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2017/04/17 (Mon)20:02
Elona Plus 二次創作SS
【凶鳥の恋詩】
冒険者「暁に染まる魂」クレイブに付き添うペット、モー・ショボーの視点から両者の関係を描く。それは極めて悪魔的で不健全な純愛の物語。私と、彼…クレイブという男が出会ったのは、とあるネフィアの深層だった。
宝を求めてやってくる無謀な冒険者を切り刻むことを生き甲斐としていた私は、彼のことも同じように殺そうとし…結果として、返り討ちに遭った。
ルビナス製の弾丸で重傷を負った私は、どういうわけか銃を下ろして近づいてくる彼にこう言った。
「はやく…とどめを刺したらどうなの」
「オマエ、俺の仲間になる気はないか?」
「…なにを、言ってるの?私は魔物よ、いままで数多くの人間を殺してきたバケモノなのよ。それをわかって言っているの?」
「人殺しのバケモノ、ね」
彼の提案を受け入れるつもりはなかった。人間ごときに隷属するくらいなら、自害するほうがマシだと思っていた。
彼の次の一言さえなければ。
「奇遇だな、俺もだ」
彼は強かった。そして、冷酷だった。
ネフィアから地上へ出る道を辿る最中、彼が嬉々として人間を…ネフィアの闇に囚われた元冒険者たちを殺戮していく様子はあまりに美しく、私と同じ姿をした魔物が命乞いをするのも無視して生きたまま解体したときなどは、多いに興奮を覚えたものだ。
彼の悪魔的な残忍さに私はすっかり夢中になった。殺したくなるほどに。殺されたくなるほどに。
いつか彼と、互いの身体を互いの血で洗い流すことができたら、それはどんなに素敵なことだろう。
この男とずっと一緒にいたい、そう思った。私と彼のどちらかが相手の命を奪う、その日まで。
ただ一つ誤算だったのは、彼がネフィア探索などの交戦を想定した活動に非常に消極的だったことだ。
王都パルミアの北に居を構える彼の普段の活動は、釣りに、料理に、演奏会…街の商店に顔を出し、愛想の良い笑顔を振りまくのを日課としている彼はまったく普通の人間そのもので、そういうとき、彼はまったく刺激のない、ツマラナイ男になる。
彼は平和を愛していた。平和な日常を好んでいた。それが私にとってはあまりに不可解で、そして気に入らなかった。
この二面性はいったいどういうことだろう?
彼がネフィア探索に赴くのは、冒険者としてのノルマを達成せねばならないとき…一定期間中に一つはネフィアを攻略しなければランク(給料)が下がるという、そんな理由でもなければ、彼は戦いに身を投じようとはしなかったのだ。
だが彼は、ひとたびネフィアに入ると変貌する。
銃を手に、殺気で溢れる遺跡内部を探索するときの彼は、地上では決して見せない獣のようなぎらついた目つきで獲物を求め、血に飢えた息遣いを隠そうともせず彷徨う。
これはたんに、ネフィアの空気が彼を狂わせているだけなのだろうか?
いや、そうではない、と私は思う。
どちららかといえば本来の彼は、彼の本質は「こっち寄り」だと思う。私の愛する殺戮者こそ、本来のクレイブの姿に近いものだと思う。
彼にもその自覚はあるようだった。そして、そのことを気に入ってはいない様子だった。
それが私には不可解だった。
愛しい人、私の王子様。あなたはいつになったら「こっち側」へ来てくれるの?
「もっとこういう活動に熱心になったらいいのに」
ネフィア探索を終えたさい、私が言った一言に彼が反応した。あるいは、私があまりに欲求不満な表情を隠そうともしていなかったせいかもしれないが。
「あいつらを見ろ」
地面に転がっている死体を…ネフィアに巣食っていた賊どもや、エレアの戦士たちの亡骸を差し、彼が言った。
「ネフィア症候群というらしい、こんな穴倉に入り浸ったがために精神を害し、物の分別がつかなくなった哀れな連中さ。たぶん、俺は…容易にそっち側へ転んじまうと思う。だが、俺はいまの生活を気に入ってる。だから自制しなきゃならない。まだそっち側へ行く気はない、今はまだ…な」
「ふーん…」
「オマエが、俺の残酷な部分を好いてくれてることは知ってる。だから、これだけは言っておく」
そう言って、彼は笑顔を見せた。優しく、悲しい笑顔。
「俺が戦いから離れることはないだろう。現にいま、この大陸の危機を救うためにあちこち駆けずり回ってる。いずれ俺は英雄になるだろう、だが…そのために、どれだけの命を犠牲にする必要がある?何千、何万という命を、正義とやらのために平然と奪えるやつが、マトモなはずがない。
俺は…人を殺して後悔したことが一度もない。頭ではわかってる、そういうのが悪いことだっていうのは、理屈ではわかってる。だが、心の根っこの部分で理解できたことは一度もない。俺が戦って、相手が死んで、ただ、それだけのこと…そういう現象でしかない。俺にとっては。たぶん、この先も…本当の意味で罪悪を感じることなど、一度もないんじゃないだろうか。
だから、俺が還る場所はここ(ネフィア)しかない。いつか心も魂も失って、ただ殺されることを望みながら殺し続けるようになるだろう、永遠に、永劫に。そういう瞬間に、最期に俺の隣にいるのは、オマエでなけりゃ駄目なんだ。
幸運なことだよ。そういうヒトデナシを愛してくれる存在がいるっていうのは」
彼の話は私が想定していたよりも長く、特に内面的な話については私に理解できない部分が多かった。私は魔物で、彼は人間だったから。その境は曖昧で、希薄なものだったにしろ。
いずれにしろ、私にも理解できたことがあった。ただ一つ。
「つまり、あなたは私を必要としてるってことね」
「わかってんじゃん」
いつになるかはわからないが、いずれ彼は、私好みの、私が望んだままの存在になってくれる。
それがわかっているから、だから今は…
「おーいショボーちゃん、ちょっとコレ見てくださいよ!温泉でクジラが釣れたよ!」
「……はぁ」
だから今は、この退屈な日常を、もう少しだけ我慢していよう。
[▼More…]
どうも、グレアムです。
もうそろそろElona Plusも第二部をクリアしそうな気配がしたので、このあたりで現在プレイ中のキャラクターまわりの脳内設定を一度摘出しておこうかなという、そんなカンジの更新でゴザイマス。
我が愛しの嫁たるモー・ショボーちゃん、内面設定は非常に悪魔的というか、メガテンシリーズにおける悪魔らしさ的なものを引きずってます。人間とは明らかに異質なもの、人間の常識が通用しない存在、といった具合で。悪魔的には善こそ悪、悪こそ善だと思うので、そのへんを上手いこと表現したかった。ただ一応人間的な常識も持ち合わせているので、無闇に残虐行為に走ったりはしないです。
ちなみにElona Plusに登場するモー・ショボーはあくまでPlus固有のものであり伝承に伝えられるものとは違う、という(個人的)認識なので、普通に食事するし、ガンに弱いということもない(笑)ということで。
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