主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2012/10/10 (Wed)15:02
「いた……」
木の上から、周囲を巡回するネクロマンサーの様子を窺うミレニア。
手にしていた棍棒を振りかぶり、思い切り投げつける。
「エイヤッ!」
「コペンハーゲンッ!?」
ゴガッ!
放たれた棍棒が勢いよく後頭部に突き刺さり、ネクロマンサーは奇妙な悲鳴を上げながらぶっ倒れる。
「うわ~、めっちゃ鼻血出てる…」
スルスルスル、ミレニアは慣れた手つきで木を降りながら、さきほど自分が倒した相手を見てつぶやいた。
「…どうでもいいけど、なんかわたし、殺し屋みたいなムーヴ(動き)してる気がする」
咄嗟に日用品(とか、そうでないものとか)を武器の代わりに使って立ち回れるその力は、たしかに暗殺ギルド向きと言えなくもない。とはいえミレニアは悪党でもシリアル・キラーでもないので、メンタル面で向かないのは確かなのだが。
しかし、ミレニアがそれなりの戦闘力を有しているのには、ちゃんとした理由がある。
「まあ、人に話せるような理由じゃないけどね…」
そんなことをひとりごちていると、近くの祭壇にダンマーのネクロマンサーが近づいていくのが見えた。ミレニアは咄嗟に岩陰へと身を隠す。
「いったい、なにをするつもりだろう…」
相手の戦闘能力がわからない以上、迂闊に飛び出して返り討ちに遭う可能性を考えると、ここはひとまず静観して相手の出方を伺うのが上策。
そう考えたミレニアだったが、実際はすぐにでもダンマーのネクロマンサーを止めるべきだったことを、すぐに思い知ることになる。
「ここに、新人メイジどもが魔術師の杖を作るために必要な一切合財が揃っているというわけか…」
そう言うと、ダンマーのネクロマンサーは周囲に謎の液体を撒き、続いて呪文を唱えはじめた。
間もなくミレニアの鼻に異臭が届き、自分は使わないとはいえ多少は魔術に関する知識があるミレニアは、相手がなにをしようとしているかに気づき、狼狽した。
「この刺激臭は油…でもってアイツ、火炎魔法唱えようとしてるッ!?」
『ファイアーボールッ!』
ドンッ!
ダンマーのネクロマンサーが呪文の詠唱を終えるのとほぼ同時に、周囲が瞬く間に炎に包まれていく。
「これでもう、魔術大学の連中は杖を作れまい!ウワーハハハハハ!!」
哄笑を上げながら、ダンマーのネクロマンサーも炎に包まれた。
「我らネクロマンサーに、栄光あれーッ!」
「げぇっ、なんつーハタ迷惑なカミカゼ・スタイル!」
残念ながら、ミレニアにはここまでの規模の火災を消し止めるための手段を持っていない。
驚いている間にも、炎の規模はあっという間に拡大し、いまや島全体を包みつつある。ミレニアは動きを鈍らせる漆黒のローブを脱ぎ捨てると、一目散に崖へと向かった。
「な、なんでわたしがこんな目にーっ!?」
ボンッ、どうやら他のネクロマンサー達が所持していたらしい油の瓶に引火し、あちこちで小爆発が起きている。
勢いを増した炎は、いまやミレニアのすぐ背後にまで迫っていた。
「わぁーーーっっっ!?」
間一髪で崖から海へと飛び込むミレニア。その頭上を、勢いよく噴出した炎がかすめていった。
「ぷはっ!」
水面から顔を出したミレニアは、目前の光景に言葉を失う。
魔術大学の見習いたちが杖を作るために保護されていた神木が、無残にも焼き払われてしまった。
神木から作る杖は特別なものであり、それゆえ魔術大学の会員が持つ杖は一種のステータスとして扱われるのである。
しかし神木を失ったいま、魔術大学は古来よりの伝統を1つ、失ってしまったのだ。
「なんだと、島が焼かれただって!?」
命からがら帰還したミレニアを待っていたのは、ラミナスの叱責だった。
「おまけにギルド会員にも死傷者が出て、挙句に犯人は自害!きみはいったい、あの島でなにをやっていたんだ!?」
「え、いや、その、えーっと…」
てっきり心配くらいはしてくれるだろうと思っていたミレニアは、期待が外れたことに驚き、ショックを受けた。
「(…そんなの、わたしに言われても、困るよ!)」
そう言いたいのは山々だったが、いまのラミナスに言い訳は通用しそうにない。
「まったく、怠慢というほかないな!たかがネクロマンサー風情に遅れを取るなどとは!ともあれ、これは由々しき事態だ。すぐにでも評議会を収集せねばならないだろう…もちろんキミには仔細な報告書を提出してもらう必要がある、しばらくは帝都を出てはならないぞ、わかったかね!?」
「……はい…」
すっかり気落ちしたミレニアは、重い足取りで大学の敷地内を歩く。
いらないものを作りに行かされ、どういうわけか襲撃され、仲間は死に、さらにラミナスが言うには「なんらかの形での処分も有り得る」という。死んだ2人のメイジのぶんまで罪をひっかぶせよう、という算段なのだろう。
無駄足踏んだ、どころの騒ぎではない。大学が被った被害の責任をすべて押しつけられるかもしれないのだ。
冗談じゃない!
