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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2016/11/04 (Fri)01:03





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 帝国と戦う反乱軍ストームクロークに入隊した俺は、古き権力の象徴である「尖った王冠」を入手した。それを指導者ウルフリックのもとへ持ち帰るため、一路ウィンドヘルムへと向かう。
 またサールザル遺跡で発見した謎のオーブの正体を調べるために必要となる書籍の回収にも成功したため、ウィンターホールド大学へ戻る必要もあるだろう。
 しばらく大陸北端での活動が続き、そろそろ雪景色も見飽きつつある。そろそろ別天地での活動をはじめたいところだ。まだ立ち寄っていない街もあることだしな…










 ウィンドヘルムへと戻る道中、洞窟の前でキャンプを張る二人組の冒険者を発見。なにやら言い争っている様子だが、それ以上にレッドガードの戦士とアルゴニアンの魔術師という組み合わせが珍しかったため、接触してみることに。
 といっても、こうした洞窟を根城にしているのは大抵山賊だったりするため、先制攻撃を諦めてコンタクトを取ることはわりと危険な行為なのだが。
「あーもしもし、どうなされたのかな?」
「あなた、何者?」
「旅の商人でござんす。隣のオークは護衛の戦士です、怪しい者じゃございませんのことよ」
 レッドガードの女戦士と言葉を交わす。
 相手は帝国兵には見えなかったが、思想の違いで議論になることは避けたかったので、俺がストームクロークの兵士だとは言わなかった。他の肩書きにしても、盗賊、暗殺者、どれも人前で口にできることではない。この地ではあまり歓迎されない魔術師然り。
 それに俺が商人だというのは嘘ではない、スカイリムに来てから商人らしいことをほとんどしていないのは確かだが…
 レッドガードの女戦士(どうやらこちらがリーダーのようだ)の名はサルマ。なんでもこの洞窟、アイアンバインド墓地…ノルド人の墓だ…に眠る財宝を狙ってきたらしい。要するに、トレジャーハンターだ。当人は冒険者を自称しているが。
 お供のアルゴニアンの魔術師の名はビーム・ジャ。一見するとサルマの部下のようだが、彼の態度を見るに、ワガママなお嬢様の目付け役、という気もしないではない。
 言い争いの元凶は、慎重派のビーム・ジャが洞窟への侵入を躊躇しているせいのようだ。
「二人で持ち運ぶのに苦労するほどのお宝が眠ってるなら、あと二人面子が増えても問題ないんじゃないかな?」
「ちょっと!ここには私達が先に来たのよ、変な気を起こさないで」
 俺の提案に、サルマが険しい表情を見せる。
 しかし実際問題、どうもこの二人をそのまま放っておくのは危なっかしい。素人には見えないが、サルマの鎧はすこし綺麗すぎる(熟練の戦士は必要以上に鎧を磨くような労力を割かない)し、なにより冒険者に特有の険(ケン)がない。
 経験不足というわけでもないだろうが、どうにも違和感というか、引っ掛かりを覚えるのは確かだ。
 もちろん、俺がそんなことを気にしてもしょうがないのだが。ヤキが回ったかな…?
「それじゃあ、分け前はそっちが六、こっちが四でどうだろう?それと、何か特定のモノを探してるなら、それはそっちに譲る。悪い条件じゃないと思うけどな」
 さらに提案を重ねる俺に、「気前が良すぎるのはかえって怪しい」とサルマが反論しかけたが、ビーム・ジャがそれを制した。
「数は力なり、と言うしな。それにサルマさんは普段から無茶をし過ぎる。他の冒険者と一緒なら、そうそう迂闊な突撃もできないだろう」
「う、うるさいわねっ…!」
 サルマがじろりとビーム・ジャを睨みつけるが、当の本人はどこ吹く風だ。
 押しが強いのはサルマだが、ここ一番の意見を通すのはビーム・ジャらしい。そうでなければ、二人はとっくに墓地の攻略を進めていただろう。
 迂闊な突撃はできまい、というのは、裏切るかもしれない見知らぬ協力者に隙を見せるな、という意味だろう。彼も俺たちのことを信用していないようだが、この状況では当然の判断だ。
 ともかく話が纏まったのなら、入り口でいつまでもグズグズしている理由はない。
 前衛にサルマとボルガク、後衛にビーム・ジャと俺を配置する、オーソドックスなダンジョン攻略用の陣形でアイアンバインド墓地に侵入した。







 墓地内部は生ける屍たるドラウグルが数多く徘徊しており、ビーム・ジャの懸念が的中した形になる。下級の雑魚だけならまだしも、強力なデス・ロードまでもが存在しており、二人では大いに苦戦したはずである。
 苦戦…そう、苦戦だ。あくまで「その程度」、ということだ。
 サルマとビーム・ジャのコンビは、俺が予測していたよりもだいぶ強かった。「二人で苦戦」と俺が評したのはそのためだ。並の冒険者なら、手も足も出ずに亡者どもの養分になっているはずの状況で、だ。
 特にビーム・ジャの操る雷撃魔法は強力で、下級ドラウグルであればいとも容易く、上級ドラウグル相手でも危う気なく対処していく。
 まあ…俺たちも、負けちゃいないんだがね。






「こっちは古代人処理の専門家なんだよぉ~、『もう、飽きたよ』と言っちまえるくらいにはさァ」
 まずは俺が氷結魔法で相手の動きを止め、そこをすかさずボルガクがドーンブレイカーで攻撃。なにせデイドラ神より賜った対アンデッド特効の宝剣である、こうかはばつぐんだ。
 さらに魂縛魔法を使い、死体に宿った白き魂を魂石に封入。完璧である。
 一連の流れを見たサルマとビーム・ジャも驚きを隠せないようだ。
「あなたたち、本当にただの商人…?」
「イエス!ハグズキュア・ファイブ。まあ物騒な世の中だし、強いに越したことはないからね」
「怪しい…」
 改めてサルマが俺たちの正体を疑うが、それについてフォローする気はない。
 べつに、わざわざ素性を隠す必要もないといえば、ないのだが…ただ過去にドラゴンボーンと名乗ったあと邪教めいた連中に問答無用で襲われたこともあり、やはり迂闊に身元を明かす危険を冒すことはできない。

 しばらく先へ進み、かなり凝った作りの祭壇まで辿り着くと、ビーム・ジャが一歩前に進み出た。
「ついにここまで来たか…ようやく見つけたぞ、ガスリックの墓を」
 感慨もひとしおといった様子でビーム・ジャが熱に浮かされたような表情を見せる。どうやら彼はこの場所の詳細を把握しているらしい、たんにあてずっぽうで墓荒らしに来たわけではないということか。
 もう一方のサルマ、目的は同じはずなのだが、ビーム・ジャほどには感動していない様子でぶっきらぼうに言い放つ。
「誰の墓でもいいけど、さっさとお宝を運び出しましょうよ。ビーム・ジャ、ここには両腕で抱えきれないほどの財宝があるんでしょう?」
「まあ、そう焦ることもないでしょう。焦りは禁物です…特に、こういう場所ではね」
 はやるサルマをビーム・ジャが抑える。とはいえ、どちらかといえばビーム・ジャのほうが興奮しているように見えるが。
 ビーム・ジャの忠告を裏付けるかのように、玉座から漆黒の影がゆらり蠢きだす。
 あれは…ドラゴン・プリーストだ!
 おそらくはビーム・ジャの言った、ガスリックという男の亡霊だろう。法衣の下に頑丈な軍用鎧を身に着けており、その顔は醜悪な化け物よりなお険しい。こいつ、元は軍人か?
『我が安寧を破る者どもよ、死を覚悟せよ!』
「だが、仮面なしってことは大したタマじゃねーな…お呼びじゃあねえんだよッ!」
 俺はヤツが召喚したスケルトン・アンデッドの始末をボルガクに任せ、氷結魔法をブチ込みつつ距離を詰める。
『ヌウウウゥゥゥゥゥッ!?』
 危機を察知したのか、ガスリックは攻撃の手を止め、身を守るための防御装甲を構築する魔法を展開する。






「だが…遅いぜ!」
 バギンッ、俺のカタナ、泉州時次郎拵の一閃と同時に防御装甲は無残にも四散し、同時にガスリック自身の肉体も崩壊する。
 灰と化して床に崩れ落ちたガスリックに駆け寄り、ビーム・ジャがおもむろにつぶやいた。
「ようやく宝を手に入れた…」
「なに?どれだ?」
「これだよ」ビーム・ジャは床に広がった灰の塊を指し、「ガスリックさ。ヤツの持つ力、それこそが金に換え難い宝物なのさ。これを我が物にできれば、そのときは…」
「なにを言ってるの、ビーム・ジャ?」
 両腕一杯の宝、と言っていたサルマが余所者の俺たちにではなく、ビーム・ジャに嫌疑の目を向ける。
 その背後から、ボルガクの苦しそうに呻く声が聞こえてきた。
「相棒気をつけろ、そいつは…!」
 剣を支えに膝を突くボルガク、どうやら肉体的ダメージを受けているわけではなく、麻痺の魔法にかけられたようだ。だが、誰が?
 ボルガクの安否に気を取られた瞬間、俺の身体に雷撃魔法が直撃した。
 掌から閃光を迸らせ、ビーム・ジャが不敵な笑みを浮かべる。
「ガスリックを始末してくれたことは感謝している。おそらく、我々二人では荷が重かったろう…それと、ガスリックの灰から力を取り出すには生け贄の血が要る。恩人を苦しませたくはない、余計な抵抗は試みないことだ」
「貴様…ッ!」
「ビーム・ジャ、どういうこと!?」
 不意討ちを喰らった俺にかわって、サルマが問いかける。
 彼女を見据えたまま、ビーム・ジャは冷たく言い放った。
「召使いとしての役目を果たせたことには満足している。だが、そろそろ自分の人生を取り戻しても良いと思ってね…サルマ、お嬢様、ハイロックに帰ったらお父上に訊ねてみるといい。いかにしてケチな盗賊の弱みを握り、その人生を奪ったのかを」
「そんな…」
「最初はあなたを犠牲に力を手に入れるつもりだった。だが、私にも良心ってやつは残っていたらしい…余所者が首を突っ込んでくれたのは幸いだった」
 そこで、俺が二人の会話に割り込んだ。
「そうかね」
「なに!?」






 いままで悶え苦しむ演技をしていた俺はゆっくり立ち上がると、カタナを手に、初撃を受ける直前からずっと展開していた魔力障壁を前方に集中させた。
 ビーム・ジャは驚きを隠せない。
「馬鹿な、まさか!」
『リズ・スレン( Ice Flesh )!』
 魔力障壁を拡散させビーム・ジャの雷撃を弾くと同時に、俺は氷結のシャウトを放つ。
 竜の咆哮で身体が凍結したビーム・ジャは身動きを取ることができず、ただ凶器を手に近づく俺を見ていることしかできない。
「ま、待て、これはほんの冗談…いや、手違いだ、すまない、命だけは…!」
「やめてーーーっ!!」
 サルマの悲鳴が響き、俺はカタナを素早く鞘に納める。









「…ぐ…ぐはっ……」
 バシッ。
 乾いた音とともにビーム・ジャは首筋をしたたか鞘で打ちつけられ、口と鼻から血を垂らした状態で気を失う。
 彼が倒れる寸前、俺は歯を剥き出しに吐き捨てた。
「てめぇの血なんざ、カタナの錆にもなりゃしねぇよッ…!」






 慌ててビーム・ジャのもとへ駆け寄り、彼の口元から「ウウ…」という苦しげな声が漏れるのを聞くと、サルマは安堵のため息をつく。
 カタナの鞘をベルトにさし、俺は彼女に言った。
「致命傷は負ってないはずだよ。俺、そんなにマッチョじゃないしさ」
「わざわざ手加減してくれたの?」
「ま、いちおう同郷だし」
 本人の性根はどうあれ、ツレがいる相手を殺したら確実に面倒なことになるし、とは言わなかった。
「彼はね…」サルマが話をはじめる。「私が小さかった頃から、ずっと世話をしてくれていたの。ビーム・ジャは私が物心ついたときから家にいた召使いで、両親は彼を信用してなかったけど、それは主人と召使いっていう主従関係を考えれば無理もないと思っていたわ。疑問に感じたことは一度もなかった」
 跳ねっ返りの女戦士の目元から、涙がこぼれ落ちる。
 これだよ。
 俺は思う…あのまま斬っても良かったのだろう。私欲で俺を利用し、殺そうとしたクソ野郎、弁解の余地もない悪党を殺したところで、おそらくは俺に非はなかったのだろう。
 おそらくそれは正しい行動だったのだろう。
 だが、それは誰のための正しさだ?
「宝を手に入れ損なったな。ビーム・ジャに騙されたんだろう?」
「財宝なんていらなかった。私はただ、冒険がしたかっただけ…宝が欲しかったのは、それが私の冒険の成功を証明してくれるから、ただそれだけよ」
 彼女が財宝を必要としていなかったこと、金に興味がないことは、いまさら彼女の口から聞くまでもなかった。
 召使いがいる裕福な家庭に生まれ、おそらくは両親の反対を押し切って冒険に出たのだろう。従者つきで…サルマに冒険者特有の険(ケン)がないように感じたのは、逼迫した真剣さがなかったからだ。
 明日にでも宝を掘り当てないと飢え死にする破目になる。借金取りに追われ、臓器を取られる。金のためなら仲間を騙し、殺すことだってできる。悪を成すためではなく、ただ少しでも自分が長生きするために…
 そういう、いわば生きるための気迫が彼女には欠けていた。ままごと遊びの延長だ、などと言うほど意地悪にはなれないが。
 麻痺の魔法の効果がとけ、若干足がふらついているボルガクに肩を貸しながら、俺は床にのびているビーム・ジャに顎をしゃくり、サルマに言った。
「あいつの対処は任せるよ。あんたのことは憎からず想っていたようだしな」
「迷惑ばかりかけていたんだけどね…」

