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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/03/21 (Mon)05:40





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。今回はすこし昔話でもしようか。

 俺はブラックマーシュ南部のリルモスという街で生まれた。らしい。
 詳しいことはわからないが、生まれたばかりの俺は麻袋に入れられて街外れの井戸のすぐそばに捨てられていたというから、たぶん、そうなんだろう。そんなわけだから、俺は実の両親の顔も名前も知らない。
 赤ん坊を捨てたのは経済的な理由か、あるいはもっと複雑な何かがあったのかは知らないが、俺の実の母は、俺の入った麻袋をそのまま井戸の中に放り投げるほど冷酷にはなれなかったらしい。井戸は街の共有財産だから、それを汚すことに抵抗があったのかもしれないな。






 俺を拾ったのはビル婆さんという、偏屈なことで有名な物乞いの老婆だった。
 有り難いことに、ビル婆さんが俺を拾ったのは気紛れや優しさなんかじゃなかった。物乞いをするのに、捨てられた赤ん坊という小道具が役に立つと思ったからだ。他人の同情を買い、赤子のためにも金を恵んでやろうって気にさせるためにね。物乞いでありながら捨て子を養う心優しい老婆の力になってやろうって気にさせるために。
 赤ん坊が食べる量なんてたかが知れてるから、損をすることなんて有り得なかった。それでもおしめの交換のことには頭が回らなかったらしく、俺がおむつを汚しては、しょっちゅうビル婆さんに殴られてたよ。「てめぇで汚しといて、なに泣いてんだ!」ってな。
 そんな環境だったから、俺は自分で金を稼ぐようになるまで、腹一杯に飯を食ったことがなかった。ただビル婆さんだって、俺のためにマシなことをしてくれたこともある。たとえば、そう、名前をつけてくれたこととか。
 ビル婆さんは俺を「アーク」と呼んでいた。なにか意味があるのか、たんなる思いつきか、あるいは昔の男の名前だったのかは知らないが、俺自身も、その名前はけっこう気に入っていた。






 物心がついて、ある程度自分でものを考えられるようになると、俺はスリや泥棒で金を稼ぐようになった。親を知らない、物乞いに育てられた浮浪児が、ほかに金を稼ぐ手段なんてなかったからな。俺にしたって、金持ちになりたいとか、遊ぶ金が欲しいなんて考えてたわけじゃない。ただ、腹一杯に飯が食いたかっただけなんだ。
 もちろん、最初から上手くやれたわけじゃない。盗みのコツもノウハウも知らなかったから、しょっちゅう捕まっては、袋叩きにされたもんだよ。さすがに街の連中も浮浪児を衛兵に突き出すほど無慈悲な連中じゃなかったさ。腕を折られかけたことはあったけどな。
 ボコボコに殴られて唾を吐きかけられながら、俺は、「次こそはもっと上手くやってやる、俺をコケにした連中、俺より裕福な連中を見返してやる」っていう、恨みを原動力に独学で盗みの技術を磨いていった。
 どうにか自分で飯代を稼げるようになると、俺はビル婆さんのもとへはあまり寄りつかないようになっていた。そもそも、もう一緒にいる理由もないし、ビル婆さんも、薄汚れた犯罪者のガキと家族ごっこを続けたいようには見えなかった。
 しばらくビル婆さんとは疎遠になっていたが、あるとき、気紛れというか、虫の報せだったのか、たまたま会いに行こうと思ってビル婆さんのもとを尋ねたんだ。






