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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
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2016/05/24 (Tue)18:39





Fallout New Vegas : Twin Aces
Dead Money - Epilogue -



 傭兵が去ってから、長い時間が過ぎた。

 ヴィラ中央広場の噴水に置かれたラジオからはヴェラ・キーズの歌が流れ、そして噴水に腰掛けるクリスティーン・ロイスの口からヴェラ・キーズとまったくおなじ声が発せられる。
 ラジオにあわせて歌うクリスティーンの前には、ゴースト・ピープルたちがまるで聴衆のように大人しく、攻撃的な態度を見せることなく静かに佇んでいる。
 いつからかゴースト・ピープルはクリスティーンに危害を加えなくなり、まるでそこに誰もいないか、あるいは彼女がホログラムであるかのように振る舞うようになった。その理由はクリスティーンにもわからなかったが、彼らが敵ではないとわかると、彼女自身もゴースト・ピープルの存在を意識することがなくなった。
 ときおりシエラ・マドレの伝説を聞いて無謀な挑戦に訪れる冒険者を丁寧に、しかし強硬的な態度で追い返しつつ、クリスティーンは時間の概念を失ったかのように、今日も歌い続ける。

 ヴェラ・キーズの代表曲、「再出発( Begin Again )」を。










はじまりは夜に訪れるもの
今夜すべてをやり直しましょう





 
あなたの腕でわたしを抱きしめて
頬をそっと寄せてほしい






どこへだって行ける
望みのものが見つかるはずよ






もう行く時間だわ
だから今夜、今夜すべてをやり直しましょう









 一方…モハビ・ウェイストランド東部、188交易所。

 俺の名はクレイブ、傭兵だ。
 シエラ・マドレでの任務を完了しヒドゥン・バレーに潜伏しているモハビBoSに報告を終えた俺は、主要道路の交差点であり、NCR軍やキャラバン隊の通過点として栄えるこの市場に、知人を訪ねてやってきていた。






「よおーアレキサンダー!商売は順調かね?」
「まずまずってところだ。おまえは相変わらず疫病神を演じてるのか、ン?」
「そっちこそ相変わらず初見の客をいびってるんだろ?」
「「アッハッハッハッ!」」
 小洒落たコバルトブルーの傭兵服を着ているのはアレクサンダーという男で、ガンランナーという銃器製造会社の出張販売員だ。質の良い武器を数多く揃えているが、素人客には決して売ろうとしない。ポリシーがあるのだという。
 ウェイストランドで銃を新規に製造できる技術を持つグループは稀で、さらに質の良い銃を作れるというのは滅多にない才気だ。大半がオーバーホールした戦前の銃を扱うウェイストランダーにとって、新造の高性能銃というのは喉から手が出るほど欲しい高嶺の花であり、それが生き馬の目を抜くウェイストランドで売り手市場が成り立つ理由だった。
 なにを隠そう、いま俺が腰にぶら下げている拳銃もガンランナー製だ。それは俺がガンランナーを信頼していることを意味し、そして、ガンランナーも俺を認めていることを意味していた。
 なんたって、こいつは特注品なのだ。専用のシリアルナンバーと刻印が打たれ、俺好みに調整されている。贅沢とは無縁の俺が、いつも財布に穴が空いたようにからっけつなのは、こういうところでの金遣いが荒いからだった。タレットの強化装甲を薄いアルミ缶のように引き裂いた特殊弾然り。
 仕事の道具を選ばずとも戦えるのは傭兵として必須のスキルだが、選べる状況でそれをしないのはただのアホだ。
 なにより…最高の装備で戦いに挑む瞬間ほど、人生で楽しいものはない。
 俺はアレクサンダーと肩を抱き合い、拳を合わせてから、彼の周囲で暇そうに煙草をふかしている護衛を一瞥し、口を開く。
「今日はもう客なんか来ないだろう?カンバンにして、上の店で飲もうぜ。奢るよ」
「奢り?おまえがか?また悪いことをやらかしたな、こいつめ。それじゃあ、不幸を被った誰かのために乾杯するとしよう」
「ちょっとは嬉しそうにしろよ!」
 それから俺たちはサミュエルとミッシェルのケール父娘が経営する188スロップ&ショップへ行き、それぞれウィスキーとビールを注文してスツールに腰かけた。

