主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。
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2016/02/10 (Wed)01:32
どうも、グレアムです。今回は撮影しながらも作中で使われることがなかった(今後も使う予定のない)写真を幾つか貼っていきたいと思います。別名「時間稼ぎ」。
これはトレーズの最初期バージョン。当初は規律に厳しくやや神経質な帝国軍人という設定で、種族もアルトマーではなくインペリアル(を想定)でした。もちろんアルドメリとの繋がりはありません。
なんで今みたいなキャラになったんだっけ…ともかく初期構想のままだと地味すぎて漏れなくプロローグ書いただけで飽きてお蔵入り案件だったと思うので、路線変更したのは正解だったと思います。
しかしなんつー薄幸そうというか、辛気臭い顔だな…
トレーズ初期版その2。現在のものとは顔つきがちょっと変わってます。この顔データで撮影した写真は本編で使った…かなあ?並べて比べるとわりと一目瞭然なんですが、そうでもなければあまり代わり映えはしない程度です。
全体的に顔パーツが上に寄ってて、頬もシュッとしてるので現行版より若干大人っぽいです。
もともとガキっぽいキャラにする予定はなかったので(ゴツい鎧の中身は幼女ってのもありがちすぎて食傷だし…)、このままでもいいかと思ってたんですが、より幼い雰囲気の残る改修版(現行版)のほうが単純に出来が良かったので、こちらはあえなく没に。
初期に着用していたプライベート用の服。
前が開いてるミニのローブとか超エロい!ということで当初は気に入ってたんですが、いざ実際に着用してみると思ってたよりエロくなかったっていうのと、やはりSkyrimの世界で着ているといろいろ違和感がすごくて世界観が台無しになる(もう片方のプライベート服も大概ですが…)ので、たぶんもう着用する機会はないと思います。
残酷フィニッシュあっと山賊。
暗い中で赤く輝く鎧が印象的で気に入ってたんですが、単純に話に組み込む隙がなくて没。
たぶんミストウォッチで撮影したんだと思いますが。
ストームクロークの野営地を発見、偵察…という体裁の写真。
基本的に野営地の襲撃は不死属性を持つ指揮官の存在のせいでグダグダになるので、なんとか騒ぎを起こせないかと思ってたんですが、上手く話を纏める方法が思いつかずに断念した記憶が。
実際のゲームではこのあと普通に買い物して帰りました。まだ内部的には正式に帝国軍入りしてないので。
巨人をアカヴィリカタナ(今作ではたんにブレイズ・ソードと言うんだっけ?)で斬り伏せるトレーズ。これはボラーの忠誠剣というユニーク武器で、放浪中にたまたま入手したもの。
所持しているとブレイズ接触後になんらかのイベントがあるかと思って捨てずにいるのだが、どうもそういう凝った演出はなさそう…?
そもそも劇中で例の両手剣以外は極力使わないようにするっていうのと、巨人はもうちょっと強敵として印象づけるような演出が欲しいので、没に。
風景写真いろいろ。
そもそもネタにならないこのテの写真は没りやすい。
キャンプ写真、作中で使ったやつの鎧着用バージョン。こっちでも良かったかもしれない。
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2016/02/08 (Mon)06:36
「来たか爬虫類。カーリアはまだ中にいる、表に馬を繋いだままだった…すでに始末したがな。逃走の足は潰した、あとはあの女を殺すだけだ」
前ギルドマスターのガルスを殺し逃亡した女盗賊カーリアの逃亡先である雪帷の洞窟前で、現盗賊ギルドマスターのメルセル・フレイが俺の到着を待ち侘びていた。
組織のトップと共闘するという栄誉に預かりながら、俺はなんとなく軽いノリで挨拶をする。
「いやー気合入ってるねぇ旦那」
「お前のこれまでの業績に免じて、いまの軽口は聞き流してやる。それと、この先は盗賊の仕事だ。おそらくカーリアは罠を仕掛けて用心しているだろう、戦士の出る幕はない。それより、カーリアが逃亡したときのことを考えて見張りに立っててくれ」
と、これは俺の相棒たる女戦士ボルガクへの指示である。
さらにメルセルは言葉を続けた。
「お前の雇い主はアーケイドで、アーケイドの雇い主は俺だ。依存はないよな?」
「オークの戦士に『主人の主人』なぞという概念はない。主人は一人だけだ、舐めるなよ盗賊」
「ほう…?で、アーケイドの指示は?」
「表で待っててくれないかな、ボルガクさん?オッサンの言う通り、この先は罠がワンサと仕掛けられてる可能性が高いからね」
俺が盗賊ギルド入りしたのは純粋に商売のためだ、余計な諍いを起こすつもりはない。組織の長と関係をこじらせて立場を悪くしたくはない。
ただ…今回の件に、懸念がないわけじゃない。
メルセルが古代ノルドの遺跡の扉をこじ開けている最中、俺はボルガクにこっそり耳打ちをした。
「もしオッサンが一人で出てくるようなら、始末していい」
「わかった。そうならないことを祈ろう」
言葉の意図を察したのか、さして驚いたふうもなくボルガクは頷く。
ふつう、こういう心配は杞憂に終わるものだが、はてさてどうなることやら。
カーリアが逃げ込んだ古代ノルドの墓所…雪帷の聖域への扉が開いたことを確認し、俺はメルセルとともに内部へと侵入した。
俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
ふとしたきっかけで帝国軍に捕まり処刑されかけた俺はどうにか難を逃れ、あれこれトラブルに巻き込まれたりドラゴン倒してなんか伝説の存在っぽいのになったりしつつ、盗品売買のルートを確保するためリフテンの盗賊ギルドのもとで活動をしていた。
盗賊ギルドとそのパトロンであるブラックブライア家へ妨害工作を試みる謎の存在の調査を進めていた俺は、犯人がかつてギルドマスターを殺し逃走したカーリアという元ギルドメンバーであることを突き止める。
彼女の存在を察知したギルドマスターのメルセルは、過去の確執に終止符を打つべく自ら潜伏地点へ赴くことを決定。俺はメルセルとともに、カーリアが逃亡した雪帷の聖域へ向かった…
「イヤン、嗅ぎ慣れたるこのカビくさい死臭」
「ぶつくさ文句を言うな。三歩先、紐が張られてるぞ」
「おっとニアミス。危なかったあ」
どこも変わり映えのしない古代ノルドの墓所で、俺とメルセルはドラウグルと戦い罠を避けながら先へ進んでいく。
メルセルの予想通り道中は罠だらけで、その内容は古代ノルド由来のものからカーリアのオリジナルまで多岐にわたる。
「よく学んでおけよ。これほどのワザはそうそうお目にかかれるもんじゃない」
「偉大なる先達のナマの技術ってわけね」
感動というよりは、判定勝ちのためのジャブを受け続けてるようなみじめさを誤魔化しながら、俺は足音一つ立てず軽やかに(顔に似合わず)歩くメルセルの横顔を観察した。
罠を避け音も気配もなく移動する身のこなし、俺には仕組みすら理解できなかった特殊な鍵の数々をあっという間に開錠してしまう技術、ソードとダガーの連撃で圧倒する二刀流剣術、なるほどギルドマスナーと名乗るに恥ずかしくない実力を兼ね備えている。
また全身からみなぎる殺意を見る限り、彼がカーリアを殺したがっているのは確かなようだった。
やがて竜の爪を使う古代ノルド特有の奇妙な扉を専用鍵なしに開けてしまったメルセルにつづき聖域の最奥へと突入した俺の胸を一本の矢が貫く。
「ぐあっ……!」
俺が油断したのか?
