主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2014/08/08 (Fri)08:54
「俺の名はクレイブ、傭兵だ。今日もウェイストランドでの旅がはじまる…」
** ** ** **
ウェイストランドの荒野を彷徨う一人の老人の姿があった。
彼の名はオーウィン・リオンズ、またの名をエルダー・リオンズ。東海岸におけるBoSの最高権力者である。彼が目指す先にあるのは、すでに崩れ落ちて久しい教会。
「如何なされました…ご老人が、それもお一人で」
「とぼけるでない、傭兵。それにしても、似合わん格好じゃのう」
エルダー・リオンズが訪ねたのは、レリックを首から下げ漆黒のカソックに身を包んだ若者だった。一見聖職者のように思える青年の風貌はしかし、咥え煙草にサングラスという出で立ちから、たんなるやくざ者のようにも見える。
先刻まで穏やかな態度を取っていた若者は、エルダー・リオンズの口から「傭兵」という単語を耳にすると、眉をぴくりと吊り上げた。
「…できれば放っておいてほしかったんだけどな」
「お主の力が必要になったのだ。しかし、なぜ神父なぞになろうと考えたのだ?」
「俺がどれだけ戦っても、争いはなくならない。親父は浄化装置の起動にさえ成功できればウェイストランドを救うことができると思っていた、だが現実はどうだ?何も変わりゃしない…いい加減、虚しくなってさ」
「だから世捨て人同然の生活を選んだというわけか。しかし、腕に衰えはないようだの」
そう言って、エルダー・リオンズは教会の入り口に転がっているレイダーの死体を顎で指した。爆殺されたのか、焼け焦げ四散した肉塊が散らばる地面を見つめ、青年…クレイブは肩を竦める。
「最低限の自衛権行使ってやつさ。非戦主義にも限度ってもんがある…それにしたって、組織の最高権力者ともあろう者がこんな僻地にまで一人で来るのは関心しないな。危険すぎるぜ」
「まだまだ若い者には負けんわい。それにお主、どうせ手下を寄越したところでロクな返事はすまい?」
「だから護衛もなしに来たって?いったい、なにがあったんだ」
** ** ** **
「まさか、こんな僻地にまで来る破目になるとはね…」
キャピタル・ウェイストランド南西部、ロックランド車道トンネル。
瓦礫を踏みつけながら、BoSマーク入りの資材が積み重なった敷地内を歩いていると、やがて一人のBoS隊員が俺に話しかけてきた。
「ここは関係者以外立ち入り禁止だ。それとも、従軍牧師か何かかい?」
「どっちでもないよ。リオンズのジーサマから話はいってるだろ?」
「すると…アンタが例の英雄かい?ユニークな人物とは聞いてたが、神の信徒だったとはな」
「信心に目覚めたのは最近だ。状況はどうなってる?」
「最悪よりはマシって程度だな。歩きながら話すとしようか」
どうやらエンクレイブが使用していたものをオーバーホールして再利用しているらしい、タレットや機材の数々を俺が眺める横で、今回の作戦の指揮官らしいパラディン・トリスタンが話をはじめた。
「既にエルダーから聞いてると思うが、俺たちはリバティ・プライムを使ってエンクレイブの残党処理をしていた。ベルチバードやタレットなんかの兵器の処理はロボットに任せて、ちょこまかと動き回る歩兵を俺たちが処理するってわけだ、実際上手い連携だったよ」
「そもそも、なんでエンクレイブと全面戦争になってるんだ?連中、浄水装置の確保に失敗して散り散りになったと思ってたけど」
「知らないのか?あいつら戦力を立て直して浄水装置への襲撃作戦を敢行したのさ、それまではリオンズも交戦をためらってたんだけどな。もう互いに引ける状況じゃなくなっちまってな、で、俺たちは早期決着を目標に連中を徹底的に叩くことにした。といっても、こっちには無敵のリパティ・プライムがいるから、楽勝ムードだったんだけどな」
しかし、問題が発生した。それも、大問題が。
教会でエルダー・リオンズから「リバティ・プライムが破壊された」と聞いたとき、俺は思わず「ウソだろ?」と訊ね返してしまった。それだけ、あの無敵の超巨大兵器がやられる姿なんか想像できなかったからだが、しかしそれが事実だとするなら、組織の長が身体を張って俺を迎えに来るのも頷けるというものだ。
