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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
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2011/10/15 (Sat)14:54
「まったくどいつもこいつも、どうしてワシに『めいど服』を着せたがるのじゃ…?」
 

 
 下水道を通って牢獄から脱出したリアは、バウルスの指示に従い、帝都商業地区に居を構える高級洋服店ディバイン・エレガンスへと足を運んでいた。
「あーらまぁ、可愛らしい!やっぱりこの服が似合うと思ってたのよ~、それも黒じゃなくて赤がね!」
「…見た目より動きやすいデザインなのは関心するがの」
「それはそうよ、だってその服は戦闘用にデザインしたバトルスーツだもの!機能性は保障済、ちょっとした攻撃から身を守れる程度の防御性能だってあるわ」
「貴族向けの洋服店でこんな代物を扱ってる理由が気になるのだがな?」
「あたしとバウルス…もといブレイドは懇意なのよ。ブレイドが機密性の高い任務に赴く場合、いつでも鎧兜を装着できるわけじゃないわ。だから、時にはこういう平服に偽装した戦闘スーツが必要になるわけ」
「この国の連中が崇拝する騎士道精神からはちとかけ離れた戦法に思えるがのう」
「もとよりブレイドは正規兵と異なる戦術を用いるの、任務達成を第一に考えた結果ね。その戦術は古代アカヴィリに通じるものがあるわ。いま貴女が着ているメイド服はもともと、敵の城にメイドとして潜入するときに使うものなの。こういった潜入暗殺術は、古代アカヴィリに存在したと言われている最強のユニット・ゲイシャが用いたものらしいわ」
 …うさんくさすぎる。
 ハイエルフ(やはりリアが元いた世界に存在したメトセラ種とはまったく別物らしい)の女店主パロニーリャの解説はどうにもウソくさかった(正確に言えば、情報に誤りがある)が、ブレイドの活動方針についてはよく理解できた。
「ところでのう、女主人よ。ときに、うぇいのん修道院というのがどこにあるか、教えてもらえんかの?」
「ウェイノン修道院?ああ、ジョフリ様の御隠居先ね?それならコロールの街のすぐ近くにあるわ。そうね…ここからだと、帝都を出て街道沿いをずっと西に進むの。道に迷うことはないと思うけど、ここからだとちょっと遠いわね。山賊野盗のたぐいも出没するらしいし」
「なにか便利な移動手段とかないものかのう。車とか、へりこぷたーとか?」
「それが何かは知らないけど、チェスナット・ハンディー厩舎に行けば馬を扱ってると思うわ。協力はしてくれないと思うけど…そのことについては、残念だけどあたしも力になれないわ」
「やれやれじゃ」
 

 
 案の定馬の貸し出しを拒否されたリアは、徒歩でウェイノン修道院までにまで向かうことになった。帝都にかかる巨大な石橋を渡りながら、服とセットでついてきたトランクを片手にぶちぶちと文句をこぼす。
「まったく…いくらワシが疲れ知らずのアンドロイドとはいえ、不整地を延々と歩き通したらすぐに靴が駄目になってしまうわ。せっかくの新しいおべべじゃというのに」
 どうやら、バウルスの一筆書きも万能ではないらしい。そもそもブレイドは隠密部隊だ、知名度からして高くはない。そんな得体の知れない連中が書いた書状など、うさんくさい目で見られても仕方のないことではあった。
「う、ぐぐ…やっぱり痛い……」
「うむ?」
 橋の終わりに差しかかったとき、全身をいかつい鎧で覆った戦士が地面にうずくまっている姿が見えた。どうも地下牢で皇帝を襲撃した連中と姿がそっくりだが、なぜこんなところで股間をおさえてぶっ倒れているのかはわからなかった。
「そ、そこな道行くお嬢さん、どうか助けて…」
「お大事にのー」
 助けを求める声を華麗にスルーし、リアは歩を進める。
 ひょっとしたら、助けようとしたところを襲う新手の痴漢かもしれないし、リスクは負わないに越したことはない。見知らぬ人間を助ける義務はないし、どうもあの手合いは関わらないほうが良い気がするのだ。
 橋を渡りきってすぐの場所にある民家の前を通りかかったとき、猟師らしき男がリアに近寄ってきた。
「そこの旅のお方、どうかこの哀れな男を助けてはもらえないだろうか」
「話だけなら聞いてやろう。手短にな」
「実は私、とある錬金術師の依頼で、この近辺の湖に生息する殺人魚の鱗を集めているのです。ところがもう少しで規定の枚数を集め終わろうというとき、殺人魚に脚を喰いちぎられて漁が不可能になってしまったのです。謝礼は払います、どうか依頼を完遂するために殺人魚の鱗を集めてはもらえないでしょうか」
「…おぬしにはワシが何に見えるのだ?」
「やっぱり必死すぎますか」
 RPGにおいて、まったく変哲のない類のクエストであることに変わりはないのだが、中年のオッサンが女中の恰好をした幼女に頼むような仕事ではないのもまた、事実だった。
「それにの、ワシは水場が苦手なのじゃ。着水したが最後、底の底まで沈んで二度と浮かび上がっては来んぞ。えーい、やめじゃ、やめ。聞くだけ無駄じゃったわ」
 あいにくと水に浮かぶ軽量型の身体に転生できなかったリアは、オッサンの頼みを無碍に断ると、旅を急ぐことにした。
 