 ビル婆さんは殺されてた。俺を拾った井戸のそばで。腹を鋭利な刃物で切り裂かれて。
 浮浪者仲間から情報を集めたところ、どうやらビル婆さんは俺への報復がわりに殺されたらしかった。このときにはもう俺はかなり素早くなっていて、ちょっとやそっとじゃ捕まらないようになってたから、それに業を煮やして、かわりに親代わりだったビル婆さんを殺したんだろうって話だった。
 犯人もすぐに特定できた。街で雑貨屋を営んでいる親父だ。俺は以前そいつに殺されかけたことがあって、その恨みもあって、そいつの店は割と執拗に狙って盗みに入ってたんだ。恨まれるのももっともだ。その親父は鍛冶屋に特注で造らせた鋼のダガーをいつも自慢げに腰にぶら下げてた。人間の腹なんか容易く切り裂けそうな、よく研がれたダガーを。
 復讐すべきだ、と俺は考えた。べつにビル婆さんのことはそれほど愛してたわけじゃなかったが、それでも俺を拾って育ててくれた、この世でただ一人の身内を殺された落とし前はつけなきゃならないと思ったよ。
 それに、恨んでる相手に歯が立たないから、その関係者を殺すなんていう卑怯な手を使われたことにも腹が立っていた。一番腹が立ったのは、それを「善良な市民」がやったことだ。
 相手がやくざなら、それほど腹は立たなかっただろうさ。それが裏社会の流儀ってやつだからな。だが、善良な市民なら話は別だ。善良な市民は、泥棒の被害に遭ったら衛兵に通報して、あとは衛兵に任せておかなきゃならないんだ。それ以上の行為は分を越えるってもんだ。
 善良な市民は、報復に人を殺すなんてことをしちゃいけないんだよ。そういうやつが周囲から善良な市民として扱われていること、善良な市民を自称していることが、俺には我慢ならなかった。人を殺しても善良な市民でいられる存在が。
 …生まれたときから社会のクズとして扱われてきた身としてはな。生まれただけで存在そのものを否定されてきた身としては。

 一ヶ月かけて俺はヤツを監視し、生活パターンを把握した。
 そして夜中、酔っ払った雑貨屋の親父が酒場から出てきたところを追跡し、人の気配がなくなったところで俺は素早く駆け寄り、親父が腰にぶら下げてる鋼のダガーを鞘から抜き取った。
 たぶん雑貨屋の親父はそのまま逃げられると思ったんだろうな。あくまで窃盗が目的だと。だから逃げようとはせず、逆に俺を捕まえようとしてきた。






 そのまま、俺は雑貨屋の親父の腹にダガーを突き刺した。そして腹を横一文字に切り裂いた。
 動揺はなかった。後悔も。そして、怒りも。
 雑貨屋の親父を殺したときの俺の頭は冷静そのものだった。もう相手に助かる見込みはないとわかると、それ以上に傷つけようとも思わなかった。ただ、やるべきことをやったという自覚のみがあった。
 もちろん人を殺した以上、俺はその場にはいられなかった。それどころか、俺はもうこの街にいられなかった。まだ犯人だとばれたわけじゃないが、疑われるのは時間の問題だ。それに唯一の身内を失った以上、この街に居続ける理由もなかった。
 俺は街を出て、あてのない放浪をはじめた。十四歳のときだった。










「前が見えねぇーッ!」
 舞台はかわって、現代のスカイリム。
 盗賊ギルド前マスターのガルスが遺した手がかりを究明するため、俺と相棒の戦士ボルガクはウィンターホールド大学を目指して旅を続けていた。
 さんざん寄り道したせいで、近づくどころか逆に遠回りをしたこともあったが、どうにかウィンターホールドの街に到着した俺たちはすぐに宿屋へ直行し、身体を温めることにした。






「オヤジ、リーキのグリルとエールを頼むよ!しっかしこの寒さ、なんとかならないもんかねェー?ブラックマーシュの生暖かい気候が懐かしくなってくるよ」
「カジートみたいなことを言うな相棒。故郷に帰りたくなったのか?」
「帰りたい、と思ったことも、なくはないけどね…」
 ボルガクの言葉に、俺は若干口を濁らせる。
「じつは俺、故郷(クニ)じゃ指名手配されててね。帰るに帰れんのよ」
「…お前~…なにやらかした?コロシか?」
「違う違う、そんなんじゃないって。俺の昔の商売に関係あることなんだけどね、そうだな…たとえば、たまに雑貨屋で特売のセールをやってたりするじゃん?ああいうの、元の商品をどうやって仕入れてると思う?」
「製造元が多く作りすぎたのを安く買い叩いたとか、仕入れる数を間違えたとか?」
「もちろん、それもあるけどね。ただ製造や発注のミスはそうそう起きるもんじゃない。俺はね、そういうのとは関係なしに、安くセール品を卸す業者をやってたんだよ」
 エールをぐっと飲み干し、俺は言葉を続けた。
「俺はね…倉庫荒らしだったんだよ」










