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2018/04/04 (Wed)18:41
これは太陽系から遠く離れた、別の星系でのおはなし…
マッサー、セクンダと呼ばれる二つの月を持つ惑星ニルン、そのなかで複雑な歴史と文明を持つ大陸タムリエル。生命の誕生から現在に至るまで数多くの戦乱を経験したこの地で、また、新たな争いが巻き起ころうとしていた。
第三紀433年、収穫の月27の日。
かつて大陸全土を支配していたセプティム王朝もいまやその影響力は衰え、大陸中央部のシロディールを帝国領として治めるに留まっていた。
65年もの歳月を権力者として君臨してきた、ときの皇帝ユリエル・セプティム七世。数多くの苦難に直面しながらも支配者として辣腕を振るい続けた彼の生涯がいま、閉ざされようとしている。
それは、決して逃れ得ぬ運命。
姦計を用い邪悪なる神の召喚を目論む集団と、その計画に巻き込まれた者たち。それを望むと望まざるとに関わらず、彼らの運命もまた奔流に呑まれ、一つの時代の終焉と、新たなる激動の時代の訪れに直面しようとしていた…
シロディール中央部、帝都北東部に位置する獄舎地区。
普段ならば看守の足音と、ときおり聞こえる囚人の嘆きしか耳にすることのない監獄で、慌しく移動する一団の姿があった。それも、すっかり日が暮れたあとに、である。
ときの皇帝ユリエル・セプティム七世を中心とし、その周りを囲む異様な兵装の集団。彼らが皇帝陛下の護衛であることは誰の目にも明らかであったが、おなじく明らかなこととして、帝国軍のものとは異なる軍装に身を包んだこの集団の正体を訝る者があったとしても、これは不思議なことではない。
彼らは“ブレイズ”という…帝国軍ではなく皇帝直属の組織で、皇帝の護衛や諜報活動がその主な活動内容である。その存在を知る者は少なく、構成員や組織の性格については極めて慎重に秘匿されてきた。
もとより獄舎の看守に命令をきかせるために素性を明かす必要などなく、ただ一般の兵士よりも皇帝に近しい存在であることを態度で示すだけで事は足りていた。
「おいっ!この独房は決して使わぬようにと言っておいたはずだ、なぜ囚人が眠っている?それも、囚人服すら着ることなく!」
ブレイズの一人、それも隊長格であろうと目される者が凛とした、いささか耳に突き刺さる高音で声を張り上げる。驚きべきことに、皇帝の身の安全を任される部隊の長は女性であった。
彼女は名をレノルトという、実力でブレイズの指揮官にまで上り詰めた女丈夫で、平素であれば見るものをはっとさせるような美貌の持ち主であるが、いまは顔を覆う兜の奥でひたすらに険しい表情を浮かべている。
レノルトの剣幕に圧されてか、看守はいささか動揺した様子でしどろもどろに説明をはじめた。
「じつは今日の夕刻過ぎ、帝都外周にて、我々がずっと目をつけていた禁制品の密売人を相手に捕り物を演じまして。この娘はそのとき、密売人が咄嗟に放った凶刃を腹に受けて負傷したのです。そのため、怪我の手当てをしたのち独房に寝かしつけた次第で」
「たわけを申すな、なぜ怪我人を独房に入れるのだ!」
「…といいますのも、この娘、我々が捕らえた密売人の客だったのです。どうやら、密売人は娘が我々の雇った密偵だと早合点をしたらしく…それゆえ、娘の意識が戻ったのち、取調べをする予定であったのです。生憎と他の独房はすべて埋まっておりまして、よもやこのタイミングで独房の開放が必要であったなどとは考えてもみず…」
「わかった、わかった!もうよい、下がれ」
うやうやしく一礼する看守を脇にどけ、レノルトは鉄格子の扉の鍵を開けて独房のなかへと足を踏み入れる。
それにボーラス、グレンロイという名の部下がつづき、最後に皇帝ユリエル・セプティム七世が独房の鉄格子をくぐる。その様子を確認したのち看守がふたたび扉に鍵をかけ、そのときに大きな音がしたにも関わらず、先刻から続く喧騒もろとも意に介さぬ様子で床に伏せる娘が目を開く様子はない。
やがてレノルトが壁に隠されていたスイッチを探り当て、独房の壁の一部が横にスライドする。
それは古くから監獄に用意されていた隠し通路であり、かつては古代エルフ“アイレイド”の遺跡であった地下施設を利用したものだった。
「陛下、お急ぎください。追っ手が迫っています、ここで時間を無駄にはできません」
レノルトに促され隠し通路へと向かう皇帝、しかし床に伏せる娘の傍らを通ったとき、何を思ったのか…彼はその場で足を止め、腰を落として娘のほうを見やった。
鋼鉄製の面で隠れた表情を窺うかのように皇帝は娘を凝視し、やがて、口を開く。
「この者は、この者の存在は…わたしの予知にはなかった」
「陛下?」
「いや、この者の存在そのものを予期してはいた。だが、この者は本来ならば、この場所にはおらぬはず…この者からは、大きな運命のねじれを感じる。運命の変化を、いや、運命が変わるからこそ、“本来ならば変わるはずであった運命が元の流れへと戻る”…?」
「…陛下、お急ぎください」
「うむ」
ボーラスに促され、皇帝は彼らとともに隠し通路へと向かう。
その様子を独房の外から観察していた看守は、一つの懸念を抱いていた。…あの隠し通路の扉は、どうやって封鎖するのだろう?
