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2018/04/08 (Sun)17:13





The Elder Scrolls IV: Oblivion
Fan Fiction "Crossing Over" #2

- エルダースクロールズ4:オブリビオン -

Side Story【クロッシングオーバー】

第二話 「監獄脱出」











「いった…」
 鋼鉄製の仮面の奥で苦痛に顔を歪めながら、娘は目を醒ました。






 彼女の名はアリシア・ストーンウェル。“ちびのノルド”の通り名を持つフリーランスの傭兵で、かつては大陸の北方スカイリムにて傭兵団”雪狼一座”に所属していた経歴を持つ。
 近年シロディールへと渡ってきた彼女は、異様な安値で物品を売り捌く店の背後関係を調査したり、商船を改装した宿を襲撃した賊を撃退するといった、傭兵というよりは何でも屋、厄介事請負業者として生計を立てていた。
 そして、今回の事件…帝都をぐるりと覆う外壁の影で禁制品を扱う闇商人、“サム”という名の胡散臭い男から“スクゥーマ”と呼ばれる麻薬を買おうとしたところ、サムを捕らえるため草場に身を伏せていた衛兵隊の待ち伏せを受け、そのときに動転したサムから短剣の一撃を腹に受けたのである。
『貴様、帝国の犬か!俺を嵌めたな!?』
 いまも、慌てふためくサムの声が耳に残っている。どうやら自分が衛兵たちを手引きしたと勘違いしたらしい…見当違いの災難に見舞われ、ちびのノルドはため息をついた。
 それにしても…ちびのノルドは独房をぐるりと見回し、自分が囚人服ではなく、愛用の装具を身につけたままでいることに若干の疑問を覚える。実際のところ、帝都衛兵隊にとってちびのノルドは未だ容疑者のままであり、実刑が決まったわけではないため、手続き上、囚人服を着せることはできなかったのだが、ちびのノルドにはそこまで理解が及ばなかった。
 サムに刺された腹の傷は癒えていたが、包帯の跡はなかった。おそらくは治癒師…魔術師の手によって治療されたのだろう。
 腕の装具から覗く古い包帯、その傷跡は以前のままだった。これは長年の古傷であり、治癒師も手をつけようとはしなかったのだとちびのノルドは考えた。
 そして独房を見回していたときに、つい先刻この場を通り過ぎた皇帝の一団が開放した隠し通路を発見し、なおいっそう首をかしげた。彼女はさきほどの皇帝たちのやりとりの一切を関知していなかった。
「目を醒ましたか。言っておくが、その抜け穴には近づくなよ。危険だからな」
 ちびのノルドの覚醒を察知した衛兵が、鉄格子越しに睨みをきかせてくる。
 とはいえ、隠し通路を指して「危険」と言ったのはハッタリであり、それはきょとんとした表情で見返すちびのノルドが何の事情も知らないであろうことを察しての言葉だったが、結果的にその一言が彼女の関心を隠し通路へ向けることになってしまった。
 古代遺跡へと続く抜け穴と、看守を…その間を阻む、鍵のかかった鉄格子の扉越しに…交互に見つめ、ちびのノルドはゆっくり起き上がると、そっと手を振って看守に背を向けた。






「…… …… …じゃっ!」
「あっ、コラ!おまえー!?」
 足早に隠し通路を抜けようとするちびのノルドの姿に、看守は慌てて扉の鍵を開けようとする。しかし、鍵穴に鍵を差し込んだあたりで看守の脳裏にふとした懸念がよぎった。
 いま自分がここを離れたら、誰が他の囚人を監視するというのか?
 ちびのノルドを追って秘密の地下通路へと飛び込むのは、あまり懸命な判断とはいえない…のみならず、皇帝の命を狙う暗殺集団と鉢合わせる可能性を考えると、この身に危険が及ぶことも充分に考えられた。
「…ええ、くそ」
 この微妙な状況のなかで、行動を急ぐのはまずい…そう判断した看守は、同僚にこの事態を伝えるべく地上階へと続く階段を駆け上がっていった。
 それに、ちびのノルドの存在についてはまだ、文書が作成されていない。なんとなれば、最初からそんな者はいなかった…と誤魔化すこともできるだろう、といった打算を踏まえての決断であった。







「ハァッ!!」
 ときの声をあげ、レノルトは失われしアカヴィリ由来の刀を振りぬいて暗殺者を真っ二つに両断する。真紅のローブが鮮血に染まり、石畳にごろりと音をたてて亡骸が転がり落ちた。






