主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2012/10/07 (Sun)15:45
「ムッ、なにか物音がしたような気が」
洞窟内部を巡回していたネクロマンサーが、首を巡らせる。
「さっき殺したカジートの女によると、もうすぐここに、見習いのメイジが来るとか。そろそろ到着してもいい頃だが」
ネクロマンサーにとって、メイジは宿敵であり、忌むべき存在。たとえ相手が見習いであろうが、子供であろうが、容赦をする理由はない。
そしてネクロマンサーの目前に、見慣れぬ者の影が映った!
「おいーっす!」
「…… …… ……!?」
「え、エーット、本部に言われて応援に来ましたぁっ!」
「……???」
「あ、あのーう。責任者は、どちらに?」
「……あ、ああ、うん。洞窟を抜けた向こうにいる」
「ありがとうございましたーっ!」
一礼してから過ぎ去る影を見送りながら、ネクロマンサーは小首をかしげる。
「…あんなやつ、仲間にいたっけ……?」
「あ、危なかった~…」
どうやら敵をやり過ごせたらしい、ミレニアは胸に手を当てて安堵する。
さっき倒したネクロマンサーから奪ったローブを着用しているとはいえ、変装というには、ちとおざなりであるのは言うまでもない。
もっとも普通のメイジであれば、ネクロマンサーのローブを着るなどという罰当たりなことは到底しないのだが、その点ミレニアは信義よりも実利を優先する性格だったので、あまり気にしてはいない。
「えーと。<魔術師ギルド要綱>に、<錬金術の基礎>?」
テーブルの上に積まれていた本を手に取り、ミレニアは眉間に皺を寄せる。
どの書物も魔術師ギルドの会員にとっては必読書のようなものであるが、ネクロマンサーにとっては甚だ無縁に等しい代物である。そして壁にかけてあるタペストリーには、魔術師ギルドの紋章が刺繍されていた。
「やっぱり、ネクロマンサーが来たのは最近なんだ」
しかしいったい、なんのために?
なぜ、いまになって?
ミレニアは頭の中に大量のクエスチョン・マークを生やしながらも、答えを探すべく、先へと進むことにした。
「おい貴様、どこへ行く?」
「エートその、忘れ物しちゃって…」
「まったく、たるんどるな!そんなことで魔術師ギルドの連中を倒せると思ってるのか!気合が足りん!」
「う、ウェヒヒ、しーましェーン」
やたら熱血漢ぽい年嵩のネクロマンサーにどやされながら、ミレニアは洞窟を抜ける。
出口の戸を開けると、眩い日差しがミレニアの目を刺した。いままで暗い洞窟にいたためか、しばし目が眩む。
「うっ、き、吸血鬼になった気分だぁ…」
しばらく目をしばたたいていると、不意に日光の明るさが低減された。
「ふぅ、太陽が木陰に隠れたのかな。これで一息つける…」
そこまで言いかけて、ミレニアは絶句した。なぜなら陽光を遮ったのは、木立などではなかったのだから。
目の前に立っていたのは、ダンマー(ダークエルフ)のネクロマンサー。そしてその足元には、おそらく魔術師ギルドの会員と思われるレッドガードの女性の死体が転がっていた。
「おやまぁ、随分と可愛らしい顔をしているね同志」
「あ、はひ、ありがとうございます」
「あんた、本部から応援に来たそうだね。本部のエルミは元気かい?」
「はい、それはもう!元気イッパイデスヨー」
「あらそう。ふーん…」
2人の間に、不穏な空気が流れる。
…もしかして、バレた?
ダンマーばりに青ざめた表情で、ミレニアは汗を垂らす。
やがてダンマーのネクロマンサーは腰にぶら下げていた銀製のダガーを抜き放つと、ミレニアに向かって言った。
「オマエのような奴が仲間のはずあるか!いますぐバラバラにして実験材料にしちょぅぅゥゥゥりゃあああああーーーッッッ!!」
「でっ、ですよねーっ!!??」
台詞とときの声が渾然一体となったわけのわからない叫び声を上げながら、ダンマーのネクロマンサーが襲いかかってきた。ミレニアは慌てて踵を返し、一目散にガン逃げを決める。
体力勝負となれば、ときに薄暗い場所でヒキコモリがちなネクロマンサーよりも、(裏の)職業柄、飛んだり跳ねたりが得意なミレニアに分がある。
どうにか相手を撒くことに成功したミレニアは、木から木、岩陰から岩陰へと移動しながら、相手の様子を窺うことにした。
「どうしよう、あっちこっちにネクロマンサーがいるんじゃん…こんなことなら、小型の携帯弓くらい持ってきとくべきだったなぁ」
小声でそんなことを呟きながら、ミレニアは武器になりそうなものを探す。
「…まるでメタルギアソリッド3だね、こりゃ」
異世界の電子ゲームの名を例えに出しながら(といってもミレニア自身、電子ゲームについては父親から聞きかじった程度の知識しかないのだが)、ミレニアは武器になりそうなものを手に取った。
「風が吹くと、桶屋が儲かる。さて、どうしてでしょう?答えはカンタン、桶屋だったら<風が吹いてもオッケーや>!はい奥さん、笑って、笑ってー」
棍棒を片手に一人漫談しているネクロマンサーの背後から、ミレニアは木の枝を手にそーっと近づく。
「フフ、秘密裏に鍛えたこの漫談を駆使すれば!侵入者を笑わせて位置を特定することなど容易!これぞまさしく<お笑いコマンドー>の極意!」
「な、わけあるかあぁぁぁぁぁっっっ!」
「ぶげらっ!?」
ぶつぶつとわけのわからない独り言を呟いていたところへ、ミレニアの一撃が決まる。
「どやっ!?」
枝の折れた断面を首筋に突き刺し、そのまま地面に叩き伏せる。
文句なしのクリティカル・ヒットを決められた漫談ネクロマンサーは、しばらくピクピクと痙攣したあと、動かなくなった。
「ふーっ。まったく、なんだったんだろうコイツ…」
わけのわからない敵を始末しながら、ミレニアはため息をついた。
木の枝から手を離すと、ミレニアは漫談ネクロマンサーが手にしていた棍棒をもぎ取り、次の標的を探すべく森の中へと消えていった。
[ to be continued... ]
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