そのつもりはなかったが、胸から突き出した矢が幻の類ではないことを悟ると、どうやら俺がしくじったらしかった。
しかもただの矢ではなかったらしく、俺の頭を痛みとは別の、ぼんやりした靄が包み込む。おそらく神経毒か何かの類だろう。もっとも俺は薬学や錬金術にあまり聡いほうではないので、詳しくはわからなかったが。
がくりと膝をつく俺の横を颯爽と通り過ぎ、メルセルが剣をかまえて前へ踊り出る。
「標的を見誤ったな。次の矢をつがえる時間なぞ与えん、それよりも早くその心臓に剣を突き立ててくれる…カーリア」
「あなたと直接やり合う気はないわ、メルセル。血の気の多さは相変わらずね」
いつからそこにいたのか、慎重に距離を取りながら一人の女が姿を現す。
頭部を覆うフードと、朦朧とする頭のせいで顔はよく見えないが…彼女がカーリアなのか?
「ギルドにダメージを与えるため…いや、俺の信用を落とすためか?ギルドに対してではなく、ブラックブライアの商売を妨害するとはな。考えたものだ、お前はいつもそうだったな。賢く、飲み込みが早かった。敵を潰すなら、まずその協力者から…ガルスの教えだったな」
「私が賢い、ですって?いいえ違うわメルセル、私がもっと…あなたが言うより少しでもさらに賢かったなら、ガルスは死なずに済んだはず。あと少しでも早く、あなたの本性を見抜けていれば」
「滅多なことを言うもんじゃないな、カーリア。ガルスには地位も富もあった、お前というオマケもつけてな。それで満足すべきだったのさ」
「だからといって、夜の女王と交わした誓約を違えた者を見過ごすなどガルスが許すはずがない。理解できたはずでしょう」
「だから、馬鹿だと言うのさ。そういうところがなあッ!」
ドギュッ!
鋭い剣幕とともにカーリアを斬りつけるメルセル、しかし彼女はすでにその場にはいなかった。
魔法か、あるいは薬でも盛ったか。自分か、あるいはメルセルにか…
『決着の機会は次に持ち越しましょう。ただ、今度会ったときは生かしておかない』
おそらくその場を立ち去ったと思われるカーリア、メルセルは踵を返しこちらへ向かってくる。その両手に剣を携えたまま。
「なァんかイヤな予感がするなあ…」
「歴史の再現というわけだ。古代の墓はガルスの血だけでは満足しないらしい…お前は非常に役に立ってくれた。ギルドの部下には、お前はカーリアと戦って立派に命を落としたと伝えてやろう」
「もう用済みだからか、それともナイショ話を聞かれたからかい?できれば生かしといて欲しいんだけどな…」
「悪いな。ここでトドメをためらうくらいなら、俺は今まで生きてこれなかった」
「あ、そう」
ドスッ!
メルセルの持つ剣が俺の身体を貫く。
矢の毒のせいか、俺はほとんど痛みを感じることなく地面に横たわった。自分の身体から血が溢れだしていくのがわかる。
俺、死ぬのか…ドラゴンボーンの英雄のこの俺が。なんかこう、ドヴァキンの力でなんとかならんのか、この状況。スーパーパワーで覚醒とか隠された才能が目覚めるとか特別なアイテムの力で復活とかなんかこう…なんかないかな。
ないらしいな。
そんなことを考えている途中で、俺の意識は途切れた。
目を覚ますと…俺は雪帷の洞窟前、カーリアが張っていたキャンプのシェラフの上で横たわっていた。
ボルガクが心配そうな声で尋ねてくる。
「大丈夫か、相棒?」
「え、なにこれ。終了?再開?肉うpキボンヌ?ジャガイモage?」
「…あまり大丈夫じゃないらしいな」
「毒が脳まで回ったかしら」
そう言ったのは、盗賊装束に身を包んだダンマーの女だった。
その声には聞き覚えがある。もっとも、思い出して親しみを感じる類のものではない。近隣住民の喧嘩に巻き込まれたときのようなうんざりした気持ちで俺は彼女を見つめた。
繰り返すが、彼女の声には聞き覚えがあった。それも、ついさっき。
もし俺の記憶が、俺の考えている以上にあやふやでなければ、それはカーリアの声だった。
「やあ、俺に矢をくれた張本人と対面できるとはね。最期を看取るつもりだったならご愁傷様」
「まったくね。もし私の矢で撃たれてなかったら、あなた、いまごろ失血死してたわよ。あの矢には相手を殺さず無力化するために、完成まで丸一年かけて作った特別製の麻痺毒が塗ってあったの。代謝を極端に下げる、いわば仮死薬に近いものよ」
「ああ。そして俺じゃなくメルセルを撃っていれば、そもそもこんなことにはならなかった」
「そうかもしれない。でも透明化の薬を飲んで暗闇から狙撃しようとした私を、あいつは気配を読んで察知した…目が合ったの。おそらく、そのまま撃っていたら避けられていた。だからアドリブを打ったのよ」
「打ったというか撃たれたほうの身にもなってくれい。まったく俺は盗品売りたかっただけなのに、なんでこーもドくそ面倒い内ゲバに巻き込まれにゃならんのだよ?」
聞くところによると、俺を抱えて出てきたカーリアとボルガクが出くわしたときに戦闘になりかけたらしいが、わざわざぐったりしている俺を墓に放り出さず(なにせ埋葬にはピッタリな場所だ)連れ出した点に疑問を持ったボルガクと和解して事なきを得たという。
また外でずっと見張っていたボルガクは、メルセルが出てくる姿は見かけなかったらしい。
いまだに聖域内部をうろついているとは考え難く、おそらくは秘密の通路を使ってボルガクに発見されることなく脱出したのだろう、というのはカーリアの弁。彼女たちにとってこの場所は馴染みがあり、そういう道の一つや二つ知っていてもおかしくはない、とのこと。
まだ若干ぼやけたままの頭を抱える俺に、カーリアが語りかける。
「あのときの私とメルセルの会話で、だいたいの事情は察したでしょう?私とガルス、そしてメルセルはナイチンゲールだった。もちろん、今もよ。ただ、メルセルはナイチンゲールとしての責務を破棄し、そのことを咎めたガルスを殺し、私を嵌めた。まだ詳しくは話せないけど…」
「ナイチンゲールねぇ。文献で名前は知ってたけどさ、実在してたとはな。しっかし、あのメルセルがなあ。ナイチンゲールってツラかね、あれが。チンチンがあるのにナイチンゲール…ププッ」
「真面目に聞いてちょうだい」
ナイチンゲールというのは、いわば盗賊ギルドにまつわる神話のようなものだ。
デイドラ公が一柱、夜の女王ノクターナルの使者として暗躍する特殊な盗賊のグループというのがおおまかな俗説である。その装備には、墓場鳥(ナイチンゲール)の意匠があしらわれているという。
