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主にゲームと二次創作を扱う自称アングラ系ブログ。 生温い目で見て頂けると幸いです、ホームページもあるよ。 http://reverend.sessya.net/
2024/11/24 (Sun)00:30
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2020/07/04 (Sat)02:31


 
 
 
 
 

State of Decay: YOSE

【 Yankee Oscar Sierra Echo 】

Part.6

*本プレイ記には若干の創作や脚色が含まれます。
 
 
 

 
 
 
ノーマン:「あいつで大丈夫かなー…?」
リリー:「ごめんなさい、あなたの奥さんは従軍経験があるって聞いたものだから。軍人と交渉するなら最適な人選だと思ったんだけど…」
 
 普段は冷静な態度を崩さないノーマンが頭を抱える光景に、リリーも思わず動揺してしまう。
 きっかけはアランがヘリから降下する陸軍兵士たちの姿を目撃したことだった。
 どうやら軍隊はトランブルバレー西部のフェアフィールドに野営地を設置したらしく、ときおりスペンサーズミル近郊で活動している姿も目撃されている。
 はじめはリリーが無線機を使って交信を試みたが、残念ながら軍隊からの応答はなかった。
 現在、スペンサーズミルにある一軒家で分隊規模の兵士たちが何らかの活動をしているという報告を受け、彼らと接触すべく人員を派遣したのだが…それが他ならぬラムダなのがノーマンの頭痛の種となっていた。
 ノーマン曰く、身体能力だけが取り得で知能が幼児並のラムダでは現役の軍人を相手にトラブルを起こす可能性が非常に高く、そもそも、彼女が軍人であったという事実は、生体兵器として改造され記憶を失う以前のことだ…
 
 
 

 
 
 
 
 
 
軍人(エリック軍曹):「…まさか、シドニー・ランバート少尉?」
ラムダ:「んー?なんだ、オマエ。あたしの知り合いか?」
エリック軍曹:「いや、人違いか?それにしては、あまりに似すぎている…性格以外は」
 
 ノーマンの心配を余所に、これといって警戒心を持たないままOCP迷彩姿の軍人たちに近づいたラムダは、建物の入り口で警戒していた下士官…エリック・タン軍曹の言葉に眉をひそめた。
 一方のエリック軍曹もラムダの存在に戸惑いを覚えているようで、その正体を誰何しつつも、極めて慎重な口ぶりで話を進めた。
 
エリック軍曹:「思い過ごしか?まあ、いい。親切から忠告しておくが、現在トランブルバレーには強制隔離命令が発令されている。すなわち、"住民は自宅に鍵をかけて外出はするな"だ。もし他人の家や公共施設を"不法占拠"していたり、無断で他人の財産を持ち出すような"略奪行為"を働くような連中がいたら、我々はそれを驚異目標として銃殺しなければならない」
ラムダ:「なんでだ?いつまで?」
エリック軍曹:「なぜ?それは、この郡の住民はすべて"潜在的な保菌者"だからだ。我々が隔離・抑制された住民たちを順番に識別するまで、勝手な真似をされては困る。いつまで?それは俺にもわからん。ご立派な科学者様たちが原因の究明とワクチンの開発を終えるまで、それが一週間後か、半年後か、十年後になるかは不明だ」
ラムダ:「食べ物がなくなったらどうすればいい?ずっと家にいたら、物がすぐに無くなっちまうぞ?食い物と、弾と、薬と、資材と、あとガソリンとか色々なんか」
エリック軍曹:「俺が知るか。いいか、俺だって好きでこんなことをしてるわけじゃない。そういう命令なんだ、あんたが本当にランバート少尉なら、誰よりもそのことをよく理解していると思うが…」
ラムダ:「その、ランバート少尉ってのはなんなんだよ?馴れ馴れしいぞ、おまえ」
エリック軍曹:「本当に別人なのか…?ともかく、あんたは今すぐにここから離れたほうがいい。陸軍の中には、まだあんたのことを恨んでる連中が沢山いる」
ラムダ:「…… …… …?」
 
 エリック軍曹に追い払われ、ラムダはその場をあとにした。
 教会に戻り、リリーとノーマンの待つ聖堂へと向かう。彼女たちは心配そうな表情を浮かべていたが、ラムダが傷を負っていたり、身体のどこにも風穴を空けることなく戻ってきたことに安堵したようだ。
 あるいは、軍人を惨殺した返り血を浴びていなかったことも朗報だった。
 
