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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2013/05/13 (Mon)13:15
 この大陸にいると平和ボケしそうだな、とブラック17は幾度考えたか知れないことを繰り返し頭の中で反芻した。
 笑顔で道を行き交う人々、活気のある街。
 存在そのものを知らぬではないが、自分には決して縁のなかった世界。
 もしこのまま、光射す世界に飛び込んでいけたなら。人を殺さなくても、生きることが許される世界に留まることができたなら。
 もし自分がこの地で姿を消したら、<黒の里>は追跡してくるだろうか……
 そんなことをぼんやり考えていたとき、不意に何者かがブラック17の肩を叩いた。



「油断し過ぎよ、17。もしあたしが刺客だったら、死んでたかもしれないわよ?」
「殺気がなかった…っていうのは、あなた達相手には言い訳にならないわね」
 いたずらっぽく笑うアントワネッタ・マリーに、ブラック17は複雑な表情を浮かべながら答えた。
 アントワネッタは<ダーク・ブラザーフッド>の暗殺者で、ブラック17がシェイディンハルの聖域に来て最初に請け負った任務…帝都港湾地区に係留されていた海賊船<マリー・エレーナ号>の船長ガストン・タッソーの暗殺…に同行したこともある。
 明るく朗らかな態度から、彼女が暗殺者であるなどとはおよそ信じ難いのだが、アントワネッタは任務のときも平常時とまったく態度を変えず、笑いながら、楽しそうに人を殺すのだ。
 これはなにも、アントワネッタだけが特異なわけではない。
 シェイディンハルのダーク・ブラザーフットのメンバー全員がそんな感じなのだ。たんなる遊びの延長線上だとでも思っているのか、おかげで殺気を全く感じ取ることができない。
 ある種の異常人格者には違いないが、その異常な部分が暗殺者として活動するぶんには良いほうに作用しているので、その点に関してけちをつけるのは野暮というものだ。なによりも、そういった特性を活かせるのは、暗殺者としては称賛されて然るべきことだ。
 異常、か…殺人を楽しむことを異常と認識するのであれば、では自分はどうだというのだ?
 かつてはブラック17も殺傷行為に快感を見出していたのではなかったか。以前はそのことに疑問すら抱かなかったというのに…最近の自分は、どうかしている。
「どうかした?近くに敵でもいる?」
「…いえ。思い過ごしよ」
 そこは「なにか考えごとでもしているのか」と訊ねるところではないのか、などと思いながら、ブラック17は生返事をした。
 そんなブラック17の態度にアントワネッタは気分を害することもなく(たぶん、そのことについて彼女に問えば「17がああなのはいつもの通りだし、女性はミステリアスなほうが魅力的に写るものよ?」などという答えが返ってくるだろう)、事務的な口調で語りだした。
「あなたをここに呼び出したのは、ヴィセンテから伝言を頼まれたからよ。帝都に始末してもらいたい標的がいて、一番近くにいたのがわたしとあなただったってわけ」
「それじゃあ、今回のお目付け役はあなた?」
「いいえ。わたしは別件ですぐに移動しなきゃいけないから、今回は、目付け役はなし」
 そう言って、アントワネッタは微笑んだ。
 これは喜ぶべきか…ブラック17は思案した。黒の里にいた頃は単独作戦しかしてこなかったから、本領を発揮できるといえばそうだ。しかし未だシロディールの世情に聡くないこともあり(残念ながら聖域での生活は、シロディールでの見聞を広める役には立っていない)、そういう点では若干の不安もある。
「それで、標的は?」
「標的はファエリアンっていうアルトマー(ハイエルフ)の男よ。それと、目立たないよう事故に見せかけて殺して」
「ハァ。ここに来てから、こそこそした殺ししかしてない気がするわ」
「文句言わないの、これは本部からの勅命でもあるんだから。最近、帝都ではダーク・ブラザーフッドの正体を探ろうと躍起になってる勢力がいるらしくてね。規模はまだ小さいようだけど、侮れないわ」
「もしかして帝都の衛兵?彼ら、盗賊ギルドの検挙に人員の大多数を割いてるって聞いたけど。けっこう、どっちつかずなことをするのね」
「それはヒエロニムス・レックスのほうね、衛兵隊長の。ダーク・ブラザーフッドを追ってるのは、もっと上のほう…アダマス・フィリダの直属の部下達よ。最近、黒馬新聞が<ナイト・マザー>の儀式について取り上げたでしょう?あれがカンに触ったらしくてね」
 ナイト・マザー(夜母)とはダーク・ブラザーフッドが闇の神シシスに次いで崇拝する存在で、その正体について知る者は誰もいない。ナイト・マザーの儀式とは、誰かに恨みを持つ者がダーク・ブラザーフッドに任務を依頼したいときに行なうものだ。まあ、俗悪新聞の書いたものだから、信憑性はないと思っていいだろう。
 それにしても、ダーク・ブラザーフッドを追求する動きがある、というのは気にかかる。こちらは大衆メディアの書き連ねたエンターテイメントではなく、現実的な脅威だからだ。
「アダマス・フィリダって、帝都軍の総司令官じゃなかった?どうしてそんな暇なことをするのかしら」
「べつにほら、あれよ?『住民の安全を脅かす不埒者に正義の鉄槌を!』みたいな善意で動いてるわけじゃなさそうよ?最近、皇帝ユリエル・セプティムとその一族が暗殺されて、その嫌疑がわたし達にかけられてるっていうのもあるし。それとは別に、この不安定な情勢でテロが起きることを恐れてるみたい」
「テロねぇ…」
「おおかた、わたし達が他国からテロ行為を依頼される可能性がある…とでも考えてるんでしょうよ」
 そう言って、アントワネッタは鼻を鳴らした。
 もし実際にそういう依頼があった場合、ダーク・ブラザーフッドは動くのか…ブラック17は、あえてその質問はしなかった。おそらくアントワネッタはイエスともノーとも言わないだろう。
 ダーク・ブラザーフッドの行動の指針のすべては宗教的観念から定められている。もしテロ行為を示唆されたとして、それがシシスの意に沿うものであれば良し、依頼者の意図などは関係ない、そういう組織だ。
「それじゃあ…今回は標的に関する情報が少ないから、難儀すると思うけど、頑張ってね。それと」
「なにかしら?」
「あなた、そういう格好のほうが似合ってるわよ」
「馬鹿にしてるの?」
「まさか」