 その場を立ち去る寸前、ボルガクが俺に言う。
「似合わないことをするじゃないか」
「ときにはね」
 なにも殺すだけが問題の解決法ではない。殺すほうが簡潔で、手っ取り早いのは確かだが。
 もちろん相手は選ぶ。個人的な規範のもと、というよりは、その場のノリと状況判断でだが。俺は神を演じるつもりはない。そんなことをするには、すでに背負った業が深すぎる。







 その後、道中で発見したラルドサールというドゥーマー遺跡に乗り込む。また帰還が遅れるが、これが俺の生き方なので仕方がない。
 遺跡内に巣食うファルメルやドゥーマー製自動人形を撃破し、深部へ潜入する。
 しばらく先へ進むと、どこからか剣戟音が響いてきた。どうやら先客がいるようだ。






 遺跡深部でドゥーマー製自動人形と戦っていたのは、このところご無沙汰だった亡霊のカトリアだった。エセリウム鉱石を巡る調査の最中に命を落とした学者で、エセリウム鋳造器具の捜索にあたって協力する間柄である…いちおうは。
 どうやら苦戦しているようで、俺は慌てて加勢に向かう。
「ちわっすカトリアさん!助太刀するよ!」
『あなたは…ていうか、なにその格好!?あと、なんでドレモラなんか連れてるワケ!?色々突っ込みどころが多いんだけど!?』
「いや、その、重装と防御と召喚スキルを鍛えようと思いましてね」
 普段の装備ではなく、黒檀鎧に鉄のブーツ、ドレモラの盾、ファルメルの篭手、尖った王冠という纏まりのない蛮族めいた格好で駆け寄る俺に、カトレアが青白い目を白黒させる。
 すべて、そのへんのダンジョンの宝箱で入手した間に合わせの装備だ。持ち歩いていたのはエンチャントが付与されていたからだが、どれに何の付呪が施されているのかは忘れてしまった。たぶん、たいしたことのない代物だからだろう。
 理由はさっき俺が言った通り。お供にボルガクではなく(彼女は例によって外の見張りに立たせている)、ドレモラ・ロードを連れているのも然り。
『弱いな、定命の者よ!』
「あのースイマセン、これたぶん定命の者じゃないと思います」
 異界の剣によって破壊されたドワーフ金属製のガラクタに向かって啖呵を切るドレモラ・ロードをたしなめる。
 カトレアがここにいるということは、この遺跡にエセリウム鉱石の欠片が存在しているということだ。たしか四つのうち三つは発見済だったはずだから…これが最後のパズルのピースだ。
 四つ目のエセリウム鉱石を手にしたとき、カトリアが肉体のない身体を弛緩させた。
『正直に言うと、あなたが本当に成し遂げられるとは思っていなかったわ。でも、ほっとしている…ううん、まだ終わりじゃないのよね』
「鋳造器具を見つけないとな。次に会うのはそこで、かな?」
 再会の約束をしたあと、またカトレアは姿を消してしまった。どうやら、彼女は強い執着がある場所にしか存在できないらしい。
 このぶんなら、彼女が完全に成仏できる日も近い…かな?







 あちこち寄り道をしたあと、ようやくウィンドヘルムへ到着した俺は休憩する間もなく王宮へと向かった。玉座に腰を据えるウルフリックに、コルバンヤンドで発見した「尖った王冠」を渡す。
 王冠を手に、ウルフリックが口を開いた。
「なるほど、年老いた熊は正しかったというわけだ…途中、なにか問題は?」
「帝国軍の待ち伏せを受けたよ。まあ、たいした規模じゃなかったけど…どういうことだろう?王冠の情報を把握しているなら、もっと戦力を割いていいと思うんだけど。何か別の狙いがあったのかな、それとも、俺たち相手はあの程度の布陣で充分だと思ったのかな」
「ヤツらも王冠を狙っていたのか?」
「外に立っていた見張りのほかに、遺跡の罠にかかって死んだ部隊がいた。俺たちを待ち伏せするだけなら、アレは必要ない…うん、連中も王冠を狙っていたと思う」
「フン。だが、帝国兵はすべてお前たちが始末したのだろう?なら、良しとしよう。ガルマルたちは現地に留まっているんだな?」
「他に使えるものがないか探すと言ってたよ。あまり長居はしないと思うけどね」
「わかった。ソリチュードへ侵攻する日も近い…だが、その前にやってもらいたいことがある」
 ソリチュードへ侵攻?
 帝国のお膝元へ攻め入る、というウルフリックの言葉に、俺は耳を疑う。だが考えるまでもない、彼らは反乱軍で、そのために戦っているのだ。しかし、改めてその現実を認識するには些かの努力が必要だった。
 表情には出さないものの、心中穏やかではない俺に、ウルフリックが刻印入りの片手用斧を突き出した。






「これは…」
 差し出されたそれを受け取り、俺は斧をまじまじと見つめる。
 見た目は変哲のない。ノルド様式の鋼の武具だ。エンチャントされた気配もない。
 ウルフリックが言った。
「それをホワイトランの大バルグルーフに届けてくれ」
「えっと…特別な寄贈品ですか?」
「戦士がもう一人の戦士に斧を送る意味は一つしかない。やつが斧を受け取らねば、そのときはホワイトランと戦争になるだろう…そうか、おまえはスカイリムに来て日が浅いのだったな」
「ああ、儀式的なアレですか」
 おそらくは斧そのものに価値はあるまい。
 ヤクザの兄弟盃のようなものであろう…この斧を受け取り、俺とともに戦うことを誓え、というような。それを突き返すことが最大級の非礼にあたることは容易に予測ができた。
 しかし、まさかウルフリックがホワイトランと一戦交える気でいるとは。
 スカイリムの中心に位置するホワイトランはこの内戦についてどっちつかずの態度を取ってはいるが、どちらかといえば帝国寄りの勢力だ。ここにきて決断を迫るということは、もう後には引けない状況を意味している。
 心配だ…もう、本当に突き進むしかないのだな。
 気が進まないのはたしかだ。いちおう俺はホワイトランの従士という立場だし、ホワイトランの別邸には養子として引き取った二人の娘ソフィとルシアも住んでいる。
 とはいえストームクローク隊員としての立場のうえでも今回の仕事は断れないし、そんなことをしたところで意味がない。別の人間が送られるだけだ。俺を起用したのは、俺がバルグルーフと面識があるからだろう。ドラゴンの脅威からホワイトランを守ったという貸しもある。
 それにしても、気の乗らない仕事だ。戦争の手助けとはな…だが、やるしかあるまい。







 王宮を出てウィンドヘルムで一晩過ごした俺たちは、ホワイトランがある南ではなく、ウィンターホールドがある北へと向かった。
 魔術大学の構内へ足を踏み入れると同時に、奇妙な感覚が頭を覆う。
 その正体はすぐにわかった。元素の間中心部に、サールザルで見たあの「マグナスの目」と呼ばれるオーブが鎮座していたからだ。






「まさか、アレをここまで運んできたの?」
「美しいだろう。こんなものはいままでに見たことがない…」
 恍惚とした表情で語るトルフディル、しかしこれは…この遺物にどんな危険があるかもわからないのに、ちと迂闊すぎやしないか?
 ただのインテリアならいいが、そんなつもりで持ってきたわけではないだろう。いったい何を考えているのか…
「この構造物は、既存のどの文明でも見られないものだ。私の知り得る限りでは…強いて言えばアイレイドに近いが、おそらくは違うだろう」
 どうやらトルフディルはこのまんまるに夢中のようだ。魔性に心を奪われているのか、たんにトシでボケてるのか、わかりづらい。
 俺ですら心を引き込まれるような、奇妙な感覚がある。だからこそ危険だと思う。
 他の連中は誰も疑問に思わないのか?
 なおもこの球体についてトルフディルが語ろうとしたとき、どういうわけかサルモールの手先であるアンカノが会話に割って入ってきた。
「取り込み中に済まないが、そっちの爬虫類に用がある。こいつを借りていくぞ」
「なに?大事な議論の最中だぞ、なんたる無礼!サルモールはサマーセット島に礼儀を置き忘れてきたらしいな」
 会話を中断させられたトルフディルが激昂する。
 ただ、個人的にはジジイの戯言(たわごと)を延々と聞かされるより、陰気なエルフの用事に付き合わされるほうがまだマシだった。たんなる嫌がらせでなければ、だが。
 アンカノが不遜な態度を崩さず言葉を続ける。
「非礼は詫びる。だが、これは火急の用事だ。サイジックの僧兵がここへ来たのだ」
「なに、サイジック!?」
「それもどういうわけか、この余所者のトカゲを名指しで呼んでいるのだ。そういうわけだから、よもやこれ以上引き止めはすまいな?」
「うむむ…」
 不服そうに唸り声をあげるトルフディルを無視し、アンカノは俺を連れて元素の間から離れ、アークメイジ居住区へと続く階段を上りはじめた。
 しかし、まさかサイジックの人間がここへ直接来ようとは。
 それはアンカノも同じ思いらしく、不愉快そうに口を尖らせている。
「サイジックは、自らを超法規的な存在だと思い込んでいる無法の輩どもだ。過去にアルドメリと衝突したこともある。なぜいまこの地に赴き、それもおまえと会いたがっているのかが知りたい」
「協力したら御褒美もらえます?」
「サルモールの活動に貢献するのは生ける者の義務と思わんかね?」
「あ~の~な~。あんたねぇ、こう全方位敵に囲まれてるような環境でよくその態度続けてられるねえ。寝首掻かれる心配とかしたことないの?」
「ここの連中に、サルモールを敵に回してまで私に危害を加える度胸のある者はいないだろうさ。もし私が死んだら…たとえそれが事故だろうと、サルモールはこの大学を放ってはおかないだろう」
「馬に轢かれようと、塔のてっぺんから足を踏み外そうと、サルモールはそれを大学側の敵対的行動と見做すわけね。危なっかしいから、あんた、ずっとベッドで寝ててくんないかな」
「繰り返すぞ鱗野郎、口のききかたに気をつけろ」
「失敬。育ちの悪い余所者なもんで」
「この地の蛮族どもより性質(タチ)が悪いな、貴様」
「どーも」






 相変わらず平穏とは程遠いやり取りをしながらアークメイジ居住区に向かうと、そこにはアークメイジのサボス・アレンと、白い法衣を纏った男がすでに揃っていた。
 これがサイジック…そういえば、サールザルの遺跡で見た幽霊と格好が似ている気がする。ただ、あのときとは別人のようだが。
『どうか警戒しないでほしい。危害を加える気はない』
 サイジックの男が俺に語りかける…と同時に、周囲のものすべてが凍りついた。
 サボス・アレンとアンカノが阿呆みたいに突っ立ったまま、呼吸も、まばたきもなく、木彫りのマネキンのように微動だにしなくなる。俺は歩き、光を見て、そして影を見た。
 いったい何が起きたのか…俺は仰天しそうになった。影が動いていない。光も揺らがず、中庭に植わっている樹から除け者にされた木の葉が、宙で止まっていた。
「これが…サイジックの力か」
『あまり長くは保たないので、手短に話そう。ずっと君に会いたかった』
 どうやら、この停止した時間のなかで動けるのは俺と、サイジックの男だけのようだった。