リリー:「おかえりなさい!どうだった?彼らは私たちを救出することについて、何か計画を話してくれた?」
ラムダ:「んー…たぶん、あいつらにあたしたちを助ける気はないと思うぞ?」
ノーマン:「どういうことだ?」
ラムダ:「えーと、強制隔離で、外出禁止だ。不法占拠や略奪は脅威目標で銃殺だ。それが任務だと言ってた」
 
 たどたどしく語るラムダの言葉に、リリーとノーマンは顔を見合わせる。
 
ノーマン:「なあ、その、外出禁止ってのが、家に鍵をかけて一歩も出るなって意味なら…不法占拠や、略奪行為を働く脅威目標っていうのは、ひょっとして俺たちのような連中のことを言ってるんじゃないか?」
リリー:「まさか!だって、それじゃあ…」
ラムダ:「食い物が足りなくなるって言ったら、そんなの知らないってさ」
リリー:「嘘でしょう…?」
ラムダ:「あとは、科学者がチンチン…チクワ…チクワクチン…」
ノーマン:「ワクチン開発?だが、それが今日明日中に完了して量産体制が整い、すぐにでもこの混乱が収まるのを期待することはできないだろうな。律儀に外出禁止令なんか守ってたら、そんなものが完成する前にお陀仏だ」
ラムダ:「あと、あいつ…なんか、あたしのこと知ってるみたいだった。…ヤな感じだ」
リリー:「知り合い…昔の?でもたしか、あなたは過去の記憶がないって、ノーマンから聞いたんだけど。それって、どうなの?不安とか感じない?自分の過去を知りたいとか思うものじゃないの?」
ラムダ:「べっつにー?あたしは今の自分が大好きだからな!過去なんて必要じゃないのさ!疲れたから、寝る!」
 
 ヤケクソ気味にそう言い散らしてから、ラムダはライフルをロッカーに預けて大股で寝室へと向かっていった。
 彼女の態度に釈然としない感覚を覚えるリリーに、ノーマンが声のトーンを落として言った。
 
ノーマン:「あいつは政府が抱える極秘研究の実験台だった。頭がパーなのもその影響だ。だが…どうも、彼女は実験が危険なものだとわかったうえで、自分から志願したようなんだ。まともな経歴の人間なら、そんなことは思いつきもしないだろう。加えて、彼女は自分の過去を知ることを本能的に避けてるように見える」
リリー:「過去に何かあったってこと…?」
ノーマン:「たぶんな。繊細な問題だから、なるべく、あいつに過去の話は振らないでやってくれないか?態度にこそ出さないが、娘たちと離れてるせいで、少し情緒不安定になっている」
リリー:「わかったわ。それにしても、軍隊がこの町に駐留しているのに、彼らの助けをあてにできないなんて…それどころか、私たちにとっては敵になる可能性もあるのよね?」
ノーマン:「あまり考えたくはないことだが。それが軍の総意か、それとも一部の部隊が愚連隊と化して勝手に動いているのかという問題もある。判断を早まるべきじゃないが、それでも、連中がヘリコプターに生存者を収容して安全な場所へ連れていってくれる、なんて幻想には期待しないほうがいいだろうな」
 
 二人の間に重苦しい空気がのしかかった。
 冷静な態度を崩さないよう振る舞っているとはいえ、ノーマン自身もこの状況に苛立ちを感じていないといえば嘘になる。
 軍の命令系統が合理性を欠いているのはいまさら驚くに値しないが、それでも、こうした極限状況下で生ける屍だけでなく、正規の訓練を受けたライフル兵まで相手にするのは御免こうむりたかった。
 そのとき、無線機のスピーカから雑音混じりに若い男の声が聞こえてきた。
 
男(ジェイコブ):「リリー?聞いてたら応答してくれ、ちょっとまずいことになった」
リリー:「兄さん!?いままで連絡もよこさずにどこへ行ってたのよ!?」
ジェイコブ:「相変わらずお前の声は脳に響くな、我が最愛の妹よ。説教なら後で幾らでも聞くし、謝罪が必要ならトン単位で用意しておくから、とりあえず誰か助けを寄越してくれないか?できれば、アラン以外で」
リリー:「はぁ…それで、場所は?」
ジェイコブ:「ファームランドの農場だ。納屋、えぇと、なんて名前だっけ?マクレディの農場の向かいだ」
リリー:「何があったの?」
ジェイコブ:「屋根の上から周辺の観察をしてたんだが、降りるとき着地に失敗して足を挫いちまってね。おまけに、ゾンビどもがこっちへ向かいつつある。なるべく早く助けが来てくれるとありがたい」
 
