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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
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2015/08/16 (Sun)11:27

僕たちが壊してしまった世界は、もう二度と元には戻らない。



 どうも、グレアムです。前回のSteamセールで購入したMetro: Last Light Reduxをプレイしたので簡易レビューを書きたいと思います。
 まず本作Last Lightは前作Metro2033の直系の続編(前作ラストから地続きでストーリーが展開する)なので、もしシリーズに触れたことのない方は先にMetro2033をプレイすることを強くおすすめします。でなければ恐らく、確実に面白くないでしょう(ゲーム中のあらゆる出来事や演出にまったく感情移入できないと思われるので)。
 肝心のゲームプレイに関しては、前作の感覚をほぼ忠実に再現しています(悪く言えば焼き直しに近い)。システムに関する細かい変更点はあるものの、方向性を変化させるような改変はありません。
 つまり本作は前作と同様、あくまでMetroの物語を主人公アルチョムの視点で追体験するアドベンチャーゲームであり、一本道のFPSでありながら生粋のシューター向けではなく(非戦闘パートの占める割合がかなり多い)、ましてFallout(3~)やStalkerシリーズのような自由度を求める声を満足させるタイトルではないということです。
 いわゆる前作の「雰囲気ゲー」的な魅力に惹かれたユーザーを今回も対象としており、さらにストーリーの続編であることから「前作ファンの中でもさらに愛好家をターゲットに絞っている」という、非常に間口の狭いタイトルなのです。よくこんなゲームの開発を許したな。
 まあ何が言いたいのかというと、「俺によし」ということなのですが。



コピペではない「誰かが生きていた痕跡」を感じる背景の作り込みは健在



 おそらく前作ファンの誰もが気になるであろう背景の作り込みに関してですが、これはもう文句なしに満点の出来です。あの偏執的なまでのこだわり、生活感のある空気の再現、行き交う人々の会話などは前作以上に磨きがかかっており、しかもそれが最後までペースダウンすることなく維持されるのはもう神業としか言いようがありません(ふつう、FPSなどで背景が異様に作り込まれているレベルというのはごく一部か、あるいは最初のステージだけ豪華だったりするのですが、このLast Lightでは最後まで息切れがありません。これ作った人達はどんな神経してるんだろう)。
 こうした入念な書き込みによって浮き彫りになるのが、前作以上に濃厚に漂う「死」の存在です。
 本作の物語は前作以上にスケールアップしており、前作で滅亡させたと思っていた異質な生命体ダークワンの生き残りがいることを知らされ、それを追う旅に出たアルチョムが、期せずしてメトロ全域の全勢力を巻き込んだ大規模な戦争の渦中に晒されるというプロットとなっています。
 そしてプレイヤーがゲームプレイ中に絶えず目にするのは、暴虐と死。その連続です。
 それでなくとも本作はステージのあちこちでやたらと死体(新鮮なもの、四肢がちぎれたもの、頭骨が剥き出しになっているもの、白骨死体…)を目にする機会が多く、しかし百般のFPSとは違い「もう見慣れたよ」という気分にならないのは、本作が人間の死というものを殊更重く描いているからかもしれません。そう、息が詰まるほどに。
 さらに前作にはなかった「核戦争時のフラッシュバックの体験」までもが用意され、核の脅威を描くとともに、その根源である人間の暴力性(獣性)、「正当な殺人(相手が悪人なら、それも極悪人なら殺人も許されるのか?)」の是非についてまでも踏み込んで描写しています。
 これらはプレイヤーの内面に語りかけ、それぞれが個人で考えるべきテーマであるがゆえに、ゲームの表面だけを見て流すように「はいはい次、次」というような気持ちでプレイしていると、「ただの面倒な演出」というふうに思えてしまい、まったく感じ入る部分がないかもしれません。しかしこのゲームに限っては、そういう「楽しくゲームを遊ぶための」プレイスタイルは、非常に勿体無いなぁと思ってしまうのです。
 「そういうのは映画や小説で堪能するからいいよ」という向きもあるかもしれません。しかしこのMetroシリーズはそうした情報の伝達が一方通行のメディアとは違い、「実際にプレイヤーが介入し当事者として感情移入しながら物語を追体験できる」インタラクティブなアドベンチャーとしての表現力を武器としており(おそらく開発者もそういう視点で製作したはずだ)、それはつまり「映画的なゲーム」などという陳腐な(そしてゲーム製作者にとってのある種の呪縛でもある)表現から脱却した「ゲームだからこそ可能な体験(表現)」を追求したタイトルであることの証明であると思うのです。
 もう「映画みたいなゲームなら、映画見ればよくない?」などと言われるゲームは時代遅れなのです。あるいは、このLast Lightはそのことを証明するために作られたゲームなのかもしれません。