『この施設はいま、非常に危険な状態にある。それはすべて、君たちが持ち込んだもの…マグナスの目のせいだ。あれが放出する力に、ここにいる者のほとんどが魅入られてしまっている』
「サールザルにいたときからかな…でなければ、あんなモン、持ち込もうなんて考えないもんな」
『残念ながら、マグナスの目のせいで我々の未来視の能力が阻害されている。君と連絡を取るのが遅れたのも、そのせいだ。我々は本来、直接事態に干渉するような行動は取らない。余分な警戒を招くし、我々の戒律にも反する。だが、今回に限っては私自身が直接ここへ赴かざるを得なかった。サイジックの中には、私の行動を反逆と捉える者もいる。そういう隠微な状況だということを理解してもらいたい』
「それはいいけどさ…なんで俺なワケ?」
『それは、きみが美しくカッコ良く世界を救う素質、類稀なる才能を持つスーパーヒーローで、この世の最後の希望だからだ』
「いや~ん。そこまで言われると、なんでもしてあげたくなっちゃうよ?」
『(ああ、本物のバカだこいつ…)まあ、それはともかくとして。この状況を打開するには、まずダンレインの予言者と呼ばれる人物を探さねばならない。この大学のどこかにいるはずだ。おそらく、誰かが居所を知っているだろう』
 そう言って…サイジックの魔法が解けた。
 男は煙のように消えてしまうのかと思ったが、さっきと変わらず立っていた。空間転移とか、そういう魔法は使えないようだ。それに、どうやら幻の類ではなく実体らしい。
 サールザルでの発見からそれほど日数は経っていないはずだが、この男はどこからやって来たのだろう?アルテウム島があったというサマーセット諸島からか?船で?それにしては…随分と早く到着したものだ。
「おい貴様、いまなにをした!?」
 身動きが取れるようになった途端、アンカノが血相を変えてサイジックの男に喰ってかかる。
 俺たちの会話は聞き取れなかったようだが、どうやら「なにかをされた」という感覚はあるらしい。
「申し訳ないが、なにかの手違いだったようだ。それでは、私は本部に帰還する」
 サイジックの男はアンカノに取り合おうとせず、さっさとこの場を退場してしまった。
 ていうか、えーと、このまま誤魔化して帰る気っスか!?ちょっと鋼の心臓持ちというか、豪胆すぎやしませんかねサイジック。そんなライヴ会場間違えたみたいなノリでいけると思ってんの?
 しつこくアンカノが喰い下がるも、彼自身も実力行使に出るまでには至らないようだ。一方で、アークメイジのサボス・アレンは「私がなにか粗相をしたのでなければ良いが…」と、もともと青かった顔をさらに青ざめさせている。こっちはこっちで気の小さい管理職丸出しな態度だなオイ。
 サイジックの男を取り逃がしたアンカノは、いまにも地団駄踏みそうな雰囲気で怒鳴り散らした。
「おのれ、なにを企んでいるサイジックめ!おそらくヤツは、侵略に先立つ偵察に来たか…あるいは、ヤツもあの、マグナスの目とかいうやつを狙っているに違いない!」
「ヤツ『も』?」
「あれはいかにも強力そうな魔道具に見える。なにか良からぬことに利用するつもりに違いない」
 アンカノは適当に誤魔化そうとしたが、俺が覚えた違和感は消えなかった。
 ヤツ「も」、と言ったか?
 マグナスの目「とかいう」などと言って、関心がないフリをしているが、アンカノほど頭が切れる男なら、むしろそういう物言いは不自然だ。
 サイジックの男もアンカノには懸念を抱いている様子だった。注意が必要か…
 それはそうと、俺はサイジックの男からの助言にさっそく従わなければならない。なにやら物憂い表情で椅子に腰かけるサボス・アレンに、俺は訊ねた。
「ところでアークメイジ、ダンレインの預言者って知ってます?」
「どこでその名を聞いた?トルフディルか?もしそうなら、その話を二度と蒸し返すなと伝えておいてくれ。私が話すことは何もない」
「あ、そうですか。スイマセン」
 なるほど、トルフディルが知っているのか。
 とりあえずアンカノの耳にこの名を入れないよう気をつけなければなるまい。わざわざ余計な手助けをしてやる必要もないだろう。

 とりあえず元素の間に行きトルフディルの姿を探したが、彼の姿が見当たらない。
 あちこちを歩き、ようやく達成の間(大層な名前だが、要するに宿舎だ)でトルフディルを見つけることができた。
 ダンレインの預言者の名を出すと、彼はなにやら旧友のことを話すような顔つきで言った。
「懐かしい名だ。久しく聞いていなかった…そうか、彼に会いに行くのか。おそらくはミッデンにいるはずだ、大学地下のダンジョンだよ。危険な場所だから、普段は立ち入り禁止になっている。といっても、まあ、サールザルでの君の活躍を見れば、馬の耳に念仏だな」
「それを言うなら釈迦に説法でしょう。似てるけどニュアンスが真逆だ」
「ほう、これは失礼した。ともかく、彼に会ったらよろしく言っておいてくれ」
 それだけ言うと、トルフディルは一言断ってからベッドで横になった。
 もう夜も遅い。俺も一休みするとしよう。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。今年のハロウィンは何もしなかったな…
 ともかく、順調にメイン筋のクエストが進みつつあると同時に、アイアンバインド洞窟でのミニクエスト(とも言えないか)を多少キャラの性格を盛ってお送りしました。俺こういう、キャラクター性を前面に押し出したプロットって好きなんですよね。重要でもなんでもないんだけど、妙に記憶に残るというか、愛着が湧くというか。
 そういえば大学をうろうろしていたとき、訓練中のオンマンド君の前を通ったときに彼の放った魔法が俺に命中したんですが、直後にボルガクが血相変えて剣を抜き、ノータイムで彼を斬り殺したときはさすがに目を疑いました。




殺人事件だよこれ…



 いくら相棒が攻撃されたといっても、攻撃魔法を一回誤爆しただけで殺すのはやり過ぎだよボルガクさん…しかも俺まったく気にしてなかったのに…
 すわ大学側と戦争になるか!?と思ったんですが、どうやらボルガクの行為は正当防衛と見做されたらしく、特にお咎めはありませんでした。それでいいのかSkyrim…
 あ、ちなみにオンマンド君は生き返らせました。Ressurectコマンドで。死霊術じゃありませんよ。
 本文中には書きませんでしたが、じつはラルドサールで猛特訓を積んで回復と片手剣武器と両手武器以外のスキルをすべて100にしました。現在レベル100を超えています。














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2016/11/02 (Wed)00:56





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 旅の途中でウィンドヘルムに立ち寄った俺はストームクロークへの入隊を決意し、首長ウルフリックに対して宣誓を果たす。
 帝国軍とストームクロークの内戦はいまのところ小康状態にあるが、アルドメリから派遣されてきたエルフたちの動きがキナ臭いこともあり、いつ激しい戦いがはじまるともわからない。
 当初の予定では、俺はたんに商人として関わりたかっただけだが、どうもそれだけでは済まなそうな雰囲気だ。







 ガルマルの話によれば、かつて上級王の権威の象徴であった「尖った王冠」がコルバンヤンドという遺跡に眠っていることが確認されたらしい。古竜の骨と歯から作られたその王冠には、かつての王位継承者たちの力が宿っているという。
 もしウルフリックが帝国やアルドメリに先んじてその王冠を手にすることができれば、彼の王位主張の正当性における信憑性が高まるというわけだ。ノルドは伝統を重んじる性格ゆえ、この内戦においてかなりの優位性を確保することができるだろう。
「すでに兵を派遣してあると言っていたが、なにか懸念でも?」
「ああ。帝国やエルフどもが狙っているとは思えんが、最後の戴冠者であるボルガス王はエルフどもの率いるグレートハントによって暗殺された。あのエルフどもが権力者をただ殺すなどとは考えられん。何がしかの呪いをかけているはずだ。そのための警戒だよ」
「なるほど。この地じゃあ、ご先祖様はあまり安眠できてないようだからなぁ」
 石拳のガルマルとの会話で、俺は次なる任務の概要の把握に努める。
 安眠云々は、これまでのスカイリムでの活動であまりにもアンデッドとの戦いが多かったための感想である。
 目的地であるコルバルヤンドはウィンドヘルムからそう遠くない。ウィンターホールド大学からの依頼である書籍の回収地点とも近い。順番に解決していくとしよう。

 出発の前に、王宮魔術師のウーンファースのもとへ挨拶に訪れる。






「ほう、おまえさんか。いつぞやは世話になったな」
「そう嫌味を言わんでくださいよ…」
 皮肉っぽい笑みを浮かべるウーンファースに、俺は気まずそうな表情を浮かべる。
 以前ウィンドヘルムで殺人事件の調査をしていたとき、俺はこのジーサンの誤認逮捕に加担してしまったことがあるのだ(どちらかといえば俺の調査報告を聞いたヨルレイフが先走ったせいなので、「俺が誤認逮捕した」とは言いたくない)。
 とはいえ魔法嫌いのノルドの地であるスカイリムでは貴重な魔術師仲間だ。過去のことは水に流して、できれば仲良くしたいものである。
「今日は届けるものがあって来たんだよ。市場のヒレヴィ・クルーエル・シーから、ベラドンナのエキスと言ってたが」
「おお、それはまさしく儂が頼んでおいたものだな。よし、駄賃をくれてやろう」
 そう言ってウーンファースが差し出した革袋には、なんと750枚もの金貨が入っていた。
 さんざん苦労して金貨5枚で済まされかかった直後とあって、俺はこれが何かの間違いではないかと目を疑う。
「さぁすが、宮仕えは豪儀だねぇ」
 子供の使いで金貨750枚とは。だが、仕事は楽に越したことはない。必ずしも報酬が苦労に見合ったものとは限らない、というのはどの世界でも変わらぬということか。
「力も鋼もいいだろう。だが魔法こそがこの世の真の力だ」
 別れしな、老ウーンファースがいつもの調子で捲し立てる。
 この世界では、魔法は冷遇されているんだよ…とは、さすがに言えなかった。






 王宮を出たとき、俺は石拳のガルマルから受け取ったストームクロークの標準装備を身につけていた。
「ねぇボルガクさん、この新衣装どう思う?」
「以前より貧相に見えるな」
「やっぱり?」
 俺もそう思う。
 ていうか、なんで袖出してんの?雪国で肌を露出する装備が多いのはなぜなの?ノルド人は露出性癖があるの?肌を出してないと死ぬ病気なの?
 生暖かい湿地の出身である俺にノルドの衣装はちとレベルが高すぎる。ひょっとしたらこれも、ストームクロークの一員として、ノルドの一員としての試練なのかもしれない。







 すぐにいつも通りの服装へ着替え、俺はまずウィンターホールド大学から請けた仕事をこなすためフェルグロウ砦へ向かった。サールザルで発見したオーブの謎を解明するために有用な書籍を持ち出したオーソーンという魔術師が、この砦にいるらしい。






「うおりゃたあーっ!」
 ゴガッ!
 俺はカタナを抜かずに鞘を装着したままの状態で砦の見張りを叩き伏せ、状況を確認する。
「どうやら死霊術師だけじゃなくて、ありとあらゆる種類のはぐれ魔術師が集まってるらしいな。大学という権威に頼らず、独力で研究を続けることを選んだ不良どもの集いか」
 権威に頼らず…なんて言い方をすれば、ちょいとカッコ良く思えてもくるが、要するに大学で禁止されている危険な魔術を研究するため離れていった連中だ。中には腕の立つやつもいるので、生活には困らなかったことだろう…
 幾らかは作物を育てて自給自足していたようだが、少なくとも、農業や畜産だけで研究道具や書籍、まして宝飾品まで賄えるはずもない。その大部分は旅人を襲って得たものに違いなかった。
 ちょうど、俺の姿を見かけて一も二もなく破壊魔法をぶち込んできたように。
「で、いつものように私は外で待機というわけだな」
 不服そうにつぶやくボルガク。でもやっぱ閉所は一人のほうが探索しやすいんですよ。
 俺は彼女に外の見張りを頼むと、以前攻略したはずの(そういうパターン多くなってきたな…)フェルグロウ砦へ侵入した。

 檻に囚われていたオーソーンを発見したのは、砦の地下牢にたむろしている魔術師や吸血鬼をボコボコにのして回った後のことだった。






「随分と快適な別荘住まいじゃないか」
「あんた、俺を知っているのか?たのむ、ここから出してくれ!」
 俺の皮肉に反論する余裕もなく、アルトマーの魔術師オーソーンは鉄格子越しに哀願してきた。
 彼の言う通りにレバーの仕掛けを作動させ、鉄格子を解放する。
 いままでのパターンだと「助けてくれてありがとう!お礼に殺してやる!」という結果になることがおおいに予想できたので、俺はすぐにカタナをぶっ刺せるよう警戒していたが、どうやらオーソーンに反抗の意志はないようだ。
「俺は大学の命令で、おまえさんが持ち去った本を回収するために来たんだ。おまえさんを助けるためじゃないが、まあ、大学の連中だって、おまえさんの死まで望んじゃいまいよ。いったい、どうなってるんだい?」
「ここにいる連中、俺から本だけを奪って、あとは実験体として利用するために俺を閉じ込めやがったんだ!こんなのあんまりだぜ!」
「それにしたって、ここの連中、いったい何の研究をしてるんだ?いろんな種族の死体やら、牢に生きたまま捕えられた吸血鬼やら、ちょっと普通じゃないぜ」
「俺が知るもんか…俺は蚊帳の外だったんだから」
「ま、いいや。とりあえず本を回収して、ここから脱出しますか」
「三冊の本はここにいる連中の親玉が持ってる。行こう、俺も援護するよ」
 その後はオーソーンとともに、はぐれ魔術師たちを始末していく。
 このオーソーン、炎の精霊を召喚できるのはいいが、本人自身は至って打たれ弱く(なんせレベル10だ!)、注意していないとすぐに死にそうな雰囲気だ。






