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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/05/01 (Wed)06:18
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2015/12/16 (Wed)22:33




 どうも、グレアムです。
 Fallout3のポーズ系MOD(追加されたモーションをコンソールから指定してキャラにポーズ取らせるMOD)の中にFor a Few Poses Moreというのがありまして、多くのポーズ系MODが日常的なポーズの再現に比重を置いているのに対し、こちらは銃をかまえるポーズを多くカバーしているという点で非常に重宝しているのですが、なにせ数が多い(180だっけ?)のでゲーム中で確認するのが非常に面倒臭いんですよね。
 なので、ほぼ自分用にポーズのリストを作ることにしました。やってみたら意外と面倒臭かったので、今回は00~31までの32種類のモーションを掲載します。
 いちおうNexusのほうに数多くの写真が掲載されているのですが、やや利便性に欠けるのと、すべてにモーションの番号が付記されているわけではないので。



【00~07】



【08~15】



【16~23】



【24~31】



 一部見づらい部分もありますが、ポーズのたびにライティングや角度を調節するのが面倒くさかったので修正してません。すいません。いちおうポーズの性質がわかりやすい角度を選び、全身が写るよう(これ重要)最低限の配慮はしたつもりです。
 また一部銃を持つことを前提としないポーズでも銃を持たせていますが、これは銃を持ったポーズとしても通用するかどうか(ボーンが設定されているかどうか)のテストです。本来はメレー武器の確認もすべきなんですが、俺はメレー武器使わないのでやりません。すいません。

 ちなみに撮影場所はFOOK2で追加されるFront Royal Canyon、本来はQAWorldOrigin(又はTestQAWorld)と呼ばれるテスト用のマップですね。Fallout3にはこの他にも幾つかのテスト用マップがデータ内に存在しているようです。
 テスト用だからなのか遠景表示がうまくいってなかったりしますが、雰囲気がいいので個人的にはかなり気に入ってる場所だったりします。アクセスはマップ北西(だったかな…)のAlbert Einstein Tunnelから。
 本来の仕様ではハンターやヤオグアイ、ミレルークが徘徊しているらしいですが、FOOK2では犬とミレルークキングが出没します。





 





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2015/12/14 (Mon)20:06





 どうも、グレアムです。
 Fallout小説のリメイク版がいちおう五話まで進んだのでまとめのページをHPに作りました。


 自分的にはとりあえず五話くらいがページ作成のボーダーかな、と思ってたので。もちろん、この後も継続させなければ意味がないんですが…まだ五話未満のニューベガス小説のほうはページ作ってません。どのみちFallout4が最終パッチ出すくらいまで3とNVをやってるつもりなので、まあ気長に構えてます。現状のPCスペックだと4をやるには厳しい感じだし。
 3小説の序盤の構成としては、道中トラブルに巻き込まれながらモイラのウェイストランド・サバイバルガイド作成を手伝う、という感じを想定しています。じつはまだあまり考えていない。
 現状で扱いに悩んでいるのがGNRでのイベントです。クレイブはVault122へは偶然立ち寄り、リベットシティとのコネクションもウェイストランド・サバイバルガイドの件で確立してしまうので、ストーリー的には訪れる必要がないんですよね。
 ただメインクエストなので盛り上がるイベント構成が魅力的っていうのと、これやっとかないとBoSとの繋がりが希薄になってしまう(ただでさえクレイブはBoSに若干否定的なスタンス)ので、できれば抑えておきたくはあるのだけれども。

 Skyrimのほうはどうしようかなぁ…














2015/12/12 (Sat)21:38




 俺の名はクレイブ、ヴォールト脱走者だ。
 クレーターサイド雑貨店の女店主モイラの依頼でウェイストランド・サバイバルガイド執筆のための資料収集をしている俺は、同時期にメガトンへやってきた放浪者(ウェイストランダー)のカーチャとともに地雷原の調査へ向かっていた。
 ゴーストタウンと化したリッジフィールドの街は現在、軍用地雷が大量に敷設された危険な場所になっている。いったい誰が、何の目的で地雷を撒いたのか。また街は夜になると幽霊が出るという噂があり、レイダーですらも不用意に近づくことを避けるスポットとして知られていた。
 街の入り口でレイダーの死体を発見し、カーチャと分かれて屋内の捜索をはじめた俺は、そこにもう一人のレイダーの死体と、そして無残な最期を遂げた女の死体を発見する。
 おぞましい光景を前に胸を痛める俺の耳に、突如悲鳴が聞こえてきた。
 まさか、カーチャが…不穏な予感が頭をよぎり、俺は銃を手に建物を飛び出した。








「まさか、カーチャが…!」
 勢いよく扉を開け放ち、俺は地雷に注意しながら悲鳴が聞こえた方角に向かって走り出す。
 死んで間もないレイダーと、そして女の死体。
 殺された者がいるということは、殺した者がいたということだ。ここで。この街で。ひょっとしたら、まだ近くにいるかもしれない。カーチャの身を案じるには充分すぎる状況だった。
 ドン、ズドン…
 正面に見える建物の中から、ひときわ大きな銃声が聞こえる。続けて、タタタタタン、ミシンの音をさらに大きくしたような発砲音。これはカーチャのMP40のものだろうが、その前に聞こえたのは?カーチャはサイドアームを下げていたか?
 めっきされたトカレフを持っていたはずだが、さっきの銃声はトカレフのものとは異なる。嫌な予感がする…
 建物へと近づいた俺は、一も二もなく扉を蹴破り、素早く銃をかまえた。