ただしその存在を証明する情報源が極端に不足しているゆえ、多くの議論を呼びながらもほとんどの人間は取るに足らない民話や駄法螺の類だと認識している。
俺も、各地に残るわずかな情報はすべて厨二病的誇大妄想癖のある変人の悪戯だと思っていたが。あるいはカーリアがそういう類の人間だという可能性もあるが、ギルドマスターのメルセルの振る舞いを見るに、たんなるコスプレマニアとは考えにくい。
「メルセルは、私がガルスを殺してギルドを裏切ったという情報を広めた。それはもう、見事な手際でね。おまけに執拗に殺し屋を放って、私は今日まで逃げ続けてきた。二日と同じ場所で寝たことはないわ…この報いは受けてもらう」
「あーそう。大変だヌェー」
「…協力してくれないの?」
「しますよ。そりゃあ。ただ勘違いして欲しくないんだが、俺はアンタのためにやるんじゃない。さっきも言ったが、俺は商売のためにギルドと関わりを持ってるんだ。ところが俺を殺したと思い込んでるメルセルがトップにいたままじゃ、都合が悪い。だから真相を広める手伝いはするし、あの男は殺す。いいかい、もしメルセルが俺を殺そうとしなけりゃあ…たんに過去に仲間を裏切って私利私欲に走ったクソ野郎というだけなら、アンタにつく気はしなかったさ。俺は正義の味方ゴッコがしたくてギルドに入ったわけじゃないからな。メルセルがトップの椅子にふんぞり返ったままでも、まるで構いやしなかった」
「なんでもいいわ、こっち側についれくれるならね。過去の仕事であなたの優秀さはわかってる、ちょっと寄り道がすぎるきらいはあるけど」
「で、こういう状況でナンだけど報酬は期待できないよな?」
「追われる身から解放されるという以外に?そうね、メルセルの悪行を白日のもとに晒して処刑できれば…ナイチンゲールにまつわる話を抜きにしても、あの男がギルドで働いた不実は死に値するわ…ギルドでの幹部待遇は確約されたも同然よ」
「ディール(取引成立)だ」
こうして俺はただの盗賊から一転、逃亡者に手を貸す義賊となったわけだ。
おそらくメルセルが俺の生存を知ったら、カーリアと同じくギルドの裏切り者として首を狙いに来るだろう(じつはカーリアとグルだったとか、言い訳はいくらでもある)。
まあいい、復讐というのはたっぷり熟成させるほど味に深みが出る。
正義の味方ゴッコをするためじゃない、俺はカーリアにそう言ったが、メルセルには無法者にも守るべき戒律があることを教えてやらなければならないだろう。
「あれがウィンターホールド大学だよボルガクさん、すごい建物だねェ」
「いかにも魔法使いが好みそうなデザインだな。率直に言って、すごくどうでもいい」
「ボルガクさん魔法に興味ないもんね」
俺とボルガクはスカイリム唯一にして随一の魔法の学び舎たるウィンターホールド大学を目指して旅を続けていた。前ギルドマスターのガルスが遺した日記を解読するためである。
雪帷の聖域でカーリアはこれを発見していたが、内容は得体の知れない文字で書かれており、これを解読できそうな協力者が大学内部にいるらしい。
「さて、じゃあ行きましょうか。おりゃあああ」
「おい死ぬ気か相棒!?」
「着水できれば大丈夫だよ!」
「最近、死に芸が身についてきた気がするよ」
「あまり無茶をするな…」
ウィンターホールド大学へ向かう途中、イスグラモルの墓、まあいわゆるタロスの墓を発見。ヒャルティ・アーリービアードさんのお墓です。
「ここいらへんはなんかタロスの祠が多いし、サルモールは手付かずなのかね?ウィンドヘルムの近くでもあるし、それだけストームクロークの力が及んでるってことなのかな?」
それにしても変なポーズの像だ。…ガッツポーズ?
また、流氷の離れ小島に隠遁しているドゥーマー研究家のジーサマとも交流を深める。
セプティマス・シグナスと名乗るこのジーサマはちょっと頭がイカレかけているが、当人が言うにはあの星霜の書…エルダー・スクロールと関わったがゆえの影響だという。
どうやら星霜の書の手がかりを知っているらしく、俺に妙なアイテムを託したうえで「ブラックリーチまで行け」とのことであるが…
「エルダー・スクロールの中には心臓がある、神の心臓が…!」
「神の心臓、だって?」
「なにか心当たりがあるのか、相棒?」
問いかけてくるボルガクに「いや…」と返しながら、俺は思い当たりそうなものが一つだけあることを少し考えた。
星霜の書と関わりを持ちそうな事象で、心臓という名に紐付けられるものは…ヌミディウムか?
かつてドゥーマーが建造した機械仕掛けの神、そしてタロスによるタムリエル統一の原動力となった最終兵器。
しかしタロスの度を越した濫用による契約違反からヌミディウムはばらばらに破壊され、その構成物質は原動力となる心臓ともども各地に散らばってしまったという。
もちろんセプティマスの言う心臓がヌミディウムを指しているとは限らないわけだが、このジーサマがやたらドゥーマーの文化を引き合いに出すあたり(彼らは星霜の書を読む方法を体系化できていたらしい?)、どうにも偶然とは思えない。
なによりここはスカイリム、タロス…タイバーセプティムゆかりの地だ。
「ヌミディウムの心臓ねぇ…興味あるねー」
「もしあの爺様が本当にヌミディウムのことを言っていたとして、そんなものを手に入れてどうするつもりだ?」
「棚に飾る!」
「……おいおい」
「俺、盗賊。世界中のお宝は俺様のモノ。てことでどうよ?」
「ちょっとキャラクターが違ってるんじゃないのか?」
「人生は冒険だよおーボルガクさん。たまにはこう趣向を変えてだね、宝を求めて冒険ってのも」
「金にならないことには関わらないんじゃなかったのか?」
そんなことを言いながら、俺たちはジーサマの隠れ家をあとにする。
まあ、実際はどうか知らないけどね。星霜の書絡みの話、それも俺以外に関わってる人間がいないらしい、となれば競争相手を気にすることなく伝説にお近づきになれるってわけで。
…あと、そろそろ俺にも幸運が巡ってきてもいいと思うのよね。何らかのカタチで。
「あれがウィンターホールド大学だよボルガクさん、すごい建物だねェ」
「お前なあ…一日中歩き通して、どうして朝より遠くなっているんだ!?」
「すまない。本当にすまない。俺にもわからないんだ…」
おかしい、まっすぐウィンターホールド大学を目指していたはずだったのに。こんなはずでは。
→To Be Continue?