「そのときは俺もあの場にいたんだが、ミサイル兵器か何かのようだったな…いや、実際はどうなのか検討もつかないんだが。とにかく、巨大な爆発が起きたあと、煙が晴れるころにはリバティ・プライムの残骸が散らばってたってわけだ。爆発に巻き込まれて死んだ仲間も大勢いた、過去最大の損耗だったよ」
『我々はコミュニストの侵略には決して屈しない!』
「…筋金入りの愛国精神だな、こりゃ」
ロックランド東部、衛生中継ステーション入り口。
地面に穿たれた幾つもの巨大なクレーターの上に、かつてジェファーソン記念館奪回作戦のときに見た雄姿の残骸があった。分断された東部はしかし、未だに闘志を失ってはいないらしい。
「我々の当初の目的は、連中の通信設備の確保と衛星通信の解析による敵本部の位置の特定だった。だが、リバティ・プライムが破壊されたことで、こいつは初動の段階で躓いた形になるな…」
「で、俺は何をすればいいんだ?」
「現状で通信施設への侵入路はリバティ・プライムが最後にビーム砲撃で空けた穴だけだが、そこは敵の防御が集中してて手出しができん。君には別の場所から少数の突入チームを率いて施設に潜入し、手掛かりとなるデータを入手してほしい」
「なるほど。で、肝心の突入手段は?」
「リバティ・プライムの兵装から取り出した指向性爆薬がある、そいつを壁に設置して爆破だ…パラディン・エドワーズ!」
パラディン・トリスタンが声を張り上げると、通信施設の近くで待機していたBoS隊員の一人がこちらへ向かってくる。
ベレー帽をかぶった女性隊員は敬礼すると、俺を見て一言呟いた。
「彼は?」
「リオンズが派遣した傭兵だ。例の英雄さ、ジェームズの息子だ」
「ただの傭兵だよ。よろしく、美人サン?」
「口が達者なのは英雄のたしなみなのかしら?よろしく、傭兵さん…それとも、神父さん?」
俺とパラディン・エドワーズが握手を交わしたのを確認してから、パラディン・トリスタンがふたたび口を開く。
「突入の直前に、我々残留部隊はリバティ・プライムが開いた突破口に向けて制圧射撃を開始する。敵の大部分を釘付けにすることができるはずだ、その間に施設内の捜索と敵の掃討を…無理のない程度に…頼むぞ」
「了解した、パラディン」
「了解はいいんだけど」
フランクな敬礼を返す俺に向かって、パラディン・エドワーズが疑問を呈する。
「あなた、丸腰じゃないの?銃は?」
「俺にはこいつがある」
そう言って、俺はカソックの下から銃剣を取り出した。標準的な米軍仕様のM9、それを目にしたパラディン・エドワーズは眉間の皺をいっそう深くするばかりである。
「…冗談よね?」
「こいつが銃より役に立たない、なんて思わないでくれよ?英雄の戦いぶりってやつを見せてやる」
その言葉を聞いたパラディン・エドワーズはしかし、一層不信を高めただけのようだ。パラディン・トリスタンに説得を促すが、彼女の上司は肩をすくめただけだった。
** ** ** **
やがてパラディン・エドワーズと数人のBoSソルジャーを率いた俺は、渓谷を迂回し通信施設の外壁に指向性爆薬を仕掛ける。
起爆装置に手をかけたところで、随伴の通信士に合図を送った。
「こちらセプテンバー、準備完了。繰り返す、準備完了」
『こちらビッグヘッド、了解。攻撃を開始する』
通信士が無線による交信を終了すると同時に、遠方から多数の銃声が響き渡る。味方の陽動がはじまったのだ。
「さて、じゃあ…こっちもはじめるとしますかね。カウント・スリーでブリーチ、オーケイ?」
「カウント・スリーでブリーチ、了解」
パラディン・エドワーズ以下数名の隊員の姿を見回し、俺は起爆装置の安全ピンを外した。
「ワン、ツー…スリー!ブリーチング!」
カチ、カチ、カチッ!
起爆装置のスイッチを三回押した直後、KABOOM!外壁が吹き飛び、巨大な横穴が空いた!
「ゴー、ゴー、ゴー!ムーブ・イット、ムーブ・イット!」
掛け声とともに、大口径拳銃を手にしたパラディン・エドワーズが先頭に立つ。
どうやら虚を突かれたらしい、施設内部には泡を喰って慌てふためいているエンクレイブ・ソルジャーが数人いた。
BRATATATATATA、銃撃を開始するBoSソルジャーの傍らで俺は銃剣のグリップの底面に装着されていたリング状のピンを抜き、ちょうど他の隊員からは死角になっている位置から銃を構えているエンクレイブ・ソルジャーのアーマーに向けて銃剣を投げつける!
