 もともと、助かるつもりはなかった。
 ヤハウェだかブッダだかアッラーだかは知らないが、神様は俺を楽園からふたたびこのウェイストランドの地に放逐した。まだ果たしていない役割があるから、らしい。しかし、それももう、終わったはずだ。
 俺が瞳を閉じたそのとき、ピップボーイが個人通信用のメッセージを受信したことを知らせてきた。
『こちらパラディン・トリスタン、外へ出ろ傭兵。サプライズを用意してある』
「…場違いな守護天使の呼び声か」
 ゆっくりと目を開け、重い腰を上げた俺は、非常口を出てベルチバードの発着場へと向かう。



「驚いたな、サラ・リオンズ」
「パーティには間に合わなかったかしら?」
 ベルチバードで俺を迎えにきたのは、なんと要塞で療養中だったはずのサラ・リオンズだった。
「メインディッシュはこれからさ。核弾頭を使ったクローラーの丸焼き。一流シェフ、クレイブ・マクギヴァンが送る本日限りの特級エンターテイメントにようこそ」
 そう言って、俺はマスクの下でとびきりの皮肉をきかせた笑みを浮かべると、ベルチバードに乗り込んだ。



  **  **  **  **



 かくして、ブラザーフッド・オブ・スティールとエンクレイブの抗争は一応の決着がついた。



 移動要塞クローラーが核弾頭によって破壊される光景に、サラ・リオンズ以下スティールの面々は歓喜の声を上げたが、それとは対照的に、傭兵の態度はひどく冷めたものであったという。
 傭兵は知っている。いかなる類の争いであっても、その本質はなにも変わらないということを。
 見た目や匂いや形が違っていたとしても、クソは所詮クソでしかないということを。



 エンクレイブが壊滅的打撃を受けたことは、たしかに歴史を変える出来事として記録されるだろう。
 しかし歴史が変わっても、人間の本質はなにも変わらない。変わることはない。



 スティールの本拠地である要塞に帰還した傭兵は、エルダー・リオンズ自らの任命によって名誉職に就くことを勧められたが、彼は慎んでそれを辞退したという。
 そして、その後の傭兵の行方を知る者はいない。



 人は過ちを繰り返す。そして、それが人の本質でもある。
 彼は…傭兵は、そのことを誰よりもよく理解している。彼はかつて人間が犯してきた過ちを数多く目にし、そして自らもまた多くの過ちを犯してきたからだ。
 彼は知っている。
 大切なのは、過ちを犯さぬことでも、過ちを犯した者を処断することでもない。
 真に大切なのは、過ちを受け容れることなのだ、と。なぜなら、過ちを犯さぬ人間はいないのだから。

「気長にやるさ。どうせ死んだ人間は、どこにも逃げやしないんだからな」






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