どうも、グレアムです。
なんかトレーズに釣られてアーケイドのほうもネームの量が多くなってしまったので、記事の長さに比べて話自体はそんなに進んでないですが、そもそも今までがどうでもいいエピソードばかりだったのでまあ別にいいのかな。
彼は貧民街の出身で、どちらかといえば裏社会のルールで生きてきた人間なので、トレーズとはまた違ったベクトルでの悪党です。彼の過去や人格形成に至るルーツなども書ければ面白いのかなあと最近は考えています(当初はそういうのを排除する方向性で書いてました)。
まあ、まだ何も設定を考えてないですが。
2016/02/06 (Sat)15:07
『持ち帰ったのですね、ドーンブレイカーを…』
死霊術師マルコランを討伐しメリディアの祭壇へ帰還したトレーズは、神殿から持ち帰った一振りの剣を見つめた。
聖剣ドーンブレイカー。
不死者を焼き払い、この世ならざるもの…定命の理から外れた者を殲滅するためにメリディアが造りだした、対アンデッド用の宝具。
『聖堂には安息が訪れました。しかし、いと悲しきことに世はいまだ不浄に満ちています…その剣をもって忌まわしき不死者どもを討ち払い、死者に安らぎをもたらすのです』
ドーンブレイカーを使い、世にはびこる死霊どもを退治せよと下命するメリディア。
この場合、剣の下賜は褒美である。デイドラ・プリンスより与えられる強力なアーティファクトを受け取らぬ理由などないはずであったが、トレーズは剣を祭壇に奉げると、うやうやしく頭を垂れて膝をついた。
「メリディア様、無礼を承知で申し上げます。私は、この剣を受け取ることができませぬ」
『…理由を聞きましょう』
「私にはメリディア様が四千年前に我が一族に御下賜された、扱い慣れたるこの宝剣がありますゆえ。私はこの剣を振るい、邪なる者どもを滅ぼしてみせましょう」
『では、デイドラ公たる私が直々に与える褒美をいらぬと申すのだな?』
「はっ。失礼は承知のうえ、慈悲を請いはいたしませぬ。私は怒りを避くるに値せぬ者なれば、ただ黙って罰を受け入れる所存。このドーンブレイカーはいつか来たりし敬虔なる信徒に、聖なる御心をもってお与えくださいますよう」
『殊勝なことだ。よい、罰など与えまい。汝、揺るがぬ光とともにあれ、忠実なる従徒よ』
「有り難き御言葉。では、私はこれにて失礼いたします」
『ああ、それと…』
「なんでしょう?」
『たまには掃除に来てくださいね』
「…… …… …は」
メリディアの言葉の真意を、トレーズは計りかねる。
聖堂に侵入を試みる不死者どもを退治しろ、という意味だろうか?まさか言葉通りの意味ではあるまいが…
信者の姿が見えぬ寂れた祭壇をあとに、トレーズはキルクリース山を下りる。途中、鎧の中で眠っていたミルムルニルがトレーズの意識に語りかけてきた。
『じゃじゃ馬娘がしとやかに振る舞うこともあるとはな。まこと奇ッ怪よの』
「やかましい。奇怪とか言うな」
こいつ、私の行動をすべて監視してるんじゃないだろうな…そんなことを考え寒気を覚えながら、トレーズは聖堂で起きた出来事を思い返す。
竜は…ミルムルニルは、『物事には段階がある』と言った。『お前が理解する必要がある』とも。ただ答えを言葉で聞くだけでは駄目なのだ、と。
率直に言って、トレーズにはミルムルニルの言葉も、言葉の意図も理解できなかった。
そもそも人間と竜とでは思考に根本的な差異があり、生物的にもまったく異なる存在だ。人間と同じ言葉を喋るからといって、相手を人間と同じように考えるのは危険だとトレーズは思っていた。
そういうわけで…人間とはまったく異なる思考体系を持つ生物にツッコミを入れて何になろうかと、トレーズはミルムルニル相手に真剣に怒りを発露させることはあるまいと務めていた。たとえ、どんなに無礼なことを言われようと。
『普段からそのようにしておれば嫁の貰い手もあるだろうに』
「うわーもぉうるっさいなこのビッグ爬虫類!」
「いいか、あれを…」
「こうだ」
ズギュンッ!
マルカルス、アンダーストーン砦。
ヴォルスキーグでのアンデッド退治を終えたトレーズは休息がてら、サルモール司法高官のオンドルマールと魔法談義に華を咲かせていた。
召喚呪文で花瓶の上のリンゴを呼び寄せたトレーズに、オンドルマールはややためらいがちに口を開く。
「遠くの物を引き寄せるだけなら、変性系統の呪文で事足りると思うのだが?」
「もちろん、術の届く範囲内であれば念動力で充分だ。召喚呪文の利点は距離を問題としないところだ、どれだけ遠く離れていても呼び出すことができる」
「変性系統の念動力と召喚術では根本的な理論(ロジック)からして違うからな」
「そう。で、たんに…リンゴを召喚するだけなら大した苦労はない、が、たとえば今のように『アンダーストーン砦の花瓶の上に置いてあるリンゴ』といったような、特定の物を召喚しようと思った場合は、ちょっとした手間がかかるわけだな」
「タグづけが必要になるな。形式上は、無機物が対象でも『契約』という単語を用いるが…それで、君はこの実験で私になにを証明しようというのかな?」
オンドルマールの質問に、ニヤリ、トレーズは笑みを浮かべると、手を広げて語りはじめた。
「たとえば武装していない状態で街道を歩いていたとするな。それで、突然山賊に襲われたとする。そういう状況で、召喚呪文を使って武器と鎧を召喚!瞬時に装着して戦闘態勢に入る、といったようなことがやりたいわけだ」
「…わざわざ、そんな手間をかける理由は?」
「カッコイイだろう!?ヒーローみたいで!」
目を爛々と輝かせるトレーズ、しかしオンドルマールの表情は明るくない。
たんに子供じみた発想に呆れただけではなく、彼女のアイデアの実現には技術的な困難が伴うことを理解しているからだ。
内にこもるようなため息をついてから、ピッ、オンドルマールは人差し指を立てて言った。
「率直に言って、それはおすすめできないな。特に鎧は…召喚する位置の問題だ。おそらく君は、鎧を召喚と同時に装着することを想定していると思うが…召喚した鎧と肉体の座標が重なった場合、両者は一体化してしまう。重大な障害を負う可能性のみならず、死に至る危険性が高い。それに敵と交戦している状態で召喚位置の座標を精密に設定するのは難しい、多くの武具召喚魔法が物質ではなく霊的エネルギーを利用するのはそういう理由だ」
「それはわかっている。物質的な武具召喚のデメリットについては実験済だからな」
「実験?」
「召喚対象が他の物質と重なったらどうなるか、だ。ためしにマッドクラブを使って、似た個体のマッドクラブを位置座標を重ねて召喚したらどうなるか試してみた」
『キュー』
『キュー』
「うわああああああ」
「…見事に一体化したよ」
「そうか…」
かつて実験で微妙なキメラを創造したことを思い返すトレーズに、オンドルマールは「わざわざ実験しなくてもわかるだろ…」という表情を向ける。
しかしすぐ、別のことに関心が沸いたオンドルマールはトレーズにある質問をした。
「君はマッドクラブを召喚できるのか?珍しい魔法を使えるんだな」
「ほう、珍しいか?もしや、特別な…」
「いやマッドクラブを召喚したがる魔術師なんかいないからな。そんな魔法があること自体に驚いている」
「見せてやろうか?」
「いや、いい」
「おりゃー」
「いいって!」
ズギャアァァーーーァァアアン!!
