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2015/11/20 (Fri)20:43
ゲームプレイ中と静止画像ではけっこう印象が異なる絵作りだと思う
Hatred、通称聖戦士シミュレータ、あるいはテロリスト・シミュレータ2015。
自らを「Not Important」と称する故ピーター・スティール似のサイコパスを操り、(どちらかといえば悪い意味で)ファミコン時代を彷彿とさせるプリミティヴな殺人体験を提供する本作は、いまの時代ならインディーメーカーがピクセルベースで製作するような内容をUnreal Engine 4を用いてリッチに表現した、特異なコンセプトを持つバリューゲーです。
一作目Postalの精神的後継作として話題になった本作はユーモアや、反社会的な内容に含まれた社会的なテーマといった、おハイソな文化人気取りのための言い訳の一切を切り捨て、「でも、心の中ではこういうことをやってみたいと思ってただろ?」という、マーク・ミラー的、露悪趣味的な問いかけで人間の持つ根源的な破壊欲求にのみフォーカスを置いています。
コミックス版キックアスに多くのアメコミファンが難色を示したように、本作もまた、どちらかといえば大衆にアピールするような内容ではありません。それについて開発側は確信犯的で、「本作のコンセプトを理解してくれる人だけ楽しんでくれればいい」という、さながらインディーズ的な姿勢は、映像的にはそれほど過激な描写はないにも関わらずAOレーティング判定を受けたうえで、それを覆そうとしなかったことからも窺えます。GTAやManhuntシリーズですら越えようとしなかったAOレーティングのボーダーは伊達ではないのです。
WEB上では「なんの正当性もなく幼稚な思考で社会不安をもたらす主人公に感情移入できない」という意見が多く、この「モニタの中でさえ理由を用意してもらえなければ人を殺すことすらできない」プレイヤーが多かったということは、むしろ海外のグロゲーを好んでプレイするようなゲーマーの中にあっても良識的な人間が多いことを証明するエピソードして好意的に語ることができる、というのはいささかこじつけが過ぎるかもしれませんが。
余計な脚色の一切を廃し、混じりっ気なしのピュアな殺戮シミュレータとして生を受けた本作。もしこの記事を見て興味が沸いた人がいたら、記事中に一言も「面白い」と書かれていないことを留意したうえで購入を判断してください。
このHatredというゲーム、俺はけっこう好きです。
「 I Don't Wanna Be Me 」
Peter Steel率いるGothic Metalバンド、Type O Negativeの名曲。
「俺は今のままの自分でいたくない」と歌ったPeter Steelはのちのインタビューで、「世の中に不満があるやつは一度、その文句を鏡の中の自分に向かって言ってみろ」と語りました。
かつてMonolithが放ったFPS「 Blood 」のイメージソング「 Love You To Death 」を歌った折、「俺はビデオゲームは好きじゃない」と語った彼は、2010年に心不全でこの世を去りました。享年48歳。合掌。
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