「グレンロイ、ボーラス、無事か!?」
「私と陛下は無事です、しかしグレンロイが…」
「…くそっ」
 通路の向こう側から発せられたボーラスの言葉に、レノルトは皇帝の前であることも忘れ、思わず罵り言葉を口にしてしまった。
 グレンロイは大太刀、ダイカタナの使い手だ。この狭く入り組んだ遺跡内部では、そのリーチの長さがかえって不利になる。そこを突かれて倒されたに違いない、そうでなければ、あの錬達の剣の使い手がカルトの暗殺者風情に遅れを取るはずがなかった。
 誤算はほかにもあった。
 皇帝とブレイズが、宮廷の極一部にしかその存在を知らされていない秘密の地下通路を使って脱出しようとした、その理由。暗殺者の目を遠ざけ、あまつさえ迷路のように入り組んだこの場所は逃走を容易なものにしてくれるはずだった。
 しかし、現実はどうだ?
 暗殺者たちはこの迷宮の複雑な構造を我が物とし、まるで待ち伏せをしていたかのように奇襲を仕掛けてきている。暗殺者たちが、この地下通路の存在を最初から知っていたことは明白だった。
 宮廷内部に内通者がいたのか、それとも、ブレイズでさえ感知できない方法で事前の調査を完了していたのか、それはわからない。それにいま、そのことに頭を悩ませたところで、事態が好転するわけではない。
 そこまで考えたとき、レノルトは暗殺者の集団が近づく気配を感じた。
「ボーラス、陛下を連れて先へゆけ。ここは私が喰い止める」
「しかし、隊長!?」
「おまえの役目は、第一に陛下の身の安全をお守りすることだ!自らの命にかえても!そして、もちろん…同胞の命にかえても。私に構わず行け、早くッ!」
 ほとんど狂気的と呼んでもいい形相で叫ぶレノルトをまえに、ボーラスは束の間躊躇したのち、皇帝とともにその場を離れた。
 間もなく通風孔などの、外界からの侵入路となり得る、あらゆる場所から真紅の暗殺者たちが姿を見せはじめた。それぞれが召喚術を使い、魔法の鎧を纏ってレノルトに狙いを定めている。






 そしてまた、この事態とは何の関係もない、もう一つの小さな姿も…







 レノルトを置き去りにしてから、どれだけの時間が経ったことだろう。
 エルフの古代遺跡から、ゴブリンの潜む自然窟を抜け、ふたたび入り組んだ遺跡へと足を踏み入れたとき、ボーラスは自分が用意された罠にまんまとかかったことを思い知らされた。
「なんということだ、扉に…鍵が!」
 それは脱出用通路という用途を考慮し、決して施錠されることはないはずの扉であった。しかしいま、鍵は逃亡者が外せないよう外側からかけられており、それが暗殺者たちの仕業であることは目に見えて明らかである。
「…もはや、これまでかもしれぬな」
「陛下、お気をたしかに!」
 気を落とした、というよりは、達観した様子で諦めの言葉を口にする皇帝を激励しつつ、ボーラスは脱出の手段を考えた。扉を破壊するか、あるいは別の脱出路を探すか…
 しかし結論が出るよりも早く、罠を張って待ち構えていた暗殺者たちがここぞとばかりに二人に向かって襲いかかる。
 ボーラスは施錠された扉を背に、皇帝を庇いながら暗殺者たちと剣を交える。






 彼にとって誤算だったのは…というより、彼の考えが及ばなかったことに、施錠された扉は“外からは開けられる”という一点が、皇帝ユリエル・セプティム七世の命を奪うことになった。
 扉の開く音と、ドン、グチャリ…という、鈍い殴打音がほぼ同時に響き、ボーラスが「まさか」という表情で振り返ったとき、すでに皇帝は陥没した頭部からおびただしい量の血を流し、床に倒れていた。
「お、おおおおおお!!」
 激情のままボーラスは皇帝を手にかけた暗殺者を切り伏せる。だが、自身もその背に別の暗殺者の刃を受け、激痛に顔を歪めた。
 ここで死ぬのか、皇帝を守るという使命を果たせず、自分の身すら守れないまま…
 そのとき、視界の奥で殴打音とともに暗殺者が吹き飛び、次々と倒されていく様子が目に写った。
 あれは、なんだ?