 
 もう間もなく夕方になろうかというとき、リアは馬に乗って街道を巡回する帝都兵と出会った。
「お嬢さん、この道は子供の一人歩きができるほど安全ではない。なにか私にできることはあるかな?」
「おお、助かったぞ。実は小用でうぇいのん修道院まで行かねばならぬのじゃが、そこまで乗せていってはもらえんかの?」
「ウェイノン修道院…コロール方面か。残念だが私の順回路とは逆だ、力にはなれそうにない」
「おおう、なんという薄情な」
 さらば、と告げるが早いか、衛兵はさっさと帝都方面へ向けて馬を走らせていった。
「なーんじゃ、あれは。あれでも騎士道精神がどうとか抜かせるんか。まーったく国家権力が腐っておるのはどの世界も同じじゃの」
 リアはため息をつくと、その場に腰かけて空を見上げた。早くも月(のように見えるが、実際はまったく別の星だろう)が出ており、おぼろげながらも無数の星々が輝きを放ちはじめている。
「GPSも通信ネットワークもまったく音沙汰なしとはの。この星の上空には通信衛星が存在しないと見えるな」
 考えられる可能性は二つ。自分が通信衛星が存在しないほど遠い過去(あるいは未来)に飛ばされたか、あるいは地球以外のまったく違う惑星に飛ばされたか、だ。いずれにせよ誘拐という線はなくなり、マシニマのテクノロジー被害がもたらした時空の歪みに巻き込まれたと考えるのが妥当だろう。
「まったく因果なものじゃて。せっかく機械のワシが、気の置ける仲間に出会えたというのに」
 

 
 感傷に浸りつつ空をぼーっと見つめていると、何者かが近づいてきた。
「あーら可愛らしいお嬢さん、随分と重そうな荷物を抱えているわね。わたしが代わりに持ってあげてもいいのよ?」
 皮鎧に鉄製のバトルハンマー、どう見ても親切な旅人という風情ではない。女の背後には弓兵が控えており、すでに弦を引いていつでも発射できる態勢を整えている。
 どう見ても野盗です本当にありがとうございました。
「まったく前途多難にもほどがあるわい。この荷物が欲しいのか?断ったらどうするつもりじゃ、まさかこのいたいけな幼女に乱暴を振るうとでも…」
 

 
 ビュンッ!
「…な、え……?」
 放たれた矢が、リアの心臓を貫く。
「生意気な口をきく御餓鬼様ね、こっちはガキの命なんか、なんとも思ってないわよ」
 そう言いながら、野党の女がリアのトランクに手をかけた、そのとき。
 

 
「痛いではないか、この痴れ者が」
 突如ドレスの袖口から飛び出した刃物に口を刺し貫かれた野党の女は、悲鳴を上げる間もなく絶命した。
 心臓(というか、人間なら心臓がある位置)に矢を突き刺したまま、鬼のような形相で刃を振り抜くリアの姿を目にした弓兵は、あからさまに動揺していた。
「な、な、な、ばっ…バケモノ!?」
「これでも、ここしばらくコロシは控えてきたつもりじゃがな。抑え役がついてないときのワシは、ちょいとおっかないかもしれんぞ…?」
「ち、畜生!てめぇなんざ怖かねぇ!」
 ゆっくり歩いているように見えて、その実あっという間に距離を詰めてきたリアを目の当たりにした弓兵は、弓を投げ捨てると腰のショートソードに手をかけた。
 

 
「残念。遅い」
 ザシュッ……
 胸を斬り裂かれ、弓兵は仰向けに引っくり返った。血のあぶくに溺れかけている弓兵に、リアが虫ケラを見るような眼差しを向ける。
「きっちり急所を狙ったからの、おぬしは間違いなく、確実に、死ぬ。せいぜい苦しまず、すぐに死ねることを祈るがよいわ」
 リアは自身に刺さった矢を投げ捨てると、トランクを持ち上げてその場を後にした。
「なんという世界じゃここは、まったく。ぷんすか」
 幼女が肩を怒らせながら歩くさまは、傍から見ればギャグにしか写らない。
「しろでぃーる、か……」
 すっかり暗くなった空を仰ぎ見ながら、リアはため息をついた。
 

 
「今日はここで晩を過ごすかの」
 日が落ちたにも関わらず宿がまったく見つからないため、リアは近くで見つけた城砦跡に足を踏み入れた。どう見てもダンジョンです本当にありがとうございました。
 波乱含みのリアの旅はまだ始まったばかりである。
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