 アントワネッタはとびきり人懐こい笑みを浮かべて言った。
「本心からよ。それじゃあね、17」
 普段着ている暗殺装束とは違う、青いドレスの裾を翻して、アントワネッタはブラック17の前から立ち去った。
 その後ろ姿を見つめながら、ブラック17はつぶやく。
「…どうも苦手なのよねぇ、あの娘」

  **  **  **

 ブルーマからの帰り道、帝都に立ち寄ったところでアントワネッタに会ったのはほとんど偶然だった。いや、アントワネッタは「ヴィセンテから手配された」と言っていたので、実際は偶然ではないわけだが。
 往来で任務の伝達、などというのはできれば願い下げだったが、人通りの多さをカムフラージュとして利用するのは諜報の世界ではごく当たり前の行為だ。
 しかし自分は殺し屋であってスパイではない。それにつけ加えて、探偵の真似事まで……
「腹に据えかねるわ」
 そんなことを言いながら、もしブラック16が自分のこの現状を目にしたらなんとコメントするだろうか、などと考えた。
 ともあれ、任務を与えられた以上は、それに専念しなければなるまい。
「標的はアルトマーと言ったっけ」
 アントワネッタから聞いた情報を思い出しながら、ブラック17は帝都のエルフ・ガーデン地区へと向かった。