 空瓶が何本か転がり、灰皿が吸殻で溢れそうになったころ(煙草を吸うのは俺だけでアレクサンダーはあまり良い顔をしなかったが)、俺はバックパックから「あるもの」を取り出し、アレクサンダーに見せた。






 ずっしりと重い金のインゴットを手に取り、しばらくそいつを眺めてから、アレクサンダーは酔いで赤くなった鼻を鳴らし、神妙な面持ちになった。
「色を塗った合金…てわけじゃなさそうだな。カジノでも襲ったのか?」
「まあ、そんなもんかな」
「おまえ、いつから強盗にジョブチェンジしたんだ?やめろよ、ヤバイ話は御免だぜ。なにを敵に回したんだ?まさかストリップ地区の三大ファミリーじゃないだろうな」
「そういうんじゃないよ。もう閉鎖されたカジノさ、戦前の。強盗じゃない、スカベンジ(ゴミ漁り)さ」
「そりゃあ、また。たいした宝を掘り当てたもんだな」
「なあ、そいつを捌けるアテはないか?」
「…おまえな。俺が何に見える、金物屋か?そりゃあ商売柄、ガンランナーは金属に関する知識はあるがな。こういう物(ブツ)の取引は専門外だ」
「上客には金持ちも多いんだろ?そういうツテで欲しがる客を探せないか?」
「簡単に言ってくれるなよ。客にはなんて説明するんだ?『じつは先日、知り合いがこの出所の怪しい金を持ってきまして、できれば買っていただきたいのですが』って言うのかよ?ふざけてんのか…それに今日び、金に絶対的な資産価値があるわけでもないしな」
「そうなのか?」
「というより、適正な価格で扱える人間が少ないのさ。こんな時代じゃあな。それに適正な価格を知ってるからといって、適切な価格で買ってくれるとは限らない。難しい商品なんだよ、こいつは」
「それじゃあガンランナーはどうだ?」
「ハァ?なんでうちが金なんか買わなきゃならないんだ?資産価値として期待は持てないと言ったろう」
「そうじゃなくてさ。金持ちの客を相手に、金そのものが売れないなら、金でできた銃を作って売るっていうのはどうかなと思って」
「金の銃!?なんて悪趣味な発想だ!うちは実用性第一で売ってるんだぞ、宝石屋を気取っておチャラいファンシー・アイテムなんぞ売れるか!」
「需要はあると思うがなぁ…」
 おそらくポリシーに触れたのだろう、癇癪を起こすアレクサンダーに、俺は力なくつぶやいた。
 そう…この金塊はシエラ・マドレの金庫から持ち出したものだ。
 エリヤから連絡を受けターミナルから離れる直前、数本をバックパックに忍ばせておいたのである。大量に盗まなかったのは怪しまれないためというより、単純に重く嵩張るためである。
 退職金を欲しがる歳ではないと言ったが、金に頓着しないわけじゃない。ないよりはあったほうがいい。当たり前の話だ。俺は善人でも聖人君子でもない。役得は有り難く頂戴する、それが俺の流儀ィィッ!
 …なんだが、そう、このウェイストランドじゃあ金のインゴットなんて売り先に困るんだよな。
 そんなわけで、とりあえず顔の広い、特殊な顧客のネットワークを持つアレクサンダーに話を持ってきたのだが…
 それからしばらくは金塊を酒の肴に他愛のない話を繰り返し、夜が更けてから俺は席を立ち上がった。
「もう行くぜ、今日はボルダーシティに宿をとってある。じゃあな」
「ちょっと待て」
 去ろうとする俺を、アレクサンダーが呼び止める。
 テーブルに残したまま忘れていた金塊を手に取り、彼は言った。
「こいつだが…しばらく、俺に預けちゃもらえないか?さっきの話だが、提案そのものは悪くない。俺の一存じゃ決められないが、今度ニューベガスの支社に戻ったときに上と話をしてみるよ。金塊はこの一本だけなのか?」
「あと二本ある。なにせ一本で機関銃より重いからな、その程度が限界だった。預けてもいいが、盗むなよ」
「そんなことするか。こっちは信用商売だからな」