「こいつは…それらしい本は持ってないな…」
「そいつは親玉じゃない。親玉はアルトマーの女だ、いい声をしてる、いい女だよ」
「ああそう」
 殺した魔術師たちの死体を逐一確認しながら、俺たちは慎重に先へ進んでいく。
「しかしあんたねえ、いちおう隠れて行動してるんだから、物音立てないよう少しは注意してちょうだいよ」
「仕方がないだろう、俺は魔術師で、薄汚い盗賊とは違うんだ」
「…置いてくよ?」
「すまなかった。悪かった」
 このオーソーンという男、こちらがスニーク状態で移動していても平気で立ったまま走ってくるので、たいてい先制攻撃を仕掛ける前に敵に気づかれてしまうのだ。
 ヤツが召喚する炎の精霊も、見た目は魅力的だし強そうだが、実際の戦闘力はそれほどでもない。すこし腕の立つ魔術師なら、ヤケド一つ負わずに倒すことができるだろう。
 ぶっちゃけ足手まといでしかないのだが、まだ敵の親玉とやらを始末していない以上、勝手に行動させるのは危険だ。それにまだ、何も企んでいないと決まったものでもない。
 やがて俺たちは砦の最上階にて待ち受ける召喚者と相対した。






「貴方ね…私の研究を台無しにして、仲間を皆殺しにしてくれたのは。いちおう名前と、目的を聞いておこうかしら」
「あっしゃあブラックマーシュはリルモスの生まれ、ビル・アーケイド。意地には強いが人情にゃあ弱い、男の中の男一匹!」
「そんなことは聞いてないわ」
「ああそう」
 追い詰められたにしては殊勝な態度を取る召喚者に、俺は思わず感心の声をあげる。
「なるほどオーソーンの言う通り、いい声をした美人さんだ。トカゲの俺でも惚れそうだぜ」
「お褒めの言葉をどうも。オーソーンを連れ出したということは、貴方、大学の関係者ね?残念だわ…アレンの腰巾着に用はないの」
「つれないねぇ。交渉の余地はないのかい?どっちかが死ぬしかないかね」
「あれだけ好き勝手に暴れておいて、よく言うわ。でも、ええ、その力に免じて…オーソーンを置いていくなら、貴方の暴虐に目を瞑って、本を渡しても構わないわ。そして、無事に帰してあげる」
 それは破格の提案だった。
 彼女の資産をぶち壊し、仲間を皆殺しにしておいて、俺は三流の魔術師を見捨てるだけで目的を達成することができるわけだ。もともと俺の目的は本の回収で、オーソーンの安否は勘定に入ってない。
「おい、まさか俺を見捨てたりしないよな!?」
 哀れっぽい声をあげ、オーソーンが立ちすくむ。
 俺はカタナを鞘に納め、オーソーンを見つめ、召喚者に目配せをすると、ゆっくり頷いた。
「本はもらっていくぜ。この青瓢箪は煮るなり焼くなり、好きにするといい」
「交渉成立ね」
 召喚者が氷のように冷たい微笑を浮かべる。
 俺は祭壇に奉げられた本を回収するため彼女の脇を通り過ぎ、その背後まで近づいたとき、ふと足を止めた。
「ああそうだ、一つ言い忘れてたことがある」














「な、なぜ…」
 祭壇に串刺しにされ、召喚者は血を吐きながら問いかける。
 俺は先刻の彼女よりもなお冷たい、爬虫類の瞳でその無残な姿を見下ろした。
「俺にゃあ、そうまでしてあんたを生かす理由がねぇ」
 さっきの、情には弱い、なんてのは嘘っぱちだ。
 いままでにいったい、打算や目先の利益のために何人殺してきただろうか。






「お、驚かしやがって…でも、あんたが俺を見捨てるわけはないと思ってたよ!」
 スラリ、音を立てて納刀する俺に、オーソーンが安堵のため息を吐く。
 べつに…オーソーンを助けたのは情からではない。そのほうが大学からの評価が上がるだろうと思っただけのことだ。もし、それを上回る好条件を召喚者が提示したのなら…そんなことが可能だったなら、の話だが…俺はあっさりそっちに乗っていただろう。
「因業かねぇ…」
 血にまみれ、驚きの表情のまま絶命した女の顔を見つめながら、俺は深いため息をついた。






 フェルグロウ砦を出た俺はボルガクと合流し、オーソーンの無事を見届けた。
「いちおう大学に話は通しておくよ。戻るならある程度の罰は覚悟だろうが、まあ、ガチでキレてる様子もなかったし、そこまで深刻に考える必要はないだろう」
「すまない…この恩は忘れないよ。いつかきっと、借りは返す」
 そう言い残し、炎の精霊を連れてダバダバと走り去っていくオーソーン。道中で野良吸血鬼や野良死霊術師にやられたり、巨人にホームランされたりしないといいが…
 回収した三冊の本のタイトルはそれぞれ「涙の夜」「アルテウムについて」「アイレイド最後の王」。いずれも貴重な品々だ、まだ内容は確認していないが、今回の件で重要なのは果たしてどの本か。
 ウィンターホールド大学へ戻る前に、ガルマル以下ストームクローク部隊が待機しているコルバンヤンドへ向かおう。ここで少し休憩を取ったとしても、明朝には着けるはずだ。










 コルバンヤンドでは懐かしい顔が俺を出迎えた。
「おまえ、正式に我々の仲間になったらしいな!一緒に帝国の手からスカイリムの地を取り戻そうぜ!」
「レェイロフぅ!もうリバーウッドで呑んだくれるのには飽きたのか?」
「そういうことを言うなよ…」
 石拳のガルマル率いる分隊には、俺がかつてヘルゲンで帝国軍に処刑されかかったとき、一緒に脱出して束の間世話を焼いてくれたノルドの戦士レイロフも加わっていた。
 旧友同士肩を抱き合い、拳を突き合せて再会を喜ぶ俺たち。思えば、このスカイリムの地に来て最初に出会った友好的な相手なんだよな、この男は。
 男同士の友情の確認もそこそこに、ガルマルが状況を説明しはじめる。
「いま遺跡の周辺に数名の帝国軍兵士を確認している。連中は尖った王冠のことを知って派遣されてきたはずだが、規模は小さく、奇襲を仕掛ければ容易く殲滅することができるだろう。こちらの動きに気づかれるまえに、やつらの腹を切り裂いてやる」
 分隊は移動をはじめ、腰を低くしたまま静かに歩を進めていく。
 その途中、俺はボルガクに向かって小さくつぶやいた。
「ヴァイキングの復讐、か」
「なに?」
「腹を切り裂く、と言ったろう?それから腸を引っぱりだして、相手が死ぬまで苦しみのたうちまわるのを眺めるのさ。死ぬまで半時間ほどかかるらしい。ネディックの伝統的な処刑法だ」
「おまえは悪趣味な本ばかり読んでいるな」
「どうも」
 やがて帝国軍兵士の守備隊に接近した俺たちは一気に襲いかかり、反撃の隙を与えぬまま全滅させる。






 コルバンヤンド内部へ侵入、ガルマルの鋭い声が響く。
「全員、無事か?」
「一人も欠けていません。負傷者もかすり傷で済んでいます」レイロフが答える。
「よし…どうやら内部にも帝国兵が潜んでいるな。おそらく表の連中がやられたことには気づいているだろう、待ち伏せする気でいるらしい。生意気な」
 周辺には山賊と思しき死体が転がり、そこいらに放置された宝箱は中身が空っぽになっている。
 どうやら、元々は山賊が住み着いていたのを帝国軍が乗っ取ったらしい。
 俺たちは内部の様子を窺いつつ、隙を見て攻撃を仕掛けた。






「スカイリムのために!」
 ガルマルの咆哮とともに、双方入り乱れての乱戦がはじまる。
 本来なら弓を使った遠距離からの狙撃でセコセコと数を減らしたいところだが、ここはストームクロークに俺の実力を見せつけるためにも、剣を使った戦闘に参加したほうがいいだろう。
 幸か不幸かいままで散々に強敵と戦ってきたこともあり、たいした訓練も受けていない下っ端の帝国軍兵士如きに後れを取る気はない。
 それに今回同行している、名も知らぬストームクロークの戦士たちも中々に勇猛かつ手練であった。どうやらガルマルは下級兵士の訓練ではなく、相当な困難を予想した布陣でここへ来たようだ。






 帝国軍兵士たちを葬り去り、ストームクローク隊とともに遺跡の深部へ向かった俺は、なにやら見覚えのある部屋へ辿り着いた。
「これは物語の間だな。ここに描かれた壁画は、かつてこの地を築いた古代人たちの歴史を表しているのだ」
「へぇ」
 ガルマルの説明に、俺は適当な相槌をつく。
 物語の間という呼称は知らなかったが、俺はかつて古代ノルド人の遺跡を探索したときに、何度も同じものを目にしている。行く手を塞ぐ壁の仕掛けも、もはや謎でもなんでもなくなっていた。
「これは竜の爪っていう鍵が必要なんだよ。さて、どれが合うかな?エメラルド?サファイア?ルビー?アイボリー?コーラル?金?鉄?」
「いや、足元に落ちているやつではないのか」
 やおらバックパックから色とりどりの、竜の爪をかたどった装飾品を取り出す俺に、ガルマルが帝国軍兵士の死体の傍らに転がっている黒檀製の爪を指差した。
 この帝国軍兵士は俺たちが殺した連中とは違う。どうやら、仕掛けを正しく理解せず竜の爪を使い、遺跡の罠にやられたらしい。
 ともあれ。
「なぁんだ、俺のコレクションの出番はナシかね。さてキーの順番は、オオサンショウウオ、ハト、イソギンチャクか」
「……え?」
 爪に嵌め込まれたレリーフ…おそらくはキツネ、蝶、竜と思われる…を見て壁の仕掛けを作動させる俺に対し、ガルマルは眉をひそめる。
 レリーフに描かれたキツネのモチーフですら「え、おれオオサンショウウオなの?」と問うてきそうな雰囲気である。
 実態はともかく、絵柄さえきちんと合っていれば問題はないわけで。
 仕掛けを作動させ、閉ざされた扉が開いた先には数々の棺が安置された部屋が広がっていた。






「あのーガルマルさん」
「どうしたアルゴニアン?」
 いつぞや習得した死者探知の魔法で周辺の気配を読み取った俺は、あまり思わしくない表情でガルマルに告げた。
「たぶん、この部屋ドラウグルだらけです。扉の鍵を開けるレバーを引いた瞬間に棺から襲いかかってくるですよ?」
「ドラウグルだと?ハッ、ボーンウォーカーごとき、なにを恐れる必要がある!」
「ですよねェー。じゃ、いきますよ」
 さらに先へ進むための道を閉ざすゲートを開くためのレバーを握り、俺はストームクロークの兵士たちが配置についたことを確認する。ドラウグルにもっとも隙ができる瞬間は目覚めた直後、ということを知っているため、棺から出てきた瞬間に叩き伏せるための配慮である。
 深呼吸し、俺は勢いよくレバーを引いた。
「レッツゴウ!」
 案の定、レバーを引いてゲートがせり上がると同時に棺の蓋がバタンと音を立てて倒れ、武器を手に潜んでいたドラウグルたちがいっせいに襲いかかってくる。
 雑魚の相手はストームクロークの兵士たちに任せ、俺とボルガクはゲートを抜けた先、ボルガス王の待つ玉座へと向かう。果たしてそこには尖った王冠を頭に乗せたまま、強力なアンデッド・ロードと化したボルガス王が佇んでいた。
「ボルガクさん!」
「おう!」
 ボルガス王がこちらを認識するのとほぼ同時に俺の放った破壊魔法「氷の谷」が炸裂し、一瞬だけ怯んだボルガス王の胴をボルガクが袈裟斬りにする。
 対アンデッド専用の宝剣であるドーンブレイカーの一撃を受け、苦しみ悶えるボルガス王に俺が最後の一撃を加えた。






「寝起きの直後で悪いけど、王冠だけ置いてまた寝ててくれないかねェ」
 そう言って、俺は「パチリ」と音を立て納刀した。
 抵抗らしい抵抗をすることもなく無様に転がるボルガス王の頭から王冠を取り、俺はそれをしげしげと眺める。
「いかにもノルドって感じだねぇ。大層な噂ほどの力は感じないが…まあ、あくまで権威の象徴だし、いいか」
「おお、尖った王冠を手に入れたのか!」
 別室での戦闘も終わったらしい、他のドラウグルたちを殲滅したガルマルが歓喜の声をあげる。
「急いでそれをウルフリックのもとへ持ち帰るのだ。我々はいましばらくこの遺跡を捜索し、なにか使えるものがないか調べるつもりだ」
「帝国軍兵士は俺たちを待ち伏せしていたんだろう?おそらく、本隊と頻繁に連絡を取り合っていたはずだ。連絡が途絶えたとなったら、おそらく増援部隊が駆けつけてくるぞ」
「なぁに、帝国軍なぞ幾ら来たところで、儂のこのコブシで砕いてやるわい!」
「あー、ノルドってそうだったよねぇ…いや、いいや。頼もしい限りです」
「心配せんでも、ちゃんと表に見張りを配置してある。怪しいものを見かけたら手を出さず、すぐに戻って報告するよう伝えてあるからな。それに儂らも戦況が厳しくなったらすぐに引き揚げる、こんな場所で無茶はせぬわ」
 どうやらこのガルマルという男、たんに猪突猛進というわけではないらしい。
 俺とボルガクはこの場をガルマルに任せ、遺跡を出る前にレイロフへ挨拶していく。
「おまえさんもここに残るのかい?帰ったらまた一緒にハチミツ酒でも飲もうや」
「今度はそっちが奢ってくれよ?随分と出世したらしいからな、えぇ、ドラゴンボーンよ?竜殺しの噂はリバーウッドまで届いていたぞ」
「だからといって、特別に待遇が良くなったわけじゃないけどね。そっちも、無茶はするなよ」
「ああ。俺の親父は、こういう場所を荒らすなと言っていたが…まあ、未来のスカイリムのためなら、ご先祖様たちも許してくれるだろう。たぶん」
 元はといえばここは古代ノルド人の墓、レイロフたちノルド人にとってはいろいろと感慨深いものがあろう。他の兵士たちも興味深い様子で壁画などを観察している。
 これといってルーツのない俺にはない、羨ましい感覚だ。
 そんなことを考えながら、俺はボルガクを連れてコルバンヤンドをあとにした。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。少しづつですがクエストが進行しつつあります。
 今回は必殺!のようなセコ突き処刑シーンを再現してみました。これじゃ時次郎じゃなくて主水じゃねーか!ちなみにアーケイドが「トカゲの俺でも惚れそう」と言ったのは相手の油断を誘うためではなく割とマジな話で、だから殺した後にすこしナーバスになっています。
 また、あまり目立たないシーンですが最初のほうで鞘を装着したままで戦闘していますが、これは別装備扱いで用意した、れっきとした武器です。いちおう非殺傷を目的とした戦闘を想定して用意したもので、戦闘スタイルは両手剣、モーションは両手斧で設定してあります。ただアーケイドはこれまで両手剣と防御スキルをまったく育てていなかったので、手加減どころか大苦戦してしまいました(笑)
 鞘のみの武器もそうなんですが、NifSkopeでの流血ノードの設定がすこしだけ面倒臭かったです。