  **  **  **



「ファエリアンって名前の男、知らないかしら?友達なんだけど、住居のある場所を忘れちゃって」
「さぁて、知らないなぁ。お嬢さん、余所から来たのかい?コロールあたりかな?」
「いえ、シェイディンハルよ」
「オークやダンマー(ダークエルフ)が多いのを除けば良い街だと聞くね。道中に危険はなかったかい?お疲れではないかな?」
「悪いけど、もう宿は別の場所で予約を取ってあるの」
「そいつは残念だ。もし今後帝都に来ることがあったら、そのときは頼むよ」
 率直に言って、エルフ・ガーデン地区での聞き込みは失敗に終わった。
 エルフならエルフ・ガーデン地区、という思い込みがそもそも短絡的だったのかもしれないが、いずれにせよ、調査は空振り。
 エルフ・ガーデン地区のホテル<キング&クイーン>にて、店主と雑談ついでにそれとなく聞いてみたものの芳しい成果は得られなかった。
 苦々しい思いをしつつ、ブラック17は紅茶に口をつける。

  **  **  **

 キング&クイーンで「宿の予約は取ってある」と言ったのは、半分はウソで、半分は本当だ。
 帝都神殿地区に向かいながら、ブラック17はルシエン・ラチャンスと接触したときのことを思い出す。あのときはまさか、自分がこれほど長くダーク・ブラザーフッドと関わることになるとは思っていなかったが。
 そういえば、ブラック16は何を手間取っているのだろう?皇帝一派を襲った謎の暗殺集団に関する調査はまだ終わらないのか?
 かすかに苛立ちを覚えながら、ブラック17は以前宿泊したことがある<タイバー・セプティム・ホテル>の扉を開いた。宿泊料金は高いが、設備が整っていて、なにより清潔だ。ブラック17は、この場所が気に入っていた。
「いらっしゃい…あら、またお会いしましたね。今日もまたお忍びで?」
「まあ、そんなところかしらね」
 無難な返事をしながら、自分の顔を憶えられていたことに多少の不満を感じたが、まあ、それは仕方がない。
 金貨を支払い、鍵を受け取りながら、ブラック17は駄目もとでオーナーのオーガスタに訊ねてみた。
「ところで、ファエリアンという名前をご存じないかしら?知り合いなのだけれど」
「ファエリアン…アルトマーのファエリアン?」
「ええ。たぶん、そのファエリアン」
 ファエリアン、と名前を聞いた瞬間、それまで穏やかだったオーガスタの眉間に皺が寄る。
 あなた、あんなヤツの知り合いなの?今にもそう言い出しかねない表情だ。
 どうやら偶然アタリを引いたらしい、そう思いながらも、あまり好ましからざる雰囲気を察すると、ブラック17は慎重に言葉を選んで質問した。
「いえ、幼少の頃にちょっと関わりがあって。帝都に住んでいると聞いたので、一応挨拶だけでも、と」
「幼少?そういえば、あなたは貴族でしたね。ファエリアンも元は裕福な貴族の生まれだと聞いています、もしかしたらその関係で?」
「ええ。親同士の付き合いだったので、わたし達自身は別にどうということもなかったのだけれど」
 どうやら以前ついた嘘を未だに信じているらしい、オーガスタの見当外れな解釈にブラック17は便乗することにした。
「何かあったの?」
「あまり聞かないほうが良いと思いますわ。なんというか、その」
「構いませんわ、どんな事情があろうと。どのみち手ぶらでは帰れませんし、事情を知っている方がいるなら、前もって彼の現状を聞いておきたいですし」
「そうですか」
 ブラック17の言葉に、オーガスタは折れたようだった。
 しかし、元貴族…に、悪い噂がついているとなれば、犯罪組織と関わりでも持ったか?世間知らずのお坊ちゃんにはありがちな末路だが……