オンドルマールの制止も聞かず、テーブルの上にマッドクラブを召喚するトレーズ。
彼女の予想外の凶行にオンドルマールは思わず悲鳴を上げた。
「いったいなにを考えてるんだ!?」
見上げたカニ毛が出と~る
『きゅい~』
『きゅい~』
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
「カニだ!うまいぞ!」
「それ今やる必要あったのか!?」
と言いつつ、一緒に食べるのだが。
茹でたマッドクラブの殻を丁寧な手つきで剥がしながら、オンドルマールはどこか遠くを見るような目をしながらつぶやく。
「海鮮かぁ…」
「川だけどな」
「うん」
「海鮮といえば、ハンマーフェルにいた頃は海産物ばかり食べてたな」
「ハンマーフェルにいたのか?大戦のときに?」
「ああ。大戦終結後の五年間は沿岸部での一進一退の攻防が続いてな、ずっと漁港にカンヅメだ。あのときはもう魚なんか見ただけで吐き気がしたものだが、今となってはそれも懐かしい」
「海の幸かぁ…ここの料理人の腕も悪くはないんだが、なにせこう、陰気な山奥だとレパートリーに乏しくてな。たまには魚が食べたい」
「この砦の厨房は頼めば貸してくれるのか?」
「アントンは嫌がるだろうが、サルモールの名に逆らうほど愚かではない」
「そうか。なら、こんど材料を持ってきてやろう。ハーブ入り海鮮バタースープを作ってやるぞ」
「それは楽しみだ。ここ最近聞いた話の中ではいちばん嬉しい提案だな」
その後、二人はおおよそ仕事とは関係ない話題で夜明け近くまで盛り上がった。
そのうちオンドルマールが眠くなった目をこすりながらつぶやく。
「いかん、もうこんな時間か。すっかり話し込んでしまったな、これは今日の業務に影響が出そうだ」
「文官も大変だな…付き合わせて悪かった」
「構わんよ、たまには同胞と普通の会話をするのも悪くない。なにせ隠微な状況だからな」
「せいぜい未来のために頑張るとしようか、互いに。私も宿に戻るよ」
話している間に少量ならざるアルコールを頂いていたため、トレーズはすこし夜風で酔いを冷ます必要を感じていた。
アンダーストーン砦を出て守衛に一瞥をくれ、水の流れ落ちる音に耳を傾けながら、トレーズはタムリエルの今後の行く末について僅かばかり思いを馳せる。
多くのサルモールと、トレーズの戦う理由には大きな剥離がある。
サルモールが耳の丸い人間族を憎んでいるのは第二紀におけるタイバー・セプティムの征服戦争に端を発しているが、トレーズはそれよりも前、自身のルーツである第一紀のアイレイド滅亡にまでさかのぼる。
そして他種族を粛清しアルトマーのみが住まう国となったアリノール(旧サマーセット島)で着々と計画を進めていたサルモールとは違い、トレーズはドミニオン(アルドメリ連合軍)に入るまではヴァレンウッドでボズマーとともに狩人として生計を立てていた。また入隊後も彼女が所属していたのはヴァレンウッド軍であり、アリノールには足を踏み入れたことがない。
トレーズはアルドメリ軍人ではあるが、厳密に言えばサルモールではなかった。
エルフによる大陸の再支配という理念は一致していたが、その根源的な理由、背景などにいささかの不一致があるため、同じアルトマーであるとはいえ、トレーズはサルモールとはあまり話が合わなかったのだ。
いまそのことを思い出したのは、むしろ、オンドルマールとの会話でそうした相違をまったく感じさせなかったせいかもしれない。
自分はアルドメリに与するアルトマーの中でも異端だ。そのことはわかっている。
彼との会話でそういう気にならなかったのは、オンドルマールがあまり偏見を持たない人間だからか、あるいはたまたまそういう話題に結びつかなかっただけだったか。いずれにせよ、「同胞と普通に会話すること」が稀少な体験となってしまうのは、トレーズにとって、スカイリム情勢が不安定というだけの理由ではなかった。
おそらくアルトマーがタムリエルを平定しても、この違和感は一生拭えないままだろう。
だがそれでいい、とトレーズは思う。なぜなら彼女にとってアルトマーによるタムリエルの支配は理想実現へ向けての第一段階に過ぎないのだから。
そのためにはタロス信仰などというふざけた概念を破壊し、耳の丸い人間族を端々に至るまで根絶排除粛清し、この世界を綺麗に掃除する必要がある。
トレーズにとって今のタムリエルは汚れた部屋も同然だ。ゴミを片付け、すっかり住み着いてしまった害虫を駆除しなければならない。
「…とりあえず、また明日(もう今日だけど)から頑張るかあ」
んっ、トレーズは大きく背筋を伸ばして欠伸をすると、宿を取ってあるシルバーブラッドに向けて若干ふらついた足取りで歩いていった。
>>to be continued...
どうも、グレアムです。
こっちはシリアスでギャグはアーケイドのほうに回す、みたいなことを以前書いた気がしますが、そんなこと関係なく和やかな話を織り交ぜてみました。本当はカニと空耳アワーネタはアーケイドのほうでやる予定だったんですが、召喚術まわりの話とあわせてこっちでやるほうが自然にインサートできたのでこんな結果に。
武具召喚の構想の元ネタはあれです、ぶっちゃけ仮面ライダーです。変身!です。カメンライドです。今後ネタとして使うかはわかりません。
我らがオンドゥル王子は、うーん…べつにフラグ立てるつもりは今のところないです。今回はあくまでトレーズが同胞相手なら普通の女の子みたいに接するという点を強調するためのエピソードなので。ノルドだらけのスカイリムだからヤサグレ度MAXなだけで、基本的に仲間意識は強いです。ソリの合わないサルモール相手に不満を漏らさない程度には。
普段の態度の悪さは、周囲がオルフェノクだらけで常時キレてる草加雅人みたいなもんだと思ってください。ノルドは全員敵だ、そう思わなきゃ戦えないだろう!そんな感じで。死ぬわコイツ。
2016/02/04 (Thu)03:55
昏く、荒涼とした空気が全身を突き刺す。トレーズは一糸纏わぬ姿で氷の上に立っており、光の差さぬ冷たい空間にただ一人、佇んでいた。
素肌を晒すトレーズは不安に駆られたが、それは羞恥によるものではなかった。トレーズにとっての裸とは無防備、身を守るための剣も鎧もない、という以上の意味を持つものではなかった。彼女にとってはそれが、近くに存在するかもしれない見も知らずの誰かに裸を見られたときの、唯一の懸念だった。
氷に覆われた洞窟は一面血まみれで、床も、壁も、天井も、天井から鋭く伸びるつららさえもが存分に生臭い液体を舐めている。それはまるで吸血鬼の牙のようであり、まるでこの洞窟そのものが殺意を持っているかのような錯覚さえ覚えさせた。
血の匂いを嗅ぐと、トレーズはヴァレンウッドでの生活を思い出す。日課であった鹿の解体をしているとき、ちょうどこんな匂いがしたものだ。
あるいは、戦場で…戦死者で溢れる砂漠、市街地、敵部隊が篭城する建物に突入してアリクル戦士を次々と斬り伏せる瞬間、アドレナリンの奔流と全身に浴びた血で歓喜に狂った記憶が蘇る。
死の匂い。
それはトレーズにとって慣れたもので、忌避するようなものではなかった。
『この光景を見て動揺一つない、か。なるほど、血には慣れているらしいな』
「…なんだ!?」
突然の声に驚くトレーズのまわりを煙がまとわりつき、全身に異変が生じる。
