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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2015/02/25 (Wed)22:01

 レーヤウィンで巻き込まれた騒動のあと、ブルーマからの召喚状を受け取ったドレイクは北方スカイリムとの国境沿いにある街へ向けて旅を続けていた。
「女王直々の呼び出しというがなぁ…俺は寒いのは苦手なんだが」
 あまり気乗りしない様子でそんなことをつぶやきつつ、やがて日の傾きを察したドレイクは周囲を見渡す。
「まいったな、このへんに宿はないのか?野宿はあまり気乗りがせんしなー、どこか適当に民家でも探して泊めてもらおうか」
 あたりを警戒しつつ、木々の稜線をじっと眺めていたドレイクはやがて煙突の煙らしきものを発見し、住人が悪党や山賊、あるいは化物でないことを祈って移動をはじめた。

  **  **  **  **



 民家…農場だろうか?
 極力物音を立てないように、しかし過度の警戒を抱かせないよう自然な物腰で建物に近づいたドレイクは、墓前で祈りを捧げる一人の男を見つけた。
 ブレトン、まだ三十代前後といったところだろうか。働き盛りにしては、身のこなしが妙に落ち着いている。というより、落ち込んでいるというべきか。まるで死の秒読みをはじめた老輩のような寂しさがその肩に重く乗っているように見えた。
「あー…失礼?」
 ドレイクが静かに声をかける、てっきり驚かれるかと思ったが、男はゆっくり立ち上がると、やや咎めるような口調で言った。
「死者の冥福を祈る邪魔をしないでください。いまとなっては、これが私の只一つの生き甲斐なのです」
「いや、すまなかった。そんなつもりはなかったんだ、ただ…」
「…旅のかた、ですか?」
「ああ。近くに宿が見当たらなかったものでね、よければ泊めてもらえないかと思ったんだが。もちろん、タダとは言わない」
 いままで望むと望まざるとに関わらず面倒ごとに巻き込まれてきたドレイクは、それなりの額の旅費を常に持ち歩いていた。
 それはもちろん、時として一市民に一晩軒下を貸す気にさせるためであり、実際にそれを実行に移すことは造作もなく、なんであれば嫌がる相手の口を閉じさせることだってできる程度の持ち合わせは充分にあった。
 もっとも無駄遣いを避けるべきであるのはドレイクとて変わらず、できるなら双方合意のうえで安くすませたい、というのが実情ではあったのだが。
 ブレトンの男…コリック・ノースワードと名乗った…彼はしばらくドレイクを値踏みするように観察してから、やがて口を開いた。
「戦士ですか?」
「なんというかな。戦士じゃあない、俺は戦士ギルドの人間じゃない。さらに言えば傭兵でも殺し屋でもない。ただの旅人さ」
「もし私の言う条件を受け容れてもらえるなら、一晩と言わず好きなときに家を使ってもらって構いません」
 そういう話をしたいんじゃあないんだが…
 どうにも面倒なコリックの態度を見て、ドレイクはこめかみを掻く。
 いまひとつ気乗りしないドレイクを余所に、コリックは勝手に説明をはじめた。
「一年前…私が帝都へ月に一度の買い出しへ向かったとき、ゴブリンの一団が家を襲いました。そこにはたった一人残された妻がいて、ゴブリンたちは妻を誘拐していったのです。連中が根城にしているのは、ここから南西へ向かった場所にある鉱山です」
「……それで?」
「事実を知った私はすぐに剣を手に鉱山へ向かいましたが、ゴブリンの数は予想外に多く、返り討ちに遭ってしまったのです」
「奥さんの無事は確認したのか?」
「できませんでした…しかし、ゴブリンに捕まった人間が生きていたという話を聞いたことがありません。もう死んだものと思い、あれから墓前で祈りを捧げ続けてきましたが、それでもやはり、事実が気になるのです」
 そう言うと、コリックはドレイクの手を掴み、懇願するように頭を下げた。
「どうか、妻の生死を確認しては頂けませんか?そして、できるなら妻が身につけていたものを、なんでもいいのです、遺品として持ち帰ってきてほしいのです」
「いきなりな提案だな。さっきも言ったが、俺は戦士じゃあない」
「ギルドの人間でなくとも構いません。あなたのその物腰、立ち居振る舞い、間違いなく手練の戦士とお見受けしました。お願いします、帝都の衛兵からは断られ、戦士ギルドも頼れぬ今のこの国の状況では、あなたのような人にしか頼めないのです!」
「…俺は面倒を引き受けに立ち寄ったんじゃあないんだがな。最初に言ったように、一晩泊めてほしいってだけなんだが。先を急ぐ旅の途中なんだ、金ならある。幾ら欲しい?」
「お金などいりません。どうか、私の頼みを…」
「他を当たれっていうなら、そうするさ」
 そう言うと、ドレイクはコリックの手を振り払い、農場に背を向けた。
 立ち去ろうとするドレイクの背に、コリックが大声で叫ぶ。
「あなたはきっと引き受けてくださる、あなたはそういうお方だ!私は信じていますよ!」