 コルバンヤンドでは戦闘シーンでの撮影でレイロフがすごい良い表情をしています。




戦闘で恍惚するイキ顔レイロフ



 なんつー顔をしとるんだこいつ…
 思わず別撮りしてしまいました。












2016/10/31 (Mon)05:14





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 商売のため盗賊ギルドや魔術専門の大学を渡り歩いているうち、どういうわけか異界の神々と関わることになってしまった。しかも連中、どうやら俺の素性を知ってつけ狙っているらしい。デイドラ公…一筋縄じゃいかない顔ぶれだ。
 ともかく他にもやることは大事小事含めて山のようにあるし、当分は腰の落ち着く暇もなさそうだ。それじゃあ、今回もいきますか。










 たまたま通りがかった灯台に挨拶していこう、なんて思ったのが運の尽きで。
 いつものように相棒の女戦士ボルガクを表の見張りに立たせ、ウィンターホールドの南西に位置するフロストフロウ灯台に入ると、いきなり一面に漂う死臭が俺の鼻を突いた。
「これは…ファルメルの得物だな」
 裸の女の腹部に刺さった斧を拾い上げ、俺はこの状況を読み解こうとする。ていうか、この光景を見られたら絶対に俺が犯人だと思われるよな。
 周囲を見回し、シャウラス…俺はいままでずっと、シャ「ラ」ウスだと思っていた…の亡骸が転がっていることに気づく。極めて獰猛、かつ強靭な生命力を有するこのおぞましき巨大昆虫が自然死したとは思えず、おそらくは被害者が命を落とす前に一矢報いたものと思われる。
「ファルメルの姿が見えないな」
 いま俺が手にしている、シャウラスの頑強な甲殻部から製造された凶器の持ち主がいないのが気になる。
 たいてい、シャウラスはファルメルと生活圏を共有している。凶器の現物があることからも、いま姿が見えないファルメルが何処かに潜んでいるのは確かだった。
 俺はさらに周辺を捜索し、おそらくは被害者の縁者の手によるものと思われる手記を発見する。
 どうやらこの灯台は、以前より地下から異音がしていたらしい。俺にも聞こえる…カサカサと虫が這いずり回るような音。硬質のキチンが擦れ合う音。耳慣れた音。間違いなくシャウラスの気配がする。
 また手記によると、この灯台で暮らしていた一家はあまり円満な状態ではなかったようだ。が、そんなことはどうでもよろしい。
 さっき見かけた、レッドガードの女の死体…おそらくは奥方だろう…はまだ腐乱がはじまっていなかった。死んだのはそう昔のことではない。まだ生き残りがいるかもしれない。
 こんな状況は放っておけないし、ど畜生のメクラどもに捕まっているのが子供であれば尚のことだ。それに生き残りの救出に成功すれば、英雄的行動が評価されてウッハウハになれるかもしれない。
 しょうもない下心を胸に抱きながら、俺は魑魅魍魎が跋扈する灯台の地下へと向かった。






 灯台の地下室は洞窟と繋がっており、案の定、そこはファルメルやシャウラスの生活圏となっていた。ドゥーマー遺跡でよく見るような光景を前に、俺はやつらを出会った先から屠っていく。
 けっきょく…生き残りは一人もいなかった。みな殺されたか、自害したか。この地下暮らしの連中に捕まったら、決して楽には死ねない。歯向かうには強すぎる。俺だってたまに殺されそうになるくらいだ。レベル90超のドラゴンボーンのこの俺が。
 洞窟最深部に潜んでいたシャウラスの親玉、巨大なシャウラス・リーパーを退治すると、その腹部から消化されかけの家長の首が転がり落ちてきた。
 反射的に拾ってしまったが、いったいこんなものをどうすれば良いというのか。杯でも作るか、首塚でも作って埋めるべきか。
「いらねぇや、これ。捨てよう…捨てれない…クエストアイテムかよ、これ!」
 しかしシャウラス・リーパーを退治した時点で、この殺人事件は解決扱いになっている。この半端に消化された生首、どうしろというのか。
 皆目検討がつかぬまま、俺はそれを皮袋に包んでザックに放り込んだ。ボルガクさんには内緒にしておこう。ところでオークって、こういうオブジェについてはどういう意見を持っているんだろう。
 とりあえずセプティマス・シグナス、いやハルメアス・モラから命じられたエルフ族の血液集めは一歩前進した。ファルメルの血液採取に成功、先はまだ長い。







 次に立ち寄ったのはホブのフォール洞窟、ここはもとより故あっての来訪である。
 ソリチュードで吟遊詩人の勉強をしていたとき、仲間の一人に楽器の回収を頼まれていたのだ。なぜこんな洞窟の只中、それも死霊術師どもの巣窟に置き去りにされたのかは知らないが…






「醒走奇梓薙陀霜幻(せいらんくしなだそうげん)一刀流奥義、不知雪(しらゆき)!チェェアリャアァァァーーーッッ!!」
 号砲一閃、愛刀「泉州時次郎拵」を抜いた俺はありったけの魔力を刃に乗せ、連続で斬り払う。
 死霊術師たちは自らが使役する亡者ともども袈裟斬りにされ、おびただしい量の鮮血を吹き出しながら倒れた。が…
「い痛えぇーーーっ!肩が、肩が外れたぁっ!」
 思わずカタナを地面に突き刺し、俺は苦悶の叫びをあげる。
 もとより…俺はきちんと剣の稽古をつけてもらったことがない。その知識はもっぱら本から得たもので、いわば素人の付け焼刃。たったいま披露した必殺技にしたところで、不恰好ながらどうにかそれらしいものを再現できたに過ぎない。
 醒走奇梓薙陀流なる、かつてブラックマーシュの地方豪族に伝わっていたらしい剣術の本を手に入れたのは偶然のことである。幾つかの動きを真似ることはできるが、そもそも基本形である呼吸法などを会得していない俺には、本来であれば流派の名を口に出すことすらおこがましい話であった。
「やっぱり…これはいかんよなあ。ちゃんと修練せんと」
 自ら命を託すカタナを鍛えたとあって、このところ俺は剣に頼る場面が多い。
 カタナそのものは自分でも惚れ惚れするほどの出来栄えだが、扱う人間がこれでは…自分でも情けない思いだ。いっそ、ボルガクさんに鍛えてもらうか。






 洞窟の深部では、なにやら死霊術師の幹部と思われる連中が怪しい儀式を執り行っている。
 さっきまで生きていた…俺に助けを求めていた…女の亡骸を前に、熱心に言葉を交わす死霊術師たちの背後に忍び寄ると、俺はカタナを一閃させた。
「そんなに新鮮な死体が欲しいなら、くれてやるぜ!」
「なにっ!?」
 ズバッ、三人いた死霊術師のうち二人を瞬く間に斬り伏せ、俺はこの連中のボスと思われる男と相対する。
 しかしこいつは戦闘に長けていたようで、強力な破壊呪文を繰り出すだけではなく、絶えず一定の距離を取り続けカタナの間合いに入ろうとしない。
 じりじりと追い詰められたが、俺は相手が僅かに油断したところを見逃さず、相手が間合いの範囲外だと思い込んでいた距離まで刃先を飛ばす。柄の先端を掴み、遠心力を利用して振り回した刃が死霊術師の頭を半分削り取った。






 切り口から血と脳漿を噴き出し、死霊術師の親玉がどうと音を立てて床にくずおれる。
「どうせ生き返すんなら、仲間同士で勝手に殺しあって、好きなように生き返しあってろ。関係ない人間を巻き込むんじゃねえ」
 すでに聞く耳を持たないであろう亡骸に吐き捨てるように言い、俺は連中が貯め込んでいたらしいお宝が詰まった宝箱を開けた。あまりたいしたものはなかったが、その中に吟遊詩人仲間であるパンテアのフルートがあることを確認し、俺は安堵のため息をついた。







 次に向かうは「見捨てられた墓地」、なんの用事があったかは忘れたが、近場にあったのと、クエストマーカーが刺さっていたので足を運んだ次第。たぶん、そのうち思い出すだろう。






 内部は生ける屍、古代ノルド人のアンデッドたるドラウグルの巣窟と化していた。
 黒檀の斧を振りかぶるドラウグル・デス・ロードの一撃を左手の鞘で受け止め、俺は右手で構えたカタナを相手の胴に深々と突き刺す。
「斬るだけが剣術じゃないんだぜ!」
 致命打を受け動きが停止したドラウグル・デス・ロードの素っ首を斬り落とし、俺は刃にまとわりついた血を振り払った。






 最深部にて俺を待ち受けていたのは、クラルミルという名のドラゴン・プリースト。
 深い眠りについていたドラウグルたちを次々と蘇らせ、自らは柱の影や暗闇から魔法を連発するというチキン戦法を取ってくる。死人のくせにみみっちぃやつだ。
 もっともその魔法の威力はさほどではなく、伝説のドラゴンのブレスや、ちょっと前に戦った死霊術師に比べれば何ほどのものでもない。実力が見た目に負けている。






「成仏しやがれぃ!」
 すでに再生できないほど塵化したドラウグルたちを踏み越え、俺は一気呵成にクラルミルへ斬りかかる!
 渾身の突きを受けたクラルミルは断末魔をあげ、灰化して果てた。
 その亡骸をチェックし、俺は失望したようにため息をつく。
「仮面なし、か。こいつはハズレのほうだな」
 強力な、高位のドラゴン・プリーストはそれぞれ強力なエンチャントが付与された専用の仮面を持っている。こいつは低位の者だったのだろう、あるいは姿形が似ているだけのまがいものか。
 ドラゴン・プリーストあるところに言葉の壁あり。俺は新たなスゥームを習得し、さらに墓地の最奥から割れた白き小瓶を回収。
「ああ、そうか。これはウィンドヘルムの…錬金術師の依頼だったな」
 詳細は忘れてしまったが…ウィンドヘルムはここから近いし、ストームクローク入隊にあたって与えられた試練…氷の精霊の討伐…を済ませた報告もしなければならない。
「そろそろ正式に決意表明せにゃならんな」
 いまのところ、帝国とストームクロークの内戦に進展した様子は見られない。俺がグズグズしているせいかもしれないが…まあ、そろそろ一手先に進めてもいいだろう。







 見捨てられた墓地を脱出し、ウィンドヘルムへ向かった俺たちはさっそく錬金術の店「ホワイトファイアル」へ向かった。
 俺はかつて、ここの店主ヌレリオンから「白き小瓶」の回収を頼まれていたのだ。なんでも特別なマジックアイテムで、この瓶に入れた液体は、中身を枯らさぬ限り補充され続けるという。






「俺は白き小瓶を求めて、サマーセット島からはるばる海を渡ってこの辺境の地へ辿り着いた。あらゆる書物を調べ、こうして小瓶に由来する名の店を持つことで、情報を知る冒険者を集めて話を聞いた。さあ、見せてくれ!」
「いいとも。割れてるけど」
「…なんだと?」
 俺が差し出した小瓶…ひび割れ、すでに容器としての用を成さぬ代物と果てたものを見つめ、ヌレリオンは悲鳴をあげた。
「なんということだ!どうして壊したりしたんだ!?」
「俺が壊したんじゃねえよ!最初から割れてたんだって!」
「へまをやらかした連中はみんなそう言うんだ!」
 しばらく二人でやったの、やってないのと騒いだところで、ようやく落ち着きを取り戻したヌレリオンが吐き捨てるようにつぶやく。
「フン、伝説のアイテムがそうそう壊れたりはせん。特に、貴様ごときが壊せるものではないだろう」
「納得してくれて有り難いんだけど、なあんか癪に触る言い方するね」
「もういい、ご苦労だった。これは報酬だ」
 そう言って、ヌレリオンはフラフラとベッドへ向かった。かなりショックだったのだろう。
 だが俺とて衝撃を受けずにはいられなかった。ヌレリオンが覆い被せた手を離し、俺の手元に乗せられていたのは、たったの5ゴールドだったのだから。
「ちょっと待て」