表皮に鱗のようなものが生えはじめ、指先から魔力が迸る。普段は滅多に使うことのない魔法が全身から溢れ、制御できなくなっていた。
『死に慣れてはいる…だが、死を理解するには程遠い浅はかさ。いと嘆かわしや、その罪深さゆえに…死者の声に耳を傾けることもない…』
「貴、様…何者だ?どこにいる!」
どこからか聞こえてくる声に向かって、トレーズは挑みかかるように叫んだ。
相手の声にはひどく存在感というか、威厳のようなものがあり、うるさいわけでもなければ、耳を塞いでいたとしても一言一句聞き逃すことなく理解できるような心地よさがあったが、それでも、その声をどこから発しているのかさえトレーズには見当がつかなかった。
まるで頭の中に直接語りかけてくるかのように。あるいは、頭の中から語りかけてくるように。それがトレーズには気に入らなかった。そういうことを得意になってやるのは、たいてい、詐欺師の領分だからだ。
「モノを言うなら、姿くらい見せろ。それとも女の裸を見るのが恥ずかしいのか?」
『我にはお前の姿が見えている。お前に我の姿が見えないのは、お前が見ようとしていないからだ』
「ほう…面白いことを言うな。馬鹿には見えない肉体を持つ王様というわけか?」
『肉体はない。滅びた…滅ぼされたからな、お前に。お前が我の姿を見れないのは、お前が過去に奪った命と向き合おうとしないからだ』
「死んだ命に対して思い煩えと?どうすれば満足だ?狩りで殺した鹿、戦争で殺した帝国軍、哀れなネディックの末裔、そういう連中に祈ってやればおまえは満足か?」
『我の感想なぞどうでも良い、これはお前の問題だ。お前自身が先送りにしていた、檻の中から見つめていた咎と向き合う時期が来たのだ』
ぞわっ…
漆黒の影が湧きあがると同時に、トレーズを飲み込まんばかりの勢いで覆い尽くす。
それは、まるで…トレーズに殺された魂の怨念が、彼女の肉体を喰らいつくそうとするかのように…
「やめろ、離れろ!なんで、こんな…いまさらになって……!!」
『よいか…魂とは、ただ肉体の死をもって終わるものではない。お前の鎧、殺した命を奪い自らの力とする器の中に、営々と存在し続けているのだ。待っているのだ、目覚めのときを…』
「そんな…」
『やがて目覚めるときがくる、怨念が…肉体を奪われた魂たちが!』
「くそっ、また悪夢か…!」
慌てて飛び起きたトレーズはきょろきょろとあたりを見回し、近くに外敵がいないことを確認して、ひとまず安堵のため息を漏らした。
リーチ地方北部の川沿いにキャンプを張っていたトレーズは、自分が鎧を着たまま寝ていたことを思い出す。疲れはあまり取れないが、周囲の安全確保が難しい屋外では装備を身につけたまま就寝することは珍しいことではなかった。
戦争中も、駐屯地や大部隊を伴っての移動中ならいざ知らず、少人数での偵察任務では常に鎧を着たまま寝ていたものだ。
トレーズが所属していた、ヴァレンウッドのハンターで構成された部隊は鎧を着たままでも普段の生活に支障が出ないよう常日頃から訓練されており、彼女たちにとっては、一般に迷著と呼ばれる書籍「ハルガードの物語」の内容は決して荒唐無稽なものではなかったのである。
それにしても、ふう、こうも夢見の悪い日が続くというのは、何かあるな…と、トレーズはひとりごちる。
なにかの予兆か、霊的な力が何かを示唆しようとしているのか。
こういうとき、たんなる偶然だとか、臆病風に吹かれただのといった「根拠のない」言い訳で思考を破棄するのは簡単だ。
だが神が身近な存在であるこのタムリエルで、神性な存在の媒介を迷信と断じるのは愚かな行為以外の何物でもない。
いままでトレーズは殺人や、命を奪う行為に疑問を覚えたことはない。これまでの行為はすべてトレーズにとって正当性のあるものであり、他人がどう思うかなぞを気にしなければ、そこに逡巡を差し挟む余地はない。
それを、いまさらになって警鐘を鳴らす「なにか」があったということは、気に留めなければならないだろう…
土地のせいだろうか?
アルトマーであり、アイレイディーンの末裔であるトレーズにとって、アトモーラから侵略して領土を奪い、あまつさえアイレイド滅亡の先陣を切ったネディックの末裔の国であるこのスカイリムという土地はいささか居心地が悪かった。
居場所がない、だけではなく、土地そのものが自分の存在を拒絶しているような気配すら感じるのだ。
この土地の精霊は、あまり私を歓迎していないようだ…と、トレーズは思う。
観光に来たのであればすぐにでも帰るところだが、誰にとっても生憎なことに、そうではない。
ひとまずこの件には「保留」の張り紙をピンで留めておくとして、トレーズはキャンプを畳み、荷物を纏めると、メリディアの待つキルクリース山へと向かった。
足元を駆ける野生の狐に注意しながら、トレーズはデイドラ・プリンスの一柱であるメリディアの巨大な像に辿り着くと、剣を掲げてその場にひざまづいた。
「私の名はトレーズ・ミドウィッチ、メリディア様の敬虔な使徒にして忠実なる僕。彼方からの呼び声に応じ、馳せ参じました」
『よくぞ参られた、罪深き迷い子よ…はて見かけぬ姿であるが、何ぞ過去に縁がありしや?』
「覚えておられませんか、この神聖なる剣を?私はかつて、リンダイ…アイレイドと呼ばれていたエルフの氏族の末裔であります。この剣はアレッシアの旗印のもと同族を裏切った悪しきネナラタの操る不死者の軍団を討つために、メリディア様がオーロランとともに御下賜された宝具にございます」
『アイレイド…懐かしい響きよ。かれこれ四千年以上も前になるか、そなたの一族はその後どうなったであろうな?』
「残念ながら、当時に滅んで久しく…しかし一族の末裔として、メリディア様が我が一族になさってくださったこと、そのご恩はいっときも忘れたことはありません。わずかでも、かつてのお慈悲に報いるべく…私に出来ることがあれば、なんなりとお申しつけくださいますよう」
『よくぞ言ってくれた、我が従徒よ。顔をお上げなさい』
「は……」
メリディアの声に促され、トレーズは祭壇をぐるりと見回す。
そこではじめて、トレーズはこの場所がいやに殺風景であることに気がついた。石像が安置されているほかは何もなく、奉げ物も、信徒の姿も見えない。いるのは野生の狐や兎だけだ。
人目に触れる場所でありながら信仰の形跡がない祭壇を愕然とした表情で見つめながら、トレーズはおそるおそる口を開いた。
「メリディア様…つかぬことをお聞きしますが、このスカイリムの地であなた様の信徒はなにをなさっているのでしょう?このように手入れもなく祭壇が放置されているなど、許されることではないと思いますが…」
『我が忠実なる従徒よ、弱く罪深き定命の者に慈悲を。信徒たちがその居としていた聖堂はいま、悪しき死霊術師の手によって不浄のはびこる地獄の釜へと姿を変えられてしまいました。あまつさえ、やつはその悪しき力を聖堂に安置されている我が秘宝から得ているのです』
「なんということを…そのような非道、断じて許されるものではありません!メリディア様、この私に一命あらば、たちまちに邪悪な存在を討ち滅ぼしてみせましょう!」
『頼もしい一言、ありがたく思う従徒よ。邪悪の源、憎き死霊術師、やつの名をマルコランと言う。我が信仰のため、これを亡き者に。そしてやつの手によって使役させられた、哀れな魂に救いを』
「お任せください!それと…」
『なにか言いたいことでも?』