 予想だにしなかった闖入者の存在に誰しもが驚くなか、やがて暗殺者たちがすべて斃されたとき、傷ついたボーラスの前に立っていたのは、徒手のまま大量の返り血を浴びた小柄な女性の姿だった。
「えっと、あの…だ、大丈夫、ですか?」
「おまえは…?」
 修羅場を潜り抜けた者にしては、いやに自信のなさそうな声でつぶやく娘…ちびのノルドを見つめ、ボーラスはその正体を訝る。
 そうだ、たしか、この娘はあの独房で眠っていた、あの娘だ。と、そのことは混乱する頭を抱えたボーラスにもすぐに理解できたが、それが手練の暗殺者たちを悉く屠ったという事実に、いまひとつ現実感を抱けないでいた。
「あ、あのっ、そのう、ぶ、ぶれいず?のかた、ですよね?れー、の…レノルト、という人からだいたいの事情は聞いています。皇帝陛下をお守りしているとか」
「レノルトに?まさか、彼女は生きているのか!?」
「はい、ただ、暗殺者たちとの戦いで負傷したので、いまは安全な場所で休んでいますが…その、皇帝陛下は……?」
 ボーラスの影に隠れていた皇帝の姿を見て、ちびのノルドは思わず顔を伏せる。
 危機は脱したものの、皇帝陛下を守るという使命を果たせず…それをまっとうするためならば自らの命、同胞の命でさえ捨てよというレノルトの命令を果たせず…そのことにボーラスが愕然とした、まさにそのとき。
 すでに息絶えたと思われた皇帝ユリエル・セプティム七世が這い起き、血まみれの顔面を晒したままちびのノルドの手を取った。
「やはり…御主が来たか……」
「陛下!?」
 ボーラスが驚きの声をあげ、ちびのノルドが仰天するなかで、皇帝が言葉を続ける。






「このアミュレットを受け取り…我が息子へ託すのだ。ドラゴンファイアを灯し、オブリビオンの門を閉じろ」
 自身が首にかけていた、赤く輝く巨大な宝石が埋め込まれた首飾りをちびのノルドに渡そうとする手はいまにも止まりそうで、弱々しくかすれた声は聞き取るのも難しかったが、それでも、その言葉には確かな力強さがあった。
 それは提案ではなかった。頼んでいるわけでもなかった。
 それは命令だった。かつて大陸全土を支配下に収めた皇帝ユリエル・セプティム七世としての、最期の命令だった。
 それからなにごとかを呟き、力を使い果たした皇帝はその場に崩れ、こときれる。なにを呟いたのかは聞こえなかったが、ちびのノルドは、直感から彼が「すまない」と言ったように思えた。ただし、その謝罪の真意を汲むことはできなかった。
 皇帝の亡骸の傍らに跪きながら、ボーラスがちびのノルドに向かって言う。
「陛下は…お前に何らかの予感があったようだ。いまわの際に、王家に代々伝わるアミュレットを他ならぬお前に渡したのも、おそらくは理由があってのこと。あの」先刻まで施錠され、そして皇帝を亡き者とした暗殺者が開いた扉を指し、「通路から下水道を抜ければ、帝都の北側、ルマーレ湖のすぐ傍に出ることができるだろう。私は陛下と…同胞の亡骸を葬り、レノルトと合流しなければならぬため、しばらくはこの場に留まるつもりだ」
「あの…」
「陛下はアミュレットを息子に託せ、と言ったが、生憎と陛下の御子息はみな暗殺者の手にかかってしまった。正式な血統は…あるいは、隠し子の存在があるかもしれぬ。ここを脱出したら西のコロールへ向かい、ウェイノン修道院のジョフリーという僧に事の次第を話すのだ。きっと、力になってくれることだろう」
 そこまで言って、ボーラスは口をつぐんだ。
 ここに至り、ちびのノルドには、皇帝の遺志を継ぐ理由が何一つないことに思い当たったからである。しかしこの状況で、ボーラスが他に頼れる者はいなかった。
 戸惑いながら見つめてくるちびのノルドに、ボーラスは口を開く。
「…頼まれて、くれるだろうか?」
「…… …… …はい」