「…逃げちゃおうかな~…」
暗い表情でつぶやくミレニアの耳に、ふと、野外授業をしている教師の講義が聞こえてきた。
『…ルーンストーンに施されていたはずの固有のエンチャントが失われたいま、第一紀においてこれらが果たしていた役割を推察するにあたって……』
「呑気なものだなぁ」
実用的でないものはすべからく雑学知識でしかない、という認識を持つミレニアにとって、大学の講義はブルジョワが知識欲を満たし、優越感を得るためだけの無為なものに思えて仕方がなかった。
曇天の空を見上げながら、ミレニアは「フゥ」と、ため息をついた。
ネクロマンサーの襲撃。
これまでの常識では、そんなことは有り得なかったし、そしてこれからも有り得ないと思われていたこと。地下で細々と禁忌の研究にいそしむ連中が、正面から魔術大学に喧嘩を売るなどとは、前代未聞もいいところだった。
そして、なにより…この件は、今回のことだけでは終わらない気がする…そんな予感が、ミレニアの脳裏から離れなかった。
「わたしたち、これから、どうなるんだろう」
その一言は、降り出した雨音に遮られ、虚空の彼方へと消えていった。
[ to be continued... ]
木の上から、周囲を巡回するネクロマンサーの様子を窺うミレニア。
手にしていた棍棒を振りかぶり、思い切り投げつける。
「エイヤッ!」
「コペンハーゲンッ!?」
ゴガッ!
放たれた棍棒が勢いよく後頭部に突き刺さり、ネクロマンサーは奇妙な悲鳴を上げながらぶっ倒れる。
「うわ~、めっちゃ鼻血出てる…」
スルスルスル、ミレニアは慣れた手つきで木を降りながら、さきほど自分が倒した相手を見てつぶやいた。
「…どうでもいいけど、なんかわたし、殺し屋みたいなムーヴ(動き)してる気がする」
咄嗟に日用品(とか、そうでないものとか)を武器の代わりに使って立ち回れるその力は、たしかに暗殺ギルド向きと言えなくもない。とはいえミレニアは悪党でもシリアル・キラーでもないので、メンタル面で向かないのは確かなのだが。
しかし、ミレニアがそれなりの戦闘力を有しているのには、ちゃんとした理由がある。
「まあ、人に話せるような理由じゃないけどね…」
そんなことをひとりごちていると、近くの祭壇にダンマーのネクロマンサーが近づいていくのが見えた。ミレニアは咄嗟に岩陰へと身を隠す。
「いったい、なにをするつもりだろう…」
相手の戦闘能力がわからない以上、迂闊に飛び出して返り討ちに遭う可能性を考えると、ここはひとまず静観して相手の出方を伺うのが上策。
そう考えたミレニアだったが、実際はすぐにでもダンマーのネクロマンサーを止めるべきだったことを、すぐに思い知ることになる。
「ここに、新人メイジどもが魔術師の杖を作るために必要な一切合財が揃っているというわけか…」
そう言うと、ダンマーのネクロマンサーは周囲に謎の液体を撒き、続いて呪文を唱えはじめた。
間もなくミレニアの鼻に異臭が届き、自分は使わないとはいえ多少は魔術に関する知識があるミレニアは、相手がなにをしようとしているかに気づき、狼狽した。
「この刺激臭は油…でもってアイツ、火炎魔法唱えようとしてるッ!?」
『ファイアーボールッ!』
ドンッ!