 その後、ガンランナーは特別な顧客向けに金を使った銃の製造を開始。
 金を預けた俺は売り上げの一割を受け取る、という契約で話が纏まった(もっともこの部分のやり取りに関してはだいぶ揉めたのだが)。







 その後、完成した銃を仕入れたアレクサンダーは188交易所で限られた客のみをターゲットに販売をはじめた。
 黄金に輝く銃を観察しながら質問する客に、アレクサンダーは饒舌に説明を加える。
「純金か?」
「いえ、合金です。金は熱と衝撃に弱いので、そのままでは実用に向きません。インテリア用の飾りでなら問題ありませんが、我がガンランナーでは見た目と実用を兼ねた銃器製造をモットーにしておりますもので」






 全体に彫刻(エングレーヴ)が施されたブローニング・ハイパワーを手に、「選ばれた客」に対してだけ向ける愛想の良さを振りまきながら、アレクサンダーは言葉を続けた。
「見た目が派手なだけじゃありません、内部パーツもすべて吟味された精度の高い部品を選りすぐって使用しています。トリガーは引きと戻しが最小になるよう調整され、バレルは内側にクロムめっき処理が成されています。汚れに強く、寿命が飛躍的に延びます。精度はわずかに落ちますが、拳銃の有効射程内では問題になりません。リコイル・スプリングはコイル型の二重式を採用しておりまして、プリンキング用のアモからホット・ロードまで弾の種類を選びませんよ。サイトはオールドなスタイルですが、緑に発光するトリチウム・カプセルが埋め込まれ暗所でのサイティングを容易にします」






「本物の白蝶貝を使ったパールグリップには、聖母マリアを象ったレリーフが嵌め込まれています。格調高く、気品漂う逸品に仕上がっておりますよ」
「すこし隙間が目立つな?」
「ええ、モハビは砂が吹きますもので。マッチ用ならタイトに仕上げるんですが、コンバット・シューティングを想定した場合、砂を噛んで動作不良を起こさないよう、あえてクリアランスを設けてあるんです。精度に致命的な影響を与えないギリギリのスペースを、我がガンランナーの腕利きの職人が見極めて調整しています。安心してお使い頂けることでしょう」
「なるほど、実戦的なカスタムというわけか。気に入ったぞ」
 客の男…白いチェック柄の派手なスーツを着た伊達男は、アレクサンダーから銃を受け取ると、しばらく眺め、遊底を引き、アクションを確認したのち、満足げなため息をついた。






「こいつをもらおう。一括払い、キャップでだ」
「ありがとうございます。

ベニーの旦那」

 このときのアレクサンダーには知る由もなかった。
 目の前の男、ザ・トップス・カジノを経営するニューベガス・ストリップ地区の三大ファミリー「チェアメン」のボスが、間もなく知人の傭兵と因縁を築くことになるなどとは…





< Wait For The Next Deal... >








 どうも、グレアムです。Fallout: New Vegas、Dead Money最終回です。
 ヴェラ・キーズのBegin Again、作中のはかなり適当な和訳です。ディーン・ドミノの回でちょっとだけ出てきた、Saw Her Yesterday(というかSomething's Gotta Give)もそうなんですが。
 因果はどんなふうに巡るかわからない、ということで、ベニーの愛銃マリアの出自をでっちあげてみました。本来はマリアのカラーは金ではなく銀(クロムめっき?)なのですが、せっかくなのでテクスチャを改造。FOOKはバニラに登場する銃のほとんどをMeshから差し替えるのですが、なんと新Textureはグリップのマリアの肖像が消されてて参った。Textureの配置が違ってるかもわからないので、この部分だけバニラのTextureを抜き出して移植しました。面倒臭かった…
 ていうかベニーがカッコ良く撮れねェよ!なんでゲーム中のグラフィックはこんなに冴えない顔なんだよコイツ!ハの字眉で垂れ目で若干下膨れ気味とかどうすんだこれ。ベニーだけリプレイス系のMod入れたいなぁ本当に…あるかな?













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