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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/04/17 (Wed)00:06
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2013/05/09 (Thu)05:14
「先日はお見苦しいところを見せてしまい、申し訳ありませんでした」
「まったくじゃ。ワシはかれこれ3000年近く生きておるが、男性器なぞ見たのはほんの数回じゃぞ」



 グレイ・メア亭での全裸騒ぎから数日後、ジェメイン兄弟宅にて。
 リアの計らいでどうにか監獄行きを免れたレイナルドとギルバートに呼ばれ、リアはコロールのレイナルドの家に立ち寄っていた。あちこちにアルコールの空瓶が散乱し、お世辞にも整頓されているとは言い難い部屋を眺め回し、リアが口を開く。
「で、わしに頼みとはなんじゃ?」
「じつは、僕達兄弟の生家…ウェザーレアという場所なのですが、近々そこに住居を移したいと考えているんですよ」
 話すのはもっぱら弟のギルバートの役割だ。
 兄のレイナルドはというと、先日あんな事件を起こしたばかりだというのに、相変わらず飲んでばかりいる。ダメ人間ぶりではオディール家の家長に引けを取らないのではないだろうか。
「あれー?さっき、ここに飲みかけのビールを置いといたはず…」
「さっき飲んで捨てたろうが。ともかく、なんじゃ。頼み、ちうのは引っ越しの手伝いか?」
「いえ、そうではなく」
 そう言って、ギルバートは手を振る。
 なにやら特殊な事情がありそうだが、しばらくギルバートは黙ったままだった。やがて意を決したように顔を上げると、ギルバートは自分達兄弟の過去についてリアに打ち明けた。
「じつはウェザーレアは、オーガの襲撃を受けて壊滅しているんです。そのときに母はレイナルドを、父は僕を連れて逃げました。その後僕は父に、母と弟は死んだと聞かされ…実際は違ったわけですが…現在に至るわけです」
「おれも昔のこたぁサッパリ憶えてねンだよなぁ…気がついたら修道院に引き取られててさ。いままで家族がいたなんて考えたこともなかったよ」
「貴様、修道院育ちでその酒癖の悪さか。コロールの修道院、ちうとウェイノン修道院か?」
「そう、そのウェノイン修道院」
「間違えとる間違えとる。ジョフリがいるところではないか、あの年寄りはいったいどんな教育をしておるんだ」
「まあまあ」
 若干話が脱線しかけたところで、ギルバートが軌道修正する。
「ともかく、そのウェザーレアは今もオーガの棲家になっている可能性があるんだ。だから、凄腕の戦士たる君に様子を見に行ってもらいたいんだけど」
「凄腕の戦士…そこでそんな評判を聞いた?」
「オディールさんから。ゴブリンの集団を殲滅したって」
「あのジジイ…まあ、いいわい。若者の頼みは断れんからのー」
 そう言って、よいしょ、リアは腰を上げた。
 出て行こうとするリアに、ギルバートが後ろから声を上げる。
「様子を見に行くだけでいいからね。別に倒す必要はないから、危ないからさ」

  **  **  **

「ありゃあ、まだわしのことを信用しておらんな」
『そりゃあ実際に戦っている現場でも見なければ、あなたの容姿で戦士と言われても信用しないでしょう』
「なら、こんないたいけな少女を危険な場所に向かわせようとも考えんのではないかなー、普通は」
『そのあたりは、なんとも。シロディールの人間は、我々とは価値観が異なるみたいですし』
 コロールを出立したリアは、思考支援AI<TES-4>…通称フォースを相手に小言を漏らしていた。
 ギルバートに渡された地図を眺め、視覚情報を画像データとして保存する。こうすれば、いつでも実際に地図を取り出すことなく内容を確認することができるだろう。
 とはいえ地図はギルバートが幼少の記憶を頼りに書いたものなので、いささか正確性には欠けていたが。
「さて、もたもたしていても仕方がないの。ここはいっちょ、バイクに変身してバァーッと移動するかのー」
『服、脱ぐの忘れないでくださいね』
「お、おう」