 建物の中でカーチャと対峙していたのは…俺にとっては非常に見覚えのある(なにせヴォールトで生活していたときからの馴染みだ)生物だった。
 ラッドローチ。放射能で巨大化したゴキブリだ。
「近づかないでくださいまし!こっちに来ないでくださいまし!」
 おそらく人間の言葉など理解できないであろうラッドローチに向かって叫びながら、カーチャが見るからに取り乱した様子で銃弾をばら撒いている。
「ありえませんわ!ありえないですわ!」
 ていうか、こんな屋内で9パラなんか撃ちまくったら危ないだろ!跳弾的に!
 どうやら俺が入ってきたことにも気づいていないらしいカーチャの背中から銃口を突き出すと、俺は努めて冷静にローチの姿を照準線上に見据え、引き金をひいた。
 ドンッ!
 パグシャアッ、ローチの胴体が飛散すると同時に、カーチャが甲高い悲鳴をあげた。
「ギャフベロハギャベバブジョハバ」
「猫か」
「ありえないのですわ!許されないのですわ!」
「ゴキブリくらいでそこまでビビるなよ…」
「あなたは平気ですの!?あの…あの…見るのもおぞましい造形物を!?」
「ヴォールトじゃあローチ退治は俺の役目だったからなぁ。おかげでゴキブリ野郎なんて不名誉極まりない渾名を賜ったもんだが…しかし、あんたよくウェイストランドで生きてこられたな」
 憎まれ口を叩きながら、俺は周囲を見回す。
 どうやらさっきの悲鳴と銃声は、ローチにガチビビリしたカーチャが発したもの…と考えていいだろう。というか、それ以外の条件がない。しかし、それにしては引っかかる点が一つだけある。
「てっきり、人間相手に撃ち合ってるもんだとばかり思ってたけどな」
「はい?」
「さっき、シュマイツァーとは別の銃声が聞こえたと思ったんだけど」
「気のせいではないですか?」
「そうか…」
 ん…いま、こいつ、誤魔化したか?
 俺に言いたくないことがある、というなら別にそれは構わないんだが、このことは覚えておく必要があるかもしれないな…今後も一緒に活動するなら。

 その後、建物の二階部分の捜索を終えてから階段を下りる途中で、カーチャが俺に尋ねる。


「あの家でなにか見つけることができましたか?」
 なるべくなら、それは聞かれたくない質問だった。
 さっきまで軽口を叩いていた俺が急に黙ったのを見て、カーチャが怪訝な表情を浮かべる。
 ただ、ちくしょう、だからといって…あの建物で何を見たからって、それで俺に何の責任があるっていうんだ?
 フウ、俺はため息をつくと、ゆっくりと口を開いた。
「死体があったよ。二つね。片方はレイダーだ、やはり射殺されていた。建物に逃げ込んだあと、治療するあてもなしに命を落としたんだろう」
「それで、もう一つは?」
 ちくしょう、気軽に聞いてくれるな。
「…もう一つは、女だった。その、なんだ…衣服を身に着けていなかった。墨入りだったが、レイダーかどうかは、わからない。そいつは全身に骨折を伴う打撲傷を負ったうえ、首を折られて殺されていた。銃じゃない」
「衣服を身に着けていなかった…裸だったのですか?」
「ああ」
「なんでそんな勿体回った言い回しを」
「気を遣ったんだよ。察してくれ」
「それで、性的な暴行を受けた痕跡は?」
「なんでそんなことを聞く?」
「女性は、おなじ女性をそういう殺し方はしませんから」
「…同意のうえでの性交渉ではなかったろうな」
 ふうん、と、カーチャは表情一つ変えずに納得したように頷き、さっきまでと変わらぬ足取りで歩を進めた。
 まったく、これがさっきゴキブリ相手に動転しまくってた女と同じやつかね、と俺は心の中で毒づく。どうも素人というより、本当にただゴキブリが苦手なだけのようだ。ひょっとしたら、それすらただの演技なのかもしれないが。
 あるいは俺が警戒し過ぎなのかもしれないな。女身一つウェイストランドで生きてきた、というのだから、秘密の一つや二つはあるだろうし、脛に傷もあるだろう。たとえ他人に害成すものではないにしろ、知られたくないことっていうのはあるものだ。
「どうかされました?」
「いや、スケベなことを考えてた」
「んもう…殿方はこれだから」
 呆れたような顔で肩をすくめるカーチャに苦笑しつつ、俺は彼女に続いて建物を出た。







 モイラからの依頼で、俺たちは地雷を何個か回収しなければならない。
「クレイブさん、地雷の扱いは?」
「知らないよ。まったく。ぜんぜん」
「そんなことでは、安全にウェイストランドを歩けなくてよ?」
 カーチャは唇の前に人差し指を立ててそう微笑むと、腰を屈めてゆっくりと地雷に近づいた。


「まずは携帯用のジャマーを使って動体探知機を無力化します。ただ感圧センサーはまだ生きていますから、衝撃を加えないように安全装置を再セットしなければなりません」
「へぇ~…うまいもんだなぁ」
 俺が見ている前で、カーチャはまるで物怖じする様子もなく地雷をテキパキと処理していく。
 やがて信管を作動させることなく地雷を無力化したカーチャはそれを持ち上げると、ヒラヒラと振ってみせながら軽い口調で言った。
「以上でレクチュアは終了ですわ。慣れればそれほど難しいものではありません…ただ、なかには解除されることを想定したうえで別の罠と連動して作動するよう仕掛けられているものもあります。まずは作業に入るまえに周囲を観察することが大事なのですわ」
「なるほど。覚えておくよ、先生」
「それじゃあ、いま学習したことを忘れないよう、さっそく実践してもらいましょうか」
「じ、実践?」
「あら、ここには実技講習に事欠かないだけの量の地雷があるではありませんか」
 すこし気後れしている俺に、カーチャが楽しそうに笑いながらそう言う。このひと、ちょっとSっ気があるんじゃないかなぁ。
 カーチャから携帯式ジャマーを受け取った俺は、それじゃあ、と廃車の近くに設置されている地雷にゆっくりと近づく。車の影になって発見しづらいこの地雷は、おそらく不注意のまま車のそばを通り過ぎた人間を吹っ飛ばす目的で仕掛けられたものだろう。
「ま、俺もやればできるってところを見せてやりますよ」
 そう言って、地雷の解除に取り掛かろうとしたとき。
 カチュン。
 金属音とともに、すぐそばの廃車のエンジン部分が火を噴きはじめた。
「…なんだァ……?」
 まだウェイストランドに放り出されて日が浅い俺は、核融合エンジンを搭載した車両が火を噴く、という状況がなにを意味するのかをすぐに理解できなかった。
 もちろん…カーチャは別だったが。