ダンマーのネクロマンサーが呪文の詠唱を終えるのとほぼ同時に、周囲が瞬く間に炎に包まれていく。
「これでもう、魔術大学の連中は杖を作れまい!ウワーハハハハハ!!」
哄笑を上げながら、ダンマーのネクロマンサーも炎に包まれた。
「我らネクロマンサーに、栄光あれーッ!」
「げぇっ、なんつーハタ迷惑なカミカゼ・スタイル!」
残念ながら、ミレニアにはここまでの規模の火災を消し止めるための手段を持っていない。
驚いている間にも、炎の規模はあっという間に拡大し、いまや島全体を包みつつある。ミレニアは動きを鈍らせる漆黒のローブを脱ぎ捨てると、一目散に崖へと向かった。
「な、なんでわたしがこんな目にーっ!?」
ボンッ、どうやら他のネクロマンサー達が所持していたらしい油の瓶に引火し、あちこちで小爆発が起きている。
勢いを増した炎は、いまやミレニアのすぐ背後にまで迫っていた。
「わぁーーーっっっ!?」
間一髪で崖から海へと飛び込むミレニア。その頭上を、勢いよく噴出した炎がかすめていった。
「ぷはっ!」
水面から顔を出したミレニアは、目前の光景に言葉を失う。
魔術大学の見習いたちが杖を作るために保護されていた神木が、無残にも焼き払われてしまった。
神木から作る杖は特別なものであり、それゆえ魔術大学の会員が持つ杖は一種のステータスとして扱われるのである。
しかし神木を失ったいま、魔術大学は古来よりの伝統を1つ、失ってしまったのだ。
「なんだと、島が焼かれただって!?」
命からがら帰還したミレニアを待っていたのは、ラミナスの叱責だった。
「おまけにギルド会員にも死傷者が出て、挙句に犯人は自害!きみはいったい、あの島でなにをやっていたんだ!?」
「え、いや、その、えーっと…」
てっきり心配くらいはしてくれるだろうと思っていたミレニアは、期待が外れたことに驚き、ショックを受けた。
「(…そんなの、わたしに言われても、困るよ!)」
そう言いたいのは山々だったが、いまのラミナスに言い訳は通用しそうにない。
「まったく、怠慢というほかないな!たかがネクロマンサー風情に遅れを取るなどとは!ともあれ、これは由々しき事態だ。すぐにでも評議会を収集せねばならないだろう…もちろんキミには仔細な報告書を提出してもらう必要がある、しばらくは帝都を出てはならないぞ、わかったかね!?」
「……はい…」
すっかり気落ちしたミレニアは、重い足取りで大学の敷地内を歩く。
いらないものを作りに行かされ、どういうわけか襲撃され、仲間は死に、さらにラミナスが言うには「なんらかの形での処分も有り得る」という。死んだ2人のメイジのぶんまで罪をひっかぶせよう、という算段なのだろう。
無駄足踏んだ、どころの騒ぎではない。大学が被った被害の責任をすべて押しつけられるかもしれないのだ。
冗談じゃない!
「…逃げちゃおうかな~…」
暗い表情でつぶやくミレニアの耳に、ふと、野外授業をしている教師の講義が聞こえてきた。
『…ルーンストーンに施されていたはずの固有のエンチャントが失われたいま、第一紀においてこれらが果たしていた役割を推察するにあたって……』
「呑気なものだなぁ」
実用的でないものはすべからく雑学知識でしかない、という認識を持つミレニアにとって、大学の講義はブルジョワが知識欲を満たし、優越感を得るためだけの無為なものに思えて仕方がなかった。
曇天の空を見上げながら、ミレニアは「フゥ」と、ため息をついた。
ネクロマンサーの襲撃。
これまでの常識では、そんなことは有り得なかったし、そしてこれからも有り得ないと思われていたこと。地下で細々と禁忌の研究にいそしむ連中が、正面から魔術大学に喧嘩を売るなどとは、前代未聞もいいところだった。
そして、なにより…この件は、今回のことだけでは終わらない気がする…そんな予感が、ミレニアの脳裏から離れなかった。
「わたしたち、これから、どうなるんだろう」
その一言は、降り出した雨音に遮られ、虚空の彼方へと消えていった。
[ to be continued... ]
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