皇帝陛下とその護衛たちは、隠し通路の扉を戻すことなく行ってしまった。いまは眠っている娘があの通路を発見し、脱獄を試みたらどうなる?看守の目が光っているとはいっても、隙の生じる時間は存在する。
とはいえ…看守は嘆息する…謎の暗殺集団に皇帝陛下が襲撃され、あまつさえ王家の血統を継ぐ者たちの命が奪われたいま、そのような問題は瑣末なことに思えた。
一方、舞台は変わり…
タムリエル大陸南部、アルゴニアンの国“ブラックマーシュ”。
シロディール(帝国領)に近いロックガードの村にたった一つ、立派な屋敷が建っている。かつてアルゴニアンとともにブラックマーシュを開墾したダンマー(ダークエルフ)、その祖先である古代種“アイレイド”文明の研究家であり、また武道家、哲学者、経済学者としての側面を持つ村の名士の邸宅である。
その功績と人柄の好さゆえ“センセイ”と呼ばれ慕われる初老の男とともに、ベランダに立つもう一人の男の姿があった。
男の名は“ドレイク”。
ロックガード東部の都市ヘルストロムにて五十名を数える門下生を持つ剣術道場の師範代であり、これもまた街の名士にして、地方豪族の末裔であった。
キルティングが施された白い絹織物のローブという服装のセンセイと、黒い外套を纏い腰に大小を差したドレイクの対比は、端から見れば(また双方の年齢差からしても)親子のように見え、事実、この二人はドレイクが幼少の頃から付き合いの深い仲であり、ドレイクにとってセンセイは気性の激しく子育てに興味のない実父よりもよほど父親のかわりであった。
そしていま、ドレイクは実の父よりも父のように慕っていた恩人に別れを告げるため、この場所に立ち寄っていたのだった。
「センセイ、突然こんな話をして、信じてもらえるかはわからないが…シレーヌが姿を消した。二人で森の中を歩いているとき、突如として開いた魔界の門に引き寄せられ、そのまま閉じ込められてしまったのだ。門は消え、俺はただ一人、取り残された」
シレーヌとは狩猟家の娘で、ドレイクの幼馴染であり、また、長年連れ添った恋人同士でもある。結婚しなかったのは、ドレイクの父がそれを許さなかったからだ。
思い詰めた表情で眼下の村落を見下ろすドレイクに、センセイが語りかける。
「おそらく、それはオブリビオンの門だろう。すぐに閉じてしまったのは、それが意図的に開かれたものではない、不安定な存在だったからだ。おそらくは、何らかの力の余波…」
「余波、とは?」
「近頃、帝国領でデイドラ公メエルーンズ・デイゴンの顕現を目論む動きがあるとか。破壊と変革をもたらし、天災を象徴する存在…その崇拝者である、深遠の暁と呼ばれる集団。その足跡を辿れば、あるいは娘の行方を追えるかもしれぬ」
「俺は…行かなければならない」
「婚姻を許されなかった娘のために、確たるあてもなく、シロディールへ?ドレイクよ、道場はどうなる?一族にはなんと申し開きをするつもりか?」
「俺は気づいたのです。一族の栄誉、自らに課せられた使命、それよりも大切なものがあるということを。彼女を失い、ようやく…それを取り戻すためなら、俺は他のすべてを捨てても構わない」
「…一族の誇りのため、実の弟でさえその手にかけた男が、いままで頑なに守り、自らの人生の指標としてきたものを捨てるというのか。たとえ娘を取り戻せたとしても、二度とこの国の土を踏むことはできまいぞ」
「もとより承知のうえ。貴方とも、二度と会うことはないでしょう。センセイ…貴方から受けたこれまでの御恩、決して忘れることはありません。今日は、それを伝えに来ました」
背を向けて村から去っていくドレイクの姿を見つめ、センセイはため息を漏らす。
「…あまりにも。こうしてみると、あまりに。早い別れであった、若き獅子よ……」
老人の心はいま、過ぎ去りし日々のなかにあった。
厳しい伝統と鍛錬によって心を削られながらも、その瞳の奥に輝きを残す少年の姿。長きにわたり燻り続けていたその光はいま、自らの肉体をも焼き尽くす灼熱としてドレイクを包んでいた。
おそらくドレイクは、自らの胸に抱く希望によって命を落とすことになるだろう。
そう思うと、センセイは悲嘆せずにはおれなかった。
また舞台は変わり、帝都港湾地区の一画。
これは皇帝が独房を訪れるより前、密売人の凶刃を受けた娘がその原因である捕り物に直面するよりも前のことである。
いままさに日が落ちようとしていたところ、ルマーレ湖に面した貧民街のあばら家にて目を醒ました一人の男がいた。
「モ…モンテスキュー!?」
極めて奇ッ怪な単語を口にしつつ飛び起きる男、美男子というよりは三枚目と呼ぶにふさわしい容貌の青年は窓の外を見つめ、すっかり赤く染まったルマーレ湖を見るに至り、その慌てぶりはいっそう輪をかけたものになった。
「しまったー!寝過ごした!今日は皇帝暗殺の日なのに!!」
…このうっかり者、彼こそは人類に死と破壊をもたらす邪悪なデイドラ公メエルーンズ・デイゴンをこの地に呼び寄せようと画策する密教団“深遠の暁”信者にして、皇帝ユリエル・セプティム七世とその血統を根絶やしにすべく集められた暗殺部隊の構成員。
名を、エロール・ヴェスイウスという。帝国人(インペリアル)にして、かつてはメイジギルドに所属する魔術師であった。
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