「伏せてッ!!」
「なっ…!?」
 突然俺を突き飛ばしてきたカーチャに何かを言う暇もなく…
 ドガーーーーーンッッッ!!
 けたたましい爆音が俺の耳を貫き、俺とカーチャは爆風で吹き飛ばされた。
「ぐあっ…い、痛ッてぇぇぇェェェェェ!!」
 ごろごろとアスファルトの上を転がり、耳鳴りに頭を悩まされながら、俺は立ち上がることもままならず悪態をつく。
「なんだいったい、俺がトチッたのか?地雷が…」
「違います!」
 てっきり自分が誤って地雷を作動させてしまったものだとばかり考えていた俺の言葉を、カーチャが真っ先に否定する。
 そのカーチャの次の言葉は、俺にとってまったくの予想外のものだった。
「いまのは狙撃です!」
「狙…撃、だって?」
「狙撃を受けました…頭を下げて!」
 狙撃、と聞いて周囲を見回そうとした俺の頭を、カーチャが強引に抑えつける。
 顎をアスファルトに押しつけられながら、俺はどうにか状況を理解しようとした。
 狙撃?カーチャは狙撃されたと言ったのか?
「ちょっと待て、そういえばあのレイダーどもの死体…これってつまり…!」
「間違いないでしょう。大口径ライフル弾による貫通銃創、レイダーたちに抵抗した様子はなく、しかも正面ではない角度から撃たれていました。いま私たちを狙っているのは、あのレイダーたちを殺した『何者か』です」
「待て…待てよ。もしそいつがレイダーを狙撃したんだとしたら、狙撃されたレイダーの死体を探っていた俺たちのことも見えていたはずじゃないのか?俺たちは…ずっとヤツに見られてたってことじゃないのか?ひょっとしたら、この街に入ってから…俺たちは、『いつ撃たれてもおかしくなかった』んじゃあないのか!?」
「かもしれません。ただ、いまそのことを考えても仕方がないでしょう」
 動揺する俺とは対照的に、カーチャはやけに冷静な態度でそう答えた。
 なんだこいつ、狙撃手に狙われてるんだぞ…?
 次の一弾が自分の額にぶち込まれるかもしれないという恐怖に怯える俺を、カーチャがじっと見つめてくる。いや俺じゃない、俺の銃を、だ。
「あなた、その銃の扱いは…」
「メガトンじゃあ役に立ったよ、スコープは調整済みだ(今回は)。実地で慣らしたわけじゃないから、あまり期待されても困るけど」
「なるほど。わかりました」
 ひとり納得したふうにそう言うと、カーチャはMP40を手に立ち上がった。
 こいつ死にたいのか!?
「おいあんた、危ない…」
「私が敵を引きつけます、その間にあなたが敵を狙撃してください」
「ちょっと待てよ!」
 俺の制止も聞かずに物陰から飛び出すと、カーチャは狙撃者がいると思われる方向へ向かって銃弾をばら撒きはじめた。


 タタタタタタタン、カーチャはMP40をフルオートで連射しながら素早く物陰に隠れ、再装填する。
 制圧射撃で頭を上げさせないつもりか?だが一人の火力では無茶だ!
「くそっ、やるしかねぇのか…!」
 ほとんど無理矢理に大任を押しつけられた俺はまったく気が進まなかったが、俺の行動が相棒の命に関わるとなれば、いまさら逡巡する理由はなかった。
 俺は起き上がると、爆発し炎を吹く車の残骸に身を隠し、そっと身を乗り出してライフルのハンドガードを置いた。


「どこだ…?」
 狙撃体勢を整えたはいいが、俺にはまだ狙撃者がどこからこちらを狙っているのかを知らない。
 カーチャには悪いが、彼女を利用させてもらうしかないか…!
 バギンッ!
 破砕音とともにカーチャが身を隠していた柵の一部が吹っ飛ぶ、続いて、銃声が響いた。
 オーケイ、銃声でだいたいの方角はわかった。だが、まだだ。まだ足りない。
 あと一発必要だ!
 ドガンッ!
 ふたたび銃弾が柵を貫通し、破片が掠ったのか、まさか弾丸が命中したわけではないだろうが(そう祈りたい)、カーチャが仰向けに倒れる。
 マズルフラッシュが見えた!
 銃口からほとばしる閃光を目にした俺は、すぐさま高倍率スコープを覗き標的の姿を確認する。
 あれは…老人か?しかも、襤褸服を身に纏った。
 あんなヤツが?レイダーを殺し、いままさに俺たちを殺そうと命を狙っているのが、あの貧相な格好をした爺さんだっていうのか?
 爺さんはまだ俺が狙っていることには気づいていない、おそらくはまだカーチャを…スコープ越しに狙っているはずだ。このままではヤバイ、カーチャがとどめを刺される!
 ドンッ!
 焦っていたせいか、俺は引き金をやや乱暴にひいてしまった。指に力が入っていた。そのせいで、発砲の瞬間に銃本体がわずかにブレた。
 外した!
 反動で標的を見失い、命中したかどうか確認ができていないにも関わらず、俺は直感的にそう理解した。焦りすぎた!
 ガチャリ、慌てて遊底桿を操作し、薬室にはりついた空薬莢をはじき飛ばす。
 次弾を装填し、ふたたびスコープを覗いた。


 ヤツは…俺の存在に気づいた!
 いままさに銃口をこちらに向け、引き金をひこうとする老人の姿が俺の脳裏に焼きつく。スコープの反射光が輝き、そして…

 ズドンッ!!







「…終わりましたの?」
「ああ」
 ライフルを担いで近づいてくる俺の姿を見て、じっとその場に伏せていたカーチャがゆっくりと起き上がった。
 ぱんぱん、と音を立てて身体についた土埃を払い、カーチャはニッコリと笑ってみせる。
「てっきり、あのまま撃たれて終わりかと思いましたわ」
「さすがに女を置いて逃げるっていうのも後味悪いしなー。それにあいつの腕を考えたら、あんたを撃ったあとに俺を始末するのはわけないことさ。けっきょく、対決する以外に選択肢はなかったってわけだ」
「きちんと息の根を止めましたか?」
「わからん。弾が当たったのは確かだけどな」
 反撃してこないところをみると、無力化には成功したみたいだが。
 おそらくはこんな僻地に地雷を仕掛けて回っていたのも件の狙撃者に違いないと考えた俺とカーチャは、その危険人物の姿を確認することにした。

 木造の一軒家が多いリッジフィールドにおいて、ただ一つだけ存在する廃墟の高層ビルを、俺たちは地雷に注意しながら上っていく。たしかに、この場所は狙撃に適した絶好の場所には違いない。
 やがて俺たちは、自らの血の海に溺れる狙撃手の姿を目の当たりにした。