KABOOM!
アーマーに刺さった直後、銃剣内部に仕込まれていた焼夷榴弾が炸裂しエンクレイブ・ソルジャーを粉砕した!
「どうだい、強化外骨格ってのは抗弾性能に特化してるからな。下手な銃弾よりも、こいつのほうがよっぽど通用するんだぜ」
「あ、あっ、あッ、危ないじゃあないのよ!?こんな至近距離で爆発兵器なんか使わないわよ普通!?」
「エー…ちょっとは感心してくれても良さそうなもんだけどなぁ」
「冗談じゃないわよ!」
KABOOM!
KABOOM!
KABOOM!
爆殺ナイフでエンクレイブ・ソルジャーを仕留め続ける俺に対し、しかしBoSメンバーが敬意を抱くことはないようである。
「仕方ない…それじゃあ、レディのリクエストに応えるとしましょうか」
「よっ…と」
ガッシャン。
俺はエンクレイブ・ソルジャーが使っていた個人携行用のミニガンを持ち上げ、装弾やバッテリーの状態を確認する。
さすがにパワーアーマー等のアシストを使わずにこいつを振り回すのは骨が折れるが(俺はあまりマッチョマン・タイプではないし)、閉鎖空間で弾をばら撒くだけなら暫くは大丈夫だろう。と思う。
VOOOOOM!
工事現場のドリルのような独特の銃撃音を鳴らし、多量の銃弾をあっという間に吐き出すミニガン。これだけの弾雨に晒されたとあっては、さすがのエンクレイブ製パワーアーマーも保たないようだ。
しかし…
「ノー!苦しい!」
忘れていた…こいつを閉鎖空間で使用すると、あっという間に酸素がなくなるということに!
酸欠に陥りながらも、どうにかしてターミナルを探り当てた俺は、ミニガンをその場に立て掛けるとコンソールの操作をはじめた。
「遠隔測定データ…暗号化されてるな、手持ちのソフトウェアじゃ解読できないねェ。いちおうダウンロードだけしておくか、あとはブランク・データがほとんどだな」
「なにか見つかった?」
「役に立ちそうなデータが一件、といっても要塞に戻って解析してもらう必要があるけどね」
「それじゃあ、そろそろ撤退しましょう。あまり長居すると敵の大部隊と鉢合わせになるわ」
俺と同じく酸欠に苦しめられていたパラディン・エドワーズに促され(ちなみにパワーアーマーには酸素タンクが内蔵されており、マスクを装着していればそいつを利用することができる)、その場を離れる。
ミニガンを放置し、そのへんに転がっていたアサルトライフルを手にした俺は、しばらく進んだ先に外界へと通じる扉を発見する。しかし。
「おや?これって…ロックランドじゃあなくて、キャピタル・ウェイストランドに続いてるぞ?」
どうやら、この通信施設はキャピタル・ウェイストランドとロックランドの中継地でもあったらしい。
「だったら、あなたは直接要塞に戻ってデータを届けて。パラディン・トリスタンには私から報告しておくわ」
「悪いね、それじゃあ…元気でな」
俺はパラディン・エドワーズ以下BoSソルジャーたちとその場で別れ、一路BoSの要塞へと向かった。
** ** ** **
「ま、そんなわけで…いま、データはスクライブ・ロスチャイルドが解析中だ」
「それはいいが、お主まだそんな格好しとったのか」
旧国防総省ビルとして知られるBoSの拠点にて、俺はロックランドの通信施設で得た成果についてエルダー・リオンズに報告した。
もちろんこれで俺の仕事が終わったわけじゃない、まだ手始めに過ぎないのだ。
BoSとエンクレイブの雌雄を決する戦いに巻き込まれ、俺自身もすでに手を引けるような段階ではなくなったことに遅まきながら気づいたが、まぁ…そんなこともあるだろう。
ひょっとして、わざわざ神が俺を天国からクソッたれの現世へ叩き落としたのはこのためか?
そして、死者の世界で再会した女の面影を思い出しながら…俺は含み笑いを漏らした。
あそこへは、ちょっとした手土産話を作ってから帰るとしよう。
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