「あの男は、麻薬に溺れてしまったんです。スクゥーマに。カジートどもが持ち込んだ、あの忌々しいクスリ、あれはファエリアンの人格を破壊してしまいました。いまではスクゥーマのことしか感心になく、日中は夢遊病者のように帝都をふらついています」
「麻薬、ね。それで、寝ても醒めても外をふらついてるわけではないのでしょう?普段はどこで寝泊りをしているか、ご存知ないかしら?」
「普段はこのホテルの2階に住んでいます。愛人のアトレーナとともに…アトレーナ、可哀相な娘。ファエリアンのために、宿泊費も、食事代も、なにもかもあの娘が用意しているのですわ。かつての凛々しい恋人の姿を見たいがために、ファエリアンがいつか更生してくれることを望んで」
「…ありがとう」
 それだけ言うと、ブラック17は自分が借りた部屋(奇しくもファエリアンの恋人アトレーナが借りている部屋の隣)に向かった。
 自分がなんとかする、だから心配はいらない。
 そう言いかけたのを、寸でのところで飲み込んだ。
 これからファエリアンを殺そうというのに、余計なことを言って怪しまれたくはなかった。

  **  **  **

 その日の夜。
『ああ、ファエリアン、ファエリアン。あなたは、どうしてもわたくしの言うことを聞いてはくれないのですか?』
『うるっせえな、いつもいつも小言ばかり。それより、金はどうしたんだよ……』
『そのお金を、いったい何に使うおつもりなのです?』
『金がいるんだよ……』



「およそ会話になってないわね」
 壁越しに恋人たちの会話を盗聴しながら、ブラック17は嘲笑した。
 今回の任務は、事故に見せかける必要がある。つまり、ダーク・ブラザーフッドの関与を匂わせるような痕跡は残してはならないということ。
「思うにあの恋人たち、いつ関係が破綻してもおかしくはないわね」
 そう言って、ブラック17は立ち上がった。
 ファエリアンが部屋の扉を開けた音を聞くと同時に眼帯を外し、赤黒く光る義眼を露出させる。
 <シルヴィアの魔眼>…これは、そう呼ばれていた。
 かつてマリーエン・インダストリーが捕獲したが、護衛していたスペツナズともども護送中のキャラバンごと壊滅させて逃亡した女シルヴィア・シルクスターの右目を機械的に模したものだ。
 モノ自体はオリジナルの劣化コピーでしかないが、それでも強力なパーツであることに変わりはない。



 ブラック17は意識を集中させ、義眼と右腕のキャスト・デバイス・ユニットをシンクロさせる。
「コール・ブラッドキャスト」
『アクセプト・レディ。オプティカル・ユニット認識、エネルギー・リソースと回路を直結します』
「空間制御。ドミネーター・ホール展開」
『ラン』
 キャスト・デバイス・ユニットの駆動音とともに、周囲の空間が歪み、蝋燭のゆらめきが止まる。
 これこそが、シルヴィアの魔眼の真価。それはAR表示でも暗視能力でもない、限定された空間内の時間の流れを遅くする能力。
 ブラック17は素早く部屋から飛び出し、アトレーナの部屋から出ようとするファエリアンを素早く取り押さえる。スローモーションで瞬きするファエリアンの首を掴んだまま、ブラック17は彼をベッドで泣き伏せるアトレーナに向けて放り出した。
 おそらくその様子を、魔眼の影響範囲外から観察していれば、ブラック17が人間離れしたスピードで2人を襲っているように見えたかもしれない。しかしこの限定的な閉鎖空間で、彼女の所業を目にするような第三者は存在していなかった。
 驚く間もなく、悲鳴を上げる余裕もないまま硬直する2人の腰に下がっていたショートソードを抜き、ブラック17は凶器を振り上げる。ファエリアンの首を切り裂き、アトレーナの心臓にショートソードの刃を突き立てた。