「ごっ…ぐ、がふっ……」
 ただの老人だった。すくなくとも、見た目は。
 腹腔に銃弾を受け、苦しそうに呻く老人は足を悪くしていたようだった。また、腕に縛りつけた点滴から伸びる手術用チューブが突き刺さっているのを見ると、至って健康というわけではなかったようだ。そんなことはもう関係ないが。
 老人を見下ろしながら、俺はどこか冷めた目で語りかける。
「なんで俺たちを狙った。あんた、何者だ」
「…ごっ、ぼ、ぼくは…まもるんだ…まちを…みんなを……みんなを…まもらなきゃ……」
「なんだ?」
「わるい、やつらを、やっつ…け…て…み……な…ま…」
 ごぼっ。
 言葉の途中で大量の血を吐き、老人はそのまま息絶える。
 見た目とはまるで違う、幼い子供のような口調で話した老人。彼はいったい、何者だったのか。
「こいつは、いったい…そういえばモイラが、この街は昔、奴隷商人に襲われて壊滅したと言ってたけど」
「五十年、あるいは六十年ほど前…ちょうど、この老人が小さな子供だったかもしれない頃、ですわ。もとは核戦争直後に、軍人とその家族たちが復興に尽力した地だったと聞いております。地雷や弾薬といった軍事物資が残っているのも、その名残なのでしょう」
「で、この老人は…」
「過去です。過去の存在。もう消えてなくなりましたわ」
 そう言うカーチャの表情は、どこか悲しそうで…夕日に照らされたその顔は、美しかった。
 物言わぬ亡骸を見つめながら、俺は誰に言うでもなくつぶやく。
「過去の亡霊、か…地雷原の幽霊ってのも、まんざら嘘じゃなかったってわけだな」







 日が暮れ、夜になる前にメガトンへ戻ろうとしていた俺たちを呼び止める声があった。


「やぁ、あんたたち、メガトンの人間だよな?街の前で何度か見かけたことがあったよ」
 パックバラモンと護衛を引き連れた男はカンタベリー・コモンズに拠点を置くキャラバンの一つを率いており、名をラッキーハリスと言った。銃火器を専門に扱っているらしい、こいつはお近づきになっておきたいところだ。
 なにせほら、俺は銃器マニアであるからして。
「わざわざ話しかけてきたってことは、特売の情報でもあるのかな?」
「いや、じつはちょっと頼みたいことがあるんだが。聞いてもらえるかな?もちろん、報酬は払うよ」
 なにやら面倒事っぽい雰囲気だ。俺はともかく、カーチャが気乗りしないふうにそっぽを向いている。
 けどまあ、タダ働きじゃないってんなら、頭ごなしに断ることもないだろう。
「金になるならやるよ。いったい、なにがあったんだい」
「この橋の先にアレフっていう集落があるんだが、このところ連絡がつかないんだ。キャラバンの顧客の一つだから、安否だけでも確認したいんだが…」
「様子を見て来いって?自分たちで行けない理由は?」
「普段は向こうから橋の手前まで来て取り引きするんだ、で、橋からこっち側へは来ないでくれと言われてる。防犯上の問題だろうな。それに俺たちは重武装だから、変に誤解されても困る」
「それは俺が行っても危険なんじゃないかと思うけど…」
「ああ。だから、強制はしないよ。ただ、ちょっと迷子か何かのフリをして…さすがに、目についた人間を片っ端から撃つような真似はしないとは思うんだが」
「う~ん…」
 どうにも内容があやふやな依頼に俺は難色を示すふうな態度を取るが、実際はもうやる気になっていた。
 ちょっと様子を見に行くくらいなら、それほど予定に支障をきたすこともないだろうし…
「どうする、ちょっと見に行ってみようか?」
「やるならお一人で。私は先にメガトンへ戻ってモイラさんに報告しますわ」
 さりげなく同意を得ようとした俺に対するカーチャの返事はそっけないものだった。
 冷たいなぁ…
 ただ、これはだいぶ後でわかったことだが…このときのカーチャの態度は「ウェイストランドで安請負をするとロクなことにならない」という法則(鉄則?)を知っているがゆえのものだったのだろう。
 もちろん、このときの俺にはそんなこと、知る由もなかったのだが…





< ⇒Wait for feeding next bullet... >













2015/12/08 (Tue)18:10


「やめてください、はっ、放してください!」
「放すわけねーだろヴォケが!逃げてみろよ、どうした、ホラッ!」


 リッジフィールド…奴隷商人の襲撃によって人々が連れ去られ、ゴーストタウンと化した、静かな…そして、哀れな街。
 廃墟の静寂を破ったのは、女の悲鳴と、レイダーの下卑た挑発の言葉だった。
 悪漢に襲われる、哀れな娘…おそらくは、誰の目から見てもそのように写る光景であったろう。この無法の地ウェイストランドにあって、女は腰に拳銃一挺、ナイフの一振りも下げてはいない。
 荒廃したワシントンで、丸腰でいるのは物知らずか自殺志願者だけだ。
 もっとも、レイダーに襲われている女はそのどちらにも見えない。たまたま武器を携帯していないときに襲われたのか、あるいは抵抗空しく取り上げられたか。
 そもそもなぜ、このような人気のない場所に女がいるのか。女はここに住んでいたのか。それともレイダーに襲われ、たまたまこの場所に逃げ込んだのか。それは誰にもわからなかった。




 レイダーの手によって女の服は容易く引き裂かれ、瞬く間にテーブルの上へ組み伏せられてしまう。女の細腕と、筋骨隆々たる男の体格の、見た目だけではっきりそれとわかる、残酷なほど明確な力の差。
 もし女にこのような所業を受ける謂れはないと、彼女がこれまで些細な悪行一つすら手を染めなかった真に善良な人間であったとすれば、あるいはこれを「理不尽」と呼ぶこともできるのかもしれない。
 しかし力のない者が、自由や安全を得ることなどはできない。
 人間の摂理や、あるいは神の摂理がどうであるかは知らないが、少なくともそれが自然の摂理ではあった。


 ウェイストランドは、力の弱い者を救ったりはしない。
 弱いことに責任があるわけではない。ただ、目の前の残酷な現実を受け入れるしかない。抵抗する力を持たぬ者に与えられる慈悲や救済は、ここにはなかった。
 この世界には。ウェイストランドには。




 数時間に渡り、幾度も女を強姦したレイダーたちは、やがて充足した表情で建物から出てきた。
「やっぱり生きた肉穴は最高だな!」
「ここいらへんは地雷が大量に埋まってるし、幽霊が出るってウワサもあるんで、誰も近づこうとしねぇんだ。つまり、こういうお楽しみのときに、背中を心配する必要はねぇってわけだ」
 感情の赴くまま奪い、殺し、弱者の肉を喰らい生きる猛獣たち。
 しかし、彼らは知らない。


