主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2011/10/17 (Mon)15:59
『アクティブ・シーカー・サイト起動、生命反応補足。追跡中…』
リアは義眼に仕込まれたビジョン・エンハンサーを起動すると、巨大な扉の向こう側にいる「何者か」を透視した。
「フゥム、人間ではないな。ゴブリン、だったか。地下牢から脱出するときに数匹見かけたのう」
対物ライフルがあれば扉越しに「抜ける」のだが、などと考えはしたものの、ないものねだりをしても仕様がない。いまリアが持ち合わせている武器は、ディバイン・エレガンスで適当に見繕って貰った隠匿性のカタール2挺のみだった。
それに、人外だからといって、敵だという確証もない。まだリアはこの世界に来て日が浅いのだ。
アッシュ砦と名づけられた廃墟に入ってはみたものの、どうやらここは自分以外が既に寝床としている模様。どうしたものか…と考えあぐねているのが今の状況だった。
無益な殺生を(一応)好まないリアは、扉を開けると、正々堂々とゴブリンの戦士の前に姿を見せた。
「もし、そこな御仁。不都合がなければ、一晩寝床を貸してほしいのじゃが…」
「ギョエェェェェエエエエッッッ!!」
リアが台詞を言い終わらないうちに、ゴブリンの戦士は敵意を剥き出しにした咆哮を上げる。
ARのエモーション・センサーが真っ赤に染まったのを見て、これは説得以前の問題だとリアは思った。知能は低くないものの、このゴブリンという種はかなり好戦的らしい。
「やはり話が通じんか。ま、仕方がないの」
そう言うが早いか、リアは袖に忍ばせていたカタールの刃を手の平の上に滑らせる。
ヒュン、となにかが風を切る音を聞きつけ、上体を傾ける。そのコンマ1秒以下の高速で耳もとを矢が通過していった。
「小口径高速弾をかわせるワシに、原始的な弓矢を当てられると思うか。笑止」
まぁさっきは当たったがの、反応速度というより状況判断能力の処理の遅延が原因で、と小さく呟いてから、リアは左手の袖口からも刃物を見せた。
ザシュウッ!!
肉が引き裂かれる音とともに、鮮血が飛び散る。
目にも留まらぬ速さで振り下ろされたカタールの一撃は、ゴブリンに成す術も与えなかった。
「必殺技の名前でも叫べば、もうちょっとは様になるかのう。もっとも、ワシの元いた世界ではそういった風習はなかったのじゃがの」
シロディールでも同じです。
しばらく進むと、進路上の橋の上に3匹のゴブリンが待ち構えていた。
「狭い通路上での、多対一の面制圧か。蛮族にしては考えるではないか、じゃが…」
「ワシに小手先の小細工は無意味と知れ!」
一気に距離を詰めると、リアはゴブリン達の輪の中心に斬り込み白刃を一閃させた。飛びかかった勢いに任せて階下に着地したリアの上空に、すでに事切れたゴブリン達の亡骸が投げ出される。
「いやはや肩慣らしにもならんな。雑魚とまでは言わぬが、もちぃと歯ごたえがほしいの」
ゴブリンとて、百汎の冒険者にとって脅威であることに変わりはない。そういった点を考慮しての評価だった。
砦の最深部には、巨大な檻が構築されていた。リアの嗅覚センサーに、常人ならば耐え切れぬであろう凄まじい異臭が検知される。
「ほぅ、これは…ゴブリンどもが作った養殖場か」
階上からリアが見下ろす先にあったのは、巨大ネズミの飼育場だった。衛生に気が遣われているはずもなく、ネズミ達は一様に悪臭を放っている。
異臭の原因はネズミだけではない、付近にはネズミの餌であろうと推測される、人間の腐った死体がバラバラのパーツになって転がっていた。どうやらゴブリンにとって人間より巨大ネズミのほうが口に合うらしい。
「おぉ、おぞましい。臭いが服に移らなければ良いが」
どうやらゴブリン達が使っていたらしい寝床に近づくと、リアは装備を外して布団の上に横になった。
「アンドロイドといえど、固い地面の上に直に寝るのは良くないからの」
しかしこんな場所で寝るはめになるとは、野宿のほうがマシだったか、などと愚痴をこぼす。
「うぇいのん修道院までの道程はあと半分、といったところか」
リアは天井を見つめ、ため息を一つつくと、そのまま眠りに落ちた。
『自閉症モードに移行、静電気によるバッテリーチャージを開始。環境探査フィールドをレベル3で展開。起床タイマーを5時間後にセットします。おやすみなさい、良い夢を。ゼロシー』
この声は…誰?
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