 2輪駆動形態に変形すべく、リアはドレスをトランクにしまいこむ。
「しかしこれ、毎回やらねばならんのか?」
『仕方ないでしょう、予備の着替えを持っていないのですから』
「うーむ…」
 不服そうな声を上げてはみるものの、具体的な代案が浮かばない以上、しばらくはこうする他にないだろう。
「そのうち、ちゃんと考えんとのー。それじゃ、頼むぞ」
『了解しました。変形プロセス起動、現在コマンダーの承認待ちです。…レディ?』
「レディ」
 ガッシイイィィィィィンン……!
 リアは2輪駆動形態に変形すると、一路ウェザーレアへと向かった。

  **  **  **

 しばらく走行したのち、リアは視覚センサーに複数の巨大な生命反応を関知してタイヤの動きを止めた。



「あれか?」
『おそらくは。あの廃屋は、過去にジェメイン一家が住んでいたものではないでしょうか』
「随分と荒れとるのー」
『火などを使った形跡はありませんね。単純に、物理的な攻撃による破壊工作が行なわれたようです。破損した壁材の断面を見たところ、攻撃を受けてから20年以上経っているようですね』
「やはり、間違いないようじゃの」
 そう言って、リアはふたたび変形プロセスを起動し2足歩行形態へとシフトした。
 いそいそとトランクからドレスを取り出しながら、フォースに向かって言語シグナルを発信する。
「そういえば、そもそも『オーガとはなんなのか』ちう質問をするのを忘れておったが…どうも、廃屋を取り巻いている連中がそれのようじゃな」
『かなり大きいですね。表皮の硬度、脂肪の厚さからいって、退治するには骨が折れそうです。ギルバート・ジェメインは、退治の必要はないと発言していましたが』
「なにを言うか。あの兄弟を危険に晒すことのほうが心苦しいわい…どれくらいいる?」
『少々お待ちを…環境探査フィールド展開、四方1200m以内のクラスC生命体反応3。いずれも同一種族だと思われます。警戒レベルをイエロー4にセットします』
「3体か。どれ、チィとお仕置きしてやるとするかな」
 着替えを終えたリアは両手にカタールを握り締めると、荒廃したウェザーレアに向かって駆け出した。



「ギィ?」
 巨躯を揺らしながら廃屋の周辺を闊歩するオーガ達が、リアの存在に気付く。
 筋肉の動き、表情の変化から、オーガ達が自分を「敵」と認識したことをリアは理解した。彼らが廃屋を叩き潰すのに使った豪腕を、この小さな身体に向けて振るうことに躊躇はしないだろう、ということも。
「ならば先手を打つまでよ、フンッ!」
 地面を蹴り上げ、およそ人間離れした跳躍力でリアはオーガの懐に飛び込む。
 標的が視界から消えたせいでうろたえているオーガの脇腹に、リアはカタールの刃を深々と突き刺した。思い切り振り抜き、内臓に多大なダメージを与える。
 普通の動物なら苦痛でまともに動けなくなるほどの傷だったが、オーガはリアをジロリと睨みつけると、たいした反応も見せないまま右腕を振るい、リアを薙ぎ払った。
「…!?ぬ、おわっ!」
 巨大な拳の一撃をまともに喰らったリアはそのまま吹っ飛ばされ、木の柵に激突する。そのまま柵は倒壊し、リアはもともと畑だったらしい柔らかな土の上に投げ出された。
「なんじゃ、アイツは…」
 予想外の反撃に驚きながらも、リアはオーガにつけた傷がみるみるうちに塞がっていくのを確認し、驚きに目を見開く。