 彼らもまた、「狩られる側の人間」であることを。







 俺の名はクレイブ、ヴォールト脱走者だ。
 モイラの依頼でスーパーマーケットの調査を終えた俺は、メガトンを襲撃したレイダーたちと戦い街を守ることに成功した。その後、数人の住民を誘拐し逃走したレイダーの残党を討伐するため、ジェリコやマルコムといった腕の立つ男たちとともにスプリングベール小学校を奇襲する。
 建物内のレイダーをすべて退治し、メガトンへ戻ろうとしたとき、俺たちは外で待ち伏せしていたレイダーたちの攻撃を受け、苦境に立たされる。そのときに俺たちを助けてくれたのは、俺とほぼ同じ時期にメガトンへ流れついた、カーチャという女だった。








「あなた、このところ随分とご活躍だそうね」
「え?あぁ、いや、まあ」
 仕事の話をするためクレーターサイド雑貨店へ向かおうとしていた俺を呼び止めたのは、見覚えのないアフリカ系の中年女だった。
 このところご活躍、という主語のない言葉に戸惑い、俺は半端な生返事をかえす。
 女は自らを「ヴィクトリア・ワッツ」と名乗った。他人の活躍を賞賛する言動を口にしたわりに、不快そうな態度を隠そうともしていない。まるで御札のかわりに「厄ネタ」と書かれた紙を額に貼って飛び回るキョンシーのようだと、俺は直感的にそう思った。
「探偵ゴッコで余計なことを嗅ぎまわっているそうじゃない。いったい、なにさまのつもり?あなたのせいで平穏な生活が壊される者がいるということを考えたことがないの?」
「ハァ?」
 探偵ゴッコ?嗅ぎまわる?いったい、なんのことだ?
 このところ俺はモイラの執筆するサバイバルガイドのための調査にかかりきりで、先日のメガトン防衛のためにレイダーと戦った以外は、余計なことは一切していない。
 まさか人体の治癒能力を調べるための自傷行為や、スーパーマーケットの調査のことを指して言っているわけではあるまい。
 そう思った俺は理性が止めるよりも早く、こう口走っていた。
「あんた、いかれてるんじゃないのか?」
「まだ自分がしていることに自覚がないようね。いい、彼は人間じゃないかもしれない、だけど平穏な人生を望む善良な存在なのよ。だから無闇に引っかき回さず、そっとしておいてあげたらどうなの」
「頼むから…わかるように話してくれないか?壁と話すより性質(タチ)が悪いぞ、あんた」
「レプリカントよ。連邦から脱走した…そう言えば、もうわかるでしょ?」
「レプリ…」
 耳馴染みのない言葉にしばらく戸惑ってから、俺はようやく女が言わんとしていたことを理解した。
 そういえばクレーターサイド雑貨店や、ドクター・チャーチの診療所で物珍しいホロテープを発見したんで、当人の了承を得てピップボーイで音声ログを再生したことがあった。それがたしか、連邦(どこだ?)から脱走した人造人間、レプリカントの独白だった。
 その後何人かとそのことについて話をしたが、いずれも信憑性のないウワサ、あるいはヤラセだと語っていた。俺もそれほど熱心に尋ねたわけではないし、世間話のついでに水を向けただけだから、特に記憶に残っていたわけでもなかったのだが。
 しかし目の前の女、ヴィクトリア・ワッツは俺がそのことで「あちこち嗅ぎまわっている」と言い、あまつさえ「レプリカントを放っておけ」と言う。これはなんだ、冗談か?
「あのな、いいか…べつに俺は、そのレプなんちゃらに大層な興味を抱いちゃあいない。珍しい噂を聞いたんで、ちょっとまわりの人間に話を聞いてみただけだ。実際、そんなのが存在するなんて信じてもいなかった。俺がなにかを『やらかす』ってんなら、あんた、取り越し苦労だよ、そりゃあ」
「ふぅん、いつもそうやって他人を煙に巻いているわけ?随分と誤魔化しが上手なのね」
「…… …… ……」
 駄目だ、頭痛くなってきた。
 こいつは知能が低いのか、それとも、それっぽいことを言って会話を成立していると錯覚させたい「言葉のわからない外国人」なのか?
 こういうときは、どうすればいいか。
 まだ俺が小さな子供だったとき、親父がウォリー・マックの父親と言い争いをしていたときのことだ。そのとき、親父が俺に語ってくれた金言を思い出した。
『ああいう、他人の話を聞く気がない相手とマトモに喧嘩しちゃあ駄目だ。とりあえず相手が言いたいことを好きなだけ言わせてやるんだ、そうすれば多少落ち着く』
「…で、あんた誰だ。何が言いたい?俺にどうしてほしいんだ?」
 俺の問いかけに、ヴィクトリア・ワッツは「待ってました」と言わんばかりのドヤ顔を見せ、いやに得意げな表情で語りはじめた。
「私はレイルロードという組織の者よ。自由を求め持ち主から逃げ出した人造人間の、安全と権利を保護するための正義の組織。あなたは、我々の保護対象の安全を脅かそうとしているの」
「人造人間の…保護組織だって?」
 まったく誇らしい顔で語るヴィクトリアの顔を、俺は宇宙人でも見るような目で見つめた。
 人間が満足に生きられない、人間の最低限の権利ですら保障されないようなこの世界で、レプリカントの権利の保護だって?
 こんな世界で、そんな行為に利権が絡むとは思えない。純粋な正義感から行動しているのだろう。それが、だからこそ、余計に性質(タチ)が悪かった。
「…まったく素敵な発想だな。トムリアンデが泣いて喜ぶぜ」
「はぁ?」
 俺に言わせれば、人造人間はあくまで機械だ。どれだけ姿形が人間に似ようと、あるいは仕草が人間と変わりなくても…それは、機械だ。人間とは本質的に違う。「たとえ、どれだけ似ようとも」、だ。
 人間と寸分違わぬレプリカント、というものが仮に存在したとしても、それはクオリアを持たない哲学的ゾンビに過ぎない。クオリアの有無で優劣を決めようというのではないが、区別は必要だろう、というのが俺の持論だった。
 もっとも、そんなことを目の前の女に言ったところで、理解などしてはくれまいが…
「いまの言葉は忘れてくれ。で、俺に何の望みがある?」
「あなたが追ってるレプリカント(ここで俺はため息をついた)は、連邦の科学者ドクター・ジマーが探しているものよ。もし今後彼に会うことがあったら、これを渡して」
 そう言って、ヴィクトリアは俺に機械の部品らしきものを差し出した。受け取れ、ということなのだろうか?
 黙ってそれを見つめる俺の手に、ヴィクトリアはそれを半ば強引に押しつけてくる。
「それはレプリカントの身体のパーツの一部よ。これを渡して、彼は死んだと言うの。そうすれば、ジマーは黙って引き下がるわ。いいわね、正しい行動を取ってちょうだい」
 一方的にそう言ってから、ヴィクトリアは足早にどこかへ行ってしまった。
 それ単体では何の使い途のない機械部品を手にした俺は、いまだにこれがシリアスな現実なのか、あるいはろくでもないジョーク、ヤラセ、ドッキリじゃないかと判断しかねていた。
 しかしよく考えれば、理不尽な展開などというのはウェイストランドでは日常茶飯事なのだということに思い至り、俺はその機械部品をそのへんに積まれたガラクタの山に放り出すと、独り言をつぶやいた。
「これもウェイストランド、か…」
 やれやれとかぶりを振り、ヴィクトリアが近くにいないことを確認すると、俺は当初の目的だったクレーターサイド雑貨店へと足を運んだ。