 こんな状況で単独行動をしていたにしては随分と殊勝な態度だが、ともかく、リリーは安堵と苛立ちの入り混じった表情でほっと息を吐いた。
 
リリー:「よかった。そんなに遠くないわ」
ノーマン:「君のろくでなしの兄上かい?」
リリー:「ええ。まったく、あいつー…他人の迷惑なんか、これっぽっちも考えてないんだから!悪いけど、迎えに行ってあげてくれる?ついでに、私のかわりに一発殴っておいてもらえると嬉しいんだけど」
ノーマン:「最後の提案は慎んで遠慮しておこう。君自身が兄上のことをどう思っていようと、首が捻じ曲がった状態で対面することを望んではいないだろうからね」
 
 ノーマンのジョークに、リリーはにやりと笑みを浮かべた。とりもなおさず、ノーマンの口から仕事の公平性や失敗の可能性、ジェイコブの人格について否定的な言葉が一切出なかったことが彼女を安心させていた。
 リボルバーの装弾と予備弾の携帯を確認し、ノーマンはトーマスのトラックに乗り込む。
 
 
 
 
 
 
 ノーマンが目的の農場に辿り着いたのと、納屋から悲鳴があがるのはほぼ同時だった。
 慌てて降車し、ノーマンは二人の若い男に群がるゾンビの集団に向かって殺人的な飛び後ろ回し蹴りを放つ。
 
 
 
 
 
 
 銃を使わず素手とナイフで戦う救援者の乱入に、ジェイコブともう一人の男はかなり面食らったようだ。どうにか三人で周辺のゾンビを一掃することに成功したが、窓の外を見ると、遠方からさらに農場を目指して練り歩いてくるゾンビの一団が確認できる。
 
ジェイコブ:「びっくりしたよ。誰だって、ゾンビ映画に唐突にカンフーマスターが出てくるとは思わないもんな」
ノーマン:「人を驚かせることについては定評があってね。君はジェイコブだな、リリーの兄の?随分と変わった友人がいるんだな」
 
 そう言って、ノーマンはジェイコブの同行者をちらと見やった。
 左腕に髑髏のタトゥーを掘った、逞しい身体つきの男は幾分顔色が悪く、くたびれて汚れが目立つ白のタンクトップにボトムスというみすぼらしい格好とあわせ、農家というよりヤク中のロック・ミュージシャンか何かに見えた。
 彼がトランブルバレーでも悪名高いウィルカーソン兄弟の末弟であるとは、この時点でのノーマンには知り得るはずもない。
 
 
 
 
 
 
ノーマン:「それで、彼も教会に来るのかな?」
 
 イエス、と言いかけたジェイコブを、エリ・ウィルカーソンが制した。
 
男(エリ):「残念だが、俺は君と一緒に行くことはできない」
ジェイコブ:「何を言ってるんだ?もう話は済んだだろう、俺は君との付き合いを恥ずかしいものだと思ったことはない!」
エリ:「そんなことを言ってるんじゃない、俺は家族のところへ戻らなくては!ジョブはこのことを快く思わないだろうし…君がなんと言おうと、兄貴たちは俺の家族なんだよ。見捨てるような真似はできない」
ジェイコブ:「だけどな…車は一台しかないんだぜ」
エリ:「そして、君は足を怪我してる。心配するなよ、俺にはこの健康的な身体と、ゾンビどもの頭をかち割るのに最適なビッグサイズのレンチがあるんだ」
 
 それだけ言うと、エリはジェイコブの静止も聞かずに農場の外に飛び出していってしまった。
 
ノーマン:「あのままだとゾンビに食われるぞ」
ジェイコブ:「なんて無謀なことを…仕方ない、棚から爆竹を取ってきてもらえないか?本来は害獣を追い払うためのものだが、ゾンビを誘き寄せるのにも使えるんだ。エリが走っていった道の反対側でそいつを派手に鳴らせば、多少は彼の助けになるだろう」
 
 
 
 
 