「なんと、凄まじいスピードで傷が治癒していくぞ!?」
『どうやら彼らは再生能力が異常に発達しているようですね。おそらく、同種の中でも特異な進化を遂げた個体だと思われます。警戒レベルをイエロー4からレッド1に引き上げます』
「チィィィ、厄介な!あの兄弟を連れて来んで正解だったわい、こりゃあ並の人間の手に負えるような相手ではないぞ…魔法でも使えれば別かもしれんが、あの兄弟にそういう力があるようには見えんかったしな」
『おまけに痛覚がかなり鈍いので、身体機能に深刻な障害を与えるレベルのダメージを与えなければ、動きを鈍らせることすらできないでしょうね』
「せめて対物ライフルでもあればのう、簡単にカタがつくのじゃが。この世界はハードウェアが貧弱すぎるわい、なにか良い方法はないのか?」
『そうですね…』
 フォースは一瞬だけ思考に時間を費やしてから、リアの思考プールに情報を流した。
『彼らの身体構造は人間のものと酷似しています。どれだけ治癒速度が早くとも、急所を的確に攻撃すれば殺すことは可能のはず』
「クリティカルな部位を狙えということか、よし!」
 リアは身体中に付着した土くれを払うと、ふたたびオーガに向かって飛び出していった。
 グォオン、力任せに振るわれたオーガの巨大な腕を回避し、リアは自分の倍以上はある化け物に最接近する。
「目に見えるほど治癒速度が早いならば、失血による心停止は期待できんな…ならば!」
「グッ!?」
 リアの素早い動きにオーガが狼狽する。一方で、リアはリアルタイムでオーガの生物的特徴をスキャンし続けていた。
「おそらく、わしが手にしているこのちゃちな刃物では、この生物の骨に傷をつけられまい。無茶をすれば武器のほうが壊れちまうじゃろう、頭部を狙うにしても頭蓋骨は避けねばだめだ。そして脳…脳はクリティカルな部位じゃ、しかし脳ならどこに当てても良いというもんではない、脳の急所ちうモノも存在するのだ。つ・ま・り・はッ!」
 グザッ!!
 トン、トンとオーガの腕を駆け上がったリアは、カタールの刃をオーガの口内に刺し込んだ!
「つまりは頭蓋骨の干渉を受けない口内から、脳幹を刺し貫く!どれだけ痛覚が鈍かろうと、どれだけ優れた再生能力を持っていようと、中枢神経システムが停止すれば生命活動の維持は不可能じゃ!」
 リアがカタールの刃を引き抜くと同時に、RAS(細網活性システム)の許容範囲を超えるダメージを負ったオーガが木偶人形のようにバタンと音を立てて倒れる。すぐに脳の活動も停止し、物言わぬ骸へと成り果てるはずだ。
「「ギオオオォォォォォォッッッ!!」」
 仲間が殺されたことへの怒りか、あるいは人ならざる動きで仲間を葬ったリアへの本能的な恐怖からか、残る2体のオーガが咆哮を上げた!
 地面に沈むオーガの傍らに舞い降りたリアは両手のカタールの刃をかき鳴らし、目前に迫る敵を挑発する。
「どうした、焦る必要はないぞ?どのみち、皆…向かう先は同じじゃ!」
「オォァアアアアアアーーーッ!」
 プレッシャーに耐えかねて突進してきたオーガの首に足をかけ、リアはそいつの両目にカタールの刃を突き刺す。上方向からナナメに、アングル・コンタクト。脳を掻き回してぐしゃぐしゃに引き裂くと、オーガはぴんと爪先を立てたままの姿勢で前のめりに倒れた。
 オーガが倒れる前にひらりと飛び降りたリアは、カタールの刃にこびりついた脳の欠片を振るい落とし、残る1体に向けて邪悪な笑みを浮かべる。
「最後」
『ターゲットに設定したクラスC生命体のうち2体の生命反応消失を確認。警戒レベルをレッド1からイエロー3に引き下げます、続けて標的の抹殺を実行してください』
「オオオォォォォォッ!」
 最後のオーガがリアに掴みかかる!がしかし、リアはそれをひらりと避けると、オーガの背に乗り首と頭の付け根を刺し貫いた!