「なんだ爬虫類、まだそこにいたのk…おおっ!?」
「カタギでもやって良いことと悪いことがあんだろうが、てめえ!たたっ斬るぞコノヤロー!」
 スラリ、カタナを抜き放つ音を聞いて背後を振り返ったヌレリオンが驚きに目を見開く。
 もとより俺が依頼されたのは小瓶の回収で、モノの状態そのものは勘定に入っていない。亡者どもが跋扈する危険な洞窟を駆けずり回り、俺自身には何の落ち度もなかったのにこの報酬額はあんまりだ。
 危うく俺が手討ちにしかけたところを、弟子のクインタスが慌てて止めに入った。
「ま、ま、待ってください!落ち着いてください!こっちで話し合いましょう」
 傷心のうえ殺されかかって腰砕けになったヌレリオンを放置し、俺はクインタスに連れられるまま一階のカウンターまでついていく。
 勘定の入った箱から金貨の詰まった皮袋を取り出し、クインタスは申し訳なさそうに頭を下げた。
「あなたの仕事は、きちんとした報酬を受け取るに値するものです。これは俺の個人的な判断ですが、受け取ってください。先生はいま冷静にものを考えれる状態ではないのです」
「ヒトに面倒を頼んで金貨5枚とはな。ヤクザより性質(タチ)が悪いぞあのジーサン」
「本当に、申し訳ない」
「いいよ。昔ながらの職人気質ってな、あんなもんだ。あんたも苦労するよな」
 皮袋の中におおよそ500枚ほどの金貨が詰まっているのを確認すると、俺は機嫌を直し、ついでに普通の買い物も済ませる。
 精霊の塩鉱石や吸血鬼の遺灰といった錬金素材はあまり手に入るものではない。貴重なので、店で見かけたら買うことにしている。それから、ホーカーのシチューを作るのに必要なラベンダーやニンニクも購入。
 店を出た頃には、報酬に受け取った金貨500と5枚はすっかり使い果たしてしまっていた。これも義理というやつか。金は天下の回りモノ、貯めるだけでは芸がない。
「さて、王宮へ向かいますか」
 すっかり重くなったバックパックを揺すり、俺たちはウィンドヘルムの王宮へ向かった。







 反乱軍の行動を統括する石拳のガルマルが待つ作戦室へ近づくと、なにやら彼と首長ウルフリックの話し声が聞こえてきた。
『…おそらく彼らはムートを要求するでしょうな』
『トリグの女を玉座に座らせるだと?ガキどもめ正気か…そんなことを見過ごせば、あの女はスカイリムを銀の皿に乗せてエルフどもに献上するだろうよ』
『やはり尖った王冠が必要です。首長制やムートよりも古い、由緒正しい権威が』
 彼らの話し振りからすると、いまのスカイリムの状況はストームクロークにとって有利に働いていないらしい。
「なあ相棒、ムートとはなんだ?」
「さぁてねえ。KKUMM(キャッキャウフフムートムート)?」
「それは絶対に違うと思う」
 そんな会話をしつつ、俺とボルガクは部屋に入った。






「おお、戻ったかアルゴニアン。首尾はどうだった?」
「きっちりとシメてやりましたとも。てっきりウィスプ・マザーでも連れてると思ってたんですが、いやはや拍子抜けですな」
「ほほう、言うではないか。ウルフリックよ、おまえの見立ても満更ではないようだぞ?賭けは儂の負けのようだ」
「まさか俺の命をネタに張ってたんじゃないよな?」
 実際はそれほど気にしたわけじゃなかったが、俺は不機嫌そうな表情を作ってガルマルを咎める。
 ノルドにとって、アルゴニアンの命など何ほどのものでもないってことか…暗にそう批難する俺の意図を知ってか知らずか、ガルマルは豪快な笑い声をあげた。
「ガッハッハッ、そう気を悪くするな。なにも殺すつもりで無茶を押しつけたつもりはない、儂らが賭けたのは、そう…困難を前にしたおぬしが、逃げずに立ち向かえるかどうか、だ。この儀式はストームクロークのために、命を張れるかどうかを判断するためのものだ。決しておぬしの死を期待したわけではない」
「なら、いいがね…それで、試験は合格かい?」
「ああ。あとは誓いを立てさえすれば、おぬしは立派なストームクロークの一員だ」
 誓い、か…一度ストームクロークへの忠節を宣誓すれば、もう後戻りはできない。俺は帝国軍に弓を引くことになるわけだ。

 血と魂をウルフリック・ストームクロークに奉げる
 ウィンドヘルムの首長とスカイリムの真の上級王に
 タロスを我が証人とし、たとえ肉体が滅びようとも
 同胞と共に、主君に忠誠を奉げる事を誓う
 真のスカイリムの民、ストームクロークを称えよ!

 誓いの言葉を唱え、俺はウルフリックの前に膝をつく。
 いままでは自由に身動きを取るため、どっちつかずの態度でいたが、これからはそれも許されなくなるわけだ。ま、そうならそうで、それなりの行動を取るまでだ。
 これから、どう世の中が動いていくか…





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。ようやくストームクローク入りしました。内戦クエは面倒ばっかりで得が何一つないと方々で聞いているので、いままで躊躇してたんですが、あんまりおあずけを続けてもしょうがないので、とりあえず少し進行させました。
 基本的に俺はSkyrimに関してはほぼ何も事前に情報を仕入れてないので、話の顛末とか細部に関してはまったく知識がありません。Falloutは3もNVもコンシューマでしゃぶり尽くすようにプレイしたあとでPCでも遊ぶという念の入れようなんですが、どうもTESシリーズはそこまでやれる気にならなくて…やっぱり俺は火薬の匂いが好きなんだろうね。
 今回から刀剣を使っての戦闘にすこし工夫を入れてます。まずは鞘を使っての二刀流、これは実際に鞘を武器として製作・MODで導入しています。ついでに、ベースとなったWeapons of the Third Eraの刀類はそのまま使うと装備時に握る手が鍔にめり込んでしまうので、位置を少し修正。まだ出してないネタも残っているので、今後に乞うご期待です。
 本当はダガーの装備位置もなんとかしたいんですが、Skeletonの座標をいじっても、いまいち上手い具合に反映されないんだよねぇ。あまり極端に数値を変えても、控えめな部分までしか反映されないんですよ。本当は腰の外側に持っていきたいのに、数値を変えても実際にゲーム画面で確認すると太腿にめり込んだまま、それ以上離すことができないんですよね。どうしたもんだろ。
 Oblivionのほうのアルゴニアンが一刀使いだったもんで、こっちはダガー扱いに改造した脇差を上手いこと活躍させたいんですが、さすがに鞘が身体を貫通してると画面写真での見栄えが悪くてかなわない。
 そろそろ防具もなにか、専用のものを用意したいなぁ。さすがに、吸血鬼用のローブのままではねぇ。






 あと、TESVEditのUTF-8対応exeを使うと日本語espを作るのがラクでいいですね。
 アーケイドの得物である、泉州時次郎拵はデフォルトのフォントだと州と拵の字が対応してませんでしたが。拵は非対応だろうと思ってたけど、州は意外だったなぁ。













2016/10/29 (Sat)00:34





 俺の名はアーケイド、アルドニアンの商人だ。
 ウィンターホールド大学に入学した俺は彼らの発掘活動に携わるべく、古代ノルドの遺跡サールザルへと向かった。そこで見かけたのはゴールドール一族のアンデッドと謎の魔力防衛装置、そしてサイジックの一員を名乗る魔術師の亡霊だった。
 どうやら世界に危機が迫っているらしい…まあ、いつものことだ。
 いつまで経っても、どこもかしこも危機だらけで首が回らないこの状況。めげずぼやかず前向きに、地道にやっていこうじゃありませんか。







 トルフディルに大学へ報告に戻るよう命じられた俺は、相棒のボルガクを連れてウィンターホールドへと帰還した。






「かくかくしかじか、猪鹿蝶、いろんなことがあったんでございますよ」
 と、サールザルの経過をアークメイジのサボス・アレンに伝える。
 どうやら彼は遺跡の発掘活動についてほとんど関知していないらしく、その物言いはどことなく他人行儀だ。
「私がそのオーブとやらを確認するあいだ、君が調査を進めてくれると助かる。だが、あまり型破りなことをするなよ?これ以上、大学の評判を落としたくはない」
「苦労性だねえ。やんちゃな生徒が多いから…ところで、サイジック会について何か知ってます?」
「個人的に知っていることは何もない。前アークメイジの助言訳がサイジックの者だったらしいが、アルテウム島に呼び戻され、島ごと消え失せてからはそれっきりだ。まだ、私が見習い魔術師だった頃の話だ」
「ふーん」
「とりあえず、アルケイナエウム…書庫のウラッグに話を聞いてみてくれ。彼の蔵書はただの飾りではない、その内容のすべてを頭に入れている彼なら、過去の書物から関連情報を手繰り寄せることができるかもしれない」






 サボス・アレンに勧められるまま、俺たちは大学の蔵書庫へと向かう。
 管理人のオーク、ウラッグ・グロ・シューブと対面、彼が開口一番に一言。
「妖精族はまだ入荷しておらんぞ」
「残念…いや、そうじゃなくてね。今日は遺跡発掘の件できたのよ。アークメイジの助言で…なにか役に立ちそうな本はある?」
「あった」
「あった?」
「かつて、な。残念ながら、私も内容の仔細は覚えていない…かつて大学の生徒だった、オーソーンという魔術師が、脱退する際に何冊かの本を大学から持ち出した。それがあれば、幾つか判明することがあると思う」
「大学を脱退?なんで」
「正確には、脱退したのは彼だけではない。一つのグループが、そう、大学側との意見の相違を理由に袂を分かった。オーソーンは彼らに加わるため、その手土産として価値ある本の幾つかを内密に持ち出したのだ」
「グループの脱退、ねえ…専門は、召喚術かい?」
「みなまで言うなよ」
「オーケイ。ともかく、そのなんとかいう魔術師が盗んだ本を取り返してくればいいんだな」
 これから自分が取り組むべき事項を確認するとともに、俺は私用も済ませることにする。
「そうそう、それと以前頼まれてた本、持って来たよ。シャリドールの本」
「おお、助かる。すぐにでも翻訳をはじめよう。もしその気があるなら、他にも仕事を頼まれてくれないか?『古き習わし』という本の写しなのだが」
「引き受けた。ところで、なんか面白い本ない?」
「『妖精族』以外でか?そうだな…『黒い矢』なんかどうだ?」
「う~ん…たしかに俺好みの本だけど、もう何冊か持ってるんだよねぇ。っと、これなに?『木こりの妻』?はじめて見る本だな」
「ほう、そうかね?たいして価値のある本ではないが…買っていくかね?」
「頼むよ。あと、この、『アルゴニアンの侍女』の二巻も」
 何冊か本を購入し、俺はウラッグに別れを告げる。
 ホクホク顔でザックに本を詰め込む俺を、ボルガクが咎めるような目で見つめていた。
「おまえ~…また余計な仕事を引き請け負ってからに」
「いやいやいや、俺はホラ、読書家で蔵書家だからさ。こう、書物を広く後世に残すとか、そういう偉大立派な目的は無視できんわけですよ」
「どうだか。ところでさっき、脱退した魔術師について、召喚術の使い手かと聞いたのはなぜだ?」
「わざわざ魔術大学を離れる理由はそんなに多くない。政治的理由を抜きにすればね…だいたい組織を離反するのは、召喚術師、わかりやすく言えば、死霊術師と相場が決まってるのさ。かつてのメイジギルドと違って、スカイリムの魔術大学は死霊術を厳密に禁止はしていなかったと思うけど、表立って支持はしていなかったはずさ。そんなことしたら、それこそムキムキのノルドのマッチョマンたちが黙っちゃいないだろうからね」
「死霊術か…ありそうな話だな」
 そんなやり取りをしながら、アルケイナエウムを出ようとする俺たちを待ち受ける者がいた。






「サールザルでちょっとしたものを発見したそうだな」
 魔術師のローブではなく、サルモールの装束に身を包んだアルトマー。アンカノという、アルドメリから派遣された魔術師だ。たしか、大学の連中が口を揃えて「気に入らん高慢ちきのクソエルフ」と言っていた。いや、そこまで言ってなかったかもしれないが。
「すでに噂がここまで届いているぞ。いったい、あそこで何を見た?」
「ご自分で現場に足を運んで確認なさってはいかがです?もっとも、温室育ちのエルフ様に激しい雪の中を駆け回るのはちと荷が重いかもしれませんがね」
「口に気をつけろよ爬虫類。まあいい、そのうちトルフディルから話を聞くことにするさ」
「べつに、たいしたものじゃないと思いますよ。他の連中がなんと言ってるのかは知りませんが、大山鳴動して鼠一匹ってやつじゃないですか」
「で、おまえは鼠捕りに奔走しているというわけか?」
「そんなところです。どこも人使いが荒いものでねえ」
「…いつまでそう、とぼけていられるかな」
 両者ともに剣呑な雰囲気のまま分かれる。
 サルモールもなあ…俺個人としては敵対する意思はないし、連中がスカイリムをどうしようと知ったことではないのだが、いちおう俺はストームクローク寄りの態度を取っているし、以前サルモールの使者に襲撃を受けたことから、あまり印象は良くない。
 もっともアンカノ一人が、手練の魔術師が揃っている大学内部で問題を起こせるとも思わないが…