 リルモスを出た俺は、ブラックマーシュを北上しながら盗賊の旅を続けていた。この時期、俺は「アーク=ビル」と名乗っていた。アカヴィルのもじりか、なんて言われたこともあったな。そんなこと考えもしなかったけどね。
 俺は半年以上、同じ街には留まらなかった。盗賊が顔を覚えられたらまずいからな。
 当時の俺は盗賊としての腕にはけっこう自信があって、余程のヘマをしない限り、まず捕まることなんかないと思ってたよ。衛兵なんか怖くなかったね。
 ただ、じゃあ何も怖いものなんかなかったのかっていうと、これがそうでもないんだな。





 俺が恐れていたのは衛兵じゃなく、盗賊ギルドの連中だった。
 ヤツらにしてみれば、ギルドメンバー以外の人間が領土内で盗みを働くってのは、ナワバリ荒らし以外の何物でもないわけだ。盗賊に限らず、裏社会じゃ一匹狼は何よりも忌み嫌われる存在さ。それは、基本的に単独主義の犯罪者たちが徒党を組んでる理由を考えればわかるはずだ。
 だから俺は衛兵に捕まることより、ギルドに睨まれないことに気を遣っていたね。ただ連中の情報網は凄いものだから、「アーク=ビルとかいう余所者が街を転々としながら盗みを働いている」という情報は把握してるだろう、と思ってたよ。
 俺は自分の正体を隠そうとはせず、ただ「やり過ぎないように」注意を払った。盗みに入ったらまずその建物の中で一番「高価」なものを探し、「そいつだけは盗まないようにする」とかね。要するにギルドの連中に、「わざわざ自分たちが出る幕じゃない。あいつは物の価値もわからないヘッポコ野郎だ」と思わせておきたかったのさ。

 もちろんギルドに加入すれば、そんな余計なことに気を遣わずおおっぴらに盗みを働くこともできただろう。だが、俺はどうもそんな気にはなれなかった。犯罪結社といっても、物乞いに育てられた浮浪児の居場所があるとは思えなかったしね。
 そんな思い込みを捨ててギルドに入ってれば、ひょっとしたら俺は自分の居場所や、新しい家族と呼ぶべき存在を手に入れることができたのかもしれない。ただギルドに入るってことは、その先の人生をずっと盗賊として生きることを意味する。それは御免だった。
 とはいえ他にやりたいことがあったわけでもないが、俺が望んでいたのは金じゃなくささやかな自由だったから、それで良かったんだな。それに、自分の居場所や家族なんてものにも興味はなかったし。

 十九歳のとき、俺はブラックマーシュ西端の街ギデオンにいた。
 「高潔なる黒狼」という名の宿の地下で高レートの違法賭博が催されている、と聞いたんで、俺は盗賊稼業で膨らんだ財布を腰にぶら下げて様子を見に行ったんだ。
 アウトローの例に漏れず、俺も賭け事は好きだった。盗みのワザとともに、ギャンブルのワザについても随分と学んだものだよ。イカサマの技術比べなんか、盗みと同じくらいにスリリングな瞬間だね。
 地下の賭博場で俺は連勝して、そのときはもう、誰にも負ける気がしなかったよ。
 そんなとき、俺に声をかけてきたやつがいた。






「やあ兄さん、随分と調子が良さそうだね。どうだい、僕と一勝負してみないか」
 それが、ヤツとの…エイド・スタームとの、運命的な出会いだった。



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 どうも、グレアムです。ひさしぶりのSkyrimです。
 今回はアーケイドの過去編です。ようやく設定が固まったので、二回に分けて送る予定であります。話自体はけっこう前に出来てたんですが、じつはアーケイドがECE導入前に作ったキャラで、写真撮影のためにECE環境で一度作り直す必要があったんで、それが面倒臭くてちょっと放置してたんですよね。
 次回、ブラックマーシュから逃れてスカイリムに辿り着くまでのいきさつを描きます。













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