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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
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2020/07/19 (Sun)01:04


 
 
 
 
 

【字幕解説】INCorporated テックデモ
 
 
 
 どうも、グレアムです。今回はフランスのインディー開発会社Galahan Gamesが手掛けていたSci-Fiシューター「INCorporated」のテックデモのプレイ動画を紹介したいと思います。
 本デモは2005年に公開され(流出ではなく公式HPで公開されたもの)、当初WindowsとXBOX360でのリリースが予定されていましたが、デモの公開後に一切の開発情報が途絶えたのちスタジオが閉鎖されるというミステリアスな末路を辿った幻の作品であります。
 2005年といえばあのDOOM 3やHalf-Life 2といった、ゲームグラフィクスの大転換をもたらした大作が発売された翌年であり、SWAT 4やF.E.A.R.などマルチテクスチャやダイナミックライティングを扱った作品が徐々にリリースされはじめた年でもあります。
 時期的には旧世代的なグラフィック表現に留まる作品もまだ多かったなか(プログラマブルシェーダーを搭載していないPS2への移植を踏まえたものなど)、15人前後という少人数体制で最新のグラフィクス表現に挑戦するという野心的試みは評価されて然るべきでしょう。
 ひとまずNPCのAIや戦闘メカニクスといったゲーム的な部分は先送りに、あくまでグラフィック部分を見るためだけの本テックデモ。いちおう書きたいことは動画内でほとんど説明してしまっているんですが、尺が足りずに書き漏らした部分もあるんで、本記事ではそのあたりの補足も踏まえて文章にしていきます。
 
 
 

まだFar CryのMODとして製作されていた時期に
公開されたTrailerの一部より抜粋
 
 
 
 当初はHalf-Life 2用のMODとして開発が始まったINCorporatedは途中からFar Cry用のMODに切り替わり、最終的にはMODではなく独立した商用ゲームとしての開発を目指し、Reality Engineという少々マイナーなゲームエンジンが用いられることになります。
 それまでに扱っていたValveのSource EngineやCrytekのCryEngineではなく、あえて別のエンジンを採用した経緯については、ライセンス料が他のエンジンと比べて安価であったこと(UnrealやCryEngineが基本無料となり、Unityが大きな存在感を持つ現在とは違い、当時は自社でエンジンを開発するのでない限り、高額なライセンス料を支払って他社製のエンジンを使うのが当たり前のことだった)、そしてHDRといった(当時としては)次世代の描画能力を持ち合わせていたことが決め手となったようだ。デモではグラフィックの描画にShader 2.0を用いるが、将来的にはShader 3.0の使用を予定していたようである。
 このReality EngineというのはArtificial Studiosというフロリダのゲーム会社が開発したもので、同時期にAGEIAの要請でPhysXのデモ用に同社が開発したゲーム「CellFactor: Combat Training」、及び「CellFactor: Revolution」で使われている。ただし、本デモで使われている物理エンジンがPhysXかどうかまではちょっと確認できなかった。
 当時AGEIAは他にもオンラインゲームを専門に手掛けていたNetDevilというスタジオに「Warmonger」という、これまたPhysXのデモ用タイトルの製作を依頼しており、その後Nvidiaに買収されて「PhysX by Nvidia」となるわけだが、それも今となっては昔の話だ。
 なおReality Engine自体はその後Epic Gamesにライセンシーを買い取られてUnreal 3に組み込まれ、同時にEpicへ移籍したArtificial Studiosの協同設立者兼リードプログラマーのTim Johnson氏は現在もEpicでFortnite等の新作開発に携わっている。
 残されたArtificial Studiosは「R6」と呼ばれる新作ゲーム開発のためにイギリスのIgnition Entertainmentに買収されIgnition Floridaと名を変えることになるが、けっきょくこのゲームは完成することなくスタジオも閉鎖に追い込まれている。余談であるが、Ignition Entertainmentの日本支社であるIgnition Tokyoは、あのエルシャダイを開発したスタジオである。
 
 
 

コンセプトアート
 
 
 
 だいぶ話が逸れたが…
 とりあえず本デモで目を惹かれるのは時間帯の変化による動的な環境、ダイナミック・ライティング、マルチテクスチャ、物理エンジンの導入といったところだろうか。いずれも後のゲームの標準となるものばかりだが、2005年の段階ではまだ目新しいシロモノであり、特に少人数のインディースタジオがこれを製作したというのは驚くべきところだが、おそらく当時としては相当に重いデモだったのではないかと思われる(それを確認する術はないが…)。
 テクスチャはディフューズマップ、ノーマルマップ、スペキュラマップの三種類を使用しており、解像度はバレル等のオブジェクトで512x512、メック等の詳細な描き込みが必要とされるものは1024x1024と、当時の水準としてはかなり高いほうだ(当時マルチテクスチャを採用していたタイトルはVRAMの負荷を低減するためテクスチャ解像度の低いものが多かった)。
 またグロウ(発光)、グロス(テカリ具合)といった表現はそれぞれディフューズマップやスペキュラマップのアルファ部分の参照するようになっており、実質五種類のテクスチャを扱うに等しい効果を発揮している。こうしたテクニックを見るに、スタッフに優秀な3Dアーティストがいたことを窺わせる。
 ただ、32bitTGAという規格を使い、1kテクスチャの容量が4MBもあるのはさすがにどうかと思うが…そんなわけで本デモはテクスチャの容量が馬鹿に大きく、狭いエリアを少し歩いて回るだけの内容にも関わらず、全体で約2GBもある内容のほとんどがテクスチャで占められているという有り様になっている。せめてDDS形式に圧縮して配信してほしかったところだ。
 
 
 

本作のテクスチャマッピング
 
 
 
 総括すると…
 まあ率直に言って、いまさら本作の存在を取り上げる意味や意義があるかと問われれば多分ないし、インディースタジオが商用で3Dゲームを作る場合にUnityやUnrealといった高機能なエンジンが誰でも無料で扱える&ネット全盛で情報共有が容易な現在においては、おそらくこの程度のレベルのテックデモは(それこそIndieDBあたりに)掃いて捨てるほど存在しているであろうから、なにをわざわざ…という以上の評価にはならんのだろうとも思うのですけれど。
 ただ現在と当時でインディーゲーム・シーンを取り巻く状況はかなり異なること、当時はまだダイナミック・ライティングを採用しているタイトルがそれほど多くないなか(なにせXBOX360がリリースされた年であり、PS3が出る一年前だ)、つまり一般に技術の蓄積やノウハウの共有がなかった時期にこれだけのものを作ったという点において、一定の価値を見出すことは可能ではないか…という、ちょっとした感傷である。
 
 
 
 
 


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