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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2020/07/01 (Wed)01:00


 
 
 
 
 

State of Decay: YOSE

【 Yankee Oscar Sierra Echo 】

Part.5

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
リリー:「どう、何か見える?」
ノーマン:「町はずれに動物病院が見えるな。おそらく人間に使える医薬品もあるだろう、ラベルに何と書かれているかは知らないが…強盗に押し入られた形跡もない」
 
 
 
 
 
 
 マクミランのかわりに改造型のマーリン983を持たせたラムダを歩哨に残し、ノーマンはスワイン&ボバイン(豚と牛)というふざけた名前のレストランの裏手にある電波塔にのぼってスペンサーズミル周辺の様子を観察していた。
 資材が置かれたまま放置されている建設現場、郵便局、ガンショップ…ひとまず調べる価値のありそうな施設を脳内のチェックリストにピックアップしていく。
 それにしても、病院や診療所のたぐいが一切存在しないのは驚くほかなかった。怪我をしたキャンプ客はどこで治療を受ければいいというのか?町に生きた人間の気配がなく、ほとんどがゾンビ化してしまったのはあまり驚くべきことではないかもしれない。
 耳掛け型のイヤホンマイクを通し、短距離用のトランシーバーでリリーと会話を交わすノーマン。
 
ノーマン:「いまさら聞くべきことではないかもしれないが、君たちはどうして教会を拠点にしようと考えたんだ?」
リリー:「最初から"狙い"があったわけじゃないわ。自宅に立て篭もるという選択肢も、もちろん、あった。ただ、こういう世界の終わりっていう状況で、私たちが向かうべき場所に思えたのよね…」
 
 ここで言う"私たち"とは、おそらく教会にいた雑多な顔ぶれではなく、トーマスを含む彼女自身の家族を指しているのだろう、とノーマンは察した。
 トーマスの本業は大工で、教会に施された対ゾンビ用の細工の数々は彼が施したものだということだった。なぜ教会ではなく自宅でそれをやらなかったのか、という疑問が解けた形になる。
 実際のところ、リリー自身が語ったあやふやな動機よりも、自分たち家族だけでなく近隣住民の安全をも守るための行動だったのではないか、という気がしていた。レンジャーステーションで負傷者の治療にあたっていたトーマスの利他的な姿勢を、リリーも立派に受け継いでいるように見える。
 素直にそう言わないのは、照れ隠しか、それとも上手く言語化できないだけか。自分の思いを言葉に直して伝えるというのは、それ自体に相応の才能が必要になる。
 
リリー:「私たちが教会に集まって情報収集をはじめてからも、多くの人の出入りがあったわ。こんな状況でも自分なら事態を好転させられる、そう思って出て行った人はすべて帰ってこなかった…最終的に鍋の底に残ったのが今の私たちというわけよ」
ノーマン:「たしか、父のほかに兄がいると聞いたが」
リリー:「兄はろくでなしよ」
 
 こころなしか、その言葉はリリー自身が意識していたよりも強い口調となって表れたようにノーマンには聞こえた。
 そのことに気づいたのか、リリーはすぐに説明をつけ足した。
 
リリー:「なんというか、その、兄が不真面目だという意味ではないの。兄なりにこの状況に立ち向かって、みんなのためになろうと努力はしているのよ。ただ、それが必ずしも合理的ではなかったり、そのときの気分で考えが変わったりするの。わかるでしょ」
ノーマン:「そういうのが役に立つこともある」
リリー:「だといいけど…それと、ねえ、そこから動物病院へ向かえる?いま、アランとサムを応援に向かわせたわ。人数が多いほうが、ゾンビと戦ったり、より多くの荷物を持ち帰るのに有利でしょ?」
ノーマン:「あの鬼軍曹も?」
リリー:「いまのところ、教会の警備はあなたの奥さんで手が足りてるしね。それにアランを教会に残したら、傷を負ったあなたの友人について延々と文句を言うか、あなたの奥さんと喧嘩をするかのどちらかだもの。そうなったら、みんながストレスで胃潰瘍になってしまうわ」
ノーマン:「優しい気遣いに感謝するよ。仕方がないな…」
 
 ふと教会のほうを見ると、たしかに二人組の男女がこちらへ向かってくるのが見える。あまり気の利いた同伴相手とは言えないが、これはピクニックではないので、贅沢は言ってられないだろう。
 いささか老朽化して軋む金属製の梯子を降り、ノーマンは二人組と合流して動物病院を目指す。
 
 
 
 
 
 
 草むらに隠れつつ、三人は「スペンサーズミル動物診療所」と書かれた看板の立つ建物を観察する。サムの言によれば、ゾンビたちは主に音に反応して集まる習性があり、視力や嗅覚は衰えているため、視界の通らない場所に隠れていれば発見されることはそうないということだった。
 