 今回のモイラの依頼は、地雷原の調査だった。


「やってきましたわね」
「やってきたねぇー」
 半日かけて歩き通し、到着した場所。俺の傍らには、スプリングベール小学校でのレイダー退治で共闘した女カーチャが立っている。
 どうやらメガトンでの彼女の仕事はもう残っていないようで(レイダーの襲撃で破損した副官ウェルドの修理もさっさとこなしてしまった、という話だ。メカニックとしての腕が相当良いのだろう)、今回から、共同でウェイストランド・サバイバルガイド執筆の協力者として一緒に仕事をすることになったというわけだ。


 先日のレイダー退治でルーカス・シムズから支払われた報酬で、俺は服を新調していた。いつまでも薄汚れたジャンプスーツ姿(それも背中にデカデカと数字が書かれたみっともない仕様)ではいられない。
 スーパーマーケットでの戦闘で、俺と重いアーマーは相性が悪いということがわかったので、軽さと動きやすさ(そして見た目)を重視したスタイルである。
 またカーチャも服を買い替えたようで、機械油に汚れた姿から一転、清潔感漂う白衣を纏っている。野暮ったい黒縁眼鏡と相まって、いかにも科学者然とした風貌だ。
 そして金めっきのトカレフ一挺では心許ないためか、先日までは見かけなかった短機関銃を手にしているが…
「シュマイツァー?骨董品だ」
「ウェイストランドでは現役ですわ!」
 ドイツ製の古いモデルを目にした俺は、思わず眉に皺を寄せる。
 もっともデザインの設計で言えば、俺がサイドアームに下げているM1911のほうが古いので、たんに古さを揶揄してどうこう言うのも野暮な話ではあるんだが…

 今回の依頼内容は地雷原周辺の調査と、地雷の回収だ。
 このあたりは大量の地雷が埋められている場所として知られているらしいが、誰が、何の目的でこんな場所に地雷を設置したのかはわかっていない。それも地雷は、明らかに戦後に何者かが埋設したものだ、という話だ。
 そんなわけで、今回の調査はほとんどゴシップの裏づけのようなものだった。「ウェイストランドに存在する地雷原の謎を追え!」てなノリである。まぁ、教本にも賑やかしのページが必要なんだろう。
 地雷の回収というのも、安全確保というよりはサンプル収集といった意味合いが強い。
 さらに、このへんには幽霊が出るとかで、モイラは夜間の探索を提案したのだが、これにはカーチャが強く反発した。
「まったく、地雷が仕掛けてある場所で、それもウェイストランドの夜を歩くなんて、冗談じゃありませんわ。危険すぎます」
「ああ、幽霊が苦手ってわけじゃないんだ」
 いまこの場においても文句を言い続けるカーチャに、俺が軽口を叩く。
「俺は苦手なんだよね、幽霊。銃で殺せないヤツは嫌いなんだ」
「そういえばあなた、えぇと、クレイブさん?レイダーとの戦いでは随分と手馴れた様子でしたけれど、いったいどちらで訓練をなさったんですか?」
「ああ、ヴォールトのレクリエーション用フィルムでね」
「…それって、もしかして、映画?」
「そ」
「ヴォールトで戦闘訓練を受けたわけではないのですか!?」
「まさか。実弾を撃ったのなんかつい最近さ。ここまで上手くやれるとは、正直思ってなかったけどな」
 テキストなら頭に入ってるんだぜ、と言う俺に、カーチャが盛大なため息をつく。
 そう、俺の戦闘知識といえば映画の猿真似か、伝記やウォーノグラフィ(戦争小説)の受け売りがほとんどだ。それにV.A.T.S.という、ヴォールト・テック謹製の戦闘補助システムがあってこそのいままでの戦績だったが、こいつがなければ俺はとっくに死んでいただろう。
 深刻そうな顔を見せるカーチャを余所に、俺は目の前の光景に違和感をおぼえ、話題を切り替えた。
「ところでさ、アレ…死体じゃないか?」