 ウィンターホールド大学を出たあと、俺はセプティマス・シグナスにムザークの塔で書き換えた辞典を渡すべく彼の隠れ家へと向かった。とりあえず、星霜の書を手に入れたことは内密にしておこう。






「たっ、助けてーーーっ!」
「なにをやっているんだ、おまえは…」
 セプティマス・シグナスの隠れ家はスカイリム北端の流氷地帯にあり、夜は明かりもなく視界が悪い。流氷から足を踏み外した俺は、ドボンと海水に浸かってしまった。
 いろいろと難儀をしながらも、どうにか俺たちはいかれた爺さんのもとへ辿りついた。






 辞典を受け取ったセプティマスが次に頼んできたのは、血液の採取だった。
「なんというか、えらくおっかないフォルムだなあ…」
 渡された採血器をまじまじと見つめ、俺はぼんやりとつぶやく。
 セプティマスが説明をはじめる。
「この最後の洞窟を開くことはドゥーマーにしかできない。だが、それはもはや不可能だ…みな死に絶えてしまったのだからな。もっとも、どうにかして誤魔化す手も、なくはない。エルフ族の血を使うのだ。アルトマー、ボズマー、ダンマー、ファルマー、オーシマー…」
「それ早く言ってくれれば、ブラックリーチへ行ったときに幾らでもファルメルの血が手に入ったのに」
「単一の血ではだめだ。すべての種族の血液を混合したものでなければ」
「めんどくせぇな!ファルメルの血五人分とかじゃ駄目なの?」
「駄目だ」
「そっかぁ…」
 残念そうにつぶやき、俺は採血器を手に少々途方に暮れる。
 オーシマーというのはオークのことだ。彼らもあれで、エルフ族の親類である。いや待て、オーク…
 俺は相棒の女戦士を見つめ、ぽつりとつぶやいた。
「あのーボルガクさん」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ?」
「そのうち山賊にでも出くわすだろう。そいつから採れ」
「わかりました」
 残念そうに首を振り、俺はセプティマスの隠れ家から出ようとする。
 出口へ向かおうとしたとき…






 ゴゴゴゴゴ…
 朝日を浴びて、無数の目が生えたタコのような物体が、どす黒い影を撒き散らしながら蠢いている。
 肝っ玉の据わったボルガクも、さすがにその光景には驚いたようで。
「な、なんだ、あれは…」
「ぼぼぼボルガクさんん、なんか名伏し難きものがおるんですが…」
 彼女以上に驚いているのが俺である。
 近づきたくはない、近づきたくはないが、この隠れ家に出口は一つしかない。
 身動きとれず躊躇する俺に、頭に直接響くような声が聞こえてきた。
『近くに来い。面前に』
「ししし喋ったあぁぁぁぁ!俺は面前手役派ですうゥゥゥゥ!」
『誰が麻雀の話をしておるか。早く来いというのだ』
「あははははい。あの~…どちらさんで?」
『我が名はハルメアス・モラ。まだ見ぬものの保護者。未知なるものを知る存在』
「はいデイドラ・プリンス一丁いただきましたー!」
『なに?』
「イーエ、なんでも」
 ハルメアス・モラ。デイドラ大公の一柱、知識を司るものである。
 予想して然るべきだった…と、デイドラ絡みのトラブルで何度そう思っただろうか。セプティマスが正気を失ったのは星霜の書の影響だろうが、そこにデイドラが絡んでいるというのは大いに予測できたことだ。たぶん。いや、ちょっと無理かな…
 ともかく、これまでちょっとしたことでデイドラ・プリンスと関わってきた俺、正直「またこいつらかよ!」という感情が拭えない。
『お前のことはずっと観察していた。なかなか興味深かったぞ』
「それ、デイドラの常套句ですか?」
『なんだと?』
「イーエ、なんでも」
 かつて誰かに言われたような台詞、だが、その仔細をわざわざ説明する必要もあるまい。
 デイドラ・プリンス同士は決して仲が良いわけではない。過去に何者に与したなどと言って、不興を買ってもつまらんのである。もっとも、俺が過去にどのデイドラ・プリンスに関わったなど、実際のところ、知らぬはずもないだろうが…
 そうであっても、わざわざ藪の蛇を突く必要はない。
『セプティマスは間もなく用済みとなる。おまえが黄泉の鍵箱を開きさえすれば…やつはよく尽くしてくれたが、もはや利用価値はない。やつの代わりに私に仕え、我が従者となるがよい。ドラゴンボーンよ』
「あ、はい…」
『期待しておるぞ』
 言うだけ言って、ハルメアス・モラは何処かへ消え去っていった。そのままどこへでも行っちまえってんだ。いい迷惑だぜこっちは。
 はーっと大きくため息をつく俺を、ボルガクが肘で突いた。
「おまえ、なんであんな提案を了承したんだ」
「仕方ないじゃんよ!何度も言うけど、俺、デイドラ公に楯突くほどタフガイじゃあないのよ?ドラゴンボーン様だなんだと偉ぶったところで、所詮は定命の存在なんだからさァ…」
「やつはセプティマスをお払い箱にしたいようだな」
「ジジイをいじめるような真似は、俺もしたかないけどさ。けど、どっちかが死ななきゃならない、てぇ状況になったら、そりゃあ、相手に死んでもらいますよ」
 とりあえずはスカイリムに存在するエルフ五種の血液を入手しなければならない。最低限の役目を果たせなければ、セプティマスの命と天秤にかけるまでもなく俺は始末されるだろう。デイドラに情けを期待してはいけない。







 その後、俺はそれほど遠くない場所にあるアズラの祠へと向かった。
 またデイドラ関係かよ!という気もするが、今回は自分から関わる形になる。たしか、何かのきっかけで用が出来たような気がするのだが…なんで、アズラの祠にクエストマーカーがぶっ刺さっているのか、今となっては知る由もない。
 祠が存在する山頂へ向かう途中、フロスト・トロールと戦闘になる。






『リズ・スレン!』
 氷結のシャウトを発し氷漬けになったフロスト・トロールを、雷撃が襲う!
「エッ、雷?」
 それはサールザルでトルフディルが使ったものとよく似ていた、とはいえ彼はいま同行していないし、仲間に魔法使いはいない。なんだ?
 逡巡しながらも、前倒しに寄ってきたフロスト・トロールにトドメの一撃を加える。
 凍りつき、電撃で痺れ硬直したフロスト・トロールの身体が急斜面をゴロゴロと転がって落ちていく。その様子を視界の端に捉えながらも、俺はボルガクが見覚えのない装備を手にしていることに気がついた。
「ボルガクさん、どうしたの、それ」
「サールザルで拾ったんだ」
 彼女が普段盾を持っている左手には、魔法の杖が握られていた。どういうことだろう?俺は渡した記憶はないが…
「これは…ああ、ジリク・ゴールドールソンの持ち物か。意外と物持ちがいいねえボルガクさん」
「やはり盾のほうがいいか?」
「いや、これ使ってていいんじゃないかな。面白いし」






「バイアーラ、バイアズーラ、バイアズーラ」
「なんですか、貴方…いえ、ちょっとお待ちください。その姿、見覚えがあります」
 その後アズラの祭壇にて、信徒であるアラネア・エアニスと接触する。
「どこかで会ったかな」
「いいえ。しかしアズラ様は貴方がここへ来ることを予見していました。旅人よ、貴方は好奇心ではなく運命の力でここへ導かれたのです。アズラ様に授けられた予知の力で、私は貴方がこの階段を登る姿を夢にみたことがあるのですよ。そう。貴方が生まれるよりも前に」
「そんな年寄りには見えないぜ」
「お戯れを。エルフの長命はご存知でしょうに…」
「それで、アズラ様は俺に何をお望みだい?」
「ウィンターホールドの付術師を尋ねなさい。もっとも明るい星を、闇夜のような漆黒に変えることができる者を…彼の者には、そう言えば伝わります」
 アズラ、宵と暁の女神にしてダンマーの守護者でもある。
 定命の者にとって有益な助言をすることが多く、デイドラ公の中では忌避されることが少ない存在である。もっともデイドラの行動を人間的な善意だの悪意だので量れるはずもないが。

 ウィンターホールドへと戻った俺は大学を探そうかと思ったが、ひとまず休息を取るため宿屋に立ち寄り、一杯ひっかけるついでに店主に付術師のことを訊ねると、どうもかつて大学の付術師だった男が宿に下宿しているらしいことを聞き、彼に会いに行くことにする。






 ひょっとしたら盗賊ギルドのトラブル絡みで知り合ったエンシルかとも思ったが、出会ったのはネラカーという別の魔術師だった。
 アズラについて話すと、彼は警戒した様子で探りを入れてくる。
「誰に頼まれた?大学か、それとも首長か。いずれにせよ、もう俺には関わりのない話だと説明したはずだ」
「俺は誰の手下でもないよ。まあ、個人的な学術研究とでも思ってくれ」
「それを信用しろと?」
「もちろん、タダで情報提供してくれとは言わない。金貨1200枚でどうだ?」
「金で魂を売れと?魂を売る…この言葉の皮肉、おまえにわかるかな」
 しばらく悩みながらも、けっきょくネラカーは俺が差し出した金貨の袋を受け取り、話をはじめた。
「魂石を知っているか?いや、おまえも大学の魔術師だ、知らんはずはあるまい。その腰の剣はエンチャントが付与されているな。その剣を作るのに、また、徐々に失われる魔法の力を取り戻すため、無辜なる魂を封じた石を砕いたことがあるんじゃないのか?」
「…そうだとして?」
「話の要点は…魂ではない。石のほうだ。魂の扱いを巡る議論で見過ごされがちだが、魂石もまた貴重な存在に違いはない。しかし魂石は付術に使うと、砕けてしまう。破片となった魂石はその特性を失い、ただの河原の石ころ同然の無価値なものになる」
「例外はアズラの星…砕けず、何度でも魂を取り込むことができるアーティファクト」
「その通りだ。我々は…アズラの星をその手にしていた。メイリン・ヴァレンの研究チームのもとで、その性質を解明するために」
「で、貴重なアーティファクトを我が物にするために殺し合いでも起きたか」
「そんな単純な話なら、どれだけ良かったことかな」
 そう言い、ネラカーは自嘲的な笑みを浮かべた。どうやら複雑な事情がありそうだ。
 俺は無言のまま彼に先を促す。どこか遠くを見る目つきで、ネラカーは話を続けた。
「アズラの星には欠点があった。知性の低い、白き魂しか取り入れることができなかったのだ。知っての通り、人間の魂は黒い。黒魂石のことは知っているだろう。その特質をアズラの星は持っていなかった。メイリンは…黒い魂を取り入れることができる、完璧な星の完成を目指していた」
「なぜ?」
「それを知っていれば、もっと早くに研究が中止され、あのような惨劇が起きることもなかっただろう。メイリンは、彼女は、病に侵されていた。もう先は長くなかった。彼女は…アズラの星に自らの魂を封じることで、永遠の存在になろうとしたのだ」
「デイドラみたいなことを考える女だな。業深きは人間の魂か…」
「彼女の精神は、研究が進むにつれて狂気に蝕まれていった。デイドラの秘法の真理を解明しようなどと、定命の者にはおこがましい話だったのだろう。やがて彼女は部下の命を犠牲に、その魂を実験に使い…イリナルタ湖の遺跡に追放された」
 話を終え、ネラカーはジョッキの中で波打つワインをじっと見つめたまま黙りこくる。
 彼は当時の研究チームのうち、正気を保ったまま生き残った唯一の存在だった。
 手がかりは…メイリンとその忠実な部下が追放された、イリナルタの深遠にある。それだけ聞ければ充分だ。
 俺たちが立ち去ろうとしたとき、ネラカーが言った。
「いいか、デイドラには関わるな。やつらは悪魔そのものだ…定命の者を、たんなるチェスの駒程度にしか考えていない。いままでにどれほどの恩恵を受けていようと、そんなことは忘れろ。いいか、誰の命令で動いているかは知らんが…アズラの星を持ち帰ろうなどと考えるな。特に、アズラにはな」
「覚えておくよ」
 イエス、とは、俺は言わなかった。そのことはネラカーにもわかったはずだが、彼自身もそのことは咎めなかった。
 もしデイドラ公を相手に取り引きしているなら…こちらに選択肢がないことなど、彼にもよくわかっているのだろう。







 旅の道中、またしてもドラゴンの襲撃を受ける。ていうか、ドラゴン多すぎるだろ。
 はいはいトカゲトカゲ、でかいトカゲですよー、てなもんで半ばルーティンワーク気味の対処に向かおうとしたのだが、どうにも今回出会ったやつは滅法強い。
 ボルガクともども危うく屠られそうになりながら、どうにか倒して名を確認する。