「私が参るまで、誰もこの由々しき事態に対処する者がいなかったということは…やはり蛮族どもの信仰の程度が知れるというもの。耳の丸い連中などあてにはなりませぬ。そのうちに私がこの地にはびこる人間どもを一掃し、エルフの楽園と、メリディア様の栄華を取り戻してみせましょう」
『……えーと?』
なにやら過激な発言に面食らうメリディアを差し置いてトレーズは立ち上がると、兜の下で鼻息荒くキルクリースの聖堂へと足を向けた。
問題の要点を纏めると…
かつてメリディアの信徒が生活していた聖堂はいま、死霊術師マルコランの手で不浄はびこる凄惨な地へと成り下がってしまった。
信徒たちは惨殺され、死霊としてマルコランに使役されている。
そしてマルコランは聖堂に安置されたメリディアの秘宝から膨大な魔力を引き出し、その力をさらに強大なものへとしつつある。
生命を司り、不死者(アンデッド)と長きにわたって敵対してきたメリディアにとってこれほどの屈辱はなく、マルコランも当然そのことを理解したうえで、デイドラ・プリンスたるメリディアを屈服させるために暗躍しているのだ。
トレーズに課せられた使命は、死霊として望まぬ悪事に加担させられているかつての信徒たちの魂を救済し、マルコランを抹殺すること。
しかし事態はそう一筋縄ではいかない。
強大な力を得たマルコランに操られる死霊は手強く、またトレーズ自身もいかなる理由か、普段の力を発揮できないでいた。
「これは、いったい…まさか、あの夢のせいか!?」
殺した相手の魂を奪い、装着者への生命エネルギーに変換するナリル・モリの装具。
60年以上の歳月を生きながら、トレーズが少女のような外観を保っていられるのはひとえにこの鎧の力のおかげ(それとアルトマー特有の長寿によるもの)だが、なぜかいま、彼女は装備から力をうまく引き出すことができなかった。
『待っているのだ、目覚めのときを…』
夢の中で聞いた言葉を反芻し、トレーズは思わず身震いする。
まさか祖先の遺した装備が、私に害成すことなどあるはずが…
いや、やめよう。
トレーズはかぶりを振り、剣をかまえなおす。
戦場で逡巡や躊躇は命取りにしかならない。そんな無駄なことで身を危険に晒すなど論外だ。そう、気にしても仕方がない。力がうまく発揮できないという一点を無視さえすれば。
やがてトレーズはマルコランが待ち構える聖堂の最奥へと突入した。
「我が崇敬なる神への挑戦者、身の程を知らぬ邪悪の化身め!毛筋一本と残さず討ち滅ぼしてくれる!」
「メリディアの遣いか、面白い!貴様を贄としあの売女の信仰を完全に打ち砕いてみせよう!」
マルコランの使役する「穢れた影」、そして高度な術を駆使するマルコラン自身の戦闘能力は高く、その力、強さはかつて対峙したドラゴン・プリーストにも匹敵するものだった。
死霊術師風情が、これほどまでの力を手にすることがあるとは!
思うように力を発揮できないトレーズを漆黒の死霊たちが取り囲み、そこへマルコランの放つ一撃がトレーズを襲う!
「がはっ、ぐあ…そんな……」
魔力を帯びた短剣が脇腹に突き刺さり、鎖帷子を突き破ってトレーズの内臓を切り裂く。
血を吐きその場にひざまづくトレーズに、マルコランがとどめの一撃を刺そうとしたとき…トレーズの意識が途切れ、周囲が闇に包まれた。
このまま死ぬのか。メリディア様に与えられた使命を果たせず、何一つ目的を達せぬまま。
絶望するトレーズの耳に、鼓膜を破り脳髄を揺さぶるほど大音量の咆哮が突き刺さる。
そのとき、トレーズが見たものは…竜の姿だった。
『なにをやっている!いったいどうしたというのだ、アイレイドの戦士よ!』
トレーズが目を覚ましたとき、立っていたのは夢に見たあの場所だった。
一面が血に濡れた氷霜の洞窟。
だが今回は夢のときとは状況が違った。声の主が目の前にいたのだ。
「おまえは……っ!?」
『自身が殺した者と向き合うのは初めてか。なぜ、この空間に呼ばれたか…理解できているか?』
血塗れた竜の声に、トレーズは混乱する。
そこにいたのは…かつて西の監視塔でトレーズによって殺されたドラゴン、ミルムルニルだったのだから。
「いったい…ここは、どこだ?私は、まだ…夢を、見ているのか?」
『ここはお前が装着している鎧の内部に形成された空間だ。我が魂を媒介に、お前にビジョンを見せている。まったく…こんな事態を望んで、あのような夢を見せたわけではないぞ』
「夢、だと。あれは貴様の仕業か!?」
『我はお前に殺され、鎧に取り込まれた。そして鎧と一体化した我は…この鎧、アイレイドの遺物が持つ特異な本質を理解したのだ。同時に、お前がこの鎧をまったく使いこなせていないこともな』
「何を言う…!」
『お前は奪った生命をなんとする、喰らった魂をなんとする!もしやお前はこの鎧を、奪ったエネルギーを貯めておける便利な道具だとしか考えていないのではないか?実際は、奪われた魂はすべて意思を保ったまま鎧の中で生き続けているにも関わらず…だ!』
ミルムルニルの恫喝を受けたトレーズは、思わず一歩後ずさった。
そういえば…トレーズは思う、自分はこの装備のことをほとんど知らない。
自身の一族に伝わる騎士の装備、殺した相手の生命を奪う魔道具…という以外の情報をトレーズは知らず、また、トレーズ以外の誰も知らなかった。
かつてこの装備を身に纏い、ネナラタやアレッシアの手の者と戦ったリンダイの騎士、彼がどのように振る舞ったのかを知る者は誰もいなかった。文献も、言い伝えも、何一つ残ってはおらず、ただ装備のみが家宝として伝わったに過ぎなかったのだ。
そして鎧に取り込まれたというミルムルニルは、それによってこの装備の本質を見抜いたという。
『この空間での時間の流れは、現実では一瞬の出来事に過ぎぬ。が、お前が生命の危機に瀕している以上、いまは長話をしているわけにもいかぬであろう。だが、お前の持つ可能性は、お前自身で気づかなければならないのだ…何度でも言おう、お前は自らが殺し奪った命と向き合わなければならぬ!』
「だから、何が言いたいんだ!殺しを悔い改めろとでも言うのか!?」
『そうではない!』
やがてミルムルニルが首を伸ばし、その巨大な牙をトレーズの肌に食い込ませようとする。
身を守る鎧も、剣もなく、ただの非力な少女と成り果てたトレーズの肉体を喰らおうとするミルムルニル。そして、トレーズはそれを…黙って見ていた。
恐れるでもなく。諦めるでもなく。
『そうだ、受け容れよ…』
やがてミルムルニルと一体化したトレーズは恍惚とした表情を湛え、ゆっくりと目蓋を閉じる。
まばゆい閃光とともにトレーズが立ち上がり、光の奔流をまともに直視し目を潰されたマルコランは思わずその場から跳ね退る。
「なんだ、あれは…ドラゴン…だと…!?」
トレーズの背後に浮かび上がる竜…ミルムルニルの姿を目の当たりにしたマルコランは絶句した。
「まさか、こいつが噂のドラゴンボーン…しかし、違う!これは、こんなのは、私が知っているものとは違うぞ!何者だ、こいつは!?」
『総てを知るにはまだ遠い、だが、まだそれでいい、まずは…一歩からだ。Tiid(ティード)!』
ミルムルニルのビジョンが消える寸前、彼の咆哮とともに周囲の空間が歪み、時間の流れが遅くなる。
まるでゼラチンに漬けられたようにのろのろと動くマルコランと亡霊たち、そのなかでただ一人、トレーズだけが機敏な動きを見せる。すでに、腹の傷も塞がっていた。
ドガガガッ、ズバッ、ザシャアァァアアッッ!!