  **  **  **  **

「まったく、勝手なことを言いやがる」
 すっかり暗くなった森の中で、ドレイクはぶつくさと文句を言いながら歩き続けていた。
 俺がお人好しや善人に見えるっていうのか?
 とはいえ他に泊まれる宛てがない以上、コリックの頼みを聞き入れるのも選択肢の一つには入るのだが…
「ゴブリン退治なんぞ悠長にやってたら、それこそ夜が明けちまうぜ」
 そうなれば夜を凌ぐための宿探しの結果としては本末転倒だ。
 しかし…
「南西の鉱山、と言ったか」
 ゴブリンの溜まり場と化している鉱山、およその見当はつく。
 そしていま、まさに、ドレイクの足は無意識のうちにその鉱山へと向かっているのだった。
『あなたのような人にしか頼めないのです!』
 脳裏にコリックの必死の言葉がリフレインし、ドレイクは苦々しい笑みを浮かべた。
「ああ、畜生。俺ってやつはまったく…」

  **  **  **  **

 やがて鉱山のすぐ近くまでやってきたドレイクは、見張りだろうか、二人のゴブリンが周辺をうろついているのを目撃する。
「…他に人影はなし、残りは鉱山の中だな」
 そうつぶやくと、カチリ、ドレイクはアカヴィリ刀の鍔を親指で持ち上げ、背の高い草の間を滑るように駆け出した!



 そして、一閃!
「醒走奇梓薙陀一刀流奥義、飛蜥蜴(トビカゲ)!」
 ザンッ、一瞬の閃撃でゴブリンたちは悲鳴を上げる間もなく息絶え、手にしていたロングソードがドサッという音を立てて地面に転がる。
 抜刀、斬撃、そして納刀までを陶磁器のようになめらかなワンアクションで行なったドレイクは、無残に斃れたゴブリンたちの死骸に目をくれることもなく(彼にとって相対者の生死は太刀を浴びせた瞬間に判断できるため、わざわざ目視で確認する必要はない)、そのまま鉱山の内部へと足を踏み入れた。

  **  **  **  **

 ザンッ、ドッ、ドサッ、ザグッ!



 鉱山内部に巣食っていたゴブリンたちは、不意の闖入者…ドレイクの手によって、瞬く間に物言わぬ屍へと姿を変えていた。
「一般人や、まあ…並の戦士なら、確かに苦戦するだろうな」
 そのドレイクの言葉は、他者への蔑みから出たものではない。
 多くの人間にとってゴブリンという存在は強敵に変わりなく、彼らを相手に命を落とした戦士は数知れない。苦戦したからといって、それを笑うのは命知らずか生粋の殺し屋のどちらかだ。
 ドレイクはどちらでもなかった、少なくとも本人はそう思っていた。自分はただ剣に長けていたがゆえに悲運に巻き込まれただけなのだ、と。

 やがて鉱山(どうやら銀の産出地であるらしかった)を捜索していたドレイクは、あるものを発見する。



「惨いな、こいつは…」
 そこにあったのは、薪木のかわりに燃やされた家財道具。そして炭化している「人間だったもの」。
 ゴブリンが人間を誘拐する理由については、有力な説はこれといって存在していなかった。餌として食べることはなかったし、労働力として使役することも、他の何かに役立てることもない。もちろん仲間に迎え入れることもない。ただ巣穴へ連れ込み、殺し、放置するのだ。
 たんなる余興、気晴らし、ちょっとしたお楽しみのためであると多くの者には信じられているが、真実は誰にもわからない。
 あるいは人間が身につけている金品を狙ったものという説もあったが、そうであれば金品だけを奪ってその場で殺せばいい話であり、わざわざ誘拐する必要はない。もっとも、そう判断するだけの知能がないからこそ「とりあえず誘拐するのだ」と論ずる学者もいたが。
 とにかく…ゴブリンの目的はどうあれ、事実は一つだ。
 ドレイクの目前の死体は、女物のドレスを着ていた。おそらくは標準的なヒューマノイド、ブレトンかインペリアル…ノルドではないだろう、それほどの立端はない。
 思えばコリックの妻の特徴については何一つ話を聞いていなかったが、おそらくこの死体がそうであろうということはなんとなく直感で理解できた。
 そっと手を伸ばし、ドレイクは彼女の死体の首から下がっているペンダントを取り上げる。焼けて潰れた、翡翠の埋め込まれた銀のアミュレットだ。
 コリックの妻は家にいたときに襲われたと言っていた。もし普段からこれを身につけていたとするなら、この死体がコリックの妻であるならこのアミュレットを見せればそれとわかるはずだ。