「伝説のドラゴン…だって?でも魂は一個きりなんだな」
 今回の戦いで、ボルガクが使っていたジリク・ゴールドールソンの杖がさっそく魔力切れを起こしてしまった。魂石を使って補充してもいいのだが…
「やっぱり、ボルガクさんには盾が似合うよ。俺が丁寧に付術を施した逸品でもあるしね…せっかくだけど、その杖は捨てっちまおう」
 こうして、ジリク・ゴールドールソンの遺品は雪中にうち捨てられた。





【 →To Be Continue? 】








 どうも、グレアムです。いやー、NPCって自発的にアイテムを拾うんですかね。少なくとも、俺が杖を渡した記憶はないんですが…いや、なんかの手違いで渡したかな。でも、そもそもゴールドールソンの杖を拾った記憶がないんですよね。値段のわりに重いので、杖は普段、拾わないようにしているし。
 しかしハルメアス・モラ、アズラと、また急にデイドラづいてきました。オブリビオンでは自発的に関わらないと縁がなかったんですけどね。レベル制限もあったし。

 そういえばリマスター版が解禁されましたね。すでにLegendary Editionを購入していた俺は無料でプレゼントされたんですが、いまのところ手をつける気はないです。ぶっちゃけ通常版で特に不便は感じてないっていうのと、現状のPCスペックではあまり恩恵はなさそうだな…というところで。
 バグがフィックスされてるならまだ考える余地はあるんですが、おそらくグラフィック関連に手を入れただけだろうし。クエスト関連、フラグ関連の初歩的なミスが本当に多すぎるのは、コンソール主導ならなおさら何とかしなきゃいけないと思うんですが…












2016/10/27 (Thu)01:24





 俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
 今回は真面目に学校へ行くぜ…もとい、魔術大学の活動に参加すべく、古代ノルドの遺跡サールザルへと向かうぜ。本来なら盗賊ギルドのヤマを先に片づけるべきなんだけど、そっちは、まあ、ちょいと置いておこうじゃないか。カーリアには悪いけど。
 なにせ話が何も進んでないもんで、そろそろ冒頭に書くべきことも枯渇してきたのよ。というか、俺なんでスカイリムに居るんだっけ?たしか帝国軍とストームクロークの戦争に巻き込まれて…ドラゴンの危機があって…そろそろ放っておくとマズイよなあ。
 オークの女戦士を伴ってのトカゲ旅、まだまだのんびり続きます。







 サールザルの前には、俺を待っていた…のかどうかは知らないが、トルフディルとブレリナ・マリオンの二人の魔術師が寒空の下で立ち話をしていた。






「遅かったですね」
「あ、よく言われます」
「よく言われたらいかんだろう」
「スイマセン…」
 控えめな叱咤を受け、俺は頭を平に下げる。いや、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 なんせヘルゲンに出現したドラゴンの報せをホワイトランへ持っていくのに四ヶ月も要した男である。べつに遊び歩いていたわけではないのだが、寄り道癖はそろそろ何とかせにゃいかんと自分でも思う。
 今回の発掘活動における魔術師たちの纏め役らしい老トルフディルに続いて、俺たちはサールザル内部へと入った。

 どうやら大学側に確たる発掘の理由はないらしく、なんとか学術的、魔術的価値のある遺物が発見できれば良い、といったものであるらしい。
 とりあえず俺は発掘品の目録作成の手伝いをすべく、あちこち見て回っていたのだが。






『待て、魔術師よ。たぶん魔術師だと思うが、よく聞くんだ…』
「で、で、で、出たあぁぁぁーーーっ!!」
 たまたま入った部屋で幽霊と遭遇。エンカウント。
 俺はこの、幽霊とか亡霊といった類のものがあまり得意ではない。なにせ個体によって特質が全然違ったりするので、その正体を見抜くのに大変難儀するのだ。
 ていうか、死人は大人しく寝ててくださいよ。死んだんだから。死後も現世でウダウダしてるとか非常識にもほどがある。






『この避けられぬ事態は貴様が引き起こしたこと。最悪の事態を避けるため、貴様自身が危険に対処せねばならぬ』
「死ねえぇウダラアーッ!」
『話を聞け』
 遮二無二霊体に斬りかかるも、エンチャントを付与した特製のカタナが通用しない。なんてこった、こいつ、ただのゴーストじゃないぞ!これだからイヤなんだよ実体のない連中は!
「お引取りください!帰ってください!」
『ああ、もうこの世界ダメかもしれん。とにかく、サイジック会が見ているからな』
 そう言って、霊体は姿を消した。
 同行していたトルフディルが眉をひそめて俺に尋ねる。
「いったい、何が起こったのだ?」
「見てなかったのかよジーサン、ボケた?老眼?」
「いまの無礼は水に流すから、何が起きたのか話しなさい」
「いや、その、恐い顔で見ないでくださいよって。なんかあの、魔術師みたいな格好した亡霊がですね、この世の危機が迫ってるとかって、類稀なる才能を持つスーパーヒーローたる俺が最後の希望だから、美しくカッコ良く世界を救ってくれってそう言ったんですよ」
「時間の無駄だったか…」
「いやあの、すいません。余計な脚色を抜きにすればでも、そんなに間違ったことは言ってないですよ!?あと、サイジック会がどうのこうのって」
「サイジック会?その名は久しく耳にしていなかったが」
「なんですね、サイジック会てぇのは」
「知らんのか?フム…無知が適当に出せる名ではないからな。なるほど、君がデタラメを言っているわけではないのかもしれん」
 トルフディル曰く、サイジック会というのは魔術師たちで構成された秘密結社の一団らしい。会員のほとんどはアルトマーで構成されており、サマーセット群島の一つであるアルテウム島を拠点に活動していたが、百年以上前に島ごと組織が忽然と消え失せてしまったらしい。
 謎は深まるばかりだと、トルフディルは思案に暮れた。
「そもそも、この遺跡はサイジックとは無縁のはずだ。古代ノルドの墓所だからな…迫り来る危機というのも気になる。とりあえずは、深部の探索を続け…」
 そこまで言いかけ、トルフディルは壁に立てかけられた棺の蓋が動いていることに気づく。
 棺から、古代ノルド人のアンデッド…ドラウグルが姿を現した!






「チェリィヤアアァァァ!」
 俺とボルガクにとっては慣れたる相手、出現と同時に斬りかかり、その動きを封殺する。
 ボルガクの持つドーンブレイカーの力でアンデッドどもは焼き払われ、青白い炎が周囲を覆う。身体に触れても熱さを感じない、不死者のみを焼く清浄なる炎だ。
 敵対者の死を確認したのち、ボルガクが俺に尋ねる。
「そういえば相棒、すこし前から見慣れない剣を持っているな」
 翡翠晶のような発光体が埋め込まれた、濡れた氷のような輝きを見せる刀身のカタナを見つめるボルガクに、俺が説明する。
「俺が一から鍛造した、特製のカタナだよ。氷結と魂縛のエンチャントが付与されている…その刀身は二尺四寸、反り六分。凍りつき眠るように魂を奪う、その銘を名付けて『泉州時次郎拵(せんしゅうときじろうこしらえ』。お控ぇなすって」
「銀製か?」
「デイドラ製です。薄く軽く磨いてあるから、重装甲相手の打倒力にはちぃと劣るんだけどね。まあ、暗殺用ですよ」
 実を言うとこのカタナ、内部的にはダガー扱い。攻撃力はデイドラ製ダガーと同じ、それを鍛冶スキルで鍛えたものの、本気の重装戦士相手に正面から挑むにはやや心許ない代物だ。
 が、背後からの突き…隠密16倍アタックが成功すれば、ドラウグル・デス・ロードですら一撃確殺である。






 その後もドラウグルたちとの戦いは続く。
 隠密の余地もなく正面からの戦いを強いられる状況、普段は魔法を使う俺も新造のカタナの威力を確かめるため、慣れない近接戦闘に積極参加するが…
「ボルガクさん、矢が俺に当たってるよ!それとジーサン、攻撃魔法が俺に当たってるよ!」
 屋内では、仲間の射線に立ってはいけない。






 ひととおり雑魚どもを片づけたあたりで、強力なドラウグル・スカージとの交戦に移る。






 ボルガクのドーンブレイカーがドラウグル・スカージの腐った肉体を焼き、トドメに俺のカタナが一閃、トドメを刺す!
 遠方から魔法で援護しつつその光景を見ていたトルフディル、感心したようにつぶやく。
「まさか、これほど腕が立つとは…」
「いちおう、場数は踏んでるんでね」






 カタナを鞘に納めると、俺は懐に手を突っ込み、「それ」を取り出しながら見栄を切った。
「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!」
「相棒おまえ、いつの間にそんなもの用意した…?」
 はい、これがやりたかっただけです。研磨された月長石をベースに製作しました。ビニールっぽい質感がリアルで自分でも気に入ってます。寸法とかはかなりデタラメですが。
 前田のクラッカーはともかく、続々と再生をはじめたドラウグルたちにトルフディルが興味深い視線を投げかける。
「私はいままで数々のノルドの遺跡を見てきたが、このようなものは見たことがない…」
「えーマジ?俺ら、しょっちゅう見てるよなあ?ボルガクさん」
 しかしこの爺さん、なんか怪しいな…そもそもこの遺跡の発掘は、誰の主導で行われているんだ?
 若干の懸念を抱きながら、俺とボルガクはトルフディルとともにサールザルの深部へと向かった。






「あれはいったいなんだ?」
 サールザル最深部にて、俺たちは奇妙なものを見かける。
 シールドのようなものに覆われた魔術的な物体、そして玉座に身を沈めるドラウグルが一体。あれこそはゴールドールの息子の一人ジリク・ゴールドールソン。
「ツェアアァーッ!」
 ドラウグルの急所は寝起きである。覚醒するまで隙だらけであることを知っている俺は、物を考えるより先に眼下のアンデッド・ロードへ斬りかかる!
 が、しかし…研ぎ澄まされた刃はジリクの皮膚で止まり、ダメージを与えることができない!
「え、ちょ…っ!?」
 驚く俺を振り払い、ジリクは火炎魔法をぶつけてくる。
「あち、あち、あちちっ!なんだよもう、こいつも無敵なのかよ!さっきの亡霊といい、チートどもが!」
「あの結界だ!あれは私が引き受ける、それまで時間稼ぎを!」
 慌てて飛び出しつつ、トルフディルが謎の魔力障壁へ向けて破壊魔法を繰り出す。
 時間稼ぎといったって、俺は近接戦闘は苦手なんだって!たいてい強敵は隠密弓で葬ってきたしなあ…などと思いつつ。当然ながら相手には魔法も効かない、効かない魔法は抑止にはならない。剣を使って動きを止めるしかない。
 ただでさえ分の悪い戦い、じりじりと追い詰められた矢先、トルフディルの攻撃を受け続けていた魔力障壁が消失する!
「いまだ!」






「悪ィが、兄弟のところへ行ってくんねぇかな…おまえの弟二人は先に地獄へ里帰りしてるからよ」
『キ…キサ…マ……!』
「おまえの弟殺したのな、俺だよ。特に隠密弓の奇襲一発で死んだシグディスには、よーく言って聞かせてやるんだぜ」
 致命打を受けたジリクの身体が炎に包まれ、納刀と同時に爆発四散する。
 焼け落ちた塵の山からゴールドールのアミュレットの欠片を回収すると、そのことをトルフディルに見られていないことを確認し、俺はぼそりとつぶやいた。
「三つ集まったけど…特に何もねぇな」
「なにか?」
「いや別に?」
 トルフディルに向き直り、俺は改めて巨大な球体…おそらくはジリクに無敵の加護を与えていたであろう、謎の構造物を見つめて言った。
「しかし、いったいなんだい、これは」
「皆目検討がつかんな。こんなものは見たことがない…悪いのだが、今回の件を大学に報告へ戻ってくれないかね?」

 俺は一度サルザールから離れ、ウィンターホールド大学へと戻ることになった。
 しかしこの、なんだね、スカイリムってのはどんだけ危機が重なってるのかね。ドラゴンと内戦だけじゃ足りないらしい、そういえば吸血鬼騒ぎもあったよなあ…などと考えつつ、俺の旅はまだまだ続く。





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 どうも、グレアムです。ほんのちょっとだけ話が進みました。たぶん。
 アーケイドの使う刀「泉州時次郎拵」はWeapons of the Third Eraで追加されるDaedric Katanaの改変です。Iron Katanaの鞘を追加、発光部分を赤から水色に変更(&発光の強さを十倍)し、TextureをDaedric系からSilver系に変更しています。本当は鍔をなくしたかったんですが、本ModのMeshは本体(刀身、柄、鍔)がすべて一体になっていてパーツ別に分かれていなかったので、そうなるとBlenderの手を借りる必要があり面倒なので手をつけませんでした。
 前田のクラッカーは本文中でも触れた通り、研磨された月長石の改変です。Textureを適当に改造しただけですが。落とすと重い音がします。
 泉州時次郎拵ともども、元ネタは「てなもんや三度笠」ですね。なぜか今更ハマってしまっていたり。しかしこれ、マスターが現存してないので、視聴手段がかなり限られてるんですよね。残念です。














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