 脊髄を絶ち切られたオーガが悶絶する!
「アガアァァァァァッ!」
「ええい、暴れるでない!さっさとおっ死ね!」
 リアはカタールの刃を引き抜くと、今度は同じ部位に両手の刃を交差させた!
「アガ……」
 やがてオーガは抵抗しなくなり、ガクリと膝をつくと、そのまま地面に倒れた。
 無事に着地し一息つくリアに、フォースが事務的に状況を報告する。
『ターゲットの殲滅を確認、警戒レベルをイエロー3からグリーン2にシフトします。お疲れ様でした、ゼロシー』

  **  **  **

 レザーウェアの安全を確認した、というリアの報を受けたジェメイン兄弟が現地に到着したとき、目の前のあまりに異様な光景に言葉を失った。
「な、まさか…このオーガ達を、本当に君がやったのか?」
「そこそこ骨の折れる仕事じゃったがの。ま、こんなもんは児戯じゃ、児戯」
『苦戦してたくせに』



 フォースの言葉を無視し、リアは余裕たっぷりの態度でギルバートに向かい合う。
 一方で未だわずかに体温の残っているオーガの死体を検分していたギルバートは、リアに向かって言った。
「本当にやれるとは思わなかった。オディールさんの言葉も、どうせ酔っ払いの言うことだと思ってたのに」
「おぬし、ちぃとはわしを信用せんかい。わしを何だと思っておる」
「厨二病の女の子」
「…せめて、実力に見合った妄想の持ち主という認識で頼みたいのー」
「すげー、これすげー。なあギルバート、これどうすんの?」
 相変わらず酔っているレイナルドが、おもむろに訊ねる。
 ジェメイン兄弟はこの廃屋を改装するつもりであり、そのためにはオーガの巨大な死体は邪魔になる。いずれ自然に還るにしろ、その間に腐敗だのといった有り難くないプロセスを経るため、できるなら何らかの方法で処分したいのだろう。
 しばらく頭を悩ませてから、ギルバートが言った。
「うーん、そうだね…魔術大学に引き取ってもらうのはどうだろう」
「魔術大学?」
「なんでも、錬金術の材料にオーガの身体が使えるらしいよ。皮膚とか、肉とか、脂肪とか、牙とか…お姐さん、なんとかならないかな」
「誰が姐さんじゃい。そうじゃな、魔術大学はともかく魔術師ギルドのほうなら渡りがつけられるかもしれん。そっちのツテでなんとかしてみるとするかの」
「それは有り難い!」
 ぼろい家だけど良かったら、という言葉に誘われ、リアはジェメイン兄弟とともに廃屋へと足を踏み入れた。

  **  **  **



「わーい、超すげー。超ぼろーい。俺の家よりひでー」
 そんなことを言いながら、さっそく酒を飲み始めるレイナルド。
 ギルバートは兄の飲酒癖に関してどうこうするつもりはないらしく、生温かい目で見つめつつ、リアに向かって口を開いた。
「それにしても、なんてお礼をしたら良いやら」
「礼なぞよい、誰も金目当てでやったわけではないからの。それと、オーガの死体の処分はこっちに任せい」
「重ね重ね、なんとお礼を言ったらいいのか。お姐さんに足を向けて眠れないな、今後は」
「無駄な気遣いなぞせんでもよい。それより、これからが大変じゃぞ?家の再建というのはな…わしはの、おぬしらが元気で長生きできれば、それで満足じゃ」
 ではの、と言い残してリアは退出する。
 オーガ達の死体を前にして、フォースが呟いた。
『ところでこれ、どうやって運ぶつもりです?』
「むー。2輪駆動形態で縄つけて引きずるとか」
『それめっちゃ怪しいです。発見者から通報されますよ』
「他に良い手もあるまい」
『うーん…』
 けっきょくリアはオーガの死体を2輪駆動形態でコロールまで運んだあと、魔術師ギルドと交渉して荷馬車で魔術大学まで移送したのだった。




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