どこへ行っても漂う濃厚な死の気配、そのすべてが人間の罪過である
その表現にFalloutシリーズのようなブラックジョーク的茶化しはない



 もっとも難点がないわけではなく、そうした部分の積み重ねが時に本作を友人知人に勧めづらくしている箇所もあります。以下は個人的な不満点の列挙です。
 まずは相変わらずFOVが異様に狭いこと。いちおう設定ファイルから任意の数値に変更することは可能なのですが、本作における、あらゆる効果が緻密に計算されたカットシーンや演出はすべてデフォルトのFOVをもとに調整されており(当たり前だ)、視野が広いとそれらが製作者の意図を外れた絵になってしまう恐れがあります。それでも俺はデフォルトのFOVではさすがにマトモにプレイできなかったので数値を変えましたが(本記事の画面写真はすべてFOV設定を変更したもの)、なるべく数値を大きく変えないほうがいいと思われます。
 戦闘関連はステルス重視のバランスなのにリーンができないこと、いまどきはコンシューマでも工夫して盛り込むタイトルも多いのでここはもう少し努力をしてほしかった(敵がカバーやリーンを多用してくるので尚更そう思う)。あとは敵の無警戒状態と警戒状態の挙動の変化があまりに極端であること、死体を見つけただけでプレイヤーを視認していないにも関わらず脇道の暗がりに息を潜めるプレイヤー目がけて一直線に敵が飛んでくるのはさすがに不自然だ。せめてもStalkerやFear並のAIがあれば…と思うのは贅沢であろうか。たまにプレイヤーの位置を誤認することもあるにせよ、ちょっと駆け引きを楽しめるレベルには達していない。
 ストーリーに関しては、本作でダークワンが急に多弁になるので神秘性が失われたこと、これはかなり個人的な不満点だが…それとヒロイン(?)とのロマンスの展開の強引さ。顔がブサイクかどうかはさておいて、いくら明日をも知れぬ戦場で色恋に逡巡は不要といえど、アルチョムがヒロインに惚れる要素がほぼ皆無なのが…「嫌味ばかり言うワガママ娘が急にしおらしくなったと思ったら身体を預けてきた」というのではなあ。さすがにあのエンディングをやりたいから無理矢理捻じ込んだんちゃうんかと邪推してしまう。もうちょっと「相棒」として行動するパートが多くても良かったように思う、それこそパヴェルと出番の比重を交換しても良かったんじゃないか。あれは共に行動する機会が多かったぶん憎さマシマシというか、こいつ助けたくねぇよ~と思いながら救いの手を差し伸べたのにバッドエンド直行だったプレイヤーの無念をすこしは考えてほしい。
 前作に引き続きカルマシステムによるマルチエンディングは本作でさらに面倒になっており(改悪と言っていい)、一般人の長話を聞くのはもとより敵の殺傷まで範囲が広がっているので、グッドエンディング(という区分けでいいのだろうか?)を見るには相当な面倒を背負う破目になる。実際、俺はかなり気を遣ってカルマ上昇に努めていたにも関わらず初回はバッドエンディングだった。正直、ここは個人的に変えてくれるのを切望していた点だったのでかなりガッカリした。



荒涼とした廃墟、世界は最初からこうだったと錯覚することさえ…



 まあ不満点はいろいろあるし、ちょっと人には勧めづらいタイトルではあるんですが、前作同様、個人的にはかなり気に入った作品でした。
 こうなると欲しくなるのが日本語音声です。いやなに字幕の出ない会話もかなり多いのでね…別売りDLC扱いでもいいのでPC版にも来ませんかねぇ。前作の、潜水艦乗りの話とかけっこう好きだったんですが(あれは原作にありましたっけ?)。



飛んだり殴られたり裏切られたり、飛んだり殴られたり裏切られたりする
相変わらずドンパチングな生活を送るゲーム版アルチョムであった



逞しく生き、子供に希望を見せることを忘れないメトロの住人
赤い羽根のおじさんはネタなのかマジなのか



マーケットはいつも人で賑わう
買うことができないとわかっていても食料品に目が移る



ガラス越しの神秘。なまちちを拝む機会もあるし、しかも揺れる
いったい4Aはどこまで余計な部分に力を入れまくるのか



相変わらず酒は不運のメタファー、いつになったら学習するのか
今回は店ごと潰しておば(あ)ちゃんと寝た挙句100弾丸払うことも



プライバシーのないメトロでは最高級の個人スペース
これはメカニックの面目躍如か



ヴェニスと呼ばれる水上都市、もちろんイタリアに行ったわけではない
有毒だとわかっていても奇形化した魚を食べないと生きられない住民の悲哀が



古ぼけた「新鮮な缶詰」を売る女店主
髪の毛の表現がやや残念なのは本作の弱点



ポストアポカリプスといえばギターである
本作では前作の音楽を聴く機会がわりと頻繁にある



ひょっとして焼いているのはネズミなのか?
放射能の影響か、はたまた食べているモノが違うのか…



お馴染み弾丸ライター片手に洞窟を進む
ライターといい時計といい本作に登場する小物はどれもいい



撒かれた疫病に罹り隔離された人々はただ死に焼却されるのを待つのみ
Soldier of Fortune 2でも似たような光景を目にしたのを思い出した



晴天の荒廃世界
画面が明るくても危険なのはまったく変わらない







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