 ブラック17はアトレーナの部屋の扉を閉め、自室に戻る。
 これが、ほんの2~3秒の間に起きた出来事だった。
『ドミネーター・ホール収縮、空間制御解除。クール・ダウン開始、オプティカル・ユニットとの接続を解除します。通常待機モードに移行、リターン・ゼロ』
「…… ……ッ!」
 突然の激痛にブラック17は顔をしかめ、魔眼を手で覆う。目元から、大量の血の涙が溢れていた。
「…こんな短い時間しか使ってないのに、もうバックファイアが起きるなんてね」
 これだから模造品は、とため息をつく。
 オリジナルはもっと広い範囲を、もっと長い時間、もっと時の流れを遅くすることができると聞く。実際に対峙したことはないが、重武装したマリーエン・インダストリーの精鋭を魔法も使わず瞬時に叩き潰したというのだから、恐らくは本当なのだろう。
「まあ、いいわ」
 血を拭いながら、ブラック17はさっきの殺しについて考えてみた。
 このホテルのオーナーのオーガスタか、あるいは衛兵が現場を見れば状況はすぐに認識できるだろう。
 わけありの恋人たちが、互いの武器で互いを殺傷。
 心中…無理心中か、あるいは意見の対立がもとで殺し合いにまで発展したか。愛憎の果てに悲しい結末を迎えた悲劇の恋人たち、おそらくはそんなふうに考えるはずだ。
 ともかく、殺し屋が2人の死を偽装したとは考えまい。それこそ回りくどい思考というものであり、ブラック17は証拠を何一つ残していない以上、真相に近い答えを見出したとしても、それはたんなるパラノイアだ。
 あとは自分が一般人らしく適当に振舞えばいい。
 そう思いながらも、ブラック17はどこか釈然としないわだかまりを抱いたまま、ベッドに倒れこんだ。

  **  **  **

 帝都での任務を終えたブラック17は、そのままシェイディンハルには戻らずインペリアル・ブリッジの傍らに佇んでいた。暗闇に染まった川の流れを眺めながら、エルフの恋人たちを殺したことについて考える。



 本来アトレーナは殺す必要のない人間だが、暗殺を偽装するうえで利用できる格好の存在であったことは確かだ。
 だが、殺す直前…刃を突き立てる直前、彼女の瞳を真っ向から捉え、ブラック17の決意は揺らいだ。
 それでも殺す手を止めなかったのは、長年の訓練と経験が本能として染みついていたからに他ならない。一度殺すと決めた相手は殺す、これは当たり前のことだ。
 だが今となっては、ファエリアンを殺すためにアトレーナまで巻き添えにする必要があったのかどうか、他に手はなかったのか、ブラック17にはわからなくなっていた。
 この男はもう救えない、待っていたって時間が無駄に過ぎるだけ、なにも解決しない。もうこんな奴のことは忘れて、新しい人生を…彼女を殺す直前に、そんな台詞が、喉から出かかった。実際は口よりも手のほうが早かったわけだが。
 こんな感情を抱くのははじめてだった。
 彼女が殺す必要のない一般人だったから?それとも、彼女の境遇に同情の念を抱いてしまったから?
「くだらない」
 思わず、口に出してそう呟く。
 良くない感傷に取り憑かれている、それは自分でもわかっている。
 たぶん、今の環境のせいだ…シロディール、平和な世界。しかし、本当にそうだろうか?
 もしシロディールが本当に自分が考えているような平和な世界なら、なぜ自分はここにいて、相変わらず人を殺しているのだ?罪もない家族を利己的な理由で犠牲にした男がのうのうと生きれる世界が本当に平和なのか?
 そもそも、もし自分が2人を殺していなかったら、あるいは自分がこの大陸に来てすらいなかったら、誰も死なずに済んだのか?否、他の誰かが自分の代わりに暗殺を遂行していた…それだけのことに過ぎないのだ。
 おそらくは、いままで自分が見ようともしていなかった、光射す世界の姿を目の当たりにしたから気が動転しているだけなのだろう…そう、ブラック17は考えた。
 いままで自分が身を置いていた環境が異常だっただけで、自分が元いた世界も、実際はシロディールに比べて格別に凄惨で残酷な場所だったわけではないのだろう。
 だが、自分がいままで見ようともしなかったものでさえ、一度目にしてしまうと、忘れるのは難しい。
 光射す普通の世界。誰かを殺さなくても生きていける世界。
 そのとき、ブラック17は本能的な恐怖を感じた。
 もし、自分が殺人をためらうようになったら。人を殺すとき、快楽ではなく恐怖を感じるようになったら。そう、今日のように。人を殺すという行為そのものに疑問を抱いた、今日という日のように。
 そのとき、自分はいまの境遇にどう向き合っていけばいいのだろう……




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