アラン:「さあ、お仕事の時間だ。お前のような素人は、窓をぶち破って盛大なエントリーを試みることだろうがな。そんなことをしたら付近一帯のゾンビどもがこぞって押し寄せてくる破目になるぞ」
サム:「素直に扉から入れば余計な音を立てずに済むってこと。鍵が掛かっていなければね、まあ、どうするかはあんたに任せるよ」
ノーマン:「そうか。扉をプラスチック爆薬で吹っ飛ばして突入しようと思っていたんだが」
アラン:「ふざけてるのか?まったく、あの嫁にしてこの夫ありだな!ガキの顔が見てみたい…おい、お前、子供はいるのか?」
ノーマン:「娘が二人」
 
 ノーマンがそう言ったとき、サムの顔から血の気が引いたように見えた。
 おそらくはノーマンとラムダが最初から娘を連れていなかったことに対して余計な誤解をしたのだろう。サムからあまり加減のない肘鉄を受けたアランは、いささか戸惑ったような態度で言い繕った。
 
アラン:「その…なんだ。俺は別に、お前に謝らなきゃいけないようなことは聞いてないよな?」
ノーマン:「ああ。娘たちは友達との旅行で、ここから遠く離れた場所にいる。リリーから聞いた状況から考えて、そこが特別にゾンビの被害から免れた可能性は低いだろうが、まあ、なんとか生き残っていることだろう」
サム:「随分と楽天的な物の考え方をするんだね?」
ノーマン:「娘には幼い頃から特別な英才教育を受けさせてるんでね。こういう状況では、それが役に立つ」
アラン:「なんだ、ガールスカウトにでも入会しているのか?」
ノーマン:「いや、俺自身の手で鍛えた。護身術ベースの格闘技と武器や銃火器の扱い、ナイフ一本でジャングルを行き抜く方法、そういった諸々をな。戦場にも何度か連れていった、すくなくとも、人の形をした肉人形を撃つのに躊躇はしないはずだ」
サム:「えぇ……」
アラン:「その、なんだ。教会で言っていた、便利屋っていう話は嘘だったのか?」
ノーマン:「嘘ではない。たんに、ときおり傭兵として海外の紛争地帯へ行くこともあるっていうだけのことだ。我らが友人のよう荒事専門というわけではない」
アラン:「我らが友人?あの怪我をしたやつか?あいつは傭兵なのか」
ノーマン:「ああ。ゾンビ如きに不覚を取ったのはヤツらしくない失態だな」
 
 そんな話をしながら、三人は侵入した動物病院で医薬品の回収にとりかかる。
 鎮痛剤や抗生物質を筆頭に、包帯やガーゼ、軟膏といった外傷治療用の道具をバックパックに詰めていく。ビタミン剤も役に立つだろう。
 アランやサムはそれぞれ個別に回収品のリストを持っているようで、ノーマンとは別の視点から品目を選り分けていた。
 ふと壁際に並んだケージに目をやると、どうやらゾンビに食い荒らされたらしいペットたちの死骸が無残に散乱していた。あるいは、共食いでもしたのかもしれない。人間の死体を見るよりも心が痛むのはなぜだろう、などと余計なことを考えると同時に、これらがゾンビとして蘇る可能性はあるのだろうか、という現実的な脅威も無視できなかった。
 しばらく医薬品の回収に時間をかけたあと、物音に惹かれてゾンビが集まりはじめたことを確認したノーマンは他の二人を促して足早に診療所を飛び出す。
 
 
 
 
 
 
 まるでコソ泥にでもなったような気分だったが、このさい、外聞を気にしてなどいられない。今も稼動を続けているかもしれない町の監視カメラに残った映像が、将来的に自分たちを監獄送りにすることがないよう祈った。
 道を半分ほど引き返したあたりで、サムがOD色の巨大なラックサックの縫い目がほつれて荷物がこぼれはじめたことを訴えた。
 車を拾うことを提案するノーマンに対しアランは頑なに「ノー」を突きつけたが(彼は車のエンジン音がゾンビを引き寄せることについて神経質なまでに拘っていた)、とうとうサムの身動きが取れなくなったことを察するにあたって、ついに二人を置いて自分だけ教会へ走っていってしまった。
 
 
 
 
 
 
サム:「待てアラン、戻って来い!まったく、あいつ、信じられない!自分だけ助かろうとするなんて!」
ノーマン:「そうカリカリすることはない。この近くのレストランの駐車場に悪趣味なペイントのフォルクスワーゲンが停めてあった、ロックはかかっていなかったよ。念のため、動物病院へ向かう前に確認しておいたんだがね。少しのあいだ待っていてくれれば、ここへ回せると思う」
サム:「乗れるなら何だっていいさ。すまないね、迷惑かけちまって」
ノーマン:「気にするな。ひょっとすると、アランよりも早く教会へ戻れるかもしれないぞ。彼が中年太りを気にしているかはわからないが、ダイエットのためにジョギングをしたいというなら止める理由もないだろう」
 
 そう言ってレストランへと向かうノーマンに、サムは不安そうな表情を向ける。
 ひょっとしたらアランと同じように自分を見捨てて行ってしまったのではないか…そんな弱気が胸の中で膨らみかけた矢先、数人のゾンビを撥ね飛ばしてシルバーのボディを凹ませたセダンが突っ込んできた。タコのカスタムペイントが、返り血を浴びて何やらおぞましさを増している。
 