 さて、役目は終わった。
 ゴブリンもすべて片づけたところだし、農場へ戻るか…そうドレイクが思った矢先、すぐ近くで荒い吐息を立てる音が耳に飛び込んできた。



『ギェシシイイィィャャァァァァアアアアッッッ!!!』
「なにっ!?」
 ギイッッッィィィンン!
 突然の不意討ちに驚きながらも、ドレイクはその「一撃」をかわす。
 たったいま棍棒を振り下ろしたその動きは、明らかにいままで戦ったゴブリンと一線を画すもの。
「ほう…どうやら、おまえが親玉ってわけかい」
『クァッッッ、キシイイイィィィィ!』
 ドレイクと相対したゴブリンの親玉は鋭い牙を剥き出しにして威嚇し、ふたたびドレイクへ襲いかかる!
 一撃、二撃、三撃…
 相手の攻撃の一つ一つ、武器の振りのモーションを見極めながら、やがてドレイクのアカヴィリ刀が一閃する!





 ズジギャアッ!
『ア゛ア゛ッ…!?ガ、グガボガガアァ……』
 多彩な動きで撹乱し、いままさにドレイクを背後から叩きのめそうと飛びかかったゴブリンの親玉は、鼻上から顎下に向かって一直線に刺し貫かれていた。さらに、その鋭い切っ先は心の臓を捉えている。
 そのままドレイクはアカヴィリ刀を振り抜き、ザンッ、身体の上半分がべろりと裂かれたゴブリンの親玉の死体が無残に地面へ転がった。
「手向けだ。顔も名も知らん女のために…貴様は地獄へ落ちるがいい」
 そう言うと、ドレイクはゆっくりとアカヴィリ刀を鞘に戻し、鉱山を後にした。

  **  **  **  **



 外に出たときには既に日が昇りはじめており、あたり一帯は雪景色に変わっていた。
「おいおい、こんな場所に雪だと?ブルーマまではまだ距離があったと思うがな」
 焼け潰れた翡翠のアミュレットを手にぶら下げ、ドレイクは忌々しげにつぶやく。
「けっきょく夜が明けてるじゃねーか…このまま旅を続けたら身がもたんな。せめて昼過ぎまでベッドを貸してもらうか」
 ため息をつきながら、ドレイクはコリックが待つハルムズ・ファーリー農場へと向かった。

 農場へ戻ったとき、当然ながらコリックの姿は外にはなかった。
「早朝だし、雪だしな。中にいるか」
 そう言い、ドン、ドン、ドン、ドレイクはコリックが眠っている可能性を考え、やや強めに扉をノックする。しかし返事どころか、まるで反応がない。
 まさかここで待ちぼうけを喰らわせようってんじゃあないよな?
 うんざりしながらドレイクが扉の取っ手を掴んだとき、意外にも鍵はかかっていなかった。
 ギィ…



「コリック…」
 彼は眠っていた。
 胸の上下もなく。微動だにせず。ただ安らかな表情で。
 外傷はない、薬品を使ったのだろうか。ドレイクにわかっているのは、もう彼の目が醒めることはないだろうという、その確信だけだ。
 箪笥の上には金貨が詰まった袋と、そして一通の手紙が置かれていた。手紙は明らかに最近書かれたもの、おそらくは一日と経っていないだろうことがインクの乾き具合からわかる。
 ドレイクにはわかっていた。その手紙と、そして金貨の意味が。
 ドレイクは翡翠のアミュレットをコリックの胸の上に置き、手紙には手をつけず、金貨の詰まった袋を掴んだ。
 そして…



 ドレイクは右手で掴めるだけの金貨…戦士ギルドがゴブリン退治を請け負う標準的な報酬額…をポケットに入れると、残りを箪笥の上に残したまま、家の外へ出た。
 ブルーマへ向かう旅を続けるために。






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