「そこ、地雷がありましてよ。動体感知センサーで、近づいただけで信管が作動するタイプです。よくよく注意して行動なさってくださいまし」
「うわお。軍用地雷か…モイラが興味を持つはずだ」
 カーチャに注意を促され、俺は慎重な足取りで死体へと近づく。
 ふつう、ウェイストランドで用いられる地雷というのは手製のものが主流だ。高性能爆薬を充填した軍用地雷というのは、そうそうお目にかかれるものではない。
 もちろん軍用地雷は高価で、ウェイストランドでは高値で取り引きされる。カーチャが言ったように近づいただけで信管が作動するため持ち帰るのは容易ではないが、うまく信管の作動を停止させることができれば、ちょっとした儲けになるはずだ。
「この死体は…レイダーだな」
「そのようですわね」
「地雷に吹っ飛ばされたか、それとも…幽霊にでもやられたかな?」
「まさか。よく見てくださいまし…この傷跡、銃創ですわ」
 遠巻きに見つめる俺とは逆に、カーチャは物怖じせず死体のすぐ近くに屈み、頭部を持ち上げ、状態を検分する。怖くないのだろうか?
 いや、俺も本当は死体は怖くもなんともない、というのはわかっている。この恐怖はあくまで生理的な嫌悪からくるもので、死体は人間を襲ったりしない以上、生きている人間より怖くなりようもない、ということはわかっている(もっとも、このウェイストランドじゃあ例外はあるかもしれないが)。
 ただ、そのことを女が理解している、というのが妙に引っかかった。
 このカーチャという女について、ウェイストランドを放浪していた、という以外のことは誰も知らない。出身地、その半生、語りたくないのか、たんに語る機会がなかったのかは知らないが…
「幽霊が銃を持ってたのかもな」
「ナンセンスはお止めになさって。死体は腐敗がはじまってません、つい最近撃たれたようですわ」
「血の跡が続いてるみたいだが…」
 そう言って、俺は近くの建物に目をやった。
 一軒家の扉に、血まみれの手形がスタンプされている。俺はライフルを肩にかけ、拳銃を抜くと、カーチャに言った。
「俺が入るよ、なにか手がかりがあるかもしれない…」
「わかりました。それでは、私は別の建物を調べますわ」
 いったん二手に分かれ、俺は扉のノブに手をかける。が、開かない。鍵がかかっているのだ。
 フゥ、俺はため息をつき、腰にぶら下げていたロックピッキング・ツールを手に鍵穴を覗きこむ。単純なシリンダー錠だ、この程度なら開けることはわけない。
 たいした時間もかからず鍵をこじ開けると、俺は建物の中に入った。








 ガチャリ、扉を開けると同時に銃をかまえる。
 .45口径の照星越しに見えたのは、血溜まりの上でぐったりと倒れているレイダーの姿だった。
 念のため銃口を外さないようにしながら、俺はゆっくりとレイダーに近づく。相手は微動だにしていない、呼吸音も聞こえない。胸は上下していない。たとえ気絶していても、人間は呼吸くらいはするものだ。
 そっと首筋に触れ、脈を測る。指先に感じたのは冷たく、固い皮膚の感触だった。
「…死んでるのか……」
 死後硬直している、ということは、死んでからそれほど時間が経っていない、ということだ。筋肉が崩れ、腐敗するほど時間が経っていない、ということだ。
 どうやら外で見たレイダーと同様の死因…何者かに銃で撃たれたようだ。
 こいつはすぐには死なず、どうにか建物の中まで逃れ、ドアに鍵をかけたのだろう。襲撃者の侵入を防ぐために。
 しかし、それで終わりだった。鍵をかけ、ソファにもたれかかり、それっきり、気を失ったに違いない。そしてその後、目を醒ますことはなかったのだろう。
「傷が深いな。ライフル弾…それも、狩猟用のホローポイント弾で撃たれたのか?」
 射入孔付近の損壊具合、射出孔の広さを見て、おそらくこの傷は大口径ライフル弾で撃たれたものだろうと俺は推測する。
 少なくとも、拳銃では有り得ない。たとえ薬量の多いマグナム弾だろうと、拳銃弾とライフル弾では威力の桁が違うためだ。
 解剖すればもっと詳しくわかるだろうが、そんな時間も、道具もないし、そこまでしてレイダーの死亡原因を詳しく調べたいとも思わない。気になる点があるのは確かだが…
 丁寧に鍵がかかっていたということは、この建物の中に襲撃者がいる、ということはまず有り得ないだろう。しかし、油断は禁物だ。
 俺は汗ばむ手をコートの裾で拭い、拳銃をしっかりと握りなおしてから、隣のキッチンへと向かった。




「…これは……」
 来るべきではなかったと、入ってすぐに思った。
 生臭い匂いが鼻を突き、死体に感じたものとはまた違う生理的嫌悪が俺の神経を逆撫でした。
 それも死体には違いなかった。ただ、レイダーの死体ではなかった。女の死体だった。女の、裸の死体だった。四肢を広げ、男の体液にまみれた女の死体だった。
 出血はしていたが、それは殴打によるもので、銃で撃たれた形跡はない。
 見てはいけない、近づいてはいけないと思いながらも、俺は憑かれたようにゆっくりと足を動かし、テーブルの上で絶命している女の死体にそっと触れる。
 全身の殴打跡に触れると、死後硬直しているにも関わらず、はっきりとそこが凹んでいることがわかる。骨折しているのだ。それだけでも、女が同意のうえで性行為を許したとは思えなかった。
 無駄だとわかっていても脈を取るため首筋に触れたとき、俺は女の首が不自然な曲がりかたをしていることに気がついた。どうやら直接の死因はこいつのようだ。女は、首を折られていた。
「…… …フーッ…」
 ゆっくりと息を吐き出し、額に浮かんだ汗を拭う。
 これも、レイダーたちを殺した襲撃者によってやられたものだろうか?
 おそらく死んだ時間はレイダーたちとほぼ同じだ。だが、どちらかといえば女に暴行したレイダーが建物から出てきたときに撃たれた、と考えたほうが自然なような気がしていた。
「こんな場所に長居しても、仕方がないな」
 そう言って離れようとしたが、俺はすぐには動くことができなかった。
 ふたたび女の死体を見下ろし、ごくりと息を呑む。ゆっくりと目を閉じ、俺は自身の胸の内に生じた葛藤と戦った。
 女の白い肌から目を離せなかった。もっと女を見ていたい、触れていたいという生理的欲求が膨らみつつあることを自覚していた。
 俺は…自分で、自分のことが信じられなかった。俺は死体に欲情しているのか!?
 どうも、そうらしかった。死体であろうと見た目は女であることに変わりないからか、それとも俺にネクロフィリアの気があるのかはわからなかったし、追求したいとも思わなかった。
 ふたたび大きく深呼吸し、死臭をたっぷりと体内に取り込んでから、俺はその場を離れた。