サム:「本当に悪趣味な車だね…」
ノーマン:「レディを待たせたのでなければ良いが」
サム:「よしな、妻子持ちが女を口説いたりするんじゃないよ」
 
 中身を落とさないよう、穴のあいたラックサックを腹に抱えてサムが助手席のシートに身体を滑りこませる。
 その様子を見ながら、ノーマンがぽつりと呟いた。
 
ノーマン:「ダクトテープがあれば応急処置ができたんだが」
サム:「ダクトテープの万能ぶりは誰でも知ってるからね、店の棚からあっという間に無くなっちまったよ。今じゃあ最も手に入れるのが難しい貴重品の一つだ」
ノーマン:「そのことは特に驚くに値はしないな」
 
 
 
 
 
 
ラムダ:「あっ、ノーマーン!おかえりー!」
 
 それからは大きなトラブルに巻き込まれることもなく、二人は無事に教会へと戻ってきた。
 見張り台の上から手を振るラムダに、ノーマンもジェスチャーを返す。
 
 
 
 
 
 
ノーマン:「やぁ旦那、そんな大荷物を抱えてランニングかい?精が出るね」
アラン:「なんとでも言え…」
 
 ノーマンとサムがリリーに成果を報告するのと、アランが教会に戻ってきたのはほぼ同時だった。サムの刺々しい視線に晒されながら、アランは奥の寝室へ引っ込む。
 
サム:「リリー、あんたに必要な、えー、シクロホホスホファミドってやつを手に入れることができたよ。メソ…なんとかってやつは残念ながら見つからなかったけど」
ノーマン:「ミコフェノール酸モフェチル?」
サム:「!…知ってるのかい?」
ノーマン:「それと、シクロホホスホファミドじゃなくてシクロホスファミドだ。ホが多い。その二つが必要ってことは、リリー、君はSLE(全身性エリテマトーデス)なのか?」
リリー:「…ええ、私はたんにループスと呼ぶことが多いけど。現代でも直接的な原因が解明されていない病気で、定期的な投薬が必要なの」
 
 ループスは女性の罹患率が九割とされる難病で、症状が多岐に渡るため診断が難しく誤診も多い慢性的な自己免疫疾患だ。根本的な治療法は確立されておらず、合併症を起こしたり、再発することも珍しくない。
 わかりやすい外見的特長としては両頬が林檎のように赤くなる"紅斑"と呼ばれる症状が表れることで、まるで漫画のキャラクターのような見た目になるが、当人としては冗談では済まされない。
 症状としては日光過敏、関節炎、神経障害、免疫異常など11にわたる項目のうち4つが当て嵌まる場合にループスと判断されるという曖昧なもので、それゆえ第三者の理解を得られにくく、そのことが患者に精神的なストレスを与える要因にもなっている。
 日常生活に支障をきたすだけでなく、場合によっては死に至る可能性もある病気だ。
 
ノーマン:「君が外でゾンビを相手にアクションをしたり、重い荷物を抱えて駆けずりまわったりせず、一日中無線機に張りついているのは、それが理由か。どうして最初に言わなかった…」
リリー:「あなたのお友達は抗生物質を必要としているし、私には治療用の医薬品が必要だった。あなたを動物病院へ向かわせたのは、その両方が得られる一石二鳥だと思ったからだけど、フェアなやりかたではなかったわね。ごめんなさい」
ノーマン:「そんなことを聞いたわけじゃない。だらしない人間と病人とでは天地ほどの差がある…君は自分に負い目を感じているかもしれないが、こんな状況では五体満足でない人間から間引かれるべきだなんて言うやつがいたら、俺が真っ先にそいつをぶった斬ってやる」
リリー:「…ありがとう……」
ノーマン:「さてと、我らが友人の往診に向かうとするか。ドク・ハンソンが掴まるまで、もうしばらくのあいだ辛抱してもらわないとな」
 
 聖堂から出てクレイブの眠る簡易診療所へと向かうノーマンの背中に、サムが声をかける。
 
サム:「あんた、優しいんだね。ここに集まった連中のなかには、リリーのことを快く思わないやつもいたっていうのに」
ノーマン:「合理的な判断は必要かもしれないが、いかなる場合においても最優先されるってわけじゃない。リリーがゾンビに噛まれた我らが友人を見捨てずに受け入れてくれたようにね。もし人間が合理的な判断のみに頼っていたら、人類史はもっと悲惨なものになっていただろう…」
サム:「その言葉、アランに聞かせてやりたいよ」
 
 思わずサムの口から飛び出した本音に、ノーマンは苦笑せざるを得なかった。
 兎に角も、どちらかといえばサムは容易に他人を信じる性格ではないだろうから、自分がコミュニティ内でそれなりのポジションにつけたことは間違いないだろう。
 そのことは素直に喜ぶべきだった。
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 
 
 


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