連続して繰り出される斬撃にマルコランの首が撥ね飛び、穢れた影どもが一瞬にして破壊されていく。メリディアの加護を受けた剣の一撃で亡者どもは青白い炎に包まれ、次々と塵芥に姿を変えていった。
すべての敵を排除したトレーズは油断を解くことなく、剣を握る手に力を込めてマルコランの首なし死体を見つめる。
やがて…
『ふ、ふ…フハハハハ!やった、ついに!やったぞ!』
マルコランの肉体から漆黒の影が浮かび上がり、強大な魔力の奔流で空間が闇に染まった。
そこに現れたのは、マルコランが使役していた死霊に似た存在…しかし、その強さ、邪悪さは桁が外れている。
『肉体という枷から解き放たれたことで、私は、ついに!リッチへと昇華したのだ!!礼を言うぞメリディアの使徒よ!高次の存在となった私は、より魔術の高みへと昇ることができる!!』
「そうか、なら…もう一度、死ねッ!!」
死者の灰と炎に巻かれ、マルコランを葬り去ったトレーズは半ばトランス状態だった先刻までと変わり、段々と落ち着きを取り戻していた。
「…あれはいったい、なんだったんだ?鎧の本当の力だと…」
そのつぶやきに、しかし、こたえる声はない。
さっきまで多弁だった竜の声は聞こえず、聖堂内は、戦闘が起きる前の静寂をたたえるのみだ。
「…言いたいことがあるなら、一度に全部伝えろというのだ」
『物事には段階というものがあるのだ、娘よ』
「聞こえてるんじゃないか!」
>>to be continued...
どうも、グレアムです。
なんかエライことになってますが、じつは今回出した諸設定、当初の予定にはまったく存在しなかったものです。
というのも当初はトレーズの力にあまり複雑な設定を持たせたくなくて、もっとシンプルに、ドライにやりたかったんですよね。特別な存在にしたくなかったので。ぶっちゃけると、本当はこういう話は書きたくなかった。葛藤とかいらなかった。徹頭徹尾オラオラ系女子として覇道を踏破するキャラにしたかった。
そんなわけで、今回の日記のシナリオはSS撮影に合わせてけっこうその場のノリで適当にでっち上げてます。本来の想定を無視してあえてそういう方向性でやるのは、自分でも先行きの予測がつかないライヴ感を楽しみたいっていうのと、俺の好みで話を書いてしまうとすさまじく地味な内容になってしまい、むしろウケを狙うなら自分の好みから少しハズしたほうがいいらしい、という自覚があるので。
ビジュアル先行で見れば少女と竜のツーショット(二人三脚)とか、ミルムルニルがまさかの参謀ポジとか珍しくていいなーとか思うんですが、個人的にはあまり好きなタイプの話ではない(笑)
まあ、それでも書いてるときはわりとノリノリだったりするんですが。
2016/01/31 (Sun)09:54
運命を切り開く男がいる 天に背く男がいる それはドラゴンボーン四千年の宿命
見よ 今この永き血の歴史に 終止符が打たれる
「臆せずに来たか。その勇気は誉めてやろう」
「アンタが来いって言ったんじゃんよ」
リフト地方北東、ヴェロシ山脈中腹…通称「最後の見張り場所」。
夕暮れどきに到着した俺を、すでに待ち構えていた黒檀の戦士が出迎えた。
俺の名はアーケイド、アルゴニアンの商人だ。
人生の心残りは強者と戦って死ぬことのみ、と吹聴する黒檀の戦士の挑戦を受け、俺は単独でこの決闘場所に赴いてきた。助っ人なし、騙まし討ちなし。これは仕事ではなく、ただ勝つだけが目的でもない、男として…戦士としての誇りを賭した神聖な勝負なのだ。(オレハセンシジャナインダケドネ)
互いに武器を抜き、正面から相対する。
二人とも自分がやるべきこと、成すべきことはわかっていた。多くの言葉は必要ない。
冷めたハートじゃ 愛せやしない
待ち続けても 夜明けは来ない
一人立つ SILENT FIGHTER
暗闇に 揺れる炎の中で 夢を求め
DO SURVIVE! 渇いた心が
DO SURVIVE! 欲(もと)めて泣いてる
DO SURVIVE! 明日さえみえずに
終る事のない 旅路の果てで (デデデデッ)
(デデデデッ)
(デデデデッデデデッ)
ホワイトラン、バナード・メア。
『我らは戦う~、命のかぎり~♪やがてソブンガルデにぃ~、呼ばれぇ~る~まぁで~♪』
吟遊詩人の歌に耳を傾けながらマグを呷る酔客に混じって、ボルガクもハチミツ酒を飲みながら、入り口のほうをしきりに気にするように視線を漂わせていた。
「(…あいつ、大丈夫なんだろうな…?)」
彼女が気にしているのは、もちろん、パートナーたるアルゴニアンの商人アーケイドの安否である。
もとよりボルガクも誇り高きオークの戦士ゆえ、正々堂々の決闘に口出しをする気はない。もしそれで死ぬようなことがあっても、それが運命であったと受け入れることだろう。
しかし、だからといって、アーケイドの死を望んでいるわけでも、また、アーケイドの死に胸を痛めないわけでもない。
どこの馬の骨とも知らぬ風来坊が勝つよりは、当然、アーケイドが勝つほうが嬉しいに決まっていた。
やがて…
バナード・メアの扉が開き、そこに現れたのはアーケイドその人だった!
「アレは見なかったことにしよう!」と、開口一番叫ぶアーケイド。
「相棒、おまえ…」
負けて戻ってくる、そういう展開もあるのか!
おめおめ逃げ帰ってきたアーケイドの情けない姿を見て嘆息しながら、ボルガクはどこか安堵したように口元を歪めた。
「(そりゃあ、本音を言えば…みっともなかろうと、恥を晒そうと、生きててくれたほうがいいに決まってる)」
そんなことを思い、はた、自分が爬虫類に感情移入することがあるなどと、故郷を出るまでは考えたことすらなかった…そんなことに気づいたボルガクは、やれやれとかぶりを振ると、ハチミツ酒のボトルをアーケイドに渡しながら言った。
「まったく、戦闘職でもないのに無茶するからだ。ほら、これは奢りだ。まあ飲め」
「それより医者呼んでくれないかナア?シャウトで山頂から落とされて全身バッキバキに折れてるの…すごくいたいの」
「アホかーッ!こんなところに来とる場合かーッ!」
「だってまずはボルガクさんに挨拶しときたかったし…」
その後アーケイドはしばらくの間、キナレス聖堂での療養を余儀なくされたのであった。
→To Be Continue?
どうも、グレアムです。黒檀の戦士との戦いは田丸漫画的な敗北エンドで落としました。
たぶん本気で対策したうえで戦えば普通に勝てると思うんですが、それじゃあネタにならないし、そもそも戦闘職じゃないキャラが作中最強NPCに勝利って展開もなんかナァと思ったんでズッコケオチで。
戦闘中の詩(というか歌詞)はいわずもがな、北斗の拳(TVシリーズ)2ndオープニング「SILENT SURVIVER」からの引用です。なんとなく黒檀の戦士にマッチしてるなあと思ったんで。そうです、これアーケイドじゃなくて黒檀の戦士のテーマとして採用しました。テーマ曲補正がついた黒檀の戦士にトカゲが勝てる道理はないのです。
トレーズというガチなバーサーカーのストーリーと同時進行ということで、今後アーケイドはコメディリリーフというか、スチャラカ要員になるかもしれません。