 実際のところ、ちびのノルドにも打算の一つや二つ、ないではなかった。
 いま現在、帝国から見れば、ちびのノルドは闇商人から禁制品を買おうとした容疑者であり、さらには看守の目の前で独房から逃亡した脱走犯である。
 しかし皇帝陛下の勅命を受け、特殊任務を遂行していた…となれば、これらの罪を帳消しにしてもらうことは、そう難しいことではないはずだ。ブレイズの力添えがあれば、尚のことだ。
 さらには任務の重要性がある。これは明らかに国家の存亡に関わるものと思われ、見事果たしたとなれば、傭兵としてこれ以上の宣伝はない。この降って湧いた厄介事を引き受けるに足る理由は、充分にあるわけだ。
 …とはいうものの、ちびのノルドがあの場で咄嗟にそれだけのことを考えたわけではなかった。ボーラスの頼みを引き受けた理由のほとんどは、実質、彼女の生来の善良さによるものである。

 ボーラスの助言に従い下水道を抜けたちびのノルドは、仮面の隙間越しに陽光を浴びて目を細めた。どうやら、いつの間にか夜が明けていたらしい。東のモロウウィンド国境に近いヴァラス山地の稜線から朝日が顔を覗かせていた。空はまだ薄暗く、星明りがわずかに見え隠れしている。
 さて、ここでゆっくりしている時間はない。
 帝国にとって自分は未だ脱獄犯扱いであり、いまごろはすでに手配が回っているに違いない。道中で衛兵に見つかるわけにはいかない、どうやって対岸へ渡ったものか…ちびのノルドがそう考えはじめたとき、真紅の影が排水溝のブロックを飛び越えてきた。






「あれは…暗殺者の一味!?」
「待てィ、そこの小娘!」
 驚きの声をあげるちびのノルドの目前に、ザシャアッと派手な音を立て着地する真紅の暗殺者。その姿は皇帝とブレイドたちを襲った者たちと同じもので、この輩が連中の仲間であることは疑いようがなかった。
「まだ仲間が残っていたんですか…!」
「貴様が首からかけているソレは、王家に代々伝わるアミュレットだな!?どうやって貴様のよォな小娘がそれを手に入れたのかはわからんが、そいつを組織のアジトへ持って帰れば、寝坊して襲撃計画に間に合わなかった失態の埋め合わせができる!のみならず、幹部待遇だって有り得るかもしれん!どうやら俺にも運(ツキ)が残っていたようだぜ!ナイス、ナイスだ俺!」
「…え?」
 早口でわけのわからないことをベラベラと捲くし立てる暗殺者に、ちびのノルドはしばし呆然となる。どうも、地下迷宮で戦った連中とは若干雰囲気が異なる気がするのだが…
 そんな彼女の戸惑いを余所に、暗殺者はやたらに威嚇的なフォルムのメイスを振りかぶると、ちびのノルドを指差して叫んだ。
「というわけだから、この俺の出世のために散るがいいッ!小娘、覚悟!!」
 そしてちびのノルドに飛びかかる暗殺者!






「えいやっ」
 ガギン、と、鈍く重い金属音があたりに響く。
 ちびのノルドは上空から迫り来る暗殺者の股間を爪先で鋭く蹴りあげたのだった。
 勢いを増して落下していた暗殺者の身体は、蹴られた衝撃で、ぴょこんと飛び上がっていた。たった一点に集中したダメージ、さらには自身の体重がそこへ乗り、暗殺者は仮面の下でぐるりと白目を剥いて悲鳴をあげた。
「イチニーサンダァァァァーーーーーー!!」
「!?」
「ちょっと出たぁぁぁーーーっ!!」
「…え、なにが?ねえ、なにが!?」
 不穏当な言葉を口走る暗殺者に尋ねるちびのノルド、しかし暗殺者はその質問にこたえることなくバターンと派手な音を立てて地面に倒れ、口から泡を吹いて失神した。
 …どうしよう。
 おそらく、とどめを刺すのは、簡単だ。
 そしてたぶん、そうすべきなのだろうが…ちびのノルドは逡巡する。どうにもこの、そそっかしいというか、おっちょこちょいというか、バカっぽいというか、要するにアホにしか見えないこの暗殺者の命を奪うことは、躊躇われた。
 しばらく悩んだすえ、ちびのノルドはある結論を出した。
「…よし。流そう」






 ザッパーン。
 大きな水音を立て、ルマーレ湖に投げこまれた暗殺者の身体はプカプカと水面を漂いながら、対岸へ向かってスィーッと流されていく。
 運が良ければ、命は助かるだろう。かなり、物凄く、運が良ければ。たぶん…
 枯葉のように静かに流されていく暗殺者の姿を見届けてから、ちびのノルドはウェイノン修道院へ向かうべく、その場をあとにした。





【 To be continued ... 】















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