 
 納屋の棚から爆竹を一掴み取り出したノーマンは、蓋をすこしだけ開けて導火線を引っ張り出すと、ライターで火をつけて箱ごと放り投げた。
 ヒュー、パチパチパチ、という、中国でお祭りをやっているような音が響き、周辺にいたゾンビたちが一斉に音のしたほうを振り向く。
 
ノーマン:「これが君の友達にとって少しは役に立つかな?」
ジェイコブ:「上出来だ。さあ、俺たちもズラかろう。わざわざ引き寄せたゾンビどもの相手をする必要はない」
 
 ノーマンは足を引きずるジェイコブに肩を貸してやり、トラックの荷台に放り込む。
 
 
 
 
 
 
ジェイコブ:「痛て…もう少し優しくしてくれよ、俺は巻き藁じゃないんだぜ?ところで、君と会うのは初めてだと思うんだが」
ノーマン:「先日から教会に新しく厄介になることになったノーマンだ。そのうち、俺の嫁と友人も紹介するよ。といっても、友人のほうはゾンビに噛まれて半死半生の有り様だが」
ジェイコブ:「あまり有り難くないニュースをありがとうよ。ところで、俺は君に礼を言うべきだろうな?」
ノーマン:「そうだな。そろそろ、俺は君が礼節を知らないクソ野郎だと思いはじめていたところだ」
ジェイコブ:「悪かったよ。ただなあ、ゾンビに襲われるってだけでも最悪なのに、妹の説教まで待ってることを考えると、気が滅入るのもわかるだろ?」
ノーマン:「足の怪我は大丈夫なのか?」
ジェイコブ:「ああ、骨折はしてないと思うんだが。一日か二日休んだら動けるようになる、と思いたいね」
 
 
 
 
 
 
 教会に戻ったあと、ジェイコブを待っていたのはリリーの叱責だった。それは誰にとっても予測された展開だった。
 
リリー:「いったい何を考えてるの!?町がゾンビだらけの状況で、一人で出歩くのがどれだけ危険か、知らないはずがないでしょうに!」
ジェイコブ:「帰ったら幾らでも説教を聞くと言ったが、少しばかり執行猶予をくれないか?足を怪我しているときに、誠意のある謝罪をするのは難しいんだよ」
リリー:「人の気も知らずに、よくもそんなことが言えるわね!いったい、私がどれだけ兄さんのことを心配したか…!」
ジェイコブ:「心配?そりゃそうだろうとも、大切なファッキン・ブラザーだもんな?ところで、父さんは帰ってきたのかい?愛するパピーの文句も聞いてやらないとな」
リリー:「父さんは死んだわ!」
 
 挑むような目つきで叩きつけるように言い放つリリー。
 その瞬間にジェイコブの顔から血の気が失われ、表面上のうわついた態度が引っ込む。と同時に、リリーの言う"どれだけ心配したか"という言葉の持つ意味が、ようやくジェコブにも理解できた。
 父の訃報を知ったあとで、行方不明の兄の身をどれだけ案じたか…さすがのジェイコブも、リリーの心中を察して自らの迂闊さを呪わずにはおれなかった。
 
ジェイコブ:「嘘だろ…?」
リリー:「父さんはキャンプ場に生存者がいないか確認しに行って、怪我人をゾンビから庇って死んだのよ!この、ノーマンは…父の手伝いをしていて、教会に来てからも偵察に出たり、私のための薬を取りに危険な仕事を進んで引き受けてくれたの!それなのに、あなたは……っ!」
ジェイコブ:「悪かったよ!すまない、俺が悪かった…!」
 
 リリーの罵倒は最後のほうになると言葉にならず、赤みのさす頬に大粒の涙がこぼれおちた。
 そんな彼女を抱きしめ、ジェイコブも涙を流す。父を失った悲しみと、妹に迷惑をかけたことに対する強い自責の念からだ。そのことが、普段は道化た態度を崩さない彼が本質的にはトーマスやリリーと同じく利他的で責任感の強い性格であることをノーマンに伝えた。
 近況を知らせるリリーの言葉は、必ずしも正確なものではなかったが…あえて、そのことを指摘する必要はないだろう。
 ともかく、依然として教会の状況は厳しいままだ。クレイブが回復できるかどうかもわからない。兄妹の涙の和解が、今後の活動のうえで生じたかもしれないわだかまりを消し去ってくれたことをノーマンは祈った。
 
 
 
 
 
 [次回へつづく]
 
 
 
 
 


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