 その後建物の中を捜索したが、これといって手がかりになりそうなもの、あるいは地雷原の調査の一環としてモイラを喜ばせることができそうなものは、何一つ見つからなかった。
 女の死体についてカーチャにどう説明したものかと考えながら外に出ようとしたとき、あるものが俺の目に止まった。
 テーブルの上に置かれた、ミニチュアの家の模型。
 精巧でよく出来ていた、だけならすぐに興味を失ったところだが、その模型は台座が外れるようになっていて、しかも、そこに鍵がかけられていた。それもちゃちなオモチャの鍵ではなく、錠前破りが頭を抱えるような高級品だ。
「…なにか、あるな」
 ためしに模型を持ち上げて見ると、ずしりと重い感覚が腕に伝わる。2kgほどあるだろうか。
 振ってみると、ゴトッ、ゴトッと重量物が模型の内側を叩く音がする。
 俺は唇を舐めると、模型をふたたびテーブルの上に置き、鍵の開錠に取りかかることにした。
 こういうタイプの鍵は正攻法で対決してもしょうがない。初めから、まともにピッキングで開ける気はない。
 俺は鍵穴にチェリーボムを詰め、ライターで導線に点火した。
 ボンッ!
 炸裂音とともに火花が散り、破損した鍵がユニットごと、ごろりと転がり落ちる。
「オーケイ、うまくいったな」
 模型の側面を両手で掴み、ゆっくりと台座から外す。
 果たして、そこに現れたのは…


「これは…!」
 台座の上に鎮座していたのは、一挺の拳銃だった。俺が扱うM1911とほぼ同型のモデルだったが、それは太陽の光を反射して金色に輝いていた。
「これはめっきじゃないな…窒化チタンコーティングか。ベースはスプリングフィールド・アーモリー社製のM1911A1、V-12モデル。素材は…ステンレスだったか?スケルトン・タイプのハンマーに、サイトはヘイニー・タイプ。中身もかなり手を入れてある…派手な見た目に反した実戦的なカスタムだ、グリップのドラゴンのエンブレムはちょっと悪趣味だが…」
 一目見た瞬間、さっきまで抱えていた人間的な悩みも吹き飛び、俺はそいつに心を奪われてしまった。
 弾倉や弾薬は俺が使っていたM1911と共用できる。いますぐにでも相棒として振り回すことが可能だ。とはいえ、カーチャやモイラにこのことは言わないほうがいいだろうが…なんたって、こいつは誰の目からも一目見てわかる「お宝」だ。
「…今日のところは…こいつを使うか」
 V-12カスタムを腰のベルトに挟み、コートで隠れるよう外から見えない位置に調整してから、俺はふたたびM1911を抜き、周囲を見回した。
 さて、そろそろ本当にここを出たほうがいいだろう。
 そう思ったとき、どこからか女の悲鳴が聞こえてきた。
 建物の外…カーチャ!
「まさか、彼女の身になにかが…!?」
 俺は銃の装弾を確認すると、慌てて外へ飛び出した。





< ⇒Wait for feeding next bullet... >












2015/12/06 (Sun)16:37



 どうも、グレアムです。Fallout3です。
 まずは上の写真を見て頂きたい…ええ、そうです。自作キャラが揃って同じ画面に入ってますね。これは自作コンパニオンをゲーム内に反映させたものです。いままで面倒くさそうで手をつけていなかったのですが、新しくSSを開始するにあたって遂に着手しました。

 Oblivionではキャラを複製できる「CreateFullActorCopy」という大変に便利なコンソールコマンドがありまして、プレイヤーキャラを複製したあと「ShowRaceMenu」で作り直し、それをまた複製して…という手順で簡単に自作キャラをボコスカ量産することが可能でした。さらにWryeBashを使えばCreateFullActorCopyで複製したキャラから種族データをプレイヤーに移植することが可能(別のセーブデータから情報を呼び出すこともできる)であるため、SSを書くときに複数主人公で同時進行、みたいなシチュエーションを簡単に用意できたんですよね。
 ただこのコマンドには色々と問題があったのか、Fallout3以降では使用できなくなりました。そのため自作キャラを複数ゲーム内に登場させるためにはGECK等の開発キットを使用しなければならず、どうしても手間が煩雑になるためいままで避けていたんです(もっとも、やろうと思えばFO3Editだけで自作キャラを登場させることは可能です。じつは上の写真で登場しているキャラがそれに当たるんですが、説明がめんどくさいので今回はそのへんは触れません)。
 今回Fallout3のSSをリブートする際にも、複数の自作キャラが同じシーンに登場する場合には別データでそれぞれ撮影した写真を画面分割で合成してでっちあげる予定でした。
 ただSS執筆とはまったく関係ないタイミングで、なんとなくFallout3用のコンパニオンMODを色々探していたとき、たまたま自作コンパニオンに関する記事に目を通したときに「あれ、ひょっとしてコンパニオン作るのって意外と簡単なんじゃね?」と思い、とりあえず写真撮影用途と割り切って性能その他ガン無視で作業したら、いちおうそれっぽいものができてしまったという。

 そんなわけで、次回以降の話ではクレイブとカーチャが同じ画面内に写ってるとか、そういう写真を作ることができそうです。もうマスクの中身がジェリコとか、胴体だけ写っててじつは首から上がジェリコとか、そういう苦肉の策で乗り切る必要はなさそうです。やったぜ。
 というわけで、今回の更新は完全に俺得でしかない話でした。







 おまけ話。

 上で出たOblivion用のコンソールコマンドCreateFullActorCopyについてですが、実際にゲーム内で使われた例としては、Bruma防衛クエストの後に建造される救世主像がこのコマンドを使ってプレイヤーキャラを複製したものだったりします。
 たしか麻痺スペルだかAI停止コマンドを使ったうえでポーズを固定し、外観が石像っぽく見えるエフェクトをかけて「石造っぽく見える無敵の不動NPC」をでっちあげたとか、そんな仕様だったと思います。
 石像っぽい外観というのは内部的には魔法エフェクトの一種で、燃えると赤くなったり、凍ると青くなったり、というのと同系統の効果なんですね。
 で、事前に何も対策せず建造に至ると大抵全身デイドラ装備の禍々しい救世主像になってしまうのは、手持ちのアイテムの中でもっとも性能が良いものを装備するという「NPCの特性」に則ったものだったりします(NPCへの装備のスリ渡しに熟達された方なら直感的に理解できるかと思います)。CreateFullActorCopyはステータスから所持アイテムから魔法から全てをフルコピーするので、環境によっては動作が重くなったり、またNPCがMODアイテムを所持することで動作が不安定になったりするようです。
 極稀に「石像が動き出した!」という報告があるのは、何らかのきっかけで動きを停止させていた効果が切れた(あるいは動作停止用のスクリプトが正常に作動しなかった)せいだと思われます。このへんは俺は詳しい検証をしたわけではないので、詳細はわかりません。なんらかのMODが干渉している…と考えるのが自然ですが、たしかバニラ環境(というかコンシューマ版)でも動く石像の報告例があったような…











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